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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02J
管理番号 1314326
異議申立番号 異議2015-700016  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-07 
確定日 2016-04-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第5762355号「パワーコンディショナ」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5762355号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5762355号の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、平成24年5月21日に出願されたものであり、平成27年6月19日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第5762355号の請求項1ないし9に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
発電源の直流電力を交流電力に変換し、連系運転モードでは連系ブレーカを介して商用電源に連系し、自立運転モードでは変換した前記交流電力を自立運転出力手段に給電する電力変換手段と、
前記電力変換手段から離隔した位置で前記電力変換手段の運転状態を切替える遠隔通信操作手段と、
を備え、
前記電力変換手段は、
前記連系運転モードと、前記自立運転モードと、前記電力変換手段による運転を停止する運転停止モードとの間の運転状態を切替える第1運転切替手段と、
前記第1運転切替手段または第2運転切替手段からの前記運転状態の切替指示を受け取り、受け取った切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替える運転状態切替制御手段と、
を有し、
前記遠隔通信操作手段は、前記連系運転モードと前記自立運転モードと前記運転停止モードとの間の前記電力変換手段の運転状態を切替える前記第2運転切替手段を有し、
前記運転状態切替制御手段は、前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとすることを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記運転状態切替制御手段は、前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記連系運転モードまたは前記自立運転モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替えることを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記電力変換手段は、前記第2運転切替手段による前記運転状態の切替の許可/不許可を設定する切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記電力変換手段は、前記第1運転切替手段での切替のみ有効で前記第2運転切替手段での切替を受け付けない第1運転切替手段設定優先設定と、前記第2運転切替手段での切替のみ有効で前記第1運転切替手段での切替を受け付けない第2運転切替手段設定優先設定と、前記第1運転切替手段および前記第2運転切替手段での切替を受け付けるが、後に切替指示を出した方を優先させる後操作優先設定と、を切替える優先性選択手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記電力変換手段は、
前記遠隔通信操作手段との間で通信を行う通信手段と、
前記電力変換手段の電源がオフの状態の場合に、前記遠隔通信操作手段から受信した切替指示を記憶する記憶手段と、
をさらに備え、
前記運転状態切替制御手段は、前記電源がオンの状態になった際に、前記記憶手段に記憶されている前記切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
前記遠隔通信操作手段は、前記電力変換手段との間の通信が確立できない場合に、運転状態の切替操作が不可能であることを通知する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項7】
前記電力変換手段は、実際の運転状態を表示する状態表示手段をさらに有する請求項1から6のいずれか1つに記載のパワーコンディショナ。
【請求項8】
前記状態表示手段は、実際の運転状態が前記連系運転モードであるのか、または前記自立運転モードであるのかを示す機能を有することを特徴とする請求項7に記載のパワーコンディショナ。
【請求項9】
前記状態表示手段は、実際の運転状態が前記遠隔通信操作手段による指示で動作しているのか否かを示す機能をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のパワーコンディショナ。」

3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として特開2005-278297号公報(以下「引用文献1」という。)及び従たる証拠として特開平11-98849号公報(以下「引用文献2」という。)、特開2008-130520号公報(以下「引用文献3」という。)、特開2009-165228号公報(以下「引用文献4」という。)、特開2006-20390号公報(以下「引用文献5」という。)、特開2002-355244号公報(以下「引用文献6」という。)、特開2005-51340号公報(以下「引用文献7」という。)を提出し、請求項1ないし9に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし9に係る発明の特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.引用文献の記載(下線部は当審付加)
(1)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、図面とともに以下の記載がある。

ア.「本発明は、インバータ装置に関し、特に、太陽電池、蓄電池、発電機等の直流電源の直流電力を交流電力に変換して出力し、商用電力系統と連系した系統連系運転モードまたは商用電力系統から独立され自立運転を行なう自立運転モードの2つを有するインバータ装置に関する。」(段落【0001】)

イ.「実施の形態1におけるインバータ装置2は、商用電力系統14と連系した系統連系運転モードまたは商用電力系統14から独立され自立運転を行なう自立運転モードの2つを有する。
図1を参照して、実施の形態1におけるインバータ装置2は、コンバータ3と、インバータ4と、フィルタ5と、保護リレー6と、連系リレー7と、制御部8と、負荷接続コンセント10と、プラグ11とを備える。インバータ装置2のうち、コンバータ3とインバータ4とフィルタ5と保護リレー6と制御部8とを含めて、電力変換部2aと呼ぶ。」(段落【0023】、【0024】)

ウ.「連系リレー7は、電力供給線の経路上であって、負荷接続コンセント10とプラグ11との間に直列に設けられる。連系リレー7は、系統連系運転モードか否かにより、制御部8により導通/非導通状態とされる。系統連系運転モードであれば、連系リレー7は導通状態とされる。一方、自立運転モードであれば、連系リレー7は非導通状態とされる。
制御部8は、コンバータ3およびインバータ4のスイッチング素子(たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)など)を駆動するためのドライブ回路に与えるゲートパルス幅信号の制御や、入力電圧、入力電流、出力電流、系統電圧の監視、保護リレー6および連系リレー7の制御を行なう。一般的に、系統連系運転モードにおいては、電流制御方式を採用し、自立運転モードにおいては、電圧制御方式を採用する。電流制御方式とは、インバータ装置2の出力電流が目標電流値となるように出力電流をフィードバック制御することをいう。電圧制御方式とは、インバータ装置2の出力電圧と電圧基準値が一致するようにフィードバック制御することをいう。」(段落【0029】、【0030】)

エ.「制御部8は、さらに、リモコン9からの各種信号を送受信して、インバータ装置2の管理および制御を行なう。
リモコン9は、ユーザが操作することにより、インバータ装置2の外部から制御部8に信号を送信可能な操作手段である。たとえば、インバータ装置2の運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えなどを選択することができる。ユーザが操作して選択した信号は、制御部8へ送信され、制御部8は、受信した信号の示す内容にしたがってインバータ装置2を制御する。なお、ユーザが操作可能な操作手段は、リモコン9のように外部に設けられたものに限らず、インバータ装置2に備えられたものでもよい。
負荷接続コンセント10は、電力供給線の経路上であって、電力変換部2aと連系リレー7との間に設けられ、負荷を直接接続可能なコンセントである。負荷接続コンセント10は、商用電力系統14とは連系せずに、電力変換部2aが変換する交流電力のみで負荷に電力を供給するための、自立運転用出力端子である。このように、負荷接続コンセント10に接続される負荷を、自立負荷と呼ぶ。
プラグ11は、商用電力系統14からの商用電力が供給される家庭用コンセント13に接続可能なプラグである。プラグ11は、プラグ11を介して家庭内負荷および/または商用電力系統14に電力を供給するための、系統連系出力端子である。家庭内負荷とは、家庭内の各電化製品を総括して表わしたものであり、太陽電池アレイ1およびインバータ装置2によって構成される分散電源から交流電力を受けて動作する。家庭内負荷は、分散電源からの供給電力を消費電力が上回るときは、商用電力系統14からも交流電力の供給を受ける。」(段落【0031】?【0034】)

オ.「実施の形態1において、プラグ11に、たとえばトランスやアイソレーションアンプを用いた電圧検出手段を含むこととしてもよい。図1を参照して、プラグ11が家庭用コンセント13に挿入されているとき、電圧検出手段により系統電圧を検出し、検出した信号を、点線で示すように制御部8へ送信する。制御部8は、その信号を監視することにより、系統電圧が正常ならば連系リレー7を導通状態にし、異常ならば連系リレー7を非導通状態にする。そうすることにより、安全に系統連系モードおよび自立運転モードの切り替えを行なうことができる。
また、ユーザがリモコン9を操作することによっても、連系リレー7の制御を行なうこととしてもよい。たとえば、ユーザにより系統連系運転モードの停止が選択されれば、連系リレー7を非導通状態とし、系統連系運転モードの開始が選択されれば、連系リレー7を導通状態とする。」(段落【0042】、【0043】)

図1を参照すると、「電力変換部2a」は、直流電源1と、負荷接続コンセント10、との間に接続され、直流電源1の直流電力を交流電力に変換し、商用電力系統14と連系するものであることが読み取れる。
また、制御部8は、インバータ装置2の外部からの信号を受け、電力変換部2a及び連系リレー7を制御することが読み取れる。

ア.?オ.の記載、及び図面を参照すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認める。
「負荷接続コンセント10と、プラグ11と、連系リレー7と、制御部8を含み直流電源1の直流電力を交流電力に変換する電力変換部2aと、を備えたインバータ装置2であって、
前記インバータ装置の電力変換部2aに含まれる制御部8は、系統連系出力端子であるプラグ11が商用電力系統14からの商用電力が供給される家庭用コンセント13に挿入されて系統電圧が正常であるとき、負荷接続コンセント10とプラグ11との間に直列に設けられた連系リレー7を導通状態にして、電力変換部2aの出力を商用電力系統14と連系する系統連系運転モードの制御を行い、系統電圧が異常ならば、連系リレー7を非導通状態として、自立運転用出力端子である負荷接続コンセント10から、電力変換部2aが変換する交流電力のみを供給し、商用電力系統から独立される自立運転モードの制御を行い、
さらに、前記インバータ装置2は、運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えを、インバータ装置2の外部から、ユーザが操作して選択した信号として制御部8に送信する操作手段であるリモコン9を備え、
また、制御部8は、受信した信号の示す内容にしたがって電力変換部2a及び連系リレー7の制御を行い、
前記操作手段は、リモコン9のようにインバータ装置2の外部に設けられたものに限らず、インバータ装置2に備えることも可能であるインバータ装置2および操作手段。」

(2)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。
「図2は複数のVVVFインバータをホストコントローラで操作する場合の回路構成の従来例を示した回路図である。例えば線材のような長尺材を巻き取るプラントではVVVFインバータと図示していない誘導電動機との組み合わせの複数組を用意し、これら各電動機を所定の順番に従って順次運転を開始させるが、線材の巻き取りが進行するのに従って、各電動機の回転速度やトルクを相互に関連させながら変化させる必要がある。そこでこれらのインバータに運転・停止指令を適切な時点で与え、あるいは運転状態の設定を適切な時点で適切な値に変更しなければならない。
このような要求に対応できるようにするために、各VVVFインバータ10,20,30・・・を一括して操作するホストコントローラ2を設置し、このホストコントローラ2から各VVVFインバータ10,20,30・・・へはシリアル通信伝送路3を経てこれらの指令や設定を与える。ここで各VVVFインバータ10,20,30・・・にはそれぞれ別個の運転・停止指令器11,21,31・・・と、別個の周波数設定器12,22、32・・・と、別個のパラメータ設定器13,23,33・・・を設置している。
誘導電動機を駆動するVVVFインバータの運転にあっては、運転・停止指令と出力周波数の設定とが特に重要であるが、これ以外にも出力電圧や電動機の加速時間など各種の値を設定する必要があり、これらはコード番号化されていてパラメータと称する。前記ホストコントローラ2の設置場所は一般に制御室であって、ここから各VVVFインバータ10,20,30・・・へはシリアル通信伝送路3を介して前記運転・停止指令,周波数設定,および各種パラメータの設定信号や変更信号が与えられる。ところで、プラントが所定の機能を発揮するためには、各VVVFインバータ10,20,30・・・の設置場所からも前記指令やパラメータの設定ができないと不便である。そこで各VVVFインバータ10,20,30・・・には前述した運転・停止指令器11,21,31・・・と、周波数設定器12,22、32・・・と、パラメータ設定器13,23,33・・・とを設けている。
ところでホストコントローラ2からシリアル通信伝送路3を介して各VVVFインバータ10,20,30・・・へ指令やパラメータを与える場合(以下ではこれをリモート・モードと称することにする)と、各VVVFインバータ10,20,30・・・に設置している運転・停止指令器11,21,31・・・、周波数設定器12,22、32・・・、パラメータ設定器13,23,33・・・やこれらの近くに設置した装置が指令やパラメータを与える場合(以下ではこれをローカル・モードと称することにする)とが混同するのを避けるために、各VVVFインバータ10,20,30・・・にはリモート・モードとローカル・モードとを切り換える操作スイッチを別個に設ける。
図3は操作スイッチによりリモート・モードとローカル・モードとを切り換え動作の従来例を示した回路図である。なお、図2の従来例回路では複数のVVVFインバータを図示しているが、説明を簡略にするために、図3ではVVVFインバータ10についてのみ説明する。このVVVFインバータ10の前面には運転・停止指令器11,周波数設定器12,パラメータ設定器13を設置(図2参照)しているが、前述したようにリモート・モードとローカル・モードとが混同するのを回避するために、これらを同時に切り換える操作スイッチ14をVVVFインバータ10に備えるが、この操作スイッチ14は設置しているVVVFインバータ10においてのみ切り換え操作が可能である。
しかしながら、操作スイッチ14がリモート・モードの位置にある場合でも、運転・停止指令のみはローカル・モードでの操作ができることが望ましいことから、この要求を満たすために第1切替えスイッチ15をVVVFインバータ10に内蔵させる。すなわち第1切替えスイッチ15へホストコントローラ2から切り換え操作用のパラメータ信号Aを送ることにより、操作スイッチ14がリモート・モード位置であっても、VVVFインバータ10をローカル・モードで運転・停止させることが可能になる。」(段落【0003】?【0008】)

この記載によれば、引用文献2には、
「複数のインバータをホストコントローラで操作すると共に、各インバータにはそれぞれ別個の運転・停止指令器、別個の周波数設定器と、別個のパラメータ設定器を設置し、
ホストコントローラ2から各インバータへ指令やパラメータを与えるリモート・モードと、各インバータに設置している運転・停止指令器、周波数設定器、パラメータ設定器やこれらの近くに設置した装置が指令やパラメータを与えるローカル・モードとを切り換える操作スイッチを各インバータに別個に設け、
前記操作スイッチがリモート・モードの位置にある場合でも、運転・停止指令のみはローカル・モードでの操作ができるように、第1切替えスイッチをインバータに内蔵させ、インバータをローカル・モードで運転・停止させることが可能になる。」
という技術が開示されているものと認める。

(3)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、図面とともに以下の記載がある。
「本発明は、照明機器等の設備機器を応じてオン、オフ制御する機器制御装置に関する。
【背景技術】
従来より、遠隔からの操作入力によって、設備機器を制御するリモコンシステムが、下記の特許文献1などで知られている。このリモコンシステムは、例えば照明機器に付随した明るさセンサによって照明機器をオンオフ制御すると共に、照明機器の動作時間によって当該照明機器をオフ制御する定刻時間制御を行うユニット(定刻時間制御ユニット)を備えている。従来のリモコンシステムでは、明るさセンサによって照明機器周辺が暗くなったことを検知した場合に、定刻時間制御ユニットによって照明機器をオンとする制御をし、所定時刻となると照明機器をオフとする制御を行うものであった。
【特許文献1】特開2006-311339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のリモコンシステムは、例えばオフィス環境における照明機器を時間に応じてオンオフ制御したい場合には、定刻時間制御ユニットによる制御を停止できない問題があった。喩え定刻時間制御ユニットによるオンオフ状態を停止する場合には、当該定刻時間制御ユニットを設定モードのままにしておく、電源線や制御線を抜いておくなどの手間が必要であり、更に、設定モードにしたときに時分等の設定が変更されてしまう可能性がある。
また、上述のリモコンシステムは、予め設定した所定時刻に、明るさセンサの検出値に関わらず照明機器をオンに制御することができない問題があった。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、定刻時間制御の実行、停止を簡単に制御できる機器制御装置を提供することを目的とする。」(段落【0001】?【0005】)

「運転切替スイッチ入力回路23は、運転切替スイッチ5と接続されて、運転切替スイッチ5の操作を検出する。運転切替スイッチ入力回路23によって検出された運転切替スイッチ5の切替操作は、マイクロコンピュータ21で検知されて、マイクロコンピュータ21によって、定刻時間制御ユニット10の現在のモードが運転モードか停止モードかが認識される。」(段落【0021】)

「マイクロコンピュータ21は、通常モード時において、先ず、ステップS1で、運転切替スイッチ5の状態を運転切替スイッチ入力回路23を介して検知し、現在のモードが運転モードである場合にはステップS2に処理を進め、現在のモードが停止モードである場合には処理を終了する。」(段落【0038】)

「以上説明したように、本発明を適用した定刻時間制御ユニット10によれば、運転モードと停止モードとの切替ができる運転切替スイッチ5を備え、運転切替スイッチ5が運転モードである場合には照明機器を点灯又は消灯させる制御を行い、運転切替スイッチ5が停止モードである場合に照明機器を点灯又は消灯させる制御を行わないようにしたので、明るさ、時間入力があった際に定刻時間制御の実行、停止を簡単に制御できる。例えば、定刻時間制御が行える照明機器を備えていても、休日等で定刻時間制御を行いたくない場合には、運転切替スイッチ5を停止モードに切り替えておけば良い。」(段落【0042】)

これらの記載によれば、引用文献3には、
「運転モードと停止モードとの切替ができる運転切替スイッチ5を備え、運転切替スイッチ5が運転モードである場合には照明機器を点灯又は消灯させる制御を行い、運転切替スイッチ5が停止モードである場合に照明機器を点灯又は消灯させる制御を行わないようにすることによって、定刻時間制御の実行、停止を簡単に制御できるよう構成した機器制御装置。」
という技術が開示されているものと認める。

(4)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、図面とともに以下の記載がある。
「遠隔操作により、運転される無人運転の電力設備において、変電所運転者と現場作業員との間で連絡内容の齟齬の発生などにより、現場作業員の作業中に、変電所運転者が誤って開閉器等の電力設備を操作しようとしても、現場作業員の許可がない状態では、開閉器等の制御をできなくさせる機構を備えることで、電力設備への電力の投入と遮断を確実に管理できる技術を提供することにある。」(段落【0009】)

「本システムは、次の手段を採用した。すなわち、電力設備間に設けられた電路を遮断状態又は接続状態にする開閉器と、前記開閉器の遮断操作を指令する第1の操作部を有し、電力供給状態で前記第1の操作部への指令を受けて前記開閉器により前記電路を接続状態から遮断状態に切り換え操作を行う第1の制御部と、前記開閉器の接続操作を指令する第2の操作部を有し、電力供給状態で前記第2の操作部への指令を受けて前記開閉器により前記電路を遮断状態から接続状態に切り換え操作を行う第2の制御部と、前記開閉器、前記第1の制御部及び前記第2の制御部を含む設備区域から離れて前記開閉器を前記第1の制御部又は第2の制御部への操作指令によって遮断操作又は接続操作を行う遠隔操作部と、前記第1の制御部及び第2の制御部を電力供給状態又は電力非供給状態にしかつ前記設備区域に設置されるロック機能付き開閉装置と、報知手段とを備え、前記ロック機能付き開閉装置は、認証情報の入力を受け付ける検知手段と、前記第1の制御部及び前記第2の制御部を電力供給状態又は電力非供給状態にする開閉手段と、 前記検知手段を通じて認証情報を検知したときに、前記開閉手段による前記第1の制御部及び第2の制御部への電力供給状態から電力非供給状態への変更及び電力非供給状態から電力供給状態への変更を許容し、前記認証情報を検知できないときには、前記変更を禁止するロック制御手段とを備え、前記報知手段により、前記ロック機能付き開閉装置の状態を報知するするようにした。
本システムを用いて電路に設置されている開閉器の修理・点検を行う場合は、事前に電路が遮断状態になるよう、変電所運転者が遠隔制御部で開閉器を予め操作して電路を遮断状態にし、電路を通じて開閉器が充電されないようにしておく。
そして、ロック機能付き開閉装置は、修理・点検が行われる開閉器を含む前記設備区域に設置されているので、現場作業員は、現場でロック機能付き開閉装置の検知手段に認証情報を検知させる。このとき、第1の制御部及び第2の制御部に対して、電力は供給状態にあるものとする。
検知手段が認証情報を確認すると、ロック機能付き開閉装置のロック制御手段は、その開閉手段により、第1の制御部及び第2の制御部を電力供給状態から電力非供給状態に変更することを許容する。すなわち第1の制御部及び第2の制御部に対しては電力が遮断された状態になる。すると、第1の制御部及び第2の制御部が機能しなくなる。
よって、第1の制御部に係る第1の操作部又は第2の制御部に係る第2の操作部を操作しても、開閉器による電路の切り替え操作はできない。また第1の制御部及び第2の制御部に対して電力が遮断された状態(非供給状態)では、遠隔操作部を通じても第1の制御部及び第2の制御部の制御ができない。
したがって、例えば、変電所運転者により遠隔制御部が操作されても、開閉器の操作はできず、よって、点検や修理等の作業中に、当該作業の対象となる電力設備に係る電路が誤って充電されてしまうことがない。そのため、現場作業員は、安全性を確保することができる。」(段落【0010】?【0014】)

「<システムの概要>
図1は、本システムの概要を示す。
図1の左下に位置する電路7上には一対の断路器4と、当該一対の断路器4の間に設置される遮断器1と、各断路器4に接続され、電路に電力を供給する系統電源3とが示されている。
そして、図1における前記電路、断路器、遮断器及び系統電源以外の部分が、本システム(以下システムI)に含まれ、断路器4を作動制御する。本明細書では、一方の断路器4についてのみ述べるが、他方の断路器4にあっても本システムによって機能する。
システムIは、操作用電源10(+)と、電力設備の点検や修理等の作業を行うときに現場作業員が操作することで電路7を遮断するための第1の操作部B1(以下、遮断操作部)と、当該作業が終了したときに操作され電路7を接続するための第2の操作部B2(以下、接続操作部)と、同様の操作を変電所運転者が遠隔地から操作するための遮断操作部B3及び接続操作部B4と、操作用電源10(+)から流れる電流の経路とを有する。
加えてシステムIは、当該経路に配置され、遮断操作部B1及びB3の操作に応じてそれぞれ作動する第1の制御部(以下、遮断リレーR1)と、接続操作部B2及びB4の操作に応じてそれぞれ作動する第2の制御部(以下、接続リレーR2)とを有する。」(段落【0026】?【0029】)

「次にシステムIの作用効果について説明する。
遮断リレーR1及び接続リレーR2に対して電力が供給された状態で、検知手段14が認証情報を確認すると、ロック制御手段であるCPU141は、ロック手段16により、遮断リレーR1及び接続リレーR2に対する電力が供給状態から非供給状態に変更されることを許容する。すなわち遮断リレーR1及び接続リレーR2に対しては、電力が供給されない遮断状態になる。すると、遮断リレーR1及び接続リレーR2が機能しなくなる。
よって、遮断リレーR1に係る遮断B1又は遮断リレーR2に係る接続B2を操作しても、断路器4による電路7の切り替え操作はできない。また遮断リレーR1及び接続リレーR2に対して電力が遮断された状態では、遠隔操作部を通じても遮断リレーR1及び接続リレーR2の制御ができない。」(段落【0065】?【0066】)

これらの記載を参照すると、引用文献4には、
「遠隔操作部を通じて電力設備間に設けられた電路を遮断状態又は接続状態にする開閉器と、前記開閉器により前記電路を接続状態から遮断状態に切り換え操作を行う第1の制御部と、前記開閉器により前記電路を遮断状態から接続状態に切り換え操作を行う第2の制御部とを有し、前記第1の制御部及び第2の制御部を電力供給状態又は電力非供給状態にする開閉装置であって、第1の制御部及び第2の制御部を電力非供給状態にすることで、遠隔操作部を通じても開閉器の制御ができないロック機能付き開閉装置。」
という技術が開示されているものと認める。

(5)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献5には、図面とともに以下の記載がある。
「本発明は、分散型電源からの電力供給を商用電源からの電力供給に連系させて制御するパワーコンディショナにおいて、電力供給を制御する電力供給制御部と、電力供給制御部に接続されたコントローラと、無線通信によりコントローラとの間で情報を送受し、情報を表示する表示ユニットとを備えている。
また、本発明において、表示ユニットは、コントローラに対して着脱自在に装着されている。」(段落【0008】、【0009】)

「パワーコンディショナ12の運転状態を表示するためのLED41、現在時刻を管理制御するリアルタイムクロック42、リアルタイムクロック用バックアップ電池43、及びコネクタ31を通じて連系インバータユニット16の電源回路24に接続される電源回路44等を備えている。」(段落【0030】)

「CPU36は、各LED41a?41dを選択的に点灯、点滅、及び消灯することにより、パワーコンディショナ12の運転状態を表示する。例えば、図6の図表に示す様な連系モード運転、連系モード待機、連系モード停止、……、点検モード、及び電源断等のそれぞれの運転状態を表示するために、各LED41a?41dを選択的に点灯、点滅、及び消灯する。」(段落【0037】)

「尚、夜間は、太陽電池11が発電しないためにパワーコンディショナ12を運転せず、また消費電力を抑えるために連系インバータユニット16の制御回路23も動作させない。従って、連系インバータユニット16は、リモートコントローラ17からのコマンドに応答することができない。」(段落【0059】)

これらの記載を参照すると、引用文献5には、
「分散型電源からの電力供給を商用電源からの電力供給に連系させて制御するパワーコンディショナであって、
電力供給を制御する電力供給制御部に接続されたコントローラを有し、
無線通信により前記コントローラとの間で情報を送受し、連系モード運転、連系モード待機、連系モード停止、……、点検モード、及び電源断等のそれぞれの運転状態情報を表示する表示ユニット18が前記コントローラに対して着脱自在に装着されたパワーコンディショナ。」
に関する技術が開示されているものと認める。

(6)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献6には、図面とともに以下の記載がある。
「図4は、操作制御部9及びメッセージ表示部10を有する本発明に係る超音波診断装置の遠隔操作時の処理を示すフローチャートである。
外部機器から通信制御部8を介して遠隔操作される場合に、図5に示すように、メッセージ表示部10は外部機器から通信制御部8を介して入力する情報により遠隔操作中である旨の警告メッセージを表示し(ステップ200,202)、操作制御部9は超音波診断装置側の入力操作を制限する(ステップ204)。
遠隔操作が継続して行われる場合は、ステップ202?ステップ206の処理を繰り返す。遠隔操作を終了する場合は、メッセージ表示部10は外部機器から通信制御部8を介して入力する情報により遠隔操作中である旨の警告メッセージを消去し(ステップ208)、操作制御部9は超音波診断装置側の入力操作の制限を解除する(ステップ210)。
本発明に係る超音波診断装置において、離れた場所にある超音波診断装置を遠隔操作している最中に、超音波診断装置の画面上に遠隔操作中である旨の警告メッセージを表示することで、超音波診断装置側で遠隔操作中か否かの判断をすることが可能となる。また、表示画面に遠隔操作中である旨の警告メッセージが表示される間は超音波診断装置側の入力操作を制限することで、遠隔操作のために超音波診断装置側の入力操作が使用禁止になっていることの判断が可能となる。」(段落【0036】?【0039】)

これらの記載を参照すると、引用文献6には、
「超音波診断装置の画面上に、外部機器からの遠隔操作中である旨の警告メッセージを表示することで、超音波診断装置側で遠隔操作中か否かの判断をすることが可能となり、遠隔操作のために超音波診断装置側の入力操作が使用禁止になっていることを判断できる超音波診断装置。」
に関する技術が開示されているものと認める。

(7)本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献7には、図面とともに以下の記載がある。
「<コントロールモード設定方法>
図3は2台のカメラでのリモートコントロールモードの設定方法の流れを示した図である。以下、被リモートコントロールモードを設定するカメラをカメラA、リモートコントロールモードを設定するカメラをカメラBとして説明する。
カメラAにおいてモード切り替えボタン101を操作することによって再生モードに切り替える。(S301)これによってカメラAは再生モードに移行する。(S302)
カメラAにおいてシャッター102を半押し状態にする。(S303)半押し状態にして1秒が経過するとカメラAはモニタ画面103に「親機検索中」と表示する。(S304)図4はそのときの状態を表した図である。このときカメラAは通信I/Fを通して現在無線LANに接続されている他の機器に対して親機検索信号及びカメラAのアドレスを送信する。(S305)
このとき、カメラAと同じLANに接続状態にある全てのカメラはカメラAからの親機検索リクエストを受け取ることになる。(S306)図5はこのときのカメラBの受信状態を表した図である。
この状態でカメラBにおいてモード切り替えボタン101を操作することによって再生モードに切り替える。(S307)カメラBは再生モードに切り替わる。(S308)この状態でカメラBのシャッターを押下する(S309)
カメラBはカメラAに対して親機候補信号とカメラBのアドレスを送信する。(S310)
カメラAでカメラBからの親機候補信号を受信すると、カメラAは被リモートコントロールモードに移行し、被リモートコントロールマーク601を表示する。
(S311)図6は被リモートコントロールマークを表示したカメラAのモニタ画面を示した図である。
被リモートコントロールモードに移行すると、カメラAはカメラBに対して親機確定信号とカメラBのアドレスを送信する。(S312)
カメラBはカメラAからの親機確定信号を受信すると、そのアドレスがS310で返信したカメラのアドレスと等しいことを確認し、リモートコントロールモードに遷移する。このとき、カメラAのモニタ画面にリモートコントロールマーク701を表示する。(S313)図7はリモートコントロールマークを表示したカメラBのモニタ画面を示した図である。」(段落【0093】?【0096】)

これらの記載を参照すると、引用文献7には、
「カメラが被リモートコントロールモードに移行すると、当該カメラのモニタ画面には、被リモートコントロールマークを表示する」
技術が開示されているものと認める。

5.判断
(1)対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「直流電源1の直流電力を交流電力に変換する電力変換部2a」は、請求項1に係る発明の「発電源の直流電力を交流電力に変換」する「電力変換手段」に相当する。

・引用発明の「連係リレー7」は、「系統電圧が正常であるとき」に「導通状態」とされ、「系統電圧が異常ならば、連系リレー7を非導通状態と」するものであるから、請求項1に係る発明の「連系ブレーカ」に相当する。

・引用発明の「系統連系出力端子であるプラグ11が商用電力系統14からの商用電力が供給される家庭用コンセント13に挿入されて系統電圧が正常であるとき、負荷接続コンセント10とプラグ11との間に直列に設けられた連系リレー7を導通状態にして、電力変換部2aの出力を商用電力系統14と連系する系統連系運転モード」は、請求項1に係る発明の「連系ブレーカを介して商用電源に連系する」、「連係運転モード」に相当する。

・引用発明の「連系リレー7を非導通状態として、自立運転用出力端子である負荷接続コンセント10から、電力変換部2aが変換する交流電力のみを供給し、商用電力系統から独立される自立運転モード」は、請求項1に係る発明の「変換した前記交流電力を自立運転出力手段に給電する」、「自立運転モード」に相当する。

・引用発明の「受信した信号の示す内容にしたがって電力変換部2a及び連系リレー7の制御を行」う「制御部8」は、「電力変換部2a」に含まれ、運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切替を行うものである。
ここで、引用発明の「受信した信号の示す内容にしたがって電力変換部2a及び連系リレー7の制御を行」う「制御部8」を含む「電力変換部2a」と、請求項1に係る発明の「前記電力変換手段は、前記連系運転モードと、前記自立運転モードと、前記電力変換手段による運転を停止する運転停止モードとの間の運転状態を切替える第1運転切替手段と、前記第1運転切替手段または第2運転切替手段からの前記運転状態の切替指示を受け取り、受け取った切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替える運転状態切替制御手段と、を有し」とは、「前記電力変換手段は、運転状態の切替指示を受け取り,受け取った切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替える運転状態切替制御手段と、を有」する点において共通する。

・引用発明の「運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えを、インバータ装置2の外部から、ユーザが操作して選択した信号として制御部8に送信する操作手段」が行う、「運転/停止」の選択は、運転状態を切替えるものであり、また、「停止」の「モード」を選択するものということができるものである。また、当該操作手段は「リモコン9」であって、インバータ装置2から「隔離した位置」で信号を送信する操作手段である。
そうすると、引用発明の「運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えを、インバータ装置2の外部から、ユーザが操作して選択した信号として制御部8に送信する操作手段であるリモコン9」は、請求項1に係る発明の「前記電力変換手段から離隔した位置で前記電力変換手段の運転状態を切替える遠隔通信操作手段」に相当する。
また、引用発明の「運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えを、インバータ装置2の外部から、ユーザが操作して選択した信号として制御部8に送信する操作手段であるリモコン9」と、請求項1に係る発明の「前記遠隔通信操作手段は、前記連系運転モードと前記自立運転モードと前記運転停止モードとの間の前記電力変換手段の運転状態を切替える前記第2運転切替手段」とを比較すると、「前記遠隔通信操作手段は、前記連系運転モードと前記自立運転モードと前記運転停止モードとの間の前記電力変換手段の運転状態を切替える前記運転切替手段」である点で共通する。

・引用発明の「インバータ装置2および操作手段」からなる構成は、請求項1に係る発明の「パワーコンディショナ」に相当する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「発電源の直流電力を交流電力に変換し、連系運転モードでは連系ブレーカを介して商用電源に連系し、自立運転モードでは変換した前記交流電力を自立運転出力手段に給電する電力変換手段と、
前記電力変換手段から離隔した位置で前記電力変換手段の運転状態を切替える遠隔通信操作手段と、
を備え、
前記電力変換手段は、
前記運転状態の切替指示を受け取り、受け取った切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替える運転状態切替制御手段と、
を有し、
前記遠隔通信操作手段は、前記連系運転モードと前記自立運転モードと前記運転停止モードとの間の前記電力変換手段の運転状態を切替える前記運転状態切替制御手段を有する、パワーコンディショナ。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:運転切替手段について、請求項1に係る発明は、「前記電力変換手段は、前記連系運転モードと、前記自立運転モードと、前記電力変換手段による運転を停止する運転停止モードとの間の運転状態を切替える第1運転切替手段」を有し、「前記遠隔通信操作手段は、前記連系運転モードと前記自立運転モードと前記運転停止モードとの間の前記電力変換手段の運転状態を切替える前記第2運転切替手段」であるのに対し、引用発明は、「運転/停止、系統連系運転モード/自立運転モードの切り替えを、インバータ装置2の外部から、ユーザが操作して選択した信号として制御部8に送信する操作手段であるリモコン9」を有するが、「ユーザが操作する操作手段」を「電力変換部2a」には有していない点。

相違点2:運転状態切替制御手段が、請求項1に係る発明は、「前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとする」ものであるのに対し、引用発明には、そのような制御手段について何ら示されていない点。

相違点1、2について検討する。
請求項1に係る発明は、「第1運転切替手段」と「第2運転切替手段」とを設け、「前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとする」ことで、たとえば災害時等にパワーコンディショナを自立運転に容易に切替えること可能としながら、パワーコンディショナ本体に設けられる運転切替スイッチなどの操作スイッチ類のいたずら等による誤操作を防止することができるという効果を奏する発明である(本件特許明細書の段落【0007】の記載も参照。)。
一方、引用発明は、「前記操作手段は、リモコン9のようにインバータ装置2の外部に設けられたものに限らず、インバータ装置2に備えることも可能である」が、この構成によっても、「リモコン9」に加えて、操作手段をインバータ装置2の構成の一つである「電力変換部2a」にも設けることが示唆されるものではなく、また、「電力変換部2a」に設けられた操作手段で運転停止の操作が行われると、外部からの切替指示を受け付けないことが示唆されているものでもない。
したがって、相違点1、2は、引用発明に基づき容易に導くことができたものではない。

また、引用文献2には、
「複数のインバータをホストコントローラで操作すると共に、各インバータにはそれぞれ別個の運転・停止指令器、別個の周波数設定器と、別個のパラメータ設定器を設置し、
ホストコントローラ2から各インバータへ指令やパラメータを与えるリモート・モードと、各インバータに設置している運転・停止指令器、周波数設定器、パラメータ設定器やこれらの近くに設置した装置が指令やパラメータを与えるローカル・モードとを切り換える操作スイッチを各インバータに別個に設け、
前記操作スイッチがリモート・モードの位置にある場合でも、運転・停止指令のみはローカル・モードでの操作ができるように、第1切替えスイッチをインバータに内蔵させ、インバータをローカル・モードで運転・停止させることが可能になる。」ことが記載されているが、この記載は、ホストコントローラで操作するリモート・モードの操作と、各インバータに設置している運転・停止指令器で操作するローカル・モードでの操作は、操作スイッチによって切り替えられること、また、当該操作スイッチの切り替えにかかわらず、ローカル・モードで運転・停止させるために、インバータに内蔵させた第1切替えスイッチを用いるという技術を開示するものである。
そうすると、リモートでの操作と、ローカルでの操作との双方を可能とするような構成は引用文献2に記載されておらず、当然、請求項1に係る発明の、「前記第1運転切替手段または第2運転切替手段からの前記運転状態の切替指示を受け取り、受け取った切替指示に基づいて前記電力変換手段の運転状態を切替える運転状態切替制御手段」は、引用文献2に記載されるものでない。
さらに、引用文献2に記載される「第1切替えスイッチ」は、スイッチの切り替えにより特定の指令のみローカル・モードでの操作を行うようにするものであり、請求項1に係る発明の、「前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとする」構成も、引用文献2には記載されておらず、示唆されるものでもない。
そうすると、請求項1に係る発明は、引用発明に、引用文献2に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

引用文献3には、「運転モードと停止モードとの切替ができる運転切替スイッチ5を備え、運転切替スイッチ5が運転モードである場合には照明機器を点灯又は消灯させる制御を行い、運転切替スイッチ5が停止モードである場合に照明機器を点灯又は消灯させる制御を行わないようにすることによって、定刻時間制御の実行、停止を簡単に制御できるよう構成した機器制御装置。」について記載されているが、引用文献3の「停止モード」は、スイッチの切替で制御を停止するものであり、請求項1に係る発明の「前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとする」ことが記載されるものでも示唆されるものでもない。
したがって、請求項1に係る発明は、引用発明に、引用文献3に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

引用文献4には、「遠隔操作部を通じて電力設備間に設けられた電路を遮断状態又は接続状態にする開閉器と、前記開閉器により前記電路を接続状態から遮断状態に切り換え操作を行う第1の制御部と、前記開閉器により前記電路を遮断状態から接続状態に切り換え操作を行う第2の制御部とを有し、前記第1の制御部及び第2の制御部を電力供給状態又は電力非供給状態にする開閉装置であって、第1の制御部及び第2の制御部を電力非供給状態にすることで、遠隔操作部を通じても開閉器の制御ができないロック機能付き開閉装置。」という技術が開示されているが、「遠隔操作部を通じても開閉器の制御ができないロック機能」は、請求項1に係る発明の「前記第1運転切替手段が示す運転状態が前記運転停止モードである場合に、前記第2運転切替手段からの前記切替指示を受け付けず、そのときの状態のままとする」ことが記載されるものでも示唆されるものでもない。
したがって、請求項1に係る発明は、引用発明に、引用文献4に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

引用文献5には、「分散型電源からの電力供給を商用電源からの電力供給に連系させて制御するパワーコンディショナであって、
電力供給を制御する電力供給制御部に接続されたコントローラを有し、
無線通信により前記コントローラとの間で情報を送受し、連系モード運転、連系モード待機、連系モード停止、……、点検モード、及び電源断等のそれぞれの運転状態情報を表示する表示ユニット18が前記コントローラに対して着脱自在に装着されたパワーコンディショナ。」に関する技術が開示されているが、「コントローラに対して着脱自在に装着された表示ユニット18」は、隔離した位置で運転状態を表示するものであるから、請求項1に係る発明の「前記電力変換手段から離隔した位置で前記電力変換手段の運転状態を切替える遠隔通信操作手段」が記載されるものでも示唆されるものでもない。
したがって、請求項1に係る発明は、引用発明に、引用文献5に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

引用文献6には、「超音波診断装置の画面上に、外部機器からの遠隔操作中である旨の警告メッセージを表示することで、超音波診断装置側で遠隔操作中か否かの判断をすることが可能となり、遠隔操作のために超音波診断装置側の入力操作が使用禁止になっていることを判断できる超音波診断装置。」に関する技術が開示され、引用文献7には、「カメラが被リモートコントロールモードに移行すると、当該カメラのモニタ画面には、被リモートコントロールマークを表示する」技術が開示されているが、これらの技術は、遠隔からの操作を受けていることを表示するものであって、請求項1に係る発明の「前記電力変換手段から離隔した位置で前記電力変換手段の運転状態を切替える遠隔通信操作手段」が記載されるものでも示唆されるものでもない。
したがって、請求項1に係る発明は、引用発明に、引用文献6又は7に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

以上より、請求項1に係る発明は、引用発明に引用文献2ないし7に開示された技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)請求項2ないし9に係る発明について
請求項2ないし9に係る発明は、請求項1に係る発明と同様に、上記の相違点1、2で指摘した構成を備え、さらに限定を加えたものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、引用発明に引用文献2ないし7に記載された技術を適用することで、容易に導くことができたものということはできない。

よって、本件請求項1ないし9に係る発明は、引用文献1に記載された発明に、引用文献2ないし7に開示された技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし9に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-13 
出願番号 特願2012-115786(P2012-115786)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5762355号(P5762355)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 パワーコンディショナ  

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