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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1314221
審判番号 不服2015-13731  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-21 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2013-517777「内燃機関の排気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/164722〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年6月2日を国際出願日とする出願であって、平成25年12月19日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成26年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成26年12月24日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成27年4月16日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年7月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年7月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年7月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年7月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年12月24日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし3を下記の(2)に示す請求項1及び2と補正するものである。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流の排気通路に設けられ、前記排気浄化触媒へ添加剤を供給する供給部と、
前記排気浄化触媒と前記供給部との間に設けられ、前記添加剤を分散させる分散部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記分散部は、前記排気通路の中心軸と同軸で中空の円筒形状となるように形成される筒部を備え、該筒部の内側に第一ガス流形成部が形成され、該筒部の外側に第二ガス流形成部が形成され、
前記第一ガス流形成部及び前記第二ガス流形成部は、該第一ガス流形成部を通過した第一のガス流と、該第二ガス流形成部を通過した第二のガス流と、が互いに干渉しあうように形成され、前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該第二ガス流形成部よりも該第一ガス流形成部のほうが、排気が通過するときの抵抗が大きくなるように、該第一ガス流形成部には前記筒部の内周面から前記筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成される内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流の排気通路に設けられ、前記排気浄化触媒へ添加剤を供給する供給部と、
前記排気浄化触媒と前記供給部との間に設けられ、前記添加剤を分散させる分散部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記分散部は、前記排気通路の中心軸と同軸で中空の円筒形状となるように形成される筒部と、該筒部を排気通路内に固定させる固定部と、該筒部の内側に設けられ排気の乱れを大きくするか又は排気を旋回させる部材と、を備え、
前記筒部と前記排気通路との間には排気が流通可能な空間が設けられており、
前記筒部の内側に該筒部の内周面から該筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成された第一ガス流形成部が形成され、前記筒部と前記排気通路との間であって排気が流通可能な前記空間に第二ガス流形成部が形成され、
前記第一ガス流形成部及び前記第二ガス流形成部は、該第一ガス流形成部を通過した第一のガス流と、該第二ガス流形成部を通過した第二のガス流と、が互いに干渉しあうように形成され、前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成される内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるか、又は排気通路の壁面と平行となるように形成される請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流の排気通路に設けられ、前記排気浄化触媒へ添加剤を供給する供給部と、
前記排気浄化触媒と前記供給部との間に設けられ、前記添加剤を分散させる分散部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記分散部は、前記排気通路の中心軸と同軸で中空の円筒形状となるように形成される筒部を備え、該筒部の内側に第一ガス流形成部が形成され、該筒部の外側に第二ガス流形成部が形成され、
前記第一ガス流形成部及び前記第二ガス流形成部は、該第一ガス流形成部を通過した第一のガス流と、該第二ガス流形成部を通過した第二のガス流と、が互いに干渉しあうように形成され、前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該第二ガス流形成部よりも該第一ガス流形成部のほうが、排気が通過するときの抵抗が大きくなるように、該第一ガス流形成部には前記筒部の内周面から前記筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成され、
前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成される内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流の排気通路に設けられ、前記排気浄化触媒へ添加剤を供給する供給部と、
前記排気浄化触媒と前記供給部との間に設けられ、前記添加剤を分散させる分散部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記分散部は、前記排気通路の中心軸と同軸で中空の円筒形状となるように形成される筒部と、該筒部を排気通路内に固定させる固定部と、該筒部の内側に設けられ排気の乱れを大きくするか又は排気を旋回させる部材と、を備え、
前記筒部と前記排気通路との間には排気が流通可能な空間が設けられており、
前記筒部の内側に該筒部の内周面から該筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成された第一ガス流形成部が形成され、前記筒部と前記排気通路との間であって排気が流通可能な前記空間に第二ガス流形成部が形成され、
前記第一ガス流形成部及び前記第二ガス流形成部は、該第一ガス流形成部を通過した第一のガス流と、該第二ガス流形成部を通過した第二のガス流と、が互いに干渉しあうように形成され、前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成され、
前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成される内燃機関の排気浄化装置。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1の記載に「前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成され(る)」との記載を追加するものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「第二ガス流形成部」の構成について、「前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成され(る)」ことを限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項に限定を付加したものであるとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1) 刊行物
(1-1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-108726号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、還元剤を排ガスに添加し当該排ガス中の窒素酸化物を還元して当該排ガスを浄化する排ガス浄化装置に関し、特にディーゼルエンジンやガスエンジンなど内燃機関から排出される排ガスや、廃棄物を焼却したり溶融したりする炉から排出される排ガス中の窒素酸化物を還元して排ガスを浄化する場合に適用すると有効である。」(段落【0001】)

(イ) 「【0032】
[第一の実施形態]
本発明に係る排ガス浄化装置の第一の実施形態につき図1?5を用いて説明する。
図1は排ガス浄化装置の概略構成図である。図2は図1の排ガス浄化装置の旋回翼の模式図である。図3は選択還元触媒の入口側におけるアンモニアの濃度分布を示す図であり、図3(a)に排ガスダクトに攪拌部材を設置していない場合を示し、図3(b)に排ガスダクト内に設置した攪拌部材と還元触媒の距離を500mmとした場合を示し、図3(c)に排ガスダクト内に設置した攪拌部材と還元触媒の距離を2000mmとした場合を示す。図4は攪拌部材の配置による還元剤質量流量の標準偏差を示すグラフである。図5は排ガス流量と還元剤質量流量の標準偏差との関係を示すグラフである。なお、図3において、ドットの濃淡は還元剤質量流量(kg/s)の標準偏差の大小を示す。
【0033】
本実施形態に係る排ガス浄化装置は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン、ガスエンジンなどの内燃機関で燃料が燃焼されて排気される窒素酸化物含有の排ガス、廃棄物焼却炉や廃棄物溶融炉などから排気される窒素酸化物含有の排ガスの浄化処理に利用される。
【0034】
上述した排ガス浄化装置10は、図1に示すように、排ガス1が流通する排ガスダクト11と、排ガスダクト11内に還元剤である尿素水12を噴霧する尿素噴霧ノズル(還元剤添加手段)13と、排ガスダクト11内に配置され、尿素水12が排ガス1中の水と反応してなるアンモニアによって排ガス1中の窒素酸化物を窒素に還元して排ガスを浄化する選択型還元触媒(以下、SCR触媒と称す)14とを有する装置である。排ガスダクト11は、排ガス1の導入側と排ガス2の排出側にて円筒状の小径部11a,11bをなし、これら小径部11a,11bの間にて小径部11a,11bよりも径が大きく排ガス流通方向に対する断面で四角形状の大径部11cをなしており、小径部11a,11bと大径部11cとが接続部11d,11eにて接続されている。排ガスダクト11において、排ガス1の導入側の小径部11aには尿素噴霧ノズル13が配置され、大径部11cにはSCR触媒14が複数(図1中では二段二列(四個))配置されている。なお、SCR触媒14としては、ハニカム形状のものなどが挙げられる。
【0035】
上述した排ガスダクト11内には、尿素噴霧ノズル13とSCR触媒14との間に位置して攪拌部材15が配置される。よって、上述した排ガスダクト11においては、排ガス流通方向上流側から、尿素噴霧ノズル13、攪拌部材15、SCR触媒14の順序にて配置される。旋回部材15は、例えば図2に示すように、軸体16の周面16aに旋回翼17が複数取り付けられたものが挙げられる。ただし、旋回翼17は、排ガス流通方向に対して所定の角度θ傾斜するように配置されている。この攪拌部材15により排ガス1に旋回流れが付与される。」(段落【0032】ないし【0035】)

(ウ) 「【0052】
[第三の実施形態]
本発明に係る排ガス浄化装置の第三の実施形態につき図7を用いて説明する。
図7は、排ガス浄化装置の概略構成図であり、(a)がその側面図であり、(b)が(a)におけるVII-VII線断面矢視図である。
【0053】
本実施形態に係る排ガス浄化装置は、上述した第一の実施形態に係る排ガス浄化装置の攪拌部材の支持構造を変えたものであり、それ以外は同じ構成を有する。
本実施形態に係る排ガス浄化装置において、上述した第一の実施形態に係る排ガス浄化装置と同一機器には同一符号を付記しその説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る排ガス浄化装置30は、図7に示すように、排ガスダクト11の小径部11a内に第1,第2の支持部材31,32により攪拌部材35が取り付けられる。すなわち、攪拌部材35は、軸体36と、軸体36の周面に基端側が取り付けられた複数の旋回翼37を有するものである。旋回翼37の先端側に円筒状の第1の支持部材31が取り付けられる。第1の支持部材31は第2の支持部材32により排ガスダクト11の小径部11aに取り付けられる。よって、排ガスダクト11の小径部11aと攪拌部材35との間に隙間Sが介在することとなる。
【0055】
したがって、本実施形態に係る排ガス浄化装置30によれば、上述した第一および第二の実施形態と同様な作用効果を奏する他、攪拌部材35が、排ガスダクト11の小径部11aとの間に隙間Sを有するように排ガスダクト11に第1,第2の支持部材31,32を介して支持されていることで、攪拌部材35と排ガスダクト11の接触面積を減らすことができ、排ガスダクト11への放熱による攪拌部材35の温度低下が無くなり、攪拌部材35に尿素や副反応性生成であるシアヌル酸など析出物の固着を防止できる。
【0056】
なお、本実施形態では、第1,第2の支持部材31,32により攪拌部材35を排ガスダクト11に取り付けた排ガス浄化装置30を用いて説明したが、例えば、図8に示すように、攪拌部材35と排ガスダクト11の小径部11aとの間に熱伝導の小さい材料である断熱材(例えばセラミックやガラスなどのタイルやウールなど)41を配置することも可能である。このような構成の排ガス浄化装置であっても、排ガスダクトへの放熱による攪拌部材の温度低下が断熱材により抑制され、攪拌部材への還元剤などの固着を防止できる。」(段落【0052】ないし【0056】)

イ 刊行物1発明
上記ア及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

<刊行物1発明>
「内燃機関の排ガスダクト11に設けられる選択型還元触媒14と、
前記選択型還元触媒14よりも上流の排ガスダクト11に設けられ、前記選択型還元触媒14へ尿素水12を噴霧する尿素噴霧ノズル13と、
前記選択型還元触媒14と前記尿素噴霧ノズル13との間に設けられ、前記尿素水12を攪拌する攪拌部材35と、
を備える内燃機関の排ガス浄化装置において、
前記攪拌部材35は、前記排ガスダクト11の中心軸と同軸で中空の円筒状となるように形成される第1の支持部材31を備え、該第1の支持部材31の内側に内側ガス流形成部が形成され、該第1の支持部材31の外側に外側ガス流形成部が形成され、
前記内側ガス流形成部に形成される排ガスの通路の断面積が、前記外側ガス流形成部に形成される排ガスの通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該内側ガス流形成部には前記第1の支持部材31の内周面から前記第1の支持部材31の中心軸に向かって延びる複数の旋回翼37が形成される内燃機関の排ガス浄化装置。」

(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、刊行物1発明における「排ガスダクト11」は本願補正発明における「排気通路」に相当し、以下同様に、「選択型還元触媒14」は「排気浄化触媒」に、「尿素水12」は「添加剤」に、「噴霧する」は「供給する」に、「尿素噴霧ノズル13」は「供給部」に、「攪拌する」は「分散させる」に、「攪拌部材35」は「分散部」に、「排ガス浄化装置」は「排気浄化装置」に、「円筒状」は「円筒形状」に、「第1の支持部材31」は「筒部」に、「内側ガス流形成部」は「第一ガス流形成部」に、「外側ガス流形成部」は「第二ガス流形成部」に、「排ガス」は「排気」に、「旋回翼37」は「板」に、それぞれ相当する。
したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流の排気通路に設けられ、前記排気浄化触媒へ添加剤を供給する供給部と、
前記排気浄化触媒と前記供給部との間に設けられ、前記添加剤を分散させる分散部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記分散部は、前記排気通路の中心軸と同軸で中空の円筒形状となるように形成される筒部を備え、該筒部の内側に第一ガス流形成部が形成され、該筒部の外側に第二ガス流形成部が形成され、
前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該第一ガス流形成部には前記筒部の内周面から前記筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成される内燃機関の排気浄化装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、「前記第一ガス流形成部及び前記第二ガス流形成部は、該第一ガス流形成部を通過した第一のガス流と、該第二ガス流形成部を通過した第二のガス流と、が互いに干渉しあうように形成され、前記第一ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積が、前記第二ガス流形成部に形成される排気の通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該第二ガス流形成部よりも該第一ガス流形成部のほうが、排気が通過するときの抵抗が大きくなるように、該第一ガス流形成部には前記筒部の内周面から前記筒部の中心軸に向かって延びる複数の板が形成され、
前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成される」のに対し、
刊行物1発明においては、「前記内側ガス流形成部に形成される排ガスの通路の断面積が、前記外側ガス流形成部に形成される排ガスの通路の断面積よりも大きくなるように形成され、且つ、該内側ガス流形成部には前記第1の支持部材31の内周面から前記第1の支持部材31の中心軸に向かって延びる複数の旋回翼37が形成される」点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
内燃機関の排気浄化装置において、排気通路に供給される尿素水が排気通路の内壁に付着して析出ないし堆積し、それにより排気浄化率の低下等の不具合が生じ得ることは、例えば、特開2010-14083号公報(特に、段落【0002】)、特開2010-121488号公報(特に、段落【0003】)に記載されているように技術常識である。
刊行物1発明においても、内側ガス流形成部から流出する排ガスをみると、旋回翼37によって旋回流れとなって排ガスダクト11の壁面に向かう速度成分を有するから、該壁面への尿素水の付着等が起こり得ることは上述したとおりである。ただ、刊行物1発明においてはさらに外側ガス流形成部が形成されており、該外側ガス流形成部から排ガスが排ガスダクト11の壁面に沿って流出している。この該壁面に略平行に流出する排ガスによって、内側ガス流形成部から旋回流れとなって流出する排ガスが該壁面に向かうことが抑制されることは明らかである。このような抑制効果は、外側ガス流形成部から壁面に略平行に流出する排ガスが、内側ガス流形成部から流出する排ガスを外側から押さえ込むように、すなわち排ガスダクト11の中心軸方向に向かって流れることにより一層向上することはいうまでもない。そして、内側ガス流形成部には複数の旋回翼37が形成されており、該旋回翼37が形成されていない外側ガス流形成部より排ガス流に対する抵抗を大きくすることができるから、この抵抗の差に起因して発生し得る速度差を利用して、外側ガス流形成部から流出する排ガスが排ガスダクト11の中心軸方向に向かって流れるようにすることは、内側ガス流形成部から旋回流れとなって流出する排ガスが該壁面に向かうことを抑制するという観点からみて、至極妥当な合理的設計であり、当業者であれば適宜なし得ることである。
さらに、刊行物1の特に段落【0053】、図2及び図7をみると、旋回翼37によって内側ガス流形成部の排ガス流には相当程度の抵抗が作用し得ると認められる。その構成は、該抵抗によって外側ガス流形成部から流出する排ガスが排ガスダクト11の中心軸方向に向かって流れるという構成に適合的・親和的であり、該抵抗を適宜調整して、外側ガス流形成部から流出する排ガスが排ガスダクト11の中心軸方向に向かって流れるようにすることに特段の技術的困難性はない。
以上を総合すると、刊行物1発明に基づいて、相違点に係る本願補正発明の特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年7月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成26年12月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、そのうち、本願の請求項1に記載した発明(以下、「本願発明」という。)の特許請求の範囲は、上記第2[理由]1(1)に記載したとおりである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1には、図面とともに、上記第2[理由]3に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本願補正発明から「前記第二ガス流形成部は、該第二ガス流形成部を通過する排気の流れ方向が、前記排気通路の中心軸側に向かう方向となるように形成され(る)」という発明特定事項を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]3に述べたとおり、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物1発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-15 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-03-18 
出願番号 特願2013-517777(P2013-517777)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤間 充  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 梶本 直樹
伊藤 元人
発明の名称 内燃機関の排気浄化装置  
代理人 小久保 篤史  
代理人 今堀 克彦  
代理人 川口 嘉之  
代理人 平川 明  
代理人 関根 武彦  
代理人 宮下 文徳  
代理人 世良 和信  

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