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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1314136
審判番号 不服2014-20449  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-09 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2012-525973「メトロロジ方法および装置、リソグラフィ装置、リソグラフィプロセシングセル、およびメトロロジターゲットを備える基板」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日国際公開、WO2011/023517、平成25年 1月24日国内公表、特表2013-502592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2010年8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年8月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年9月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月17日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成26年6月17日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年10月9日に請求された拒絶査定不服審判であって、平成27年11月11日の当審の電話応対による審尋に対し、同年11月24日に請求人からFAXにより回答があったものである。

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月17日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基板上の複数のターゲットの特性を測定するメトロロジ装置であって、
放射の照明ビームを放出する放射源と、放射の測定ビームを前記基板上の前記ターゲット上に誘導し、かつ前記ターゲットによって回折した放射を集光する対物レンズと、前記ターゲットのイメージを検出するセンサと、を備え、
前記各ターゲットは、前記基板上の異なる層にパターン形成された格子を重ね合わせることによって形成され、
前記放射源、前記対物レンズ及び前記センサは、前記照明ビームが前記ターゲットを同時に照明するように、かつ、前記センサによって検出された前記ターゲットの前記イメージが1つの1次回折ビームによって形成されるように配置され、前記装置は、
前記センサによって検出された前記イメージ内の前記ターゲットのそれぞれの別個のイメージを特定するイメージプロセッサと、
前記センサによって検出された単一のイメージから得られた前記各ターゲットの複数の別個のイメージの各々から決定された複数の強度値を比較することにより、特性の測定値を得るコントローラと、をさらに備える、メトロロジ装置。」

3 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成16年3月18日に頒布された特表2004-508711号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
ア 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の分野】
本発明は一般的には半導体製造プロセスで用いられる重ね合わせ測定技術に関している。より具体的には本発明は、半導体ウェーハスタックの異なるレイヤまたは同じレイヤ上の異なるパターン間のアラインメント誤差を測定するための重ね合わせマークに関している。」
「【0082】
図9は、本発明の他の実施形態による重ね合わせマーク130の上から見た平面図である。例として重ね合わせマーク130は図2のマークと対応する。しかし図2のマークとは異なり、重ね合わせマーク110は重ね合わせを2つの異なる向きについて測定するように構成されることに注意されたい。よってマーク130は重ね合わせが測定されるのに必要な、それぞれの向きのための一つのマークの必要性をなくす。重ね合わせマーク130は、ウェーハのテストされるレイヤが完全にアライメントしているときに結果として生じる構成において示されている。重ね合わせマーク130は一般に、ウェーハの2つ以上の連続するレイヤ間の、またはウェーハの単一のレイヤ上に別個に生成された2つ以上のパターン間の相対的なズレを決定するのに提供される。議論を簡単にするために、重ね合わせマーク130は、基板の異なるレイヤ間の重ね合わせを測定する場合において説明される。しかしこの図の重ね合わせマークはまた、基板の単一のレイヤ上の2以上の個別に生成されたパターンを測定するのに用いられてもよいことに注意されたい。
【0083】
重ね合わせマーク130は、2つの異なる向きにおける2つのウェーハレイヤ間のレジストレーション誤差を決定するための複数のワーキング・ゾーン132を含む。示された実施形態において重ね合わせマーク130は、8つの長方形状のワーキング・ゾーン132を含み、これらはその周縁71を実質的に埋めるように構成される。ワーキング・ゾーン132は、ウェーハの異なるレイヤ間のアライメントを計算するの用いられるマークの実際の領域を表す。前述のように、ワーキング・ゾーン132は空間的に互いに分離され、その結果、それらは第2レイヤの隣接するワーキング・ゾーンの部分と重ならないようになっている。この特定の構成においては、ワーキング・ゾーンのいくつかは除外ゾーンを介して分離されており、一方、他のワーキング・ゾーンは隣接ワーキング・ゾーンの隣に位置する。例えばワーキング・ゾーン132Bはワーキング・ゾーン132EおよびFから除外ゾーン133を介して分離されており、一方、ワーキング・ゾーン132EおよびFはそのエッジにおいて互いに隣り合って位置する。
【0084】
議論を進めるために、ワーキング・ゾーン132は、第1ワーキング・グループ134および第2ワーキング・グループ136にグループ分けされる。第1ワーキング・グループ134は、第1方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132A?Dを含む。例として、第1方向はY方向でありえる。4つのワーキング・ゾーン132A?Dのうち、2つのワーキング・ゾーン132AおよびDは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132BおよびCは第2レイヤに設けられる(第1レイヤはクロスハッチングで表され、第2レイヤはクロスハッチングなしで表される)。理解されるように、このマーク構成について、重ね合わせ誤差がゼロの場合(図示のとおり)、ワーキング・ゾーン132AおよびD、およびワーキング・ゾーン132BおよびCの対称の中心135は正確に一致する。第2ワーキング・グループ136は、第1方向と垂直な第2方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132E?Hを含む。例として、第2方向はX方向でありえる。4つのワーキング・ゾーン132E?Hのうち、2つのワーキング・ゾーン132EおよびHは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132FおよびGは第2レイヤに設けられる(第1レイヤはクロスハッチングで表され、第2レイヤはクロスハッチングなしで表される)。上述のように、このマーク構成について、重ね合わせ誤差がゼロの場合(図示のとおり)、ワーキング・ゾーン132EおよびH、およびワーキング・ゾーン132FおよびGの対称の中心137は正確に一致する。
【0085】
理解されるように、グループ134および136のそれぞれは「X字」構成のマークを表す(オフセットはあるが)。例えばワーキング・グループ134は、同じ第1レイヤ上にあり、互いに対角線上に対向する位置にあるワーキング・ゾーン132AおよびDと、同じ第2レイヤ上にあり、互いに対角線上に対向する位置にあるワーキング・ゾーン132BおよびCを含む。さらにワーキング・ゾーン132AおよびDは、ワーキング・ゾーン132BおよびCに対して角度がつけられている。さらに、ワーキング・ゾーン132Aは空間的にワーキング・ゾーン132Dからオフセットが設けられており、ワーキング・ゾーン132Bは空間的にワーキング・ゾーン132Dからオフセットが設けられている。
【0086】
さらにワーキング・ゾーン136は、同じ第1レイヤ上にあり、互いに対角線上に対向する位置にあるワーキング・ゾーン132EおよびHと、同じ第2レイヤ上にあり、互いに対角線上に対向する位置にあるワーキング・ゾーン132FおよびGを含む。さらにワーキング・ゾーン132EおよびHは、ワーキング・ゾーン132FおよびGに対して角度がつけられている。さらに、ワーキング・ゾーン132Eは空間的にワーキング・ゾーン132Hからオフセットが設けられており、ワーキング・ゾーン132Fは空間的にワーキング・ゾーン132Gからオフセットが設けられている。本質的に、この特定のマークは、互いに対角線上にある2つの「X字」構成のマーク群、つまりワーキング・グループ194およびワーキング・グループ196を作る。
【0087】
さらに詳述するなら、あるレイヤ上のワーキング・ゾーンは、一般に他のレイヤ上のワーキング・ゾーンに対して並置される。例えば第1ワーキング・グループにおいて、ワーキング・ゾーン132Aはワーキング・ゾーン132Bに対して並置され、ワーキング・ゾーン132Cはワーキング・ゾーン132Dに対して並置される。同様に、第2ワーキング・グループにおいて、ワーキング・ゾーン132Eはワーキング・ゾーン132Hに対して並置され、ワーキング・ゾーン132Fはワーキング・ゾーン132Gに対して並置される。2つの並置されたペアのうち、第2レイヤ上のワーキング・ゾーンは典型的には第1レイヤ上のワーキング・ゾーンよりもFOVの中心により近く位置する。例えば、ワーキング・ゾーン132BおよびCおよびワーキング・ゾーン132FおよびGはそれぞれ、それらの並置されたワーキング・ゾーン132AおよびDおよびワーキング・ゾーン132EおよびHよりもFOV144の中心142により近く位置する。さらに、ワーキング・グループ群のそれぞれの中で、並置されたペアはグループ内の他の並置されたペアに対して対向する関係に(例えば対角線上に)位置する。例えば、並置されたペア132AおよびBは、並置されたペア132CおよびDに対向して位置し、並置されたペア132EおよびFは、並置されたペア132GおよびHに対向して位置する。
【0088】
理解されるように、この特定のマークにおいて、ワーキング・ゾーンの構成は回転対称(マークの中心を軸に±90、180、270、360度)である。これは典型的には、計測ツールの視野にわたる半径方向および軸方向のバラツキ、例えば、不均一光学収差およびツールに起因するズレ(TIS)を起こす照明によって引き起こされる半径方向および軸方向のバラツキの影響を低減するためになされる。半径方向のバラツキとは一般に、マークの中心からマークの外周領域へと広がるバラツキをいう。軸方向のバラツキとは一般に、マークの軸に沿った向きにおいて発生するバラツキをいい、例えばX方向においてはマークの左から右の部分へであり、Y方向においてはマークの下から上の部分へである。
【0089】
ワーキング・ゾーン132A?Hのそれぞれは、複数の粗くセグメント化された線群140によって構成される周期的構造138を含む。粗くセグメント化された線群の線幅Dおよび間隔sは大きく変更しえる。示されるように、周期的構造138のそれぞれは実質的にその対応するワーキング・ゾーン132の周縁を埋める。理解されるように、周期的構造138はまたその対応するワーキング・ゾーン132のレイヤ上に配置される。
【0090】
議論を簡単にするために、周期的構造138は、第1ワーキング・グループ134と関連する第1周期的構造138Aと、第2ワーキング・グループと関連する第2周期的構造138Bとに分類されえる。示されるように、第1周期的構造138Aはすべて同じ向きに方向づけられている。つまり粗くセグメント化された線群140は平行で互いに水平に位置する。第2周期的構造138Bもすべて同じ向きに方向づけられている(第1周期的構造とは異なるが)。つまり粗くセグメント化された線群140は平行で互いに垂直に位置する。よって第1ワーキング・グループ134内の周期的構造138Aは、第2ワーキング・グループ136内の周期的構造138Bに対して直交する。
【0091】
ある実施形態においては、並置される周期的構造の粗くセグメント化された線群は互いにアラインされている。つまりもし異なるレイヤを無視するなら、連続的なグレーティングをなすように見える。例えばワーキング・ゾーン132Aの粗くセグメント化された線は、ワーキング・ゾーン132Bの粗くセグメント化された線とアラインされ、ワーキング・ゾーン132Cの粗くセグメント化された線は、ワーキング・ゾーン132Dの粗くセグメント化された線とアラインされる。さらにワーキング・ゾーン132Eの粗くセグメント化された線は、ワーキング・ゾーン132Fの粗くセグメント化された線とアラインされ、ワーキング・ゾーン132Gの粗くセグメント化された線は、ワーキング・ゾーン132Hの粗くセグメント化された線とアラインされる。」
「【0126】
図19は、上述のいずれかのマークにおける重ね合わせを画像化を介して測定するのに用いられる重ね合わせ測定システムまたは計測ツール320の簡略化された概略図である。画像化は、多くのユーザの支持と、ユーザがすぐに利用できる要素とを持った非常に発達した技術である。一般に知られるように、画像化は大量の情報を一度に集める効率的な方法である。すなわちマーク内の全ての点が同時に測定されえる。さらに画像化はユーザが実際にウェーハ上で測定されているものを見ることを可能にする。さまざまな要素の寸法は、この実施形態をよりよく示すために強調されている。重ね合わせ測定システム320は、ウェーハ324上に配置された一つ以上の重ね合わせターゲット322を介して重ね合わせ誤差を決定するように構成される。たいていの場合、重ね合わせターゲット322は、ウェーハ324のスクライブライン内に位置する。一般に知られるように、スクライブラインは、ウェーハを複数のダイにソーイングおよびダイシングするために用いられるウェーハの領域群である。しかしこれは限定事項ではなく、ターゲットの位置はそれぞれの装置設計によって変えることができる。示されるように、重ね合わせ測定システム320は、光学アセンブリ326およびコンピュータ328を含む。光学アセンブリ326は一般に、重ね合わせターゲット322の画像をキャプチャするように構成される。一方、コンピュータは一般に、キャプチャされた画像から重ね合わせターゲットの要素の相対的ズレを計算するように構成される。
【0127】
示された実施形態において、光学アセンブリ326は、光332を第1パス334に沿って放射するように構成される光源330(例えば非干渉性または可干渉性のもの。一般には非干渉性のほうが好ましい。)を含む。光332は第1レンズ335に入射し、これが光332を、光332を通すように構成された光ファイバライン336に収束させる。光332が光ファイバライン336から出射すると、光は第2レンズ338を通り、これは光332を平行光束にするよう構成される。平行光束になった光332はそれからパスを進み、やがてビームスプリッタキューブ340に届き、これは平行光束になった光をパス342に導くように構成される。パス342を進む平行光束になった光332は、対物レンズ344に入射し、これは光332をウェーハ324上に収束させる。
【0128】
光332は、ウェーハ324で反射し、それから対物レンズ344で集光される。理解されるように、対物レンズ344で集光された反射した光332は、一般にウェーハ324の一部分の画像を含み、例えば重ね合わせターゲット322の画像を含む。光322が対物レンズ344を離れると、それはパス342に沿って(反対向きに)進み、ビームスプリッタ340に届く。一般に対物レンズ344は、入射光がどのように操作されたかについて、入射した光を光学的に反対に操作する。すなわち対物レンズ344は光332を再び平行光束にし、光332をビームスプリッタ340に導く。ビームスプリッタ340は光332をパス346上に導くように構成される。パス346を進む光332はそれからチューブレンズ350によって集光され、チューブレンズは光332をカメラ352上に収束させ、カメラはウェーハ324の画像を、より具体的にはターゲット322の画像を記録する。例として、カメラ352は電荷結合デバイス(CCD)、2次元CCD、またはリニアCCDアレイでありえる。たいていの場合、カメラ352は記録された画像を電気信号に変換し、それがコンピュータに送られて用いられる。電気信号を受け取ってからコンピュータ328は画像の重ね合わせ誤差を計算する分析アルゴリズムを実行する。分析アルゴリズムは以下に詳述される。
【0129】
システム320はさらに、ウェーハ324からの画像をグラブするためにコンピュータ328およびカメラ352とともに動作するフレームグラバ354を含む。フレームグラバ354は別個の要素として示されているが、フレームグラバ354はコンピュータ328および/またはカメラ352の一部であってもよいことに注意されたい。フレームグラバ354は典型的に2つの機能を持つ。すなわちターゲット捕捉および画像グラブである。
ターゲット捕捉のあいだ、フレームグラバ354およびコンピュータ328はウェーハステージ356と協調して、ターゲットをフォーカスが合った状態にし、ターゲットを視野(FOV)の中心になるべく近く位置させる。たいていの場合、フレームグラバは複数の画像(例えば重ね合わせを測定するために用いられる画像ではなく)をグラブし、ステージは、ターゲットが正しくX、YおよびZ方向に位置するまでウェーハをこれらのグラブ間で動かす。理解されるように、XおよびY方向は一般に視野(FOV)に対応し、一方、Z方向は一般にフォーカスに対応する。いったんフレームグラバがターゲットの正しい位置を決定すると、これらの2つの機能の第2が現実化する(例えば画像をグラブ)。画像グラブの間、フレームグラバ354は最終のグラブまたはグラブ群を行い、正しく位置するターゲット画像、すなわち重ね合わせを決定するのに用いられる画像を格納する。
【0130】
画像をグラビングしたあと、情報はグラビングされた画像から抽出されてレジストレーション誤差を決定しなければならない。抽出された情報はディジタル情報または波形である。半導体ウェーハのさまざまなレイヤ間のレジストレーション誤差を決定するために、さまざまなアルゴリズムが用いられえる。例えば、周波数領域ベースのアプローチ、空間領域ベースのアプローチ、フーリエ変換アルゴリズム、ゼロクロス検出、相関および相互相関アルゴリズムなどが用いられえる。
【0131】
ここで説明されたマーク(例えば周期的構造を含むマーク)を介して重ね合わせを決定するのに提案されるアルゴリズムは一般にいくつかのグループに分類される。例えば一つのグループは位相回復ベースの分析である。周波数領域ベースのアプローチとしてしばしば参照される位相回復ベースの分析は典型的には、周期的構造の線に沿った画素の総和をとることによってワーキング・ゾーンのそれぞれを折り畳むことによって1次元の信号を作り出すことを含む。利用できる位相回復アルゴリズムの例は、Bareketに付与された米国特許第6,023,338号、2000年6月22日に出願された米国特許出願第09/603,120号(弁護士事件番号KLA1P026)、および2000年9月1日に出願された米国特許出願第09/654,318号(弁護士事件番号KLA1P029)に記載され、これらの全体がここで参照によって援用される。
【0132】
利用できるさらに他の位相回復アルゴリズムは、2000年10月26日に出願された米国特許出願第09/697,025号に記載され、これもここで参照によって援用される。これらで開示されている位相回復アルゴリズムは信号を基本信号周波数の高調波のセットに分解する。異なる高調波の振幅および位相の定量的比較によって、信号の対称性およびスペクトル成分に関する重要な情報が提供される。特に同一信号のうちの第1および第2またはさらに高い高調波間の位相差(それらの振幅で校正される)によって、信号の非対称性の度合いが測定できる。そのような非対称性は、プロセスに起因する構造的特徴(ウェーハに起因するズレ)とともに計測ツールにおける光学的ミスアライメントおよび照明の非対称性(ツールに起因するズレ)が大きく貢献する。同じプロセスレイヤ上の視野の異なる部分から捕捉された信号についての第1および第2高調波の位相の間のこのミスレジストレーションによって、計測ツールの光学収差についての独立した情報が提供される。最後に、既知の向きにおける測定からのこれらのミスレジストレーションを、ウェーハを180度回転させたあとのそれと比較することによって、非対称性による、ツールに起因するズレとウェーハに起因するズレとを分離することが可能になる。
【0133】
利用できるさらに他の位相回復アルゴリズムは、ウェーブレット分析である。ウェーブレット分析は、上の節で説明したこととある程度、類似するが、ダイナミックウィンドウが1次元信号にわたって移動し、位相推定がより局所的に行われる。これはチャープ化された周期的構造の場合に用いられるときに特に興味深い。
【0134】
他のグループは強度相関ベースの方法に関する。このアプローチにおいては、それぞれのプロセスレイヤについての対称の中心が、同一のプロセスレイヤからの、ある信号と、マークの反対部分からの反転された信号との相互共分散を計算することによって、別々に見いだされる。この技術は今日、ボックスインボックスのターゲットについて用いられている技術と似ている。
【0135】
上記技術は例として挙げられたものであり、これらはテストされ、よいパフォーマンスを示してきた。重ね合わせ計算のための他の代替アルゴリズム方法には、自己および相互相関技術のさまざまな変化形、誤差相関技術、絶対差分の最小化のような誤差最小化技術、差分平方最小化、ゼロクロス検出を含むスレッショルドベースの技術、およびピーク検出が含まれる。また2つの1次元パターン間の最適化マッチングを求めるために用いられえる動的プログラミングアルゴリズムも存在する。上述のように分析アルゴリズムおよびアプローチは、前述のさまざまな重ね合わせマークの全てについて利用されえる。
【0136】
重要なことは、上述の概略図およびその説明は限定事項ではなく、重ね合わせ画像システムは多くの他の形態で実施されてもよいことである。例えば、重ね合わせ測定ツールは、ウェーハの表面上に形成された重ね合わせマークのクリチカルな局面を解決するように構成された適切でかつ既知の多くの画像化または計測ツールのいずれであってもよい。例えば重ね合わせ測定ツールは、ブライトフィールド画像化顕微鏡法、ダークフィールド画像化顕微鏡法、フルスカイ画像化顕微鏡法、位相コントラスト顕微鏡法、偏光画像化顕微鏡法、および可干渉プローブ顕微鏡法を適用してもよい。また、単一および複数の画像化方法が用いられてターゲットの画像をキャプチャしてもよいことも考えられる。これらの方法には例えば、シングルグラブ、ダブルグラブ、シングルグラブ可干渉プローブ顕微鏡法(CPM)およびダブルグラブCPMの方法が含まれる。これらのタイプのシステムはとりわけ、商業ベースで容易に入手可能である。例として、単一および複数画像化方法はカリフォルニア、サンノゼのKLA-Tencorから容易に入手可能である。
【0137】
図20Aは、本発明の実施形態によって重ね合わせを計算する方法360を図示する簡略化されたフロー図である。議論を簡単にするために、この方法は図9に示されるマークを用いて説明される。このマークはフロー図の隣の図20Bに示される。方法360はステップ362で始まり、ここでキャプチャされた画像からワーキング・ゾーンが選択される。例として、X方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132E?Hが選択され、Y方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132A?Dが選択される。ワーキング・ゾーンを選択してから、プロセスフローはステップ364に進み、ここで選択されたワーキング・ゾーンのそれぞれについて情報を持った信号が生成される。これはY重ね合わせ計算のためにX方向について平均化することによって、かつY重ね合わせ計算のためにX方向について平均化することによって、2次元画像群を1次元信号に折り畳むことによって実現できる。例として、図20Cは、ワーキング・ゾーン132Aについての第1折り畳み1次元信号と、ワーキング・ゾーン132Bについての第2折り畳み1次元信号とを示す。図20Cは、並置されたワーキング・ゾーン群のペアのいずれをも示しえることに注意されたい。信号を生成したあと、プロセスフローはステップ366に進み、ここで重ね合わせが信号群を比較することによって決定される。
【0138】
ある実施形態においては、これは共分散ベースの重ね合わせアルゴリズムを用いて達成され、これは同じプロセスレイヤに属するパターン間の相互相関の計算に基づく。その結果、2つのレイヤの対称の中心が求められ、それらのミスレジストレーションが実質的に重ね合わせである。このアルゴリズムのフロー図は図21に示される。
【0139】
他の実施形態においては、これはフーリエ分解重ね合わせアルゴリズムを用いて達成され、これはグレーティング構造の周期的特徴を利用している。このアルゴリズムは、ターゲットパターンから得られた信号を一連のフーリエ高調波に分解する。グレーティングパターンの正規化ピッチに校正された異なるプロセスレイヤからの同じオーダーの高調波間の位相比較は、重ね合わせ計算の基礎としてはたらく。したがってこのアルゴリズムは、いくつかの独立した重ね合わせ結果-すなわちそれぞれのフーリエオーダーについて一つの結果を提供する。このアルゴリズムのフロー図は図22に示される。
【0140】
図21は、本発明のある実施形態によって共分散を用いて重ね合わせを計算する方法370を図示するフロー図である。例として、方法370は図20Aのステップ366に概ね対応する。方法370はステップ372で始まり、ここでは信号の相互相関が計算される。これは典型的には対向するワーキング・ゾーンについて行われる。図9のマークについて、信号の相互相関は、ワーキング・ゾーンのペア132A対反転された132D、132B対反転された132C、132E対反転された132H、および132F対反転された132Gについて計算される。信号の相互相関が計算されたあとで、プロセスフローはステップ374に進み、ここで相互相関の最大(サブピクセル)の位置が求められる。これは典型的にはレイヤの両方について、すなわちクロスハッチングで表されるレイヤ1、およびクロスハッチングなしで表されるレイヤ2についてなされる。相互相関最大の位置が求められたあと、プロセスフローはステップ376に進み、ここで相互相関の最大位置の間の差分を計算することによって重ね合わせが決定される。例えば、ワーキング・ゾーン132EおよびH(レイヤ1)-ワーキング・ゾーン132FおよびG(レイヤ2)の相互相関最大の間の差分は、X方向のミスレジストレーションを決定する。さらに、ワーキング・ゾーン132AおよびD(レイヤ1)-ワーキング・ゾーン132BおよびC(レイヤ2)の相互相関最大の間の差分は、Y方向のミスレジストレーションを決定する。
【0141】
図22は、本発明のある実施形態によってフーリエ分解を用いて重ね合わせを計算する方法380を図示するフロー図である。例として、方法380は図20Aのステップ366に概ね対応する。方法380はステップ382で始まり、ここで信号はフーリエ級数にあてはめられ、それらの位相が抽出される。あてはめられ、抽出されたあと、プロセスフローはステップ384に進み、ここで並置されたワーキング・ゾーン間の位相差が求められる。例えばY方向においては、位相差はワーキング・ゾーン132Aおよび132Bの間として求められ、同様にワーキング・ゾーン132Cおよび132Dの間として求められる。さらにX方向においては、位相差はワーキング・ゾーン132Eおよび132Fの間として求められ、同様にワーキング・ゾーン132Gおよび132Hの間として求められる。位相差が求められたあと、プロセスフローはステップ386に進み、ここで与えられた向きについての前のステップの位相差間の差分を計算することによって重ね合わせが決定される。例えばワーキング・ゾーン132EおよびFの位相差と、ワーキング・ゾーン132GおよびHの位相差との間の差分の平均はX方向におけるミスレジストレーションを決定する。さらにワーキング・ゾーン132AおよびBの位相差と、ワーキング・ゾーン132CおよびDの位相差との間の差分の平均はY方向におけるミスレジストレーションを決定する。レイヤの位置に対応するデータを得るために、位相差はピッチによって乗算され、2πによって除算される。」
イ 図面の記載
「【図9】


「【図19】


「【図20A】


「【図20B】



ウ 引用例の記載事項の考察
a 引用例の【0126】の「図19は、上述のいずれかのマークにおける重ね合わせを画像化を介して測定するのに用いられる重ね合わせ測定システムまたは計測ツール320の簡略化された概略図である。」との記載、及び、「すなわちマーク内の全ての点が同時に測定されえる。」との記載のそれぞれ「上述のいずれかのマーク」、及び、「マーク」には、図9に示された重ね合わせマーク130が含まれることは明らかである。
b 引用例の【0126】の「図19は、上述のいずれかのマークにおける重ね合わせを画像化を介して測定するのに用いられる重ね合わせ測定システムまたは計測ツール320の簡略化された概略図である。」との記載、同じく「コンピュータは一般に、キャプチャされた画像から重ね合わせターゲットの要素の相対的ズレを計算するように構成される。」との記載、同じく「ウェーハ324上に配置された一つ以上の重ね合わせターゲット322」との記載、【0136】の「ウェーハの表面上に形成された重ね合わせマーク」との記載、図9、図19等の記載から見て、引用例に記載された「ターゲット」は「マーク」を含むものであると認められる。

エ 引用例記載の発明
上記ア及びイの記載事項並びに上記ウの考察によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ウェーハ324の表面上に形成された重ね合わせマーク130における重ね合わせを画像化を介して測定するのに用いられ、重ね合わせマーク130内の全ての点が同時に測定され、ダークフィールド画像化顕微鏡法を適用した、重ね合わせ測定ツール320であって、
光332を放射するように構成される光源330を備え、
ウェーハ324の表面上に形成された重ね合わせマーク130は、2つの異なる向きにおける2つのウェーハレイヤ間のレジストレーション誤差を決定するための複数のワーキング・ゾーン132を含み、
ワーキング・ゾーン132は、第1ワーキング・グループ134および第2ワーキング・グループ136にグループ分けされ、
第1ワーキング・グループ134は、Y方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132A?Dを含み、4つのワーキング・ゾーン132A?Dのうち、2つのワーキング・ゾーン132AおよびDは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132BおよびCは第2レイヤに設けられ、
第2ワーキング・グループ136は、X方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132E?Hを含み、4つのワーキング・ゾーン132E?Hのうち、2つのワーキング・ゾーン132EおよびHは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132FおよびGは第2レイヤに設けられ、
ワーキング・ゾーン132BおよびCおよびワーキング・ゾーン132FおよびGはそれぞれ、それらの並置されたワーキング・ゾーン132AおよびDおよびワーキング・ゾーン132EおよびHよりもFOV144の中心142により近く位置し、
ワーキング・ゾーン132A?Hのそれぞれは、複数の粗くセグメント化された線群140によって構成される周期的構造138を含み、
光源330が放射した光332は、対物レンズ344に入射し、光332をウェーハ324上に収束させ、光332はウェーハ324で反射し、それから対物レンズ344で集光され、対物レンズ344で集光された反射した光332は、重ね合わせターゲット322の画像を含み、光332が対物レンズ344を離れると、光332はチューブレンズ350によって集光され、チューブレンズは光332をカメラ352上に収束させ、カメラ352はウェーハ324上に配置されたターゲット322の画像を記録し、
キャプチャされた画像からワーキング・ゾーン132が選択され、X方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132E?Hが選択され、Y方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132A?Dが選択され、
ワーキング・ゾーン132を選択してから、選択されたワーキング・ゾーン132のそれぞれについて情報を持った信号が生成され、
信号を生成したあと、重ね合わせが信号群を比較することによって決定される、
重ね合わせ測定ツール320。」

4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ウェーハ324」、「ワーキング・ゾーン132」、「光332」、「光源330」、「対物レンズ344」、「カメラ352」、「2つのウェーハレイヤ」、「重ね合わせ」並びに「重ね合わせ測定ツール320」は、本願発明の「基板」、「ターゲット」、「照明ビーム」及び「測定ビーム」、「放射源」、「対物レンズ」、「センサ」、「異なる層」、「特性の測定値」並びに「メトロロジ装置」にそれぞれ相当する。
(2)引用発明の「重ね合わせマーク130」は、「複数のワーキング・ゾーン132を含」むものであるから、引用発明の「ウェーハ324の表面上に形成された重ね合わせマーク130における重ね合わせを画像化を介して測定するのに用いられ」る「重ね合わせ測定ツール320」は、本願発明の「基板上の複数のターゲットの特性を測定するメトロロジ装置」に相当する。
(3)引用発明の「光332を放射するように構成される光源330を備え」る構成は、本願発明の「放射の照明ビームを放出する放射源」「を備え」る構成に相当する。
(4)引用発明の「ターゲット322」は「ウェーハ324上に配置され」ており、引用発明の「光332をウェーハ324上に収束させ」る構成は、本願発明の「放射の測定ビームを前記基板上の前記ターゲット上に誘導」する構成に相当することは明らかであるから、引用発明の「光源330が放射した光332は、対物レンズ344に入射し、光332をウェーハ324上に収束させ、光332はウェーハ324で反射し、それから対物レンズ344で集光され」る構成と、本願発明の「放射の測定ビームを前記基板上の前記ターゲット上に誘導し、かつ前記ターゲットによって回折した放射を集光する対物レンズ」「を備え」る構成とは、「放射の測定ビームを前記基板上の前記ターゲット上に誘導し、かつ前記ターゲットからの放射を集光する対物レンズ」「を備え」る構成で一致する。
(5)引用発明の「カメラ352はウェーハ324上に配置されたターゲット322の画像を記録」する構成は、本願発明の「ターゲットのイメージを検出するセンサ」「を備え」る構成に相当する。
(6)引用発明の「ワーキング・ゾーン132A?Hのそれぞれは、複数の粗くセグメント化された線群140によって構成される周期的構造138を含」むものであるから、本願発明の「パターン形成された格子」に相当する構成を有するものである。
そうすると、引用発明の「ウェーハ324の表面上に形成された重ね合わせマーク130は、2つの異なる向きにおける2つのウェーハレイヤ間のレジストレーション誤差を決定するための複数のワーキング・ゾーン132を含み、ワーキング・ゾーン132は、第1ワーキング・グループ134および第2ワーキング・グループ136にグループ分けされ、第1ワーキング・グループ134は、Y方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132A?Dを含み、4つのワーキング・ゾーン132A?Dのうち、2つのワーキング・ゾーン132AおよびDは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132BおよびCは第2レイヤに設けられ、第2ワーキング・グループ136は、X方向における重ね合わせ情報を提供するように構成される4つのワーキング・ゾーン132E?Hを含み、4つのワーキング・ゾーン132E?Hのうち、2つのワーキング・ゾーン132EおよびHは第1レイヤに設けられ、2つのワーキング・ゾーン132FおよびGは第2レイヤに設けられ、」「ワーキング・ゾーン132A?Hのそれぞれは、複数の粗くセグメント化された線群140によって構成される周期的構造138を含」む構成は、本願発明の「各ターゲットは、前記基板上の異なる層にパターン形成された格子を重ね合わせることによって形成され」る構成に相当する。
(7)引用発明は、「重ね合わせマーク130内の全ての点が同時に測定され、」「ワーキング・ゾーン132BおよびCおよびワーキング・ゾーン132FおよびGはそれぞれ、それらの並置されたワーキング・ゾーン132AおよびDおよびワーキング・ゾーン132EおよびHよりもFOV144の中心142により近く位置」するものであるから、本願発明の「照明ビームが前記ターゲットを同時に照明する」ことに相当する構成を有するものといえる。
そうすると、引用発明は、「重ね合わせマーク130内の全ての点が同時に測定され、」「ワーキング・ゾーン132BおよびCおよびワーキング・ゾーン132FおよびGはそれぞれ、それらの並置されたワーキング・ゾーン132AおよびDおよびワーキング・ゾーン132EおよびHよりもFOV144の中心142により近く位置」し、「光源330が放射した光332は、対物レンズ344に入射し、光332をウェーハ324上に収束させ、光332はウェーハ324で反射し、それから対物レンズ344で集光され、対物レンズ344で集光された反射した光332は、重ね合わせターゲット322の画像を含み、光332が対物レンズ344を離れると、光332はチューブレンズ350によって集光され、チューブレンズは光332をカメラ352上に収束させ、カメラ352はウェーハ324上に配置されたターゲット322の画像を記録」する構成を有するものであるから、本願発明の「放射源、前記対物レンズ及び前記センサは、前記照明ビームが前記ターゲットを同時に照明するように、かつ、前記センサによって検出された前記ターゲットの前記イメージが」「形成されるように配置され」たことに相当する構成を有する。
(8)引用発明は、「キャプチャされた画像からワーキング・ゾーン132が選択され、X方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132E?Hが選択され、Y方向重ね合わせを計算するために、ワーキング・ゾーン132A?Dが選択され」るものであるから、本願発明の「センサによって検出された前記イメージ内の前記ターゲットのそれぞれの別個のイメージを特定するイメージプロセッサ」に相当するものを有する。
(9)引用発明の「キャプチャされた画像」は、本願発明の「単一のイメージ」に相当する。
また、平成27年11月24日にFAXにより送付された、
「現請求項1における「(単一のイメージから得られた前記各ターゲットの)複数の別個のイメージ」とは、本願明細書(0049)段落に「1度の露光で複数のターゲットイメージを得ることによって、スループットが増加する」と記載されているように、「1度の露光」で得られた「複数のターゲットイメージ」を意味するとのことです。例えば、本願明細書(0044)段落及び図5に記載された「(1次回折ビームのうちの1つから得た)格子32?35のイメージ」や、本願明細書(0048)段落及び図10に記載された「格子の別個のイメージ92?95」がそれに対応するようです。」
という回答に照らせば、引用発明の「選択されたワーキング・ゾーン132のそれぞれについて情報を持った信号」は、本願発明の「各ターゲットの複数の別個のイメージの各々から決定された」「強度値」に相当する。
そうすると、引用発明の「ワーキング・ゾーン132を選択してから、選択されたワーキング・ゾーン132のそれぞれについて情報を持った信号が生成され、信号を生成したあと、重ね合わせが信号群を比較することによって決定される」構成は、本願発明の「センサによって検出された単一のイメージから得られた前記各ターゲットの複数の別個のイメージの各々から決定された複数の強度値を比較することにより、特性の測定値を得るコントローラ」「をさらに備える」構成に相当する。

上記(1)及び(9)から、本願発明と引用発明は、
「基板上の複数のターゲットの特性を測定するメトロロジ装置であって、
放射の照明ビームを放出する放射源と、放射の測定ビームを前記基板上の前記ターゲット上に誘導し、かつ前記ターゲットからの放射を集光する対物レンズと、前記ターゲットのイメージを検出するセンサと、を備え、
前記各ターゲットは、前記基板上の異なる層にパターン形成された格子を重ね合わせることによって形成され、
前記放射源、前記対物レンズ及び前記センサは、前記照明ビームが前記ターゲットを同時に照明するように、かつ、前記センサによって検出された前記ターゲットの前記イメージが形成されるように配置され、前記装置は、
前記センサによって検出された前記イメージ内の前記ターゲットのそれぞれの別個のイメージを特定するイメージプロセッサと、
前記センサによって検出された単一のイメージから得られた前記各ターゲットの複数の別個のイメージの各々から決定された複数の強度値を比較することにより、特性の測定値を得るコントローラと、をさらに備える、メトロロジ装置。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「前記ターゲットからの放射」が、本願発明では、「前記ターゲットによって回折した」ものであり、かつ、「センサによって検出された前記ターゲットの前記イメージが1つの1次回折ビームによって形成される」のに対し、引用発明では、「ウェーハ324で反射した」ものであって、回折したものか否かが不明であり、かつ、「カメラ352」により「記録」される「ウェーハ324上に配置されたターゲット322の画像」は、「ウェーハ324で」「反射した光332」によるものである点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
暗視野観察法において、1つの1次回折ビームを用いてイメージを観察することは周知技術であり、引用発明は、「ダークフィールド画像化顕微鏡法を適用した、重ね合わせ測定ツール320」において、「光332をカメラ352上に収束させ、カメラ352はウェーハ324上に配置されたターゲット322の画像を記録」するものであり、また、「ワーキング・ゾーン132A?Hのそれぞれは、複数の粗くセグメント化された線群140によって構成される周期的構造138を含」むものであるから、引用発明において、「カメラ352上に収束させ」る「光332」として、「ワーキング・ゾーン132A?H」によって回折した1つの1次回折ビームを用いることにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることに、格別の困難性も阻害要因もない。

上記相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-04 
結審通知日 2015-12-07 
審決日 2015-12-21 
出願番号 特願2012-525973(P2012-525973)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 今浦 陽恵
土屋 知久
発明の名称 メトロロジ方法および装置、リソグラフィ装置、リソグラフィプロセシングセル、およびメトロロジターゲットを備える基板  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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