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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1313444
審判番号 不服2015-13001  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-08 
確定日 2016-04-14 
事件の表示 特願2011-63932「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-199190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年3月23日の出願であって、平成26年12月16日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成27年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年6月2日)、これに対し、同年7月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年1月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
端子を収容しこの端子の角筒状の接続部側が開口された端子収容室と、この端子収容室の開口側に設けられ前記端子の下面側を支持する端子支持部と、前記端子収容室内に撓み可能に設けられ前記端子に係止される係止ランスとを備えたコネクタであって、
前記端子には、前記端子支持部に支持された状態で前記端子支持部より下方に突出する被係合突部が前記角筒状の接続部の全幅に亘って設けられ、前記係止ランスは、前記端子支持部より下方に位置され前記被係合突部と係合する係合部が設けられ、前記係合部は、前記端子の前記被係合突部の全幅に亘って設けられていることを特徴とするコネクタ。」

第2 刊行物
1 刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された実願昭56-166559号(実開昭58-71986号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、「電子機器用コネクタ」に関して、図面(特に、第2図、第3図、第5図参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「本考案の目的は、上述の欠点を解消し、スリットを除去して接続端子の揺動を防ぐ」(3ページ13行?14行)

(2)「本考案を第2図以下に図示する実施例に基づいて詳細に説明する。
第2図(a) 、(b)に於いて、10は挿込接続端子11用の合成樹脂の絶縁体から成るハウジングであり、相手側コネクタとの接続側の前端面から内方に向けて、接続端子11の接続部12を挿入する断面矩形状の角筒部13が形成され、その延長上に接続端子11の係止部14、電線圧着部15を収納する収納部16が設けられている。更に角筒部13の上壁17及び収納部16と、これらの上方の外壁18との間には空間部19が設けられている。そしてこの空間部19内には外壁18の後端側の一部を基部とした弾発性を有する端子係止用アーム20が片持梁状に勾配を有して接続端子11の係止部14に向って垂れ下げられている。この端子係止用アーム20の最下端の遊端21は、角筒部13の上壁17と同等以上の高さを有しており、射出成型時の型抜が容易になし得るようになっている。接続端子11の係止部14の上端部22は、角筒部13の上壁17よりも上方に突出され、その後縁が端子係止用アーム20の遊端21と係合されている。第3図(a)、(b)に示すように係止部14の上端部22は橋絡状に形成されており、その前縁は折返されて曲面状になっており、接続端子11の挿入時に端子係止用アーム20を押上げ易いようにされている。
このコネクタを組立てるには、接続端子11の接続部12をハウジング10の角筒部13に嵌挿して前進させれば、係止部14の上端部22が端子係止用アーム20の遊端21を押上げる。そして上壁17により接続端子11の前進が阻止されると共に、端子係止用アーム20は接続端子11の上端部22から外れて原位置に復元し所定の係止がなされる。この場合の端子係止用アーム20の押上げに際しては、上端部22の曲率により端子係止用アーム20の下面が損傷されることなく円滑な作用が行なわれる。
かくすることにより従来不可欠とされていた第1図(a)、(b)に於けるスリット6は不要となり、接続端子11をその分だけ強固に固定することが可能となる。又、接続端子11の接続部12の幅と殆ど関係なく端子係止用アーム20の幅を決定することができ、小型の接続端子11を有するコネクタの実現は極めて容易である。」(4ページ9行?6ページ12行)

(3)「上述の実施例では、接続端子11の接続部12を収容する筒状部を角筒部13としたが、例えば第5図(a)に示すように円筒状の接続部12aを有する接続端子11aの場合は(b)、(c)に示すハウジング10aの筒状部13aを円筒状とすればよい。この場合の係止部14aと端子係止用アーム20aとの関係は前述の実施例と同様である。」(7ページ3行?7ページ10行)

(4)第2図(a)には、次の事項が示されている。
ア 収納部16の接続部12側が開口され、この収納部16の開口側に設けられた角筒部13の上壁17が接続端子11の接続部12の上面側と対向すること。
そして、角筒部13の上壁17と接続部12の上面側との間に遊びが有れば接続端子31が上下に揺動するところ、上記(1)の「本考案の目的は、・・・スリットを除去して接続端子の揺動を防ぐ」との記載からみて、角筒部13の上壁17と接続部12の上面側との間に遊びはなく、角筒部13の上壁17は接続端子11の上面側を保持しているといえる。

イ 係止部14の上端部22が、上壁17に支持された状態で上壁17より上方に突出すること。

ウ 端子係止用アーム20には、上壁17より上方に位置され上端部22と係合する遊端21が設けられること。

(5)第2図(b)には、第2図(a)とあわせみると、端子係止用アーム20の遊端21が接続端子11の上端部22の両側端間より短く設けられることが示されている。

(6)第3図(a)及び(b)には、接続端子11の接続部12が板状であり、上端部22が板状の接続部12の両側端間より長く設けられることが示されている。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、第2図及び第3図に示された実施例に関し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「接続端子11を収容しこの接続端子11の板状の接続部12側が開口された収納部16と、この収納部16の開口側に設けられ前記接続端子11の上面側を保持する角筒部13の上壁17と、前記収納部16内に原位置に復元するように設けられ前記接続端子11に係止される端子係止用アーム20とを備えたコネクタであって、
前記接続端子11には、前記上壁17に支持された状態で前記上壁17より上方に突出する係止部14の上端部22が前記板状の接続部12の両側端間より長く設けられ、前記端子係止用アーム20は、前記上壁17より上方に位置され前記上端部22と係合する遊端21が設けられ、前記遊端21は、前記接続端子11の前記上端部22の両側端間より短く設けられている電子機器用コネクタ。」

2 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された国際公開第2004/114467号(以下「刊行物2」という。)には、「接続端子」に関して、図面(特に、図6参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「発明が解決しようとする課題
[0004] しかし、近年ではコネクタの小型化、多極化が要求されており、内部に組み込む接続端子1も小型化されている。係止ランスは接続部2の幅からスタビライザ部3の幅を差し引いた大きさとしなければ、接続端子1は係止ランスを潜り抜けてハウジング内に挿入することができないために、係止ランスの幅は益々狭くなって、接続端子の係止力が十分に得られなくなっている。」

(2)「[0018] そして、接続部11がハウジング32に挿入される際に、ハウジング32に設けられた可撓性・弾発性を有する係止ランス33が押し上げられ、接続部11は係止ランス33の下を潜り抜けて前方に達する。このとき、スタビライザ部17は接続端子の下部に形成されているので、係止ランス33はスタビライザ部17と関係なく、その幅を広く設計でき、幅を接続部11の幅と同等程度とすることが可能となり、係止ランス33による係止部19への当接による係止力を大きくすることができる。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「接続端子11」は前者の「端子」に相当し、以下同様に、「接続部12」は「接続部」に、「収納部16」は「端子収容室」に、接続端子11を「保持する」ことは端子を「支持する」ことに、「角筒部13の上壁17」は「端子支持部」に、「端子係止用アーム20」は「係止ランス」に、「原位置に復元するように設けられ」ることは「撓み可能に設けられ」ることに、「電子機器用コネクタ」は「コネクタ」に、「係止部14の上端部22」は「被係合突部」に、「遊端21」は「係合部」にそれぞれ相当する。

また、後者の「接続端子11の上面側」と前者の「端子の下面側」とは、「端子の一面側」という限りで共通し、後者の上端部22が「前記上壁17前記端子支持部より上方に位置」することと前者の被係合突部が「前記端子支持部より下方に位置」することとは、被係合突部が「端子支持部より一方に位置」することという限りで共通する。

本願発明の「被係合突部が前記角筒状の接続部の全幅に亘って設けられ」るとの事項に関して、一般に「全幅」とは「はばいっぱい。」(広辞苑第5版第1刷)を意味し、「亘って」とは「広がり及ぶ。通じる。」(同)ことを意味することに照らせば、上記事項は、被係合突部が接続部の幅いっぱいに広がり及んで設けられることと解される。そうすると、後者は上端部22が接続部12の幅いっぱいに広がり及んで設けられているから、後者の「係止部14の上端部22が前記板状の接続部12の両側端間より長く設けられ」ることと前者の「被係合突部が前記角筒状の接続部の全幅に亘って設けられ」ることとは、「被係合突部が接続部の全幅に亘って設けられ」ることという限りで共通する。

したがって、両者は、
「端子を収容しこの端子の接続部側が開口された端子収容室と、この端子収容室の開口側に設けられ前記端子の一面側を支持する端子支持部と、前記端子収容室内に撓み可能に設けられ前記端子に係止される係止ランスとを備えたコネクタであって、
前記端子には、前記端子支持部に支持された状態で前記端子支持部より一方に突出する被係合突部が前記接続部の全幅に亘って設けられ、前記係止ランスは、前記端子支持部より一方に位置され前記被係合突部と係合する係合部が設けられるコネクタ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、接続部が「角筒状」であるのに対し、引用発明は、接続部12が「板状」である点。

〔相違点2〕
本願発明は、端子支持部が端子の「下面側」を支持し、被係合突部が前記端子支持部より「下方」に突出し、係合部が前記端子支持部より「下方に」位置するのに対し、
引用発明は 上壁17が接続端子11の「上面側」を支持し、係止部14の上端部22が上壁17より「上方」突出し、遊端21が上壁17より「上方」に位置する点。

〔相違点3〕
本願発明は、「前記係合部は、前記端子の前記被係合突部の全幅に亘って設けられている」のに対し、
引用発明は、「前記遊端21は、前記接続端子11の前記上端部22の両側端間より短く設けられている」点。

第4 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
1 相違点1について
刊行物1の「上述の実施例では、接続端子11の接続部12を収容する筒状部を角筒部13としたが、例えば第5図(a)に示すように円筒状の接続部12aを有する接続端子11aの場合は(b)、(c)に示すハウジング10aの筒状部13aを円筒状とすればよい。」(前記「第2」「1」「(3)」)との記載からみて、刊行物1には、引用発明の接続部12の形状を変更することが示唆されいる。

本願の出願前に、端子の接続部を角筒状に形成することは、周知技術(例えば、刊行物2の図1ないし図3の接続部11、特開2002-280106号公報の図7の接続部103参照。)である。

そうすると、刊行物1の上記記載からみて、引用発明において、上記周知技術を適用して、接続部12を角筒状とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
刊行物1の前記「第2」「1」「(2)」の記載及び第2図からみて、引用発明の電子機器用コネクタが上下逆転可能であることは明らかである。

そうすると、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明を上下逆転させた場合を表したにすぎないから、相違点2は、実質的な相違点ではない。

3 相違点3について
刊行物1の「接続端子11の接続部12の幅と殆ど関係なく端子係止用アーム20の幅を決定することができ」(前記「第2」「1」「(2)」)るとの記載からみて、刊行物1には、引用発明の端子係止用アーム20の幅を変更することが示唆されている。

刊行物2には、前記「第2」「2」の記載からみて、係止ランスの幅が狭くなると接続端子の係止力が十分に得られなくなるから、係止ランスの幅を広く設計し係止ランスによる係止部19への当接による係止力を大きくすること(以下「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されているといえる。

また、引用発明と刊行物2のコネクタとを対比すると、後者の「係止ランス」は前者の「端子係止用アーム20」に相当し、後者の「係止部19」は前者の「上端部22」に相当する。

そうすると、引用発明の端子係止用アーム20に刊行物2に記載された事項を参酌して、引用発明の遊端21を「前記端子の前記被係合突部の全幅に亘って設けられている」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4 効果について
本願発明が奏する効果は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び上記周知技術から予測可能なものであって、格別ではない。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-12 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-02-29 
出願番号 特願2011-63932(P2011-63932)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 中川 隆司
冨岡 和人
発明の名称 コネクタ  
代理人 三好 秀和  

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