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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1314339 |
異議申立番号 | 異議2016-700118 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-12 |
確定日 | 2016-05-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5761409号「セメント組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5761409号の請求項に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5761409号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成26年3月12日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 特許第5761409号の請求項1、2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として次の甲第1号証?甲第6号証を提出し、請求項1、2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開2013-87036号公報 甲第2号証:理学電機株式会社分析センター編、X線回折の手引、1991年1月31日理学電機株式会社発行、134頁 甲第3号証の1:POWDER DIFFRACTION FILE [SET 24]、JOINT COMMITTEE ON POWDER DIFFRACTION STANDARDS、1974年 甲第3号証の2:POWDER DIFFRACTION FILE [SET 33]、JOINT COMMITTEE ON POWDER DIFFRACTION STANDARDS、1983年 甲第4号証の1:POWDER DIFFRACTION FILE [SET 41]、INORGANIC and ORGANIC DATA BOOK、INTERNATIONAL CENTRE FOR DIFFRACTION DATA、1991年 甲第4号証の2:POWDER DIFFRACTION FILE [SET 45]、INORGANIC and ORGANIC DATA BOOK、INTERNATIONAL CENTRE FOR DIFFRACTION DATA、1995年 甲第5号証:特開2009-173494号公報 甲第6号証:セメントの常識、2004年1月社団法人セメント協会発行、14頁 4 刊行物の記載 甲第1号証には、セメントクリンカーと石膏を含むセメント組成物であって、C_(3)Sが40?50%、C_(3)Aが3?5%(特許請求の範囲の請求項1、2)であり、ブレーン比表面積が3200±200cm^(2)/g(段落【0022】)、組成物中の石膏の量がクリンカ100質量部に対しSO_(3)換算で1.5?5.0質量部であり、石膏が半水石膏である(段落【0013】)セメント組成物が記載されている。 甲第2号証には2θ-d対照表が記載され、甲第3号証の1、2、甲第4号証の1、2には、半水石膏の粉末X線回折におけるdÅ、I/I_(1)、及び面指数hklのデータが示されている。 甲第5号証には、セメントを含む水硬性組成物において酸化錫を含有することが、甲第6号証には、14頁の図1-9に各種ポルトランドセメント中のクリンカー構成化合物の構成比率が示されている。 5 対比と判断 (1)請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、半水石膏を含むセメント組成物であって、 ・「半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比(以下、「X線回折強度比」という。)は、65?115」である半水石膏を使用すること、及び ・セメント組成物中に酸化スズを含むことについて記載がなく、これを示唆する記載もない。 そこで、これらの点について検討する。 ア X線回折強度について この点に関し特許異議申立人は、甲第3号証の1、2及び甲第4号証の1、2には、半水石膏の220面のX線回折強度及び114面のX線回折強度が記載されており、これらの強度比を計算すると、上記X線回折強度比は85?100であるので、本件特許の請求項1に係る発明における上記X線回折強度比は一般的な半水石膏の強度比を示したものであると主張する。具体的には、例えば、甲第3号証の1におけるdÅ3.009におけるX線回折ピークは、dÅが2.9955付近のピークであるといえるので、本件特許明細書の段落【0032】の記載によれば2θが29.8°付近のピークであるといえ、このため、220面のX線回折ピークであるとする(特許異議申立書5頁の(V))。 しかし、甲第3号証の1に示されるdÅ3.009のX線回折ピークは、それに対応する面指数hklは200であり、これは、本件特許の請求項1に係る発明が特定する220面とは対応していない。同様なことは、甲第3号証の1、2及び甲第4号証の1、2で特許異議申立人が摘示する他のX線回折ピークについてもいえる。 したがって、特許異議申立人が提示する甲第3号証の1、2及び甲第4号証の1、2からは、通常の半水石膏であれば上記X線回折強度比が本件特許の請求項1に係る発明が特定する65?115の範囲になることを確認することはできない。 このため、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明とは、上記X線回折強度を特定の数値範囲に限定する点で相違するものであり、甲第1?6号証の記載を検討しても、この点が当業者が容易に想到しうるものであると認めることができない。 イ 酸化スズについて 特許異議申立人は、甲第1号証に記載されたセメント組成物に対しで更に酸化スズを添加することは、甲第5号証の記載から当業者が容易になしうるものと主張する(特許異議申立書6頁の(VI))。 しかし、甲第1号証に記載されたセメント組成物に対して酸化スズを添加することの動機付けを、甲第1号証あるいは甲第5号証の記載を検討しても見出すことができない。 このため、酸化スズに関する特許異議申立人の主張も採用することができない。 ウ 小括 したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をなし得たものではない。 (2)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をなし得たものではない。 6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-04-21 |
出願番号 | 特願2014-48955(P2014-48955) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C04B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 永田 史泰 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
後藤 政博 真々田 忠博 |
登録日 | 2015-06-19 |
登録番号 | 特許第5761409号(P5761409) |
権利者 | 住友大阪セメント株式会社 |
発明の名称 | セメント組成物 |
代理人 | 大谷 保 |