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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21C
管理番号 1314332
異議申立番号 異議2016-700175  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-26 
確定日 2016-05-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第5771821号「電縫鋼管、電縫鋼管の製造方法、管状製品の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5771821号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5771821号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成22年8月17日に特許出願され、平成27年7月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 JFEスチール株式会社により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5771821号の請求項1ないし3の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人 JFEスチール株式会社は、本件特許異議申立書の記載の全趣旨によれば、主たる証拠として、
甲第1号証:特開平11-244941号公報
甲第2号証:実願昭60-106825号(実開昭62-15814号)のマイクロフィルム
(以下、各々「甲1」、「甲2」という。)
を提出し、従たる証拠として
甲第3号証:特開2002-192224号公報
甲第4号証:(社)日本鉄鋼協会編、「第3版 鉄鋼便覧 第III巻(2)条鋼・鋼管・圧延共通設備」、丸善(株)、昭和55年11月20日発行、目次及び第1157?1159頁(なお、「III」は、ローマ数字の3の意を示す表記に対して、“I”の字体を組み合わせることにより表記を図ったものである。)
甲第5号証:特開2004-9126号公報
甲第6号証:特開平4-284986号公報
(以下、各々「甲3」、「甲4」、「甲5」、「甲6」という。)
を提出し、請求項1ないし3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.刊行物の記載
(1)甲1には、電縫管に関し、「シーム部から管円周方向両側に同一角度を隔てて管軸方向に平行な2本の線が付されている、あるいは管軸方向平行な1本の線が付されつつシーム部と当該線が成す角度情報が与えられる、もしくはシーム部から円周方向に角度θ2の位置に管軸方向に平行な1本の実線が付されかつシーム部から同側に角度θ3の位置に管軸方向に平行な1本の破線が付されたことを特徴とする電縫管」の発明、および、電縫管の製管工程として、「電縫管素材がオープンパイプの状態に成形された後に、溶接機による溶接工程にてオープンパイプの両縁部を加熱し、スクイーズロールによって横方向から加圧、圧接して電縫管とし、マーキング手段によって管円周方向に所定角度隔てた位置に管軸方向に平行な線を付し、拡管曲げ加工の際にシーム部の位置特定に付された1本ないし2本の線を作業者が目視により特定できるとした方法」の発明が記載されている。
(2)甲2には、折印付金属パイプに関し、「強制接合された肉厚状接合部位であって、金属パイプの長手方向に直線状に存在する肉厚状接合部位の外側壁上長手方向に、線状の印3を着色あるいは刻印の方法によって設けた折印付金属パイプ」の発明が記載されている。また、第2図イに図示された印3は、金属パイプ1の長手方向に対して傾斜した短い線上の印が複数等間隔に図示されている。
(3)甲3には、模様付き電縫鋼管の製造方法に関し、「表面に梨地の凹凸模様2が付された熱間圧延帯鋼(フープ)3が製造ライン上に引き出されたものを、その幅方向端部4,4をフォーミングロール6によって管状の粗管1aに成形する成型工程Aを行い、その後、当該粗管1aの継ぎ目を互いに加圧して突き合わせ溶接を行う溶接工程Bを行い、継ぎ目溶接部8の表面側に突出するビード9を切削除去手段を用いて除去するビード除去工程Cを行い、模様付き転写ロール11によりビード除去部10に梨地の凹凸模様12を刻設する模様付工程Dを行い、ビード除去部10も含めた表面全体に梨地の凹凸模様12が施された電縫鋼管1を得るとした点」が記載されている。
(4)甲4には、特許異議申立書の「4-4-2.引用発明の説明」欄の(4)に(4-1)?(4-4)として摘記された事項が記載されている。
(5)甲5には、特許異議申立書の「4-4-2.引用発明の説明」欄の(5)に(5-1)?(5-8)として摘記された事項が記載されている。
(6)甲6には、特許異議申立書の「4-4-2.引用発明の説明」欄の(6)に(6-1)?(6-6)として摘記された事項が記載されている。

5.判断
(1)特許法第29条第2項について
ア.対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と特許異議申立人が提出した甲1又は甲2の発明とを対比すると、当該甲1又は甲2のいずれにも、電縫鋼管の溶接ビード除去後の切削面に位置する、「鋼管の長手方向に対して直角または傾斜させた」とする、「伸管した後にも視認可能な」「溝」に相当する事項が記載されていない。この点は、甲3ないし甲5にも記載されていない。したがって、本件請求項1に係る発明は、上記甲1ないし甲5に記載の発明から当業者が容易になし得るものではない。
特許異議申立人は、電縫鋼管の溶接ビード除去後の切削面に位置する、「鋼管の長手方向に対して直角または傾斜させた」とする、「伸管した後にも視認可能な」「溝」に相当する事項については、特許異議申立書の「4-1.申立ての理由の要約」中に、甲1?甲6の各々関係する摘記箇所を示すと共に、「伸管した後にも視認可能な凹凸処理部を形成することは、・・・容易に想到」(特許異議申立書第4頁参照)と主張している。
しかしながら、甲1発明で電縫管に付された線は、その方向が「管軸方向に平行」とされており、その方向付けが「シーム部」の「検出」に欠かせない要件であることからみて、異なる角度に置換する動機が見いだせないこと、甲1発明の「線」が、「溝」の形態を採ることに関し直接的な明記も示唆もなされていないことに加え、伸管処理を想定した上で、「線」を「視認可能」になるように形成させるとした特徴を有しない。
また、甲2発明の折印付金属パイプは、刻印の方法で設けられた印の態様として、パイプの強制接合部とされる肉厚部に沿って、長手方向に対し斜めの短線の刻印がなされている点では本件請求項1に係る発明の特徴と相違しないが、甲2のパイプの強制接合が、溶接により達成されるものかは、肉厚部が中空部の内壁にできるとされ、外部に溶接ビードが生じることを示していない点で、必ずしも溶接による接合が果たされたものとはいえず、仮に接合部が他の証拠に示されているとおり慣用の溶接でなされたとしても、伸管処理を想定した上で溝の深さを「視認可能」になるように形成させるとした特徴を有するものではなく、当該事項を示唆する記載もない。
一方、特許異議申立人は、視認可能な溝の深さの目安に関し、これを公知とする甲6の0.05mm以上の記載を参照しつつ、「凹凸処理部の深さを0.05mm以上とすることは格別のものではない。」(特許異議申立書第20頁第17?21行参照)と主張しているが、本件請求項1ないし3に係る発明で、電縫鋼管に設けられる溝の深さは、「伸管した後にも視認可能」な深さ、すなわち伸管処理を見越した深さに設定されており、通常視認が可能な範囲と異なる深さとされている点で明らかに相違していると判断されるので、かかる主張は設定される溝の深さを取り違えた主張というべきであり、採用すべき事情に当たらない。
(イ)請求項2及び3に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る物(=電縫鋼管)の発明を製造するための方法の発明であり、請求項3に係る発明は、請求項1に係る物の発明を用いて、管状製品を製造するための方法であって、これらの方法の発明を構成する「凹凸処理工程」に対しても、前記(ア)で記載されていないとした「伸管した後にも視認可能な」「溝」が同様に特定されているのであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲1ないし甲5に記載の発明から当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、請求項1ないし3に係る発明は、甲1ないし甲5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-21 
出願番号 特願2010-182284(P2010-182284)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B21C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩瀬 昌治間中 耕治  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 久保 克彦
西村 泰英
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5771821号(P5771821)
権利者 日鉄住金鋼管株式会社
発明の名称 電縫鋼管、電縫鋼管の製造方法、管状製品の製造方法  
代理人 綿貫 達雄  
代理人 奥井 正樹  
代理人 山本 文夫  
代理人 松本 悟  

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