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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01B
管理番号 1314222
審判番号 不服2015-16426  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-07 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2014-120858「農作業機の情報給電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-158506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年4月23日に出願した特願2010-99716号(以下「原出願」という。)の一部を、平成26年6月11日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成27年5月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正がなされたものである。



第2 平成27年9月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年9月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


[理由]

1 補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正する内容を含んでおり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。


本件補正前(平成27年5月13日付け手続補正書)

「【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行い前記トラクタと脱着可能な作業機と、前記トラクタ側に設置される送信部と、前記作業機に設置される受信部と、前記作業機に設置されるアクチュエータと、前記作業機に設置される蓄電部とを有し、
前記送信部は、トラクタ後部に備えられ前記作業機と脱着を可能とする連結装置の近傍に設置され、前記受信部は、前記作業機に備えられ前記連結装置と脱着するための連結器具の近傍に設置され、
前記送信部は送電用電磁波と操作信号用電波を送信し、前記受信部は前記送電用電磁波と前記操作信号用電波を受信し、
前記送電用電磁波はトラクタが有するバッテリーからの電力が変換され、前記送電用電磁波から変換された電力が前記蓄電部に蓄えられ前記アクチュエータの電力として供給できることを特徴とする農作業機の情報給電システム。」


本件補正後(平成27年9月7日付け手続補正書)

「【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行い前記トラクタと脱着可能な作業機と、前記トラクタ側に設置され交流を発生させる送信システム部と、前記トラクタ側に設置され一次側コイル及び操作信号用電波送信のためのデバイスを備える送信部と、前記作業機に設置され二次側コイル及び操作信号用電波受信のためのデバイスを備える受信部と、前記作業機に設置され整流を行う受信システム部と、前記作業機に設置されるアクチュエータと、前記作業機に設置される蓄電部とを有し、
前記送信部は、トラクタ後部に備えられ前記作業機と脱着を可能とする連結装置の近傍に設置され、前記受信部は、前記作業機に備えられ前記連結装置と脱着するための連結器具の近傍に設置され、
前記送信部は送電用電磁波と操作信号用電波を送信し、前記受信部は前記送電用電磁波と前記操作信号用電波を受信し、
前記送電用電磁波はトラクタが有するバッテリーからの電力が変換され、前記送電用電磁波から変換された電力が前記蓄電部に蓄えられ前記アクチュエータの電力として供給できることを特徴とする農作業機の情報給電システム。」(下線は、補正箇所を示す。)。


2 補正の目的及び新規事項の追加の有無

本件補正の請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「農作業機の情報給電システム」に関して、「トラクタ側に設置され交流を発生させる送信システム部」及び「作業機に設置され整流を行う受信システム部」を有するものに限定し、また、「送信部」に関して、「一次側コイル及び操作信号用電波送信のためのデバイスを備える」構成に限定し、「受信部」に関して、「二次側コイル及び操作信号用電波受信のためのデバイスを備える」構成に限定したものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。


3 独立特許要件について

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1に記載された発明

原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-14363号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は農耕用移動車輛と、該農耕用移動車輛の後部に装着装置を介して付設した作業機との間で、制御の為の信号を伝達する機構に関する。」

(1-b)「【0002】
【従来の技術】従来から、トラクタ等の農耕用移動車輛の後部に、ロータリー耕耘装置等の作業機を付設し、該作業機の耕深制御や左右傾斜制御等の為に、両者の間にハーネスやケーブルを介装して、信号を伝達する技術は公知とされているのである。また、クイック装着装置により作業機を装着可能とし、該装着装置の部分に、結合状態で信号が伝達可能なように、接触式の信号伝達結合機構を構成する技術も公知とされているのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、該従来の技術の場合において、ハーネスやケーブルにより信号を伝達する場合には、クイック装着装置により作業機を装着しても、その後でオペレーターが降車して、再度ハーネスやケーブルを接続する必要があり、また後者の場合には、接触連結装置の部分が、農耕用移動車輛の振動により断絶状態を繰り返すことにより、信号の伝達性能が低下するという不具合があったのである。本発明は以上の不具合を解消すべく、ハーネスやケーブルを介装することなく、また接触式の伝達装置を構成する必要の無いように、コードレス信号伝達装置を提供するものである。」

(1-c)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明が解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。即ち、農耕用移動車輛と対地作業を行う作業機との間を、ハーネス又はケーブル等を使用することなく、コードレス信号伝達手段を用いて、双方向の信号の伝達を行うものである。

(1-d)「【0010】
【実施例】次に実施例を説明する。図1は農耕用移動車輛としてのトラクタTの後部に、作業機としてロータリー耕耘装置Rを付設し、両者の装着部に、本機側信号伝達装置2と、作業機側信号伝達装置1を向かい合った状態に配置した側面図、図2は作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2の部分の拡大側面断面図、図3はコードレス信号伝達装置に不具合が発生した場合に、応急的に農耕用移動車輛と作業機を連結する応急中間ハーネスを用意した状態の斜視図、図4は本発明のコードレス信号伝達装置のコントローラ4と本機側信号伝達装置2と作業機側信号伝達装置1とDCモーター5との間の信号の移動を示すブロック線図、図5は信号毎に送受信を行う場合のシステムブロック図、図6はデータをシリアルに送受信する場合のシステムブロック線図である。」

(1-e)「【0011】図1において説明する。トラクタTとロータリー耕耘装置Rをクイック装着装置により連結している。最近のロータリー耕耘装置Rには耕深センサー7と、耕耘カバー回動センサー6等のアナログセンサーが搭載されており、これらのセンサーからの信号を、トラクタTの側のコントローラ4に伝達して、コントローラ4において比較演算制御し、再度指令信号として、ロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5に送信する必要があるのである。
【0012】本発明においては、作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2とを、クイック装着装置の部分に、殆ど接触する程に近い位置に配置しているのである。。即ち、トラクタ側ヒッチ8とロータリ側ヒッチ9が装着した状態で向かい合う位置に、本機側信号伝達装置2と作業機側信号伝達装置1が付設されている。両者は、殆ど接近して配置されているが、ハーネスやケーブルにより連結されるのではなくて、コードレス状態で電波により信号の伝達が行われている。そして、電波による信号の空中伝送時において、ノイズの影響を受け難いように、デジタル信号として送信している。
【0013】そして作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2との離れた距離は、0mmから可能としており、両者の絶縁皮膜同士が接触しても良いように構成しているのである。そして該クイック装着装置の寸法精度は必ずしも正確に出す必要がないように、作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2が接触しても、離れても何方でも、信号がコードレス状態で伝達可能としているのである。該作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2とを弾性体により支持し、両者が接当した状態でも、誤差を吸収すべく構成している。
【0014】また本機側に搭載したバッテリーから作業機への電源の供給方法は、電波によることなく、接触式の信号伝達手段とするか、または、ロータリー耕耘装置Rの側にバッテリーを載置したり、太陽電池を配置して独自の電源手段を具備しても良いものである。次に図2と図3において説明する。図2においては、パッケージの中に、送信器と送信アンテナを封入し、受信器と受信アンテナを封入し、外周を絶縁物質により被覆した実施例が図示されている。この場合には、外装表面の絶縁物質が接触する0mmから、離れた状態の30mmまで使用可能としている。」

(1-f)「【0018】作業機側信号伝達装置1からは2ヶのリレー11・11を介して、DCモーター5に信号が伝達されて、該DCモーター5により、耕耘カバー調節シリンダ10が伸縮し、耕耘カバーが前後に回動する。また該DCモーター5の回転により耕耘カバー調節シリンダ10が前後動するのを検出する回動センサー6と、リアカバー11が上下する信号を検出する耕深センサー7とが設けられている。該構成において、農耕用移動車輛と対地作業を行う作業機との間を、ハーネス又はケーブル等を使用することなく、コードレス信号伝達手段を用いて、双方向の信号の伝達を行うのである。また、コードレス信号伝達装置において、少なくともアナログ信号の伝達をも含み、該アナログ信号とは少なくとも当該信号伝達装置に入力される時点での信号形態がアナログ信号であることを含み、空中を伝送する際にデジタル信号に変換されるものも含むのである。
【0019】電源電圧は、何れも12V(8?15V)のバッテリーにより供給される。受信側はDC5V±10%(三端子レギュレータ)が入るが、これは電圧変化を検出し、補正する為の電圧信号である。作業機側信号伝達装置1の作業機からの有線入力信号は、回動センサー6と耕深センサー7のポテンショメータからの信号であり、1.35?3.80V(全抵抗値1Kオーム±20%)である。作業機側信号伝達装置1から作業機への有線出力信号は、回動センサー6と耕深センサー7のポテンショメータへの電源用電圧DC5Vと、リレー12のソレノイド駆動電圧DC12Vである。また作業機側信号伝達装置1の本機側信号伝達装置2からの無線入力信号は、リレー12を操作するソレノイド駆動信号で、2チャンネルが送信されるが同時ON信号は無い。作業機側信号伝達装置1から本機側信号伝達装置2への無線出力信号は、回動センサー6と耕深センサー7のポテンショメータ信号2チャンネル、及びポテンショメータ電源用電圧DC5Vである。」

(1-g)「【0024】また、図5と図6において図示する如く、作業機側信号伝達装置1と外部電源との間に、大型のコンデンサ又は電池15を介装して、電源安定装置を構成している。該作業機側信号伝達装置1のDC12V電源は、接触式の電源供給装置によりトラクタTの側から供給されたり、ロータリー耕耘装置Rの側に配置されたバッテリーにより供給されるが、振動等により瞬間停電が発生する場合があるので、このような場合には、大型のコンデンサ又は電池15により電源を安定させるのである。」

(1-h)「【0025】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。即ち、請求項1の如く、農耕用移動車輛と対地作業を行う作業機との間を、ハーネス又はケーブル等を使用することなく、コードレス信号伝達手段を用いて、双方向の信号の伝達を行うことにより、作業機とトラクタTとを連結する際において、両者の間に制御の為に介装されるハーネスやケーブルを連結する必要がなく、脱着の際において、外し忘れによりハーネスやケーブルを切断する恐れが無くなったのである。」

(1-i)上記(1-e)の「本機側に搭載したバッテリーから作業機への電源の供給」との記載における、「本機」、「作業機」が、それぞれ、「トラクタ」、「ロータリー耕耘装置」のことを指すことは明らかである。

(1-j)上記(1-e)の「指令信号として、ロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5に送信」における「指令信号」は、上記(1-a)の「本発明は農耕用移動車輛と、該農耕用移動車輛の後部に装着装置を介して付設した作業機との間で、制御の為の信号を伝達する機構に関する。」との記載を踏まえると、ロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5の制御の為の信号であることは明らかである。

(1-k)上記(1-d)の「図2は作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2の部分の拡大側面断面図」との記載、及び、上記(1-e)の「図2においては、パッケージの中に、送信器と送信アンテナを封入し、受信器と受信アンテナを封入し、外周を絶縁物質により被覆した実施例が図示されている。」、「この場合には、外装表面の絶縁物質が接触する0mmから、離れた状態の30mmまで使用可能としている。」との記載を踏まえて図2を見ると、作業機側信号伝達装置1と本機側信号伝達装置2は、中に送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナが封入され、外周を絶縁物質により被覆したパッケージからなることが見てとれる。

(1-l)上記(1-e)の「トラクタ側ヒッチ8とロータリ側ヒッチ9が装着した状態で向かい合う位置に、本機側信号伝達装置2と作業機側信号伝達装置1が付設されている。」との記載を踏まえて図1を見ると、作業機側信号伝達装置1がロータリ側ヒッチ9の表面に配置されており、本機側信号伝達装置2がトラクタ側ヒッチ8の表面に配置されていることが見てとれる。


上記した摘記事項及び図示内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「トラクタとクイック装着装置により連結しているロータリー耕耘装置と、ロータリ側ヒッチ9の表面に配置され、電波によりロータリー耕耘装置の側のDCモーター5の制御の為の信号の伝達を行い、中に送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナが封入され、外周を絶縁物質により被覆したパッケージからなる作業機側信号伝達装置1と、トラクタ側ヒッチ8の表面に配置され、電波によりロータリー耕耘装置の側のDCモーター5の制御の為の信号の伝達を行い、中に送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナが封入され、外周を絶縁物質により被覆したパッケージからなる本機側信号伝達装置2と、ロータリー耕耘装置の側のDCモーター5と、トラクタ側に搭載したバッテリーからロータリー耕耘装置への電源の供給を行う接触式の信号伝達手段とを備えた作業機の制御及び給電信号伝達機構。」

(2)刊行物2に記載された技術事項

原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である実願平3-88583号(実開平6-48347号)のCD-ROM(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(2-a)「 「産業上の利用分野」
本考案は、電磁波を用いて非接触で電力を伝送し充電する装置に関するもので、伝送周波数を高くすることにより装置の小型化と伝送効率の向上を計り、しかも電力と同時にその制御指令信号などの情報信号やクロック周波数も伝送出来るものである。」(第3頁第2行?6行)

(2-b)「 「考案の目的」
本考案の目的は、固定部と運動部とを有するNC工作機械、ロボット装置、搬送装置、その他諸種の自動機械や車両とか飛しょう体などの移動を伴う機械装置において、その運動部とか移動部で必要とするモータ駆動用や電熱機器などの比較的大電力を、固定部から非接触で伝送させた充電電力により動作させ、あるいは更にその電力伝送と同時に運動部に対する制御指令などの情報信号やクロック周波数等を固定部から非接触で伝送することのできる小型高効率の電力伝送制御装置を提供することにある。」(第3頁第17行?24行)

(2-c)「 「考案の構成」
本考案に係る装置は、固定部と運動部とを有する機械装置にそれぞれ配備した能動用および受動用の複数のモジュールから構成されている。
例えば機械装置の固定部に設置された能動用モジュールの電子回路により電灯線や発電装置などの配電設備あるいは発電素子等の電源から供給される電力を、商用周波数以上の交流に変換して送信ヘッドから電磁波として放射させる。これを電磁誘導作用により運動部に設置した受動用モジュールの受信ヘッドにより受電させ、この受電々力により受動用モジュールの各回路を直接動作させたり、あるいは2次電池に一旦充電したのち受動用モジュールまたはそれ以外の所定の電力負荷に対して供給するものである。」(第4頁第12行?21行)

(2-d)「 「考案の実施例」
第1図は単に電力のみ、または電力と特定の周波数を伝送したい場合における実施例で、図においてAは固定部の能動用モジュールを、またBは運動部の受動用モジュールを示すブロックダイアグラムである。
能動電子部品などによるって構成されたパワー発振回路1の出力を能動用モジュールの磁気コア2に巻かれた送信コイル3に印加することにより、受動用モジュールの磁気コア4と前記磁気コア2との電磁誘導作用により磁気コア4に巻かれた受信コイル5には当該周波数の電力が誘導されるので、その電力の一部を整流平滑回路6によって直流化し、直流/交流変換回路7によって交流に変換して出力8を得る。
この場合、受動用モジュールに要求される負荷用の出力が直流でよければそのまゝ出力すればよい。また送信コイルと受信コイルとの空隙を、伝送する周波数に対して適切な透磁率を持つ磁性流体または磁性粉体などの流動性磁性体を充填するように介在させることにより電力の伝送効率を高めることができる。
更に、パワー発振回路1の発振周波数を運動部で必要な周波数の整数倍にしておけば、受信コイル5に誘起された電力の他の一部を逓倍または逓減することなどにより必要な周波数を得ることができる。」(第6頁第4行?20行)

(2-e)「さらに運動部の出力は2次電池が付加されることにより移動中においても電圧などの安定化がはかれる。」(第7頁第23、24行)


上記した摘記事項からみて、刊行物2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2技術」という。)。

「諸種の自動機械や車両とか飛しょう体などの移動を伴う機械装置において、モータ駆動用の比較的大電力を非接触で伝送する技術であって、パワー発振回路の出力を磁気コアに巻かれた送信コイルに印加することにより、電磁誘導作用により受動用モジュールの磁気コアに巻かれた受信コイルに電力が誘導され、その電力の一部を整流平滑回路によって直流化し、2次電池に一旦充電したのち電力負荷に対して供給すること。」

(3)対比

本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明における「トラクタ」、「ロータリー耕耘装置」は、それぞれ、本願補正発明の「トラクタ」、「作業機」に相当し、刊行物1発明における「ロータリー耕耘装置」は、「農作業を行」うためのものであることが明らかであり、「トラクタ」と「連結」、「脱着」されるもの(上記(1)(1-h)を参照)なので、刊行物1発明の「トラクタとクイック装着装置により連結しているロータリー耕耘装置」は、本願補正発明の「トラクタに装着して農作業を行い前記トラクタと脱着可能な作業機」に相当する。

イ 刊行物1発明における「作業機側信号伝達装置1」は、「受信器と受信アンテナ」を備えるので、本願補正発明の「受信部」に相当し、同様にして、「本機側信号伝達装置2」は、「送信器と送信アンテナ」を備えるので、「送信部」に相当する。

ウ 刊行物1発明における「(ロータリー耕耘装置の側のDCモーター5の)制御の為の信号」は本願補正発明の「操作信号」に相当し、「作業機側信号伝達装置1」及び「本機側信号伝達装置2」が「電波により」「制御の為の信号の伝達を行」うものであることから、刊行物1発明における「送信器と送信アンテナ」及び「受信器と受信アンテナ」は、それぞれ、本願補正発明における「操作信号用電波送信のためのデバイス」及び「操作信号用電波送信のためのデバイス」に相当する。

エ 上記イ及びウから、刊行物1発明における「ロータリ側ヒッチ9の表面に配置され、電波によりロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5の制御の為の信号の伝達が行われ、中に送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナが封入され、外周を絶縁物質により被覆したパッケージからなる作業機側信号伝達装置1」は、本願補正発明における「作業機に設置され二次側コイル及び操作信号用電波受信のためのデバイスを備える受信部」と、「作業機に設置され操作信号用電波受信のためのデバイスを備える受信部」で共通し、同様にして、「トラクタ側ヒッチ8の表面に配置され、電波によりロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5の制御の為の信号の伝達が行われ、中に送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナが封入され、外周を絶縁物質により被覆したパッケージからなる本機側信号伝達装置2」は、「トラクタ側に設置され一次側コイル及び操作信号用電波送信のためのデバイスを備える送信部」と、「トラクタ側に設置され操作信号用電波送信のためのデバイスを備える送信部」で共通する。

オ 刊行物1発明における「ロータリー耕耘装置の側のDCモーター5」は、「DCモーター5」により「耕耘カバー調節シリンダ10が伸縮し、耕耘カバーが前後に回動する」(上記(1-f)を参照。)ことから、アクチュエータとして機能しているので、本願補正発明における「作業機に設置されるアクチュエータ」に相当する。

カ 刊行物1発明における「作業機側信号伝達装置1」は、「ロータリ側ヒッチ9の表面に配置され」ることから、「作業機に備えられ前記連結装置と脱着するための連結器具の近傍に設置され」るといえる。また、「本機側信号伝達装置2」は、「トラクタ側ヒッチ8の表面に配置され」ることから、「トラクタ後部に備えられ前記作業機と脱着を可能とする連結装置の近傍に設置され」るといえる。

キ 上記エから、刊行物1発明における「作業機側信号伝達装置1」が「操作信号用電波を受信」するものであり、「本機側信号伝達装置2」が「操作信号用電波を送信」するものであることは明らかである。

ク 刊行物1発明において「トラクタ側に搭載したバッテリーからロータリー耕耘装置への電源の供給を行う接触式の信号伝達手段」を備えることは、「供給」された「電源」が「ロータリー耕耘装置の側のDCモーター5」の電力供給に用いられることは明らかなので、本願補正発明の「送電用電磁波はトラクタが有するバッテリーからの電力が変換され、前記送電用電磁波から変換された電力が前記蓄電部に蓄えられ前記アクチュエータの電力として供給できる」と、「トラクタが有するバッテリーからの電力がアクチュエータの電力として供給できる」点で共通する。

ケ 刊行物1発明における「作業機の制御及び給電信号伝達機構」は、「ロータリー耕耘装置Rの側のDCモーター5の制御の為の信号の伝達」及び「トラクタ側に搭載したバッテリーからロータリー耕耘装置への電源の供給」を行うものなので、本願補正発明の「農作業機の情報給電システム」に相当する。

コ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、

「トラクタに装着して農作業を行い前記トラクタと脱着可能な作業機と、前記トラクタ側に設置され操作信号用電波送信のためのデバイスを備える送信部と、前記作業機に設置され操作信号用電波受信のためのデバイスを備える受信部と、前記作業機に設置されるアクチュエータとを有し、前記送信部は、トラクタ後部に備えられ前記作業機と脱着を可能とする連結装置の近傍に設置され、前記受信部は、前記作業機に備えられ前記連結装置と脱着するための連結器具の近傍に設置され、前記送信部は操作信号用電波を送信し、前記受信部は操作信号用電波を受信し、トラクタが有するバッテリーからの電力がアクチュエータの電力として供給できる農作業機の情報給電システム。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]:「アクチュエータの電力」を「供給」するための構成に関して
本願補正発明は、「トラクタ側に設置され交流を発生させる送信システム部」、「送信部」が「備える」「一次側コイル」、「受信部」が「備える」「二次側コイル」、「作業機に設置され整流を行う受信システム部」、「作業機に設置される蓄電部」を有し、「送信部」が「送電用電磁波」を送信し、「受信部」が「送電用電磁波」を受信し、「送電用電磁波はトラクタが有するバッテリーからの電力が変換され、前記送電用電磁波から変換された電力が前記蓄電部に蓄えられ」るのに対して、
刊行物1発明は、「接触式の信号伝達手段」を備える点。

(4)判断

上記相違点について検討する。

ア 刊行物2には、上記3(2)で認定したとおりの刊行物2技術が記載されている。

イ 刊行物1発明と刊行物2技術とは、ともに機械装置において電力を伝送する技術に関する点で共通していることに加え、原出願の出願日において、無線により給電を行うことが、例示するまでもなく様々な分野で実施されており、汎用性が高い一般的な技術であったことを踏まえると、刊行物1発明において、「トラクタ側に搭載したバッテリーからロータリー耕耘装置への電源の供給を行う」ための構成として、「接触式の信号伝達手段」に換えて、刊行物2技術の、パワー発振回路、磁気コアに巻かれた送信コイル、磁気コアに巻かれた受信コイル、整流平滑回路からなる非接触で給電する構成を用いるようにすることは、当業者であれば容易に着想することといえ、刊行物1において、「作業機側信号伝達装置1と外部電源との間に、大型のコンデンサ又は電池15を介装して、電源安定装置を構成している。該作業機側信号伝達装置1のDC12V電源は、接触式の電源供給装置によりトラクタTの側から供給されたり、ロータリー耕耘装置Rの側に配置されたバッテリーにより供給されるが、振動等により瞬間停電が発生する場合があるので、このような場合には、大型のコンデンサ又は電池15により電源を安定させるのである。」(上記(1)(1-g)を参照。)と給電が途切れる場合に備えて電源を安定させる課題が挙げられていることから、刊行物2技術において非接触給電に係る構成と共に用いられている2次電池を用いることも当業者にとって容易である。

ウ そして、その際に、これらをどこに設置するかは当業者が適宜決定する事項にすぎないところ、トラクタ側に搭載したバッテリーからロータリー耕耘装置へ電力を供給するためには、パワー発振回路をトラクタ側に設置し、整流平滑回路及び2次電池を作業機に設置することは当業者にとって自然なことである。

エ また、トラクタとロータリー耕耘装置との間では、制御の為の信号(電波)と給電信号(電磁波)の二つの信号が伝送されることになるところ、制御の為の信号の伝送に係る部材(送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナ)と給電信号の伝送に係る部材(磁気コアに巻かれた送信コイル、磁気コアに巻かれた受信コイル)の配置に関しては、両部材を別々に配置するか集約して配置するかの二通りが想定されるが、複数の部材を用いて複数種類の信号を伝送する場合に、伝送に係る複数の部材の取り扱いを容易にするなどの観点でこれらの部材を集約して配置することは極めて一般的な技術であることに加えて、刊行物1発明における制御の為の信号を伝送する部材の配置に求められる条件と、刊行物2技術に記載された給電信号を伝送する部材の配置に求められる条件が、対向した位置に近接して配置されなければならないことで一致していること(前者については、上記(1)(1-e)を参照。後者については、技術常識である。)から、両部材を集約して配置する技術的背景が存在するといえることを勘案すると、刊行物1発明において、給電信号を伝送する部材である磁気コアに巻かれた送信コイルと磁気コアに巻かれた受信コイルを配置するに際して、複数の信号の伝送に係る部材を集約することによる効果としてよく知られている部材の取扱いの容易化などの効果に着目し、制御の為の信号の伝送に係る部材である送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナと集約して配置する構成を選択することが、当業者にとって格別な創作性ないし困難性を要することとは認められない。

オ ここで、刊行物2技術の「パワー発振回路」、「磁気コアに巻かれた送信コイル」、「磁気コアに巻かれた受信コイル」、「整流平滑回路」、「2次電池」は、それぞれ、本願補正発明の「交流を発生させる送信システム部」、「一次側コイル」、「二次側コイル」、「整流を行う受信システム部」、「蓄電部」に相当するから、刊行物1発明において、パワー発振回路、磁気コアに巻かれた送信コイル、磁気コアに巻かれた受信コイル、整流平滑回路、2次電池からなる構成を採用し、パワー発振回路をトラクタ側に設置し、整流平滑回路及び2次電池を作業機に設置し、磁気コアに巻かれた送信コイルと磁気コアに巻かれた受信コイルを制御の為の信号の伝送に係る部材である送信器と送信アンテナ、受信器と受信アンテナと集約して配置する構成を採用すれば、「トラクタ側に設置され交流を発生させる送信システム部と、前記トラクタ側に設置され一次側コイル(及び操作信号用電波送信のためのデバイス)を備える送信部と、前記作業機に設置され二次側コイル(及び操作信号用電波受信のためのデバイス)を備える受信部と、前記作業機に設置され整流を行う受信システム部と、」「前記作業機に設置される蓄電部」を備えることになり、これによって、「送信部は送電用電磁波(と操作信号用電波)を送信し、前記受信部は前記送電用電磁波(と前記操作信号用電波)を受信し、前記送電用電磁波はトラクタが有するバッテリーからの電力が変換され、前記送電用電磁波から変換された電力が前記蓄電部に蓄えられ」ること、すなわち本願補正発明の相違点に係る構成になる。

カ 本願補正発明が奏する効果について

本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

キ 請求人の主張について

請求人は、請求の理由の「(4-3)本願発明の構成(1j)(1k)について」にて、「1つの「送信部」により「送電用電磁波と操作信号用電波を送信する」こと、及び、1つの「受信部」により、「前記受信部は前記送電用電磁波と前記操作信号用電波を受信する」ことは、設置という観点からしても有効な構成であると言えます。」、「「送電用電磁波と操作信号用電波」の送信と受信を「送信部」及び「受信部」により可能とすることができるため、トラクタと作業機の間で、信号伝達及び送電のための配線接続が必要としないという点においても顕著な効果を有しています。」と主張している。
しかしながら、「1つの「送信部」により「送電用電磁波と操作信号用電波を送信する」こと、及び、1つの「受信部」により、「前記受信部は前記送電用電磁波と前記操作信号用電波を受信する」こと」に関しては、上記エにて検討したとおりである。
また、刊行物1において「農耕用移動車輛と対地作業を行う作業機との間を、ハーネス又はケーブル等を使用することなく」との課題認識が示されている(上記(1)(1-c)を参照。)ことから判断して、「「送電用電磁波と操作信号用電波」の送信と受信を「送信部」及び「受信部」により可能とすることができるため、トラクタと作業機の間で、信号伝達及び送電のための配線接続が必要としない」との効果も、刊行物1に接した当業者の予測を超えるようなものとは認められない。
よって、上記主張は採用できない。

ク まとめ

以上のように、本願補正発明は、刊行物1発明及び刊行物2技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 補正却下の決定についてのむすび

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成27年5月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]の「1 補正の内容」における「本件補正前」に記載したとおりである。


2 刊行物に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、2の記載事項は、上記第2の3(1)、(2)に記載したとおりである。


3 対比・判断

本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、「農作業機の情報給電システム」に係る限定事項である、「トラクタ側に設置され交流を発生させる送信システム部」及び「作業機に設置され整流を行う受信システム部」を有する点を省き、さらに、「送信部」に係る限定事項である、「一次側コイル及び操作信号用電波送信のためのデバイスを備える」構成、及び、「受信部」に係る限定事項である、「二次側コイル及び操作信号用電波受信のためのデバイスを備える」構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3(4)に記載したとおり、刊行物1発明及び刊行物2技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、本件補正で限定された事項に係る判断を除き同様の理由により、当業者が刊行物1発明及び刊行物2技術に基いて容易に発明をすることができたものである。



第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-03 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2014-120858(P2014-120858)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
谷垣 圭二
発明の名称 農作業機の情報給電システム  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
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