• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1312976
審判番号 不服2014-25562  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-15 
確定日 2016-03-30 
事件の表示 特願2011-541682「3Dビデオ上に3Dグラフィックスをオーバレイするための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月24日国際公開、WO2010/070567、平成24年 6月 7日国内公表、特表2012-513056〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2009年(平成21年)12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年12月19日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月14日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成26年5月19日付けで手続補正がなされたが、平成26年8月11日付け(発送日同年8月14日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年12月15日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであり、次のとおりのものと認められる。

(本願発明)
(A)三次元[3D]表示に適したビデオ情報を復号して出力する方法であって、前記ビデオ情報は、2Dディスプレイ上の表示に適した符号化されたメイン・ビデオ情報及び3D表示を可能にするための符号化された付加的なビデオ情報を有し、
当該方法は、
(B)前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報を受信又は生成し、
(C)前記メイン・ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分を第1バッファ中にバッファリングし、
(D)前記付加的なビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分を第2バッファ中にバッファリングし、
(E)前記メイン・ビデオ情報及び前記付加的なビデオ情報を復号して、ビデオ・プレーン上に、各々の出力されるビデオ・フレームがメイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである時間インタリーブされたビデオ・フレームの系列として生成し、
(F)メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである出力されるビデオ・フレームの種類を決定し、
決定されたフレームの種類にしたがって、グラフィックス・プレーン上に、前記第1バッファ中の前記オーバレイ情報の第1部分又は前記第2バッファ中の前記オーバレイ情報の第2部分を合成し、
(G)前記ビデオ・プレーン上の出力されるビデオ・フレーム上に前記グラフィックス・プレーン上の前記オーバレイ情報の第1又は第2部分をオーバレイし、
前記ビデオ・フレーム及び前記オーバレイされた情報を出力する、
(H)方法。

((A)?(H)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第2 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
1 刊行物の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開平6-335029号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(下線は当審が付与した。)

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、立体映像表示装置及び立体視の輻輳角の調整方法に関する。」

「【0002】
【従来の技術】従来から、立体映像表示装置が知られている。これは、立体映像のソースとして、予め決められた輻輳角(目のより角)を想定して左眼用の画像情報と右眼用の画像情報を作成し、これらの左眼用及び右眼用の画像情報を、単一の画面上に映出して画面上で合成したり、また、左眼用及び右眼用の画像情報を、それぞれ別個の画面に映出し、人間の眼により両画面を合成したりして、立体映像を観視することができるようにしたものである。
【0003】立体映像のソースとしては、例えばVTRやビデオディスク装置などが使われ、例えば、映像信号の奇数フィールドとして左眼用の画像情報が記録され、また、偶数フィールドとして右眼用の画像情報が記録される。そして、左眼用及び右眼用の画像情報を、単一の画面上に映出する方式の場合には、VTRやビデオディスク装置から再生されて、画面に映出されるフィールド毎の左眼用及び右眼用の画像情報に同期して、観視者の左右の眼の前の偏光レンズなどを切り換えて観視者が立体映像として捕えることができるようにしている。
【0004】また、左眼用の画像情報と右眼用の画像情報とを別個の画面に表示させ、人間の眼により両画面を合成する方式の立体映像観視システムの場合には、VTRやビデオディスク装置から、再生された奇数フィールドのビデオ信号と、偶数フィールドのビデオ信号とを、交互に振り分けて、それぞれ左眼用の画像情報及び右眼用の画像情報を得るようにしている。
【0005】後者の立体映像観視システムの一例としては、出願人が提案した表示装置を使用するものがある。これは、図6に示すように、左右両眼1L,1Rのそれぞれの眼前に配した小型・高精細度の1対のLCD(液晶ディスプレイ)2L,2Rに表示した映像を、接眼レンズ3L,3Rにより高倍率に拡大して、大画面感覚で見ることができる虚像視覚方式の頭部装着型表示装置である。この表示装置において、所定の輻輳角(眼のより角)を想定して作成した左眼用画像情報及び右眼用画像情報を、LCD2L及びLCD2Rにそれぞれ表示することにより、立体映像を観視することができる。
【0006】この場合、LCD2L及び2Rに映出された画像情報は、接眼レンズ3L及び3Rを通して虚像となり、左眼1L及び右眼1Rから別々の情報として脳に入り、そこで重ね合わされて一つの立体像となるようにされる。この場合に、虚像が人間が楽に観視できるような調節安静位(人間が暗闇の中で見つめているだろうという視点位置で、眼から約1?1.5m位であると考えられる)の位置に設定できるように、左眼用及び右眼用のLCD2Lと2R及び接眼レンズ3Lと接眼レンズ3Rとの間に、一定の輻輳角θを与えるようにしている。そして、左眼用画像と右眼用画像とは、この設定された輻輳角θに合わせて作成されているものである。」

「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したような立体映像に、文字、記号、図形その他のキャラクタ像をスーパーインポーズなどにより、画面に重畳しようとする場合、従来のキャラクタジェネレータは、2次元平面画像に対応するものであって、平面的なものであるため、立体的なキャラクタ像としてスーパーインポーズすることはできなかった。」

「【0010】この発明の第1の目的は、スーパーインポーズなどにより立体映像に重畳するキャラクタ像をも、立体像として表示することを可能にすることである。」

「【0020】図1は、この発明による立体映像表示装置の一実施例のブロック図で、この例においては、表示装置として、前述した虚像視覚方式の頭部装着型表示装置を使用しており、左眼用画像及び右眼用画像を、それぞれ独立のLCD18L及び18Rに表示するようにする場合の実施例である。
【0021】図1において、11は立体映像の画像情報のソースであって、例えばVTRで構成されている。このVTR11から再生された映像信号は、図2に示すように、奇数フィールドは左眼用の画像情報、偶数フィールドは右眼用の画像情報となっている。
【0022】このVTR11からの画像情報は、左右振分回路12に供給されるとともに、フィールド判別回路13に供給される。フィールド判別回路13では、再生画像情報が奇数フィールドか偶数フィールドかを判別し、その判別出力をマイコン14に伝達する。マイコン14は、この奇数フィールドと偶数フィールドとの判別出力に基づいて、左右振分回路12にフィールド振分信号を供給する。
【0023】左右振分回路12では、この振分信号によりフィールド毎に映像信号が振り分けられて、左眼用の画像情報LVと右眼用の画像情報RVとに分離される。そして、左眼用の画像情報LVは混合回路15Lに、右眼用の画像情報RVは混合回路15Rに、それぞれ供給される。
【0024】そして、この例においては、文字、記号、その他の図形などのキャラクタ像の信号を発生する発生手段として、左眼用のキャラクタジェネレータ16Lと、右眼用のキャラクタジェネレータ16Rを設ける。
【0025】これらキャラクタジェネレータ16L、16Rには、図3に示すように、平面表示用の第1のフォント1と、立体表示用の第2のフォント2とが記憶されており、マイコン14からの指令にしたがって、適宜、読み出される。図3の例は、キャラクタの一例としての立方体の場合で、この立体表示用のフォント2は、所定の輻輳角を設定し、その輻輳角で立方体キャラクターを左眼で見た状態の左眼用のキャラクタ信号を、左眼用キャラクタジェネレータ16Lに用意し、また、右眼で見たときのキャラクタ像の右眼用キャラクタ信号を、キャラクタジェネレータ16Rに記憶して用意している。
【0026】マイコン14は、予め設定されたプログラムなどにより、状況に応じた警告などのキャラクタを立体映像に重畳して表示する場合には、そのキャラクタとしては、キャラクタジェネレータ16L及び16Rからフォント2を読み出し、それぞれ、混合回路15L及び15Rに供給する。
【0027】したがって、混合回路15Lでは、左右振り分け回路12からの左眼用の画像情報に左眼用キャラクタ信号が混合され、また、混合回路15Lでは、左右振り分け回路12からの右眼用の画像情報に右眼用キャラクタ信号が混合される。この混合方法としては、スーパーインポーズや、領域を設定しての混合など、種々の態様を採ることができる。
【0028】そして、この混合回路15L及び15Rの出力信号は、それぞれ、メモリ17L及び17Rに書き込まれる。この書き込みは、フィールド判別回路13の判別出力をマイコン14が受け、その判別出力に応じて、奇数フィールドのときには、メモリ17Lを書き換え、偶数フィールドのときには、メモリ17Rを書き換えるようにする。このメモリ17L及び17Rの画像情報は、左眼用のLCD18L及び右眼用のLCD18Rに、それぞれ供給されて、左眼用画像及び右眼用画像が、その画面に映出される。」

「【0037】図5は、この発明による立体映像表示装置の、さらに他の例である。この例は、図4の例の変形例である。すなわち、この例の場合には、キャラクタジェネレータとして、左眼用及び右眼用の2個を設けるのではなく、1個のキャラクタジェネレータ16とする。このキャラクタジェネレータ16には、左眼用キャラクタ信号と、右眼用キャラクタ信号とが、それぞれメモリエリア(アドレス)を別個にして、記憶されている。
【0038】そして、マイコン14は、フィールド判別回路13の判別出力に応じて、奇数フィールドでは、キャラクタジェネレータ16から左眼用キャラクタ信号を読み出すようにし、また、偶数フィールドでは右眼用キャラクタ信号を読み出すように、キャラクタジェネレータ16の読み出しアドレスを制御する。
【0039】この例の場合においても、混合回路23においては、VTRソース11からの左眼用及び右眼用の画像情報に、キャラクタジェネレータ16からの左眼用及び右眼用のキャラクタ信号が、同期して混合されることになる。
【0040】以上の例は、この発明を前述した新規の立体映像表示装置に適応した場合であるが、画面が単一のものである立体映像表示装置にも、この発明が適応できることは、いうまでもない。なぜなら、この発明においては、左眼用の画像情報と右眼用の画像情報のそれぞれに対して、左眼用のキャラクタ信号と右眼用のキャラクタ信号が、それぞれ混合され、それに基づいて立体映像が表示されるものであるからである。」

2 刊行物に記載された発明
刊行物には、スーパーインポーズなどにより立体映像に重畳するキャラクタ像をも、立体像として表示することを可能にすること(段落【0010】)を目的とする立体映像表示装置が記載されている。
また、段落【0037】?【0039】には、立体映像表示装置のさらに他の例が記載され、その立体映像表示装置においては、キャラクタジェネレータ16には、左眼用キャラクタ信号と、右眼用キャラクタ信号とが、記憶され(段落【0037】)、マイコン14は、フィールド判別回路13の判別出力に応じて、奇数フィールドでは、キャラクタジェネレータ16から左眼用キャラクタ信号を読み出すようにし、また、偶数フィールドでは右眼用キャラクタ信号を読み出すように、制御し(段落【0038】)、混合回路23においては、VTRソース11からの左眼用及び右眼用の画像情報に、キャラクタジェネレータ16からの左眼用及び右眼用のキャラクタ信号が、同期して混合される(段落【0039】)ことが記載されている。
また、VTR11から再生された映像信号は、奇数フィールドは左眼用の画像情報、偶数フィールドは右眼用の画像情報となっている(段落【0021】)ことが記載されている。
この立体映像表示装置の動作を方法の発明として認定する。この方法は、立体映像表示用の画像情報を出力する方法といえる。
ここで、該立体映像表示装置におけるキャラクタジェネレータには、左眼用キャラクタ信号と、右眼用キャラクタ信号とが、記憶されているから、左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号を生成することは明らかであり、左眼用キャラクタ信号又は右眼用キャラクタ信号は画像情報に重畳されるものである。そして、左眼用キャラクタ信号又は右眼用キャラクタ信号が重畳された画像情報は、出力される。

そうすると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。

(刊行物発明)
(a)立体映像表示用の画像情報を出力する方法あって、当該方法は、
(b)画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号を生成し、
(c)画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号をキャラクタジェネレータに記憶し、
(d)画像情報に重畳される右眼用キャラクタ信号をキャラクタジェネレータに記憶し、
(e)フィールド判別回路の判別出力に応じて、奇数フィールド(左眼用の画像情報)では、キャラクタジェネレータ16から左眼用キャラクタ信号を読み出すようにし、また、偶数フィールド(右眼用の画像情報)では右眼用キャラクタ信号を読み出すようにし、
(f)画像情報に左眼用キャラクタ信号又は右眼用キャラクタ信号を重畳し、出力する
(g)方法。

なお、(a)?(g)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。

第3 対比
1 対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。

(1)構成要件Aと構成aとを対比する。
構成aにおける「立体映像表示用の画像情報」は、構成要件Aにおける「三次元[3D]表示に適したビデオ情報」に相当し、本願発明と刊行物発明とは「三次元[3D]表示に適したビデオ情報を出力する方法」として共通する。
しかしながら、刊行物発明は「復号」するものでなく、本願発明と相違し、さらに、刊行物発明は、「前記ビデオ情報は、2Dディスプレイ上の表示に適した符号化されたメイン・ビデオ情報及び3D表示を可能にするための符号化された付加的なビデオ情報を有し」ていない点で、本願発明と相違する。

(2)構成要件Bと構成bとを対比する。
構成bにおける「画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号」は、構成要件Bにおける「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物発明とは「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報を生成」する点で共通する。
そして、構成要件Bは「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報を受信又は生成し」であり、「受信」と「生成」とが択一的であるから、本願発明と刊行物発明とは、「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報を受信又は生成」する点で一致する。

(3)構成要件Cと構成cとを対比する。
構成cにおける「画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号」は、「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報」に相当する「画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号」の一部分であるから、「ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分」といえる。
したがって、本願発明と刊行物発明とは、「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分を記憶」するとして共通する。
しかしながら、「記憶」するが、本願発明においては、「第1バッファ中に」記憶する(バッファリングする)のに対し、刊行物発明においては「第1バッファ中に」記憶するものでない点で相違し、さらに、「前記ビデオ情報」が、本願発明においては「前記メイン・ビデオ情報」であるのに対し、刊行物発明においては「前記メイン・ビデオ情報」でない点で相違する。

(4)構成要件Dと構成dとを対比する。
構成dにおける「画像情報に重畳される右眼用キャラクタ信号」は、「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報」に相当する「画像情報に重畳される左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号」の一部分であるから、「ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分」といえる。
したがって、本願発明と刊行物発明とは、「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分を記憶」するとして共通する。
しかしながら、「記憶」するが、本願発明においては、「第2バッファ中に」記録する(バッファリングする)のに対し、刊行物発明においては「第2バッファ中に」記憶するものでない点で相違し、さらに、「前記ビデオ情報」が、本願発明においては「前記付加的なビデオ情報」であるのに対し、刊行物発明においては「前記付加的なビデオ情報」でない点で相違する。

(5)構成要件Eについて
構成要件Eは、刊行物発明にはなく、本願発明と相違する。

(6)構成要件Fと構成eとを対比する。
構成eにおける「奇数フィールド(左眼用の画像情報)」、「偶数フィールド(右眼用の画像情報)」は、構成要件Fにおける「ビデオ・フレーム」に相当する。
構成eにおける「フィールド判別回路の判別出力に応じて、」は、「出力されるビデオ・フレームの種類を決定し、決定されたフレームの種類にしたがって、」といえる。
したがって、本願発明と刊行物発明とは、「出力されるビデオ・フレームの種類を決定し、決定されたフレームの種類にしたがって、前記オーバレイ情報の第1部分又は前記オーバレイ情報の第2部分を読み出」す点で共通する。
しかしながら、「読み出し」が、本願発明においては、「グラフィックス・プレーン上に」「合成する」するのに対し、刊行物発明においては、「グラフィックス・プレーン上に」「合成する」するものではない点で相違する。
さらに、「出力されるビデオ・フレーム」が、本願発明においては「メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである」のに対し、刊行物発明は「メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレーム」でなく、
「前記オーバレイ情報の第1部分」が、本願発明においては「前記第1バッファ中」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記第1バッファ中」になく、
「前記オーバレイ情報の第2部分」が、本願発明においては「前記第2バッファ中」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記第2バッファ中」にない点で相違する。

(7)構成要件Gと構成fとを対比する。
「画像情報に左眼用キャラクタ信号又は右眼用キャラクタ信号を重畳し、出力する」ことは、「ビデオ・フレーム上に前記オーバレイ情報の第1又は第2部分をオーバレイし、前記ビデオ・フレーム及び前記オーバレイされた情報を出力する」といえる。
したがって、本願発明と刊行物発明とは、「ビデオ・フレーム上に前記オーバレイ情報の第1又は第2部分をオーバレイし、前記ビデオ・フレーム及び前記オーバレイされた情報を出力する」点で共通する。
しかしながら、「ビデオ・フレーム」が、本願発明においては「前記ビデオ・プレーン上の出力される」ものであるのに対し、刊行物発明においては「前記ビデオ・プレーン上の出力される」ものではなく、
「前記オーバレイ情報の第1又は第2部分」が、本願発明においては「前記グラフィックス・プレーン上」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記グラフィックス・プレーン上」にない点で相違する。

(8)構成要件Hと構成gとを対比する。
構成要件Hと構成gとは「方法」として一致する。

2 一致点、相違点
以上より、本願発明と刊行物発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
三次元[3D]表示に適したビデオ情報を出力する方法であって、
当該方法は、
前記ビデオ情報上にオーバレイされるべき3Dオーバレイ情報を受信又は生成し、
前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分を記憶し、
前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分を記憶し、
ビデオ・フレームの種類を決定し、
決定されたフレームの種類にしたがって、前記オーバレイ情報の第1部分又は前記オーバレイ情報の第2部分を合成し、
ビデオ・フレーム上に前記オーバレイ情報の第1又は第2部分をオーバレイし、
前記ビデオ・フレーム及び前記オーバレイされた情報を出力する、方法。

(相違点1)
「三次元[3D]表示に適したビデオ情報を出力する方法」が、本願発明においては「三次元[3D]表示に適したビデオ情報を復号して出力する方法」であるのに対し、刊行物発明は「復号」するものではなく、
本願発明においては、「前記ビデオ情報は、2Dディスプレイ上の表示に適した符号化されたメイン・ビデオ情報及び3D表示を可能にするための符号化された付加的なビデオ情報を有し」ているのに対し、刊行物発明は当該構成を有していない点。

(相違点2)
「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分を記憶し」における「記憶」するが、本願発明においては、「第1バッファ中に」記憶する(バッファリングする)のに対し、刊行物発明においては「第1バッファ中に」記憶するものでなく、
さらに、「前記ビデオ情報」が、本願発明においては「前記メイン・ビデオ情報」であるのに対し、刊行物発明においては「前記メイン・ビデオ情報」でない点。

(相違点3)
「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分を記憶し」における「記憶」するが、本願発明においては、「第2バッファ中に」記録する(バッファリングする)のに対し、刊行物発明においては「第2バッファ中に」記憶するものでなく、
さらに、「前記ビデオ情報」が、本願発明においては「前記付加的なビデオ情報」であるのに対し、刊行物発明においては「前記付加的なビデオ情報」でない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記メイン・ビデオ情報及び前記付加的なビデオ情報を復号して、ビデオ・プレーン上に、各々の出力されるビデオ・フレームがメイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである時間インタリーブされたビデオ・フレームの系列として生成」するのに対し、刊行物発明は、そのように生成するものではない点。

(相違点5)
「出力されるビデオ・フレームの種類を決定し、決定されたフレームの種類にしたがって、前記オーバレイ情報の第1部分又は前記オーバレイ情報の第2部分を読み出」すにおける「読み出」しが、本願発明においては、「グラフィックス・プレーン上に」「合成する」するのに対し、刊行物発明においては、「グラフィックス・プレーン上に」「合成する」するものではなく、
さらに、「出力されるビデオ・フレーム」が、本願発明においては「メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである」のに対し、刊行物発明は「メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレーム」でなく、
「前記オーバレイ情報の第1部分」が、本願発明においては「前記第1バッファ中」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記第1バッファ中」になく、
「前記オーバレイ情報の第2部分」が、本願発明においては「前記第2バッファ中」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記第2バッファ中」にない点。

(相違点6)
「ビデオ・フレーム上に前記オーバレイ情報の第1又は第2部分をオーバレイし、前記ビデオ・フレーム及び前記オーバレイされた情報を出力する」における「ビデオ・フレーム」が、本願発明においては「前記ビデオ・プレーン上の出力される」ものであるのに対し、刊行物発明においては「前記ビデオ・プレーン上の出力される」ものではなく、
「前記オーバレイ情報の第1又は第2部分」が、本願発明においては「前記グラフィックス・プレーン上」にあるのに対し、刊行物発明においては「前記グラフィックス・プレーン上」にない点。

第4 判断
1 相違点1、相違点4について
三次元表示に適したビデオ情報を符号化、復号化する技術は周知技術(下記[周知技術1]参照)である。この周知技術は、三次元表示するために右眼用画像、左目用画像の一方の画像を符号化し、もう一方の画像を一方の画像との差分をとって符号化するものであり、一方の画像はメイン・ビデオ画像といえ、もう一方の画像は付加的な画像といえる。したがって、それぞれの画像情報は、「2Dディスプレイ上の表示に適した符号化されたメイン・ビデオ情報及び3D表示を可能にするための符号化された付加的なビデオ情報」といえる。
刊行物発明は「立体映像表示用の画像情報を出力する方法」であり、その画像情報を上記周知技術を勘案して、符号化・復号化することは当業者が容易に想到し得ることであり、刊行物発明における画像情報を符号化・復号化することにより、画像情報は符号化され、復号化されるものになり、刊行物発明は「ビデオ情報を復号して出力する」ものとなり、「前記ビデオ情報は、2Dディスプレイ上の表示に適した符号化されたメイン・ビデオ情報及び3D表示を可能にするための符号化された付加的なビデオ情報を有」するものとなる。
そうすると、相違点2の「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第1部分」における「前記ビデオ情報」が、「前記メイン・ビデオ情報」となり、
相違点3の「前記ビデオ情報上にオーバレイされるべきオーバレイ情報の第2部分」における「前記ビデオ情報」が、「前記付加的なビデオ情報」となり、
相違点5の「出力されるビデオ・フレーム」が、「メイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである出力されるビデオ・フレーム」となる。

そして、符号化されたビデオ情報を復号化して出力するために、ビデオ・プレーンを用いることは後記[周知技術2]のとおり周知技術であり(「3 相違点5、6について」参照)、刊行物発明における画像情報は、奇数フィールド(左眼用の画像情報)、偶数フィールド(右眼用の画像情報)の画像情報であるから、「前記メイン・ビデオ情報及び前記付加的なビデオ情報を復号して、ビデオ・プレーン上に、各々の出力されるビデオ・フレームがメイン・ビデオ・フレーム又は付加的なビデオ・フレームである時間インタリーブされたビデオ・フレームの系列として生成」されるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[周知技術1]
特開2001-186515号公報(段落【0002】-【0006】)
特表2001-502504号公報(4頁17行?6頁4行)

2 相違点2、3について
データを処理する際に、データをバッファに入れることは普通に行われることであり、オーバレイ情報の第1部分、第2部分をバッファに記憶することは当業者が容易に想到することである。
そうすると、相違点5の「前記オーバレイ情報の第1部分」は「前記第1バッファ中」にあり、「前記オーバレイ情報の第2部分」は「前記第2バッファ中」にあることになる。

3 相違点5、相違点6について
ビデオ情報をビデオプレーンに書き込み、グラフィック情報をグラフィックプレーンに書き込み、ビデオプレーンとグラフィックプレーンとを用いて合成を行うことは周知技術である(下記[周知技術2]参照)。
刊行物発明において、上記周知技術を勘案して、「前記オーバレイ情報の第1部分又は前記オーバレイ情報の第2部分」に相当する「左眼用キャラクタ信号及び右眼用キャラクタ信号」を「グラフィックス・プレーン上に」「合成」すること、
「ビデオ・フレーム」に相当する「画像情報」を「ビデオ・プレーン上に」出力させることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[周知技術2]
国際公開第2007/028064号(8頁14?22行、図7)
国際公開第2006/043203号(8頁19?27行、図7)
国際公開第2004/098193号(21頁13行?22頁1行、42頁8?27行、43頁17行?44頁3行、図10、図26)

4 効果について
本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-02 
結審通知日 2015-11-05 
審決日 2015-11-19 
出願番号 特願2011-541682(P2011-541682)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 俊威  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 戸次 一夫
小池 正彦
発明の名称 3Dビデオ上に3Dグラフィックスをオーバレイするための方法及び装置  
代理人 津軽 進  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 笛田 秀仙  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ