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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61M
管理番号 1314341
異議申立番号 異議2016-700176  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-25 
確定日 2016-05-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第5769992号「カテーテル」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5769992号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5769992号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成23年3月23日に特許出願され、平成27年7月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人伊藤範子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。


第3 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1号証?甲第9号証を提出するとともに、特許を取り消すべき理由として、概ね次の理由A1?A5、理由B1?B5を主張している。
(理由A1)
本件発明1は、甲第1?4号証のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由A2)
本件発明2は、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由A3)
本件発明3は、甲第2、4号証のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由A4)
本件発明4は、甲第1?4号証のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由A5)
本件発明5は、甲第1?4号証のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B1)
本件発明1は、甲第4号証に記載の発明及び甲第1?3号証のいずれかに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B2ア)
本件発明2は、甲第4号証に記載の発明及び甲第1?3号証のいずれかに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B2イ)
本件発明2は、甲第1?3号証のいずれかに記載の発明及び甲4?9号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B3)
本件発明3は、甲第1?4号証に記載の発明及び甲4?9号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B4)
本件発明4は、甲第1?4号証に記載の発明及び甲4?9号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由B5)
本件発明5は、甲第1?4号証に記載の発明及び甲4?9号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。

[証拠方法]
・甲第1号証:特開2001-269411号公報
・甲第2号証:米国特許第5542937号明細書及びその抄訳
・甲第3号証:米国特許第7273487号明細書及びその抄訳
・甲第4号証:特開平7-148264号公報
・甲第5号証:米国特許出願公開第2009/0030400号明細書及びその抄訳
・甲第6号証:特開2001-190681号公報
・甲第7号証:特表2005-501613号公報
・甲第8号証:特開2008-229160号公報
・甲第9号証:特開2008-264400号公報


第4 甲各号証の記載
1.甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、特に図面の図15(B)を参照すれば、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「カテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が異なるA樹脂52及びB樹脂51から形成される層を有するカテーテル用チューブ50を備え、
当該カテーテル用チューブ50は、
前記A樹脂52及びB樹脂51から形成される層が存在している領域に、前記材料の硬度とは別の要素であってカテーテル体の剛性に影響を与える要素であるカテーテル用チューブ50の肉厚及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域を備えている、
カテーテル。」

2.甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、その図面(特に、Fig.10)及び抄訳を参照すれば、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「カテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が異なる遠位領域166及び近位領域168を有するカテーテル本体を備え、
当該カテーテル本体は、
前記遠位領域166及び近位領域168が存在している領域に、前記材料の硬度とは別の要素であってカテーテル本体の剛性に影響を与える要素であるカテーテル本体の内径及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域を備えており、
且つ
前記カテーテル本体の内径及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域において前記カテーテル本体の内径及び外径に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、前記カテーテル本体の遠位領域166及び近位領域168において前記材料の硬度を相違させる境界が存在しないように形成されており、
前記境界は、前記カテーテル本体の内径及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域の軸線方向の途中位置に存在しているカテーテル。」

3.甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、その図面(特にFIG.6)及び抄訳を参照すれば、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「カテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が異なる外筒部材14の第1層32及び第2層33を有するカテーテルシャフト12を備え、
当該カテーテルシャフト12は、
前記外筒部材14の第1層32及び第2層33が存在している領域に、前記材料の硬度とは別の要素であってカテーテルシャフト12の剛性に影響を与える要素であるカテーテルシャフト12の内径及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化するテーパ部42及びテーパ部43を備えており、
且つ
前記テーパ部42において前記カテーテルシャフト12の内径及び外径に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、前記外筒部材14の第1層32及び第2層33において前記材料の硬度を相違させる境界が存在するように形成されており、
前記境界は、前記テーパ部42の軸線方向の途中位置にも存在し、
前記テーパ部43において前記カテーテルシャフト12の内径及び外径に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、前記外筒部材14の第1層32及び第2層33において前記材料の硬度を相違させる境界が存在しないように形成されており、
前記境界は、前記テーパ部43の軸線方向の途中位置に存在しない、
カテーテル。」

4.甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、特に図面の図1?2を参照すれば、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「カテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が異なる可撓性のある材質層5及び硬い材質層4を有する基体2を備え、
当該基体2は、
前記可撓性のある材質層5及び硬い材質層4が存在している領域に、前記材料の硬度とは別の要素であって基体2の剛性に影響を与える要素である基体2の肉厚及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域を備えている、
カテーテル。」


第5 判断
1.理由A1について
(1)甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比するに、後者における「A樹脂52及びB樹脂51から形成される層」、「カテーテル用チューブ50」、「カテーテル用チューブ50の肉厚及び外径」、「カテーテル用チューブ50の肉厚及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域」は、前者における「変化対象層」、「カテーテル体」、「特定要素」、「特定要素が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する特定領域」に、それぞれ相当する。
また、甲第1号証の図3(B)のグラフを参照すれば、甲1発明における「軸線方向において形成材料の硬度が異なる」とは、“軸線方向において形成材料の硬度が略連続的に異なる”ことを意味し得るとはいえるものの、“軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる”ことまでをも意味するものとはいえない。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点1>
本件発明1では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」であるのに対し、甲1発明では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」ではない点。
<相違点2>
変化対象層において材料の硬度を相違させる境界に関し、本件発明1では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されており」、かつ「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」のに対し、甲1発明では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されて」いるのか否か不明であり、また、「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」のか否かも不明な点。

このように、本件発明1は、甲1発明と少なくとも上記相違点1?2において相違するのであるから、本件発明1は、甲1発明、即ち、甲第1号証に記載された発明ではない。

(2)甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比するに、後者における「遠位領域166及び近位領域168」、「カテーテル本体」、「カテーテル本体の内径及び外径」、「カテーテル本体の内径及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域」は、前者における「変化対象層」、「カテーテル体」、「特定要素」、「特定要素が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する特定領域」に、それぞれ相当する。
また、甲第2号証第4欄第24?29行における「図3は、・・・この例では、移行接合部(112)は、物理的なパラメータ、例えば、接合部の一方端から他方端への柔軟性が連続的に変化する。」の記載及び図面の図示内容からみて、甲2発明における「軸線方向において形成材料の硬度が異なる」とは、“軸線方向において形成材料の硬度が略連続的に異なる”ことを意味し得るとはいえるものの、“軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる”ことまでをも意味するものとはいえない。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点3>
本件発明1では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」であるのに対し、甲2発明では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」ではない点。

このように、本件発明1は、甲2発明と少なくとも上記相違点3において相違するのであるから、本件発明1は、甲2発明、即ち、甲第2号証に記載された発明ではない。

(3)甲3発明との対比・判断
本件発明1と甲3発明とを対比するに、後者における「外筒部材14の第1層32及び第2層33」、「カテーテルシャフト12」、「カテーテルシャフト12の内径及び外径」、「テーパ部42」又は「テーパ部43」は、前者における「変化対象層」、「カテーテル体」、「特定要素」、「特定領域」に、それぞれ相当する。
また、甲第3号証のFIG.6に図示された、第1層32と第2層33とにより形成される境界の形状からみて、甲3発明における「軸線方向において形成材料の硬度が異なる」とは、“軸線方向において形成材料の硬度が略連続的に異なる”ことを意味し得るとはいえるものの、“軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる”ことまでをも意味するものとはいえない。
してみると、甲3発明において、特定領域として「テーパ部42」、「テーパ部43」のいずれに着目したとしても、本件発明1と甲3発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点4>
本件発明1では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」であるのに対し、甲3発明では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」ではない点。
<相違点5>
変化対象層において材料の硬度を相違させる境界に関し、本件発明1では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されており」、かつ「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」のに対し、甲3発明では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されており」、かつ「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」事項を具備しない点。

このように、本件発明1は、甲3発明と少なくとも上記相違点4?5において相違するのであるから、本件発明1は、甲3発明、即ち、甲第3号証に記載された発明ではない。

(4)甲4発明との対比・判断
本件発明1と甲4発明とを対比するに、後者における「可撓性のある材質層5及び硬い材質層4」、「基体2」、「基体2の肉厚及び外径」、「基体2の肉厚及び外径が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する領域」は、前者における「変化対象層」、「カテーテル体」、「特定要素」、「特定要素が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する特定領域」に、それぞれ相当する。
また、甲第4号証の図1に図示された、可撓性のある材質層5と硬い材質層4とにより形成される境界の形状からみて、甲4発明における「軸線方向において形成材料の硬度が異なる」とは、“軸線方向において形成材料の硬度が略連続的に異なる”ことを意味し得るとはいえるものの、“軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる”ことまでをも意味するものとはいえない。
してみると、本件発明1と甲4発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点6>
本件発明1では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」であるのに対し、甲4発明では、変化対象層が、「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」ではない点。
<相違点7>
変化対象層において材料の硬度を相違させる境界に関し、本件発明1では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されており」、かつ「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」のに対し、甲4発明では、「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、」「境界が存在しないように形成されて」いるのか否か不明であり、また、「境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在している」のか否かも不明な点。

このように、本件発明1は、甲4発明と少なくとも上記相違点6?7において相違するのであるから、本件発明1は、甲4発明、即ち、甲第4号証に記載された発明ではない。

(4)小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でも、甲第2号証に記載された発明でも、甲第3号証に記載された発明でも、甲第4号証に記載された発明でもなく、申立人の主張する理由A1には、理由がない。

2.理由A2?A5について
本件発明2は、本件発明1の「カテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層を有するカテーテル体」を「軸線方向に延在し同一の材料により形成されたベース層と、当該ベース層とともにカテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層と、を有するカテーテル体」と限定すると共に、本件発明1の「前記変化対象層が存在している領域」を「前記ベース層及び前記変化対象層が存在している領域」と限定した発明である。
また、本件発明3?5は、本件発明1又は2を引用する発明である。
そうすると、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、上記「1.理由A1について」において示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、本件発明3は、甲第2号証又は甲第4号証に記載された発明ではなく、さらに、本件発明4及び本件発明5は、甲第1?4号証のいずれかに記載された発明ではない。
よって、申立人の主張する理由A2?A5には、理由がない。

3.理由B1について
本件発明1と甲4発明との上記相違点6について検討する。
甲1発明、甲2発明及び甲3発明のいずれもが、相違点6に係る本件発明1の特定事項である「軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層」を具備しないことは、上記「1.理由A1について」において示したとおりである。
また、甲4発明における形成材料の硬度を、軸線方向で「段階的に」異ならせることが設計事項であるともいえない。
そうすると、本件発明1と甲4発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲4発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲4発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、申立人の主張する理由B1には、理由がない。

4.理由B2アについて
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、本件発明2と甲4発明とは、少なくとも上記相違点6で相違する。
そうすると、本件発明2と甲4発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、上記「3 理由B1について」において示した理由と同様の理由により、甲4発明及び甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲4発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲4発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、申立人の主張する理由B2アには、理由がない。

5.理由B2イについて
申立人は、甲第4?9号証に基づく周知技術の存在を主張しているので、まず、甲4?9号証を検討するに、少なくとも甲7?8号証の開示内容に照らし、「軸線方向に延在し同一の材料により形成されたベース層と、当該ベース層とともにカテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層と、を有するカテーテル体を備え、当該カテーテル体は、前記ベース層及び前記変化対象層が存在している領域に、前記材料の硬度とは別の要素であってカテーテル体の剛性に影響を与える要素である特定要素が、軸線方向に所定の方向性を持って連続的に変化する特定領域を備え」るカテーテルは、申立人が周知技術と主張するように、本件特許の出願前における周知のカテーテルといえる。

(1)甲1発明との対比・判断
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも上記相違点2で相違する。
ところで、上記周知のカテーテルは、相違点2に係る本件発明2の特定事項である「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、前記変化対象層において前記材料の硬度を相違させる境界が存在しないように形成されており、前記境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在していること」までをも備えたカテーテルではない。
そうすると、本件発明2と甲1発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲2発明との対比・判断
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも上記相違点3で相違する。
そこで、上記相違点3について検討する。
甲第2号証第3欄第1?10行に「SUMMARY OF THE INVENTION ・・・ The inventive catheter may have discrete sections of different physical parameters or the body may vary in composition so to allow the physical parameters of the shaft to vary slowly rather than in a jump. The catheter body may vary in diameter - both interior and exterior.」(発明の要約 ・・・ 本発明のカテーテルは、異なる物理的パラメータを有する個々のセクションを有する。すなわち、シャフトの物理的パラメータが一気に変化するのではなくて緩やかに変化し得るように、本体の組成は変化し得る。このカテーテル本体の直径(内径および外径の両方)は、様々である。(なお、訳文は甲第2号証のパテントファミリーである特表平8-508926号公報の記載を援用した。))と記載されるように、また、上記「1.理由A1について」の「(2)甲2発明との対比・判断」において検討したように、甲2発明は、「変化対象層」として、“軸線方向において形成材料の硬度が緩やかに変化し得る”事項ないし“軸線方向において形成材料の硬度が略連続的に変化し得る”事項を前提とする発明である。
上記周知技術に基づき、「軸線方向に延在し同一の材料により形成されたベース層と、当該ベース層とともにカテーテル壁部を形成し、軸線方向において形成材料の硬度が段階的に異なる変化対象層と、を有するカテーテル体を備え」る事項も本件特許出願前に周知の技術であったものといえるにしても、甲2発明に当該周知の技術を適用すると、変化対象層では、軸線方向において形成材料の硬度が段階的、即ち非連続的に変化することになるのであるから、この適用は上記の前提を否定するものである。
そして、甲2発明において、“材料の硬度が緩やかに変化”し、また、“略連続的に変化”するという上記の前提を否定してまで上記周知の技術を適用すべき動機付けは見出せない。
そうすると、上記相違点3に係る本件発明2の特定事項は、本件発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。
よって、本件発明2と甲2発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)甲3発明との対比・判断
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、本件発明2と甲3発明とは、少なくとも上記相違点5で相違する。
ところで、上記の周知のカテーテルは、相違点5に係る本件発明2の特定事項である「特定領域において前記特定要素に付随して最も剛性が低くなる箇所に対して、前記変化対象層において前記材料の硬度を相違させる境界が存在しないように形成されており、前記境界は、前記特定領域の軸線方向の途中位置に存在していること」までをも備えたカテーテルではない。
そうすると、本件発明2と甲3発明との他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
したがって、本件発明2は、甲第1?3号証のいずれかに記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立人の主張する理由B2イには、理由がない。

6.理由B3?B5について
本件発明3?5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明であるから、上記「3.理由B1について」、「4.理由B2アについて」、「5.理由B2イについて」において示した理由と同様の理由により、本件発明3?5は、甲第1?4号証に記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人の主張する理由B3?B5には、理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-22 
出願番号 特願2011-63767(P2011-63767)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A61M)
P 1 651・ 121- Y (A61M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 関谷 一夫
土田 嘉一
登録日 2015-07-03 
登録番号 特許第5769992号(P5769992)
権利者 株式会社グッドマン
発明の名称 カテーテル  
代理人 廣田 美穂  
代理人 山田 強  
代理人 安藤 悟  
代理人 日野 京子  

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