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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1313555
審判番号 不服2014-13096  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-07 
確定日 2016-04-08 
事件の表示 特願2010-525470「ビデオデータ信号を符号化するための方法及びシステム、符号化されたビデオデータ信号、ビデオデータ信号を復号するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 2日国際公開、WO2009/040701、平成23年 5月19日国内公表、特表2011-515874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2008年(平成20年)9月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年9月24日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月11日付けの拒絶理由通知に応答して平成26年1月16日付けで手続補正がなされたが、平成26年3月4日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成26年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されるととともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成26年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年7月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。

(補正前の請求項1)
「ビデオデータ信号を符号化する方法であって、ビデオデータ信号は符号化され、符号化されるビデオデータ信号は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を少なくとも有し、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、プライマリビデオデータ信号は自己完結的に圧縮され、セカンダリビデオデータ信号はプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮され、一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、当該ビットストリームは、プライマリビデオデータ信号のためのデータを含むプライマリビットストリーム及びセカンダリビデオデータ信号のためのデータを含むセカンダリビットストリームを有し、その後、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは多重化信号へと多重化され、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは別々の符号を与えられる方法。」
とあるのを、
(補正後の請求項1)
「ビデオデータ信号を符号化する方法であって、ビデオデータ信号は符号化され、符号化されるビデオデータ信号は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を少なくとも有し、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、プライマリビデオデータ信号は自己完結的に圧縮され、セカンダリビデオデータ信号はプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮され、一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、当該ビットストリームは、プライマリビデオデータ信号のためのデータを含むプライマリビットストリーム及びセカンダリビデオデータ信号のためのデータを含むセカンダリビットストリームを有し、その後、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは多重化信号へと多重化され、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは、プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にするために、別々の符号を与えられる方法。」
と補正する。

2.補正の適合性
(1)補正の範囲
本件補正により追加された「プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にするために、」という補正事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0051】の「標準的な逆多重化装置は、ビットストリーム0x01又は0x1Bをビデオデータ信号として認識し、それを標準的な復号器に送信する。ビットストリーム0x20は、認識されずに拒絶され、図3Bにおいてくず入れWBにビットストリームを送信する」という記載に基づくものであり、特許法第17条の2第3項に規定される願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1の「プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは別々の符号を与えられる」のビットストリームに与えられる「別々の符号」について、その符号の機能として「プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にする」という機能を限定して追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
よって、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当するものである。

(3)独立特許要件
上述したように本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(3-1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という)は、次のとおりのものである。なお、本願補正発明の各構成の符号は便宜的に当審で付したものである。

(本願補正発明)
(A)ビデオデータ信号を符号化する方法であって、
(B)ビデオデータ信号は符号化され、符号化されるビデオデータ信号は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を少なくとも有し、
(C)プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、プライマリビデオデータ信号は自己完結的に圧縮され、セカンダリビデオデータ信号はプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮され、
(D)一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、当該ビットストリームは、プライマリビデオデータ信号のためのデータを含むプライマリビットストリーム及びセカンダリビデオデータ信号のためのデータを含むセカンダリビットストリームを有し、その後、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは多重化信号へと多重化され、
(E)プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは、プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にするために、別々の符号を与えられる
(F)方法。

(3-2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である米国特許出願公開第2002/0009137号明細書には、「THREE-DIMENSIONAL VIDEO BROADCASTING SYSTEM」(発明の名称:三次元ビデオ放送システム)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する)。

ア.「[0029] I. 3D Video Broadcasting System Overview
[0030] A 3D video broadcasting system, in one embodiment of this invention, enables production of digital stereoscopic video with a single camera in real-time for digital television (DTV) applications. In addition, the coded digital video stream produced by this system preferably is compatible with current digital video standards and equipment. In other embodiments, the 3D video broadcasting system may also support production of non-standard video streams for two-dimensional (2D) or 3D applications. In still other embodiments, the 3D video broadcasting system may also support generation, processing and display of analog video signals and/or any combination of analog and digital video signals.」
([0029]I.3Dビデオ放送システムの概要
[0030]本発明の一実施形態では、3Dビデオ放送システムは、デジタルテレビ(DTV)アプリケーションのために、リアルタイムで単一のカメラによるデジタルステレオビデオの生成を可能にします。また、このシステムによって生成される符号化されたデジタルビデオストリームは、好ましくは、現在のデジタルビデオ規格及び機器と互換性があります。他の実施形態では、3Dビデオ放送システムは、二次元(2D)又は3Dアプリケーションのための非標準ビデオストリームの生成をサポートすることができます。さらに他の実施形態では、3Dビデオ放送システムは、アナログビデオ信号及び/又はアナログ及びデジタルのビデオ信号の任意の組み合わせの生成、処理、及び表示をサポートすることができます。)

イ.「[0123] The stereoscopic pair of digital video streams 289, 290 preferably are provided to a video stream compressor, which may be similar, for example, to the video stream compressor 18 of FIG. 1, for video compression. FIG. 11 is a block diagram of a video stream compressor 350, which may be used with the 3D lens system 12 of FIG. 1 as the video stream compressor 18, in one embodiment of the invention. The video stream compressor 350 may also be used with system having other configurations. For example, the video stream compressor 350 may also be used to compress two digital video streams generated by two separate video cameras rather than by a 3D lens system and a single video camera.
[0124] The video stream compressor 350 includes an enhancement stream compressor 352, a base stream compressor 354, an audio compressor 356 and a multiplexer 358. The enhancement stream compressor 352 and the base stream compressor 354 may also be referred to as an enhancement stream encoder and a base stream encoder, respectively. Standard decoders in set-top boxes typically recognize and decode MPEG-2 standard streams, but may ignore the enhancement stream.
[0125] The video stream compressor 350 preferably receives a stereoscopic pair of digital video streams 360 and 362. Each of the digital video streams 360, 362 preferably includes an SD digital video stream, each of which represents either the right field view or the left field view. Either the right field view video stream or the left field view video stream may be used to generate a base stream. For example, when the left field view video stream is used to generate the base stream, the right field view video stream is used to generate the enhancement stream, and vice versa. The enhancement stream may also be referred to as an auxiliary stream.
[0126] The enhancement stream compressor 352 and the base stream compressor 354 preferably are used to generate the enhancement stream 368 and the base stream 370, respectively. The coding method used to generate standard, compatible multiplexed base and enhancement streams may be referred to as "compatible coding". Compatible coding preferably takes advantage of the layered coding algorithms and techniques developed by the ISO/MPEG-2 standard committee.
[0127] In one embodiment of the invention, the base stream compressor preferably receives the left field view video stream 362 and uses standard MPEG-2 video encoding to generate a base stream 370. Therefore, the base stream 370 preferably is compatible with standard MPEG-2 decoders. The enhancement stream compressor may encode the right field view video stream 360 by any means, provided it is multiplexed with the base stream in a manner that is compatible with the MPEG-2 system standard. The enhancement steam 368 may be encoded in a manner compatible with MPEG-2 scalable coding techniques, which may be analogous to the MPEG-2 temporal scalability method.
[0128] For example, the enhancement stream compressor preferably receives one or more I-pictures 366 from the base stream compressor 354 for its video stream compression. P-pictures and/or B-pictures for the enhancement stream 368 preferably are encoded using the base stream I-pictures as reference images. Using this approach, one video stream preferably is coded independently, and the other video stream preferably coded with respect to the other video stream which have been independently coded. Thus, only the independently coded view may be decoded and shown on standard TV, e.g., NTSC-compatible SDTV. In other embodiments, other compression algorithms may be used where base stream information, which may include, but not limited to, the I-pictures are used to encode the enhancement stream.」
([0123]デジタルビデオストリームのステレオペア289、290は、好ましくは、例えばビデオ圧縮のための図1のビデオストリーム圧縮器18と同様のビデオストリーム圧縮器に供給されます。図11は、本発明の一実施形態における図1の3Dレンズシステム12と共にビデオストリーム圧縮器18として使用することができるビデオストリーム圧縮器350のブロック図です。また、ビデオストリーム圧縮器350は、他の構成を有するシステムでも使用することができます。例えば、ビデオストリーム圧縮器350は、3Dレンズシステムと単一のビデオカメラよりも、むしろ二つの別個のビデオカメラにより生成された二つのデジタルビデオストリームを圧縮するために使用することができます。
[0124]ビデオストリーム圧縮器350は、拡張ストリーム圧縮器352、基本ストリーム圧縮器354、オーディオ圧縮器356及びマルチプレクサ358を含みます。拡張ストリームの圧縮器352と基本ストリーム圧縮器354は、それぞれ、拡張ストリームエンコーダと基本ストリームエンコーダと呼ぶことができます。セットトップボックス内の標準デコーダは、一般的にMPEG-2規格のストリームを認識してデコードしますが、拡張ストリームを無視することができます。
[0125]ビデオストリーム圧縮器350は、好ましくは、デジタルビデオストリームのステレオペア360、362を受信します。デジタルビデオストリーム360、362のそれぞれは、好ましくは、右フィールドビュー又は左フィールドビューのいずれかを表すそれぞれのSDデジタルビデオストリームを含みます。右フィールドビューのビデオストリーム又は左フィールドのビデオストリームのいずれかは、基本ストリームを生成するために使用することができます。例えば、左フィールドビューのビデオストリームが基本ストリームを生成するために使用された場合、右フィールドビューのビデオストリームは拡張ストリームを生成するために使用され、その逆も同じです。また、拡張ストリームは、補助ストリームと呼ぶことができます。
[0126]拡張ストリーム圧縮器352と基本ストリーム圧縮器354は、好ましくは、それぞれ拡張ストリーム368と基本ストリーム370を生成するために使用されます。標準又は互換性のある多重化された基本及び拡張ストリームを生成するために使用される符号化方式は、「互換性のある符号化」と呼ぶことができます。互換性のある符号化は、好ましくは、ISO/MPEG-2規格委員会によって開発された階層符号化アルゴリズムと技術を利用しています。
[0127]本発明の一実施形態では、基本ストリーム圧縮器は、好ましくは、左フィールドビューのビデオストリーム362を受信し、基本ストリーム370を生成するために標準的なMPEG-2ビデオ符号化を使用します。したがって、基本ストリーム370は、好ましくは、標準的なMPEG-2デコーダと互換性があります。拡張ストリーム圧縮器は、MPEG-2システム規格と互換性のある方法による基本ストリームと多重化されて提供されるならば、どのような方法によって右フィールドビューのビデオストリーム360を符号化してもかまいません。拡張ストリーム368は、MPEG-2の時間スケーラビリティ方式に類似するMPEG-2のスケーラブル符号化技術と互換性のある方法で符号化することができます。
[0128]例えば、拡張ストリーム圧縮器は、好ましくは、自らのビデオストリーム圧縮のために、基本ストリーム圧縮器354から1又は複数のIピクチャ366を受け取ります。拡張ストリーム368のPピクチャ及び/又はBピクチャは、好ましくは、基本ストリームのIピクチャを参照画像として用いて符号化されます。この手法を用いて、一つのビデオストリームは、好ましくは、独立して符号化され、もう一方のビデオストリームは、好ましくは、独立して符号化された他のビデオストリームと関連して符号化されます。したがって、独立して符号化されたビューだけが、例えばNTSC互換SDTVのような標準TVでデコードして表示されます。他の実施形態では、Iピクチャを含むか、又はIピクチャに限らない基本ストリーム情報が拡張ストリームの符号化に使用される限り、他の圧縮アルゴリズムを用いることができます。)

ウ.「[0130] In one embodiment of the invention, a video stream compressor, such as, for example, the video stream compressor 18 of FIG. 1, incorporates disparity and motion estimation. This embodiment preferably uses bi-directional prediction because this typically offers the high prediction efficiency of standard MPEG-2 video coding with B-pictures in a manner analogous to temporal scalability with B-pictures. Efficient decoding of the right or left view image in the enhancement stream may be performed with B-pictures using bi-directional prediction. This may differ from standard B-picture prediction because the bi-directional prediction in this embodiment involves disparity based prediction and motion-based prediction, rather than two motion-based predictions as in the case of typical MPEG-2 encoding and decoding.
[0131] FIG. 12 is a block diagram of a motion/disparity compensated coding and decoding system 400 in one embodiment of this invention. The embodiment illustrated in FIG. 12 encodes the left view video stream in a base stream and right view video stream in an enhancement stream. Of course, it would be just as practical to include the right view video stream in the base stream and left view video stream in the enhancement stream.
[0132] The left view video stream preferably is provided to a base stream encoder 410. The base stream encoder 410 preferably encodes the left view video stream independently of the right view video stream using MPEG-2 encoding. The right view video stream in this embodiment preferably uses MPEG-2 layered (base layer and enhancement layer) coding using predictions fifth reference to both a decoded left view picture and a decoded right view picture.
[0133] The encoding of the enhancement stream preferably uses B-pictures with two different kinds of prediction, one referencing a decoded left view picture and the other referencing a decoded right view picture. The two reference pictures used for prediction preferably include the left view picture in field order with the right view picture to be predicted and the previous decoded right view picture in display order. The two predictions preferably result in three different modes known in the MPEG-2 standard as forward backward and interpolated prediction.
[0134] To implement this type of bi-directional motion/disparity compensated coding, an enhancement encoding block 402 includes a disparity estimator 406 and a disparity compensator 408 to estimate and compensate for the disparity between the left and right views having the same field order for disparity based prediction. The disparity estimator 406 and the disparity compensator 408 preferably receive I-pictures and/or other reference images from the base stream encoder 410 for such prediction. The enhancement encoding block 402 preferably also includes an enhancement stream encoder 404 for receiving the right view video stream to perform motion based prediction and for encoding the right video stream to the enhancement stream using both the disparity based prediction and motion based prediction.」
([0130]本発明の一実施形態では、例えば図1のビデオストリーム圧縮器18のようなビデオストリーム圧縮器は、視差と動きの推定が組み込まれています。この実施形態は、好ましくは、双方向予測を使用します。なぜなら、双方向予測は、典型的には、Bピクチャを用いた時間スケーラビリティと同様の方法において、Bピクチャを用いた標準的なMPEG-2ビデオ符号化の高い予測効率を提供するからです。拡張ストリームの右又は左のビュー画像の効率的な復号化は、双方向予測を使用して、Bピクチャを用いて行うことができます。これは、標準的なBピクチャの予測と異なります。なぜなら、本実施形態における双方向予測は、一般的なMPEG-2符号化及び復号化における二つの動きベースの予測ではなく、視差ベースの予測及び動きベースの予測を含むものであるからです。
[0131]図12は、本発明の一実施形態における、動き/視差補償符号化及び復号化システム400のブロック図です。図12に示される実施形態は、基本ストリームの左ビュービデオストリームと、拡張ストリームの右ビュービデオストリームを符号化します。もちろん、基本ストリームの右ビュービデオストリームと拡張ストリームの左ビュービデオストリームを含むことも、実際に可能です。
[0132]左ビュービデオストリームは、好ましくは、基本ストリームエンコーダ410に供給されます。基本ストリームエンコーダ410は、好ましくは、MPEG-2符号化を使用し、右ビューのビデオストリームと独立して左ビューのビデオストリームを符号化します。本実施形態における右ビューのビデオストリームは、好ましくは、復号化された左ビュー画像と復号化された右ビュー画像の両方に5次参照の予測を使用して、MPEG-2階層(基本レイヤ及び拡張レイヤ)符号化を使用します。
[0133]拡張ストリームの符号化は、好ましくは、一つの復号化された左ビュー映像の参照と、もう一方の復号化された右ビュー画像の参照の、二つの異なる種類の予測によるBピクチャを使用しています。予測に用いられる二つの参照画像は、好ましくは、右ビュー画像を用いて予測されたフィールド順の左ビュー映像と、先行する復号化された表示順の右ビュー画像を含みます。二つの予測は、好ましくは、MPEG-2規格における前方、後方及び補間の予測として知られている3種類の異なるモードになります。
[0134]双方向動き/視差補償符号化のタイプを実装するために、拡張符号化部402は、視差ベース予測のために同じフィールド順序の左ビューと右ビューの間の視差を推定して補償するための、視差推定器406と視差補償器408を含みます。視差推定器406と視差補償器408は、好ましくは、この予測のために、基本トリームエンコーダ410からのIピクチャ及び/又は他の参照画像を受け取ります。また、拡張符号化部402は、好ましくは、動きベースの予測を行うための右ビューのビデオストリームを受信し、視差ベースの予測及び動きベースの予測の両方を使用して、右ビューのビデオストリームを拡張ストリームに符号化する拡張ストリームエンコーダ404を含みます。)

エ.「[0135] The base stream and the enhancement stream preferably are then multiplexed by a multiplexer 412 at the transmission end and demultiplexed by a demultiplexer 414 at the receiver end. The demultiplexed base stream preferably is provided to a base stream decoder 422 to re-generate the left view video stream. The demultiplexed enhancement stream preferably is provided to an enhancement stream decoding block 416 to re-generate the right view video stream. The enhancement stream decoding block 416 preferably includes an enhancement stream decoder 418 for motion based compensation and a disparity compensator 420 for disparity based compensation. The disparity compensator 420 preferably receives I-pictures and/or other reference images from the base stream decoder 422 for decoding based on disparity between right and left field views.」
([0135]基本ストリーム及び拡張ストリームは、好ましくは、送信端においてマルチプレクサ412によって多重化され、そして、受信端においてデマルチプレクサ414によって逆多重化されます。逆多重化された基本ストリームは、好ましくは、左ビューのビデオストリームを再成するために、基本ストリームデコーダ422に供給されます。逆多重化された拡張ストリームは、好ましくは、右ビューのビデオストリームを再成するために、拡張ストリーム復号化部416に供給されます。拡張ストリーム復号化部416は、好ましくは、動きベース補償のための拡張ストリームデコーダ418と、視差ベース補償のための視差補償器420を含みます。視差補償器420は、好ましくは、左フィールドビューと右フィールドビューの間の視差に基づく復号化のために、基本ストリームデコーダ422からIピクチャ及び/又は他の参照画像を受信します。)

(3-3)引用発明
上記刊行物1に記載された発明を以下に認定する。

ア.デジタルビデオストリームの符号化
刊行物1のア.、イ.の記載によれば、刊行物1には、標準的なMPEG-2規格と互換性のある、デジタルステレオビデオの符号化されたデジタルビデオストリームを生成する3Dビデオ放送システムの技術が記載されており、この技術は、3Dビデオ放送システムによりデジタルステレオビデオのデジタルビデオストリームを符号化する技術といえる。
そこで、この技術を『デジタルビデオストリームを符号化する方法』として認定する。

イ.デジタルビデオストリームのステレオペア
刊行物1のイ.の記載によれば、デジタルビデオストリームのステレオペアがビデオストリーム圧縮器に供給され、符号化される。デジタルビデオストリームのステレオペアは、例えば、二つの別個のビデオカメラにより生成される二つのデジタルビデオストリームである。
すなわち、刊行物1記載の方法は、『二つのデジタルビデオストリームを符号化』するものである。

ウ.デジタルビデオストリームの圧縮
刊行物1のイ.、ウ.の記載によれば、二つのデジタルビデオストリームの一方は基本ストリーム圧縮器に供給され、標準的なMPEG-2符号化により圧縮され、標準的なMPEG-2規格と互換性のある基本ストリームが生成される。そして、基本ストリームは独立して圧縮されるものである。
また、他方のデジタルビデオストリームは、拡張ストリーム圧縮器に供給され、MPEG-2のスケーラブル符号化技術と互換性のある符号化方法により圧縮され、拡張ストリームが生成される。そして、拡張ストリームは、基本ストリーム圧縮器から、Iピクチャ又は他の参照画像の基本ストリーム情報を受け取り、視差ベースの予測及び動きベースの予測の両方を用いて、基本ストリームと関連して圧縮されるものである。
すなわち、『二つのデジタルビデオストリームのうち、一方のデジタルビデオストリームは、基本ストリーム圧縮器により、標準的なMPEG-2符号化により独立して圧縮されて、標準的なMPEG-2規格と互換性のある基本ストリームが生成され、他方のデジタルビデオストリームは、拡張ストリーム圧縮器により、基本ストリーム圧縮器からIピクチャ又は他の参照画像の基本ストリーム情報を受け取り、視差ベースの予測及び動きベースの予測の両方を用いて、MPEG-2のスケーラブル符号化技術と互換性のある符号化方法により基本ストリームと関連して圧縮されて、拡張ストリームが生成され』るものである。

エ.ストリームの多重化
刊行物1のエ.の記載によれば、『基本ストリームと拡張ストリームは、マルチプレクサにより多重化され』る。

オ.互換性
刊行物1のエ.の記載によれば、マルチプレクサにより多重化された基本ストリームと拡張ストリームは、デマルチプレクサにより逆多重化される。
そして、刊行物1のイ.段落[0124]の「セットトップボックス内の標準デコーダは、一般的にMPEG-2規格のストリームを認識してデコードしますが、拡張ストリームを無視することができます。」、段落[0127]の「基本ストリーム370は、好ましくは、標準的なMPEG-2デコーダと互換性があります。」、段落[0128]の「したがって、独立して符号化されたビューだけが、例えばNTSC互換SDTVのような標準TVでデコードして表示されます。」の記載によれば、『標準的なMPEG-2デコーダが、デマルチプレクサで逆多重化される基本ストリーム及び拡張ストリームの基本ストリームを認識してデコードし、拡張ストリームを無視することができる』というものである。

カ.まとめ
以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)デジタルビデオストリームを符号化する方法であって、
(b)二つのデジタルビデオストリームを符号化し、
(c)二つのデジタルビデオストリームのうち、一方のデジタルビデオストリームは、基本ストリーム圧縮器により、標準的なMPEG-2符号化により独立して圧縮されて、標準的なMPEG-2規格と互換性のある基本ストリームが生成され、他方のデジタルビデオストリームは、拡張ストリーム圧縮器により、基本ストリーム圧縮器からIピクチャ又は他の参照画像の基本ストリーム情報を受け取り、視差ベースの予測及び動きベースの予測の両方を用いて、MPEG-2のスケーラブル符号化技術と互換性のある符号化方法により基本ストリームと関連して圧縮されて、拡張ストリームが生成され、
(d)基本ストリームと拡張ストリームは、マルチプレクサにより多重化され、
(e)標準的なMPEG-2デコーダが、デマルチプレクサで逆多重化される基本ストリーム及び拡張ストリームの基本ストリームを認識してデコードし、拡張ストリームを無視することができる
(f)方法。

(3-4)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア.本願補正発明の構成(A)と、引用発明の構成(a)の対比
引用発明の「デジタルビデオストリーム」は、符号化される前のビデオ信号であり、本願補正発明の「ビデオデータ信号」に相当するものである。
よって、引用発明の構成(a)の「デジタルビデオストリームを符号化する方法」は、本願補正発明の構成(A)の「ビデオデータ信号を符号化する方法」と相違しない。

イ.本願補正発明の構成(B)と、引用発明の構成(b)の対比
引用発明は、二つのデジタルビデオストリーム、すなわち二つのビデオデータ信号を有し、それらを符号化するものである。そして、二つのビデオデータ信号を、それぞれプライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号と称することは任意のことである。
そうすると、引用発明の構成(b)の「二つのデジタルビデオストリームを符号化し」は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号が存在し、それらのビデオデータ信号を符号化するものであるから、本願補正発明の構成(B)の「ビデオデータ信号は符号化され、符号化されるビデオデータ信号は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を少なくとも有し、」という構成と相違しない。

ウ.本願補正発明の構成(C)と、引用発明の構成(c)の対比
引用発明は、二つのデジタルビデオストリームのうちの一方のデジタルビデオストリームを、基本ストリーム圧縮器により、標準的なMPEG-2符号化により独立して圧縮する。また、他方のデジタルビデオストリームを、拡張ストリーム圧縮器により、基本ストリーム圧縮器からの基本ストリーム情報を用いて圧縮される。
ここで、上記イ.において検討したように、二つのデジタルビデオストリームを、それぞれプライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号と称することは任意のことであるから、引用発明の二つのデジタルビデオストリームのうち、基本ストリーム圧縮器に供給され圧縮される一方のデジタルビデオストリームを「プライマリビデオデータ信号」と称し、拡張ストリーム圧縮器に供給され圧縮される他方のデジタルビデオストリームを「セカンダリビデオデータ信号」とする。
そうすると、引用発明は、プライマリビデオデータ信号を独立して圧縮するというものであり、独立して圧縮するということは、自己完結的に圧縮するということである。そして、基本ストリーム圧縮器からの基本ストリーム情報は、「プライマリビデオデータ信号からのデータ」といえることから、セカンダリビデオデータ信号をプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮するというものである。
したがって、引用発明の構成(c)は、本願補正発明の構成(C)と「プライマリビデオデータ信号は自己完結的に圧縮され、セカンダリビデオデータ信号はプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮され、」という点において一致する。
ただし、本願補正発明は、「プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、」というものであるのに対し、引用発明は、二つのデジタルビデオストリームは「基本ストリーム圧縮器」及び「拡張ストリーム圧縮器」という異なる圧縮器により個別に圧縮されるというものである点で両者は相違する。

エ.本願補正発明の構成(D)と、引用発明の構成(d)の対比
引用発明の構成(d)の「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」は、引用発明の構成(c)により、それぞれ、一方のデジタルビデオストリーム、すなわちプライマリビデオデータ信号を圧縮したストリームと、他方のデジタルビデオストリーム、すなわちセカンダリビデオデータ信号を圧縮したストリームである。
そして、デジタルビデオストリームを圧縮したストリームがビットストリームであることは明白であるから、引用発明が有している二つの「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」は、『ビデオデータ信号を圧縮したビットストリーム』であり、「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」は、それぞれ、本願補正発明の「プライマリビットストリーム」と「セカンダリビットストリーム」に相当するものといえる。
したがって、引用発明の「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」は、プライマリビデオデータ信号を圧縮したプライマリビットストリームと、セカンダリビデオデータ信号を圧縮したセカンダリビットストリームであり、本願補正発明と「ビデオデータ信号を圧縮したビットストリームは、プライマリビデオデータ信号のためのデータを含むプライマリビットストリーム及びセカンダリビデオデータ信号のためのデータを含むセカンダリビットストリームを有し、」というものである点で一致する。
ただし、引用発明は、上記ウ.において検討したように、二つのデジタルビデオストリームは、一緒に圧縮されるものではなく、異なる圧縮器により個別に圧縮されるものであり、それぞれ個別に「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」が生成されるものであることから、『ビデオデータ信号を圧縮したビットストリーム』が、本願補正発明では、「一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、」という構成により生成される「当該ビットストリーム」であるのに対し、引用発明では、二つのデジタルビデオストリームがそれぞれ個別に圧縮されて生成された「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」である点で相違する。

また、引用発明は、基本ストリームと拡張ストリームをマルチプレクサにより多重化するものであり、多重化されたストリームは多重化信号といえるから、引用発明は、本願補正発明の「その後、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは多重化信号へと多重化され、」という構成を有している点で一致する。

オ.本願補正発明の構成(E)と、引用発明の構成(e)の対比
引用発明は、標準的なMPEG-2デコーダが、基本ストリームを認識してデコードし、拡張ストリームを無視することができるものである。
そして、上記エ.において検討したように、基本ストリーム及び拡張ストリームは、本願補正発明の「プライマリビットストリーム」と「セカンダリビットストリーム」に相当するものであり、標準的なMPEG-2デコーダは、基本ストリームを認識してデコードし、拡張ストリームを無視するということから、プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できずに破棄するデコーダといえる。また、デコーダは復号装置である。
したがって、引用発明は、本願補正発明と「プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にする」というものである点で一致するものの、そのようなことを可能にするために、本願補正発明では、「プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリーム」は、「別々の符号を与えられる」ものであるのに対し、引用発明では、どのような構成を採用しているのか不明である点で、両者は相違する。

カ.本願補正発明の構成(F)と、引用発明の構成(f)の対比
引用発明は、上記ア.ないしオ.において検討したように、本願補正発明と一部に相違があるものの、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を圧縮し、プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にするプライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームを多重化するという方法である点において、本願補正発明の「方法」に対応するものである。

キ.まとめ
上記ア.ないしカ.の対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
ビデオデータ信号を符号化する方法であって、
ビデオデータ信号は符号化され、符号化されるビデオデータ信号は、プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号を少なくとも有し、
プライマリビデオデータ信号は自己完結的に圧縮され、セカンダリビデオデータ信号はプライマリビデオデータ信号からのデータを用いて圧縮され、
ビデオデータ信号を圧縮したビットストリームは、プライマリビデオデータ信号のためのデータを含むプライマリビットストリーム及びセカンダリビデオデータ信号のためのデータを含むセカンダリビットストリームを有し、その後、プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリームは多重化信号へと多重化され、
プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にする
方法。

[相違点1]
本願補正発明は、「プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、」というものであるのに対し、引用発明は、二つのデジタルビデオストリームは「基本ストリーム圧縮器」及び「拡張ストリーム圧縮器」という異なる圧縮器により個別に圧縮されるというものである点。

[相違点2]
上記相違点1に起因して、『ビデオデータ信号を圧縮したビットストリーム』が、本願補正発明では、「一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、」という構成により生成される「当該ビットストリーム」であるのに対し、引用発明では、二つのデジタルビデオストリームがそれぞれ個別に圧縮されて生成される「基本ストリーム」と「拡張ストリーム」である点。

[相違点3]
「プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にする」ために、本願補正発明では、「プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリーム」は、「別々の符号を与えられる」ものであるのに対し、引用発明では、どのような構成を採用しているのか不明である点。

(3-4)相違点の判断
[相違点1及び2について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2である特開平10-243419号公報には、立体視画像を符号化する技術において、従来、左右別々の圧縮経路を持たなければならなかった問題(段落【0014】,【0026】)を解決するために、左目、右目の各画像信号を交互に並べ、2つの画像信号を1つの画像信号に変換してMPEGエンコーダ部で符号化する技術(段落【0046】,【0050】,【0058】?【0060】,【図1】,【図3】)が記載されている。このように、立体視画像を符号化する技術において、立体視画像の2つの画像信号を1つの画像信号にして圧縮する技術が公知の技術であるから、この公知の技術を引用発明に適用し、二つのデジタルビデオストリームを一緒に圧縮するものとし、相違点1に係る「プライマリビデオデータ信号及びセカンダリビデオデータ信号は一緒に圧縮され、」という構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、引用発明に刊行物2記載の公知技術を適用した際、圧縮されたストリームは一つのストリームとなるから、引用発明の標準的なMPEG-2デコーダと互換性を持たせるための基本ストリームと拡張ストリームを多重化するという特徴的な技術を維持するためには、圧縮された一つのストリームを二つのストリームの基本ストリームと拡張ストリームに分離しようとすることが自然であり、さらに、引用発明の拡張ストリーム圧縮器が互換性を有するとしているMPEG-2のスケーラブル符号化技術においては、圧縮された一つのストリームを複数の階層のストリームに分離することが周知の技術である。
よって、引用発明に刊行物2記載の公知技術を適用した際に、圧縮された一つのストリームを二つのストリームの基本ストリームと拡張ストリームに分離するものとし、相違点2に係る『ビデオデータ信号を圧縮したビットストリーム』を、「一緒に圧縮されたビデオデータ信号は、別々のビットストリームに分割され、」という構成により生成される「当該ビットストリーム」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、上記相違点1及び相違点2は、引用発明に刊行物2記載の公知技術を適用することにより、当業者が容易になし得ることである。

[相違点3について]
引用発明において、基本ストリームと拡張ストリームは、デマルチプレクサで逆多重化されるものであり、標準的なMPEG-2デコーダで、基本ストリームは認識され、拡張ストリームは無視されるものである。
一般に、多重化されたストリームおいては、各々のストリームにそのストリームを識別するID符号が付加されていることは技術常識であり、そのID符号によって、ストリームの逆多重化を行ったり、各々のストリームに適合した処理を行うことが周知の技術であるから、引用発明において、基本ストリームと拡張ストリームに、ストリームを識別するための別々の符号を与えておき、そのID符号により基本ストリームと拡張ストリームのそれぞれに適合した処理を行うようにすることは周知技術の付加にすぎず、引用発明を、相違点3に係る「プライマリビットストリームを認識して、セカンダリビットストリームを処理できない復号装置がセカンダリビットストリームを破棄することを可能にする」ために、「プライマリビットストリーム及びセカンダリビットストリーム」は、「別々の符号を与えられる」構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(3-5)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(3-6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年7月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年1月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2.1.の(補正前の請求項1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(3)(3-2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.2.(2)で摘示した本願補正発明に追加された限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.(3)に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-13 
結審通知日 2015-11-17 
審決日 2015-11-30 
出願番号 特願2010-525470(P2010-525470)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 益戸 宏  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
戸次 一夫
発明の名称 ビデオデータ信号を符号化するための方法及びシステム、符号化されたビデオデータ信号、ビデオデータ信号を復号するための方法及びシステム  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 矢ヶ部 喜行  
代理人 津軽 進  

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