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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1313007
審判番号 不服2015-146  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-05 
確定日 2016-03-31 
事件の表示 特願2009-235693「化粧料の製造方法及び化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月21日出願公開、特開2011-79802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年10月9日に出願されたものであって、平成26年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年3月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月25日付けで拒絶査定され、平成27年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成26年3月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「少なくとも植物からの抽出物を含有する化粧料を製造する方法であって、
3.5質量%以上の界面活性剤を含むシャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、液体せっけん、クリームまたは乳液である液体状の化粧料基材を抽出溶媒として用い、抽出原料としての前記植物の抽出処理を行うことを特徴とする化粧料の製造方法。」

第3.当審の判断
1.引用する刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2009-62345号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載がされている。

(1)「【請求項1】
ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物成分が含まれてなる化粧料
【請求項2】
前記植物成分が茎の絞り汁もしくは抽出物である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記植物成分が芋の抽出物である請求項1に記載の化粧料。」
(2)「【0001】
本発明は、化粧水、化粧乳液、スキンクリーム、ジェル等の基礎化粧料として、特に肌に潤いを付与するのに好適な化粧料に関する。」
(3)「【0004】
本発明は、上述の事情に鑑み、植物成分を配合した化粧料として、保湿効果とその持続性に優れ、使用感も良好であって、該植物成分の一般的な化粧剤成分に対する相性と安定性が良く、安価に量産できるものを提供することを目的としている。
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る化粧料は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物成分が含まれてなるものとしている。
【0006】
請求項2の発明は、上記請求項1の化粧料において、植物成分が茎の絞り汁もしくは抽出物である構成としている。
【0007】
請求項3の発明は、上記請求項1の化粧料において、植物成分が芋の抽出物である構成としている。」
(4)「【0013】
本発明において化粧料に配合するヤマノイモ成分は、茎から採取してもよいし、根の芋から採取してもよい。茎からの採取では、茎を数cm程度の適当な長さに切ったり、みじん切りにしたものを直接に又は布地等に包んで圧搾して絞り汁として得るか、アルコール水溶液もしくは化粧料のベースとなる水性液に一定期間(通常は1週間程度)浸漬してエキスの抽出物として得る.……。一方、芋からの採取では、芋を短冊状等に切ったものをアルコール水溶液もしくは化粧料ベースの水性液に一定期間(通常は1週間程度)浸漬して抽出物として得るのがよい。このようなヤマノイモ成分の採取は少量では手操作で行えばよいが、機械化して量産することも可能である。……」
(5)「【0015】
本発明の化粧料は、一般的にローションと称される各種化粧水の他、乳液、クリーム、ジェル、フォーム等、種々の形態のものを包含する。ヤマノイモ成分の配合量は、これら化粧料としての種類や肌の適用部位によって異なるが、概してローションでは10ml当たり原料の茎や芋として0.1?2g程度の範囲が好ましい。しかして、肌に使用した化粧料は、通常の石けんや洗顔剤によって容易に落とすことができる。」
(6)「【0019】
〔芋抽出液を含む化粧水B1,B2の調製〕
上記長芋の芋を1個当たり約1gの短冊状に切り、この芋片を後記の市販化粧水に10ml当たり1個の割合で浸漬し、1週間放置後に芋片を取り出し、残る無色の液の方を更に1週間放置して淡黄色に発色した芋抽出液を含む化粧水B1,B2を調製した。なお、浸漬後に取り出した芋片はカスカスの状態であり、そのエキスが液側へ移行していることが明らかであった。
……
【0021】
〔使用した市販化粧水〕
A1,B1・・・カネボウ肌美精クリアホワイトローション(さっぱり)E…カネボウ株式会社製
A2,B2・・・雪肌粋ピュアホワイトニングローション…コーセー株式会社製
……
【0022】
〔モニターテスト〕
モニターとして12名に、調製した本発明の化粧水A1?A5、B1、C1、C2の使用を依頼して効果のテストを行ったところ、モニターから次の表1に示す反響が得られた。なお、各モニターに提供した本発明の化粧水は、いずれも各モニターが常用している市販化粧水を調製時にベースとして用いたものであり、評価は元の市販化粧水の使用時との比較になっている。」

2.刊行物1に記載された発明
摘示(4)には、芋からの採取では、芋を短冊状等に切ったものを化粧料ベースの水性液に一定期間浸漬して抽出物として得るのがよいことが、摘示(6)には、芋抽出液を含む化粧水B1,B2の調製について、芋片を市販化粧水に10ml当たり1個の割合で浸漬し、1週間放置後に芋片を取り出し、残る無色の液の方を更に1週間放置して淡黄色に発色した芋抽出液を含む化粧水B1,B2を調製したことが記載されている。なお、「市販化粧水」とは、B1が「カネボウ肌美精クリアホワイトローション(さっぱり)E…カネボウ株式会社製」であり、B2が「雪肌粋ピュアホワイトニングローション…コーセー株式会社製」である。

したがって、上記(1)?(6)の記載からみて、刊行物1には、
「ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物成分が含まれてなる化粧料の製造方法であって、前記植物成分を、芋から化粧料ベースの水性液を抽出溶媒として抽出する、化粧料の製造方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物(芋)」は本願発明の「植物」であり、これを用いて抽出処理を行うものであるから、「抽出原料」であることは明らかである。
また、引用発明の「ヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物成分」は抽出処理により得られるものであるから、「抽出物」である。
なお、引用発明の化粧料には、化粧料としてのヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物成分以外の成分が含まれることは自明である。
そうすると、両者は、
「少なくとも植物からの抽出物を含有する化粧料を製造する方法であって、
抽出溶媒を用い、抽出原料としての前記植物の抽出処理を行う化粧料の製造方法」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
抽出溶媒として、本願発明では「3.5質量%以上の界面活性剤を含むシャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、液体せっけん、クリームまたは乳液である液体状の化粧料基材」と特定しているのに対し、引用発明では「化粧料ベースの水性液」としている点

4.判断
この相違点について検討する。
刊行物1の段落【0019】には、「芋抽出液を含む化粧水B1,B2の調製」において、芋の抽出溶媒として市販化粧水を採用することが記載され、段落【0021】において、使用した市販化粧水の具体的な製品としてローションが記載されている。
また、刊行物1の段落【0015】には、「本発明の化粧料は、一般的にローションと称される各種化粧水の他、乳液、クリーム、ジェル、フォーム等、種々の形態のものを包含する。」と記載され、抽出処理に使用する化粧料ベースの水性液としてローション以外にも乳液、クリーム、ジェル、フォーム等が挙げられている。なお、段落【0019】の記載と照らし合わせると、抽出に使用した化粧料ベースの水性液(ローション)は、抽出処理後そのまま化粧料として使用されることは明らかである。
そうすると、刊行物1には、乳液やクリームもローションと同様に「化粧料ベースの水性液」として植物(芋)の抽出において使用できることが記載されていると言える。
そして、化粧料として使用するローションや乳液、クリームに界面活性剤が配合されることは、本願出願前に当業者において周知のことであり、どの様な種類の界面活性剤をどの程度の量で配合すべきかは、目的とする化粧料によりそれぞれ適宜決定できることであるから、抽出溶媒としての化粧料基材の界面活性剤の配合量について「3.5質量%以上の界面活性剤を含む」とすることは、化粧料基剤である乳液やクリームに通常含有される配合量を勘案すれば、必要に応じてなし得る程度のことと認められる。(なお、この界面活性剤の含有量については、本願明細書に「化粧料基材中の界面活性剤の含有量は特に限定されるものではないが、シャンプー、トリートメント、コンディショナー等の化粧料における通常の含有量であればよい。」(段落【0022】)と記載されていることに鑑みれば、「シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、液体せっけん、クリームまたは乳液である液体の化粧料基材」の通常の含有量を特定したにすぎないものと解される。)
したがって、前記相違点に係る構成とすることは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得たものである。
なお、本願発明の効果について検討するも、3.5質量%以上の界面活性剤を含む液体状の化粧料基材を使用するとの要件は、本願明細書に実施例として3.5質量%以上の界面活性剤を使用するものが記載されていたことのみに基づくものにすぎず(請求人が原審において提出した意見書参照)、さらに液体状の化粧料基材を抽出溶媒とする際にそのまま使用するのであって、界面活性剤の含有量を特別に調整するものでもないから、「3.5質量%以上の界面活性剤を含むシャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、液体せっけん、クリームまたは乳液である液体状の化粧料基材」との構成を採用することで格別の効果を奏するものとはいえない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-29 
結審通知日 2016-02-02 
審決日 2016-02-15 
出願番号 特願2009-235693(P2009-235693)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 弘實 謙二  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 小川 慶子
松浦 新司
発明の名称 化粧料の製造方法及び化粧料  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  

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