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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1314069 |
審判番号 | 不服2015-18382 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-08 |
確定日 | 2016-05-24 |
事件の表示 | 特願2014- 326「分散システムにおけるパーシステントパーソナルメッセージング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開、特開2014- 96167、請求項の数(49)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年6月12日(優先権主張2008年6月18日、米国)を国際出願日とする特願2011-514719号の一部を、平成26年1月6日に新たに特許出願したものであって、平成26年12月2日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月26日付けで手続補正がなされたが同年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?49に係る発明は、平成27年2月26日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?49に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項13】 分散ネットワークに接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置であって、 パーシステントメッセージングサービスを実行する共有メモリスペースをホストするための手段と; クライアントデバイスから通信ネットワークを介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、前記共有メモリスペースにユーザーデータを配置させるための手段と; 以前のメッセージングセッションの前記ユーザーデータにマッチする前記共有メモリスペースに記憶されたメッセージオブジェクトを位置づけるための手段と; 前記メッセージオブジェクトから引き出された履歴メッセージを前記通信ネットワークを介して前記クライアントデバイスに送信するための手段と; を備え、 前記履歴メッセージは、前記以前のメッセージングセッションの少なくとも一部を備える、 装置。」 第3 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1 ・引用文献1-3 ・備考 引用文献1には、電子掲示板、チャット等に適用されるコミュニケーションシステムにおいて、ユーザデータを管理するユーザ管理部、メッセージデータを管理するメッセージデータ管理部、ユーザの履歴情報を管理する履歴管理部を備えており、ユーザがログインすると、前回ログアウト時刻以前のメッセージと前回ログアウト時刻以降のメッセージを区別して表示することが、記載されている(段落【0010】-【0033】,【0054】-【0055】,【0064】,【0066】,図1,2,5等)。 引用文献1の「ユーザ管理部」「メッセージデータ管理部」「履歴管理部」等の各情報を記憶する管理部は、本願発明の「共有メモリスペース」に、また、引用文献1の「前回ログアウト時刻以前のメッセージ」「前回ログアウト時刻以降のメッセージ」は、本願発明の「履歴メッセージ」に、それぞれ対応する。データの格納形式や抽出手順をどのようなものとするかは、必要に応じて当業者が適宜に選択しうることである。 さらに、引用文献1の他、引用文献2(段落[0026], [0033], [0074], [0096], [0107]-[0108]等)にもチャットセッションを第2のクライアントに切り替えて継続することが、また、引用文献3(段落[0002], [0048], [0078]等)にもインスタントメッセージングにおいて過去のログを保存しておき、指定したログの会話を再開することが記載されており、本願発明は、引用文献2または引用文献3に記載の発明に基づいても、当業者が容易に想到しうるものである。 ・請求項2-6 ・引用文献1-4 ・備考 引用文献4には、コミュニケーションサーバが特定ユーザのプレゼンス情報に基づいてチャット開始イベントの発生を認識すると、同一の興味を持っているユーザとして特定ユーザとの会話に興味のあるユーザを選択してチャットグループを形成する友達リストを生成し、チャット開始情報と友達リスト情報を複数のユーザ端末に送信し、ユーザ端末が受信した友達リスト情報を表示することにより、各ユーザはチャットに参加するユーザを把握できることが、記載されている(段落【0055】,【0065】-【0066】,【0070】,【0088】,【0095】-【0103】)。 ・請求項7,8 ・引用文献1-5 ・備考 引用文献5には、特定の興味を持つユーザに対して、インスタントメッセージによる広告を送信することが記載されている(段落[0024]-[0025], [0032], [0037]等)。 ・請求項9-49 ・引用文献1-5 ・備考 上記請求項1-8で示した判断を参照されたい。 <引用文献等一覧> 1 特開2002-278990号公報 2 米国特許出願公開第2003/0101343号明細書 3 米国特許出願公開第2006/0212583号明細書 4 .特開2004-102547号公報 5. 米国特許出願公開第2004/0186766号明細書 ・請求項 1 ・引用文献等 1 出願人は意見書において、補正後の請求項1に係る発明と引用文献1に記載の発明とを対比し、 「補正後の本願請求項に記載の構成、すなわち、分散ネットワークに接続されたクライアントデバイスへのパーシステントメッセージングサービスを達成するための計算プラットフォーム、メッセージングゲートウェイ及び通信ネットワーク等の構成について何ら開示も示唆もされていません。」と指摘し、本願発明の進歩性を主張している。 上記主張について検討する。出願人が指摘する各事項について、請求項1に係る発明と引用文献1に記載の発明とを以下に対比する。 引用文献1にはサーバがネットワークを介してクライアントに接続され、サーバがメッセージを記憶管理し、クライアントとメッセージの送受信を行うものであるから、引用文献1に記載のシステムによって提供される機能全体は、請求項1に係る発明の「分散ネットワークに接続されたクライアントデバイスへのパーシステントメッセージングサービス」に相当する。 請求項1に係る発明の「計算プラットフォーム」は「パーシステントメッセージングサービスを実行する共有メモリスペースをホストする」手段を意味すると認められる。これに対し、引用文献1には「サーバ」が「記憶装置」によって複数のユーザによるメッセージを記憶管理するもの(図3等)であることが記載されており、当該構成は請求項1に係る発明の「計算プラットフォーム」に相当する。 請求項1に係る発明の「メッセージングゲートウェイ」は、「共有メモリスペースにユーザーデータを配置」し、「以前のメッセージングセッションの前記ユーザーデータとマッチする前記共有メモリスペースに記憶されたメッセージオブジェクトを位置付け」、「メッセージオブジェクトから引き出された履歴メッセージを前記通信ネットワークを介して前記クライアントデバイスに送信する」機能を有する手段を意味すると認められる。これに対し引用文献1(段落[0064]等)には、「処理装置」の制御により記憶手段にメッセージデータを管理し、ユーザがネットワークを介してクライアントによりログインすると、前回ログアウト時刻以前のメッセージと前回ログアウト時刻以降のメッセージを区別して表示することが記載されており、当該構成は請求項1に係る発明の「メッセージングゲートウェイ」に相当する。 請求項1に係る発明の「通信ネットワーク」は、引用文献1にも記載されている(図3等)。 してみれば、出願人が指摘する本願発明の構成は、引用文献1にも対応する構成が記載されており、その主張は採用できない。 ・請求項 2-6,10,15-19,23,25-29,32,38-42,46 ・引用文献等 1,4 上記請求項1について行った検討の内容と、上記拒絶理由通知書で請求項2-6について示した判断を参照されたい。 ・請求項 7,8,20,21,30,31,43,44 ・引用文献等 1,4,5 上記請求項1について行った検討の内容と、上記拒絶理由通知書で請求項7,8について示した判断を参照されたい。 ・請求項 9,11-14,22,24,33-37,45,47-49 ・引用文献等 1 上記請求項1について行った検討の内容を参照されたい。 <引用文献等一覧> 1.特開2002-278990号公報 4.特開2004-102547号公報 5.米国特許出願公開第2004/0186766号明細書 第3 当審の判断 1.引用文献1の記載事項(下線は当審で注目する箇所を示す。)・引用発明 「【0011】本実施例ではカードの形態で表示され、個々の送受信の対象となるメッセージを情報単位としたコミュニケーションシステムについて述べるが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子掲示板やチャット、電子メールなどさまざまな種類のシステムに適用できる。 【0012】図1は、本実施例の概要を示す。本実施例では、カードの形態で表示され、個々の送受信の対象となるメッセージを情報単位とするコミュニケーションシステムにおいて、ユーザの行動履歴を参照して、コミュニケーションの経過、構造、内容を理解する上で重要となるメッセージ(以下キーメッセージという)を抽出し、他のメッセージと区別して表示することによりコミュニケーションの活性化を支援する。 【0013】本実施例ではユーザが投稿したメッセージに対してのキーメッセージの抽出および出力を説明するが、閲覧されたメッセージに対しても同様に抽出および出力できる。 【0014】メッセージの表示画面1はユーザがログインした直後にコミュニケーションの全体内容が表示されている状態の一例である。ここで、2はメッセージを、3はメッセージとメッセージを関連付けているリンクを表している。このように複雑な構造をもったコミュニケーションがなされている場合に、ユーザはどのメッセージから読めばよいのか当惑することがある。そこで、どのメッセージから読むのがコミュニケーションの経過、構造、内容を理解する上で重要なのかをユーザに示せることは、コミュニケーションの活性化を支援するために重要である。 【0015】ユーザAがキーメッセージ表示を指示すると、キーメッセージ6が他のメッセージと区別されて表示される。キーメッセージ6は(1)ユーザが前回ログアウトした時刻、(2)過去にどのメッセージをいつ閲覧したか、(3)過去にどのメッセージをいつ投稿したか、を格納した履歴データ21を参照して抽出される。 【0016】まず、前回ログアウトした時刻を参照して、全メッセージ中からユーザAが前回ログアウトした時刻以降に投稿されたメッセージを特定する。次に、特定したメッセージの中からユーザAが投稿したメッセージと前記投稿されたメッセージ情報を起点として、各メッセージ情報に到達するまでの最短リンク数(以下距離Nとする)がユーザの指定した閾値以下であるメッセージをキーメッセージ6として抽出する。距離Nはユーザがキーメッセージ表示を指示する時に指定できる。抽出したキーメッセージ6を他のメッセージとは区別して表示する。 【0017】図2は、本実施例で述べるコミュニケーションシステムのブロック構成を示す。 【0018】ユーザはデータ送受信部11を介して、ログイン指示、ログアウト指示、投稿されているメッセージへの閲覧指示、メッセージの投稿指示、キーメッセージ表示指示を行う。コミュニケーション制御部12はユーザからの操作指示を適切な処理部に渡して処理することにより、コミュニケーション全体の流れを制御する。 【0019】ユーザ管理部13はユーザIDおよびパスワードの組を格納するユーザデータ19を管理し、ログイン指示があった際にユーザIDとパスワードを認証し、正しければユーザIDをコミュニケーション制御部12に渡し、正しくなければログイン失敗のメッセージを返す。 【0020】内容表示部14は、メッセージを表示できる形式のデータに変換する。メッセージデータ管理部15はメッセージID、投稿ユーザID、投稿時刻、メッセージの内容情報、メッセージを表示する位置情報、メッセージに関連付けられたリンクメッセージIDの組を格納するメッセージデータ20を管理し、ユーザからメッセージの投稿指示があった際に、当該投稿メッセージにIDを付与し投稿メッセージをメッセージデータ20に追加登録する。 【0021】履歴管理部16はユーザID、ログアウト情報、履歴情報の組を格納する履歴データ21を管理し、メッセージの閲覧指示または投稿指示がされた際に、その指示を出したユーザの履歴情報を更新する。また、ログアウト指示がされた際にログアウト時刻を更新する。 【0022】キーメッセージ抽出部17は、履歴データ21およびメッセージデータ20を参照してキーメッセージを抽出する。キーメッセージ表示部18は、抽出したキーメッセージを他のメッセージと区別して表示できるようにメッセージデータを表示できる形式のデータに変換する。 【0023】ユーザデータ19はユーザIDとパスワードの組を格納している。メッセージデータ20は、各メッセージについてメッセージID、投稿ユーザID、投稿時刻、内容情報、位置情報、リンクIDを格納している。履歴データ21はコミュニケーションに参加登録している各ユーザについて、ユーザID、ログアウト時刻、履歴情報を格納している。 【0024】図3は、本実施例で述べるコミュニケーションシステムのハードウェア構成を示す。本システムは、プログラムおよびデータを格納する記憶装置51と、記憶装置51からプログラムおよびデータをロードして演算処理を実行する処理装置75、処理装置75とクライアント30をネットワーク40を介して通信させるための通信装置70からなるサーバ50である。 【0025】記憶装置51はさらに、ワーキングエリア52、コミュニケーション制御部格納エリア53、ユーザ管理部格納エリア54、内容表示部格納エリア55、メッセージデータ管理部格納エリア56、履歴管理部格納エリア57、キーメッセージ抽出部格納エリア58、キーメッセージ表示部格納エリア59、ユーザデータ格納エリア60、メッセージデータ格納エリア61、履歴データ格納エリア62からなる。このうち、ワーキングエリア52、ユーザデータ格納エリア60、メッセージデータ格納エリア61、履歴データ格納エリア62はデータを格納するエリアであり、その他の格納エリアはプログラムを格納するエリアである。 【0026】図3では、サーバのハードウェア構成図の一例を示したが、サーバに限定されるものではなく、例えばメーラーのように、メッセージデータをクライアントにダウンロードして、クライアントで各種処理を実行する場合、上記構成はクライアント内に必要となるが、その場合でも本発明は実施可能である。 【0027】図4は、本実施例におけるコミュニケーションシステムの履歴データ21の構成の一例を示す。履歴データ21はそれぞれがユーザID200、ユーザの前回のログアウト時刻であるログアウト時刻201、履歴情報202からなる複数のユーザ情報100から構成される。さらに履歴情報202は、メッセージに対するユーザの行動が投稿なのか、閲覧なのかを示す種別203、閲覧または投稿されたメッセージID204、閲覧または投稿指示された時刻を表す時刻205から構成される。 【0028】図5は、本実施例におけるコミュニケーションシステムのメッセージデータ20の構成の一例を示す。メッセージデータ20はそれぞれがメッセージID400、投稿ユーザID401、投稿時刻402、メッセージの本文にあたる内容情報403、メッセージの表示位置を表す位置情報404、メッセージがリンク付けされている他のメッセージのID群であるリンクメッセージID405からなる複数のメッセージデータ300から構成される。 【0029】以下では、図2に示すブロック図を構成する個々の処理部の処理内容および処理アルゴリズムについて詳しく述べる。 【0030】図6はコミュニケーション制御部12の処理アルゴリズムを示す。ユーザからのログイン指示があった場合(ステップ501)、ユーザが入力したユーザIDとパスワードをユーザ管理部13に渡して照合する(ステップ502)。ユーザIDとパスワードが正しい場合(ステップ503)、内容表示部14にコミュニケーション全体内容表示データの作成を指示する(ステップ505)。ユーザIDとパスワードが正しくない場合、ログイン失敗のメッセージを返す(ステップ504)。 【0031】コミュニケーションの全体内容が表示されている状態で、ユーザから特定メッセージの閲覧指示があった場合(ステップ506)、内容表示部14にメッセージIDを渡し、内容表示データの作成を指示する(ステップ507)。そして、履歴管理部16に閲覧履歴の更新を指示する(ステップ508)。ユーザからの指示がメッセージの投稿指示であった場合(ステップ509)、メッセージデータ管理部15に、メッセージID、投稿ユーザID、投稿時刻、内容情報、位置情報リンクメッセージIDからなる投稿情報を渡し、メッセージの登録を指示する(ステップ510)。 【0032】次に、投稿したメッセージを表示させるため、内容表示部14にコミュニケーション全体内容表示データ作成を指示し(ステップ511)、コミュニケーション内容を再表示する。そして、履歴管理部16に投稿履歴の更新を指示する(ステップ512)。ユーザからの指示がキーメッセージ表示指示であった場合(ステップ513)、キーメッセージ抽出部17にキーメッセージの抽出を指示し(ステップ514)、次に、キーメッセージ表示部18に抽出されたキーメッセージのID群を渡し、表示データの作成を指示する(ステップ515)。ユーザからの指示がログアウト指示であった場合(ステップ516)、履歴管理部16にログアウト時刻の更新を指示し(ステップ517)、処理を終了する。 【0033】本実施例では、ログインした直後にコミュニケーション全体内容を表示しているが、コミュニケーション全体内容を表示する前にキーメッセージをいきなり表示する方法もある。また、ステップ507とステップ508、ステップ511とステップ512の処理の順序を逆にするという方法、ステップ507とステップ508、ステップ511とステップ512の処理を並行して行う方法でもよい。」 「【0054】(3)キーメッセージ抽出対象を前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージのみとする。 【0055】キーメッセージ抽出部17において、図9のステップ810を、「取得したメッセージIDの中から、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージのメッセージIDを選択する」に変更することにより、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージに関して、同様に距離Nで結ばれているキーメッセージを抽出できる。」 「【0064】(8)抽出したキーメッセージを表示する際に、前回ログアウト時刻201以前のメッセージと前回ログアウト時刻201以降のメッセージを区別して表示できる。 【0065】ユーザの前回ログアウト時刻201と、表示するメッセージの投稿時刻402を比較することにより、表示するメッセージが前回ログアウト時刻201以降に投稿されたのか、以前に投稿されたのか判別でき、それらを区別して表示できる。また、それらを区別せずに表示することも可能である。」 そして、上記下線部の記載を技術的常識に照らすと次のことがいえる。 ア.「メッセージを情報単位としたコミュニケーションシステムについて述べるが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子掲示板やチャット、電子メールなどさまざまな種類のシステムに適用できる。」(【0011】)及び「本システムは、プログラムおよびデータを格納する記憶装置51と、記憶装置51からプログラムおよびデータをロードして演算処理を実行する処理装置75、処理装置75とクライアント30をネットワーク40を介して通信させるための通信装置70からなるサーバ50である」(【0024】)の記載から、「サーバ50」は、複数のクライアントへのパーシステントメッセージングサービスを提供するといえる。 イ. 「ユーザデータ19はユーザIDとパスワードの組を格納している。メッセージデータ20は、各メッセージについてメッセージID、投稿ユーザID、投稿時刻、内容情報、位置情報、リンクIDを格納している。履歴データ21はコミュニケーションに参加登録している各ユーザについて、ユーザID、ログアウト時刻、履歴情報を格納している。」(【0023】)の記載から、「ユーザデータ19」、「メッセージデータ20」、「履歴データ21」は、パーシステントメッセージングサービスを実行するメモリスペースを提供しているといえる。 ウ.「ユーザ管理部13はユーザIDおよびパスワードの組を格納するユーザデータ19を管理し、ログイン指示があった際にユーザIDとパスワードを認証し、正しければユーザIDをコミュニケーション制御部12に渡し、正しくなければログイン失敗のメッセージを返す。」(【0019】)の記載から、ユーザ管理部13はユーザーデータ19を格納しており、ユーザーデータ19はログインの認証に使われるから、クライアント30からネットワーク40を介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのためのものといえる。 エ.「キーメッセージ抽出部17」において、抽出したキーメッセージは「キーメッセージ表示部18」で表示データが作成され、作成された表示データはクライアント30に送信されることは明らかである。 上記下線部の記載及びア?ウによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ネットワーク40に接続された複数のクライアント30へのパーシステントメッセージングサービスを提供するためのサーバ50であって、 パーシステントメッセージングサービスを実行するメモリスペースを提供するユーザデータ19、メッセージデータ20、履歴データ21と、 クライアント30からネットワーク40を介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、ユーザデータ19にユーザIDを格納するユーザ管理部13と、 メッセージデータ20はそれぞれがメッセージID400、投稿ユーザID401、投稿時刻402、メッセージの本文にあたる内容情報403、メッセージの表示位置を表す位置情報404からなる複数のメッセージデータ300から構成され、 ログイン後、ユーザからの指示がキーメッセージ表示指示であった場合、キーメッセージ抽出部17にキーメッセージの抽出を指示し、キーメッセージ表示部18に抽出されたキーメッセージのID群を渡し、表示データの作成を指示し、 キーメッセージ抽出対象を前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージのみとする場合、キーメッセージ抽出部17において、取得したメッセージIDの中から、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージのメッセージIDを選択することにより、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージに関してキーメッセージを抽出し、キーメッセージ表示部18は、抽出したキーメッセージの表示データを作成し、クライアント30に送信するサーバ50。」 2.対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア.引用発明の「ネットワーク40に接続された複数のクライアント30へのパーシステントメッセージングサービスを提供するためのサーバ50」は、本願発明の「分散ネットワークに接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置」と「ネットワークに接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置」である点では一致するといえる。 イ.引用発明の「パーシステントメッセージングサービスを実行するメモリスペースを提供するユーザデータ19、メッセージデータ20、履歴データ21」は、本願発明の「パーシステントメッセージングサービスを実行する共有メモリスペースをホストするための手段」と「パーシステントメッセージングサービスを実行するメモリスペースをホストするための手段」である点では一致するといえる。 ウ.引用発明の「クライアント30からネットワーク40を介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、ユーザデータ19にユーザIDを格納するユーザ管理部13」は、本願発明の「クライアントデバイスから通信ネットワークを介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、前記共有メモリスペースにユーザーデータを配置させるための手段」と「クライアントデバイスから通信ネットワークを介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、メモリスペースにユーザーデータを配置させるための手段」である点では一致するといえる。 エ.引用発明の「取得したメッセージIDの中から、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージのメッセージIDを選択することにより、前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージに関してキーメッセージを抽出」する「キーメッセージ抽出部17」は、本願発明の「以前のメッセージングセッションの前記ユーザーデータにマッチする前記共有メモリスペースに記憶されたメッセージオブジェクトを位置づけるための手段」と「以前のメッセージングセッションの前記ユーザーデータにマッチするメモリスペースに記憶されたメッセージオブジェクトを位置づけるための手段」である点では一致するといえる。 オ.引用発明の「キーメッセージ抽出部17において、」「抽出したキーメッセージの表示データを作成し、クライアント30に送信する」、「キーメッセージ表示部18」は、本願発明の「前記メッセージオブジェクトから引き出された履歴メッセージを前記通信ネットワークを介して前記クライアントデバイスに送信するための手段」と「前記メッセージオブジェクトから引き出された履歴メッセージを前記通信ネットワークを介して前記クライアントデバイスに送信するための手段」である点では一致するといえる。 カ.引用発明の「前回ログアウト時刻以前に投稿されたメッセージに関してキーメッセージを抽出」する」ものであるから、「抽出したキーメッセージの表示データ」は、本願発明と同様に「前記履歴メッセージは、前記以前のメッセージングセッションの少なくとも一部を備える」ものといえる。 そうすると、両者は、次の点で一致する。 「ネットワークに接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置であって、 パーシステントメッセージングサービスを実行するメモリスペースをホストするための手段と; クライアントデバイスから通信ネットワークを介して前記パーシステントメッセージングサービスとのアクティブ通信を開始するユーザーのために、メモリスペースにユーザーデータを配置させるための手段と; 以前のメッセージングセッションの前記ユーザーデータにマッチするメモリスペースに記憶されたメッセージオブジェクトを位置づけるための手段と; 前記メッセージオブジェクトから引き出された履歴メッセージを前記通信ネットワークを介して前記クライアントデバイスに送信するための手段と; を備え、 前記履歴メッセージは、前記以前のメッセージングセッションの少なくとも一部を備える、 装置。」 他方、本願発明と引用発明は次の点で相違する。 本願発明は、「分散ネットワーク」に接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置であり、パーシステントメッセージングサービスを実行する「共有メモリスペース」をホストするための手段を備えるのに対し、引用発明は、「分散ネットワーク」に接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供するための装置ではなく、サーバ50は、パーシステントメッセージングサービスを実行する「メモリスペース」を提供しているもののパーシステントメッセージングサービスを実行する「共有メモリスペース」を提供していない点。 この点は、原査定において、相違点とした事項には含まれていないが、引用発明はこの点に対応する事項を有さないので相違点である。 3.判断 上記相違点について検討する。 本願発明に係る上記相違点における「分散ネットワーク」は、分散コンピューティングのネットワークシステムのことであり、「パーシステントメッセージングサービスを実行する共有メモリスペース」は、分散ネットワークの複数のコンピュータが共有するメモリスペースであってクライアントデバイスへのパーシステントメッセージングサービスの提供を実行するために利用されるものと解される。 原査定の拒絶理由に引用した引用文献2?5には、「分散ネットワークに接続されたクライアントデバイスのポピュレーションへのパーシステントメッセージングサービスを提供する」技術及び上記意味における「パーシステントメッセージングサービスを実行する共有メモリスペース」の技術は記載されておらず、示唆されてもいない。 よって、引用発明において、引用文献2?5に記載された技術を採用できたとしても、そのことによって上記相違点を克服することが当業者にとって容易であったということはできない。 ほかに、上記相違点の克服が当業者にとって容易であったというべき理由を発見しない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項1に係る発明は、本願発明を限定し、方法として記載したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項2?10、47、49に係る発明は、本願請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項11、12に係る発明は、本願発明をプロセッサ、記憶媒体として記載したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項14に係る発明は、本願請求項1に係る発明を装置として記載したしたものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項15?23に係る発明は、本願請求項14に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項24に係る発明は、本願発明をクライアントデバイス側の方法として記載したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項25?33に係る発明は、本願請求項24に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項34、35、36に係る発明は、本願請求項24に係る発明をプロセッサ、記憶媒体、装置として記載したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項37に係る発明は、本願請求項36に係る発明を限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項38?46、48に係る発明は、本願請求項37に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1?49に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたとはいえないから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-05-09 |
出願番号 | 特願2014-326(P2014-326) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宮久保 博幸 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
和田 志郎 千葉 輝久 |
発明の名称 | 分散システムにおけるパーシステントパーソナルメッセージング |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |