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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1313442
審判番号 不服2015-9580  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-25 
確定日 2016-04-13 
事件の表示 特願2011-116656「部品装着プログラム及び部品装着機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-248562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年5月25日の出願であって、平成26年11月27日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年1月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月17日付け(発送日:3月19日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成27年1月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「部品装着機の複数種の吸着ノズルを使用して、予め決められた装着順に部品を吸着して回路基板に装着する部品装着プログラムにおいて、
装着順に部品種、装着位置及び使用する吸着ノズルの種類を指定した装着シーケンスが設定され、
前記装着シーケンスで指定された部品種が同じ場合は、該装着シーケンスで指定された吸着ノズルの種類が異なっても、同じフィーダから供給される部品を吸着するように設定されていることを特徴とする部品装着プログラム。」

3.刊行物に記載された事項及び発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された特開2007-142216号公報(以下「刊行物1」という。)には、「部品実装方法およびノズル割付け方法」に関し、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.「【0001】
本発明は、先端に部品吸着用のノズルを備えたヘッドにより電子部品を吸着してプリント基板等の基板上に搬送して実装するように構成された表面実装機における部品の実装方法およびノズル割付け方法に関するものである。」

イ.「【0007】
上記課題を解決するために、本発明の部品実装方法は、部品吸着用のノズルを先端に備えた実装用のヘッドにより部品を吸着して基板上に実装する表面実装機の部品実装方法であって、前記ノズルとして部品の種類毎にその種類の部品を吸着可能な複数種類のノズルを予め定めておき、一種類の部品について前記複数種類のノズルを使い分けて当該部品の実装を行うようにしたものである(請求項1)。」

ウ.「【0008】
このように共通の部品に対して複数種類のノズルを使い分けるようにすれば、より多種類の部品を、ノズル交換を行うことなく実装することが可能となる。また、部品の搭載順序に関して制約を受け難くなる。例えば、当該部品の最適ノズルに使用制約が課せられている場合(先に実装された部品とノズルが干渉するため使用できない場合)でも、当該部品を吸着可能な他のノズルであって当該制約を受けないものを使用することにより部品の搭載順序を変更することなく部品を実装することが可能となる。」

エ.「【0035】
各種データ記憶手段33は、割付けデータの作成に必要なデータをはじめとして実装作業に必要な各種データを記憶するもので、基板Pのどのポイント(座標)にどの部品を実装するか、また既に部品が基板Pに実装されている場合にはそのポイントや部品の種類等に関する基板関連データ、ノズルの種類、形状、ノズルステーション16に収納されるノズル21の種類や収納位置に関するノズル関連データ、部品の種類、その供給位置および部品を吸着可能なノズルの種類等に関する部品関連データ、基板Pに対する部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データ等の各種データが記憶されている。」

オ.「【0060】
そして、このように共通の部品に対して複数種類のノズル21を使い分けながら実装作業を進めるように構成されている結果、部品の搭載順序に関しても制約を受け難くいという利点がある。すなわち、この実装機では、上記の通り最適化プログラムに従い部品の搭載順序が定められているため、この順序に従って実装作業を進めることで効率的に実装作業を進めることが可能となるが、従来のように部品とノズルとが一対一対応の場合、例えば部品を保持したノズルが先に実装された部品に干渉するために当該搭載順序で部品を実装することができない場合には、それ以外のノズルを使用することができないため、いきおい搭載順序の変更を余儀なくされる。これに対して、実施形態の実装機では、上述した通り(図5(c)の例)、複数種類のノズル21のうちから干渉を伴わないノズル21を選定して実装作業を進めることができるため、部品の搭載順序に関しても制約を受け難く、より確実に、最適化プログラムに基づいて決定された最適な搭載順序に従って実装作業を進めることができるようになる。」

上記記載事項ア、イ、ウによれば、刊行物1に記載された「先端に部品吸着用のノズルを備えたヘッドにより電子部品を吸着してプリント基板等の基板上に搬送して実装するように構成された表面実装機」は複数種類のノズルを使用するものであり、複数種類のノズルを使い分ける装置であると認められる。
そして、その装置は、記載事項エのとおり、「各種データ記憶手段33」に「ポイント(座標)」、「部品の種類、その供給位置および部品を吸着可能なノズルの種類」、「部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データ」等が記憶されており、記載事項オのとおり、共通の部品に対して複数種類のノズル21を使い分けながら実装作業を進めるように構成されているものである。この表面実装機の実装作業はプログラムに基づいて実行されることは明らかであるから、部品実装プログラムの発明を把握できる。

上記記載事項及び認定事項を総合して、表面実装機の部品実装プログラムを本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「表面実装機の複数種類の部品吸着用ノズルを使用して、部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データに従って電子部品を吸着してプリント基板等の基板上に搬送して実装する部品実装プログラムにおいて、
データ記憶手段33に記憶された、ポイント(座標)、部品の種類、その供給位置および部品を吸着可能なノズルの種類、部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データ等により、
共通の部品に対して複数種類のノズル21を使い分けながら実装作業を進める部品実装プログラム。」

(2)同じく引用された、本願の出願日前に頒布された特開2004-207372号公報(以下「刊行物2」という。)には、「電子回路部品装着機および電子回路部品装着方法」に関し、次の事項が記載されている。

カ.「【要約】
【課題】装着能率の低下を回避しつつ、吸着ノズルの吸着端面と電子回路部品との位置ずれに対処する電子回路部品装着機,装着方法を提供する。」

キ.「【0018】
Y軸スライド82には、軸110が垂直なZ軸方向に平行な方向に移動可能かつ軸線まわりに回転可能に設けられ、その下端部に同心に設けられたホルダ112によって部品保持具としての吸着ノズル114が着脱可能に保持される。本実施形態においては、軸110およびホルダ112が部品装着ヘッド60を構成している。」

ク.「【0026】
部品装着プログラムは、例えば、プリント配線板14上の複数の部品装着点を規定する座標,装着時における部品20の姿勢(回転位置),各部品装着位置に装着される部品20を供給するフィーダ30のフィーダ支持台32への搭載位置等が互いに対応付けられるとともに、装着順序が設定されたシーケンスデータ,フィーダ30の搭載位置と、フィーダ30により供給される部品20とを対応付ける部品搭載データおよびパーツデータジェネレータ(PDG)238から供給された各部品20の部品情報等を含む。フィーダ30の搭載位置から部品取出し位置が得られる。部品取出し位置は、吸着ノズル114がフィーダ30から部品20を取り出すべくホルダ112が移動させられる位置であって、部品20を受け取る位置であり、フィーダ30のカバー48の開口52内に位置する部品20を取り出すべく、フィーダ30毎に、その搭載位置に応じて予め設定されている。本実施形態においてはまた、部品20の各々について、部品20を吸着する吸着ノズル114の種類が設定されている。例えば、部品20の寸法,形状により、使用される吸着ノズル114の種類が設定され、PDG238に部品毎に記憶されている。吸着ノズル114の種類は、PDG238とは別の記憶手段に記憶させてもよい。本実施形態においては、小形の部品20は、平面形状(平面視形状)が四角形、すなわち長方形および正方形であるとする。小形の部品20には、例えば、直方体状の部品、立方体状の部品および断面形状が円形のメルフ型部品が含まれる。なお、平面視形状は、概して四角形であればよく、例えば、4つの頂点の少なくとも1つが切り欠かかれていたり、あるいは円弧状とされていてもよい。」

ケ.「【0032】
次に、部品装着ヘッド60は、XYロボット96によりフィーダ30から部品20を取り出す部品取出し位置へ移動させられて部品20を取り出す。
フィーダ30からの部品20の取出しが1回目であれば、吸着ノズル114は、吸着端面124のずれのない正規の位置に対する位置ずれ量に基づいて補正された部品取出し位置へ移動させられる。本実施形態においては、部品20の種類毎に、部品20を吸着する吸着ノズル114の種類が設定されており、フィーダ30から部品20を取り出す吸着ノズル114は決まっている。部品取出し位置へ到達すれば、部品装着ヘッド60がヘッド昇降装置104により昇降させられ、吸着ノズル114に負圧が供給されることにより部品20が吸着され、フィーダ30から取り出される。3組の部品装着ヘッド60は、順次、部品取出し位置へ移動させられて吸着ノズル114が部品20を吸着する。」

コ.「【0084】
また、部品供給具と、部品供給具から部品を取り出す吸着ノズルとの組み合わせが決まっておらず、同じ部品供給具から異なる吸着ノズルが部品を取り出す場合、例えば、部品装着装置が同じ種類の吸着ノズルを複数備え、それら吸着ノズルが同じ部品供給具から部品を取り出すことがある場合、吸着端面と部品との位置ずれは、部品供給具と吸着ノズルとの組合わせと対応付けて記憶させ、その組合わせに応じて、部品取出し位置の補正量を求める。」

上記記載事項ク、ケ、コからみて、刊行物2には、次の技術事項が記載されている。
「部品20の種類毎に、部品20を吸着する吸着ノズル114の種類が設定されており、フィーダ30から部品20を取り出す吸着ノズル114は決まっているが、部品供給具と、部品供給具から部品を取り出す吸着ノズルとの組み合わせが決まっておらず、同じ部品供給具から異なる吸着ノズルが部品を取り出す場合、吸着端面と部品との位置ずれは、部品供給具と吸着ノズルとの組合わせと対応付けて記憶させ、その組合わせに応じて、部品取出し位置の補正量を求めること。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「表面実装機」は、その機能・作用・構造からみて、本願発明の「部品装着機」に相当し、同様に、「部品吸着用のノズル」は「吸着ノズル」に、「プリント基板等の基板」は「回路基板」に、「部品実装プログラム」は「部品装着プログラム」に、「部品の種類」は「部品種」に、「ポイント(座標)」は「装着位置」に、「搭載順序」は「装着順」に、「部品を吸着可能なノズルの種類」は「使用する吸着ノズルの種類」にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明の「表面実装機の複数種類の部品吸着用ノズルを使用して、部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データに従って電子部品を吸着してプリント基板等の基板上に搬送して実装する部品実装プログラム」は本願発明の「部品装着機の複数種の吸着ノズルを使用して、予め決められた装着順に部品を吸着して回路基板に装着する部品装着プログラム」に相当し、
引用発明の「データ記憶手段33に記憶された、ポイント(座標)、部品の種類、その供給位置および部品を吸着可能なノズルの種類、部品の能率的な搭載順序を定めた搭載順序データ等」は本願発明の「装着順に部品種、装着位置及び使用する吸着ノズルの種類を指定した装着シーケンス」に相当する。

以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、
「部品装着機の複数種の吸着ノズルを使用して、予め決められた装着順に部品を吸着して回路基板に装着する部品装着プログラムにおいて、
装着順に部品種、装着位置及び使用する吸着ノズルの種類を指定した装着シーケンスが設定されている、
部品装着プログラム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、「前記装着シーケンスで指定された部品種が同じ場合は、該装着シーケンスで指定された吸着ノズルの種類が異なっても、同じフィーダから供給される部品を吸着するように設定されている」のに対して、引用発明では、「共通の部品に対して複数種類のノズル21を使い分けながら実装作業を進める」ものである点。

5.判断
刊行物2記載の技術事項は、上記3.(2)のとおりであるところ、記載事項コには「同じ部品供給具から異なる吸着ノズルが部品を取り出す場合」に関し、その例示として「部品装着装置が同じ種類の吸着ノズルを複数備え、それら吸着ノズルが同じ部品供給具から部品を取り出すことがある場合」と記載されている。
この記載によれば、同じ種類の吸着ノズルが「異なる」ノズル保持ヘッドに保持され、当該異なるノズル保持ヘッドのそれぞれが、「同じ部品供給具から部品を取り出す」のであるから(記載事項ケ参照)、異なるノズル保持ヘッドが同じフィーダに移動して、該ヘッドに保持される吸着ノズルが部品を吸着すると解される。
ところで、引用発明は、部品の種類毎に当該部品を吸着可能な複数種類のノズルを定め(図3参照)、先に実装された部品とノズルが干渉する場合、定められた複数種類のノズルの内、干渉しないノズルにより当該部品を吸着するものである。
具体的には、部品Aは、識別ナンバー1、2、3という異なる種類のノズルで吸着可能であり(図3参照)、部品Aを吸着する際に識別ナンバー1のノズルでは干渉してしまう場合、識別ナンバー2のノズルにより、同じ部品Aを吸着するのである。
また、識別ナンバー1と2の各ノズルは、異なる実装用ヘッド(図2参照)に装着されることは明らかであるところ、刊行物2記載の上記「異なるノズル保持ヘッドが同じフィーダに移動」するとの技術事項からみて、引用発明における(異なるノズルが装着された)異なる実装用ヘッドを、同じフィーダに移動するようにすることは困難なことではない。

以上のとおりであるから、刊行物2記載の技術事項に基いて、部品種が同じ場合は吸着ノズルが異なっても同じフィーダから部品を吸着するよう設定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明の技術事項から当業者が予測し得た程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-12 
結審通知日 2016-02-15 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2011-116656(P2011-116656)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 秀明  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 内田 博之
森川 元嗣
発明の名称 部品装着プログラム及び部品装着機  
代理人 加古 宗男  

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