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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1313828
審判番号 不服2014-15312  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-04 
確定日 2016-04-18 
事件の表示 特願2012-270613「貯遊技媒体処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日出願公開、特開2013- 48954〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年6月28日(優先権主張平成12年6月28日)に出願した特願2001-196991号の一部を平成22年6月21日に新たな特許出願である特願2010-140669号とし、さらにこの特許出願の一部を平成24年12月11日に新たな特許出願としたものであって、平成26年3月11日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年4月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成26年5月2日付け(発送日:平成26年5月8日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。
一方、当審において平成27月11月9日付けで拒絶の理由を通知し、これに対して、平成28年1月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。

2 本願発明
本願の請求項1から5に係る発明は、平成28年1月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から5に記載されたとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
遊技機に対応付けて設けられ、遊技者によって預け入れられた貯遊技媒体の貸与処理を行う貯遊技媒体処理装置と、
前記貯遊技媒体処理装置と通信可能に接続される貯遊技媒体管理装置と、
を備える貯遊技媒体処理システムであって、
前記貯遊技媒体管理装置は、
予め登録された遊技客が所持する遊技客識別媒体を識別する識別情報に対応付けて前記貯遊技媒体の数を特定する貯遊技媒体数情報を管理する貯遊技媒体数管理手段を備え、
前記貯遊技媒体処理装置は、
前記遊技客識別媒体を受け付ける識別媒体受付手段と、
前記識別媒体受付手段にて受け付けた前記遊技客識別媒体から前記識別情報を読取る読取手段と、
遊技機での遊技によって遊技客が獲得した遊技媒体を計数する計数手段と、
前記計数手段にて計数された遊技媒体数を記憶する獲得遊技媒体数記憶手段と、
遊技客による前記貯遊技媒体の預入要求のための操作を受け付ける預入要求操作受付手段を備え、
前記識別媒体受付手段にて前記遊技客識別媒体を受け付け、なおかつ前記預入要求操作受付手段にて操作を受け付けたことを条件として、前記獲得遊技媒体数記憶手段に記憶されている遊技媒体の数量を特定可能な情報を前記貯遊技媒体管理装置に送信し、
前記貯遊技媒体管理装置は、前記遊技客識別媒体により特定される識別情報と、前記情報により特定される遊技媒体の数量を貯遊技媒体として対応付けて更新記憶することを特徴とする貯遊技媒体処理システム。」

3 刊行物
当審の拒絶の理由(平成27年11月9日付けの拒絶理由通知)に引用された本願の出願日前に頒布された特開2000-99831号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(a)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊技場等を利用する会員に対して種々のサービスを提供するポイントシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、パチンコ店等では、固定客を確保するために会員システムが採用されている。この会員システムは、会員となった遊技客に会員カードを配布し、会員となった遊技客に対しては非会員の遊技客と異なるサービス、例えば遊技台の遊技情報の公開サービス等を提供するものである。しかしながら、このような会員システムでは、会員となった遊技客と非会員の遊技客との間でのサービスに差をつけることはできるが、会員間でのサービスに差をつけることができない。このため、遊技回数や使用金額の多い会員、すなわちパチンコ店に対する貢献度の高い会員に対応するサービス内容を設定すると、ほとんど遊技しない会員、すなわちパチンコ店に対する貢献度の低い会員にまで過剰のサービスを提供することになる。一方、ほとんど遊戯しない会員に対応するサービス内容を設定すると、遊技回数や使用金額が多い会員に対するサービスが不足してしまう。そこで、特開平10-57612号公報に記載されているような、各会員にポイントを与えるポイントシステムが提案されている。このポイントシステムでは、各会員の来店回数、使用金額等に応じて各会員にポイントを与え、景品と交換するのに必要な玉数を、遊技客が会員であるか非会員であるかによって変更するとともに、会員であってもポイント数が設定値以上であるか否かによって変更している。すなわち、遊技客が会員であるか非会員であるかによって、また会員であってもポイント数が所定値以上であるか否かによって遊技客に対するランクを決定し、決定したランクに応じて景品と交換するのに必要な玉数を設定している。これにより、各会員に適切なサービスを提供できるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、パチンコ店内において遊技客に提供可能なサービスとしては、景品交換玉数サービスだけでなく、例えば各遊技台の遊技情報等を提供する情報提供手数料サービス、玉貸出し料金サービス、再プレイ手数料サービス(例えば、遊技者が獲得した玉を貯玉として管理し、遊技者はこの貯玉から手数料を払って引き出した玉を用いて再遊技を行うことができる。)等種々のサービスがある。従来のポイントシステムは、会員であるか否か、会員であっても所定値以上のポイント数を有しているか否かによって会員のランクを決定し、決定されたランクに応じたサービスを提供するものであるため、従来のポイントシステムをこのような種々のサービスに用いると、各サービスは各会員に設定されたランクによって決定されてしまう。しかしながら、サービス内容によっては、会員専用のサービスとしたり、サービスに対する条件を変更したい場合がある。例えば、超目玉商品がある場合には、交換ポイント数を高く設定することにより、遊技客の遊技意欲を高め、集客及び収益に利用することができる。本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、各サービス毎にサービス条件を設定することにより、サービス提供対象者に提供するサービスの内容をサービス提供対象者の貢献度に応じて適切に決定することができるポイントシステムを提供することを課題とする。」

(b)「【0005】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、パチンコ店におけるポイントシステムの一実施の形態の構成を示したものである。図1に示すポイントシステムは、遊技台端末11?13、玉貸機20、景品サーバー30、情報端末40、会員サーバー50等により構成され、各機器はLAN等の通信線60により接続されている。遊技台端末11?13は、各遊技台毎に設けられ、例えばカード挿入口に挿入された会員カードに記憶されている会員番号等を読み取り読取手段を有している。なお、読取手段は、会員カードに情報を書き込む機能を備えていてもよい。玉貸機20は、各遊技台毎あるいは島毎等に設けられ、現金あるいはプリペイドカード等によって遊技者に玉を貸し出す。景品サーバー30は、景品名や各景品を交換するのに必要な玉数等の景品情報を記憶している。景品サーバー30は、例えば玉あるいは貯玉と景品との交換処理を行う景品交換端末(図示せず)等に景品情報を送信する。情報端末40は、各遊技台の遊技情報等の情報を遊技者に提供する端末である。会員サーバー50は、各会員の会員番号、暗証番号、貯玉数、ポイント数等を含む会員情報、各種類のポイント数の加算条件を設定するポイント数加算条件テーブル等を記憶手段に記憶する。なお、本実施の形態では、遊技台端末11?13、玉貸機20、景品サーバー30、情報端末40等が、本発明のサービス端末に対応する。」

(c)「【0007】なお、各会員の利用形態におけるポイント数の加算は、例えば以下のようにして判断する。
(1)使用金額ポイント数
玉貸機20が各遊技台に設けられている場合には、例えば各遊技台端末11?13のカード挿入口に会員カードが挿入されると、各遊技台端末11?13は、会員カードに記憶されている会員番号を読み取って会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、各遊技台端末11?13から送信された会員番号を受信することにより各遊技台で遊戯している会員の会員番号を認識する。そして、各遊技台に設けられている玉貸機20から玉が貸し出されると、各遊技台端末11?13は、玉貸機20から貸し出した玉の金額、すなわち遊技者の使用金額を会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、各遊技台端末11?13から送信された使用金額及び使用金額加算条件に基づいてポイント数を計算し、会員番号に対応して記憶している使用金額ポイント数(テーブル番号1)に計算したポイント数を加算して更新する。玉貸機20が各遊技台端末11?13とは別に設けられている場合には、例えば玉貸機20のカード挿入口に会員カードが挿入されると、玉貸機20は、会員カードに記憶されている会員番号を読み取って会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、玉貸機20から送信された会員番号を受信することにより玉貸機20で玉を購入する会員の会員番号を認識する。そして、玉貸機20は、玉を貸し出すと、遊技者の使用金額を会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、玉貸機20から送信された使用金額及び使用金額加算条件に基づいてポイント数を計算し、会員番号に対応して記憶している使用金額ポイント数(テーブル1)に計算したポイント数を加算して更新する。」

(d)「【0010】(4)貯玉利用ポイント数
各遊技台端末11?13のカード挿入口に会員カードが挿入されると、各遊技台端末11?13は、会員カードから読み取った会員番号を会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、各遊技台端末11?13から送信される会員番号を受信することによって各遊技台で遊戯している会員の会員番号を認識する。そして、各遊技台端末11?13は、貯玉預入操作が行われると、例えば貯玉預入数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、貯玉処理信号に含まれている貯玉預入数及び貯玉預入加算条件に基づいてポイント数を計算し、会員番号に対応して記憶している貯玉利用ポイント数(テーブル4)に計算したポイント数を加算して更新する。また、各遊技台端末11?13は、貯玉引き出し操作が行われると、例えば貯玉引き出し数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信する。会員サーバー50は、貯玉処理信号に含まれている貯玉引き出し数及び貯玉引き出し(貯玉再プレイ)加算条件に基づいてポイント数を計算し、会員番号に対応して記憶している貯玉利用ポイント数(テーブル4)に計算したポイント数を加算して更新する。
【0011】次に、遊技台端末11?13、玉貸機20、景品サーバー30、情報端末40それぞれで遊技者に提供されるサービスの内容を決定するためのポイント設定条件及び割引ポイント条件について説明する。図3は、遊技者が、遊技台端末11?13で自分の貯玉から玉を引き出して再プレイする場合の手数料(再プレイ手数料)に対するサービス内容を決定する再プレイポイント数設定条件テーブルを示す。この再プレイポイント数設定条件テーブルは、任意に設定可能であり、各遊技台端末11?13に記憶してもよいし、会員サーバー50に記憶してもよい。図3に示す再プレイポイント数設定条件テーブルでは、再プレイ手数料に対するサービス内容を決定する場合は、会員サーバー50に記憶されている各会員番号に対応するポイント数のうち、テーブル番号4に記憶されている遊技時間ポイント数が再プレイポイント数として選択されることを示している。また、再プレイ手数料に対するサービスを提供した場合、当該会員番号に対応して記憶されている再プレイポイント数が引き落とされることはないことを示している。さらに、再プレイポイント数と再プレイポイント数設定条件(図3では、手数料ポイント条件)との比較結果に基づいてサービス内容が以下のように決定されることを示している。すなわち、遊技者が有している再プレイポイント数が10ポイント未満のときには、通常の再プレイ手数料がとられる(例えば、1000個貯玉再プレイする場合の再プレイ手数料は100個)。遊技者が有している再プレイポイント数が10ポイント以上で20ポイント未満のときには、再プレイ手数料は通常の再プレイ手数料の80%、この場合1000個貯玉再プレイする場合の再プレイ手数料が80個となる。以下、遊技者が有している再プレイポイント数が20ポイント以上で30ポイント未満のときには通常の70%、30ポイント以上で40ポイント未満のときには通常の60%、40ポイント以上のときには通常の50%となる。」

(e)「【0016】次に、本実施の形態における、会員の遊技者の利用形態に応じたポイント数の付与動作、会員の遊技者が有するポイント数に応じたサービス内容の決定動作を具体的に説明する。なお、各種のサービスの内容を決定するためのポイント数設定条件は図3?図6に示したように設定されているものとする。会員の遊技客が、パチンコ店に1回来店し、玉を15000円購入して8時間遊技した場合、来店回数ポイント数が1ポイント、使用金額ポイント数が15ポイント、遊技時間ポイント数が4ポイント与えられる。また、遊技により獲得した玉を15000個貯玉預入し、さらに再プレイするために貯玉から4000個引き出した場合、貯玉預入により1ポイント、貯玉再プレイにより2ポイント与えられるため、合計3ポイントの貯玉利用ポイント数が与えられる。この会員の遊技客に対応する会員情報は、会員サーバー50に図7に示す状態で記憶されている。」

(f)前記(a)の段落【0002】の【従来の技術】に係る記載から、会員カードが、会員となった遊技客に配布されたものであることは明らかである。

(g)前記(e)より、会員の遊技客が、貯玉預入する玉の数(貯玉預入数)は、遊技により獲得したものであるといえる。

上記の記載事項(a)?(e)及び認定事項(f)?(g)を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。

「各遊技台毎に設けられた遊技台端末11?13であって、遊技者が、自分の貯玉から玉を引き出して再プレイするために、貯玉引き出し操作を行う遊技台端末11?13と、
各遊技台に設けられており玉を貸し出す玉貸機20と、
遊技台端末11?13とLAN等の通信線60により接続されている会員サーバー50を含んで構成されたポイントシステムであって、
会員サーバー50は、会員となった遊技客に配布された会員カードに記憶されている各会員の会員番号、貯玉数を含む会員情報を記憶手段に記憶し、
各遊技台端末11?13は、カード挿入口に挿入された会員カードに記憶されている会員番号等を読み取る読取手段を有しており、各遊技台端末11?13のカード挿入口に会員カードが挿入されると、会員カードから読み取った会員番号を会員サーバー50に送信し、貯玉預入操作が行われると、遊技により獲得した貯玉預入数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信するものである、ポイントシステム。」

4 対比
本願発明と引用発明1とを比較すると、以下のことがいえる。

(1)引用発明1の「各遊技台毎に設けられ」ることは、本願発明の「遊技機に対応付けて設けられ」ることに相当する。

(2)本願発明の「遊技者によって預け入れられた貯遊技媒体の貸与処理」について、本願の明細書には、
「【0052】
・・・図7は、この発明の第2の実施形態に係る遊技媒体貸出システムの構成を示すブロック図である。この第2の実施形態に係る遊技媒体貸出システムでは、携帯電話機110を用いて、遊技機120における遊技などで遊技客が獲得した遊技媒体の個数(遊技媒体数)のデータを貯玉データとしてデータ集計管理装置150に記憶させておき、後に、そのデータ集計管理装置150に記憶させた貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けることができる。・・・」
「【0082】
図12は、貯玉データをパチンコ玉に変換する際のデータの流れを示す図である。・・・台間機130において貯玉データをパチンコ玉に変換する際には、遊技客は、まず、台間機130の情報表示器137に初期画面が表示されていることを確認する(1.初期画面表示)。」
「【0084】
また、情報表示器137の表示画面には、貯玉数とともに「再プレイ」および「キャンセル」などの複数の選択項目が表示される。これらの選択項目には、互いに異なる数字が付されており、貯玉データをパチンコ玉に変換するためには、遊技客は、「再プレ-」に付された数字を台間機130のテンキー138から入力する(7.「再プレ-」選択)。・・・
【0085】
「再プレイ」に付された数字が入力されたことに応答して、台間に130からデータ集計管理装置150に向けて、貯玉データをパチンコ玉に変換するための処理を行う旨の信号が送信される(8.玉貸要求)。・・・」
「【0087】
暗証番号が正しければ、データ集計管理装置150から台間機130に向けて、正しい暗証番号が携帯電話機110から入力された旨の信号が送信される(13.照合結果送信)。この信号を台間機130が受信すると、台間機130からその台間機130に対応づけられた遊技機120に向けて玉貸要求信号が送信される(14.玉貸要求信号送信)。この玉貸要求信号を受けて、遊技機120では、遊技機120内のパチンコ玉払出装置から上皿123に所定数のパチンコ玉が排出される(15.遊技媒体貸出)。そして、パチンコ玉の排出が完了すると、遊技機120から台間機130に向けて玉貸しが完了した旨の信号(玉貸完了信号)が送信され(16.玉貸完了信号送信)、この信号を受けた台間機130では、情報表示器137に表示されている貯玉数が上記所定数だけ減算して得られる値に更新される(17.貯玉数表示更新)。」
「【0101】
以上のように、この第2の実施形態によれば、遊技機120における遊技などで遊技客が獲得したパチンコ玉(獲得玉)の個数のデータを貯玉データとしてデータ集計管理装置150に登録しておき、後に、そのデータ集計管理装置150に登録した貯玉データを使用してパチンコ玉の貸出しを受けることができる・・・」
と記載されているから、本願発明の「遊技者によって預け入れられた貯遊技媒体の貸与処理」とは、遊技客が、貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けるために、再プレイの入力を行うと、遊技媒体が排出される処理を意味するものといえる。
そうすると、引用発明1の「遊技者が、自分の貯玉から玉を引き出して再プレイするために、貯玉引き出し操作を行う」ことは、本願発明の「貸与処理」と、「遊技客が、貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けるために、再プレイの入力を行う」点で共通している。

(3)前記(1)及び(2)から、引用発明1の「各遊技台毎に設けられた遊技台端末11?13であって、遊技者が、自分の貯玉から玉を引き出して再プレイするために、貯玉引き出し操作を行う遊技台端末11?13」は、本願発明と「遊技機に対応付けて設けられ、遊技客が、貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けるために、再プレイの入力を行う貯遊技媒体処理装置」に相当する構成を有する点で共通する。

(4)引用発明1の「遊技台端末11?13とLAN等の通信線60により接続されている会員サーバー50」は、本願発明の「前記貯遊技媒体処理装置と通信可能に接続される貯遊技媒体管理装置」に相当する。

(5)引用発明1の「会員となった遊技客に配布された会員カード」、「会員の会員番号」及び「貯玉数」は、それぞれ、本願発明の「予め登録された遊技客が所持する遊技客識別媒体」、「識別情報」及び「貯遊技媒体の数」に相当する。
そうすると、引用発明1の会員サーバー50が、会員となった遊技客に配布された会員カードに記憶されている各会員の会員番号、貯玉数を含む会員情報を記憶する「記憶手段」は、本願発明の「予め登録された遊技客が所持する遊技客識別媒体を識別する識別情報に対応付けて前記貯遊技媒体の数を特定する貯遊技媒体数情報を管理する貯遊技媒体数管理手段」に相当する。

(6)引用発明1の遊技台端末11?13が備える「カード挿入口」及び「カード挿入口に挿入された会員カードに記憶されている会員番号等を読み取る読取手段」は、それぞれ、本願発明の貯遊技媒体処理装置が備える「前記遊技客識別媒体を受け付ける識別媒体受付手段」及び「前記識別媒体受付手段にて受け付けた前記遊技客識別媒体から前記識別情報を読取る読取手段」に相当する。

(7)引用発明1の各遊技台端末11?13で行われる「遊技により獲得した貯玉預入数」の「貯玉預入操作」は、本願発明の貯遊技媒体処理装置における「遊技客による前記貯遊技媒体の預入要求のための操作」に相当する。
そうすると、引用発明1の遊技台端末11?13は、本願発明の「預入要求操作受付手段」に相当する構成を備えているものといえる。

(8)引用発明1の「カード挿入口に会員カードが挿入される」こと、「貯玉預入操作が行われる」こと及び「貯玉預入数を含む貯玉処理信号」は、それぞれ、本願発明の「前記識別媒体受付手段にて前記遊技客識別媒体を受け付け」ること、「前記預入要求操作受付手段にて操作を受け付けたこと」及び「遊技媒体の数量を特定可能な情報」に相当する。
そして、「貯玉預入数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信する」ことは、「カード挿入口に会員カードが挿入され」かつ「貯玉預入操作が行われる」ことによって行われるから、「カード挿入口に会員カードが挿入され」かつ「貯玉預入操作が行われる」ことが条件となっているといえる。
以上のことから、引用発明1の「各遊技台端末11?13のカード挿入口に会員カードが挿入されると、会員カードから読み取った会員番号を会員サーバー50に送信し、貯玉預入操作が行われると、遊技により獲得した貯玉預入数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信する」ことは、本願発明の「前記識別媒体受付手段にて前記遊技客識別媒体を受け付け、なおかつ前記預入要求操作受付手段にて操作を受け付けたことを条件として、遊技媒体の数量を特定可能な情報を前記貯遊技媒体管理装置に送信」することに相当する。

(9)引用発明1の「会員サーバー50」は、「会員となった遊技客に配布された会員カードに記憶されている各会員の会員番号、貯玉数を含む会員情報を記憶手段に記憶」するものであるから、新たな「貯玉預入数を含む貯玉処理信号」を受信すれば、記憶している「貯玉数」を更新することは自明である。
そうすると、引用発明1の会員サーバー50は、本願発明の「前記遊技客識別媒体により特定される識別情報と、前記情報により特定される遊技媒体の数量を貯遊技媒体として対応付けて更新記憶する」ことに相当する構成を備えているものといえる。

上記(1)から(9)により、本願発明と引用発明1とを比較すると、両者は、
「遊技機に対応付けて設けられ、遊技客が、貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けるために、再プレイの入力を行う貯遊技媒体処理装置と、
前記貯遊技媒体処理装置と通信可能に接続される貯遊技媒体管理装置と、を備える貯遊技媒体処理システムであって、
前記貯遊技媒体管理装置は、
予め登録された遊技客が所持する遊技客識別媒体を識別する識別情報に対応付けて前記貯遊技媒体の数を特定する貯遊技媒体数情報を管理する貯遊技媒体数管理手段を備え、
前記貯遊技媒体処理装置は、
前記遊技客識別媒体を受け付ける識別媒体受付手段と、
前記識別媒体受付手段にて受け付けた前記遊技客識別媒体から前記識別情報を読取る読取手段と、
遊技客による前記貯遊技媒体の預入要求のための操作を受け付ける預入要求操作受付手段を備え、
前記識別媒体受付手段にて前記遊技客識別媒体を受け付け、なおかつ前記預入要求操作受付手段にて操作を受け付けたことを条件として、遊技媒体の数量を特定可能な情報を前記貯遊技媒体管理装置に送信し、
前記貯遊技媒体管理装置は、前記遊技客識別媒体により特定される識別情報と、前記情報により特定される遊技媒体の数量を貯遊技媒体として対応付けて更新記憶する貯遊技媒体処理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「貯遊技媒体処理装置」が行う「貸与処理」について、本願発明では、遊技媒体が排出される処理を含んでいるのに対し、引用発明1では、貯玉引き出し操作を行うが、そのような処理がなされることが明記されてない点。

[相違点2]
「貯遊技媒体処理装置」が、本願発明では、「遊技機での遊技によって遊技客が獲得した遊技媒体を計数する計数手段」を備えているのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

[相違点3]
「貯遊技媒体処理装置」が、本願発明では、「前記計数手段にて計数された遊技媒体数を記憶する獲得遊技媒体数記憶手段」を備えているのに対して、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

[相違点4]
「貯遊技媒体処理装置」が「前記識別媒体受付手段にて前記遊技客識別媒体を受け付け、なおかつ前記預入要求操作受付手段にて操作を受け付けたことを条件として」、「前記貯遊技媒体管理装置に送信」する「遊技媒体の数量を特定可能な情報」が、本願発明では、「前記獲得遊技媒体数記憶手段に記憶されている遊技媒体の数量」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。

5 判断
[相違点1について]
貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けることが可能な遊技システムにおいて、貯玉引き出し操作に応じて、遊技媒体が排出される構成を設けることは、本願の遡及日前に周知の技術(例えば、特開平11-57202号公報(以下「刊行物2」という。)の段落【0035】、【0036】には、貯玉の引出しにおいて、投出ボタン51を押すことにより、パチンコ球が台間玉貸機2の玉投出ノズル10から遊技機1の上皿に投出されることが記載されている。特開平11-333116号公報(以下「刊行物3」という。)の段落【0045】、【0068】、【0125】、【図30】には、再プレイの際に、遊技機12ごとに設けた遊技媒体貸出装置200aの返却/再プレイボタン241を押下することにより、パチンコ玉を遊技媒体貸出装置200aのノズル206から払い出すことが記載されている。以下「周知技術1」という。)である。
そうすると、引用発明1の「貯遊技媒体処理装置」において、「貯玉データを使用して遊技媒体の貸出しを受けるために、再プレイの入力」がされた際に、上記周知技術1を適用することで、各遊技台に設けられている玉を貸し出す玉貸機20等に、遊技媒体が排出される処理を行わせるように構成し、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。


[相違点2から4について]
相違点2?4は、いずれも、遊技客による預入要求の対象となる遊技媒体の数量に関連する構成として共通するものであるから、まとめて検討する。

上記刊行物2(段落【0009】、【0035】?【0039】、【0042】、【0045】、【0046】、【0052】、【図12】参照。)には、遊技機1ごとに台間玉貸機2と玉計数装置18とが接続され、遊技客が台間玉貸機2に会員カードを挿入し暗証番号の照合を行うことで玉計数装置18が使用可能となり、遊技によって獲得したパチンコ玉が玉計数装置18でカウントされて獲得玉数として台間玉貸機2内の記憶部に記憶され、会員である遊技客が台間玉貸機2の返却ボタンを押すことにより記憶されていた獲得データがホールコンピュータ62に送信され、当該会員の貯玉口座に貯玉されること、が記載されている。
また、上記刊行物3(段落【0121】、【0122】、【0127】、【0131】、【0132】、【図27】、【図30】参照。)には、遊技媒体の個数を計数する計数機300aが各遊技媒体貸出機200aに接続されており、獲得した遊技媒体を貯玉するときに押下する貯玉ボタン24が押下されると、会員カードが挿入されていることを前提に、計数機300aで計数された計数結果が、遊技媒体貸出機200aを介してホール管理端末機100に送信され、当該会員の貯玉に累積加算する再プレイ管理装置であって、ホール管理端末機100では、会員カード毎に予め付与されている顧客ID番号毎に貯玉数を管理していること、が記載されている。刊行物3には、遊技媒体貸出機200aが、計数機300aで計数された計数結果を、ホール管理端末100に送信することが記載されているから、計数機300aで計数された計数結果が、遊技媒体貸出機200aの記憶部に記憶されることは当業者にとって明らかである。
さらに、特開平09-225129号公報(段落【0030】、【0032】?【0035】、【0039】、【0042】、【図2】、【図4】参照。以下「刊行物4」」という。)には、パチンコ機2等の遊技機に並設される台間玉貸機11が玉計数機5と接続されており、パチンコ機2のプレーにより増加したパチンコ玉を玉計数機5で計数し、この計数したパチンコ玉を貯玉する場合は、台間玉貸機11の会員カード挿入口15に会員カードが挿入された状態で操作ボタン13の操作を行うと、玉計数機5で計数されたパチンコ玉の数量データと会員カードのデータ(会員番号)がホストコンピュータ25に送られ、会員の貯玉としてホストコンピュータ25に記憶されること、が記載されている。刊行物4には、台間玉貸機11が、玉計数機5で計数されたパチンコ玉の数量データを、ホストコンピュータに送ることに加え、プリンタ6で印字したり、レシートで発行することが記載されているから、玉計数機5で計数されたパチンコ玉の数量データが、台間玉貸機11の記憶部に記憶されることは当業者にとって明らかである。
そうすると、これら刊行物2?4に記載されているように、遊技機の技術分野において、遊技機に対応付けて設けられ、遊技者によって預け入れられた貯遊技媒体の貸与処理を行う貯遊技媒体処理装置に、遊技により獲得したパチンコ玉数を計数する玉計数機と、当該玉計数機によって計数されたパチンコ玉数を記憶する記憶部とを設け、会員カードが挿入され、所定の操作がされたことを条件に、記憶部に記憶されたパチンコ玉数をホールコンピュータのような貯遊技媒体管理装置に送信し、会員毎に貯玉を記憶させるようにし、会員毎の貯玉を管理することは、本願の遡及日前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。

他方で、引用発明1は、各遊技台毎に設けられた遊技台端末11?13であって、遊技者が、自分の貯玉から玉を引き出して再プレイする遊技台端末11?13において、会員カードが挿入され、貯玉預入操作が行われると、遊技により獲得した貯玉預入数を含む貯玉処理信号を会員サーバー50に送信することにより貯玉管理を行うものであり、当該引用発明1に上記周知技術2を適用することで、遊技台端末11?13に、遊技により獲得したパチンコ玉数を計数する玉計数機(計数手段)と、当該玉計数機によって計数されたパチンコ玉数を記憶する記憶部(獲得遊技媒体数記憶手段)とを設け、会員カードが挿入され、貯玉預入操作が行われたことを条件に、記憶部に記憶されたパチンコ玉数を、会員サーバー50(貯遊技媒体管理装置)に送信するようにし、前記相違点2から4に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、上記相違点1から4によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明1及び周知技術1並びに2から予測し得る程度のものであって、格別のものでもない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び周知技術1並びに2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-04 
結審通知日 2016-02-18 
審決日 2016-03-01 
出願番号 特願2012-270613(P2012-270613)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
関 博文
発明の名称 貯遊技媒体処理システム  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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