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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1314143
審判番号 不服2014-23115  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-13 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2008-32923号「効率的な広いダイナミックレンジのコイル駆動用のシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年8月28日出願公開、特開2008-199887号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年2月14日(パリ条約による優先権主張2007年2月14日、米国)の出願であって、平成26年7月24日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成26年11月13日に本件審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成26年7月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「第1の粗フォースコイル(14)と、
前記第1の粗フォースコイルに結合され、磁気的な第1の力を生成するために前記第1の粗フォースコイルを電流駆動するように構成されるPWMドライブ(12)と、
第2の微細フォースコイル(18)と、
前記第2の微細フォースコイルに結合され、磁気的な第2の力を生成するために前記第2の微細フォースコイルを電流駆動するように構成されるリニアドライブ(16)と、を含み、前記第1の力は前記第2の力より大きくなるように前記電流駆動され、前記第2の力は低いノイズを有する、
フォースコイルを駆動するシステム(10)。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2005-86959号公報(以下「刊行物1」という。)には、リニアモータ駆動装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている(なお、下線は当審で付与。)。
(ア)「【0001】
本発明は、リニアモータ内の2通りの巻線と駆動電流を供給する2通りのアンプの組合せを切替えることによって、速度リップル/推力リップルのシステムへの影響を極小に留めることを目的とするものであり、半導体製造装置、液晶製造装置等の広い範囲の産業分野を対象とするリニアモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、液晶製造装置では、ナノメートルオーダでの位置決め精度、一定速送り精度が要求される。したがって、かかる装置の駆動装置ではサブミクロンオーダの位置検出装置が必要となるだけでなく、位置決め指令のとおりに忠実に動くサーボモータおよびその駆動装置が必要になる。このような位置決め装置においては、粗動と微動の二段階で駆動することができる。例えば図2の駆動装置で粗動を、そして図3の駆動装置で微動を行うことができる。」
(イ)「【0003】
しかしながら、従来のリニアモータ駆動装置は、ドライバのキャリア周波数設定は、使用するパワー素子に依りその上限値が限られており、また、リニアモータの巻線は、ドライバの駆動方式に依りY結線、あるいは、独立結線のどちらか一方であった。そのため、以下のような問題点があり、加減速時に大推力、一定速時に小推力/低速度リップル/低推力リップルを要求される用途に対し、従来のリニアモータ駆動装置は、リニアモータとアンプとで個別に要求仕様に対応していたため、追求する性能に限界があった。
(1)IGBT等の半導体パワー素子を使用するPWM制御は、高耐圧・大電流のラインナップがあり、大容量のリニアモータ駆動が可能であるが、そのスイッチング特性によりキャリア周波数に上限があり、推力リップルに起因する電流リップルを小さくできず、また、0クロス近傍の不感帯の影響により、小推力時の電流制御特性が悪い。
(2)MOSFET等の半導体パワー素子を使用するPWM制御は、そのスイッチング特性によりキャリア周波数を高く設定でき、推力リップルに起因する電流リップルを小さく、また、0クロス近傍の不感帯の影響を極小にでき、小推力時の電流制御特性を良くすることができるが、高耐圧のラインナップがないため、小容量のリニアモータ駆動しかできない。・・・
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、大推力時に適したリニアモータ巻線とアンプの組合せと小推力時に適したリニアモータ巻線とアンプの組合せとを、駆動条件に応じて選択的に切替えることで、速度リップル/推力リップルのシステムへの影響を極小に留めることを特徴とするリニアモータ駆動装置を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0007】
図1は、本発明のリニアモータ駆動装置の概略構成図である。図において、リニアモータ2は、大推力発生時(粗動用)にのみ使用する3相Y結線の大推力用巻線21と小推力発生時(微動用)にのみ使用する3相独立巻線の小推力用巻線22の2通りの巻線を有し、ドライバ1との各巻線への接続端子を備える。接続端子は大推力用巻線21用としてU相、V相、W相の3つの外部端子を備え、3相独立巻線の小推力用巻線22用として各相毎に2つの外部端子(u1、u2、v1、v2、w1、w2)を備えている。ドライバ1は、PWMアンプ(ダイオードブリッジ11とパワー素子121、電流アンプ131、シャント抵抗141、ヒューズ151で構成される)と高キャリアPWMアンプ(安定化電源16とパワー素子122、電流アンプ132、シャント抵抗142、ヒューズ152で構成される)、上位制御装置からのアンプ切替え信号によりPWMアンプまたは高キャリアPWMアンプのどちらか一方へ切替えることが可能なアナログスイッチ17を備える。例えば半導体製造装置におけるサブミクロンオーダの位置決め駆動装置においては、PWMアンプのキャリア周波数が10kHz程度で対し、その容量によっては高キャリアPWMアンプのキャリア周波数は50?100kHz程度にすることかできる。
次に動作を説明する。上位からのアンプ切替え信号は、設定された閾値と上位指令との比較により、出力される。設定された閾値は、少なくとも、システムの一定速時推力より若干高いくらいの値である。
システムが停止状態の場合、アンプ切替え信号は高キャリアPWMアンプを選択しており、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現できる。
システムが加減速時の場合、上位指令が設定された閾値を超えたところで、アンプ切替え信号はPWMアンプを選択し、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子121を介して、3相Y結線の大推力用巻線21に供給し、高効率・高加減速な制御特性を実現できる。
システムが一定速時の場合、上位指令が設定された閾値を下回ったところで、アンプ切替え信号は、再度、高キャリアPWMアンプを選択し、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子122を介して、ヘリカル巻線方式の小推力用巻線22に供給し、高精度/低速度リップル/低推力リップルな制御特性を実現できる。ヘリカル巻線は巻線精度を高めた螺旋状の整列巻線である。」


すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認める。
「大推力発生時(粗動用)にのみ使用する3相Y結線の大推力用巻線21と小推力発生時(微動用)にのみ使用する3相独立巻線の小推力用巻線22の2通りの巻線を有したリニアモータ2、
PWMアンプと高キャリアPWMアンプ、上位制御装置からのアンプ切替え信号によりPWMアンプまたは高キャリアPWMアンプのどちらか一方へ切替えることが可能なアナログスイッチ17を備えるドライバ1、
を有するリニアモータ駆動装置であって、
システムが停止状態の場合、アンプ切替え信号は高キャリアPWMアンプを選択しており、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現でき、
システムが加減速時の場合、上位指令が設定された閾値を超えたところで、アンプ切替え信号はPWMアンプを選択し、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子121を介して、3相Y結線の大推力用巻線21に供給し、高効率・高加減速な制御特性を実現実現でき、
システムが一定速時の場合、上位指令が設定された閾値を下回ったところで、アンプ切替え信号は、再度、高キャリアPWMアンプを選択し、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子122を介して、ヘリカル巻線方式の小推力用巻線22に供給し、高精度/低速度リップル/低推力リップルな制御特性を実現できるリニアモータ駆動装置。」

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
ア.引用発明の「大推力発生時(粗動用)にのみ使用する3相Y結線の大推力用巻線21」及び「小推力発生時(微動用)にのみ使用する3相独立巻線の小推力用巻線22」は、リニアモータ2の推力を発生する巻線であって、それぞれ磁気的な力を生成する巻線、すなわちフォースコイルであることが自明であるので、本願発明の「第1の粗フォースコイル」及び「第2の微細フォースコイル」に相当する。
イ.引用発明の「PWMアンプ」は、「PWMアンプを選択し、・・駆動電流をパワー素子121を介して、3相Y結線の大推力用巻線21に供給し、高効率・高加減速な制御特性を実現」する為のものであるので、本願発明の「第1の粗フォースコイルに結合され、磁気的な第1の力を生成するために前記第1の粗フォースコイルを電流駆動するように構成されるPWMドライブ」に相当する。
ウ.引用発明の「リニアモータ駆動装置」は、「駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現でき、・・駆動電流をパワー素子121を介して、3相Y結線の大推力用巻線21に供給し、高効率・高加減速な制御特性を実現」するものであるので、本願発明の「フォースコイルを駆動するシステム」に相当する。
エ.引用発明の「PWMアンプを選択し、上位指令に基づいた駆動電流をパワー素子121を介して、3相Y結線の大推力用巻線21に供給し、高効率・高加減速な制御特性を実現」することは、大推力用巻線21が「大推力発生時(粗動用)にのみ使用する」巻線であって、小推力用巻線22の小推力よりも大きな力を発生するものであることが自明であるので、本願発明の「前記第1の力は前記第2の力より大きくなるように前記電流駆動され」ることに相当する。
オ.引用発明の「高キャリアPWMアンプ」と、本願発明の「第2の微細フォースコイルに結合され、磁気的な第2の力を生成するために前記第2の微細フォースコイルを電流駆動するように構成されるリニアドライブ」とは、前者が「高キャリアPWMアンプを選択して・・駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現」し、「高精度/低速度リップル/低推力リップルな制御特性を実現」する為のものであるので、「第2の微細フォースコイルに結合され、磁気的な第2の力を生成するために第2の微細フォースコイルを電流駆動するように構成される微細フォースコイルを駆動するドライブ」である点で共通する。

(2)両発明の一致点
「第1の粗フォースコイルと、
前記第1の粗フォースコイルに結合され、磁気的な第1の力を生成するために前記第1の粗フォースコイルを電流駆動するように構成されるPWMドライブと、
第2の微細フォースコイルと、
前記第2の微細フォースコイルに結合され、磁気的な第2の力を生成するために前記第2の微細フォースコイルを電流駆動するように構成される微細フォースコイルを駆動するドライブと、を
含み、前記第1の力は前記第2の力より大きくなるように前記電流駆動される、
フォースコイルを駆動するシステム。」

(3)両発明の相違点
ア.相違点1
微細フォースコイルを駆動するドライブが、本願発明は、「リニアドライブ」であるのに対し、引用発明は、「高キャリアPWMアンプ」である点。

イ.相違点2
本願発明は「第2の力は低いノイズを有する」ものであるのに対し、引用発明は、そうでない点。

(4)請求人の主張について
ア.請求人は、審判請求書の【本発明が特許されるべき理由】において以下のように主張する。
「(2)請求項1の発明は『フォースコイルを駆動するシステム(10)』であり、引例1に記載された『リニアモータ駆動装置』と発明の対象が全く異なっている。・・・
本明細書の段落[0004]には、『・・・一般的なフォースコイルは、通電される(例えばフォースコイルドライブを介して)と制御軸に沿ってペイロードとプラットフォームに等しく、かつ逆向きの力を加える電気コイルである。フォースコイルが加える力の量は、フォースコイルを通して流れる電流の大きさに比例し、力の加わる方向は一般にこの電流の極性により決まる・・・』と記載されている。一般に、電磁力発生は、磁石とフォースコイルの組み合わせになっており、ほとんどが可動コイル形でコイルに電流を流すとフレミングの左手の法則に基づく電磁力が発生することは極めて周知の技術的事項である。当業者は、通常の技術常識および本明細書の記述から『フォースコイルを駆動するシステム(10)』の動作原理を容易に理解できると考える。さらに、本明細書の段落[0002]には、『本発明は、一般にフォースコイルの駆動に関し、より詳細には、広範囲の力の用途にわたって分解能、効率およびノイズを制御しながらフォースコイルを駆動するシステムおよび方法に関する。』と、段落[0008]には、『これらの力のいくつかを加えるための一従来技術は、リニアドライブまたはパルス幅変調(PWM)ドライブなどの単一ドライブによって駆動される単一フォースコイルの使用を含む。』と記載されている。
(3)引例1は・・『リニアモータ駆動装置』であり駆動するのはリニアモータである。このリニアモータを駆動するために3相Y結線の大推力用巻線21と3相独立巻線の小推力用巻線22の2通りの巻線が備えられている。請求項1の発明は、『フォースコイルを駆動するシステム(10)』であり、『リニアモータ駆動装置』は、請求項1の発明の『フォースコイルを駆動するシステム』から明確に構成、機能上相違していると考える。
・・・『コイル』と『巻線』は、技術的特徴が異なり、『巻線』は、『電気機器のコイルを形成する1回以上巻いた線』と説明されている。引例1には、全文にわたり用語『巻線』が使用され用語『コイル』は使用されていない。・・・引例1の『大推力用巻線』と『小推力用巻線』はリニアモータに巻かれた巻線であり、請求項1の『第1の粗フォースコイル』と『第2の微細フォースコイル』に対応付けられるものではない。」
イ.これらの主張について検討する。
まず、引用発明の「大推力発生時(粗動用)にのみ使用する3相Y結線の大推力用巻線21」及び「小推力発生時(微動用)にのみ使用する3相独立巻線の小推力用巻線22」は、リニアモータの「巻線」であって、請求人の主張によると「巻線」は、「電気機器のコイルを形成する1回以上巻いた線」であるので、構成上コイルと言えるものである。
さらに、リニアモータ2の推力を発生する巻線である以上、フレミングの左手の法則に基づく電磁力が発生するもので有ることが自明であるので、機能的にも電磁力、すなわちフォースを生ずるコイルといえる。
そうすると、請求人の主張は採用できるものではない。


4.本願発明の容易推考性の検討
(1)相違点1について
(a)平成26年4月8日付け拒絶理由通知書で、周知例1(特開平9-238031号公報)、周知例2(特開平4-161081号公報)、周知例3(特開2005-94460号公報)、周知例4(特開平8-242131号公報)を例示したように、微細駆動するための電流を供給するためにリニアドライブを用いることは、本願優先日前に周知の技術である。
さらに、周知例1に「【0002】・・小電流による駆動の場合にはリニア増幅制御が行われて高分解能の制御が可能になる。」ことが、高効率なPWM制御との比較として記載され、周知例2に「リニア制御においては・・・スイッチング性のノイズが存在しないため、発生ノイズが少ないという利点を有する。」(第2頁左下欄第3?8行)ことが、「電力損失が少ないという利点を有する。しかし、スイッチング性のノイズが存在するため、若干発生ノイズが大きいという欠点を有する。」(第2頁右下欄第1?6行)という特徴を有するPWM制御と比較する形で記載され、周知例3に「【0001】・・高速・高精度・高効率で駆動することが要求されるサーボ増幅器」において、「【0008】・・出力電流が小さいときは,リニア増幅動作」を用いるが、「出力電流が大きいときはPWM」を用いることが記載され、周知例4に「【0002】・・LA制御によるパワーアンプは、電流の分解能や線形性などがよく、高い制御性能を有するが、電力損失が大きく、効率が悪い。」が、「PWM制御によるパワーアンプは、損失が少なく高効率であるが、出力電流が小さい時に電流の脈動成分の割合が大きくなり、しかもパワー素子のスイッチング時のむだ時間(デッドタイム、遅れ時間など)により、高精度な電流制御が困難である。」ことが記載されているように、リニアドライブによる駆動が、本質的にスイッチングに起因するノイズや分解能の問題が存在せず、PWM駆動に比して分解能が要求される小電流駆動に適したものであることも従来から当業者に周知の事項である。
(b)一方、引用発明の小推力用巻線22は、高停止時精度/低振動な制御を意図して高キャリアPWMアンプで駆動されたものであるものの、PWMアンプで駆動する以上、当業者としては、本質的に周波数50?100kHzのキャリアに起因して発生する精度、振動の問題が存在していることが認識される。
(c)そうすると、引用発明の「駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現」する駆動手段として、本質的にスイッチングに起因するノイズや分解能の問題が存在せず、PWM駆動に比して分解能が要求される小電流駆動に適したものであるリニアドライブによる駆動を選択して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
上記(1)に記載した様に、リニアドライブによる駆動が、本質的にスイッチングに起因するノイズや分解能の問題が存在せずしないことは、従来から当業者に周知のことである。
そうすると、上記(1)の引用発明の「駆動電流をパワー素子122を介して、3相独立巻線の小推力用巻線22に供給し、高停止時精度/低振動な制御特性を実現」する駆動手段として、リニアドライブによる駆動を選択することにともなって、本願発明の相違点2に係る構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)請求人の主張について
ア.請求人は、審判請求書の【本発明が特許されるべき理由】において、
「(4)・・・周知例1-4は、いずれも請求項1の発明の『フォースコイルを駆動するシステム(10)』とは発明の対象と異なる。さらに、周知例1-4は、いずれも請求項1の発明の『第1の粗フォースコイル(14)』と『第2の微細フォースコイル(18)』に相当する構成を備えていない。 ・・・
引例1は・・・2つのPMW制御を切り替えるようにしたものである。当業者は、引例1に小推力特性に優れた独立結線と高キャリアPMWアンプのリニアモータ駆動装置を、どのような理由によりあえてリニアドライブに替えるのであろうか。たとえ、引例1にリニアドライブを適用しても、上述のように請求項1に記載の発明の特徴が容易に創作できるものではない。・・・引例1の発明は、周知例のリニアドライブ適用は全く考慮されていない。」
旨主張している。
イ.この主張について検討する。
まず、引用発明の高キャリアPWMアンプによる小推力用巻線22の駆動は、「高停止時精度/低振動な制御特性」を目的とするものである。
そして、上記(1)に記載した様に、周知のリニアドライブによる駆動が、本質的にスイッチングに起因するノイズや分解能の問題が存在せず、PWM駆動に比して分解能が要求される小電流駆動に適したものであることが当業者に認識されている事である以上、高停止時精度/低振動な制御特性をより向上する為に、リニアドライブによる駆動を採用することは、当業者が容易に想到し得た範囲内の事項と認められる。
そうすると、請求人の主張は採用できるものではない。

(4)総合判断
本願発明の効果は、引用発明、及び、本願優先日前に周知の技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び、本願優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、本願優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-01 
結審通知日 2015-12-02 
審決日 2015-12-16 
出願番号 特願2008-32923(P2008-32923)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 貴俊菊池 康博  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 中川 真一
松永 謙一
発明の名称 効率的な広いダイナミックレンジのコイル駆動用のシステムおよび方法  
代理人 山本 修  
代理人 西山 文俊  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小林 泰  

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