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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1312769
審判番号 不服2015-11097  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-11 
確定日 2016-04-12 
事件の表示 特願2011-168659「圧接端子固定構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 33616、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月1日の出願であって、平成27年2月20日付けで拒絶理由が通知され、同年4月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月27日付け(発送日:同年5月11日)で拒絶査定され、同年6月11日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
制御基板に形成された回路導体に制御基板外からの電線を直接接続する圧接端子の基板への固定構造であって、
前記圧接端子が、前記制御基板の載置面に載置され、電線端末が圧接接続される圧接端子部と、この圧接端子部の一側に設けられ、前記制御基板のスル?ホールに挿入され、前記載置面の反対面で半田付けされて固定され、且つ、前記回路導体に接続される接続端子部と、前記圧接端子部の他側に設けられ、前記制御基板の側端部に沿って折り曲げられ、且つ、先端側が前記載置面の反対面に配置されて前記圧接端子部との間で前記制御基板の前記側端部を挟み込んで固定する固定脚部とで形成されていることを特徴とする圧接端子固定構造。」
とすることを含むものである。(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 補正の目的
本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「圧接端子」について「前記制御基板の載置面に載置され、」との限定を付加し、「接続端子部」について「前記制御基板のスル?ホールに挿入され、前記載置面の反対面で半田付けされて固定され、」との限定を付加し、「固定脚部」について「先端側が前記載置面の反対面に配置されて前記圧接端子部との間で前記制御基板の前記側端部を挟み込んで固定する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明との産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

3 刊行物
(1) 刊行物1
前置報告で提示された本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭63-36827号(実開平1-140767号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)の第2ページ第12行ないし第16行及び第5ページ第6行ないし第6ページ第12行並びに第1図及び第2図には、本願補正発明に則って整理すると、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「回路基板3に形成された導体パターン3aに、回路基板3外からの同軸コード2を直接接続する同軸コード用端子1の基板への固定構造であって、
同軸コード用端子1が、回路基板3の取付面に取り付けられ、同軸コード2の端末が挿入され半田付けされるコ字形爪部1aと、コ字形爪部1aの一側に設けられ、取付面で半田付けされて固定され、且つ、導体パターン3aに接続される基板取付け部1b-1と、コ字形爪部1aの他側に設けられ、回路基板3の縁端に沿って折り曲げられ、且つ、先端側が取付面の反対面に半田付けされる基板取付け部1b-2及びコ字形挟持部1b-2aとで形成されている同軸コード用端子1の固定構造。」

(2) 刊行物2
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-217699号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面(特に【図1】参照。)とともに、以下の事項が記載されている。

「【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の圧接端子の一実施の形態を示す斜視図である。
【0013 】図1において、引用符号1で示される圧接端子は、銅又は銅合金(黄銅、ベリリウム-銅など)からなる導電性金属板をプレス加工することにより形成されている。また、圧接端子1は、平面視帯状の端子基板2を有している。その端子基板2の長手方向の一方には、第一圧接部3が形成されており、他方には、第二圧接部4と電線押さえ部5、5とが形成されている。」

(3) 刊行物3
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-124739号公報には、図面(【図1】、【図2】)とともに、以下の事項が記載されている。

「【0025】本発明において特に重要なことは、コネクタ10が接地用コンタクト40及びシールド板50のコンプライアントピン状部44、55によりコネクタ10自身を親基板60に自己支持型に固定することである。即ち、コネクタ10の接地用コンタクト40のタイン部42のコンプライアント部44(及びシールド板50の接続タイン部54のコンプライアント部55)によりコネクタ10を親基板60のスルーホールに固定する。従って、信号用コンタクト30のSMT端子33は親基板60のパッドに十分に押圧され、ここにクリーム半田が被着されているSMT端子33をリフロー半田接続の為の加熱時に確実に保持する。コネクタ10には、リフロー半田付作業時にこれを親基板に固定する為の固定又は仮止め手段を別途に形成する必要がないので小型化が可能となる。」


4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「回路基板3」は、本願補正発明の「制御基板」に相当し、以下同様に、「導体パターン3a」は「回路導体」に、「取付面」は「載置面」に、「取付面に取付けられ」は「載置面に載置され」に、「基板取付け部1b-1」は「接続端子部」に、「縁端」は「側端部」に、「基板取付け部1b-2及びコ字形挟持部1b-2a」は「固定脚部」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「同軸コード2」と本願補正発明の「電線」とは、「電線」という限りで共通し、引用発明の「同軸コード用端子1」と本願補正発明の「圧接端子」とは、「端子」という限りで共通する。
そして、引用発明の「同軸コード2の端末が挿入され半田付けされるコ字形爪部1a」と本願補正発明の「電線端末が圧接接続される圧接端子部」は、「電線端末が接続される端子部」という限りで共通する。

また、引用発明の「先端側が取付面の反対面に半田付けされる」ことと、本願補正発明の「先端側が前記載置面の反対面に配置され」ることとは、「先端側が載置面の反対面に配置される」ことという限りで共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「制御基板に形成された回路導体に制御基板外からの電線を直接接続する端子の基板への固定構造であって、
端子が、制御基板の載置面に載置され、電線端末が接続される端子部と、この端子部の一側に設けられ、且つ、前記回路導体に接続される接続端子部と、前記端子部の他側に設けられ、前記制御基板の側端部に沿って折り曲げられ、且つ、先端側が載置面の反対面に配置される固定脚部とで形成されている端子固定構造。」
の点で一致し、以下の相違点1ないし3で相違する

[相違点1]
「電線」、「端子」及び「電線端末が接続される端子部」が、本願補正発明では「電線」、「圧接端子」及び「電線端末が圧接接続される端子部」であるのに対し、引用発明は「同軸コード2」、「同軸コード用端子1」及び「同軸コード2の端末が挿入され半田付けされるコ字形爪部1a」である点。

[相違点2]
本願補正発明の接続端子部は、「制御基板のスル?ホールに挿入され、前記載置面の反対面で半田付けされて固定され」るのに対し、引用発明の基板取付け部1b-1は、回路基板の取付面で半田付けされて固定される点。

[相違点3]
本願補正発明の固定脚部は、「圧接端子部との間で前記制御基板の前記側端部を挟み込んで固定」するのに対し、引用発明の基板取付け部1b-2及びコ字形挟持部1b-2aは、「コ字形爪部1a」との間で回路基板を挟み込んで固定する構造ではない点。

5 当審の判断
以下、相違点1ないし3について検討する。

(1)[相違点1]について
電線に接続される端子部は、電線の構造に適したものが通常採用される。
そして、前記刊行物2の記載事項にも見られるように、単線の芯構造を持つ電線に接続される端子部として、圧接接続される端子部は広く慣用されている。
しかしながら、引用発明の「同軸コード2」のような同軸ケーブルの外部導体は変形しやすいため、圧接接続しようとしても十分な圧接力が確保できず、安定した通電が期待できない。
このため、引用発明の「同軸コード2」の接続に関し、挿入され半田付けされる接続から圧接接続へ変更することに、阻害要因があると認められる。
したがって、相違点1の本願補正発明の構造とすることは、引用発明において当業者が容易になし得たとはいえない。

(2)[相違点2]について
電線の接続先が、端子の載置面の反対面である場合、基板のスルーホールに挿入される端子部の構造は、前記刊行物3の記載事項の「タイン部42」にも見られるように、慣用されている。
しかしながら、引用発明の同軸コード2の通電先は、端子の取付面と取付面の反対面の両方であり、しかも、反対面への通電はコ字形挟持部1b-2aの半田付けによって確保されているため、取付け部1b-1の構造を変更して反対面に通電する動機付けが無い。
したがって、相違点2の本願補正発明の構造とすることは、引用発明において当業者が容易になし得たとはいえない。

(3)[相違点3]について
刊行物2及び3のいずれにも、「圧接端子部」との間で制御基板の側端部を「挟み込んで固定」する、本願補正発明の「固定脚部」に相当する構造は記載されていない。
そして、本願補正発明は、この「固定脚部」の構造によって、「圧接端子と制御基板との載置面を半田付けする必要がなく、また、固定のためのプレスフィットによって生じる応力が付与されることがないので、接続端子部の接続部分(半田付け部)や基板にクラックが生じることがなく、電線端末の接続信頼性を向上することができる。」(段落【0016】)という作用効果を奏すると認められる。
したがって、相違点3の本願補正発明の構造とすることは、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項から当業者が容易になし得たとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
よって、本件補正のうち請求項1についてする補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されたとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-03-29 
出願番号 特願2011-168659(P2011-168659)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 575- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 圧接端子固定構造  
代理人 三好 秀和  

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