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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1313832
審判番号 不服2015-1291  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-22 
確定日 2016-04-18 
事件の表示 特願2011-530118「ディスプレイをオーバドライブする方法、画像を表示する方法、信号調整回路および電子デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日国際公開、WO2010/039576、平成24年 2月23日国内公表、特表2012-504784〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下,「本願」という。)は,2009年(平成21年)9月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年(平成20年)10月2日(以下,「優先日」という。),US,2009年(平成21年)1月22日,US)を国際出願日とする特許出願であって,その手続の経緯の概略は,以下のとおりである。
平成23年 5月27日 翻訳文の提出
平成23年 6月 2日 手続補正書の提出
平成24年10月26日付け 拒絶理由通知(同年11月2日発送)
平成25年 2月 4日 意見書,手続補正書(以下,「補正1」
という。)の提出
平成25年 7月26日付け 拒絶理由通知(同年8月2日発送)
平成26年 2月 3日 意見書,手続補正書(以下,「補正2」
という。)の提出
平成26年 9月18日付け 補正2についての補正却下の決定,
拒絶査定(同年同月22日送達)
平成27年 1月22日 手続補正書(以下,「本件補正」
という。),審判請求書の提出

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は,本件補正前,すなわち補正1の特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含む。なお,下線は補正箇所を示す。
(本件補正前)
「 ディスプレイをオーバドライブする方法であって,
ディスプレイ上に表示される,前記ディスプレイの複数の画素の各々の目標画素強度レベルに対応する目標ピクチャフレームを受信し,
前記ディスプレイの複数の画素の各々について,前記目標ピクチャフレームを,前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレームと比較し,
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの比較に基づいて前記目標ピクチャフレームに対して行われるべき調整を判断し,
前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを,所与の期間において前記目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合に,前記複数の画素を,該複数の画素の目標画素強度レベルを超えるオーバドライブ画素強度レベルへオーバドライブすることにより,生成すること,を含む方法。」

(本件補正後)
「 ディスプレイをオーバドライブする方法であって,
ディスプレイ上に表示される,前記ディスプレイの複数の画素の各々の目標画素強度レベルに対応する目標ピクチャフレームを受信し,
前記ディスプレイの複数の画素の各々について,前記目標ピクチャフレームを,前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレームと比較し,
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの比較に基づいて前記目標ピクチャフレームに対して行われるべき調整を判断し,
前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより,前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し,
前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベルと,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む方法。」

2 補正の適否(補正の目的要件)について
(1)
本件補正前の請求項1で特定されていた「調整されたピクチャフレーム」の生成について,本件補正前の請求項1で特定されていた「前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを,所与の期間において前記目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合に,前記複数の画素を,該複数の画素の目標画素強度レベルを超えるオーバドライブ画素強度レベルへオーバドライブすることにより」生成することを,「前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより」生成することにする補正がなされた。
この補正は,本件補正前の請求項1で特定されていた「調整されたピクチャフレーム」の生成について,「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより」生成することを付加することにより限定する補正であり,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
(2)
本件補正前の請求項1で特定されていた「方法」について,「前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベルと,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む」ことに限定する補正であり,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

よって,請求項1についての本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

3 補正の適否(サポート要件に関する独立特許要件)について
本件補正発明は,「前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベルと,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む」ものである。
一方,発明の詳細な説明には,「達成可能なピクチャフレーム」について以下の記載がある。なお,下線は,当審が付与した。
「【0031】
・・・従って,信号調整回路56は各画素をオーバドライブし,それにより,一方の画素強度レベルから他方の画素強度レベルにより迅速に遷移できるようにする。画素をオーバドライブすることは,規定された時間,すなわち1つのフレームの期間内において目標画素強度レベル又はそれに近接する実際の画素強度レベルを実現するために,画素が目標画素強度レベルを越えて駆動される処理である。従って,オーバドライブされた画素は規定された時間でオーバドライブされた画素強度レベルには到達できないであろうが,画素がオーバドライブされて到達した実際の画素強度レベルは元の目標画素強度レベルと等しくなり得る。このように,オーバドライビング技術を介して,信号調整回路56は,受信したピクチャフレームにおいて規定された元の目標画素強度レベルを実現する。従って,信号調整回路56は,1つのフレーム等の所定の時間制約内で実際の画素強度レベルを実現するために,特定の画素をいつ,どれくらいオーバドライブすべきかを判定する。また,画素をいつ,どれくらいオーバドライブすべきかは,調整された画素レベルを提供するルックアップテーブルを使用して決定されてもよいし,あるいは他のあらゆる適切なアルゴリズム又は方法を取り入れることにより決定されてもよい。
【0032】
ステップ68において,信号調整回路56は,調整されたピクチャフレーム及び達成可能なピクチャフレームを生成する。調整されたピクチャフレームは,ディスプレイ24において画素をオーバドライブするためにビデオコントローラ58に送信される調整された画素レベルを含む。しかし,ディスプレイ24の画素をオーバドライブする場合,画素は設定時間内で目標ピクチャフレームを実現できない場合がある。例えば,ある画素位置では,目標画素強度レベルに到達する前に2つ以上のフレームに対してオーバドライブされる。信号調整回路は,調整されたピクチャフレームを適用した後の1つのフレームにおいてディスプレイ24により実際に生成される達成可能な画素強度レベルを把握している。従って,ディスプレイ24により達成可能なピクチャフレームは,信号調整回路56により判定される。そのようなシナリオにおいて,目標ピクチャフレーム,調整されたピクチャ及び達成可能なピクチャは,種々の画素レベルを含む種々のピクチャフレームである。
【0033】
しかし,目標ピクチャフレームと,調整されたピクチャフレームと,達成可能なピクチャフレームとの間で,これらのピクチャフレームのうちのいくつか又は全てが同等となる,ある特定の場合がある。例えば,フレーム間で画像が不変である場合,調整の必要はなく且つ上述のピクチャフレームは全て同等となるであろう。ディスプレイ24が1つのフレーム内で目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合も同様である。更に例として,ディスプレイ24が調整されたピクチャフレームを適用することによってのみ1つのフレーム内で目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合,目標ピクチャフレーム及び達成可能なピクチャフレームは互いに同等であるが,調整されたピクチャフレームとは異なるだろう。
【0034】
ステップ70において,調整されたピクチャフレームを生成する際に目標ピクチャフレームに対してあらゆる調整を施した後,信号調整回路56は調整されたピクチャフレームをビデオコントローラ58に送出する。更に信号調整回路56は,次のフレームに対応する次の目標ピクチャフレームと比較するために,達成可能なピクチャフレームを格納する。最後に,ステップ72において,ビデオコントローラ58は,画像を生成するために,調整されたピクチャフレームに含まれたデータに対応する電圧信号をディスプレイ24に送出する。」

段落0033の記載から,フレーム間で画像が不変である場合,及び,目標ピクチャフレームに正常に遷移できる場合,つまり,オーバードライブしなくてよい場合,目標ピクチャフレームと,調整されたピクチャフレームと,達成可能なピクチャフレームとの間で,全てが同等となると解される。
このオーバードライブしなくてよい場合は,本件補正発明の「達成可能なピクチャフレーム」が「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベル」を含むものに対応するといえる。

段落0031及び段落0032の記載から,オーバドライブにより,オーバドライブされた画素強度レベルには到達できないが元の目標画素強度レベルと等しくなり得る場合と,目標ピクチャフレームを実現できない場合があると解される。
つまり,目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブした場合は,達成可能なピクチャフレームが,目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルを含むことはなく,元の(目標ピクチャフレームの)目標画素強度レベルと等しくなるか到達できないレベルを含むことになる。
このオーバドライブした場合は,本件補正発明の「達成可能なピクチャフレーム」が「前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値」を含むものに対応するといえるが,「前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベル」を含むものに対応するとはいえない。

したがって,本件補正発明は,発明の詳細な説明に記載したものでなく,本件補正後の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお,審判請求書には,「達成可能なピクチャフレーム」が「調整された画素強度レベル(オーバドライブレベル)」を含むかのような主張があるが,発明の詳細な説明の段落0005に「調整された信号は,1つ以上のフレーム期間において目標画素をオーバドライブする。目標画素をオーバドライブした場合,画素の強度は調整された目標レベルには到達しないが,元の所定の目標レベルには到達する。」と記載されているように,オーバドライブした場合には,調整された画素強度レベル(オーバドライブレベル)に到達できるものではないことから,前記主張は技術的に妥当ではなく,採用できない。

4 補正の適否(進歩性に関する独立特許要件)について
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記3に記載したとおり,発明の詳細な説明に記載したものでない。
ところで、発明の詳細な説明段落0032には,「しかし,ディスプレイ24の画素をオーバドライブする場合,画素は設定時間内で目標ピクチャフレームを実現できない場合がある。例えば,ある画素位置では,目標画素強度レベルに到達する前に2つ以上のフレームに対してオーバドライブされる。」との記載がある。ここで,オーバドライブする場合,画素は設定時間内で目標ピクチャフレームを実現できない場合があるということは,画素は設定時間内で目標ピクチャフレームを実現できる場合もあることになる。そして、目標ピクチャフレームを実現できるとは,「目標画素強度レベル」に到達することであり,「調整された画素強度レベル」に到達することを意味するものではない。
してみると,本件補正発明における「前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベルと」は,発明の詳細な説明に記載された内容と整合するようにすると,
「調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベル到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと」であることになる。
また,本件補正発明の「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより,前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し」との記載からすると,
「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと」なるのは,目標画素強度レベルへドライブする場合である。
以上のことを考慮し,本件補正発明が発明の詳細な説明に記載された内容と整合するよう,以下のものであるとして,進歩性に関する独立特許要件を以下検討する。なお,下線は,当審が付与したものであり,修正した箇所を示す。

「 ディスプレイをオーバドライブする方法であって,
ディスプレイ上に表示される,前記ディスプレイの複数の画素の各々の目標画素強度レベルに対応する目標ピクチャフレームを受信し,
前記ディスプレイの複数の画素の各々について,前記目標ピクチャフレームを,前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレームと比較し,
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの比較に基づいて前記目標ピクチャフレームに対して行われるべき調整を判断し,
前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより,前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し,
前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベル到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
目標画素強度レベルへドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む方法。」
(以下,「本件補正発明」という。)。

(2)引用例の記載事項,引用発明,周知技術
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2004-246312号公報(発明の名称:液晶表示装置,出願人:シャープ株式会社,公開日:平成16年9月2日,以下,「引用例1」という。)には,次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。なお,下線は,当審が付与した。
(a)
「【0013】
本発明の第2の局面による液晶表示装置は,液晶層と前記液晶層に電圧を印加する電極とを有する液晶パネルと,前記液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路とを備え,前記駆動回路は,1垂直期間前における前記液晶パネルの透過率の予測値に対応する予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せに応じて,予め決められた,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を,前記液晶パネルに供給する。」
(b)
「【0015】
前記1垂直期間前における予測信号は,現垂直期間における前記液晶パネルの透過率に対応していることが好ましい。」
(c)
「【0028】
(オーバーシュート駆動)
本明細書でオーバーシュート駆動とは,前垂直期間(直前の垂直期間)と現垂直期間との入力画像信号Sを比較し現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧を補正する,液晶パネルの駆動法を指す。この比較・補正された階調電圧をオーバーシュートされた電圧という。例えば,現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりも高い場合には,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりもさらに高い電圧であり,逆に,現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりも低い場合には,現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりもさらに低い電圧を指す。」
(d)
「【0036】
オーバーシュート駆動に使用する電圧は,前フィールドの入力画像信号S(例えば64階調)と現フィールドの入力画像信号S(64階調)との組合せ(但し,階調の変化の無い組合せに対してはオーバーシュート量が0である)に対して決められる。液晶パネルの応答速度によっては,オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得る。また,オーバーシュート駆動専用電圧Vosの階調数も適宜変化し得る。」
(e)
「【0069】
組合せ検出回路12は,予測値記憶回路17に保持された予測信号と,現フィールドの入力画像信号とを比較し,その組合せを示す信号(組合せ信号)を予測値検出回路16に出力する。また,組合せ検出回路12は,OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し,オーバーシュート電圧検出回路13に出力する。オーバーシュート予測値検出回路16は,予測テーブル19を参照して,組合せ検出回路12で検出された組合せ信号に対応する予測値(階調レベル)を検出する。以下,OSパラメータテーブル18に設定された階調レベルを「OSパラメータ」ともいう。
【0070】
予測値記憶回路17は,予測値検出回路16で検出された信号を保持する。保持される信号は,入力画像信号Sの少なくとも1枚のフィールド画像に相当する。1フレームが複数のフィールドに分割されない場合,予測値記憶回路17は,少なくとも1枚のフレーム画像に相当する信号を保存する。
【0071】
一方,オーバーシュート電圧検出回路13は,組合せ検出回路12から出力されたOSパラメータに対応する駆動電圧を,階調電圧Vgおよびオーバーシュート駆動専用電圧Vosのなかから検出する。極性反転回路14は,オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧を交流信号に変換し,液晶パネル(表示部)15に供給する。」
(f)
「【0076】
このように,OSパラメータテーブル18に格納されるOSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルである。しかし,階調遷移パターンによっては,液晶応答が遅いので,設定された目標階調レベルを用いても,1フィールド後に目標の階調レベルに到達しないこともある。本実施形態では,予測テーブル19から,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値を求め,この予測値に基づいて,次フィールドの入力画像信号を補正する。」

段落0013,0028の記載から,
「液晶層と前記液晶層に電圧を印加する電極とを有する液晶パネルと,前記液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路とを備え,前記駆動回路は,1垂直期間前における前記液晶パネルの透過率の予測値に対応する予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せに応じて,予め決められた,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を,前記液晶パネルに供給する液晶パネルのオーバーシュート駆動法」の技術事項が読み取れる。

段落0015には,
「前記1垂直期間前における予測信号は,現垂直期間における前記液晶パネルの透過率に対応し」ているとの技術事項が記載されている。

段落0036から,
「オーバーシュート駆動に使用する電圧は,
階調の変化の無い組合せに対してはオーバーシュート量が0であり,液晶パネルの応答速度によっては,オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得」るとの技術事項が読み取れる。

段落0069から,
「組合せ検出回路12は,予測値記憶回路17に保持された予測信号と,現フィールドの入力画像信号とを比較し,その組合せを示す信号(組合せ信号)を予測値検出回路16に出力し,
組合せ検出回路12は,OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し,オーバーシュート電圧検出回路13に出力し,
オーバーシュート予測値検出回路16は,予測テーブル19を参照して,組合せ検出回路12で検出された組合せ信号に対応する予測値(階調レベル)を検出し,
(以下,OSパラメータテーブル18に設定された階調レベルを「OSパラメータ」ともいう。)」との技術事項が読み取れる。

段落0070から,
「予測値記憶回路17は,少なくとも1枚のフレーム画像に相当する予測値検出回路16で検出された信号を保存」するとの技術事項が読み取れる。

段落0071には,
「極性反転回路14は,オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧を交流信号に変換し,液晶パネル(表示部)15に供給する」との技術事項が記載されている。

段落0076には,
「OSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルであり,階調遷移パターンによっては,液晶応答が遅いので,設定された目標階調レベルを用いても,1フィールド後に目標の階調レベルに到達しないこともあり,予測テーブル19から,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値を求め,この予測値に基づいて,次フィールドの入力画像信号を補正する」との技術事項が記載されている。

イ 引用発明
以上の引用例1に記載された技術事項から,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)を認定することができる。

「液晶層と前記液晶層に電圧を印加する電極とを有する液晶パネルと,前記液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路とを備え,前記駆動回路は,1垂直期間前における前記液晶パネルの透過率の予測値に対応する予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せに応じて,予め決められた,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を,前記液晶パネルに供給する液晶パネルのオーバーシュート駆動法において,
前記1垂直期間前における予測信号は,現垂直期間における前記液晶パネルの透過率に対応し,
オーバーシュート駆動に使用する電圧は,
階調の変化の無い組合せに対してはオーバーシュート量が0であり,液晶パネルの応答速度によっては,オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得,
組合せ検出回路12は,予測値記憶回路17に保持された予測信号と,現フィールドの入力画像信号とを比較し,その組合せを示す信号(組合せ信号)を予測値検出回路16に出力し,
組合せ検出回路12は,OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し,オーバーシュート電圧検出回路13に出力し,
オーバーシュート予測値検出回路16は,予測テーブル19を参照して,組合せ検出回路12で検出された組合せ信号に対応する予測値(階調レベル)を検出し,
(以下,OSパラメータテーブル18に設定された階調レベルを「OSパラメータ」ともいう。)
予測値記憶回路17は,少なくとも1枚のフレーム画像に相当する予測値検出回路16で検出された信号を保存し,
極性反転回路14は,オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧を交流信号に変換し,液晶パネル(表示部)15に供給し,
OSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルであり,階調遷移パターンによっては,液晶応答が遅いので,設定された目標階調レベルを用いても,1フィールド後に目標の階調レベルに到達しないこともあり,予測テーブル19から,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値を求め,この予測値に基づいて,次フィールドの入力画像信号を補正する,
液晶パネルのオーバーシュート駆動法。」

ウ 周知例の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用され,本願の優先日前に頒布された国際公開第2008/062577号(発明の名称:画像表示装置,出願人:シャープ株式会社,公開日:2008年(平成20年)5月29日,以下,「周知例」という。)には,次の事項(a)が記載されている。なお,下線は,当審が付与した。
(a)
「[0057] なお,オーバーシュート処理回路40における変換後の階調レベルを,上記以外の方法で決定してもよい。例えば,直前のサブフレームの階調レベルと現サブフレームの階調レベルとの差が所定値未満のときには,変換後の階調レベルを変換前の階調レベルと同じ値に決定してもよい。この場合,オーバーシュート処理回路40は,時分割階調処理回路50から出力された映像信号が直前のサブフレームから所定値以上変化したときに限り,階調レベル変換を行う。これにより,ノイズの混入による誤動作を防止することができる。」

以上の記載から「直前のサブフレームの階調レベルと現サブフレームの階調レベルとの差の大小によって,オーバーシュートの階調レベル変換を行う必要があるか否か判定する技術」が記載されていると認められる。

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを,主たる構成要件毎に順次対比する。
(a)
液晶パネルは,ディスプレイの一種であり,オーバーシュート駆動は,オーバドライブとも言われることから,引用発明の「液晶パネルのオーバーシュート駆動法」は,本件補正発明の「ディスプレイをオーバドライブする方法」に相当する。
(b)
垂直期間の画像信号は,ピクチャーフレームに対応するから,引用発明の「現垂直期間の入力画像信号」は,本件補正発明の「ディスプレイ上に表示される,前記ディスプレイの複数の画素の各々の目標画素強度レベルに対応する目標ピクチャフレーム」に相当する。
(c)
引用発明において,「1垂直期間前における予測信号は,現垂直期間における前記液晶パネルの透過率に対応」するものである。ここで,「現垂直期間における前記液晶パネルの透過率」は,本件補正発明の「前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレーム」に対応するから,引用発明の「1垂直期間前における予測信号」は,本件補正発明の「現在のピクチャフレーム」に相当するといえる。
以上の相当関係を踏まえると,引用発明の「組合せ検出回路12は,予測値記憶回路17に保持された予測信号と,現フィールドの入力画像信号とを比較」することは,本件補正発明の「前記ディスプレイの複数の画素の各々について,前記目標ピクチャフレームを,前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレームと比較」することに相当する。
(d)
引用発明において,「組合せ検出回路12は,OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し,オーバーシュート電圧検出回路13に出力」する際に,「予測値記憶回路17に保持された予測信号と,現フィールドの入力画像信号とを比較し,その組合せを示す信号(組合せ信号)を」求め,「OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出し」ており,このOSパラメータテーブル18に設定された階調レベルである「OSパラメータ」は,「1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルであ」るから,引用発明の「組合せ検出回路12」は,本件補正発明の「前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの比較に基づいて前記目標ピクチャフレームに対して行われるべき調整を判断」するものに相当する。
(e)
引用発明は,「1垂直期間前における前記液晶パネルの透過率の予測値に対応する予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せに応じて,予め決められた,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を,前記液晶パネルに供給する」るものであるから,引用発明は,予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せによっては,階調電圧がオーバーシュートされる必要があることを意味している。また,「OSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベル」であるから,オーバーシュートされた駆動電圧を用いなければ,1フィールド後に目標の階調に到達しないことになる。よって,引用発明は,予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せによっては,オーバーシュートされた駆動電圧を用いなければ,1フィールド後に目標の階調に到達しない場合があり,そのような場合にオーバーシュートされた駆動電圧を用いて液晶パネルを駆動しているものである。
してみると,引用発明と,本件補正発明の「前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できないと判定された場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,」「前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し」ていることとは,共に,「前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できない場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,」「前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し」ている点で共通しているといえる。
(f)
引用発明において,「オーバーシュート駆動に使用する電圧は,階調の変化の無い組合せに対してはオーバーシュート量が0であり,液晶パネルの応答速度によっては,オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得」るものであるから,引用発明は,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされないよう駆動する場合を含み,その場合は,オーバーシュートされていない階調レベル,つまり,現垂直期間の入力画像信号そのままが用いられ液晶パネルを駆動していることになる。
してみると,引用発明は,本件補正発明の「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより,前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し」ているといえる。
(g)
引用発明において,「予測テーブル19から,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値を求め,」「予測値記憶回路17は,少なくとも1枚のフレーム画像に相当する予測値検出回路16で検出された信号を保存し」ているから,予測値記憶回路17には,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値の1フレーム画像分の信号が保存されている。この,引用発明の予測値の1フレーム画像分の信号は,本件補正発明の「前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレーム」に相当する。
(h)
引用発明のオーバーシュート駆動法において用いられる「OSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルであり,階調遷移パターンによっては,液晶応答が遅いので,設定された目標階調レベルを用いても,1フィールド後に目標の階調レベルに到達しないこともあ」るものである。
このことは,オーバーシュート駆動することで,1フィールド後に目標の階調に到達するものと,到達しないものがあり,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値の1フレーム画像分の信号には,オーバーシュート駆動で到達する目標の階調レベルと,オーバーシュート駆動で目標の階調に到達しない階調レベルが含まれることを意味する。
また,引用発明は,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされないよう駆動する場合を含み,その場合は,オーバーシュートされていない階調レベル,つまり,現垂直期間の入力画像信号そのままが用いられ液晶パネルを駆動していることになるから,現フィールドで実際に到達する階調レベルの予測値の1フレーム画像分の信号には,現垂直期間の入力画像信号そのままが用いられ液晶パネルを駆動して到達する目標の階調レベルが含まれることを意味する。
よって,引用発明の予測値の1フレーム画像分の信号を求め保存することは,本件補正発明の「調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベル到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
目標画素強度レベルへドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
(一致点)
「 ディスプレイをオーバドライブする方法であって,
ディスプレイ上に表示される,前記ディスプレイの複数の画素の各々の目標画素強度レベルに対応する目標ピクチャフレームを受信し,
前記ディスプレイの複数の画素の各々について,前記目標ピクチャフレームを,前記ディスプレイ上に現在表示されている現在の画素強度レベルに対応する現在のピクチャフレームと比較し,
前記目標ピクチャフレームと前記現在のピクチャフレームとの比較に基づいて前記目標ピクチャフレームに対して行われるべき調整を判断し,
前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できない場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブし,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより,前記目標ピクチャフレームに対して行われるべきと判断された前記調整を含む調整されたピクチャフレームを生成し,
前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,
調節された画素強度レベルへオーバドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベル到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
目標画素強度レベルへドライブして,
前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,
を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む方法。」

(相違点)
本件補正発明は,前記複数の画素を,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できない「と判定された」場合には該複数の画素の目標画素強度レベルを超える調節された画素強度レベルへオーバドライブするものであり,所与の期間内に目標画素強度レベルに到達できるか否か判定する工程を含むのに対し,引用発明は,そのような判定する工程を含まない点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
引用発明は,「予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せに応じて,予め決められた,現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧」により「オーバーシュート駆動」するものである。
そして,「組合せ検出回路12は,OSパラメータテーブル18を参照して,前述の組み合わせに対応する階調レベルを検出」しており,「OSパラメータテーブル18に設定された階調レベルである」「OSパラメータは,1フィールド後に目標の階調に到達するように決められた目標階調レベルであるか,あるいは目標階調レベルに達しない限界階調レベルであり」,OSパラメータが設定される段階で,組合わせに応じてオーバーシュート駆動が必要か否か,1フィールド後に目標の階調に到達するか否か判定されているといえる。
また,「オーバーシュート駆動に使用する電圧は,階調の変化の無い組合せに対してはオーバーシュート量が0であり,液晶パネルの応答速度によっては,オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得」るから,引用発明は,組合せによって,「オーバーシュート駆動」が必要か否か判定するようにする動機付けを有しているといえる。
そして,「直前のサブフレームの階調レベルと現サブフレームの階調レベルとの差の大小によって,オーバーシュートの階調レベル変換を行う必要があるか否か判定する技術」は,本願の優先日前に周知技術である(上記(2)ウ参照。)ことを考慮すると,引用発明において,予測信号と,現垂直期間の入力画像信号との組合せの差の大小によって,オーバーシュート駆動が必要か否か,1フィールド後に目標の階調に到達するか否か,判定するようにし,相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

よって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 補正の適否についてのまとめ
上記「3 補正の適否(サポート要件に関する独立特許要件)について」,及び,上記「4 補正の適否(進歩性に関する独立特許要件)について」のとおり,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし19に係る発明は,補正1の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,「第2 1 (本件補正前)」に記載したとおりである。

2 引用例記載の事項,引用発明,周知技術
原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載の事項,引用発明,周知技術は,上記「第2 4(2)」に記載したとおりである。

3 対比,判断
本願発明は,本件補正発明の,
「調整されたピクチャフレーム」について,「前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対しては目標画素強度レベルへドライブすることにより」生成するとの限定を削除し,
「方法」について,「前記調整されたピクチャフレームによって前記ディスプレイで生成される到達された画素強度に対応する達成可能なピクチャフレームであって,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できない任意の画素に対する実際に生成された画素強度値と,前記所与の期間内にそれぞれの調整された画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する調整された画素強度レベルと,前記所与の期間内にそれぞれの目標画素強度レベルに到達できる任意の画素に対する目標画素強度レベルと,を含む前記達成可能なピクチャフレームを生成すること,を含む」ことの限定を削除したものである。(上記「第2 2 (1),(2)」参照。)
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2 4 (3),(4)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-18 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2011-530118(P2011-530118)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 忠紀西島 篤宏  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 森 竜介
清水 稔
発明の名称 ディスプレイをオーバドライブする方法、画像を表示する方法、信号調整回路および電子デバイス  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
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