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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1313824
審判番号 不服2013-20729  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-24 
確定日 2016-04-18 
事件の表示 特願2008-1117「ビスフェノールを製造するための結晶化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年8月7日出願公開、特開2008-179633〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成20年1月8日(パリ条約による優先権主張2007年1月9日(DE)ドイツ)の出願であって、平成23年1月5日に手続補正書が提出され、平成24年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月18日に意見書が提出され、同年6月20日付けで拒絶査定がされ、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成27年4月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月13日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成23年1月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「(a)酸性触媒の存在下、フェノールとアセトンを反応させて、ビスフェノールを含んで成る生成混合物を形成すること;
(b)該生成混合物から、結晶化、濾過及び洗浄によって、ビスフェノール/フェノール付加物の形態で、該ビスフェノールの少なくとも一部を取り出して、ビスフェノール/フェノール付加物結晶を提供すること;及び
(c)該ビスフェノール/フェノール付加物結晶から、該フェノールの少なくとも一部を除去して、99.7%より高い純度を有するビスフェノールを提供すること
を含む方法であって、
該結晶化は、連続懸濁結晶化を含んで成り、
該結晶化は、該生成混合物を、まず、該結晶化の第1段階において、並列に接続された第1結晶化装置及び第2結晶化装置で、50?70℃の温度に冷却し、続いて、該結晶化の第2段階において、該第1結晶化装置及び第2結晶化装置と直列に下流で接続された第3結晶化装置で、40?50℃の温度に冷却するように配置された少なくとも3つの結晶化装置で行われ、
該結晶化において、該生成混合物の合計の滞留時間は4時間より長い、方法。」

第3 当審が通知した拒絶の理由の概要
当審が通知した拒絶の理由は、理由1及び理由2からなる。
そのうちの理由1の概要は、この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。この理由1は、請求項1に係る発明については刊行物1(特開平7-258131号公報)及び刊行物2(国際公開第01/74749号)に記載された発明並びに刊行物3(特開平11-116519号公報)及び刊行物4(特開平5-15701号公報)に記載された技術常識に基づいて判断を示したものである。

第4 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明並びに上記刊行物3及び4に記載された技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 刊行物に記載された事項

ア 刊行物1:特開平7-258131号公報
(1a)「【請求項1】メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、5から10のヘーゼン色値を示す、純度が99.75から>99.94重量%のビスフェノールAを回収する方法において、
1.65から75℃の温度でフェノール内のp,p-ビスフェノールA含有量が25から35重量%になるように該反応溶液を調整した後、
2.この温度で、晶析反応槽の数n>1で直列連結しているn段階カスケードの晶析槽に供給し、そして
3.各晶析反応槽内で、各晶析反応槽(n)における混合物の滞留時間を少なくとも3時間にして少なくとも500m^(3)/時の循環率で循環させ、そして
4.この晶析カスケード全体に渡り、第一晶析反応槽(n=1)内の70℃から、最終晶析反応槽(n)内の40℃になるように、温度勾配を調整し、そして
5.これらの晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収する、
ことを特徴とする方法。」(1頁1欄、特許請求の範囲)
(1b)「【0001】本発明は、含まれている不純物量が0.2重量%未満である高純度のビスフェノールA(BPA)を製造する方法に関する。この方法で製造した、熱安定性を示すと共に色安定性を示すビスフェノールAは、これを用いて製造されるポリマー類、例えばポリカーボネートなどの熱色安定性を改良する。
【0002】高純度のビスフェノールAを製造することは公知である(例えばドイツ特許出願公開第42 13 872号)。この資料には、製造したビスフェノールAをどのようにすれば99.91重量%の純度にまでもって行くことができるかが記述されている。しかしながら、これのヘーゼン(Hazen)色値はまだ更に改良可能である。
【0003】高純度で良好なヘーゼン色値を示すビスフェノールAを産業規模で製造することができることをここに見い出した。この最終生成物であるp,p-ビスフェノールAが高純度であることは、ほとんど全く、BPA/フェノール付加体の工程間晶析(in-process-crystallisation)によって決定される。」
(1c)「【0004】従って、本発明は、メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、5から10のヘーゼン色値を示す、純度が99.75から>99.94重量%のビスフェノールAを回収する方法を提供し、これは、
1.65から75℃の温度でフェノール内のp,p-ビスフェノールA含有量が25から35重量%になるように該反応溶液を調整した後、
2.この温度で、晶析反応槽の数n>1で直列連結しているn段階カスケードの晶析槽に供給し、そして
3.各晶析反応槽内で、各晶析反応槽における混合物の滞留時間を少なくとも3時間にして少なくとも500m^(3)/時の循環率で循環させ、そして
4.この晶析カスケード全体に渡り、第一晶析反応槽(n=1)内の70℃から、最終晶析反応槽n内の40℃になるように、温度勾配を調整し、そして
5.これらの晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物(crystallisate)を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収する、ことによって特徴づけられる。」
(1d)「【0005】本発明に従う方法で触媒として使用可能な改質スルホン酸イオン交換体は公知である(例えば米国特許第4,912,263号に相当するドイツ特許出願公開第37 27 641号)。
【0006】フェノール内のビスフェノールA含有量が25から35重量%になるように上記反応溶液を調整(例えばとりわけ重量測定、計量値などを用い)するが、これは例えばガスクロで測定可能である。
【0007】フェノールとアセトンとの反応で得られるビスフェノールAのフェノール溶液を多段階晶析カスケードの中に導入することで、1:1のビスフェノールA/フェノール付加体の晶析を行う。本発明に従って用いるカスケードには晶析槽が2個または3個(n=2、3)備わっているが、しかしながら、それ以上(n>3)備わっていてもよい。このカスケードから排出させて生成物を濾過し、そしその濾別したビスフェノールA/フェノール混合結晶(1:1付加体)をフェノールとビスフェノールAの中で脱離させることによって、この結晶の分離を行うが、この生成物は結晶性フレークとして生じる。
【0008】この晶析槽カスケードには晶析槽が少なくとも2個備わっている(晶析槽nは、n>1である)。有利には、3個から6個の晶析槽を直列連結する。
【0009】この晶析カスケード全体に渡る温度範囲を70℃(反応槽入り口、反応槽n=1)から40℃に調整するように、温度調節を行う。第一晶析槽(n=1)を70℃の最大温度で運転し、そして最終晶析槽nでは40℃の温度に到達させる。
次に、このビスフェノールAを通常様式で分離する。これの純度は少なくとも99.75重量%のビスフェノールAであり、そしてそのヘーゼン色値は5から10である。
【0010】この特別な付加体晶析の特徴は、このBPA工程の後に行われている追加的晶析段階[ここでは、BPA溶融物を溶媒(例えばフェノール、トルエン、塩化メチレンまたはアセトン)内で再結晶させる]を用いないで工程間晶析を行うように改良した手段によりBPAを高純度(>99.94%)で回収できる点である。
【0011】BPA/フェノール付加体を晶析した後に濾過と脱離を行う方が、晶析段階を個別に行うよりも経済的である。」
(1e)「【0012】【実施例】
実施例1
ビスフェノールAが28%入っているフェノール溶液を22m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に1200m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給する(22m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却する。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを1000m^(3)/時で循環させる。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリー/溶液を22m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入する。ここで、この混合結晶を約5トン濾別し、洗浄した後、乾燥させる。その濾液の残存ビスフェノールA含有量は14%である。その濾過して処理したビスフェノールAの最終生成物が示す純度は99.90%のp,p-BPAであり、そのBPAフレーク生成物の色値は5-10ヘーゼンであった。この晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間は9時間であった。
【0013】実施例2
ビスフェノールAが28%入っているフェノール溶液を45m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に1200m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給した(45m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却した。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを1000m^(3)/時で循環させた。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリー/溶液を45m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入した。ここで、この混合結晶を約10トン濾別し、洗浄した後、乾燥させた。その濾液の残存ビスフェノールA含有量は14%であった。その濾過して処理したビスフェノールAの最終生成物が示す純度は99.75%のp,p-BPAであり、そのBPAフレーク生成物の色値は10ヘーゼンであった。この晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間は4時間であった。
【0014】実施例3
ビスフェノールAが32%入っているフェノール溶液を8m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に500m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給する(8m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却する。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを550m^(3)/時で循環させる。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリーを8m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入する。ここで、この混合結晶を約2.0%濾別し、洗浄した後、乾燥させる。その濾過して処理したビスフェノールAの最終生成物が示す純度は99.94%のp,p-BPAであり、そのBPAフレーク生成物の色値は5ヘーゼンであった。この滞留時間は約20時間であった。
【0015】実施例4
ビスフェノールAが29%入っているフェノール溶液を10m^(3)/時で、3つの晶析槽の1番目の晶析槽の中に72℃で供給した後、56℃に冷却した。ここで、その結果として得られるビスフェノールA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを1000m^(3)/時で循環させた。この1番目の晶析槽から排出させて、49℃に維持されている2番目の晶析槽に供給する。再び、1000m^(3)/時の循環率で冷却を達成した。最後に、3番目の晶析槽内でこの混合物を最終温度である41℃にまで冷却した。ロータリーフィルターを用いた通常様式で、その結果として生じるビスフェノールA/フェノール混合結晶を分離して処理することにより、高純度のビスフェノールAが得られた。
【0016】この製造したビスフェノールの純度は99.92%であり、その色値は5-10ヘーゼンであった。この晶析槽カスケード内の全滞留時間は18時間であった。
【0017】比較実施例1(単一の晶析槽を用いた操作)
温度が54℃の1番目の晶析槽を使用しない以外は実施例2と同じ工程を用いる。他の全ての加工パラメーターは同じままである。その濾過して処理したビスフェノールAの最終生成物が示す純度は99.52%のp,p-BPAであり、そのフレーク生成物の色値は30である。晶析槽2(T=41℃)内における混合結晶物の滞留時間は約2時間であった。
【0018】比較実施例2(晶析槽を2つ用いて操作を行ったが、両方を41℃に調整した)
実施例2と同じ工程を用いる。晶析槽1の温度を41℃にまで下げるのみで、全加工パラメーターは同じままである。
【0019】その濾過して処理したビスフェノールAの最終生成物が示す純度は99.62%のp,p-BPAであり、そのフレーク生成物の色値は25である。両方の晶析槽(T_(1)=41℃、T_(2)=41℃)内における混合結晶物の滞留時間は4時間であった。」

イ 刊行物2:国際公開第01/74749号
訳文により示す。
(2a)「1.結晶化装置の表面が結晶化したビスフェノールにより汚くなっている、その冷却表面又は結晶化表面をクリーニングする方法であって、その結晶化装置はビスフェノール製造からのスラリーを含んでおり、以下の工程からなる方法:
(a)結晶化装置からスラリーの20?80%を排出し;
(b)排出したスラリー流の代わりにフェノールからなる溶媒を導入して、希釈されたスラリーを形成し、
(c)結晶化装置内の温度を、結晶化したビスフェノールが希釈されたスラリー中に溶解する温度に上昇させ、次に、希釈されたスラリーを速やかに45?55℃に冷却し;そして
(d)温度が45?55℃であり固体ビスフェノールを少なくとも5%の濃度で含む種晶スラリーを、結晶化装置に添加されるビスフェノール結晶がもはや再溶解しない条件となるまで、添加する。
2.約50%のスラリーを結晶化装置から排出する、請求項1に記載の方法。
3.該ビスフェノールがビスフェノールAである、請求項1に記載の方法。
4.約50%のスラリーを結晶化装置から排出する、請求項3に記載の方法。
5.フェノールを含有する第1反応物流とケトン又はアルデヒドを含有する第2反応物流とを反応させてビスフェノールを含む生成物混合物を作る工程と;生成物混合物をスラリーとして結晶化装置に供給して1:1ビスフェノール:フェノール付加物を作る工程と;そして、その付加物を回収する工程からなるビスフェノール製造方法において、結晶化装置を以下の工程からなる方法により定期的にクリーニングする、改良方法:
(a)結晶化装置からスラリーの20?80%を排出し;
(b)排出したスラリー流の代わりにフェノールからなる溶媒を導入して、希釈されたスラリーを形成し、
(c)結晶化装置内の温度を、結晶化したビスフェノールが希釈されたスラリー中に溶解する温度に上昇させ、次に、希釈されたスラリーを速やかに45?55℃に冷却し;そして
(d)温度が45?55℃であり固体ビスフェノールを少なくとも5%の濃度で含む種晶スラリーを、結晶化装置に添加されるビスフェノール結晶がもはや再溶解しない条件となるまで、添加する。
6.約50%のスラリーを結晶化装置から排出する、請求項5に記載の方法。
7.該ビスフェノールがビスフェノールAである、請求項5に記載の方法。
8.約50%のスラリーを結晶化装置から排出する、請求項7に記載の方法。
9.生成物混合物が2又はそれ以上の並列に操業されている結晶化装置に供給され、該2又はそれ以上の結晶化装置は、異なる時間にクリーニングのためにラインから切り離される、請求項5に記載の方法。
10.それぞれの結晶化装置が互いに連結されていて、一方の結晶化装置から取り出したスラリーを、工程(d)の種晶スラリーとして他方の結晶化装置へ移送する、請求項9に記載の方法。」(9?10頁、請求の範囲の請求項1?10)
(2b)「発明の技術分野
この出願は、ビスフェノールAのようなビスフェノール類の回収に用いられる結晶化装置をクリーニングするための方法に関する。
発明の背景
ビスフェノール類、とりわけビスフェノールA(2,2ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン)は、ポリカーボネート製造を含む多くのプロセスのための産業上重要な反応物となってきている。ビスフェノール類は、産業的な規模では二つのプロセスの何れかで製造される:酸接触又はHClプロセス、そして、酸性イオン交換樹脂例えばスルホン酸置換ポリスチレンを用いるイオン交換プロセス。
ビスフェノールは、2モルのフェノールと1モルのケトン又はアルデヒド、例えばアセトンとの、酸性触媒存在下の縮合により製造される。しかし、ビスフェノールに加えて、反応からの生成物流は、化学量論量を超えて含まれていた未反応のフェノール、所望のビスフェノールの種々のアイソマー及び他の副生成物を含む。これらの副生成物はビスフェノールから作られる製品の性質を損なうことがあり得るから、分離する必要がある。この分離の方法の一つは、生成物流を冷却して1:1ビスフェノール:フェノール付加物を結晶化させることを含む。この付加物は、次いで洗浄、蒸留、抽出及び/又はスチームストリッピングして、精製されたビスフェノール製品とすることができる。ビスフェノールの製造及び精製のプロセスは、よく知られており、米国特許4,107,218号;4,294,994号;5,210,329号;5,243,093号;5,245,088号;5,288,926号;5,368,827号;5,786,522号及び5,874,644号に記載されている。
反応器流からのビスフェノールの結晶化は、一般に、連続又は半連続操業するように設計された結晶化装置で行われる。結晶化冷却器は、ビスフェノール反応流と循環冷媒との熱交換のための大きな表面積を与えるために、複雑な内部構造を有する。時間と共に、付加物が結晶化装置の内部の冷却表面に析出し、冷却効率を減じさせ、ときには、結晶化装置のオリフィスを詰まらせ、結晶化装置に出入りする物質の流れを制限する。これが起こると、結晶化装置は、クリーニングのために一定期間ラインから切り離さなければならない。この製造プロセスの中断は、コストの上昇を招き、それゆえ、できるだけ頻繁でなくクリーニングを行い、最大の効率で操業することが望ましい。
結晶化装置及び関連する冷却機をクリーニングする一つの方法は、結晶化装置の内部の温度を上昇させて形成された結晶堆積物を融かし出すことである。熱交換流体の温度を上昇させることで、又は熱いフェノールを結晶化装置の内部に導入することで、行うことができる。しかし、この方法は、常に有効とは限らず、クリーニング操作を完結するために一般に約24時間の不操業時間を要する。加えて、この種のプロセスは、再現性に乏しく、結晶化装置が再び望ましい結晶化したビスフェノール付加物を満足いくように製造するようにするためには、微妙なスタートアップ手順を要する。米国特許第5,856,589号は、3?40重量%の水を含むフェノールを、堆積したビスフェノール付加物を冷却表面及び結晶化装置表面から溶解するのに用いる、別のアプローチを開示している。フェノールと水の組合せの使用は、融かし出すのに必要な時間と融かし出す頻度を減少させる。しかしながら、クリーニングに伴うプロセス不操業時間をさらに減少させる、クリーニング手順のさらなる改善の必要が存在する。」(1頁2行?2頁26行)
(2c)「発明の要約
この発明は、ビスフェノールの製造の際のスラリーを処理することの結果として結晶化したビスフェノールにより汚くなっている、結晶化装置の冷却表面及び/又は結晶化表面をクリーニングする、代替的で改良された方法を提供する。この方法は、以下の工程からなる:
(a)結晶化装置からスラリーの20?80%を排出し;
(b)排出したスラリー流の代わりにフェノールからなる溶媒を導入して、希釈されたスラリーを形成し、
(c)結晶化装置内の温度を、結晶化したビスフェノールが希釈されたスラリー中に溶解する温度に上昇させ、次に、希釈されたスラリーを速やかに45?55℃に冷却し;そして
(d)温度が45?55℃であり固体ビスフェノールを少なくとも5%の濃度で含む種晶スラリーを、結晶化装置に添加されるビスフェノール結晶がもはや再溶解しない条件となるまで、添加する。」(2頁28行?3頁14行)
(2d)「図面の簡単な説明
図1は、ビスフェノールAの製造のためのプラントの概略図を示す;
図2は、この発明の方法において有用な結晶化装置の具体例の構造をより詳しく示す。
発明の詳細な説明
図1は、ビスフェノールAの製造のためのプラントの概略図を示す。フェノールと、アセトンのようなケトンが、ビスフェノールの縮合が起こる反応領域12に導入される。好ましくは、反応領域は、縮合反応を触媒するために、スルホン化ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンのような酸性イオン交換樹脂を含んでいる。この反応流の生成物は、結晶化装置14に導入され、そこから、固体の付加物流と液体が回収される。
図2は、結晶化装置14の具体例の構造をより詳しく示す。図2の具体例では、2台の結晶化装置20、21が、通常操業では並行して運転される。そえゆえ、別々の供給流22、23が、それぞれの結晶化装置に供給される。結晶化装置20、21の内容物は冷却装置24、25を通り、生成物がそれぞれの結晶化装置から、生成物回収ライン26、27を経て回収される。
この発明の方法によれば、結晶化装置14は、定期的に、結晶化装置表面の上に堆積した付加物ビスフェノールを減らすために処置される。このプロセスでは、結晶化装置14は、結晶化装置からスラリーの20?80%、好ましくは50%を排出し;排出したスラリー流の代わりにフェノールからなる溶媒を導入して、希釈されたスラリーを形成する。溶媒は、さらに水、及び/又はアセトン、ビスフェノールA(BPA)又はBPAタイプの不純物を含んでいてもよい。結晶化装置内の温度を、まず、結晶化したビスフェノールが希釈されたスラリー中に溶解する温度に上昇させ、次に、速やかに希釈されたスラリーを45?55℃に冷却する。次いで、温度が45?55℃の固体ビスフェノールを含む種晶スラリーを、結晶化装置に添加されるビスフェノール結晶がもはや再溶解しない条件となるまで、添加する。」(3頁15行?4頁20行)
(2e)「この発明のクリーニング手順は、公知の手順を超えるいくつかの利点を有する。第一に、この発明の方法は、迅速であり、大規模な結晶化装置(排出量59トン/時)のクリーニングが6-8時間でできる。この時間の内訳は、以下のとおりである:
(1)スラリーの一部を排出してフェノールで置き換え、ビスフェノールの溶解度を増加させる--経過時間:約0.5-4時間
(2)系を70℃に加熱して結晶化装置内のビスフェノール結晶を溶解する--経過時間:約15-30分
(3)系を速やかに45?55℃に冷却する--経過時間:約15分?1時間
(4)高濃度の冷たい(45-55℃)ビスフェノールスラリー(種結晶)を供給する--結晶化条件を再構築する経過時間--約15分?1時間
この冷却プロセスは、種結晶の添加前に、完結しているか少なくとも実質的に完結しているのが好ましい。もちろん、種結晶の添加の結果、工程温度を多少調整することはあり得るが、正常運転の続行に望ましい正確な温度を達成するための微調整に止めるべきである。それゆえ、冷却工程後のスラリー温度は、通常、加えられる種晶スラリーの温度の1-5℃以内である。
この発明のプロセスのために必要とされる時間の減少は、主に、溶解したビスフェノールを含む結晶化装置の冷却に要する時間の減少による。この減少が可能になるのは、スラリーの一部がビスフェノールの溶媒すなわちフェノールにより置き換えられた結果、溶液中のビスフェノールの濃度が低いことによる。この発明の一つの具体例では、結晶化装置内のビスフェノール濃度が約20-30%であるスラリーの量が約50%減じられ、フェノールで置き換えられる。ビスフェノールの総濃度が低ければ、より少ない容積を置き換えればよく、一方、ビスフェノールの濃度が高いか、相当量のビスフェノールが結晶化装置の表面に蓄積していれば、80%までのより大きい割合を置き換えればよい。
希釈されたビスフェノール溶液の冷却は、“速やかに”行われる。この冷却のために実際に必要とされる時間は、結晶化装置の容積及び用いる熱交換器の能力を含む様々なパラメーターに依存する。それゆえ、速やかに、の語は、用いる特定の装置から切り離して数値で表せない。しかし、ここで用いられるように、“速やかな”冷却は、加熱された循環流体(?70℃)が、目標域45-55℃の温度の循環流体に置き換えられる結果として起こり、冷却を段階的にするような中間の温度の段階を含まない。
排出されたスラリーを置き換える溶媒は、フェノールを含む溶媒である。溶媒は全部がフェノールでもよく、付加的に様々な物質、例えば、米国特許5,856,589号に記載された関連するが異なるプロセスで記述されている水、又は、後の結晶化プロセスを妨害せずにビスフェノールの溶解性を高めるアセトンのような共用媒、を含んでいてもよい。
希釈されたビスフェノール溶液が冷却されたら、ビスフェノール種晶スラリーを添加して、結晶化に適した条件にする。結晶化装置から排出した流体を、この目的に使用し得る。このようにして、温度44-55℃になり、結晶化装置に新たに添加した結晶がもう溶解しない濃度になるのに十分な量のビスフェノールを添加したら、結晶化装置を、通常操業のためにオンライン状態に戻すことができる。すでに結晶化装置は添加される種晶スラリーの温度とほぼ同じ温度に冷却されているけれども、添加される種晶スラリーの温度は、実際の最終温度を確立し、正常な結晶化の再開のための適切な条件にあることを確実にするために、重要な役割を果たす。」(4頁21行?6頁21行)
(2f)「この発明は、プロセス効率を増加させ、装置の寿命を延ばす、いくつかの利点を有する。最初の結晶が種晶の存在下に作られ、冷却の一部は冷たいビスフェノールスラリーを導入することにより行われるので、冷却器の表面での結晶生成が減少する。それゆえ、クリーニング手順後の冷却器表面の付着物除去は必要なく、結晶化装置の寿命が長くなる。さらに、この発明のプロセスを用いると、冷却器表面のみでなく、全ての結晶化装置表面、例えば本体、パイプ、ポンプ、及び冷却器)がきれいになる。このことも、結晶化装置の寿命を長くする。」(6頁22?30行)
(2g)「図2に示されるように、この発明の一つの具体例では、並行して操業される二つの結晶化装置を用いる。実際、このような装置を用いると、クリーニング期間に、二つの結晶化装置を交互にラインから切り離して、クリーニング操作の間、ラインの処理能力を50%減少させることができる。このモードで操業するとき、二つの結晶化装置20、21を結ぶ相互結合ライン28を設けるのが有利である。このようにすると、(1)一つの結晶化装置から排出される生成物を他の結晶化装置に移送して続けて処理することができ、(2)一つの結晶化装置からの結晶を、他の結晶化装置のクリーニングサイクルの終わりにおける種晶として移送できる。そうするかわりに、図2の結晶化装置がひどく付着堆積物で汚れているときには、同時に両方をクリーニングが必要になるであろう。さらに、一つの結晶化装置を有するシステム、又は二つより多い結晶化装置を並列に操業するシステムも、結晶化装置のサイズ及び関連プラントの処理能力に依存して、費用効果がある操業を可能にする。」(7頁1?14行)
(2h)「実施例
この発明の実施例において、ビスフェノールAの製造に用いられた80-85m^(3) の結晶化装置システム(容量60m^(3))がクリーニングされる。クリーニング操作に用いられるラインは、スチームにより加熱して残留物質を除去する。ビスフェノールAラインから結晶化装置への供給流を止めて、排出手順を始める。結晶化装置は、二つの段階で排出する。最初に、冷却器を排出し、直ちにリサイクルされたフェノールで再び満たす。次に、結晶化装置の本体を、総量で40m^(3)(総容積の50%)のビスフェノールAスラリーを除去するまで排出する。結晶化装置本体の排出が終わるまでの時間は、約1時間要する。次に、結晶化装置本体を、新鮮な又はリサイクルされたフェノールで、約2.5時間の間、再び満たす。その結晶化装置を、装置の外殻を循環するスチームにより加熱する。約15分以内に、内部温度は70℃に達する。次に、冷却水循環路のスチームを、熱水に代え、内部温度を70℃に保って、結晶化装置内のビスフェノールAを完全に溶解する。通常、導入されたフェノールのために、及び/又は最低温度を70℃にするのに、少なくとも15分の循環時間がかかる。好ましくは、両方の条件を満足させる。次に、結晶化装置内の物質の温度を30分で51℃に低下させるために、冷却水を47℃の冷却水にする。もっと低温の冷却水を用いることは、装置の内表面に析出が起こり得るので、奨められない。次に、種晶スラリーを冷却された結晶化装置に加え、結晶化装置から、物質を、真空回転ろ過機(RVF)を通して取り除く。種晶の流入は、RVFにて結晶が検出されるまで続け、その時点で、結晶化装置の正常運転が再開される。」(8頁1?26行)
(2i)「

」(11頁、図面)

ウ 刊行物3:特開平11-116519号公報
(3a)「【請求項1】フェノールおよびビスフェノール-Aの1:1付加物が上部に晶出されたときに汚損された冷却および晶出表面の汚損を取り除く改善された方法において、前記表面上に付着した付加物を5-40重量%の水を含有するフェノールで溶解する方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(3b)「【0002】慣用技術では、生成物流から所望のビスフェノール-Aを分離する際の始めの行程はビスフェノール-Aを過剰に存在するフェノールとの1:1付加物の形態で結晶化させて析出するために生成物流を冷却することを伴う。こうして晶出された付加物は分離され、洗浄され、そして蒸留、抽出または水蒸気ストリッピングによってフェノールが除去される。
【0003】ビスフェノール類の合成のための商業的なプラントでは、ビスフェノール-フェノールの付加物の製造および晶出冷却器への送給は一般に連続的または半連続的である。時間の経過につれて、この冷却器は析出された付加物で汚損を受けて、その効率を減少する。この汚損は4-8週間毎に起きる可能性があり、そのため通常”メルトアウト(meltout )”と呼ばれる操作手順を行うために冷却器の使用を中断する必要がある。この操作手順は主に冷却器内に起きる粗製ビスフェノールの堆積物を溶かし出すためにこの冷却器中に熱いフェノールを通過させることからなる。
【0004】冷却器の汚損を取り除くための別の方法は、典型的には5.0-26.0%のビスフェノールを含有するプロセス溶液で冷却器および晶出器の両方を加熱して冷却器および晶出器の内側を被覆しているビスフェノール堆積物を除去することからなっている。熱交換器内の冷却媒体もまたメルトアウト中暖められる。メルトアウトとメルトアウトとの間の時間の経過は前に行われたメルトアウトの効率および一部はプロセス反応の運転条件(生成物の供給速度等)によって一部支配される。必要とされるメルトアウトの頻度は勿論ながら商業的なプロセスラインの全体的な効率および所望されるビスフェノール生成物の最終的なコストに影響を与える。」

エ 刊行物4:特開平5-15701号公報
(4a)「【請求項1】晶析塔およびクーラーを用意し、該晶析塔から晶析液の一部を抜き出して該クーラーで冷却し、冷却後の晶析液を該晶析塔に再循環させることにより晶析塔内で結晶の析出を生ぜしめ、析出した結晶を該晶析塔から抜き出して晶析液から分離する一方、該晶析塔には新たな晶析液を導入することからなる晶析方法において、該クーラーを複数基並列に設け、複数基のクーラーのうち1基を予備クーラーとし、予備クーラー以外のクーラーのみを用いて晶析液の冷却を行ない、伝熱面に結晶が析出し伝熱効率が低下したクーラーを予備クーラーと交換して連続運転を行うとともに、その伝熱効率が低下したクーラーを加温することにより伝熱面に付着した結晶を溶解して再生することを特徴とする方法。
・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項9】フェノールとビスフェノールAの等モルアダクトを析出させる請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1及び9)
(4b)「【0002】【従来の技術】晶析操作は多くの固体物質の分離精製に用いられており、特に蒸留では分離が困難な有機化合物の異性体混合物の分離法として有用である。一例として、ビスフェノールAの製造におけるビスフェノールAとフェノールとの等モルアダクトのフェノールからの晶析分離がある。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0005】晶析液を冷却する手段としては、晶析塔内に直接冷却コイルを設けたりあるいは晶析塔から晶析液の一部を抜き出してクーラーと呼ばれる熱交換器により冷却した後晶析塔に再循環させたりするいわゆる外部冷却式と、溶媒・・・の一部を蒸発させてその蒸発熱により冷却するいわゆる内部冷却式とがある。・・・外部冷却式の場合、晶析塔内に冷却コイルを設けると伝熱面へのスケール付着の問題が晶析塔自体に生じ、このスケールは不純物を多く含む微細な結晶からなるため、晶析塔から回収される結晶に純度の低い微細な結晶が混入するおそれが大きくなる。したがって、BPA-フェノール系のように溶媒の沸点が高く、また純度の高い良質の結晶を得る必要がある場合には、晶析液を一部晶析塔から抜き出してクーラーにより冷却した後、晶析塔に再循環する方式が一般に用いられている。
【0006】・・・しかしながら、クーラーを用いて晶析液の冷却を行うにしても、クーラーにおける伝熱面へのスケール付着の問題は解決されない。伝熱面へのスケールの付着はクーラーにおける伝熱効率(冷却効率)を低下させ、また付着量が大きくなれば純度の低い微細な結晶がクーラーから流出して晶析塔に混入するおそれも出てくるため、定期的に晶析塔の運転を停止してクーラーの伝熱面に付着したスケールを除去する必要がある。この様な場合、晶析操作はバッチ操作あるいは不連続操作となる。」

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、その特許請求の範囲の請求項1に、
「メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、5から10のヘーゼン色値を示す、純度が99.75から>99.94重量%のビスフェノールAを回収する方法において、
1.65から75℃の温度でフェノール内のp,p-ビスフェノールA含有量が25から35重量%になるように該反応溶液を調整した後、
2.この温度で、晶析反応槽の数n>1で直列連結しているn段階カスケードの晶析槽に供給し、そして
3.各晶析反応槽内で、各晶析反応槽(n)における混合物の滞留時間を少なくとも3時間にして少なくとも500m^(3)/時の循環率で循環させ、そして
4.この晶析カスケード全体に渡り、第一晶析反応槽(n=1)内の70℃から、最終晶析反応槽(n)内の40℃になるように、温度勾配を調整し、そして
5.これらの晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収する、
ことを特徴とする方法」
の発明が記載されており(摘示(1a))、実施例1?4には、それぞれ2段階、2段階、2段階及び3段階のカスケードの晶析槽で、以下に示す一部の条件を除き、それぞれ請求項1に記載される1?5の工程を所定の条件で実行して、それぞれ所定の純度及び色調(ヘーゼン色値)を有するビスフェノールAを取得したことが、具体的に記載されている(摘示(1e))。
上記「一部の条件を除き」とは、請求項1に記載される「各晶析反応槽(n)における混合物の滞留時間を少なくとも3時間にして」としているかどうかが、実施例1?4には明記されていないことで、代わりに「晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間」がそれぞれ9時間、4時間、20時間及び18時間とされている。実施例2は、上記「少なくとも3時間」の条件を満足しないことが明らかであるが、実施例1、3及び4は、上記「少なくとも3時間」の条件を満足する蓋然性がある。
以上によれば、刊行物1には、請求項1に係る発明に関連するものとして、順次、以下の、実施例1に係る発明、実施例2に係る発明及び実施例3に係る発明が、記載されているということができる。

「メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、
以下の工程によって、晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収することにより、
以下のヘーゼン色値及び純度を有するビスフェノールAを回収する方法
(工程)
ビスフェノールAが28%入っているフェノール溶液を22m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に1200m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給する(22m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却する。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを1000m^(3)/時で循環させる。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリー/溶液を22m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入する。ここで、この混合結晶を約5トン濾別し、洗浄した後、乾燥させる。この晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間は9時間であった。
(ヘーゼン色値及び純度)
5-10ヘーゼン、99.90%のp,p-BPA」
(以下「引用発明1」という。)

「メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、
以下の工程によって、晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収することにより、
以下のヘーゼン色値及び純度を有するビスフェノールAを回収する方法
(工程)
ビスフェノールAが28%入っているフェノール溶液を45m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に1200m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給した(45m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却した。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを1000m^(3)/時で循環させた。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリー/溶液を45m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入した。ここで、この混合結晶を約10トン濾別し、洗浄した後、乾燥させる。この晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間は4時間であった。
(ヘーゼン色値及び純度)
10ヘーゼン、99.75%のp,p-BPA」
(以下「引用発明2」という。)

「メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液から、
以下の工程によって、晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収することにより、
以下のヘーゼン色値及び純度を有するビスフェノールAを回収する方法
(工程)
ビスフェノールAが32%入っているフェノール溶液を8m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。その結果として得られるBPA/フェノール混合結晶が入っているフェノールスラリーを連続的に500m^(3)/時で循環させた。温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給する(8m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却する。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを550m^(3)/時で循環させる。この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリーを8m^(3)/時で排出させて、ロータリーフィルターの中に導入する。ここで、この混合結晶を約2.0%濾別し、洗浄した後、乾燥させる。この滞留時間は約20時間であった。
(ヘーゼン色値及び純度)
5ヘーゼン、99.94%のp,p-BPA」
(以下「引用発明3」という。)

3 本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「メルカプトアミン類および/またはチアゾリジン類および/またはチオカルボン酸類で任意に改質されていてもよいスルホン酸イオン交換体の存在下でアセトンとフェノールからビスフェノールAを製造する時に得られる反応溶液」の、該反応溶液を得る工程は、上記「スルホン酸イオン交換体」は酸性触媒であるので、本願発明の(a)の「酸性触媒の存在下、フェノールとアセトンを反応させて、ビスフェノールを含んで成る生成混合物を形成すること」に相当する。
引用発明1の「晶析反応槽内で、p,p-BPA含有量が約60でありフェノール含有量が約40%であるp,p-ビスフェノールA付加体結晶物を沈澱させた後、濾別し、フェノールを除去し、そして通常様式でp,p-ビスフェノールを回収する」は、その工程に「濾別し、洗浄した後、乾燥させる」を含んでおり、本願発明の(b)の「該生成混合物から、結晶化、濾過及び洗浄によって、ビスフェノール/フェノール付加物の形態で、該ビスフェノールの少なくとも一部を取り出して、ビスフェノール/フェノール付加物結晶を提供すること」及び(c)の「該ビスフェノール/フェノール付加物結晶から、該フェノールの少なくとも一部を除去して・・・ビスフェノールを提供すること」に相当する。
引用発明1において回収されるビスフェノールAの純度が「99.90%のp,p-BPA」であることは、本願発明の(c)の「99.7%より高い純度を有するビスフェノールを提供すること」に相当する。
引用発明1の「ビスフェノールAが28%入っているフェノール溶液を22m^(3)/時で温度が70℃の晶析槽に供給した後、この晶析槽内で54℃にまで冷却した。・・・温度が54℃の混合結晶スラリーをその晶析槽から排出させて、2番目の晶析槽に供給する(22m^(3)/時)。この2番目の晶析槽内でこの混合結晶スラリーを更に41℃にまで冷却する。・・・この2番目の晶析槽からその混合結晶スラリー/溶液を22m^(3)/時で排出させて」及び「この晶析槽カスケードにおける混合結晶スラリーの滞留時間は9時間であった」は、本願発明の「該結晶化は、連続懸濁結晶化を含んで成り」、「該結晶化は、該生成混合物を、まず、該結晶化の第1段階において・・・結晶化装置で、50?70℃の温度に冷却し、続いて、該結晶化の第2段階において、・・・直列に下流で接続された・・・結晶化装置で、40?50℃の温度に冷却するように配置された・・・結晶化装置で行われ」及び「該生成混合物の合計の滞留時間は4時間より長い」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「(a)酸性触媒の存在下、フェノールとアセトンを反応させて、ビスフェノールを含んで成る生成混合物を形成すること;
(b)該生成混合物から、結晶化、濾過及び洗浄によって、ビスフェノール/フェノール付加物の形態で、該ビスフェノールの少なくとも一部を取り出して、ビスフェノール/フェノール付加物結晶を提供すること;及び
(c)該ビスフェノール/フェノール付加物結晶から、該フェノールの少なくとも一部を除去して、99.7%より高い純度を有するビスフェノールを提供すること
を含む方法であって、
該結晶化は、連続懸濁結晶化を含んで成り、
該結晶化は、該生成混合物を、まず、該結晶化の第1段階において、結晶化装置で、50?70℃の温度に冷却し、続いて、該結晶化の第2段階において、直列に下流で接続された結晶化装置で、40?50℃の温度に冷却するように配置された結晶化装置で行われ、
該結晶化において、該生成混合物の合計の滞留時間は4時間より長い、方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本願発明では、該結晶化が、該結晶化の第1段階を並列に接続された第1結晶化装置及び第2結晶化装置で行い、該結晶化の第2段階を該第1結晶化装置及び第2結晶化装置と直列に下流で接続された第3結晶化装置で行うように配置された、少なくとも3つの結晶化装置で、行われるのに対し、引用発明1では、該結晶化が、該結晶化の第1段階を1番目の晶析槽で行い、該結晶化の第2段階を1番目の晶析槽と直列に下流で接続された2番目の晶析槽で行うように配置された、2つの晶析槽で、行われる点

4 相違点についての判断

ア 引用発明1?3における2つの晶析槽の容量比及び容量について
引用発明1?3は、それぞれ刊行物1の実施例1?3に係る発明であるところ、これらの実施例は、供給排出速度と滞留時間、各晶析槽での循環速度が異なるが、冷却温度幅は、1番目の晶析槽で70℃から54℃まで冷却、2番目の晶析槽で54℃から41℃まで冷却、というように同じである。
実施例1?3には、2つの晶析槽の容量比は明記されていない。
しかし、「滞留時間は4時間であった」とされる実施例2と、「温度が54℃の1番目の晶析槽を使用しない以外は実施例2と同じ工程を用いる。他の全ての加工パラメーターは同じままである。・・・晶析槽2(T=41℃)内における混合結晶物の滞留時間は約2時間であった」とされた比較実施例1(ともに摘示(1e))とを、対比すると、実施例2においては、1番目の晶析槽の滞留時間が2時間で、2番目の晶析槽の滞留時間が2時間であると、推認される。そして、晶析槽の容量は、単位時間当たりの供給排出速度と滞留時間の積であるから、実施例2においては、1番目の晶析槽と2番目の晶析槽が同じ容量、すなわち容量比が1:1であると推認される。
実施例1及び3についても、1番目の晶析槽と2番目の晶析槽の容量比についての特段の記載がなく、冷却温度幅が実施例2と同じであるから、実施例2と同様に、容量比が1:1であると推認される。
また、晶析槽の合計容量は、実施例1では供給排出速度が22m^(3)/時で滞留時間9時間、実施例2では45m^(3)/時で4時間、実施例3では8m^(3)/時で20時間とされていることから、各実施例とも、合計容量200m^(3) 程度、各晶析槽の容量が100m^(3) 程度の、晶析槽を用いていると推認される。

イ 引用発明1?3における晶析条件と得られるビスフェノールAの品質について
刊行物1の実施例1?3(摘示(1e))に記載された晶析条件と得られるビスフェノールAの品質をまとめると、以下のとおりである。

供給排出 合計の 各槽の循環速度 p,p-BPA ヘーゼン
速度 滞留時間 1番目 2番目 純度 色値
(m^(3)/時) (時間) (m^(3)/時) (m^(3)/時) (%) (ヘーゼン)
実施例1 22 9 1200 1000 99.90 5-10
実施例2 45 4 1200 1000 99.75 10
実施例3 8 20 500 550 99.94 5

合計の滞留時間が長い方が、得られるビスフェノールの品質が優れるが、この実施例1?3の範囲では、滞留時間の条件を、引用発明1(実施例1)に比べて0.44倍?2.2倍(9時間を4時間?20時間)に変動させても、純度が99.75%以上(審決注:刊行物1の請求項1の記載を併せて参照すると、%は重量%を意味すると解される。)、ヘーゼン色値が5-10のビスフェノールAを得られることが、理解できる。

ウ 引用発明1において1番目の晶析槽を並列に接続された2つの晶析槽からなるものとすることについて

(ア)刊行物2は、ビスフェノール結晶化装置のクリーニング方法に関する特許文献である。刊行物2には、フェノールとアセトンからビスフェノールAを製造するに際し、1:1ビスフェノール:フェノール付加物を結晶化させて回収することが周知の技術であること、その結晶化装置では、その装置の冷却表面に結晶が析出して冷却効率を減じさせたり結晶化装置のオリフィスを詰まらせるなどの問題があり、結晶化装置はプロセスを中断してクリーニングする必要があることが記載され(摘示(2b))、結晶化装置の冷却表面の結晶化したビスフェノールを、フェノールにより希釈したスラリー中に温度を上げて溶解することを含む、迅速なクリーニング方法が記載されている(摘示(2a)(2c)?(2i))。なお、ビスフェノール結晶化装置において析出物が付着してクリーニングが必要になることは、刊行物2だけでなく、刊行物3及び4にも記載されていて(摘示(3a)(3b)、(4a)(4b))、当業者の技術常識である。
刊行物2には、その図1に示される、1台の結晶化装置でのクリーニング方法以外に、その図2に示される、2台の結晶化装置を並行して運転する態様が記載されている。図2の態様では、2台の結晶化装置が通常操業では並行して運転され(摘示(2d))、クリーニング期間には、片方の結晶化装置をラインから切り離して、ラインの処理能力を50%減少させて操業する(摘示(2g))。この態様は、結晶化のプロセスを中断することなく操業できる態様である。

(イ)刊行物1には、1番目の晶析槽を並列に接続された2つの晶析槽からなるものとすることは記載されていない。
しかし、引用発明1においても、晶析槽の冷却表面に結晶が析出して冷却効率を減じさせたりすることが起こり得て、クリーニングが必要になることは、当業者が直ちに理解できる事項である。そのような場合に、プロセスを中断することなく操業することが望ましいことは当然であるから、当業者は、引用発明1において、刊行物2に記載される2台の結晶化装置の並行運転を適用することを、容易に想到するといえる。そして、引用発明1の1番目の晶析槽と2番目の晶析槽のどちらに適用するかは、どちらか一方又は両方に適用してよいといえる。一方に適用するなら、晶析が進んでいる2番目の晶析槽よりも1番目の晶析槽において結晶析出物の付着が起こり易いであろうと考えて、1番目の晶析槽に適用することも、当業者が適宜選択し得るといえる。
なお、請求人は、意見書において、刊行物1及び2からは、結晶化手順全体を2度並列で行うことに思い至るにとどまる旨主張しているが、上記のとおり、並列の運転の適用は、1番目の晶析槽と2番目の晶析槽のどちらか一方又は両方の何れの場合についても、当業者が容易に想到し得るといえる。

(ウ)さらに、1番目の晶析槽を並行運転を適用するとした場合の容量と滞留時間の関係についても、問題のないことを検討する。
引用発明1において、1番目の晶析槽を2台の結晶化装置の並行運転に変える場合、クリーニング時には、1番目の晶析槽を1台の結晶化装置で運転することになるので、並行運転のために用いられる2台の結晶化装置は、それぞれを、もとの1番目の晶析槽に用いられていたものと同じ容量とするのは、合理的である。そうした場合には、通常操業では、1番目の晶析槽の容量がもとの1番目の晶析槽の2倍となり、1番目の晶析槽の滞留時間が2倍となるが、上記イに示したように、実施例1?3の範囲では、滞留時間の条件を、引用発明1(実施例1)に比べて0.44倍?2.2倍に変動させても、純度が99.75%以上でヘーゼン色値が5-10のビスフェノールAを得られるのであるから、何ら問題がないことを、当業者は直ちに理解できる。
また、上記イによれば、引用発明1よりも滞留時間が短くなっても問題がないから、1番目の晶析槽を2台の結晶化装置の並行運転に変える場合、並行運転のために用いられる2台の結晶化装置は、それぞれを、もとの1番目の晶析槽に用いられていたものの半分の容量とするのも、合理的である。

エ 以上によれば、引用発明1において、1番目の晶析槽に、刊行物2に記載される2台の結晶化装置の並行運転を適用することとして、結晶化が、該結晶化の第1段階を並列に接続された第1結晶化装置及び第2結晶化装置で行い、該結晶化の第2段階を該第1結晶化装置及び第2結晶化装置と直列に下流で接続された第3結晶化装置で行うように配置された、少なくとも3つの結晶化装置で、行われるようにして、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

5 効果について
本願発明の効果は、平成23年1月5日付けの手続補正により補正されたこの出願の明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0032】?【0034】の記載からみて、
(i)長い滞留時間によって前記結晶化段階での過飽和が減少し熱交換器から晶出した付着堆積物を取り除くべき頻度が低くなること、
(ii)1つの晶析装置の融解中に(審決注:クリーニング中の意味であると認める。)更なる1つの晶析装置で同じ温度段階で運転が続けられ唯一の低温段階を有する一段階結晶化への変更を回避できることによって、設備(又はシステム)の稼働率を高めることができ、また同時に、生成物の純度も高めることができること、
(iii)晶出する堆積物による熱交換器の被覆を加速させるような冷却水の温度を下げることをせずに製造活動を高レベルに維持し、同時に製品品質を維持することができることであると認められる。
しかし、上記(i)の滞留時間に伴う効果は、引用発明1においても、同様の滞留時間の条件が採用されているので、同様に奏されている効果である。上記(ii)の効果は、引用発明1に刊行物2に記載される2台の結晶化装置の並行運転を適用する場合に、当然に奏される効果である。上記(iii)の温度条件に伴う効果は、引用発明1においても、同様の温度条件が採用されているので、同様に奏されている効果である。製品品質についてみても、本願明細書に記載されているのは、実施例の例1で純度99.75%、ハーゼン色指数15、例2で純度99.79%、ハーゼン色指数<15であり、引用発明1における99.90% 5-10ヘーゼンと比べて優れるものではない。なお、色についての、本願明細書に記載のハーゼン色指数(段落【0058】によれば“Hazen colour index”であり、対応欧州特許出願の出願公開には単位とともに“15 Hazen”と記載されている。)と、刊行物1に記載のヘーゼン(Hazen)色値は、同じ指標である。
したがって、本願発明の効果は、格別のものとすることはできない。

6 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに刊行物3及4に記載されたび技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることでできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-26 
結審通知日 2015-11-27 
審決日 2015-12-08 
出願番号 特願2008-1117(P2008-1117)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒川 美陶神野 将志  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 瀬良 聡機
中田 とし子
発明の名称 ビスフェノールを製造するための結晶化方法  
代理人 鈴木 啓靖  
代理人 反町 洋  
代理人 勝沼 宏仁  

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