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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1313386 |
審判番号 | 不服2015-9774 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-26 |
確定日 | 2016-04-05 |
事件の表示 | 特願2013-558351「改良された接触接続部を有する直接差込み部材」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/123218、平成26年 5月15日国内公表、特表2014-511557〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年2月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2011年3月14日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月22日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年2月3日付け(発送日:同年2月9日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年5月26日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成26年10月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 電気的なコンタクトの接触接続用の直接差込み部材であって、 -2つの部分から成る、ばね弾性的なダイレクトコンタクト(2)を有しており、該ダイレクトコンタクト(2)は、 -別個の第1のばね部材(3)と、 -別個の第2のばね部材(4)とを備えており、 -前記第1のばね部材(3)と、前記第2のばね部材(4)とは、接触方向(K1)に見て相前後して配置されており、 -前記第1のばね部材(3)の第1のばね力(F1)と、前記第2のばね部材(4)の第2のばね力(F2)とは、実質的に同じ方向に向けられており、 -前記第2のばね部材(4)は、コンタクト領域(40)を有しており、 -更に、圧着部材(5)が設けられていて、該圧着部材(5)は、前記第1及び第2のばね部材(3,4)を位置固定していることを特徴とする、直接差込み部材。」 第3 刊行物に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平7-45322号公報(以下、「刊行物」という。)には、「雌型コンタクト」に関し、図面(特に、【図1】ないし【図3】参照)とともに、次の事項が記載されている。 1 「【0012】雌型コンタクト10は、所定形状に打ち抜かれた黄銅等の銅合金板12を折り曲げることにより形成され、雄型コンタクトを受け入れる雄型コンタクト受入部14と電線が圧着される電線圧着部16を備えて構成されている。雄型コンタクト受入部14は上壁18、側壁20,22、底壁24を有したほぼ箱形であり、この雄型コンタクト受入部14の内部には、曲げ部26から後方内側に折り曲げられ、雄型コンタクト(図示せず)に接触する突起30aを有する接触部30と傾斜部28を備えたばね片32が、ばね性をもって配置されている。このばね片26と上壁18との間に雄型コンタクト(図示せず)が受け入れられ挟持されるが、突起30aを雄型コンタクトに接触させているため、ばね片32と雄型コンタクトとの接触圧力が増大する。上壁18の突起18aはスリット18bに差し込まれており、底壁24にはハウジングのアーム(図示せず)が挿入される孔24aが形成されている。また、雄型コンタクト受入部14には、ばね片26の他に、ばね片32よりも高い弾性率を有するステンレス鋼製のばね部材34が配置されている。このばね部材34は、銅合金板12を折り曲げる前に、底壁24の孔24bに底部36の突起36aを挿入し銅合金板12を曲げることにより底壁24に取り付けられており、押上部40は接触部30に下方から接触し、傾斜部38は主にばね作用を担いばね片32を上壁18に向けて付勢する。 【0013】雄型コンタクト(図示せず)が傾斜部28に案内されて雄型コンタクト受入部14に受け入れられると、雄型コンタクトによりばね片32は下方に押されるが、ばね性をもっているためこのばね片32と上壁18とで雄型コンタクトを挟持する。一方、ばね片32よりも高い弾性率を有するばね部材34は、ばね片32の下方からこのばね片32を上壁18に向かって付勢するため、ばね片32と上壁18だけで挟持するよりも強い接触圧力で雄型コンタクトが挟持される。従って、激しい振動があっても雄型コンタクトが雌型コンタクト10の上壁18から離れることがほとんどなく、たとえ一瞬の間、雄型コンタクトが上壁18から離れたとしても、雄型コンタクトは銅合金製のばね片32と常に接触した状態であり、ステンレス鋼製のばね部材34と接触することがないため接触抵抗の上昇を低く抑えることができ、ノイズの発生等を防止できる。また、受け入れられた雄型コンタクトは、ばね片32とこのばね片32よりも高い弾性率を有するばね部材34で上壁18に押し付けられるため、雌型コンタクト10の配列ピッチが2mm以下になってばね片32の幅が小さくなっても所望の接触圧力が得られる。」 2 上記記載事項1、【図1】及び【図3】から、 雄型コンタクト受入部14と電線が圧着される電線圧着部16を備えた雌型コンタクト10であって、ばね部材34と、ばね片32とを備えており、ばね部材34と、ばね片32とは、接触方向に見て相前後して配置されており、ばね部材34は、ばね片32の下方からこのばね片32を上壁18に向かって付勢しており、ばね片32は、突起30aを有しており、更に、底壁24の孔24bと底部36の突起36aが設けられていて、ばね部材34は、電線圧着部16と一体になっている底壁24の孔24bに底部36の突起36aを挿入し銅合金板12を曲げることにより底壁24に取り付けられている雌型コンタクト10が看て取れる。 これらの記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「雄型コンタクト受入部14と電線が圧着される電線圧着部16を備えた雌型コンタクト10であって、 ばね部材34と、 ばね片32とを備えており、 ばね部材34と、ばね片32とは、接触方向に見て相前後して配置されており、 ばね部材34は、ばね片32の下方からこのばね片32を上壁18に向かって付勢しており、 ばね片32は、突起30aを有しており、 更に、電線圧着部16と一体になっている底壁24の孔24bと底部36の突起36aが設けられていて、ばね部材34は、底壁24の孔24bに底部36の突起36aを挿入し銅合金板12を曲げることにより底壁24に取り付けられている雌型コンタクト10。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「雄型コンタクト受入部14と電線が圧着される電線圧着部16を備えた雌型コンタクト10」は、その機能、構造からみて、本願発明の「電気的なコンタクトの接触接続用の直接差込み部材」に相当する。同様に、「ばね部材34と、ばね片32とを備えて」いることは「2つの部分から成る、ばね弾性的なダイレクトコンタクト(2)を有しており、該ダイレクトコンタクト(2)は、別個の第1のばね部材(3)と、別個の第2のばね部材(4)とを備えて」いることに、「ばね部材34と、ばね片32とは、接触方向に見て相前後して配置されており、ばね部材34は、ばね片32の下方からこのばね片32を上壁18に向かって付勢しており、ばね片32は、突起30aを有して」いることは「第1のばね部材(3)と、第2のばね部材(4)とは、接触方向(K1)に見て相前後して配置されており、第1のばね部材(3)の第1のばね力(F1)と、第2のばね部材(4)の第2のばね力(F2)とは、実質的に同じ方向に向けられており、第2のばね部材(4)は、コンタクト領域(40)を有して」いることに、それぞれ相当する。 以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「電気的なコンタクトの接触接続用の直接差込み部材であって、 2つの部分から成る、ばね弾性的なダイレクトコンタクト(2)を有しており、該ダイレクトコンタクト(2)は、 別個の第1のばね部材(3)と、 別個の第2のばね部材(4)とを備えており、 第1のばね部材(3)と、第2のばね部材(4)とは、接触方向(K1)に見て相前後して配置されており、 第1のばね部材(3)の第1のばね力(F1)と、第2のばね部材(4)の第2のばね力(F2)とは、実質的に同じ方向に向けられており、 第2のばね部材(4)は、コンタクト領域(40)を有している直接差込み部材。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点] 本願発明では、「圧着部材(5)が設けられていて、該圧着部材(5)は、前記第1及び第2のばね部材(3,4)を位置固定している」のに対して、引用発明では、「電線圧着部16と一体になっている底壁24の孔24bと底部36の突起36aが設けられていて、ばね部材34は、底壁24の孔24bに底部36の突起36aを挿入し銅合金板12を曲げることにより底壁24に取り付けられている」点。 第5 判断 相違点について検討する。 引用発明において、「ばね部材34」は、「電線圧着部16と一体になっている底壁24の孔24b」に「底部36の突起36a」を挿入し銅合金板12を曲げることにより「底壁24に取り付けられて」いる。 また、刊行物の【図1】ないし【図3】から、「ばね片32」は、「電線圧着部16と一体になっている底壁24」と一体成形されていると解される(本願の請求項10で限定された構成。)。 そうすると、「電線圧着部16と一体になっている底壁24」に「底部36の突起36a」を挿入し銅合金板12を曲げることにより「底壁24に取り付けられて」いることによって、「ばね部材34」と「ばね片32」は、実質的に「位置固定している」といえる。 したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。 仮に、相違するとしても、上記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものである。 よって、本願発明は、引用発明と実質的に同一であり、仮に、そうでないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に成し得たものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮に、そうでないとしても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-02 |
結審通知日 | 2015-11-09 |
審決日 | 2015-11-20 |
出願番号 | 特願2013-558351(P2013-558351) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
大内 俊彦 小柳 健悟 |
発明の名称 | 改良された接触接続部を有する直接差込み部材 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 久野 琢也 |