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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1313835
審判番号 不服2015-7958  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-28 
確定日 2016-04-19 
事件の表示 特願2012-535696「周辺環境固有の状態および設備固有の状態を識別し、伝達するための警報装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 5日国際公開、WO2011/051022、平成25年 3月14日国内公表、特表2013-509624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年10月28日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成24年6月26日に手続補正書が提出され、平成25年6月27日付けで拒絶理由が通知され、同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月22日付け(発送日:平成27年1月5日)で拒絶査定され、平成27年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成27年4月28日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1(平成26年6月13日付けの手続補正書)
「【請求項1】
情報(G)を、1つまたは複数の目的アドレス(B)へ無線伝送する通信インタフェース(3)を有している、周辺環境固有の状態および/または装置固有の状態を識別し、伝達する警報装置(1)において、
前記通信インタフェースはプログラミング技術および/または回路技術を用いて構成されており、前記情報(G)を前記1つまたは複数の目的アドレス(B)へ伝送するために、公開されているインターネット(A)へのアクセスを形成および/または維持し、
前記通信インタフェース(3)はWLANインタフェースとして構成されており、
前記目的アドレス(B)はIPアドレスとして構成されており、
前記警報装置(1)は、前記公開されているインターネット(A)と接続されている場合に、固有のおよび/または当該警報装置(1)に割り当てられたIPアドレスを得る、
ことを特徴とする警報装置(1)。」を、

「【請求項1】
情報(G)を、1つまたは複数の目的アドレス(B)へ無線伝送する通信インタフェース(3)を有している、周辺環境固有の状態および/または装置固有の状態を識別し、伝達する警報装置(1)において、
前記通信インタフェースはプログラミング技術および/または回路技術を用いて構成されており、前記情報(G)を前記1つまたは複数の目的アドレス(B)へ伝送するために、公開されているインターネット(A)へのアクセスを形成および/または維持し、
前記通信インタフェース(3)はWLANインタフェースとして構成されており、
前記目的アドレス(B)はIPアドレスとして構成されており、
前記警報装置(1)は、前記公開されているインターネット(A)と接続されている場合に、固有のおよび/または当該警報装置(1)に割り当てられたIPアドレスを得、
前記情報(G)は、警報信号、および/または、非警報状態メッセージを含む警報解除信号を含んでいる、
ことを特徴とする警報装置(1)。」
とする補正を含むものである。(下線は請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「情報(G)」について、「警報信号、および/または、非警報状態メッセージを含む警報解除信号を含んでいる」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特許第4153822号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項アないしエが記載されている。

ア「【0015】
【発明の実施の形態】
本実施形態において説明する警報器は、ガス漏れと不完全燃焼と火災とを異常として検出することができる複合型の警報器であって、図1に示すように、異常検出センサとして、メタン濃度を検出するCH_(4) センサ11と、一酸化炭素濃度を検出するCOセンサ12と、周囲温度を検出する熱センサ13とを備える。CH_(4) センサ11、COセンサ12、熱センサ13の出力はマイクロコンピュータからなる信号処理回路10に入力される。CH_(4) センサ11やCOセンサ12のようなガスセンサの感度は周囲温度の影響を受けるから、周囲温度を監視する温度センサ14を設け、信号処理回路10において温度センサ14により検出された周囲温度に応じてCH_(4) センサ11およびCOセンサ12の出力を補正する。
【0016】
信号処理回路10は異常判定手段10aを備え、異常判定手段10aは、CH_(4) センサ11の出力に基づいてガス漏れの可能性を判定し、COセンサ12の出力に基づいて不完全燃焼の可能性を判定し、熱センサ13の出力に基づいて火災の可能性を判定する。すなわち、異常判定手段10aでは、CH_(4) センサ11で検出したメタン濃度が既定した閾値を超えるとガス漏れの可能性があると判定し、COセンサ12で検出した一酸化炭素濃度が既定した閾値を超えると不完全燃焼の可能性があると判定する。また、異常判定手段10aでは、熱センサ13で検出した周囲温度が既定した閾値を超えるか、熱センサ13で検出した周囲温度の単位時間当たりの変化が既定した閾値を越えると火災の可能性があると判定する。ここに、異常判定手段10aは、異常の種類を異常の内容として判定するだけではなく、1種類の異常に関して異常の程度を複数段階で判定するようにしてもよい。たとえば、ガス漏れについて、爆発の危険度が高い濃度と、爆発の危険度が低い濃度とを異常の内容として判定するようにしてもよい。」

イ「【0026】
無線通信を行う通信用インターフェースとしては、無線送受信回路31が信号処理回路10に接続され、無線送受信回路31に接続したアンテナ32を通して電波の送受信が可能になっている。本実施形態では、無線通信として、特定小電力による通信技術を採用することを想定しているが、無線LANの通信技術、ブルートゥース(R)の通信技術、特定小電力以外の微弱電波による通信技術などを用いることが可能である。無線LANの通信技術を用いれば、後述するLANポート37に代えて用いることも可能である。」

ウ「【0028】
さらに、信号処理回路10には、ネットワーク通信を可能とする通信用インターフェースとして通信回路36が接続され、通信回路36にはモジュラージャックからなるLANポート37が接続される。すなわち、本実施形態では通信回路36としてTCP/IPプロトコルに対応したドライバ/レシーバを設けてあり、警報器をLAN(ローカルエリアネットワーク)の端末装置としたり、警報器をインターネットに接続したりすることが可能になっている。」

エ「【0041】
本実施形態では、無線通信と赤外線通信とネットワーク通信とに対応する双方向通信が可能な通信用インターフェースを備えているから、電波を伝送媒体として他の機器からの情報を収集したり、赤外線を伝送媒体として赤外線リモコン機能を有した電気機器を制御したり、ネットワークを用いることにより遠方の機器との間でデータ伝送を行ったりすることが可能である。さらに具体的に言えば、通信用インターフェースを、CH_(4) センサ11、COセンサ12、熱センサ13、カメラ24などから得た警報器内での生成情報を外部に送信するために用いているから、たとえばLANポート37を通してインターネット網に接続すれば、ガス漏れ、不完全燃焼、火災などの異常やカメラ24で撮像した画像をパーソナルコンピュータや移動体電話機などの遠方の通信機器に伝送することが可能になる。また、スピーカ15はマイクロホンとして兼用されているから、必要に応じてスピーカ15に入力された周囲音を遠方で監視することも可能である。つまり、警報器の遠方において警報器で検出する情報を監視することが可能になる。また、上述したように、他装置との間で通信可能な状態か否かを確認することが可能になる。」

オ 記載事項イの「無線送受信回路31」は、回路技術を用いて構成されると認められる。

カ 記載事項イに、「無線送受信回路31」は「無線LANの通信技術」を用いて「LANポート37に代えて用いることも可能である。」とあることから、記載事項エの「たとえばLANポート37を通してインターネット網に接続すれば、」の記載は、無線LANの通信技術を用い、無線送受信回路31を通してインターネット網に接続することをも意図した記載であると認められる。

キ 記載事項エに「通信用インターフェースを、CH_(4) センサ11、COセンサ12、熱センサ13、カメラ24などから得た警報器内での生成情報を外部に送信するために用いているから、たとえばLANポート37を通してインターネット網に接続すれば、ガス漏れ、不完全燃焼、火災などの異常やカメラ24で撮像した画像をパーソナルコンピュータや移動体電話機などの遠方の通信機器に伝送することが可能になる。」と記載されているが、「ガス漏れ、不完全燃焼、火災などの異常」を「遠方の通信機器に伝送」する場合、「ガス漏れ、不完全燃焼、火災などの異常」は、異常信号として伝送されると認められる。

上記アないしキの記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物には、以下の発明が記載されている。

「生成情報を、遠方の通信機器へ無線LANの通信技術を用いてデータ伝送する通信用インターフェースを有している、メタン濃度、一酸化炭素濃度及び周囲温度の異常の種類を判定し、伝送する警報器において、
前記通信用インターフェースは回路技術を用いて構成されており、前記生成情報を遠方の通信機器へ伝送するために、インターネット網へ接続し、
前記通信用インターフェースは無線LANの通信技術を用いた無線送受信回路31として構成されており、
前記生成情報は、異常信号を含んでいる、
警報器。」

(2) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「生成情報」は、その技術的意義及び機能からみて本願補正発明の「情報(G)」に相当し、以下同様に、「無線LANの通信技術を用いてデータ伝送」は「無線伝送」に、「通信用インターフェース」は「通信インタフェース(3)」に、「メタン濃度、一酸化炭素濃度及び周囲温度」は「周辺環境固有の状態」に、「異常の種類を判定する」は「識別」に、「伝送」は「伝達」に、「警報器」は「警報装置(1)」に、「インターネット網」は「公開されているインターネット(A)」に、「接続」は「アクセスを形成および/または維持」に、「無線LANの通信技術を用いた無線送受信回路31」は「WLANインタフェース」に、「異常信号」は「警報信号」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「遠方の通信機器」と、本願補正発明の「1つまたは複数の目的アドレス(B)」は、情報を無線伝送する「受信先」という点で一致する。


したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1及び2で相違する。

[一致点]
「情報を、受信先へ無線伝送する通信インタフェースを有している、周辺環境固有の状態を識別し、伝達する警報装置において、
前記通信インタフェースは回路技術を用いて構成されており、前記情報を受信先へ伝送するために、公開されているインターネットへのアクセスを形成および/または維持し、
前記通信インタフェースはWLANインタフェースとして構成されており、
前記情報は、警報信号を含んでいる、
警報装置。」

[相違点1]
「受信先」が、本願補正発明は「目的アドレス」であって「IPアドレスとして構成されて」いるのに対し、引用発明の「遠方の通信機器」について、アドレスに関する特定事項が不明である点。

[相違点2]
本願補正発明は、「前記警報装置(1)」が「前記公開されているインターネット(A)と接続されている場合に、固有のおよび/または当該警報装置(1)に割り当てられたIPアドレスを得」るのに対し、引用発明の「警報器」は、インターネット網に接続されている場合に、警報器に割り当てられたIPアドレスを得るかどうか不明である点。

(3) 当審の判断
以下、相違点1及び2について検討する。

本願の優先日前、インターネットを介して情報伝送する際には、IETF(Internet Engineering Task Force)が1981年9月に提示したInternet Protocolに沿った情報伝送が、通常採用される。

そして、引用発明において、「前記生成情報を遠方の通信機器へ伝送するために、インターネット網へ接続」した際、この「伝送」に上記Internet Protocolを採用することについて、特段の困難性は認められない。

ところで、このInternet Protocolには、ヘッダ部分に、送信元のIPアドレス及びあて先のIPアドレスを入れるフォーマットが規定されている。
(ヘッダ部分のフォーマットについて、必要であれば、RFC791,INTERNET PROTOCOL,3.SPECIFICATION[Page 11],3.1. Internet Header Format,[online]1981.09,[検索日2015.11.18],インターネット<URL:https://tools.ietf.org/html/rfc791>や、デジタルアドバンテージ,”基礎から学ぶWindowsネットワーク第10回 IPパケットの構造とIPフラグメンテーション (2/3)”,[online]2003.04.04,[検索日2015.11.18],インターネット<URL:http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0304/04/news001_2.html>等を参照されたい。)

このため、引用発明の「伝送」が上記Internet Protocolに沿うためには、警報器がヘッダ部分を生成する以前に、あて先となる遠方の通信機器側にはIPアドレスが割り振られているとともに、送信元である警報器側にもIPアドレスが割り当てられていて、両者のIPアドレスを警報器が得ていることは自明である。

そうすると、あて先となる遠方の通信機器側を、割り振られたIPアドレスとして構成すること、警報器がインターネット網に接続した際に自らに割り当てられたIPアドレスを得るように構成することは、いずれも、当業者が容易に想到できることである。

また、本願補正発明の効果も、引用発明及び上記Internet Protocolから当業者が予測可能なものであって、格別顕著なものではない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び上記Internet Protocolに基いて、当業者が容易に発明できたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4) むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明の内容
平成27年4月28日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本件出願の請求項1ないし11に係る発明は、平成26年6月13日付け手続補正により補正されたとおりの特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特許第4153822号公報の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]3(1)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、前記第2[理由]2で検討したように、本願発明の発明特定事項を限定したものに該当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]3(3)に記載したとおり、引用発明及び上記Internet Protocolに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明及び上記Internet Protocolに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び上記Internet Protocolに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 付記
平成27年10月5日付け上申書において、本願補正発明の
「前記情報(G)は、警報信号、および/または、非警報状態メッセージを含む警報解除信号を含んでいる、」を
「前記情報(G)は、警報信号、および非警報状態メッセージを含む警報解除信号を含んでいる、」とする補正が提案されている。

しかしながら、引用発明において、ガス漏れの異常、不完全燃焼の異常及び火災の異常の、3つの異常のうち、1つまたは2つが異常でない場合の生成情報は、非警報状態メッセージが含まれると解されることを考慮すると、提案された補正によっても、引用発明との実質的な相違点は変わらないので、引用発明及び上記Internet Protocolに基いて当業者が容易に発明をすることができたという結論は変わらない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-20 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2012-535696(P2012-535696)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二階堂 恭弘赤間 充栗山 卓也  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 大内 俊彦
内田 博之
発明の名称 周辺環境固有の状態および設備固有の状態を識別し、伝達するための警報装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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