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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1313615
審判番号 不服2014-25180  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-09 
確定日 2016-04-20 
事件の表示 特願2010- 79435「有機電界発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日出願公開、特開2011-210678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年3月30日の出願であって、平成25年11月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年2月26日に手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年8月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、平成27年8月12日に上申書を提出し、審査官が同年1月21日に作成した、特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)の内容に対して反論している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年12月9日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「基板と、第1の電極と、有機電界発光層と、第2の電極と、低屈折率層と、TFT基板と、透明基板とをこの順に有し、コンタクトホールを介して前記TFT基板と前記第2の電極が接続され、前記有機電界発光層からの発光を前記透明基板から出射する有機電界発光装置であって、
前記第1の電極が、反射電極であり、
前記第2の電極が半透明金属膜と透明酸化導電膜とからなり、
前記第1の電極と、前記半透明金属膜と、前記透明酸化導電膜と、前記低屈折率層とで、3つの共振器を構成し、
前記有機電界発光層が、第1の共振器の光路長調整層となり、
前記透明酸化導電膜が、第2の共振器の光路長調整層となり、
前記低屈折率層が、第3の共振器の光路長調整層となり、
前記第1の電極と前記透明基板の間の薄膜層が、次関係式、φ1j/π+φ2j/π+Σni・di=((2m-1)λj/4))±0.1λjを満たすことを特徴とする有機電界発光装置。
ただし、niは、前記第1の電極から第i層目の薄膜の屈折率を表す。diは、前記第1の電極からの前記第i層目の薄膜の膜厚を表す。mは、自然数1、2、・・・で、前記共振器のモード数を示す。λjは、第j共振器の共振波長であり、jは1?3の自然数である。φ1jは、j共振波長に対応する前記有機電界発光層から前記第1の電極までの位相ずれを表す。φ2jは、光が前記第1の電極を通過した時の位相ずれを表す。」(以下「本願発明」という。)

なお、平成26年12月9日付けの手続補正は、平成26年2月26日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲(以下「補正前」という。)における請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2を新たに請求項1とし、補正前の請求項3ないし8をそれぞれ新たな請求項2ないし7とするものであり、補正前の請求項2は願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項4であるから特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、また、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。

3 引用例の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-27108号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板ディスプレイ装置及びその製造方法に係り、さらに詳細には、光取り出し効率及び輝度が向上し、かつ製造が容易な平板ディスプレイ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】

・・・略・・・

【0010】
特許文献1には、無機EL(ElectroLuminescence)素子が形成されている透光性基板の外面に、無機EL素子と同等ないしそれ以上のサイズを有する集光用のマイクロレンズを複数個設置した無機EL装置が開示されている。透光性基板と空気との界面に、臨界角以上の角度に入射した光がマイクロレンズ内では臨界角以下の入射角を有して全反射を減らし、光の射出方向を所定の方向に指向させて、その方向での輝度を向上させる。しかし、前記特許文献1では、EL素子が面光源であるため、当該EL素子と同等ないしそれ以上のサイズを有するマイクロレンズを利用した場合には集光されず、かえって広がるEL光が必然的に発生し、また、隣接したEL素子による像との重複によって像の鮮明度が低下するという問題点がある。
【0011】
特許文献2には、厚さ方向に周囲より屈折率の高い材料で形成された高屈折率部を有している基板に形成されたEL素子が開示されている。EL素子の光を、高屈折率部を通過して射出させて、光取り出し効率を向上させる。しかし、前記特許文献2では、高屈折率部を通過したEL光が特許文献2の図1に示したように拡散光であるので、その正面から見るとき、輝度が大きく向上しないという問題点がある。
【0012】
特許文献3には、有機EL素子を構成している下部電極と透光性基板の外面との間に1あるいは複数の集光用レンズが形成され、前記有機EL素子と前記集光用レンズとが対応するように設けられたことを特徴とする有機EL発光装置が開示されている。集光用レンズを通過したEL素子の光を基板と空気との界面に臨界角以下に入射させて、光取り出し効率を向上させる。しかし、前記特許文献3では、隣接したEL素子による像との重複によって像の鮮明度が低下するという問題点がある。

・・・略・・・

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の色々な問題点を解決するためのものであって、光取り出し効率及び輝度が向上し、かつ製造が容易な平板ディスプレイ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。」
イ 「【発明の効果】
【0025】
本発明の平板ディスプレイ装置及びその製造方法によれば、次のような効果が得られる。
【0026】
第一に、各副画素から放出される光路上に複数の層を備えた光共振層を備え、前記光共振層に備えられた層が、各副画素から放出される光の波長によって適切な厚さを有することによって、光取り出し効率を高め、かつ輝度を向上させうる。
【0027】
第二に、高屈折率の層と低屈折率の層とが交互に備えられた複数の層の構造の光共振層を利用して、光共振層の製造を容易に行える。
【0028】
第三に、複数の層を備えた光共振層の形成において、一つの層を形成し、その層をエッチングして適切な段差を有させ、その上部に他の層を形成させる方法を通じて、光共振層の製造工程を単純化させうる。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0030】
図1は、本発明の望ましい第1実施形態による平板ディスプレイ装置、特に、電界発光ディスプレイ装置を概略的に示す断面図である。
【0031】
図1を参照すれば、基板102の上部に、それぞれ赤色、緑色及び青色の光を放出する副画素を備えた複数の画素が備えられている。本実施形態による平板ディスプレイ装置は、前記副画素が電界発光素子で備えられ、各電界発光素子には、少なくとも一つの薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が備えられた場合である。
【0032】
電界発光ディスプレイ装置は、その画素の発光如何を制御する方式によって、単純マトリックスタイプの受動駆動型(Passive マトリックス:PM)電界発光ディスプレイ装置と、TFTを備えた能動駆動型(Active マトリックス:AM)電界発光ディスプレイ装置とに分けられるところ、本実施形態による電界発光ディスプレイ装置は、AM電界発光ディスプレイ装置である。
【0033】
前記電界発光素子は、図1を参照すれば、基板102の上部に第1電極131が備えられており、前記第1電極131の上部に前記第1電極131と対向した第2電極134が備えられ、前記第1電極131と前記第2電極134との間に、発光層を備える中間層133が備えられる。そして、前記第1電極131には、少なくとも一つのTFTが備えられ、必要に応じて、キャパシタがさらに備えられてもよい。
【0034】
前記基板102は、透明なガラス材が使われうるが、これ以外にも、アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、マイラー、その他のプラスチック材料が使用されうる。また前記基板102上には、基板の平滑性を維持し、不純物の侵入を防止するために、SiO_(2)でバッファ層(図示せず)を備えてもよい。
【0035】
前記第1電極131は、アノード電極の機能を行い、前記第2電極134は、カソード電極の機能を行う。もちろん、前記第1電極131と前記第2電極134との極性は、逆になってもよい。
【0036】
本実施形態による電界発光ディスプレイ装置は、前記基板102の逆方向、すなわち、前記第2電極134の方向に光が取り出される、いわば、前面発光型の電界発光ディスプレイ装置である。したがって、前記第1電極131が反射型電極となり、前記第2電極134が透明電極となる。
【0037】
前記第1電極131は、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、及びこれらの化合物で反射膜を形成した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)を形成した構造を取れる。このとき、前記第1電極131は、副画素に対応するように備えられうる。
【0038】
そして、前記第2電極134は、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、及びこれらの化合物を前記中間層133の方向に蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極やバス電極ラインを形成した構造を取れる。前記第2電極134は、各副画素に対応するようにまたは全面的に備えられうる。
【0039】
これらの電極は、これ以外にも多様な変形が可能である。
【0040】
前述したように、前記第1電極131には、TFTが連結されるところ、前記TFTは、半導体層122と、前記半導体層122の上部に形成されたゲート絶縁膜123と、前記ゲート絶縁膜123の上部のゲート電極124と、を備える。前記ゲート電極124は、TFTのオン/オフ信号を印加するゲートライン(図示せず)と連結されている。そして、前記ゲート電極124が形成される領域は、半導体層122のチャンネル領域に対応する。もちろん、TFTは、図1に示したような構造に限定されず、有機TFTなど、多様なTFTを備えうる。
【0041】
前記ゲート電極124の上部には、層間絶縁膜125が形成され、コンタクトホールを通じてソース電極126及びドレイン電極127がそれぞれ半導体層122のソース領域及びドレイン領域に接するように形成される。
【0042】
前記ソース電極126及びドレイン電極127の上部には、SiO_(2)からなる平坦化膜または保護膜128が備えられ、前記平坦化膜128の上部には、アクリルまたはポリイミドで形成される画素定義膜129が備えられている。
【0043】
そして、図面に示していないが、前記TFTには、少なくとも一つのキャパシタが連結される。そして、このようなTFTを含む回路は、必ずしも図1に示した例に限定されず、多様に変形可能である。
【0044】
一方、前記ドレイン電極127に電界発光素子が連結される。前記電界発光素子のアノード電極となる第1電極131は、前記平坦化膜128の上部に形成されており、その上部には、絶縁性画素定義膜129が形成されており、前記画素定義膜129に備えられた所定の開口部に発光層を備えた中間層133が形成される。図1には、前記中間層133が前記副画素にのみ対応するようにパターニングされたと示されているが、それは、各副画素の構成を説明するために、便宜上、そのように示したものであり、前記中間層133は、隣接した副画素の中間層と一体に形成されうる。
【0045】
前記中間層133は、有機物または無機物で備えられ、有機物の場合には、低分子または高分子有機物で備えられうる。低分子有機物を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、有機発光層(EML:EMission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)が単一あるいは複合の構造で積層されて形成され、使用可能な有機材料も銅フタロシアニン(CuPc)、N,N-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとして、多様に適用可能である。これらの低分子有機物は、前述したようなパターンで備えられ、前述したようなマスクを利用して真空蒸着の方法で形成される。
【0046】
高分子有機物の場合には、大体、HTL及びEMLで備えられた構造を有し、このとき、前記HTLにPEDOTを使用し、EMLにPPV(Poly-Phenylene Vinylene)系及びポリフルオレン系など高分子有機物質を使用する。
【0047】
前記中間層133の構造及び材料についての説明は、後述する実施形態においても同一に適用され、もちろん、その変形も可能である。
【0048】
そして、基板102上に形成された電界発光素子は、対向部材(図示せず)によって密封される。対向部材は、前記基板102と同一にガラスまたはプラスチック材で備えられうるが、それ以外にも、メタルキャップで形成されてもよい。
【0049】
一方、前記副画素の上部に光共振層が備えられるところ、それぞれの副画素が電界発光素子として備えられる本実施形態の場合には、図1に示したように、前記第2電極134の上部に光共振層121が備えられる。もちろん、図示したものと違って、前記第2電極134の上部に他の層が必要に応じてさらに備えられてもよく、この場合、前記光共振層121は、そのような層の間のうちどこにも備えられうる。それは、後述する変形例及び実施形態においても同一である。
【0050】
このとき、前記光共振層121は、二つ以上の層1211,1212を備え、前記副画素、すなわち、前記発光層から放出される光の波長によって前記光共振層121の厚さが異なって備えられている。そして、前記光共振層131は、高屈折率の層と低屈折率の層とを交互に備えうる。ここで、高屈折率または低屈折率とは、前記光共振層121に備えられた層の屈折率の相対的な大きさを意味する。これは、後述する実施形態においても同一である。本実施形態による電界発光ディスプレイ装置の場合には、前記光共振層121が二層1211,1212を備える。
【0051】
前記のような構造において、前記光共振層121の二層のうち前記副画素からの距離、すなわち、前記第2電極134からの距離が近い層1211を第1層とし、他の層1212は、第2層とするとき、前記第1層1211は、低屈折率の層であり、前記第2層1212は、高屈折率の層でありうる。この場合、発光層から放出された光がその上部に進むにつれて、低屈折率の層と高屈折率の層とを過ぎ、その結果、左右に広がる光が副画素、すなわち、ディスプレイ装置の全面に集中する効果をもたらし、その結果、輝度の向上を図りうる。
【0052】
このとき、前記発光層から放出された光路を説明すれば、前記第1層1211及び前記第2層1212をそのまま通過して取り出される光がある一方、前記第1層1211内に進入して、低屈折率の層である前記第1層1211と高屈折率の層である前記第2層1212との間の界面で反射された後、再び低屈折率の層である前記第1層1211と前記第1層1211の下部の層との界面で反射されて、前記第2層1212に進入して外部に取り出される光がある。
【0053】
このような二つの光の光路差は、前記第1層1211の厚さの2倍であるところ、前記第1層1211の厚さをt1とすれば、光路差は2t1となる。そして、前記後者の光は、原位相と同じ位相を有する。したがって、前記副画素から放出される光の波長をλとするとき、光路差が波長の整数倍となる場合に補強干渉が発生するので、前記第1層1211の厚さt1が下記(1)式を満足させる場合に補強干渉が発生して、光取り出し効率及び輝度が向上する。
【0054】
t1=(nλ)/2 …(1)
前記(1)式で、nは自然数である。各副画素別に放出する光の波長が異なるので、各副画素から放出する光の波長によって前記(1)式を満足させるように前記第1層1211の厚さを調節して、光取り出し効率及び輝度を向上させうる。
【0055】
一方、前記発光層から放出された光のうち、前記第1層1211と前記第2層1212とを全てそのまま通過する光がある一方、前記第2層1212の上面で反射された後、前記第1層1211の下面で再び反射され、その後に前記第2層1212を通じて外部に取り出される光がありうる。この場合、二つの光の光路差は、前記第1層1211の厚さをt1とし、前記第2層1212の厚さをt2とすれば、2(t1+t2)となる。そして、高屈折率の層である前記第2層1212の上面で反射され、前記第1層1211の下面で反射された後、再び前記第2層1212を通過して取り出される光は、高屈折率の層である前記第2層1212の上面で反射される時に位相が180°変わる。したがって、前記副画素から放出される光の波長をλとするとき、光路差が半波長の奇数倍となる場合に補強干渉が発生するので、前記光路差が下記(3)式を満足させる場合に補強干渉が発生して、光取り出し効率及び輝度が向上する。
【0056】
2(t1+t2)=(2k+1)λ/2 …(3)
前記(3)式で、kは、自然数である。前記(3)式に前記(1)式のt1値を代入すれば、次の(2)式が導出される。
【0057】
t2=(2m+1)λ/4 …(2)
前記(2)式で、mは、k-n、すなわち、自然数である。前記第2層1212の厚さt2が前記(2)式を満足させることによって、光取り出し効率及び輝度を向上させうる。このとき、各副画素別に放出する光の波長が異なるので、各副画素から放出する光の波長によって前記(1)式を満足させるように、前記第2層1212の厚さt2を調節することが望ましい。
【0058】
一般的に、電界発光素子に備えられる各層の屈折率は、約1.5であるので、前記光共振層121の低屈折率の層である第1層1211の材料は、屈折率が約1.5以下である材料を使用すればよい。このようなものとしては、珪酸マトリックス、メチルシロキサンポリマー、シロキサン、またはTi-O-Siのような材料、アクリル酸ポリマーまたはエポキシポリマーなどのポリマー、SiO_(2)、HfO_(x)、Al_(2)O_(3)などの酸化物、そして、MgF、CaFなどのフッ化物などを挙げられる。そして、前記光共振層121の高屈折率の層である第2層1212の材料は、屈折率が1.5以上である材料を使用すればよい。このために、SiN_(x)、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)、またはTa_(2)O_(x)などの高屈折粒子が分散されているゾルゲル材料を使用できる。
【0059】
このとき、前記光共振層121の各層1211,1212は、各副画素に対応させてもよく、各画素に対応させてもよく、前画素にわたって一体に形成させてもよい。もちろん、各副画素から放出する光の波長によって、前記各層1211,1212の厚さは、前述したように変わることが良い。
【0060】
一方、図1に示したように、前記光共振層121の二層1211,1212は、基板102の全面にわたって備えられているが、図2に示したように、前記光共振層121の二層1211,1212を各副画素に対応するようにパターニングして備えてもよく、図3に示したように、前記光共振層121の第1層1211は、各副画素に対応するようにパターニングされ、第2層1212は、全面にわたって備えてもよく、図4に示したように、第1層1211は、全面にわたって備え、第2層1212は、各副画素に対応するようにパターニングさせてもよいなど、多様な変形が可能である。もちろん、そのような場合にも、各層の厚さは、前述した(1)式及び(3)式の条件を満足させるように備えられる。」
エ 「【図1】


オ 電界発光ディスプレイ装置を概略的に示す断面図である図1(上記エ)からみて、コンタクトホールを通じてソース電極126及びドレイン電極127がそれぞれ半導体層122のソース領域及びドレイン領域に接するといえるならば(【0041】(上記ウ))、第1電極131も、平坦化膜128を貫通するコンタクトホールを通じて、TFTに接する、すなわち連結されていることが当業者に自明である。また、図1からみて、TFTが基板102の直上に配置されていることが見て取れる。
カ 上記アないしオからみて、引用例1には、
「基板102の上部に第1電極131が、前記第1電極131の上部に前記第1電極131と対向した第2電極134が、前記第1電極131と前記第2電極134との間に、有機発光層を備える中間層133がそれぞれ備えられた電界発光素子で副画素が備えられ、前記基板102の逆方向、すなわち、前記第2電極134の方向に光が取り出される、前記第1電極131が反射型電極となり、前記第2電極134が透明電極となる、前面発光型の電界発光ディスプレイ装置であって、
前記第1電極131には、TFTがコンタクトホールを通じて連結され、前記TFTは、基板102の直上に配置され、半導体層122と、前記半導体層122の上部に形成されたゲート絶縁膜123と、前記ゲート絶縁膜123の上部のゲート電極124と、を備え、
前記第2電極134は、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、及びこれらの化合物を前記中間層133の方向に蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極やバス電極ラインを形成した構造をなし、
前記第2電極134の上部に光共振層121が備えられ、前記光共振層121は、低屈折率の層である第1層1211と高屈折率の層である第2層1212を備え、前記副画素、すなわち、前記発光層から放出される光の波長によって前記光共振層121の厚さが異なって備えられており、
前記副画素から放出される光の波長をλとするとき、光路差が波長の整数倍となる場合に補強干渉が発生するので、前記第1層1211の厚さt1が下記(1)式を満足させる場合に補強干渉が発生し、前記第2層1212の厚さt2が下記(2)式を満足させることによって補強干渉が発生する、
電界発光ディスプレイ装置。

t1=(nλ)/2 …(1)
前記(1)式で、nは自然数である。
t2=(2m+1)λ/4 …(2)
前記(2)式で、mは、自然数である。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-115679号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【背景技術】
【0002】
EL装置は、発光層と、該発光層の光を共振する共振器構造とを有する光出力部を複数有している。共振器構造は、発光層を挟み込んだ電極間、光が通過するその他の層、部材等を含んで構成されている。この共振器構造で共振した光の共振波長は、EL装置から出射する光の出射角により変化し、これによってEL装置から出射する光の強度が光の出射角によって変化することが知られている。
【0003】
この点に関し、カラー発光を行う従来のEL装置では、各色画素を構成する各光出力部の発光層が発光する赤、緑、青の各色の光の波長と、各光出力部の共振器構造の共振波長との関係に関する対策が十分ではなかった。」
イ 「【0021】
<第1実施形態>
<色ずれの発生原理>
本実施形態の構成について説明する前に、まず色ずれの発生原理について説明する。
【0022】
図1(A)及び図1(B)は、EL装置に含まれる共振器構造の特性と光の出射方向との関係を説明するための図である。
【0023】
図1(A)及び図1(B)に示すように、EL装置1の光出力部10には、電界発光を行う発光層を含む有機層3の両側に電極等による反射面5,7が形成され、この反射面5,7により共振器構造9が形成されるようになっている。このため、このEL装置1から視認者側に出射される光は、有機層3で発光されて反射面5,7で反射されることなく一方の反射面5を透過した光と、有機層3で発光されて反射面5,7で1又は複数回反射されて一方の反射面5を透過した光との重ね合わせたものになっている。ここで、反射面5,7は、屈折率が大きく変化する境界面などにより形成される。反射面5,7として機能するものとしては、例えば、電極、光透過特性調整用の調整層の表面、有機層3を封止するための封止膜の表面、及びガラス基板(透明基板)の表面等が挙げられる。また、光出力部10とは、発光を行う有機層3と、その有機層3で発光された光の経路上に形成される共振器構造9とを含めた構成をいう。」
ウ 「【0037】
<EL装置の構成>
図9は、本発明の第1実施形態に係るEL装置の構成を概略的に示す断面図である。このEL装置21は、トップエミッションタイプであり、図9に示すように、透明基板であるガラス基板23と、そのガラス基板23上に形成された素子部25と、その素子部25の上に形成された調整層27と、その調整層27の上から素子部25全体を覆うように形成された封止膜29とを備えている。素子部25は、基板23側から順に、第1の電極31、有機層33及び第2の電極35を備えている。有機層33が第1及び第2の電極31,35によって挟み込まれている。
【0038】
また、このEL装置21では、カラー発光を行うため、図10に示すように、赤、緑、青の各色に対応して第1ないし第3の光出力部51r,51g,51bが複数配設されている。ここで、光出力部51r,51g,51bとは、発光を行う有機層33と、その有機層33が発光した光の経路に形成される上述の共振器構造9(図1(A)及び図1(B)参照)とを含めた構成をいう。共振器構造9の具体例及びその特性等については、上述の通りである。」
エ 「【0049】
また、共振器構造9の要素としては、基本的には、光が通過する領域に存在する全ての層、部材が対象となりうる。具体的には、EL装置がトップエミッションタイプの場合、発光層からの光は最終的には封止膜29を透過して外部へ出射されるため、共振器構造9の要素は、電極31,35間に形成される各層、調整層27、封止膜29等となる。そして、これらの要素の組み合わせによって共振器構造9が構成されるようになっている。但し、電極31,35間に形成される共振器構造要素が全体の共振器構造9の特性に最も大きく影響する。
【0050】
各光出力部51r,51g,51bの発する光の透過スペクトルの共振ピーク波長(λ2r,λ2g,λ2b)の調節は、例えば、各光出力部51r,51g,51bで発光される光の発光スペクトルの発光ピーク波長(λ1r,λ1g,λ1b)に対し、共振器構造9中の各層の光学膜厚(nd、nは層の屈折率、dは層の膜厚)を調節することにより行われる。光学膜厚の調節は、各層の膜厚や材料を調節することにより行われる。共振器構造9の光学膜厚(nd)を大きくすると、共振ピーク波長は長波長側に移動する。一方、共振器構造9の光学膜厚(nd)を小さくすると、共振ピーク波長は短波長側に移動する。」
オ 「【0067】
また、本実施例では共振器構造要素として電極間の共振器構造要素のみを考慮するようにしたが、調整層27、封止膜29等、外部に出射される発光層からの光が通過する各層を全て含めた共振器構造要素を加味して第1ないし第3の光出力部51r,51g,51bの共振器構造9の共振ピーク波長と各色の発光ピーク波長との関係を設定することが好ましい。」
カ 「【0077】
<第3実施形態>
図19は、本発明の第3実施形態に係るEL装置の構成を概略的に示す断面図である。なお、図19の構成において、上記の図9の構成とおおよそ対応する部分には同一の参照符号を付し、説明の重複を回避することとする。
【0078】
本実施形態に係るEL装置61は、図19に示すように、ボトムエミッションタイプであり、発光層の発する光は最終的に基板23を透過して外部に出射される。
【0079】
このため、共振器構造9の要素として電極31,35間の共振器構造以外に考慮するとすれば、ガラス基板23自体、及び素子部25とガラス基板23との間に介在される図示しない層(平坦化膜等)など、発光層の発する光が通過する領域に存在する各層、各部材が共振器構造として挙げられる。」
キ 上記アないしカからみて、引用例2には、
「トップエミッションタイプ又はボトムエミッションタイプであるEL装置において、
電界発光を行う発光層を含む有機層3の両側に電極等による反射面5,7が形成され、この反射面5,7により共振器構造9が形成されるようになっており、
反射面5,7として機能するものとしては、例えば、電極、光透過特性調整用の調整層の表面、有機層3を封止するための封止膜の表面、及びガラス基板(透明基板)の表面等が挙げられ、
共振器構造9の要素としては、基本的には、光が通過する領域に存在する全ての層、部材が対象となり得、
トップエミッションタイプの場合、発光層からの光は最終的には封止膜29を透過して外部へ出射されるため、共振器構造9の要素は、電極31,35間に形成される各層、調整層27、封止膜29等となり、
ボトムエミッションタイプの場合、発光層の発する光は最終的に基板23を透過して外部に出射されるため、共振器構造9の要素として電極31,35間の共振器構造以外に考慮するとすれば、ガラス基板23自体、及び素子部25とガラス基板23との間に介在される平坦化膜等の層、発光層の発する光が通過する領域に存在する各層、各部材が共振器構造として挙げられる、
EL装置。」(以下「引用例2の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

(3)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-277507号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0020】
<有機EL装置の断面構造>
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL装置(発光装置)1の概略を示す断面図である。有機EL装置1は、発光パネル3とカラーフィルタパネル30とを備える。
【0021】
発光パネル3は、図示のように複数の発光素子(画素)2(2R,2G,2B)を有する。本実施形態の有機EL装置1は、フルカラーの画像表示装置として使用される。発光素子2Rは放出光の色が赤色である発光素子であり、発光素子2Gは放出光の色が緑色である発光素子であり、発光素子2Bは放出光の色が青色である発光素子である。
これら各発光素子2には、給電用のTFT(薄膜トランジスタ)及び配線等が接続されている。このTFT及び配線等は、基板10上において、例えば、適当な層間絶縁膜間に構築される。
なお、図1では、図面の見易さ等を優先するため、前記TFT及び配線等の図示はされていない(ちなみに、前記層間絶縁膜は、例えば、後述する反射層12及び第1電極層18間や反射層12及び基板10間、等々様々な場所に形成されうるが、これも不図示。)。また、図1では、3つの発光素子2しか示されていないが、実際には、図示よりも多数の発光素子が設けられている。以下、構成要素の添字のR,G,Bは、発光素子2R,2G,2Bに対応する。
【0022】
図示の発光パネル3はトップエミッションタイプである。発光パネル3は、基板10を有する。基板10は、例えばガラスのような透明材料で形成してもよいし、例えばセラミック又は金属のような不透明材料で形成してもよい。
【0023】
基板10上の少なくとも発光素子2と重なる位置には、一様な厚さの反射層12が形成されている。反射層12は、例えばAl(アルミニウム)若しくはAg(銀)又はこれらを含む合金などの反射率の高い材料から形成されており、発光素子2から進行してくる光(発光素子2での発光を含む)を図1の上方に向けて反射する。
なお、この反射層12には、上述のAl・Agのほか、例えば、Cu、Zn、Nd、Pdなどが添加されてよい。これにより、耐熱性の向上等が見込まれる。
【0024】
基板10上には、発光素子2を区分する隔壁(セパレータ)16が形成されている。隔壁16は、例えばアクリル、エポキシ又はポリイミドなどの絶縁性の樹脂材料で形成されている。
【0025】
各発光素子2は、第1電極層18、第2電極層22、並びに、第1電極層18及び第2電極層22の間に配置された発光機能層20を有する。
本実施形態では、第1電極層18(18R,18G,18B)は、画素(発光素子2)にそれぞれ設けられる画素電極であり、例えば陽極である。第1電極層18は、例えばITO(indium tin oxide)又はZnO_(2)のような透明材料から形成されている。第1電極層18の厚さは、発光色に応じて異なっている。つまり、第1電極層18R,18G、18Bは、互いに異なる厚さを有する。なお、この点については、後の<光反射及び透過モデル>の項においてより詳細に説明する。」
イ 「【0030】
発光機能層20は白色発光するが、反射層12と第2電極層22との間で光が往復することにより、個々の発光素子2は特定の波長の光が増幅された光を放出する。つまり、発光素子2Rでは赤色の波長の光が増幅されて放出され、発光素子2Gでは緑色の波長の光が増幅されて放出され、発光素子2Bでは青色の波長の光が増幅されて放出される。この目的のため、発光素子2R,2G,2Bでは、反射層12と第2電極層22との間の光学的距離d(d_(R)、d_(G)、d_(B))が異なっている。なお、図中のd(d_(R)、d_(G)、d_(B))は、光学的距離を示しており、実際の距離を示しているのではない。なお、この点については、後の<光反射及び透過モデル>の項においてより詳細に説明する。」
ウ 「【0037】
<光反射及び透過モデル>
図2は、発光機能層20を発した光の軌跡を簡略的に示す模式図である。発光機能層20を発した光のうちの一部は、図中左方に示すように、第1電極層18の側に向かって進行し、反射層12の発光機能層20の側の面で反射する。この反射のときの位相変化をφ_(D)とする。他方、前記光の他の部分は、図中右方に示すように、第2電極層22の側に向かって進行し、当該第2電極層22の発光機能層20の側の面(第2電極層22における反射層12に対向する界面)で反射する。この反射のときの位相変化をφ_(U)とする。
これらの場合のうち、後者の場合、即ち光が第2電極層22で反射する場合、図2に示すように、当該光は、その反射の後、発光機能層20及び第1電極層18を透過して、反射層12の発光機能層18の側の面で再び反射する。以下、光の反射は、第2電極層22及び反射層12において、原理上ないし理想的には、無限に繰り返される。前者の場合、即ち光が反射層12で反射する場合についても、図示はしないが、同様である。
なお、図2において各界面での光の屈折による光路変化の図示は省略して、光路は単純な直線ないし曲線で示している。
【0038】
このような反射現象が生じることを前提に、本実施形態では、図2(あるいは図1)に示す光学的距離dが、以下の式(1)によって定められている。
2d+φ_(D)+φ_(U)=mλ … (1)
ここで、λは、共振対象として設定された波長〔nm〕であり、mは任意の整数である。なお、φ_(D)及びφ_(U)の意義は前述したとおりである。
【0039】
本実施形態では、前記のλ、ないしdは、図1に示すところからも明らかなように、発光素子2R,2G及び2Bの別に応じて定められる。より具体的には、これら発光素子2R,2G及び2Bは、上述のように、カラーフィルタ36R,36G及び36Bのそれぞれと一つのセットを構成するので、波長λとしては、これらカラーフィルタ36R,36G及び36Bの透過率のピークに相当する波長のそれぞれ(即ち、上述の通りλR=610nm,λ_(G)=550nm及びλ_(B)=470nm)が設定(ないし代入)されえ、光学的距離dとしては、これらλ_(R),λ_(G)及びλ_(B)それぞれに対応した、d_(R),d_(G)及びd_(B)(図1参照)が求められることになる。なお、このd_(R),d_(G)及びd_(B)の求根の際、式(1)中のφ_(D)及びφ_(U)としては、λR,λG及びλBそれぞれに対応した値(φ_(D)=φ_(DR),φ_(DG),φ_(DB)、あるいは、φ_(U)=φ_(UR),φ_(UG),φ_(UB))が使用される。
【0040】
そして、上記式(1)によって求められたd_(R),d_(G)及びd_(B)を実際の装置上で実現するため、本実施形態では、図1に示すように、第1電極層18(18R,18G及び18B)の厚さが、各発光素子2(2R,2G及び2B)について調整されている。
一般に、ある物質についての「光学的距離」は、当該物質の物理的厚さとその屈折率の積として表現されるから、第1電極層18の物理的厚さをt、その屈折率をn_(18)とすれば、当該第1電極層18及び前記発光機能層20全体の光学的距離Dは、
D=t・n_(18)+D_(20) … (2)
である。ただし、D_(20)は、発光機能層20についての光学的距離である。
この式(2)中、屈折率n_(18)は基本的に動かせないので、D=d_(R),D=d_(G)及びD=d_(B)のいずれかを成立させるためには、tを変動させる必要がある。このようにして、D=d_(R)のときのt_(R),D=d_(G)のときのt_(G)及びD=dBのときのtB、がそれぞれ見つけられることになり、これらに基づき、第1電極層18の厚さが調整される。なお、このt_(R),t_(G)及びt_(B)の求根の際、式(2)中のn_(18)としては、λ_(R),λ_(G)及びλ_(B)それぞれに対応した値(n_(18)=n_(18R),n_(18G),n_(18B))が使用される。
【0041】
以上のようなことから、本実施形態においては、発光機能層20、反射層12及び第2電極層22によって、光共振器が構成される。すなわち、発光機能層20を発した光は、反射層12及び第2電極層22間で反射を繰り返すことによって、ある特定の波長成分をもつ光だけが増幅的干渉を受け、ないしは、共振現象にかかわることになる。
例えば、発光素子2Rにおいては、その光学的距離d_(R)が、前記式(1)により、基本的に波長λ_(R)の整数倍として規定されているため、当該発光素子2Rでは、その波長λ_(R)を持つ光についての共振現象が生じる。そして、このように増幅された波長λ_(R)の光(即ち、赤色光)の一部は、第2電極層22が半透過性能をもつため、装置外部へと進行する(図中、第2電極層22を超えて上向きに延びる矢印参照。)。以上の結果、赤色が強調されることになる。
このようなことは、緑色・青色についても同様に生じる。」
エ 「【0053】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
(1) まず、上述した実施形態では、発光機能層20が白色発光する場合について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図6に示すように、発光機能層200が、上記実施形態の第1電極層18R,18G及び18Bがカラーフィルタ36R,36G及び36Bに対応するように形成されていたのと同様に、発光素子2R,2G,2Bにそれぞれ専用の発光機能層200R,200G及び200Bを備えてよい。これら発光機能層200R,200G及び200Bの各々は、隔壁16の画素開口内に配置されている。発光機能層200Rは赤色で発光し、発光機能層200Gは緑色で発光し、発光機能層200Bは青色で発光する。このような各色発光のためには、各発光機能層200R,200G及び200Bに含ませる有機EL物質を適宜変更すればよい。また、かかる構造を現実に製造するには、例えば、インクジェット法(液滴吐出法)等が用いられうる。

・・・略・・・

【0059】
(3) 上述した実施形態では、前記(i)?(vi)という前提を置いてシミュレーション計算が行われているが、本発明は言うまでもなく、かかる前提に縛られるものではない。
この点に関連して、以下では特に、低屈折率層222とパッシベーション層27の厚さに関して補足する。
【0060】
上述のように、上記実施形態に係る有機EL装置1では、共振器構造が、反射層12及び第2電極層22間の各層によって構成される場合が想定されており、かかる観点からすると、低屈折率層222とパッシベーション層27とは、当該共振器構造のいわば外にあることから、共振現象、あるいは、色純度向上効果には無関係であるかのようである。しかしながら、実際の装置上においては、これら各層(222,27)も、少なくとも、最終的に達成される色純度向上効果の優劣に関係をもつ。例えば、低屈折率層222に向かって第2電極層22を透過してくる光は、当該低屈折率層22の厚さで規定される光学的距離を余分に進行し、あるいは、第2電極層22及び低屈折率層222間の界面、及び、それとは反対側の低屈折率層222の界面等によって屈折・反射等する。そして、そのような様々な経歴を経た光は、例えば、前記共振器構造から取り出された光と干渉する可能性がある。この場合、そこで想定される相互干渉には、減衰的干渉等の望まれざる現象も含まれ得るが、そうであると、場合によっては、前記共振器構造により、あるいは構造層201-222の作用により、せっかく相当程度の半値幅低減が達成されたとしても、その効果が減殺されてしまうおそれも生じ得ることになってしまう。
【0061】
したがって、このような事情を鑑みるなら、低屈折率層222、あるいは、パッシベーション層27の厚さは、各発光素子2R,2G及び2Bに対応した発光色をもった光のスペクトルの半値幅を狭めるようなものとして設定されていることが好ましい。その厚さの確定には、理論的、あるいは実験的な推定手法や、シミュレーションによる推定手法等が用いられる。
【0062】
ちなみに、上記実施形態における(v)及び(vi)に係る前提(即ち、低屈折率層222の厚さ45〔nm〕、パッシベーション層27の厚さ225〔nm〕)は、そのような事情を勘案した上、試行錯誤的シミュレーションによって求められた好適値としての意義を持つ。
また、上述において、上記実施形態の実施例としての意義を持つ具体例における前提条件では、パッシベーション層27の厚さが225〔nm〕とされているのに、比較例における前提条件では、パッシベーション層27の厚さが220〔nm〕とされているのも、上に述べた事情が反映された結果である。すなわち、比較例は、既述のように低屈折率層222が存在しない場合であるが、そのような場合でありながら、色純度向上に係る、いわば最善を目指した結果が、“220〔nm〕”なのである(もっとも、比較例においてそのような最善値があてがわれたとしても、上記実施例が、当該比較例を凌駕する色純度向上効果を奏する(比較例は、実施例に及ばない)ことについては、既に述べたとおりである。)。

・・・略・・・

【0066】
(4) 上述の実施形態に係る有機EL装置1は、トップエミッションタイプであるが、本発明に係る発光装置は、ボトムエミッションタイプであってもよい。この場合、図1、あるいは図2を基準としてみれば、あたかも、反射層12の位置に“半透明半反射層”が、第2電極層22の位置に“反射層兼電極層”が、それぞれ位置付けられるかのようになる。
そして、この場合でも、前者の“半透明半反射層”を中心として、本発明に言う「第1層」及び「第2層」(あるいは、「高屈折率層」及び「不活性ガス」)が位置付けられれば、上記実施形態によって奏された作用効果と本質的に相違ない作用効果が奏されることに変わりはない。」
オ 上記アないしエからみて、引用例3には、
「発光パネル3とカラーフィルタパネル30とを備え、発光パネル3は、複数の発光素子(画素)2(2R,2G,2B)と基板10を有し、基板10上の少なくとも発光素子2と重なる位置には、一様な厚さの反射層12が形成され、各発光素子2は、第1電極層18、第2電極層22、並びに、第1電極層18及び第2電極層22の間に配置された発光機能層20を有する、有機EL装置であって、
反射層12の発光機能層20の側の面で反射のときの位相変化をφ_(D)とし、第2電極層22の発光機能層20の側の面(第2電極層22における反射層12に対向する界面)で反射のときの位相変化をφ_(U)とした場合、光学的距離dが、下記の式(1)によって定められることにより、発光機能層20、反射層12及び第2電極層22によって、光共振器が構成され、発光機能層20を発した光は、反射層12及び第2電極層22間で反射を繰り返すことによって、ある特定の波長成分をもつ光だけが増幅的干渉を受け、ないしは、共振現象にかかわることになるものであり、
低屈折率層222とパッシベーション層27も、少なくとも、最終的に達成される色純度向上効果の優劣に関係をもち、低屈折率層222、あるいは、パッシベーション層27の厚さは、各発光素子2R,2G及び2Bに対応した発光色をもった光のスペクトルの半値幅を狭めるようなものとして設定されていることが好ましい、
有機EL装置。

2d+φ_(D)+φ_(U)=mλ … (1)
ここで、λは、共振対象として設定された波長〔nm〕であり、mは任意の整数である。」(以下「引用例3の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「有機発光層を備える中間層133」、「低屈折率の層である第1層1211」、「コンタクトホール」、「電界発光ディスプレイ装置」、「反射型電極」、「ITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極やバス電極ラインを形成した構造」及び「光共振層121」は、それぞれ本願発明の「有機電界発光層」、「低屈折率層」、「コンタクトホール」、「有機電界発光装置」、「反射電極」、「透明酸化導電膜」及び「共振器」に相当する。
イ 引用発明の「TFT」は、半導体層122と、前記半導体層122の上部に形成されたゲート絶縁膜123と、前記ゲート絶縁膜123の上部のゲート電極124と、を備え、本願発明の「TFT基板」は、本願明細書の【0074】に記載されているように、基板上に、高屈折率層(例えばSiON、屈折率1.55)の下地保護層を敷き、該下地保護層上にシリコン層を設け、更に、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート絶縁層と層間絶縁層を設けたものであるから、引用発明の「TFT」は、本願発明の「TFT基板」に相当する。
ウ 引用発明は、反射型電極である第1電極131の上部に前記第1電極131と対向した透明電極となる第2電極134を備え、前記第1電極131と前記第2電極134との間に、「有機電界発光層(有機発光層を備える中間層133)」(引用発明の用語を相当する本願発明の用語に置き換えた。()内の用語は引用発明の元の用語を表す。以下同様。)を備え、前記第2電極134の上部に、「低屈折率層(低屈折率の層である第1層1211)」を備え、「TFT基板(TFT)」は、基板102の直上に配置されており、要するに、「低屈折率層」と、第2電極134と、「有機電界発光層」と、第1電極131と、「TFT基板(TFT)」と、基板102とを順に有しているから、引用発明の「有機電界発光装置(電界発光ディスプレイ装置)」と、本願発明の「有機電界発光層」とは、「第1の電極と、有機電界発光層と、第2の電極と、低屈折率層と、TFT基板と、基板とを有し」ている点で一致する。
エ 引用発明において、「TFT基板(TFT)」が「コンタクトホール(コンタクトホール)」を通じて連結される第1電極131が「反射電極(反射型電極)」となり、前記第2電極134がLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、及びこれらの化合物を前記中間層133の方向に蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極やバス電極ラインを形成した構造をなす透明電極であるから、引用発明の「有機電界発光装置(電界発光ディスプレイ装置)」と、本願発明の「有機電界発光装置」とは、「コンタクトホールを介してTFT基板と第1の電極及び第2の電極のうちいずれか一方が接続され」、且つ、「前記第1の電極及び前記第2の電極のうちいずれか一方が、反射電極であり、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち他方が、半透明金属膜と透明酸化導電膜とからなる」点で一致する。
オ 引用発明において、「共振器(光共振層121)」は、「低屈折率層(低屈折率の層である第1層1211)」を備えるものであるから、引用発明の「有機電界発光装置(電界発光ディスプレイ装置)」と、本願発明の「有機電界発光装置」とは、「低屈折率層で、共振器を構成する」点で一致する。
カ 上記アないしオから、本願発明と引用発明とは、
「第1の電極と、有機電界発光層と、第2の電極と、低屈折率層と、高屈折率層と、TFT基板と、基板とを有し、コンタクトホールを介して前記TFT基板と前記第1の電極及び前記第2の電極のうちいずれか一方が接続され、前記有機電界発光層からの発光を出射する有機電界発光装置であって、
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちいずれか一方が、反射電極であり、
前記第1の電極及び前記第2の電極のうち他方が、半透明金属膜と透明酸化導電膜とからなり、
低屈折率層で、共振器を構成する、
有機電界発光装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では、基板と、第1の電極と、有機電界発光層と、第2の電極と、低屈折率層と、TFT基板と、透明基板とをこの順に有し、コンタクトホールを介して前記TFT基板と前記第2の電極が接続され、前記有機電界発光層からの発光を前記透明基板から出射し、前記第1の電極が、反射電極であり、前記第2の電極が半透明金属膜と透明酸化導電膜とからなるのに対し、
引用発明では、高屈折率層(高屈折率の層である第2層1212)と、低屈折率層(低屈折率の層である第1層1211)と、反射型電極である第2電極134と、有機電界発光層(有機発光層を備える中間層33)と、第1電極131と、TFT基板(TFT)と、基板102とを順に有し、前記第1電極131には、TFTがコンタクトホールを介して連結され、前記基板102の逆方向、すなわち、前記第2電極134の方向に光が取り出され、前記第1電極131が反射型電極となり、前記第2電極134がLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、及びこれらの化合物を前記中間層133の方向に蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極を形成した点。

相違点2:
本願発明では、第1の電極と、前記半透明金属膜と、前記透明酸化導電膜と、前記低屈折率層と、3つの共振器を構成し、
前記有機電界発光層が、第1の共振器の光路長調整層となり、
前記透明酸化導電膜が、第2の共振器の光路長調整層となり、
前記低屈折率層が、第3の共振器の光路長調整層となり、
前記第1の電極と前記透明基板の間の薄膜層が、次関係式、φ1j/π+φ2j/π+Σni・di=((2m-1)λj/4))±0.1λjを満たす(ただし、niは、前記第1の電極から第i層目の薄膜の屈折率を表す。diは、前記第1の電極からの前記第i層目の薄膜の膜厚を表す。mは、自然数1、2、・・・で、前記共振器のモード数を示す。λjは、第j共振器の共振波長であり、jは1?3の自然数である。φ1jは、j共振波長に対応する前記有機電界発光層から前記第1の電極までの位相ずれを表す。φ2jは、光が前記第1の電極を通過した時の位相ずれを表す。)のに対し、
引用発明では、第2電極134の上部に光共振層121が備えられており、前記光共振層121は、低屈折率の層である第1層1211と高屈折率の層である第2層1212を備え、前記副画素、すなわち、前記発光層から放出される光の波長によって前記光共振層121の厚さが異なって備えられており、前記副画素から放出される光の波長をλとするとき、光路差が波長の整数倍となる場合に補強干渉が発生するので、前記第1層1211の厚さt1が下記(1)式を満足させる場合に補強干渉が発生し、前記第2層1212の厚さt2が下記(2)式を満足させることによって補強干渉が発生するものであるが、光共振器以外の層が共振器となり、前記「3つの共振器」を構成するかどうか、また、該「3つの共振器」が前記関係式を満たすどうかは明らかでない点。

t1=(nλ)/2 …(1)
前記(1)式で、nは自然数である。
t2=(2m+1)λ/4 …(2)
前記(2)式で、mは、自然数である。

5 判断
(1)上記相違点1について検討する。
ア 引用発明は、基板102の逆方向、すなわち、第2電極134の方向に光が取り出される、前面発光型、言い換えればトップエミッションタイプの電界発光ディスプレイ装置であるが、一般的な有機EL装置において、トップエミッションタイプとするか、基板から光が取り出されるボトムエミッションタイプとするかは当業者が適宜選択し得ること(引用例2の記載事項(上記4(3)キ)、引用例3の【0066】(上記4(4)エ)参照。)であるから、引用発明の電界発光ディスプレイ装置をボトムエミッションタイプとなすことは当業者にとって格別困難なことではない。
イ 上記アのように、引用発明をボトムエミッションタイプとする際に、基板102側から光を取り出すことになるため、該基板102を透明基板とし、基板側102に位置する反射型電極である第1電極131を第2電極134のような透明電極とし、透明電極である第2電極134を第1電極131のような反射型電極とし、光共振層121を透明電極とした第1電極134の下に、低屈折率の層である第1層1211を配置するようになすことは、当業者に自明である。
ウ 本願発明の「基板」について、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0069】
(実施例1)
<ボトムエミッション構造の有機電界発光装置>
実施例1のボトムエミッション構造の有機電界発光装置を以下のように構成した。

・・・略・・・

【0071】
図8に示すように、ボトムエミッション構造の有機電界発光装置は、透明基板上に、画素電極と、対向電極と、有機電界発光層(ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層)とが形成され、画素電極に対する通電を制御する通電制御部としての薄膜トランジスタ(TFT)と、透明基板と有機電界発光層の透明導電酸化膜の間に低屈折率層を有している。TFTは有機電界発光素子を駆動させるために、層間絶縁層及び低屈折率層を貫通するコンタクトホールを通じて、透明酸化導電膜に電気を流す。この図8に示すボトムエミッション構造の有機電界発光装置では有機電界発光層からの光が透明基板から取り出される。この実施例1では、透明基板として、屈折率が約1.5のイーグル2000(コーニング社製)を用いた。

・・・略・・・

【0076】
・・・略・・・
以上により、有機電界発光層を作製した。得られた有機電界発光層は、赤(約615nm)の発光に最適化し、赤色有機電界発光表示部(赤色画素要素)である。
次に、有機電界発光層上に、SiONを蒸着して封止層を形成し、その上に基板を張り合わせて、実施例1の有機電界発光装置を作製した。」
エ 上記ウからみて、本願発明の「基板」は、TFTや有機電界発光素子を成膜させるための基板ではなく、外部環境からの保護や封止等のために有機電界発光層上に張り合わされるカバー材として用いられるものであり、そのようなカバー材により有機電界発光層を覆うこと(引用例3の【0057】、【0058】、図9,10参照。)は当業者が適宜なし得ることである。
オ 上記アないしエからみて、引用発明において、ボトムエミッションタイプとするべく、基板と、第1の電極と、有機電界発光層と、第2の電極と、低屈折率層と、TFT基板と、透明基板とをこの順に有し、コンタクトホールを介して前記TFT基板と前記第2の電極が接続され、前記有機電界発光層からの発光を前記透明基板から出射し、前記第1の電極が、反射電極であり、前記第2の電極が半透明金属膜と透明酸化導電膜とからなるようになすこと、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得た事項である。

(2)上記相違点2について検討する。
ア 引用発明は、第2電極134の上部に、低屈折率層(低屈折率の層である第1層1211)と高屈折率層(高屈折率の層である第2層1212)を備える光共振層121を配置するものであり、その他の有機電界発光層(有機発光層を備える中間層133)や、第2電極134の透明酸化導電膜(ITO、IZO、ZnO、またはIn_(2)O_(3)などの透明電極形成用の物質で補助電極を形成した構造)が共振器となることは明らかではないが、引用例2の記載事項(上記3(2)キ)及び引用例3の記載事項(上記3(3)オ)には、共振器の要素としては、光が通過する領域に存在する全ての層、部材が対象となり得ることが明示され、該明示された事項を考慮すれば、引用発明をボトムエミッションタイプに設計変更するに際し、低屈折率層の他に、有機電界発光層や透明酸化導電膜をそれぞれ共振器となるように光学膜厚を設定することは当業者が引用例2及び引用例3に開示された知見に従うと、当然採用すべきことである。
イ 引用発明は、第1層1211の厚さt1が「t1=(nλ)/2」の(1)式を満足させる場合に補強干渉が発生し、第2層1212の厚さt2が「t2=(2m+1)λ/4」の(2)式を満足させることによって補強干渉が発生するものであるが、引用例1の【0053】及び【0055】に記載されているように、要するに、前記(1)式と(2)式は、界面で光が反射されるときの位相変化を考慮して使い分けられるものである。
また、前記t1及びt2は、補強干渉を生じさせるために、波長λのn/2倍あるいは(2m+1)/4倍で特定されているのであるから、物理膜厚ではなく、屈折率×物理膜厚で表される光学膜厚であることは当業者に自明であり、前記(2)式については、第2層1212の屈折率及び物理膜厚をそれぞれn1、d1とすると、「n1・d1=(2m+1)λ/4」(以下「(2)-2式」という。)と置き換えることができる。
そして、第1の電極(反射型電極)と透明基板の間の薄膜層の光学膜厚について、補強干渉が生じるのは、各層の光学膜厚の総和が前記(2)-2を満足する場合である。
ウ 引用例3の記載事項は、反射層12の発光機能層20の側の面で反射のときの位相変化をφ_(D)とし、第2電極層22の発光機能層20の側の面(第2電極層22における反射層12に対向する界面)で反射のときの位相変化をφ_(U)とした場合、共振器の光学的距離dが、2d+φ_(D)+φ_(U)=mλの式(1)によって定められるというものであり、光学的距離を設定する際に共振対象としての波長の整数倍に対して位相ずれを差分として考慮したものである。
エ 光路中で生じた位相ずれがある場合に、該位相ずれを考慮して光学的距離を設定することは上記ウのように当業者であれば当然に考慮すべき事項であり、より確実に共振させるために、前述のような位相ずれに限らず、想定できるその他の誤差をも考慮することは当業者が適宜なし得ることである。
オ そうしてみると、(2)-2式において、左辺に位相ずれに由来する係数(φ1j/π+φ2j/π)を加減分として考慮し、右辺に想定できる誤差(0.1λ)を考慮し、反射電極と透明基板の間の薄膜層が、次関係式、φ1j/π+φ2j/π+Σni・di=((2m-1)λj/4))±0.1λjを満たす(ただし、niは、前記第1の電極から第i層目の薄膜の屈折率を表す。diは、前記第1の電極からの前記第i層目の薄膜の膜厚を表す。mは、自然数1、2、・・・で、前記共振器のモード数を示す。λjは、第j共振器の共振波長であり、jは1?3の自然数である。φ1jは、j共振波長に対応する前記有機電界発光層から前記第1の電極までの位相ずれを表す。φ2jは、光が前記第1の電極を通過した時の位相ずれを表す。)ようになすこと、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

(3)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果及び引用例3の記載事項の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用例1ないし3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-19 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2010-79435(P2010-79435)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 道祖土 新吾
鉄 豊郎
発明の名称 有機電界発光装置  
代理人 廣田 浩一  

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