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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1313383
審判番号 不服2015-2998  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-17 
確定日 2016-04-04 
事件の表示 特願2013-558847「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスの処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日国際公開、WO2014/030766、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-509821〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年8月21日(優先権主張 平成24年8月24日(以下、「本願優先日」という。)及び平成25年2月26日)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月4日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月18日に拒絶査定がされ、これに対して、平成27年2月17日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成26年10月3日付けの手続補正により補正された請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、
「排ガス発生源からの無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスを最初にFe_(2)O_(3)又は合成ゼオライトと接触させた後、水分量5w/w%以下で且つハロゲン含有量が10mg/g以下のアニオン交換樹脂からなるハロゲンガス処理剤に接触させることを特徴とする排ガスの処理方法であって、当該ハロゲンガス処理剤は、無機ハロゲン化ガスを吸着したアニオン交換樹脂を、アルカリ水溶液及び残留塩素量20mg/L以下の洗浄水を用いて再生したものであることを特徴とする排ガスの処理方法。」(以下、「本願発明」という。)である。

第3 原査定の理由
原査定の理由は、
「この出願については、平成26年 8月 4日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」
というものであり、その理由1とは、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
この理由1における「下記の請求項」は、平成26年8月4日付け拒絶理由通知書によると、「請求項:1-7」であって、その請求項1、4の発明特定事項等からみて、本願発明を含むものである。
また、「下記の刊行物」は、平成26年8月4日付け拒絶理由通知書で引用された「引用文献等:1、2」、すなわち、特開平11-70319号公報、特開平6-190235号公報(以下、「引用例1」、「引用例2」という。)である。

第4 当審の判断
当審は、上記の原査定の理由のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものと判断する。

1 引用例1、2に記載された事項
(1)引用例1
本願優先日前に頒布されたことが明らかな引用例1は、【発明の名称】を「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスの処理方法及び処理装置」とする特許文献であって、以下の事項が記載されている。

1a「【特許請求の範囲】
【請求項1】無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスを、鉄の酸化物又は合成ゼオライトと接触させた後、ハロゲンガスを除去することができるイオン交換樹脂に接触させることを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項2】前記イオン交換樹脂がアニオン交換樹脂である請求項1に記載の処理方法。」

1b「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスの処理方法及び装置に関する。このような排ガスは、例えば、半導体製造装置の内面等をドライクリーニングする際に排出される。」

1c「【0020】本発明の方法では、鉄の酸化物や合成ゼオライトで除去されずに排出されるCl_(2)等のハロゲンガス(X_(2))は、ハロゲンガスを除去することができるイオン交換樹脂、例えば、アニオン交換樹脂と接触させて反応させることにより、除去する。この反応の例を下記に示す。
【0021】X_(2)+(R_(1))(R_(2))(R_(3))N→ [(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)
(式中、R_(1)、R_(2)及びR_(3)は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子;アミノ基若しくは水酸基で置換されていてもよいC_(1)?C_(6)アルキル基;又は、ポリマー鎖の繰り返し単位若しくは繰り返し単位の一部であってもよい、C_(6)?C_(14)のアリール基である。
【0022】Xは、ハロゲン原子である。)」

1d「【0025】本発明に使用する鉄の酸化物は、3価の酸化鉄(Fe_(2)O_(3))を主体とするものが好ましい。」

1e「【0028】…アニオン交換樹脂は通常の市販品でよい。アニオン交換樹脂は水分量が多く、そのままではCl_(2)等のハロゲンガスの処理性能が低いため、水分量が5%以下になるように、熱劣化しない100℃の温度で8?12時間程度の間乾燥させたものを使用するのが好ましい。」

(2)引用例2
本願優先日前に頒布されたことが明らかな引用例2は、【発明の名称】を「ガス吸着剤及びこれを用いるガス処理方法」とする特許文献であって、以下の事項が記載されている。

2a「【特許請求の範囲】
【請求項1】窒素原子がアルキル化されていてもよいビニルアミンとポリビニル化合物とから主として成る構造の架橋共重合体であるガス吸着剤」

2b「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガス吸着剤及びこれを用いるガス処理方法に関するものである。特に本発明は、カチオン性官能基を有する粒状のガス吸着剤及びこれを用いて酸性ガスを処理する方法に関するものである。」

2c「【0016】本発明に係るガス吸着剤は通常は乾燥状態で使用される。通常はこのガス吸着剤をカラムに充填し、このカラムに吸着させようとするガスを含む気体を常温で流通させることにより吸着が行なわれる。吸着対象となるガスとしては、フッ素、塩素、臭素などのハロゲンガス、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、沃化水素、…などの酸性ガス、…等の低級ハロゲン化アルキル、…等のアルデヒド類などがあげられる。…
【0017】本発明に係るガス吸着剤からのガスの脱着は各種の方法により行なうことができる。吸着したガスの種類にもよるが、炭酸ガスやNO_(x) 等のように水洗するだけで脱着させることができる場合もある。通常は陰イオン交換樹脂の再生と同じく、塩基性水溶液で洗浄して脱着させる。」

2d「【0018】
【実施例】…なお、以下の実施例において、イオン交換容量は下記の方法により測定した。
イオン交換容量の測定方法
ガス吸着剤約15mlをカラムに充填し、2N-NaOH水溶液500mlを流し、次に脱塩水1000mlで洗浄し、対イオンをOH型にした。」

2e「【0022】実施例-2
…アニオン交換基中、3級アミンを90%以上含有するものと考えられる。ゲル型架橋共重合体であるため、比表面積は0m^(2) /gであった。」

2f「【0028】なお、第1表中「実施例2(再生)」とは、実施例2で得られたガス吸着剤を用いてそれぞれのガスの吸着量を測定したのち、湿式再生したものである。なお、再生は、ガスを吸着した樹脂をカラムに充填し、樹脂量に対して5(容量)倍の水を流して洗浄し、次いで2N-NaOH水溶液を5(容量)倍流してアミノ基を遊離型にすることにより行なった。その後、流出液が中性になるまで水洗したのち50℃で乾燥して次のガス吸着実験に供した。」

2 引用例1に記載された発明
引用例1は、「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスの処理方法」(摘示1b)等に関し、記載するものであって、具体的には、
「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスを、鉄の酸化物又は合成ゼオライトと接触させた後、ハロゲンガスを除去することができるイオン交換樹脂に接触させることを特徴とする排ガスの処理方法。」(摘示1a【請求項1】)が記載され、当該「ハロゲンガスを除去することができるイオン交換樹脂」は「アニオン交換樹脂」(摘示1a【請求項2】)であることが記載されている。
また、引用例1には、アニオン交換樹脂は水分量が多いとCl_(2)等のハロゲンガスの処理性能が低いため、「水分量が5%以下になるように…乾燥させたもの」を使用するのが好ましい(摘示1e)ことが記載されている。
また、引用文献1には、当該「鉄の酸化物」としては、「3価の酸化鉄(Fe_(2)O_(3))を主体とするもの」が好ましい(摘示1d)ことが記載されている。

そうすると、引用例1には、
「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスを、3価の酸化鉄(Fe_(2)O_(3))を主体とする鉄の酸化物又は合成ゼオライトと接触させた後、水分量が5%以下になるように乾燥させた、ハロゲンガスを除去することができるアニオン交換樹脂に接触させる排ガスの処理方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「無機ハロゲン化ガスを含有する排ガス」は、技術常識からみて、排ガス発生源から発生するものであることは明らかといえるから、本願発明の「排ガス発生源からの無機ハロゲン化ガスを含有する排ガス」に相当する。

引用発明の「ハロゲンガスを除去することができるアニオン交換樹脂」は、ハロゲンガスを除去する「処理」を行うことができるものであって、本願発明の「アニオン交換樹脂からなるハロゲンガス処理剤」に相当するから、引用発明の「3価の酸化鉄(Fe_(2)O_(3))を主体とする鉄の酸化物又は合成ゼオライトと接触させた後、水分量が5%以下になるように乾燥させた、ハロゲンガスを除去することができるアニオン交換樹脂に接触させる」は、本願発明の「最初にFe_(2)O_(3)又は合成ゼオライトと接触させた後、水分量5w/w%以下…のアニオン交換樹脂からなるハロゲンガス処理剤に接触させる」に相当する。

両者は、いずれも「排ガス処理方法」である点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「排ガス発生源からの無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスを最初にFe_(2)O_(3)又は合成ゼオライトと接触させた後、水分量5w/w%以下のアニオン交換樹脂からなるハロゲンガス処理剤に接触させる排ガスの処理方法。」
の点で一致し、以下のA、Bの点で相違する。

A アニオン交換樹脂が、本願発明は「ハロゲン含有量が10mg/g以下」であるのに対して、引用発明はそのようなものであるか明らかでない点(以下、「相違点A」という。)

B アニオン交換樹脂からなるハロゲンガス処理剤が、本願発明は「無機ハロゲン化ガスを吸着したアニオン交換樹脂を、アルカリ水溶液及び残留塩素量20mg/L以下の洗浄水を用いて再生したもの」であるのに対して、引用発明はそのようなものであるか明らかでない点(以下、「相違点B」という。)

4 相違点についての判断
(1)相違点Aについて
引用例1には、アニオン交換樹脂は、
「X_(2)+(R_(1))(R_(2))(R_(3))N→[(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)」
(摘示1c)の反応により、ハロゲンガスを除去するものであることが記載されている。
すなわち、引用例1には、当該反応式からみて、斯かる反応によってハロゲンを除去するためには、アニオン交換樹脂において、ハロゲン(X_(2) )と反応することができる上記式の左辺の遊離型のアミノ基((R_(1))(R_(2))(R_(3))N)を可及的に多く存在するものとすること、すなわち、既にハロゲンイオン(X^(-) )と結合しているためハロゲン(X_(2) )と反応することができない右辺のハロゲン塩型のアミノ基([(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)」)は0に近いもの(ハロゲン含有量が0mg/gに近いもの)とすることが望ましいこと、が示唆されているといえる。

そして、ハロゲン塩型のアミノ基([(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)」)が0に近いものであることは、アニオン交換樹脂のハロゲン含有量が0に近いものであることを意味するといえるところ、その上限の値をどの程度とするかは、アニオン交換樹脂のハロゲン除去効率等を考慮して当業者が容易に設定し得た事項であり、上限の値を「10mg/g」とすることによって、当業者が予測し得ない顕著な効果が奏されるものと認めることはできない(なお、本願明細書に掲載された【表1】や明細書に添付された【図3】には、アニオン交換樹脂のハロゲン含有量が多い程、ハロゲン吸着量が減少する傾向があることが示されているものと認められるが、例えば、【図3】のCl_(2)処理量(L/L)のデータ曲線をみるとCl吸着残留量(mg/g)が10mg/gは、Cl_(2)処理量(L/L)が連続的に減少するデータ曲線上の1点であって、アニオン交換樹脂のハロゲン含有量が10mg/gを境にして、その作用効果に大きな変化があるものと認めることはできず、上限の値を「10mg/g」とすることによって、当業者が予測し得ない顕著な効果が奏されるものとはいえない。)。そうすると、本願発明のアニオン交換樹脂のハロゲン含有量を「10mg/g」とした点の効果は、上記のハロゲンガスの除去の反応式(摘示1c)から、当業者が予測し得る範囲内のものといえる。

よって、引用発明のアニオン交換樹脂において、ハロゲン含有量の上限値を「10mg/g以下」とすることは、当業者が引用例1に記載された技術的事項に基づいて、容易になし得たことといえる。

(2)相違点Bについて
引用例2に、ガス吸着法や吸着対象ガスの記載に次いで、ガス吸着後の吸着剤の再生処理に関して、「ガスの脱着は各種の方法により行なうことができる」こと、「通常は陰イオン交換樹脂の再生と同じく、塩基性水溶液で洗浄して脱着させる」こと(摘示2c)が記載され、塩基性水溶液で洗浄して脱着させる方法が「陰イオン交換樹脂の再生と同じく」行われるものとされていること等からみて、アニオン交換樹脂からなるガス吸着剤において、ガス吸着後の吸着剤を塩基性水溶液で洗浄して脱着させることは、周知慣用の技術であったものと認められる。
そして、例えば、引用例2において、上記の周知慣用の手段を行ったものと認められる、実施例2(再生)に、「樹脂量に対して5(容量)倍の水を流して洗浄し、次いで2N-NaOH水溶液を5(容量)倍流してアミノ基を遊離型にすることにより行なった。その後、流出液が中性になるまで水洗」(摘示2f)して「湿式再生」し、次のガス吸着実験に再使用したことが記載されているように、塩基性水溶液で洗浄して脱着処理した後の吸着剤を水洗処理することも、周知慣用の技術と認められる。
すなわち、アニオン交換樹脂からなるガス吸着剤において、ガス吸着後の吸着剤を塩基性水溶液で洗浄して脱着させた後、水洗処理することは、引用例2に例示されるように、周知慣用の技術であったものと認められる。
(なお、引用例2は「窒素原子がアルキル化されていてもよいビニルアミンとポリビニル化合物とから主として成る構造の架橋共重合体であるガス吸着剤」(摘示2a、b)について記載するものであるが、当該ガス吸着剤は、実施例-2で製造される3級アミンを含有するアニオン交換樹脂(摘示2e)を含むものであり、当該ガス吸着剤の被吸着ガスは、ハロゲンガス等であること(摘示2c)が記載されていること等からみて、引用例2のガス吸着剤は、引用発明の「ハロゲンガスを除去することができるアニオン交換樹脂」を含むものといえる。)。

そして、吸着剤を使い捨てにするのでなく、再生処理して再使用することは普通に行われるものであることを考慮すると、引用発明の「ハロゲンガスを除去することができるアニオン交換樹脂」においても、排ガス処理後のハロゲン塩形になって吸着したハロゲンを、引用例2に例示される周知慣用の再生処理技術、すなわち、ガス吸着後の吸着剤を塩基性水溶液で洗浄して脱着させた後、水洗処理する方法によって再生処理して再使用することは、コスト削減等の観点から当業者が容易になし得たことと認められる。

ここで、引用例2においては、水洗処理する際の洗浄液として、どのようなものを用いるかについての明示の記載はない。
しかしながら、アニオン交換樹脂を再生するとは、引用例1に記載された「X_(2)+(R_(1))(R_(2))(R_(3))N→[(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)」(摘示1c)の反応によりハロゲンイオン(X^(-))が吸着した右辺の塩型のアニオン交換樹脂([(R_(1))(R_(2))(R_(3))N]^(+)・X^(-)」)からハロゲンイオン(X^(-))を除去することによって、左辺の遊離のアミノ基のもの((R_(1))(R_(2))(R_(3))N)として、右辺の塩型のものを少なくする工程に他ならないから、ガス吸着後の吸着剤を塩基性水溶液で洗浄して脱着させた後、水洗処理する、という周知慣用の再生方法を採用するに際して、洗浄液として、一旦ハロゲンイオン(X^(-))を除去して左辺の遊離のアミノ基としたもの((R_(1))(R_(2))(R_(3))N)がハロゲンイオン(X^(-))と吸着して右辺の塩型のものに戻ってしまうことがないような洗浄液、すなわち、ハロゲン含有量の可及的に少ない洗浄液を採用すべきことは、当業者にとって当然のことと認められる(ハロゲンは、上記式により遊離アミノ基と塩を形成するものであることから、塩基性水溶液で洗浄して脱着させる方法における洗浄水として、残留塩素量が可及的に0mg/gに近いものを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。)。

さらに、例えば引用例2に、吸着剤の調整時のアルカリ処理後の洗浄液に、「脱塩水」(水道水から塩素やイオンを除去したもの。水道水の残留塩素含量が通常0.1mg/L以下程度であることが周知の技術的事項であることを考慮すると、水道水から塩素やイオンを除去したものである「脱塩水」の残留塩素含量は、0.1mg/L以下といえる。)という低ハロゲン含有水を用いることが記載されている(摘示2d)ように、イオン交換樹脂の脱ハロゲン化処理における洗浄水に、脱塩水や、残留塩素量が20mg/Lより大幅に低い(0.1mg/L以下)水道水を用いることは、周知慣用の技術と認められる(この点に関し、必要であれば、例えば、特開昭53-115659号公報の実施例1(水道水を使用)、特開昭59-92028号公報の実施例1(純水を使用)等参照。すなわち、イオン交換樹脂の洗浄において残留塩素量が20mg/Lを超えるようなハロゲン含有量が多い洗浄水を使用しないことの方が、むしろ、普通のことと認められる。)。

なお、本願明細書に掲載された【表3】や明細書に添付された【図4】には、洗浄水の残留塩素量が少ないと、アニオン交換樹脂の塩素含有量が少ない傾向が示されているものと認められるが、洗浄水の残留塩素量が少なければ洗浄水から樹脂中へ取り込まれる塩素の量が少ない傾向となるであろうことは当業者にとって明らかなことと認められるから、洗浄水の残留塩素量を「20mg/L以下」とすることによって、アニオン交換樹脂の塩素含有量が少ないものであったとしても、当業者が予測し得ない程の顕著な効果とは認められない(そもそも、周知慣用の洗浄液と認められる脱塩水や水道水を使用すれば当然に奏されるものとも推認される。)。

よって、引用発明の「アニオン交換樹脂」において、無機ハロゲン化ガスを吸着したアニオン交換樹脂を、アルカリ水溶液及び(慣用の水道水等の)残留塩素量20mg/L以下の洗浄水を使用して再生したものとすることは、当業者が引用例2等に例示される周知技術に基づいて、容易になし得たことといえる。

5 まとめ
そうすると、上記の相違点A、Bに係る本願発明の構成の点は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第1項第2号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-04 
結審通知日 2016-02-05 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2013-558847(P2013-558847)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊岡田 三恵  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 永田 史泰
新居田 知生
発明の名称 無機ハロゲン化ガスを含有する排ガスの処理方法  
代理人 松山 美奈子  
代理人 小野 新次郎  

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