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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A21C
管理番号 1313075
異議申立番号 異議2015-700104  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-20 
確定日 2016-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第5763016号「製麺用連続混合機」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 特許第5763016号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5763016号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は,平成24年6月29日に特許出願され,平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,特許異議申立人 株式会社粉研パウテックスにより特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5763016号の請求項1ないし3の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)。

【請求項1】
外側面上端に周設したフランジを介して架台上に設置されるドラムと,前記ドラム内に内装される攪拌部と,前記ドラムに被装されるドラム蓋とから成り,
前記ドラムは,その中心部に攪拌軸を軸支する軸受部が隆起するように設けられると共に,前記軸受部を囲むように,半円形溝状で一部が開口されてドゥの出口が形成された環状混練室を備え,前記攪拌部は,前記攪拌軸と,混練羽根,周面スクレーパ及び天面スクレーパが設置されていて,裏面中心に前記攪拌軸の上端部が固定されることにより回転駆動される回転テーブルとから成り,
前記回転テーブルを,前記ドラムのフランジの内周径よりも小径にすると共に,前記フランジよりも高位置となるように配置することにより,前記回転テーブルの外周縁部と前記フランジの内周縁部との間に,手先を挿入するのに十分広い間隙が確保されるようにしたことを特徴とする製麺用連続混合機。
【請求項2】
前記ドラム蓋に,水供給用バルブと湯供給用バルブと添加物供給用バルブとが接続される,請求項1に記載の製麺用連続混合機。
【請求項3】
前記湯供給用バルブは前記添加物供給用バルブと兼用とされる,請求項2に記載の製麺用連続混合機。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は,証拠として,
甲第1号証:特公昭63-43127号公報(以下「甲1」という。),
甲第2号証:西独国特許出願公告第1134341号公報及び訳文(以下「甲2」という。),
甲第3号証:特表2000-515766号公報(以下「甲3」という。なお,特許異議申立書 6 証拠方法における甲3号証は誤記と認める。),
甲第4号証:特開2011-97909号公報(以下「甲4」という。),
甲第5号証:特開2011-67780号公報(以下「甲5」という。)及び
甲第6号証:特開2002-166154号公報(以下「甲6」という。)
を提出し,請求項1に係る特許は甲1ないし3に基いて,請求項2及び3に係る特許は甲1ないし6に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1ないし3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき旨主張している。

4.甲各号証の記載
(1)甲1
ア 「基盤2で覆われた混合室1内に回転自在に配置された回転混合盤3と,該回転混合盤3に連続的に定量供給される粉体に対して液体を噴出させるための複数の噴射ノズル4,4と,上記回転混合盤3に設けられていて該回転混合盤の回転に伴なつて上記噴射ノズル口を横切るように配置された複数の上面スクレパー5と,上記回転混合盤3に設けられていて上記混合室の内壁に沿つて旋回する側面スクレパー7とを備えていることを特徴とする粉体を少量の液体であつても均一に加湿し得るように構成したことを特徴とする連続混合装置。」(第1欄12行から23行)

イ 「円筒部8aとその下部に連設された円錐部8bとからなる本体胴部8の内部に混合室1が形成され,該混合室1は中央に円孔2aを有する基盤2で覆われていると共に上記円錐部8bの一側部に形成された粉体排出口9を備えている。混合室1内にはシヤフト11が軸受部12により軸支されていてVプーリー13又は他の駆動装置との直結により高速回転するようにした回転混合盤3が配置されている。」(第3欄36行から44行)

ウ 「15は上記回転混合盤3の下面に取り付けられた排出翼であつて,下端の形状は上記混合室1の谷状底部に対応するようになつている。」(第4欄22行から第4欄25行)

エ 以上の記載から,甲1には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「基盤2で覆われた混合室1内に回転自在に配置された回転混合盤3と,該回転混合盤3に連続的に定量供給される粉体に対して液体を噴出させるための複数の噴射ノズル4,4と,上記回転混合盤3に設けられていて該回転混合盤の回転に伴なつて上記噴射ノズル口を横切るように配置された複数の上面スクレパー5と,上記回転混合盤3に設けられていて上記混合室の内壁に沿つて旋回する側面スクレパー7とを備えている粉体を少量の液体であっても均一に加湿し得るように構成した連続混合装置であって,
円筒部8aとその下部に連設された円錐部8bとからなる本体胴部8の内部に混合室1が形成され,該混合室1は中央に円孔2aを有する基盤2で覆われていると共に上記円錐部8bの一側部に形成された粉体排出口9を備えており,混合室1内にはシャフト11が軸受部12により軸支されていてVプーリー13又は他の駆動装置との直結により高速回転するようにした回転混合盤3が配置され,
上記回転混合盤3の下面に取り付けられた排出翼15の下端の形状は上記混合室1の谷状底部に対応するようになっている,
連続混合装置。」

(2)甲2
甲1には,Fig.1とともに,「前記小管12としての頸部は,練り粉食品の容器14として機能するように形成され,前記支持円盤11に固定される」(第1ページ第2欄34から36行,訳文参照)と記載されており,「半円形溝状の環状混練室」が見て取れる。

(3)甲3
甲3には,図1とともに,「本発明は,図1に例示する混合機10に対応づけて説明している。この混合機は,ベース14と,支持構造体16と,この支持構造体の上端部から延出しているアーム18とを有するハウジング12を含んでいる。ベース14は,二対の離間した脚20により形成されている。一対の脚20間の空間部上で,支持構造体16はベース14から垂直に延出し,アーム18はこの支持構造体から水平に延出している。アーム18は,混合器具に対する取付部材22を備えている。さらに,ミキサ10は,支持構造体16に取り付けられた弧状のボウル支持部24を含んでいる。ボウル支持部24は半円形であり,補足的な,混合すべき材料を入れる移動可能なボウル26を支持するための凹所を形成している。支持部24は,脚20が置かれる表面28から一定距離の所に,ボウル26を保持している。」(第8ページ2から12行)と記載されている。

(4)甲4ないし6
請求項2及び3の「水供給用バルブ」,「湯供給用バルブ」及び「添加物供給用バルブ」に関するものとして,甲4には「注水用貫通孔10」が,甲5には「一対の液体噴射ノズル26,26」が,甲6には「材料供給管10cと材料供給管10d」が,それぞれ記載されている。

5.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると,
甲1発明の「基盤2」が,本件発明1の「ドラム蓋」に相当する。以下,同様に,「混合室」が「環状混練室」に,「回転混合盤3」が「回転テーブル」に,「上面スクレパー5」が「天面スクレーパ」に,「側面スクレパー7」が「周面スクレーパ」に,「本体胴部8」が「ドラム」に,「粉体排出口9」が「出口」に,「シャフト11」が「攪拌軸」に,「排出翼15」が「混練羽根」にそれぞれ相当している。
したがって,本件発明1と甲1発明とは,「ドラムと,前記ドラム内に内装される攪拌部と,前記ドラムに被装されるドラム蓋とから成り,
前記ドラムは,その中心部に攪拌軸を軸支する軸受部が設けられると共に,前記軸受部を囲むように,一部が開口されてドゥの出口が形成された環状混練室を備え,前記攪拌部は,前記攪拌軸と,混練羽根,周面スクレーパ及び天面スクレーパが設置されていて,裏面中心に前記攪拌軸の上端部が固定されることにより回転駆動される回転テーブルとから成る,
粉体等の連続混合機。」の点で一致し,少なくとも異議申立人が主張する以下の点で相違している。

(相違点1)
「環状混練室」の形状として,本件発明1では,「環状混練室」が「半円形溝状」であるのに対して,甲1発明は,「混合室1」が「円筒部8aとその下部に連設された円錐部8bとから」なる点。

(相違点2)
本件発明1では,「前記回転テーブルを,前記ドラムのフランジの内周径よりも小径にすると共に,前記フランジよりも高位置となるように配置することにより,前記回転テーブルの外周縁部と前記フランジの内周縁部との間に,手先を挿入するのに十分広い間隙が確保されるように」しているのに対して,甲1発明では,その点が明示されていない点。

上記相違点1,2について判断する。
異議申立人が主張するように,相違点1について,甲2記載事項等を参酌し,清掃が容易となるように,角部を設けない円形形状に設計することが当業者にとって容易になし得たものであるとしても,相違点2について,以下の理由により,甲3記載事項から,当業者が容易になし得たものとすることはできない。
甲3記載の「食品ミキサ」は,本件発明1とは異なり,「連続混合」しておらず,「ドラム蓋」のような蓋で閉鎖されているものでもない。さらに,「ドラム」に対する「攪拌軸」の配置位置も異なるものである。よって,甲3記載の「取付部材22」が,本件発明1の「回転テーブル」に相当するということはできない。
また,仮に,甲3記載の「取付部材22」が,本件発明1の「回転テーブル」に相当するとしても,甲3記載の「ボウル支持部材24」によって支持される「ボウル26」の部分と,本件発明1の「ドラム」の「外側面上端に周設したフランジ」とは,「ドラム」における「フランジ」の配置位置が異なることから,本件発明1の奏する効果の1つである「ドラムの内部清掃等に際して回転テーブルの取り外し及び取り付け作業が容易」となるように,上記相違点2とする動機がない。
したがって,本件発明1は,甲1ないし3に記載された発明から当業者が容易になし得るものではない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は,本件発明1を更に減縮したものであるから,甲4ないし6を検討するまでもなく,上記本件発明1についての判断と同様の理由により,当業者が容易になし得るものではない。

以上のとおり,請求項1ないし3に係る発明は,甲1ないし6記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-03-25 
出願番号 特願2012-147396(P2012-147396)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A21C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大山 広人  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 田村 嘉章
永石 哲也
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5763016号(P5763016)
権利者 トーキョーメンキ株式会社
発明の名称 製麺用連続混合機  
代理人 齋藤 晴男  
代理人 本田 崇  

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