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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44B
管理番号 1313608
審判番号 不服2014-20298  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-08 
確定日 2016-04-20 
事件の表示 特願2011-190372「面ファスナー用ループ片の製造方法、製造装置及びループ片」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 90959〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2011年9月1日(パリ条約による優先権主張 2010年10月26日、台湾 2011年2月18日、米国)を出願日とする出願であって、平成25年11月12日付けの拒絶理由に対して、平成26年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年1月31日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「外周面を有し、回転可能な雄型ロールと、外周面を有し、回転可能な雌型ロールであって、雄型ロールの外周面と回転しながら接触可能な雌型ロールとを備え、雄型ロールの外周面に複数本の縦長いリブと、雌型ロールの外周面に前記リブと対応する複数本の縦長い溝とが形成され、雄型ロールと雌型ロールとが接触すると、前記リブが前記溝に収容されるループ形成デバイスと、
雄型ロール及び雌型ロールのいずれかの回転方向の上流側に配置され、所定の配列方式で複数の糸を雄型ロールと雌型ロールとの間に供給し、前記糸が雄型ロールと雌型ロールとの間を通過したとき、雄型ロールのリブにより雌型ロール上の対応溝に前記糸が圧入され、前記糸が塑性変形されてループ形状となる糸供給デバイスと、
雌型ロールの回転方向の下流側に配置され、且つ雌型ロールの外周面との間に間隔を有するように雌型ロールと対向して配置され、前記糸に溶融可能なエネルギーを供給するロールのループ固定デバイスと、
網目状の基材が、雌型ロールの外周面と前記ループ固定デバイスとの間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給デバイスであって、前記基材が前記間隔を通過したとき、前記雌型ロールの外周面にて塑性変形された糸の一部が前記ループ固定デバイスによるエネルギーにより溶融されて前記基材と結合することで、塑性変形された糸を前記基材に固定することにより、面ファスナー用ループ片を形成する基材供給デバイスと
を有することを特徴とする面ファスナー用ループ片(hook-and-loop ファスナー)の製造装置。」

第3.刊行物に記載された事項
1.原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開平2-18036号公報(以下「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「(13)細かく裁断して、脱離自在に係合するかぎ部分とループ部分とを備える形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料(10),(40),(60)を形成する方法にして、繊維(16),(38),(59)ならびに前主要面(13),(58)および後主要面(14)を有する基材(12),(43),(63)を供給する段階と、繊維(16),(38),(59)を繊維(16),(38),(59)のシートの隔置された固定部分から同じ方向へ突出する弧状部分(20),(54),(69)を有するシートに形成する段階とを含み、前記弧状部分(20),(54),(69)が0.64cm未満の前記固定部分からの高さを有し、前記基材(12),(43),(63)の前面(13),(58)から突出する繊維(16),(38),(59)の弧状部分(20),(54),(69)を備える基材(12),(43),(63)の前面に繊維(16),(38),(59)の前記シートの前記の隔置された固定部分を接合する段階を含み、繊維(16),(38),(59)により形成されるシートが基材(12),(43),(63)の前面(13),(58)に沿つて測られた5?200g/m^(2)の範囲の坪量を有し、前記シート材料(10),(40),(60)の繊維(16),(38),(59)との前記フアスナのかぎ部分の容易な係合をもたらすに充分な繊維(16),(38),(59)間のあきまが得られるようにした、シート材料を形成する方法。
(14)特許請求の範囲第13項に記載のシート材料(10),(40),(60)を形成する方法において、概ね円筒状の第一段付け部材(27),(44),(64)および第二段付け部材(28),(45),(65)にて各々が軸線を有し且つ、前記段付け部材の周囲を画定する隔置された複数の隆起(28),(46),(66)を包含する段付け部材を準備する段階を含み、前記隆起(28),(46),(66)が外面を有し且つ間の繊維(16),(38),(59)のシートと互いにかみ合う他方の段付け部材の隆起(28),(46),(66)の部分を受容するようにされた前記隆起(28),(46),(66)間の空間を画定し、隆起(28),(46),(66)の部分を互いにかみ合わせて段付け部材(27),(28),(44),(45),(64),(65)を軸線方向へ互いに平行に取り付ける段階と、段付け部材(27),(28),(44),(45),(64),(65)の少なくとも一方を回転させる段階と、隆起(28),(46),(66)のかみ合い部分の間に繊維(16),(38),(59)のシートを給送して第一段付け部材(26),(44),(64)の周囲に繊維(16),(38),(59)のシートを概ね整合させ、第一段付け部材(26),(44),(64)の隆起(28),(46),(66)と第一段付け部材の隆起(28),(46),(66)の外面に沿つた繊維(16),(38),(59)のシートの固定部分との間の空間に繊維(16),(38),(59)の弧状部分(20),(54),(69)を形成する段階と、形成された繊維(16),(38),(59)のシートを、隆起(28),(46),(66)のかみ合い部分を通過後、第一段付け部材(26),(44),(64)の周囲に沿つて保持する段階とを含み、前記の接合する段階が隆起(28),(46),(66)のかみ合い部分を通過後第一段付け部材(27),(44),(64)の周囲に沿つて形成された繊維(16),(38),(59)に対して生起されるようにした方法にして、更に第一段付け部材(27),(44),(64)からシート材料(10),(40),(60)を分離する段階を包含する方法。
・・・
(17)特許請求の範囲第14項に記載の方法において、前記隆起(28),(66)が細長く平行であり且つ段付け部材(27),(28),(64),(65)の軸線に対し0?45゜の範囲の角度に配向され、前記の給送する段階が、50?300デニールの範囲の糸の形態の繊維(16),(59)を準備する段階と、概ね均等に配分された繊維(16),(59)のシートが得られるように糸を配分する段階と、段付け部材(27),(28),(64),(65)の軸線に対し全ての繊維(16),(59)を概ね直角に延伸させて歯車のかみ合い隆起(28),(66)の間に繊維(16),(59)のシートを給送する段階とを包含するようにした方法。」 (特許請求の範囲請求項13項?17項)

(イ)「産業上の利用分野
本発明は、細かく裁断して、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料および上記シート材料を作る方法に関する。」(第5頁右上欄第12行?16行)

(ウ)「従来の技術及び発明が解決しようとする問題点
細かく裁断して、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループ部分とを含む形式のフアスナのループ部分を形成するようにされた数多くのシート材料が周知されている。この種のシート材料は一般に基材と、基材に固定され且つ上記フアスナのかぎ部分のかぎと脱離自在に係合し得るように基材の前面から突出する多数のループとを含み、在来の製織や編成の技法を包含する数多くの方法によって作ることができる。ループを基材に縫いとじるようにしたシート材料が、米国特許第4,609,581号および米国特許出願第760,999号の双方に記載されている。数多くのこの種ループ材料で作られたループ・フアスナ部分は数多くの異なったかぎフアスナ部分と良好に作用するが、それらを作るプロセスの多くは、とくにループ・フアスナ部分が、使い捨ておむつを乳児に着けさせたり、研摩デイスクを、それを駆動する裏当てパッドに取り付けるなどの限られた量の用途に志向された場合、望む以上に費用が掛かる。」 (第5頁右上欄第17行?左下欄第16行)

(エ)「問題点を解決するための手段
本発明によれば、細かく裁断して、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループ部分とを有する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料が得られ、このシート材料によれば、製造が極めて安価でありながら上記フアスナに対する効果的なループ・フアスナ部分が得られ、従つてそれらはループ・フアスナ部分が、使い捨てのおむつ若しくはその他の衣類を脱離自在に着けさせたり、研摩デイスクを、それを駆動する裏当てパッドに取り付けるなどの限られた量の用途に志向された場合、経済的に使用される。」 (第5頁左下欄第17行?右下欄第8行)

(オ)「本発明によれば、細かく裁断してフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料にして、基材と、隔置された接合個所で前面に沿つて基材へ接合されて接合個所間の基材の前面から突出する繊維の弧状部分を形成する部分を有する多数の繊維とを含むシート材料が得られる。この弧状部分は約0.64cm(0.250in)未満、望ましくは約0.318cm(0.125in)未満、の基材からの高さを有する。接合個所の幅は約0.127?1.905mm(0.005?0.075in)であるべく、繊維の弧状部分の幅は約1.524?8.89mm(0.06?0.35in)であるべきである。弧状部分の繊維は前面上のほぼ同じ高さまで突出し、その高さは接合個所間の距離の少なくとも3分の1、望ましくは半分?1倍半であり、個々の繊維はサイズが15デニ一ル未満であり、繊維は基材の前面に沿って測られた5?200g/m^(2)の範囲(望ましくは10?75g/m^(2)の範囲)の坪量を集合的に有し、フアスナのかぎ部分による弧状部分に沿った繊維の容易な係合をもたらすに充分な、弧状部分に沿つた繊維間のあきま(即ち約10?70%のあきま)を備える。」(第5頁右下欄第9行?第6頁左上欄第11行)

(カ)「本発明によるシート材料はなるべくなら、繊維を、繊維のシートの隔置された固定部分から同じ方向へ突出する弧状部分を有する繊維のシートに形成し、且つ基材の前面から弧状部分が突出するように繊維のシートの隔置された固定部分を基材へ接合することにより、繊維と基材とで作られることが望ましい。この繊維の形成はなるべくなら、各々がその周囲を画定する均等に隔置された複数の隆起を包含する概ね円筒状の第一および第二段付け部材を準備する段階と、段付け部材の隆起の部分と軸線方向に平行な関係にある段付け部材を互いにかみ合うように取り付ける段階と、段付け部材の少なくとも一方を回転させる段階と、回転する段付け部材の隆起のかみ合い部分の間に繊維のシートを給送して第一段付け部材の周囲に繊維のシートを概ね合致させ、それにより第一段付け部材の隆起と第一段付け部材の隆起の外面に沿った繊維のシートの固定部分との間の空間に繊維のシートの弧状部分を形成する段階と、形成された繊維のシートを、それが隆起のかみ合い部分を通過した後、第一段付け部材の周囲に沿って保持する段階とによってなされることが望ましい。次いで繊維のシートの固定部分は、それらが第一段付け部材の隆起の端面にある間に基材の前面に接合され、こうして形成されたシート材料は第一段付け部材から分離される。
隆起は細長く且つ概ね平行にすることができ、それにより接合個所もまた細長く概ね平行で基材の前面を横切つて一方向に連続し、従つて連続的な何列もの弧状部分がシート材料の基材を横切つて延伸し、あるいはまた隆起を細長く、概ね平行で、且つ不連続な特定長さ部分の規則的なパターンをなすようにすることができ、それにより平行な接合個所もまた不連続な特定長さ部分の規則的なパターンをなして基材の前面に沿い不連続な何列もの弧状部分の規則的なパターンを形成する。」 (第6頁左上欄第12行?左下欄第7行)

(キ)「個々の繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリアミドのような数多くの高分子材料または、そのコア材料によって比較的高い強度が得られ且つそのシース材料によつて容易に接合されるようにしたポリエステルのコアやポリプロピレンのシースのような上記諸材料の組合せであれば良い。単一材料の繊維や、異種の材料の繊維や、材料の組合せを同一のシート材料に用いても良い。
繊維のシートは、繊維を一緒に接合できまたはできないようにした不織またはランダム製織のシートまたはウエブの形で、段付け部材のかみ合い隆起間に給送することができる。この種のシートにあつては、結果として生成されるシート材料において隔置された接合個所に対し種々の方向に繊維が配列されるように、段付け部材間に繊維のシートが給送される方向に対して種々の方向に繊維を配列することができる。隔置された平行な隆起を備える段付は部材間に給送されるこの種のシートにあつては、結果として生成されるシート材料において大部分の繊維が平行な接合個所に対し概ねはぼ直角に突出するように、なるべくなら大部分の(例えば90%を超える)繊維がウエブに沿つて一方向に突出し且つウエブが段付け部材の隆起に対しほぼ直角な方向で段付け部材間に給送されることが望ましい。
あるいはまた、繊維を50?300デニールの範囲の糸の形で供給することもでき、糸はコームにそれを通過させることにより概ね均等に配分された繊維のシートが得られるように配分され、繊維のシートは、段付け部材の軸線に対し0?45°の範囲に配向される細長い平行な隆起を有する段付け部材の問へ、それらの軸線に垂直な方向に給送され、その結果として、繊維が全て、平行な接合個所に対してほぼ同じ角度の方向に延伸するようにしたシート材料が生成される。
基材と繊維との接触部分が同じ熱可塑性林料から成る場合には、繊維の基材への接合を、熱と圧力とを加えて繊維を接合個所で基材に融着させる超音波溶接またはその他の方法で行うことができる。その代りに、即ち基材と繊維との接触部分が異なる材料から成る場合には、熱と圧力とを加えて繊維を接合個所で基材に接着させる音波エネルギまたはその他の方法で基材の熱可塑性接着層を軟化させるなどして、繊維を基材へ粘着的に接合させることができる。」 (第8頁左上欄第14行?左下欄第18行)

(ク)「実施例および作用
本発明を、幾つかの図の類似部分を同様な参照数字で示すようにした添付図面について、更に説明する。
ここで図面について説明する。全体として参照数字10で表示した本発明によるシート材料を第1図、第2図および第3図に示しであるが、このシート材料10は、細かく裁断して、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループ部分とを有する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされている。
一般にこのシート材料10は、前主要面13および後主要面14ならびに、前面13に沿つて一方向に連続する隔置された細長い概ね平行な接合個所18で基材12の前面13に接合されて(即ち融着されまたは粘着的に取り付けられて)、シート材料10を横方向に横切る連続的な列を成す接合個所18の間の基材12の前面13から突出する繊維16の弧状部分20を形成する部分を有する多数の繊維16を備える厚さ約0.0025?0.013m(0.001?0.005in)の範囲の透明な熱可塑性の(例えばポリプロピレンまたはポリエステルの)フイルム基材12を含む。繊維16の弧状部分20は約0.64cm(0.250in)未満、望ましくは約0.318cm(0.125in)未満、の基材12からの概ね均等な高さを有し、繊維16の高さは接合個所18間の距離の少なくとも3分の1、望ましくは半分?1倍半であり、個々の繊維16は15デニール未満(望ましくは1?10デニールの範囲)のサイズであり、基材12のない繊維16は第一面に沿つて測られた5?200g/m^(2)の範囲(望ましくは10?75g/m^(2)の範囲)の量を有し、フアスナのかぎ部分による弧状部分20に沿つた繊維の容易な係合をもたらすに充分な、弧状部分20に沿つた繊組間のあきま(即ち約10?70%のあきま)が得られる。
繊維16は平行な接合個所18に対し種々の方向に配設することができ且つ弧状部分20の交錯点で一緒に接合してもしなくても良く、大部分の(即ち90%を超える)繊維16を接合個所18に対しほぼ直角の方向に延伸させて、平行な接合個所18に対する種々の方向に配設することができ、あるいは全ての繊維16を、隔置された概ね平行な接合個所18に対し概ね直角の方向へ延伸させることができる。」(第8頁左下欄第19行?第9頁右上欄第4行)

(ケ)「第4図は、繊維16を、シートの隔置された概ね平行な固定部分24から同じ方向へ突出する弧状部分を有する繊維のシートに形成し且つ、基材12の前面13から突出する繊維16の弧状部分を備える基材12の前面13に繊維16のシートの隔置された概ね平行な固定部分24を接合する、本発明による方法を概略的に示す。この方法はなるべくなら、第一および第二の(例えば120℃(280°F)に)加熱された段付け部材またはロ-ラ26,27にて各々が軸線を有し且つ、その周囲を囲み且つ画定する円周方向に隔置された概ね軸線方向に延びる複数の隆起28を包含する段付け部材またはローラを準備し、隆起28が外面を有し且つかみ合う隆起28間の繊維のシートと互いにかみ合う他方の段付け部材の隆起28の部分を受容するようにされた隆起28間の空間を画定し、段付け部材の隆起28と空間との間に歯車の歯のような転動係合をもたらすことにより実施されることが望ましい。段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に繊維のシートが給送されて第一段付け部材26の周囲に繊維のシートが概ね整合され、第一段付け部材26の隆起28と第一段付け部材26の隆起28の外面に沿った繊維のシートの概ね平行な固定部分24との間の空間に繊維16の弧状部分を形成する。形成された繊維のシートは、それが隆起28のかみ合い部分を通過した後、第一段付け部材26の周囲に沿って保持され、基材12は、超音波溶接機30の作用により、または第一段付け部材26の内部からの熱のような他の熱源や圧力源によるなどして、第一段付け部材26の隆起28の端面上の、繊維のシートの平行な固定部分24に接合され、接合された基材12と繊維16またはシート材料10は第一段付け部材26から分離される。
段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に給送される繊維のシートは、不織のウエブ若しくはシートの形態でも良く、あるいは第4図に示す如く、コーム34に糸33を通過させることにより均等に配分された繊維のシートが得られるように配分され、全ての繊維16を段付け部材26,27の軸線に対し概ね垂直に延伸させて段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に給送される糸33の形態であつても良い。上記の繊維32のシートをその中へ給送されるようにされた段付け部材26,27は、超音波溶接機30が常に近接し且つ隆起28の少なくとも一方の部分に沿つて繊維のシートの平行部分24を加熱して超音波溶接機30のエネルギ出力を平準化するのに役立つように、また平行な接合個所18に対しほぼ直角(即ち85°)の方向にシート材料10の繊維16が全て延伸するように、それらの隆起28をそれらの軸線に対して概ね0?45°の範囲に配向し、望ましくはそれらの隆起28をそれらの軸線に対して約5°に配向することができる。
その上、この方法は更に、接合段階に先立つて基材の面の一方に沿い、その後面14に沿ってプリンタ36によるなどして、基材にプリントする段階を包含しているが、これはなるべくなら段付け部材26,27から遠い位置でなされることが望ましい。」 (第9頁右上欄第10行?第10頁左上欄第14行)

(コ)「第1図は本発明によるシート材料の斜視図、第2図は第1図のシート材料の極めて拡大された平面図、第3図は第1図のシート材料の極めて拡大された端図、第4図は第1図のシート材料を作るための本発明による装置および方法を示す概略図、・・・
10,40,60:シート材料
12,43,63:基材
13,58:前主要面
14:後主要面
16,38,59:繊維
18,68:接合個所
20,54,69:弧状部分
26,44,64:第一段付け部材
27,45,65:第二段付け部材
28,46,66:隆起」(【図面の簡単な説明】)

(サ)第4図には、以下の点が図示されている。
繊維16の給走方向の上流側(第4図中央左側)から、下流側にかけて、コーム34、第一段付け部材26及び第二段付け部材27、超音波溶接機30が配置された装置。
第二段付け部材27の外周面に複数本の隆起28が形成され、第一段付け部材26の外周面に前記隆起28と対応する複数本の隆起28間の空間とが形成されている点。
繊維16の糸33が第二段付け部材27と第一段付け部材26との間を通過したとき、第二段付け部材27の隆起28により第一段付け部材26上の対応する隆起28間の空間に繊維16の糸33が圧入され、繊維16の糸33が変形されて弧状部分となる点。
超音波溶接機30が、第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の下流側に配置され、且つ第一段付け部材26の外周面との間に間隔を有するように第一段付け部材26と対向して配置されている点。
基材12が、第一段付け部材26の外周面と超音波溶接機30との間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給手段を設けている点。

a.上記(ア)の「(13)細かく裁断して、脱離自在に係合するかぎ部分とループ部分とを備える形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料(10),(40),(60)を形成する方法にして、・・・」の記載、上記(イ)の「・・・本発明は、細かく裁断して、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料および上記シート材料を作る方法に関する。」の記載、上記(ケ)の「第4図は、繊維16を、シートの隔置された概ね平行な固定部分24から同じ方向へ突出する弧状部分を有する繊維のシートに形成し且つ、基材12の前面13から突出する繊維16の弧状部分を備える基材12の前面13に繊維16のシートの隔置された概ね平行な固定部分24を接合する、本発明による方法を概略的に示す。・・・」の記載、上記(コ)の「・・・第4図は第1図のシート材料を作るための本発明による装置および方法を示す概略図、・・・」及び第4図より、引用刊行物には、「脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料を作る装置」が記載されている。

b.上記(ケ)の「・・・この方法はなるべくなら、第一および第二の(・・・)加熱された段付け部材またはロ-ラ26,27にて各々が軸線を有し且つ、その周囲を囲み且つ画定する円周方向に隔置された概ね軸線方向に延びる複数の隆起28を包含する段付け部材またはローラを準備し、・・・」と「・・・第一段付け部材26・・・」との記載、上記(コ)の「・・・26,44,64:第一段付け部材・・・27,45,65:第二段付け部材・・・」の記載及び第4図より、第4図の部材26が「第一段付け部材26」、第4図の部材27が「第二段付け部材27」であるから、以下、引用刊行物の摘記中の「段付け部材26」を「第一段付け部材26」、「段付け部材27」を「第二段付け部材27」と読み替える。

c.上記(カ)の 「・・・この繊維の形成はなるべくなら、各々がその周囲を画定する均等に隔置された複数の隆起を包含する概ね円筒状の第一および第二段付け部材を準備する段階と、・・・回転する段付け部材の・・・が望ましい。・・・」の記載、上記(ケ)の「・・・段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、・・・」の記載及び第4図より、第一段付け部材26及び第二段付け部材27は、概ね円筒状で、片方が回転すれば他方も隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて回転するものであるから、両方とも回転するといえる。第一段付け部材26及び第二段付け部材27は、隆起28を有する概ね円筒状のものであるから、外周面を有することは明らかである。

d.上記c、上記(カ)の 「・・・隆起は細長く且つ概ね平行にすることができ、・・・ 」の記載、上記(ケ)の「第4図は、繊維16を、シートの隔置された概ね平行な固定部分24から同じ方向へ突出する弧状部分を有する繊維のシートに形成し且つ、基材12の前面13から突出する繊維16の弧状部分を備える基材12の前面13に繊維16のシートの隔置された概ね平行な固定部分24を接合する、本発明による方法を概略的に示す。・・・隆起28が外面を有し且つかみ合う隆起28間の繊維のシートと互いにかみ合う他方の段付け部材の隆起28の部分を受容するようにされた隆起28間の空間を画定し、段付け部材の隆起28と空間との間に歯車の歯のような転勤係合をもたらすことにより実施されることが望ましい。段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に繊維のシートが給送されて第一段付け部材26の周囲に繊維のシートが概ね整合され、第一段付け部材26の隆起28と第一段付け部材26の隆起28の外面に沿った繊維のシートの概ね平行な固定部分24との間の空間に繊維16の弧状部分を形成する。・・・」の記載及び第4図から、引用刊行物には、「外周面を有し、回転する概ね円筒状の第二段付け部材27と、外周面を有し、回転する概ね円筒状の第一段付け部材26であって、第二段付け部材27の外周面と回転して転動係合する第一段付け部材26とを備え、第二段付け部材27の外周面に複数本の細長い隆起28と、第一段付け部材26の外周面に前記隆起28と対応する「複数本の隆起28間の空間」とが形成され、第二段付け部材27と第一段付け部材26とが転動係合すると、前記隆起28が前記隆起28間の空間に収容される繊維16の弧状部分を形成する手段」が記載されている。

e.上記(ア)の「・・・(17)特許請求の範囲第14項に記載の方法において、前記隆起(28),(66)が細長く平行であり且つ段付け部材(27),(28),(64),(65)の軸線に対し0?45゜の範囲の角度に配向され、前記の給送する段階が、50?300デニールの範囲の糸の形態の繊維(16),(59)を準備する段階と、概ね均等に配分された繊維(16),(59)のシートが得られるように糸を配分する段階と、段付け部材(27),(28),(64),(65)の軸線に対し全ての繊維(16),(59)を概ね直角に延伸させて歯車のかみ合い隆起(28),(66)の間に繊維(16),(59)のシートを給送する段階とを包含するようにした方法。」の記載、上記(カ)の「・・・この繊維の形成はなるべくなら、各々がその周囲を画定する均等に隔置された複数の隆起を包含する概ね円筒状の第一および第二段付け部材を準備する段階と、段付け部材の隆起の部分と軸線方向に平行な関係、にある段付け部材を互いにかみ合うように取り付ける段階と、段付け部材の少なくとも一方を回転させる段階と、回転する段付け部材の隆起のかみ合い部分の間に繊維のシートを給送して第一段付け部材の周囲に繊維のシートを概ね合致させ、それにより第一段付け部材の隆起と第一段付け部材の隆起の外面に沿った繊維のシートの固定部分との間の空間に繊維のシートの弧状部分を形成する段階と、形成された繊維のシートを、それが隆起のかみ合い部分を通過した後、第一段付け部材の周囲に沿って保持する段階とによってなされることが望ましい。・・・」、上記(ケ)の 「・・・段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に繊維のシートが給送されて第一段付け部材26の周囲に繊維のシートが概ね整合され、第一段付け部材26の隆起28と第一段付け部材26の隆起28の外面に沿った繊維のシートの概ね平行な固定部分24との間の空間に繊維16の弧状部分を形成する。・・・段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に給送される繊維のシートは、不織のウエブ若しくはシートの形態でも良く、あるいは第4図に示す如く、コーム34に糸33を通過させることにより均等に配分された繊維のシートが得られるように配分され、全ての繊維16を段付け部材26,27の軸線に対し概ね垂直に延伸させて段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に給送される糸33の形態であつても良い。・・・」の記載及び第4図から、引用刊行物には、「第二段付け部材27及び第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の上流側に配置され、配分された複数の繊維16の糸33を第二段付け部材27と第一段付け部材26との間に給走し、前記繊維16の糸33が第二段付け部材27と第一段付け部材26との間を通過したとき、第二段付け部材27の隆起28により第一段付け部材26上の対応する隆起28間の空間に前記繊維16の糸33が圧入され、前記繊維16の糸33が変形されて弧状部分となる繊維16の糸33を給走する手段」が記載されている。

f.上記(ケ)の 「・・・形成された繊維のシートは、それが隆起28のかみ合い部分を通過した後、第一段付け部材26の周囲に沿って保持され、基材12は、超音波溶接機30の作用により、または第一段付け部材26の内部からの熱のような他の熱源や圧力源によるなどして、第一段付け部材26の隆起28の端面上の、繊維のシートの平行な固定部分24に接合され、接合された基材12と繊維16またはシート材料10は第一段付け部材26から分離される。・・・上記の繊維32のシートをその中へ給送されるようにされた段付け部材26,27は、超音波溶接機30が常に近接し且つ隆起28の少なくとも一方の部分に沿つて繊維のシートの平行部分24を加熱して超音波溶接機30のエネルギ出力を平準化するのに役立つように、また平行な接合個所18に対しほぼ直角(即ち85°)の方向にシート材料10の繊維16が全て延伸するように、それらの隆起28をそれらの軸線に対して概ね0?45°の範囲に配向し、望ましくはそれらの隆起28をそれらの軸線に対して約5°に配向することができる。・・・」の記載、上記(キ)の「・・・基材と繊維との接触部分が同じ熱可塑性林料から成る場合には、繊維の基材への接合を、熱と圧力とを加えて繊維を接合個所で基材に融着させる超音波溶接またはその他の方法で行うことができる。その代りに、即ち基材と繊維との接触部分が異なる材料から成る場合には、熱と圧力とを加えて繊維を接合個所で基材に接着させる音波エネルギまたはその他の方法で基材の熱可塑性接着層を軟化させるなどして、繊維を基材へ粘着的に接合させることができる。」及び第4図から、引用刊行物には、「第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の下流側に配置され、且つ第一段付け部材26の外周面との間に間隔を有するように第一段付け部材26と対向して配置され、前記繊維16に融着のためのエネルギを出力する超音波溶接機30」が記載されている。

g.上記a、上記(ケ)の「・・・段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に繊維のシートが給送されて第一段付け部材26の周囲に繊維のシートが概ね整合され、第一段付け部材26の隆起28と第一段付け部材26の隆起28の外面に沿った繊維のシートの概ね平行な固定部分24との間の空間に繊維16の弧状部分を形成する。形成された繊維のシートは、それが隆起28のかみ合い部分を通過した後、第一段付け部材26の周囲に沿って保持され、基材12は、超音波溶接機30の作用により、または第一段付け部材26の内部からの熱のような他の熱源や圧力源によるなどして、第一段付け部材26の隆起28の端面上の、繊維のシートの平行な固定部分24に接合され、接合された基材12と繊維16またはシート材料10は第一段付け部材26から分離される。・・・」の記載及び第4図から、引用刊行物には、「基材12が、第一段付け部材26の外周面と超音波溶接機30との間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給手段であって、繊維16が前記間隔を通過したとき、第一段付け部材26の外周面にて変形された繊維16の一部が前記超音波溶接機30によるエネルギにより融着されて前記基材12と接合されて、変形された繊維16を前記基材12に固定することにより、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成する基材供給手段」が記載されている。

上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合して、本願発明に則って整理すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「外周面を有し、回転する概ね円筒状の第二段付け部材27と、外周面を有し、回転する概ね円筒状の第一段付け部材26であって、第二段付け部材27の外周面と回転して転動係合する第一段付け部材26とを備え、第二段付け部材27の外周面に複数本の細長い隆起28と、第一段付け部材26の外周面に前記隆起28と対応する「複数本の隆起28間の空間」とが形成され、第二段付け部材27と第一段付け部材26とが転動係合すると、前記隆起28が前記隆起28間の空間に収容される繊維16の弧状部分を形成する手段と、
第二段付け部材27及び第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の上流側に配置され、配分された複数の繊維16の糸33を第二段付け部材27と第一段付け部材26との間に給走し、前記繊維16の糸33が第二段付け部材27と第一段付け部材26との間を通過したとき、第二段付け部材27の隆起28により第一段付け部材26上の対応する隆起28間の空間に前記繊維16の糸33が圧入され、前記繊維16の糸33が変形されて弧状部分となる繊維16の糸33を給走する手段と、
第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の下流側に配置され、且つ第一段付け部材26の外周面との間に間隔を有するように第一段付け部材26と対向して配置され、前記繊維16に融着のためのエネルギを出力する超音波溶接機30と、
基材12が、第一段付け部材26の外周面と前記超音波溶接機30との間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給手段であって、前記繊維16が前記間隔を通過したとき、前記第一段付け部材26の外周面にて変形された繊維16の一部が前記超音波溶接機30によるエネルギにより融着されて前記基材12と接合されて、変形された繊維16を前記基材12に固定することにより、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成する基材供給手段と、
を有する、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料を作る装置。」

第4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成するようにされたシート材料を作る装置」は、その機能、構造からみて、本願発明の「面ファスナー用ループ片の製造装置」に相当する。

b.引用発明の「隆起28」は、その機能、構造からみて、本願発明の「リブ」に相当し、同様に、「隆起28間の空間」は本願発明の「溝」に相当する。
また、引用発明の「第二段付け部材27」は、隆起28を有する円筒状のものであるから、本願発明の「雄型ロール」に相当し、同様に、「第一段付け部材26」は、隆起28と隆起28間の空間を有する円筒状のものであるから、本願発明の「雌型ロール」に相当する。

c.引用発明の「繊維16」あるいは「繊維16の糸33」は、本願発明の「糸」に相当し、以下、同様に、「繊維16の弧状部分」は「ループ」に、「基材12」は「基材」に、それぞれ相当する。

d.引用発明の「転動係合する」は、接触する状態も含むから、引用発明の「外周面を有し、回転する概ね円筒状の第二段付け部材27と、外周面を有し、回転する概ね円筒状の第一段付け部材26であって、第二段付け部材27の外周面と回転して転動係合する第一段付け部材26とを備え、第二段付け部材27の外周面に複数本の細長い隆起28と、第一段付け部材26の外周面に前記隆起28と対応する「複数本の隆起28間の空間」とが形成され、第二段付け部材27と第一段付け部材26とが転動係合すると、前記隆起28が前記隆起28間の空間に収容される繊維16の弧状部分を形成する手段」は、本願発明の「外周面を有し、回転可能な雄型ロールと、外周面を有し、回転可能な雌型ロールであって、雄型ロールの外周面と回転しながら接触可能な雌型ロールとを備え、雄型ロールの外周面に複数本の縦長いリブと、雌型ロールの外周面に前記リブと対応する複数本の縦長い溝とが形成され、雄型ロールと雌型ロールとが接触すると、前記リブが前記溝に収容されるループ形成デバイス 」に相当する。

e.引用刊行物の上記(ケ)の「・・・段付け部材26,27は、段付け部材26,27の隆起28の部分を概ね歯車の歯のようにかみ合わせて、軸線方向へ互いに平行に取り付けられ、段付け部材26または27の少なくとも一方が回転され、段付け部材26,27の隆起28のかみ合い部分の間に繊維のシートが給送されて第一段付け部材26の周囲に繊維のシートが概ね整合され、第一段付け部材26の隆起28と第一段付け部材26の隆起28の外面に沿った繊維のシートの概ね平行な固定部分24との間の空間に繊維16の弧状部分を形成する。・・・ 」の記載、及び第1図?第4図より、引用発明の繊維16の糸33は、力が加わり、変形されて繊維16の弧状部分を形成し、その形状を保つものであるから、繊維16の糸33の変形も、塑性変形といえる。
また、引用発明の「繊維16の給走方向」は、引用刊行物の第4図より、第一段付け部材26の回転方向(第4図では時計回り)に一致するから、引用発明の「第二段付け部材27及び第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の上流側に配置され、配分された複数の繊維16の糸33を第二段付け部材27と第一段付け部材26との間に給走し、前記繊維16の糸33が第二段付け部材27と第一段付け部材26との間を通過したとき、第二段付け部材27の隆起28により第一段付け部材26上の対応する隆起28間の空間に前記繊維16の糸33が圧入され、前記繊維16の糸33が変形されて弧状部分となる繊維16の糸33を給走する手段」は、本願発明の「雄型ロール及び雌型ロールのいずれかの回転方向の上流側に配置され、所定の配列方式で複数の糸を雄型ロールと雌型ロールとの間に供給し、前記糸が雄型ロールと雌型ロールとの間を通過したとき、雄型ロールのリブにより雌型ロール上の対応溝に前記糸が圧入され、前記糸が塑性変形されてループ形状となる糸供給デバイス」に相当する。

f.引用発明の「繊維16の給走方向」は、引用刊行物の第4図より、第一段付け部材26の回転方向(第4図では時計回り)に一致する。そうすると、引用発明の「超音波溶接機30」はロールではないので、引用発明の「超音波溶接機30」と本願発明の「ロールのループ固定デバイス」とは、「ループ固定デバイス」の点で共通するが、それ以外の構成に関して、引用発明の「第一段付け部材26の、繊維16の給走方向の下流側に配置され、且つ第一段付け部材26の外周面との間に間隔を有するように第一段付け部材26と対向して配置され、前記繊維16に融着のためのエネルギを出力する超音波溶接機30」は、本願発明の「雌型ロールの回転方向の下流側に配置され、且つ雌型ロールの外周面との間に間隔を有するように雌型ロールと対向して配置され、前記糸に溶融可能なエネルギーを供給するロールのループ固定デバイス 」に相当する。

g.引用発明の「基材12」は、「網目」と特定されていないので、引用発明の「基材12」と本願発明の「網目状の基材」とは、「基材」の点で共通するが、それ以外の構成に関して、引用発明の「基材12が、第一段付け部材26の外周面と前記超音波溶接機30との間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給手段であって、前記繊維16が前記間隔を通過したとき、前記第一段付け部材26の外周面にて変形された繊維16の一部が前記超音波溶接機30によるエネルギにより融着されて前記基材12と接合されて、変形された繊維16を前記基材12に固定することにより、脱離自在に係合し得るかぎ部分とループとを包含する形式のフアスナのループ部分を形成する基材供給手段」は、本願発明の「網目状の基材が、雌型ロールの外周面と前記ループ固定デバイスとの間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給デバイスであって、前記基材が前記間隔を通過したとき、前記雌型ロールの外周面にて塑性変形された糸の一部が前記ループ固定デバイスによるエネルギーにより溶融されて前記基材と結合することで、塑性変形された糸を前記基材に固定することにより、面ファスナー用ループ片を形成する基材供給デバイス」に相当する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
「外周面を有し、回転可能な雄型ロールと、外周面を有し、回転可能な雌型ロールであって、雄型ロールの外周面と回転しながら接触可能な雌型ロールとを備え、雄型ロールの外周面に複数本の縦長いリブと、雌型ロールの外周面に前記リブと対応する複数本の縦長い溝とが形成され、雄型ロールと雌型ロールとが接触すると、前記リブが前記溝に収容されるループ形成デバイスと、
雄型ロール及び雌型ロールのいずれかの回転方向の上流側に配置され、所定の配列方式で複数の糸を雄型ロールと雌型ロールとの間に供給し、前記糸が雄型ロールと雌型ロールとの間を通過したとき、雄型ロールのリブにより雌型ロール上の対応溝に前記糸が圧入され、前記糸が塑性変形されてループ形状となる糸供給デバイスと、
雌型ロールの回転方向の下流側に配置され、且つ雌型ロールの外周面との間に間隔を有するように雌型ロールと対向して配置され、前記糸に溶融可能なエネルギーを供給するループ固定デバイスと、
基材が、雌型ロールの外周面と前記ループ固定デバイスとの間に形成された間隔を通過するよう連続的に供給する基材供給デバイスであって、前記基材が前記間隔を通過したとき、前記雌型ロールの外周面にて塑性変形された糸の一部が前記ループ固定デバイスによるエネルギーにより溶融されて前記基材と結合することで、塑性変形された糸を前記基材に固定することにより、面ファスナー用ループ片を形成する基材供給デバイスと
を有する面ファスナー用ループ片の製造装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
糸に溶融可能なエネルギーを供給するループ固定デバイスについて、本願発明では、ロールのループ固定デバイスであるのに対して、引用発明では、超音波溶接機30であって、ロールではない点。
[相違点2]
基材について、本願発明では、網目状の基材であるのに対して、引用発明では、基材は網目状とは特定されていない点。

上記相違点について検討する。
(相違点1について)
拒絶査定で、周知例として挙げられた、特表平9-501590号公報(以下「周知例1」という。)には、「図8Bは、固定用材料18が接着剤及び熱(超音波)接合の両方により第1の基材に取り付けられる図8Aに示す方法の実施例である。詳細に述べると、図8Bに示す方法は、ロータリー超音波アンビル63とロータリー超音波ホーン65を備える点を除いて図8Aに示す方法と同一である。図8Bを参照して分かるように、超音波接合のパターンは、テープ集合体62の全表面を覆うことはなく、固定用材料の2つの部分からなる領域と、該領域から僅かにはみ出た外側縁部、及び固定用材料の2つの部分を分離する領域に限定される。さらに、図8Bに示す方法は、第1の基材16が固定用材料18を覆うことがなく、事実、該固定用材料より約0.125 インチだけ手前で止まるような状態で、該第1の基材が折り畳み領域48において折り畳まれる点で図8Aに示す方法と異なる。」(23頁末行?24頁9行)と記載されている。また、図8(FIG.8B)には、「ロータリー超音波アンビル63とロータリー超音波ホーン65とがテープ集合体62を挟んで対向して設けられている」点が示されている。
同じく、拒絶査定で、周知例として挙げられた、特開2001-8713号公報(以下「周知例2」という。)には、「一方、長繊維不織ウエブに散点状の部分的熱融着部を設けて、長繊維不織布Bを作成する。この熱融着部を設ける方法としては、一対の加熱されたエンボスロールまたは加熱されたエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、部分的に穴が設けられた板やネットを当てて、その上から熱風処理を施し、熱風が当たる部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、一対のエンボスロールまたはエンボスロールとフラットロールからなる超音波融着装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法等が挙げられる。」(段落【0046】)と記載されている。また、図5には、「フラットロール9とエンボスロール8とが面ファスナ雌材用不織布1を挟んで対向して設けられている」点が示されている。
同じく、拒絶査定で、周知例として挙げられた、特開2009-261824号公報(以下「周知例3」という。)には、「また、図5に示す止着テープ製造装置90aのように、押圧手段95が、超音波溶着用の超音波ホーン96とパターンロール98とから構成される場合には、パターンロール98として、押圧面に、目的とする止着テープの凹部の形状に対応した凸部が形成されたものを好適に用いることができる。なお、押圧面の凸部の形状については、形成する凹部の形状に応じて適宜選択することができる。なお、超音波ホーンは、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換する振動子を有し、振動子にて変換された機械的振動エネルギーを、超音波ホーンの押圧面から被接合体(即ち、長尺フック材と長尺基材シート)の境界面に伝達させ、境界面に生じる摩擦熱によって被接合体を融着させることができる。本発明の止着テープ製造装置においては、被接合体が溶融した際に圧力を加え、パターンロール98の押圧面の凸部の形状を、長尺フック材の両側縁部に刻設する。図5においては、超音波ホーン96として固定式のプレーンのものを図示したが、これに限られず、回転可能なプレーンとしても良い。」(段落【0065】)と記載されている。
周知例1の「ロータリー超音波ホーン65」、周知例2の「超音波融着装置を構成するエンボスロール8」、周知例3の「超音波ホーン96で回転可能なプレーンのもの」として例示されるように、2つの熱融着する部材の溶融のためのエネルギーを供給する手段として、ロール状の超音波手段は、本願優先権主張日前に、熱融着する部材を溶融固定する技術分野で周知の手段である。そのような周知のロール状の超音波手段と引用発明の超音波溶接機30とは、2つの帯状部材を融着するためのエネルギーを供給する作用において共通し、その配置において、2つの帯状部材を挟んで他のロール状部材に対向して設けられている点で共通するから、引用発明において超音波溶接機30に替えて周知のロール状の超音波手段を採用して、相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
面ファスナーの基材としては、網目状の基材は本願優先権主張日前に、周知のものであり(例えば、特開2003-180409号公報の段落【0017】?【0018】、【0026】?【0027】、図1及び図11、特開2003-299508号公報の段落【0012】及び図1参照)、引用発明の基材として周知の網目状の基材を採用して、相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

本願発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものである。

審判請求人は、審判請求書の「3-2.」において、「 本願発明は、高い係合性/剥離強度及び高密着度を備える面ファスナー用ループ片を提供し、同時に低コストで迅速に大量に面ファスナー用ループ片を提供する製造装置及び製造方法の提供が課題です(本願明細書の段落〔0006〕)。そして、本願発明は、特に、雌型ロールの対向にロールの超音波溶接機(固定デバイス)を備えていることが特徴です(本願請求項1)。これにより、溶融可能なエネルギーを糸や基材に確実に、かつ速やかに効率良く伝え、その結果として本願発明の諸課題を同時に達成することができたものです。
引用文献1は、本願発明が開示していますこれらの上記課題を同時に解決する課題をそもそも記載していません。引用文献1が開示しています発明における超音波溶接機は、ブロック的な構造です(引用文献1の図4)。すなわち、引用文献1における超音波溶接機はブロック的な構造であるために、一定の位置に固定されており、接合対象の糸や基材に連動して動くことはできません。更に、引用文献1においては、該文献の図4から明らかなように、接合対象の糸や基材との間には間隔があり、糸や基材を溶融可能とするエナルギーを速やかに効率良く伝えることは難しく、高い係合性/剥離強度及び高密着度と低コストで迅速で大量提供とを両立する本願発明の課題を到底解決することができません。」と主張している。
しかしながら、引用刊行物にも、「本発明によれば、・・・このシート材料によれば、製造が極めて安価でありながら上記フアスナに対する効果的なループ・フアスナ部分が得られ、従つてそれらはループ・フアスナ部分が、使い捨てのおむつ若しくはその他の衣類を脱離自在に着けさせたり、・・・などの限られた量の用途に志向された場合、経済的に使用される。」(上記記載事項(エ))と記載されているように、製造の低コスト化等については、引用発明においても課題としており、引用発明の課題と本願発明の課題とは共通するものである。また、審判請求人の主張する「溶融可能なエネルギーを糸や基材に確実に、かつ速やかに効率良く伝える」点の作用効果は、引用発明の超音波溶接機30に替えて周知のロール状の超音波手段を採用することによって生じる自明の効果であって、格別のものではない。よって、審判請求人の主張は採用できない。

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-17 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2011-190372(P2011-190372)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A44B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 龍平  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 三宅 達
蓮井 雅之
発明の名称 面ファスナー用ループ片の製造方法、製造装置及びループ片  
代理人 廣田 浩一  

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