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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1313994
審判番号 不服2015-8097  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-30 
確定日 2016-04-28 
事件の表示 特願2013-522424「携帯電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 3日国際公開、WO2013/001779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)6月25日(優先権主張2011(平成23年)6月27日)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月16日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月27付けで拒絶査定がなされ、同年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数のオブジェクトを表示する表示部と、
該表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触を検出する接触検出部と、
該接触検出部への接触による押圧を検出する押圧検出部と、
前記接触検出部により前記表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、当該オブジェクトに関連付けられた処理を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記オブジェクトが表示されている前記表示部の表示エリア間で前記所定の基準が相違するように制御する、
ことを特徴とする携帯電子機器。」

3.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-146936号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンシティブ装置への非スタイラスベースの入力に対するスタイラスベースの入力を管理する入力方法に関し、より詳細には、タッチセンシティブ装置への意図的ではない非スタイラスベースの入力の影響を軽減することのできる入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンシティブ表面は、コンピューティング装置において急速に普及しつつある。これらは、ユーザーが、スタイラス(stylus)を使用して手書きで入力するなど、他の状況においてユーザーになじみのある自然な動作を行えるため、非常に便利である。これらの装置の多くは、また、ユーザーの指先など、非スタイラスオブジェクトによって入力が提供されるようにすることもできる。タッチセンシティブ表面又は装置という用語は、本明細書において、スタイラス及び/又は非スタイラスオブジェクトの接触を検出するように構成された表面又は装置を参照するために使用される。一般には便利な機能であるが、スタイラスとユーザーの指などの非スタイラスオブジェクトの両方に対するこの二重の感度には、ユーザーが装置に手書きする間又はスタイラスを使用して装置に書き込む間に、ユーザーが時々ユーザーの指、手などでタッチセンシティブ表面にうっかり触れてしまう可能性が高いという欠点がある。たとえば、スタイラスを使用して書き込む場合、ユーザーは自分の手をタッチセンシティブ表面に乗せること、及び/又は手で表面をこすってしまうことがある。こうしたことは、また、ユーザーが装置を持っている間、又は装置を扱っている間にも生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、スタイラスベースの入力(stylus-based input)及び非スタイラスベースの入力(non-stylus-based input)の両方に敏感なタッチセンシティブ装置に特有のこのような問題に対処する必要がある。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、タッチセンシティブ装置への非スタイラスベースの入力に対するスタイラスベースの入力を管理する入力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ユーザーの指又は手などの非スタイラスオブジェクトによって行われる偽陽性タッチ入力(false positive touch input)の数を軽減することにより、上述した問題に対処する。スタイラスがタッチセンシティブ表面に近接した位置にある場合、非スタイラス入力に対する表面の感度及び/又は感応性は、無効化、縮小化、あるいは変更される。たとえば、非スタイラスの入力は、スタイラスがタッチセンシティブ表面付近に定義されている近接ゾーン内にある間は無視することができる。もう1つの例として、非スタイラス入力が正常に受け入れられるために必要なしきい値、圧力、静電容量、及び/又は形状は、スタイラスが近接ゾーンの内側又は外側のいずれにあるかによって異なる。本発明は、他の入力方法で動作するようにさらに一般化することができる。たとえば、特定の状況において、非スタイラスオブジェクトが近接ゾーン内にある間スタイラス入力を無視することが適切であるように、逆の場合も当てはまることがある。したがって、本発明の開示全体を通じてスタイラス及び非スタイラスオブジェクトの概念は逆転され、それでもなお本発明の技術的範囲内にある。あるいは、マイクロフォンへの音声入力など、他の種類の入力により、スタイラス入力又は非スタイラス入力を無視するようにすることができる。
【0006】
さらに本発明は、タッチセンシティブ表面のどこで入力が行われたかに応じて非スタイラス入力のしきい値要件を調整することに関する。たとえば、表示ボタンなどのユーザー選択可能な表示オブジェクトの上又は付近で行われる非スタイラス入力は、表示オブジェクトから離れた領域で行われるそのような入力に比べて行いやすい(つまり、低いしきい値要件を有する)。あるいは、たとえば、定義されたインキング領域など、予期されていない領域で行われる非スタイラス入力は、意図的ではない接触として解釈される可能性が高く、そのため無視されることが多い。
【0007】
さらに本発明は、非スタイラス入力のさまざまな感応性しきい値、及び近接ゾーンのサイズ及び/又は形状を調整することに関する。
【0008】
本発明のさまざまな態様は、以下の実施形態の詳細な説明を考察すれば明らかになろう。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<具体的なコンピューティング環境>
・・・(中略)・・・
【0017】
上述したように、タッチセンシティブ装置156は、コンピュータ100とは別個の装置又はその一部の装置であり、コンピュータ100に統合することができる。さらに、図1に示したシステムに関連して説明されている特徴、サブシステム、及び機能の一部又はすべては、タブレットスタイルコンピュータに含まれるか、結合されるか、又はその一部として一体化して具現することができる。たとえば、コンピュータ100は、タッチセンシティブ装置156がメインユーザーインターフェースであるタブレットスタイルコンピュータとして構成することができる。そのような構成は、図2、図3、図4及び図6において示されており、そこに示されている装置がコンピュータ100及びタッチセンシティブ装置165の両方を考慮することもできることを示している。タブレットスタイルコンピュータは周知である。タブレットスタイルコンピュータは、データの操作、テキストの入力、図面の作成、及び/又はスプレッドシート、ワード処理プログラムなどの標準的なコンピュータアプリケーションタスクの実行を行うために、スタイラス166を使用してタッチセンシティブ装置165に入力されるジェスチャを解釈する。入力は、スタイラス166によってのみ行われるが、人間の指など他の非スタイラスオブジェクト又はユーザーに保持された非スタイラスオブジェクトによっても行うことができる。
・・・(中略)・・・
【0047】
<インタラクション領域>
非スタイラスのユーザー入力は、さらに、タッチセンシティブ表面205上の入力の位置など、他の要因に基づいて無視及び/又は特殊フィルタ処理することができる。
【0048】
図9は、本発明によるさまざまなインタラクション領域を示す図2のタッチセンシティブ装置の透視図である。図9を参照すると、タッチセンシティブ装置165は、ユーザーインターフェースがタッチセンシティブ表面205上に表示されるように、ディスプレイと一体化することができる。タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205は、ボタン901、スクロールバー、ドロップダウンメニュー、ウィンドウなど、1つ又は複数のコントロール又は他のオブジェクトを表示することができる。これらのオブジェクトの一部は、スタイラス166及び/又は非スタイラスオブジェクトで操作を行うことにより、ユーザーがこれらのオブジェクトの選択、ドラッグ、オープンなどを行えるようにユーザーインタラクション可能にすることができる。オブジェクトが何も表示されていない領域と比較して、オブジェクト上で非スタイラス入力を行うために必要な圧力の量、形状、サイズ、及び/又は他の特性を区別することが望ましい。たとえば、オブジェクトがない領域よりもオブジェクト上のほうが非スタイラス入力の圧力が小さくてすむようにすることが望ましい。例として、ボタン901上に非スタイラス入力902を正常に行うために必要なしきい値圧力は、オブジェクトが全く存在しない領域に非スタイラス入力903を正常に行うために必要なしきい値圧力よりも小さくするか又は大きくすることができる。さらに、ボタン901上に非スタイラス入力902を正常に行うために必要なしきい値サイズは、オブジェクトが全く存在しない領域に非スタイラス入力903を正常に行うために必要なしきい値サイズよりも小さくするか又は大きくすることができる。
【0049】
さらに、タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205は、非スタイラス入力を正常に行うために必要なしきい値特性が領域ごとに異なっている複数の領域905、906、907に細分することができる。たとえば、領域905において行われる非スタイラス入力904は、非スタイラス入力が領域906で行われた場合よりも少ない圧力又は大きい圧力あるいは小さいサイズ又は大きいサイズを必要とする。」

そして、引用例の上記記載を引用例の関連図面と技術常識に照らせば、次のことがいえる。
(1)段落【0048】に記載されるように引用例の図9は図2に示されるタッチセンシティブ装置の透視図であり、その図2は、段落【0017】に示されるように、タッチセンシティブ装置156がコンピュータ100と一体化された、タブレットスタイルコンピュータを示すものである。
したがって、引用例の図9も、タッチセンシティブ装置156がコンピュータ100と一体化された、タブレットスタイルコンピュータを示している。
(2)上記「タブレットスタイルコンピュータ」は、段落【0048】に記載されるように「ボタン901、スクロールバー、ドロップダウンメニュー、ウィンドウなど、1つ又は複数のコントロール又は他のオブジェクトを表示することができるタッチセンシティブ表面/ディスプレイ205」を有している。
(3)段落【0048】の記載によれば、上記「ボタン901、スクロールバー、ドロップダウンメニュー、ウィンドウなど」は、「対応する位置の接触と、その接触による所定の基準を満たす押圧が検出されると、関連付けられた処理が行われる、という動作が行われるように、タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205上に表示されるオブジェクト」といい得るものであり、上記「タブレットスタイルコンピュータ」は、当然に、「タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触を検出する接触検出部」といい得る部分と、「接触検出部への接触による押圧を検出する押圧検出部」といい得る部分と、「接触検出部によりタッチセンシティブ表面/ディスプレイ205に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触が検出され、押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、当該オブジェクトに関連付けられた処理を実行する制御部」といい得る部分を有している。
(4)段落【0049】の記載によれば、上記「制御部」は、「タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205の複数の表示領域間で前記所定の基準が相違するように制御する」という機能を有するものである。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。
「ボタン901、スクロールバー、ドロップダウンメニュー、ウィンドウなど、1つ又は複数のコントロール又は他のオブジェクトを表示することができるタッチセンシティブ表面/ディスプレイ205と、
該タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触を検出する接触検出部と、
該接触検出部への接触による押圧を検出する押圧検出部と、
前記接触検出部により前記タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、当該オブジェクトに関連付けられた処理を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205の複数の表示領域間で前記所定の基準が相違するように制御する、
タブレットスタイルコンピュータ。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(1)引用発明の「タブレットスタイルコンピュータ」は、本願発明と同様に「携帯電子機器」ともいい得るものである。
(2)引用発明の「ボタン901、スクロールバー、ドロップダウンメニュー、ウィンドウなど」は、本願発明の「複数のオブジェクト」に相当し、引用発明の「タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205」は、本願発明の「複数のオブジェクトを表示する表示部」に相当する。
(3)引用発明の制御部が「前記タッチセンシティブ表面/ディスプレイ205の複数の表示領域間で前記所定の基準が相違するように制御する」ことと、本願発明の制御部が「前記オブジェクトが表示されている前記表示部の表示エリア間で前記所定の基準が相違するように制御する」こととは、制御部が「前記表示部の表示エリア間で前記所定の基準が相違するように制御する」こと、である点で共通する。

以上によれば、本願発明と引用発明の間には次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 複数のオブジェクトを表示する表示部と、
該表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触を検出する接触検出部と、
該接触検出部への接触による押圧を検出する押圧検出部と、
前記接触検出部により前記表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが所定の基準を満たすと、当該オブジェクトに関連付けられた処理を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記表示部の表示エリア間で前記所定の基準が相違するように制御する、
携帯電子機器。」である点。

(相違点)
本願発明の制御部は、「前記オブジェクト(「所定の処理が関連付けられているオブジェクト」)が表示されている前記表示部の表示エリア間で前記所定の基準が相違するように制御する」機能を有するものであるのに対し、引用発明の制御部は、「前記表示部の表示エリア間(複数の表示領域間)で前記所定の基準が相違するように制御する」機能は有するものの、その「表示エリア間」は、「「所定の処理が関連付けられているオブジェクト」が表示されている表示エリア」の間とはされていない点。

5.判断
(1)上記(相違点)について
以下の事情を総合すると、引用発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.引用発明でいう「複数の表示領域」は、引用例の図9に示される複数の領域905?907をその例とするものであり、その図9には、複数の領域905?907のうちの領域906にのみ「所定の処理が関連付けられているオブジェクト」(ボタン901)が表示された例が示されているが、引用例には当該領域906以外の領域(領域905、907)が、「所定の処理が関連付けられているオブジェクト」を表示できない領域であることを示す記載はない。
なお、引用例の段落【0048】には、「オブジェクトが何も表示されていない領域と比較して、オブジェクト上で非スタイラス入力を行うために必要な圧力の量、形状、サイズ、及び/又は他の特性を区別することが望ましい。たとえば、オブジェクトがない領域よりもオブジェクト上のほうが非スタイラス入力の圧力が小さくてすむようにすることが望ましい。例として、ボタン901上に非スタイラス入力902を正常に行うために必要なしきい値圧力は、オブジェクトが全く存在しない領域に非スタイラス入力903を正常に行うために必要なしきい値圧力よりも小さくするか又は大きくすることができる。」という記載があるが、この記載は、領域906以外の領域(領域905、907)が、「所定の処理が関連付けられているオブジェクト」を表示できない領域であることを示す記載ではない。
なぜならば、この記載は、「・・・が望ましい」あるいは「・・・ができる」という表現からも明らかなように、必須の構成を示すものではないし、段落【0049】に記載されている複数の領域905?907を前提とした記載でもないからである。
イ.以上のことと、引用例においては、上記領域905、907も、接触、押圧を検知可能な領域とされていること、タブレットスタイルコンピュータにおいて、上記図9の領域905や907のような表示部の端の領域にも「所定の処理が関連付けられたオブジェクト」を表示するようにすることは普通のことであること(このことは、「所定の処理が関連付けられたオブジェクト」の一種といえる「スクロールバー」や「タブ」等は、表示部の端の部分に表示されることが多いという事実からも明らかである。)、等の事情を総合すると、引用例に接した当業者は、図9の領域906のみならず領域905、907にも、「所定の処理が関連付けられたオブジェクト」を表示するようにすることを容易に想到し得たと考えるのが妥当である。
ウ.そして、引用例の図9に示されるものにおいて、領域906のみならず領域905、907にも「所定の処理が関連付けられたオブジェクト」を表示するようにすることが当業者にとって容易であったということは、引用発明でいう「複数の表示領域間」を、「所定の処理が関連付けられているオブジェクトが表示されている複数の表示領域」の間とすることが当業者にとって容易であったということを意味し、そのことは、引用発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することが容易であったことを意味する。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測する範囲内のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。

(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、上記(1)と同旨の審査官の判断に対し、「引用発明は、所定の基準を、単に、オブジェクトの存在に関係なく領域間で異ならせるだけであって、オブジェクトの存在に応じて領域間で異ならせるものではない。引用例には本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載はない。本願発明は、引用発明に比べ、オブジェクトが表示されている表示エリア間で、異なる各オブジェクトへの操作を確実に行うことができるという顕著な効果を奏する。」旨主張し、それを根拠に本願発明が進歩性を有する旨主張しているが、以下の理由で採用できない。
ア.引用発明が、所定の基準を、単に、オブジェクトの存在に関係なく領域間で異ならせるだけであって、オブジェクトの存在に応じて領域間で異ならせるものではないことや、引用例に本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載がないことは、請求人が主張するとおりであるが、それらのことは、本願発明が引用発明に基づいて容易に発明することができたものでないことを意味しない。
なぜならば、本願発明は、所定の基準を「オブジェクトの存在に応じて領域間で異ならせる」といった、設計思想や主観的意図に当たるような事項を構成要件とするものではなく、そのような意図とは無関係に構成されたものであっても、結果として「オブジェクトが表示されている表示エリア間で所定の基準が相違するように制御」されるように構成されたもの、例えば、引用例の図9に示されるものにおいて、領域906のみならず領域905、907にも「所定の処理が関連付けられたオブジェクト」を表示するようにしたもの、も当然にその技術的範囲に含むものであるし、そのようなものを構成することは、引用例に本願発明の構成を直接示唆する記載がなくても、上記(1)に示したように当業者にとって容易であったと考えられるからである。
イ.また、オブジェクトが表示されている表示エリア間で、異なる各オブジェクトへの操作を確実に行うことができるという効果は、引用発明に基づいて当業者が容易に構成し得たものも当然に有する効果であり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-25 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-14 
出願番号 特願2013-522424(P2013-522424)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
小曳 満昭
発明の名称 携帯電子機器  
代理人 杉村 憲司  

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