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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1314344
異議申立番号 異議2016-700200  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-08 
確定日 2016-05-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第5775826号「シリコーン系再剥離性粘着剤組成物、該組成物を硬化させてなる再剥離粘着層を有するシート状基材、その保護フィルムまたは固定シートとしての使用」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5775826号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

特許第5775826号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る発明についての出願は、平成23年1月12日の国際出願日(特許法第41条に規定される特許出願等に基づく優先権主張:平成22年1月13日)に出願されたものであって、平成27年7月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人信越化学工業株式会社により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件特許発明

本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(以下、本件特許の請求項1ないし12に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。)

3.申立て理由の概要

特許異議申立人信越化学工業株式会社は、下記申立て理由A、Bにより本件発明1ないし12は取り消すべきものである旨主張している。

(A) 申立て理由A
本件特許発明1ないし4、7ないし12は、本件特許の優先権日前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲第1号証に記載された発明と同一であるか、又は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、又は、同条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(B) 申立て理由B
本件特許発明1ないし12に対する本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

4.申立て理由Aについて

4-1.刊行物
甲第1号証 特開2006-152266号公報
甲第2号証 特開2003-221507号公報
甲第3号証 特開2008-24777号公報
甲第4号証 米国特許出願公開第2009/0305036号明細書
甲第5号証 特開平6-306347号公報
甲第6号証 特開2004-225005号公報
甲第7号証 「シリコーンハンドブック」、日刊工業新聞社、1990年8月31日発行、第96?99頁及び第116頁

4-2.刊行物に記載の事項

甲第1号証
(1A)「【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン及び(C)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンを含むシリコーン組成物から調製された粘着性フィルムにおいて、アルケニル基が(A)ジオルガノポリシロキサン100g中に0.0007?0.05モルで含まれ、及び、(C)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンが、(A)成分中のアルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5?20となる量で該組成物中に含有されていることを特徴とする粘着性フィルム。
【請求項2】
シリコーン組成物が、95?40質量部の(A)ジオルガノポリシロキサンを含み、下記をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の粘着性フィルム。
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサン(R^(1)は炭素数1から10の1価炭化水素基。) 5?60質量部
(D)制御剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して0?8.0質量部
(E)付加反応触媒 (A)と(B)の合計100質量部に対し、貴金属分として5?2000ppm
(F)有機溶剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して 25?900質量部。
【請求項3】
シリコーン組成物の(A)成分と(B)成分の質量比が55/45?40/60であり、(A)成分のアルケニル基含有量が0.005?0.05モル/100gである、請求項1?3のいずれか1項に記載の粘着性フィルム。
【請求項4】
(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物として、シリコーン粘着剤組成物に含まれることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の粘着性フィルム。」

(1B)「【0006】
そこで、本発明は、貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適なフィルム及び該フィルム用の粘着剤組成物を提供することを目的とする。」

(1C)「【0010】
本発明において粘着剤に使用される(A)成分は1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサンであり、例えば、下記式で示されるものである。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

(式中、R^(2)は脂肪属不飽和結合を有さない置換または非置換の1価炭化水素基、R^(3)はアルケニル基含有有機基であり、aは0?3の整数、好ましくは1であり、mは0以上、nは10以上の整数であり、aが0のときmは2以上であり、また、m+nはこのポリジオルガノシロキサンの25℃における粘度を10mPa・s以上とする数である。)
【0013】
ここで、R^(2)としては、炭素数1?10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などであり、さらに,これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン、アミノ基、水酸基、シアノ基等の他の基で置換した、3-アミノプロピル基,3,3,3-トリフロロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、3-シアノプロピル基なども例示される.特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0014】
R^(3)としては、炭素数2?10のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基などであり、特に、工業的にはビニル基が好ましい。(A)成分におけるアルケニル基含有量は0.0007?0.05モル/100gであることを特徴とする。該範囲において、フラットパネルディスプレイフィルムとして、好適な粘着性を達成できる。また、シリコーン粘着剤組成物の(A)成分と、(B)成分の質量比が55/45?40/60の場合は(A)成分のアルケニル基含有量が0.005?0.05モル/100gであるものが好ましい。
【0015】
このポリジオルガノシロキサンの性状はオイル状、生ゴム状であればよい。(A)成分の粘度は25℃において、オイル状のものであれば10mPa・s以上。特に100mPa・s以上が好ましい。10mPa・s以下では硬化性が低下したり、粘着力が低下するため不適である。また、生ゴム状のものであれば、30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が100,000mPa・s以下が好ましい。100,000mPa・sを越えると、組成物が高粘度となりすぎて製造時の撹拌が困難になる。さらに、(A)成分は2種以上を併用してもよい。
【0016】
(A)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのモノマーを、触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は環状の低分子シロキサンを含有しているため、この環状低分子シロキサンを加熱および減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。」

(1D)「【0017】
(B)成分は、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサンである。R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6未満では粘着力やタックが低下することがあり、1.7を越えると粘着力や保持力が低下することがある。
【0018】
R^(1)は炭素数1から10の置換または非置換の1価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基があげられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン、アミノ基、水酸基、シアノ基等の他の基で置換した、3-アミノプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、3-シアノプロピル基なども例示される。この中でもメチル基が好ましい。
【0019】
(B)成分はOH基を有していてもよく、OH基含有量は(B)成分総重量の0.01?4.0質量%のものが好ましい。OH基が0.01質量%未満では粘着剤の凝集力が低くなることがあり、4.0質量%を超えるものは粘着剤のタックが低下する理由により好ましくない。
【0020】
(B)成分は2種以上を併用してもよい。また、本発明の特性を損なわない範囲でR^(1)SiO_(1.5)単位、R^(1)_(2)SiO単位を(B)成分中に含有させることも可能である。」

(1E)
「【0022】
(C)成分は架橋剤で、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するポリオルガノヒドロシロキサンであり、直鎖状、分岐状、環状のものを使用できる。」

(1F)「【0031】
(E)成分は付加反応触媒であり、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体,ロジウム錯体,ルテニウム錯体などが挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエンなどの溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いてもよい。」

(1G)「【0035】
この組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分,(D)成分、および(F)成分を混合溶解することにより製造される。本発明のフィルムを製造する際は、該混合物を、必要に応じてさらに有機溶剤で希釈し、(E)成分を添加及び混合して、後に示す種々の基材に塗工される。
【0036】
(A)、(B)成分の一部または全部は、それらに残留する水酸基をエーテル化することによって除去するために、塩基触媒存在下、および必要に応じて一部または全部の(F)成分の存在下、で所定時間反応させた後に、得られる生成物として添加してもよい。塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、などの炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどの金属アルコキシド、ブチルリチウムなどの有機金属、水酸化カリウムとシロキサンのコンプレックス、アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、などの窒素化合物、などがあげられる。アンモニアガス、アンモニア水が好ましい。温度は、20?150℃とすることができる。通常は、室温ないし成分(F)の還流温度でおこなえばよい。時間は、特に限定されないが、0.5時間から10時間、好ましくは1時間から6時間とすればよい。」

(1H)「【0058】
本発明のシリコーン粘着剤組成物を用いて製造したフィルムは、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車などの計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、など、文字や記号、画像を表示するための種々のフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用することができる。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)などの表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。本発明のフィルムは、これらの、ディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用される。」

(1I)「【0071】
[実施例2]
次式で示されるビニル基含有ポリジメチルシロキサンA2(70部)(30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が16,000mPa・sであり、アルケニル基含有量0.002モル/100g)
【0072】
【化7】

(x=6,600、 y=8、 z=0)

ポリシロキサンBの60%トルエン溶液(50部)、トルエン(46.7部)からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、SiH基を有するポリオルガノシロキサンC1(0.27部)、エチニルシクロヘキサノール(0.20部)を添加し混合した。
【0073】
上記の混合物(シロキサン分60%)(100部)にトルエン(50部)、白金分を0.5質量%含有する白金-ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液(0.5部)を添加しさらに混合し、シロキサン分約40%のシリコーン粘着剤組成物溶液を調製した。得られたシリコーン粘着剤組成物について、上述の方法に従い、各試験を行った。」(当審注:ポリシロキサンBとは、【0066】によれば、Me_(3)SiO_(0.5)単位、SiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.85)のことであり、ポリオルガノシロキサンC1とは、【0066】、【0067】によれば、次式の化合物である。

)

甲第2号証
(2A)「【請求項1】 (A)シラノール基で停止した末端が、末端単位の20モル%以下であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴム 100重量部
(B)フェニル基含有シリコーンオイル 1?20重量部
(C)比表面積が50m^(2)/g以上のシリカ充填剤 5?100重量部
(D)必要量の硬化剤
を含有し、白色度(L値)を2以下に鏡面仕上げしたステンレススチール板を金型内にセットして170℃,150秒で100回連続射出成形した後の該ステンレススチール板の白色度(L値)が8以下であることを特徴とする加熱硬化性シリコーンゴム組成物。」

(2B)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金型成型時に金型汚れが少ない加熱硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、ゴム組成物は金型を用いて高温・高圧のもとで成形品にする。この成形品の製造工程において最も重要なことは、金型汚れの少ないゴム組成物を使用することである。金型汚れが多い場合、成形品の表面は光沢を失い、不良率が増加する。また、こういった現象が発生した場合には金型を洗浄しなければならないが、この作業は非常に時間を費やすという問題があった。
【0003】この金型汚れは古くから問題にされてきたが、金型汚れの評価方法は、連続成型時の金型表面や成形品表面等の目視観察による定性的な評価を行っており、体系的解析が不十分であったため、いまだ十分なメカニズムは明らかにされていなかった。
【0004】従って、本発明は、連続成型時の金型汚れを定量的に評価する方法を確立し、金型汚れの少ない加熱硬化性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。」

(2C)「【0006】なお、従来よりこの種の加熱硬化性シリコーンゴム組成物のベースポリマーであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムとして、末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものを使用することは特許公報などに記載されている。しかし、これらの記載にもかかわらず、従来実際に使用されてきたアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムは、末端単位の20モル%を越えてシラノール基が存在するものであった。これは、この種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムとして、塩基性触媒の存在下平衡化によって得られたものが主として使用されていたためであり、平衡化反応においては、原料中に含まれる微量水分が末端停止剤として作用するため、末端がかなりの割合でシラノール基で封鎖されてしまうものであったが、本発明者は、上述したように、このようにかなりの割合でシラノール基で封鎖されたアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムを使用すると、金型汚れが生じ易いのに対し、シラノール基で停止した末端が、末端単位の20モル%以下、換言すれば、トリオルガノシロキシ基による末端封鎖率が80モル%以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムを使用する場合には、金型汚れが容易に生じないことを見出したものである。この場合、シラノール基一般が金型汚れに悪影響を及ぼすのではなく、ベースポリマーである高重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムの末端シラノール基が金型汚れに悪影響を及ぼすものであり、このことは、後述するように、(E)成分として式(2)の末端シラノール基含有有機ケイ素化合物の配合が推奨されることからも認められることである。」

(2D)「【0009】ここで、(A)成分のシラノール基で停止した末端が、末端単位の20モル%以下であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムは、下記平均組成式(3)で示されるものを使用することができる。
R^(2)_(a)SiO_((4-a)/2) (3)
式中、R^(2)はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等から選択される、同一又は異種の好ましくは炭素数1?10、より好ましくは炭素数1?8の非置換又は置換の1価炭化水素基である。また、aは1.98?2.02の正数であり、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基(R^(2)_(3)SiO基)で封鎖されたものとすることができるが、上記式(3)におけるR^(2)のうち50モル%以上、特に80モル%以上がメチル基であり、また、約0.01?15モル%、特に0.02?5モル%のアルケニル基、特にビニル基を有することが好ましい。このオルガノポリシロキサンは、直鎖状であるが、ゴム弾性を損なわない範囲で分岐していてもよく、その分子量は平均重合度2,000?100,000、特に3,000?20,00であることが好ましい。
【0010】オルガノポリシロキサンの末端は、上記のようなジメチルビニルシロキシ基やトリメチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものが100モル%であることが望ましいが、末端停止剤を用いても重合中に微量混入する水により末端基がシラノール基で停止したものが存在する場合があるが、本発明の(A)成分であるオルガノポリシロキサンは、シラノール基で停止した末端が、末端単位の20モル%以下であり、特に10モル%以下が好ましい。20モル%を越えると、金型汚れが激しくなる。
【0011】この場合、シラノール基で停止した末端とは、トリオルガノシロキシ基(R_(3)SiO基)のRの1個がOH基に置きかわったもの、即ちR_(2)(OH)SiO基であり、末端単位の20モル%以下とは、全末端基(即ち、トリオルガノシリル基及び上記シラノール基で停止した末端基の合計)の20モル%以下ということを意味する。従って、トリオルガノシロキシ基の割合は、末端単位の80モル%以上であり、特に90モル%以上であることが好ましい。
【0012】トリオルガノシロキシ基による末端封鎖率の高いアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、特公昭61-12931号公報、特開2000-143809号公報に記載された公知の方法より合成することができる。特公昭61-12931号公報には、アルカリ性触媒をトリオルガノハロシランとヘキサオルガノジシラザンで中和することで、末端シラノール基も同時にシリル化する方法を開示している。また、既に末端に一部シラノール基を含有しているオルガノポリシロキサンポリマーを、例えば、ヘキサオルガノジシラザン、ヘキサオルガノシリルアミン等のシリル化剤で処理して末端シラノール基量の低減を図ってもかまわない。」

(2E)「【0049】
【表1】

鏡面仕上げSUS板;初期L値=1.8」

甲第3号証
(3A)「【請求項1】
(A)下記(A-1)及び(A-2)成分よりなり、(A-1)/(A-2)の比率が50/50?20/80の範囲にあるオルガノポリシロキサン 35?70質量部、
(A-1)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつアルケニル基を0.05?0.10モル%含むオルガノポリシロキサン、
(A-2)アルケニル基を含まないオルガノポリシロキサン、
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?0.8であるポリオルガノシロキサン(R^(1)はお互いに異なってよい炭素数1?10の1価炭化水素基。) 65?30質量部、
(C)1分子中にSiH基を少なくとも3個含有するポリオルガノシロキサンを、(A)成分中のアルケニル基モル数に対する(C)成分中のSiH基モル数の比が0.5?20となる量、
(D)白金触媒を(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、白金分として1?5000ppm、
(E)ヒドロシリル化反応を抑制する制御剤を(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して0?8.0質量部、
を含むことを特徴とする付加型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
基材テープと、該基材テープ上に施与された粘着層からなる粘着テープにおいて、該粘着層が、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の粘着剤用シリコーン組成物を含むことを特徴とする粘着テープ。」

(3B)「【0030】
(A-1)成分と(A-2)成分と(B)成分は、夫々、独立に組成物に配合してもよいし、(A-1)成分と(A-2)成分と(B)成分の縮合物として配合してもよい。例えば、(A)成分および(B)成分の末端基が次式のポリオルガノポリシロキサンを含有する場合、
【0031】
【化5】

(R^(1)上記ポリオルガノシロキサン(A),(B)について上記したのと同様である。)
(B)成分と縮合反応する。縮合反応を行うには、トルエンなどの溶剤に溶解した(A-1)成分と(A-2)成分と(B)成分の混合物をアルカリ性触媒を用い、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0032】
上記縮合反応する場合の、(A-1)成分と(A-2)成分の混合物/(B)成分の混合重量比は、40/60?70/30、好ましくは45/55?65/35である。(A)成分と(B)成分のポリジオルガノシロキサンの配合比が前記範囲外であると、組成物の粘着力が不充分となる。」

(3C)「【0056】
[実施例]
実施例の組成で用いた(A)?(E)成分は下記の通りである。
(A)成分
(A-1)成分
ポリシロキサン(イ):30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、ビニル基含有量が0.075モル%であり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基(SiMe_(2)Vi基)で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン
ポリシロキサン(ロ):30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、ビニル基含有量が0.05モル%であり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基(SiMe_(2)Vi基)で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン
ポリシロキサン(ハ):30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、ビニル基含有量が0.10モル%であり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基(SiMe_(2)Vi基)で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン
ポリシロキサン(ニ):30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、ビニル基含有量が0.02モル%であり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基(SiMe_(2)Vi基)で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン
ポリシロキサン(ホ):30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、ビニル基含有量が0.15モル%であり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基(SiMe_(2)Vi基)で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン
【0057】
(A-2)成分
ポリシロキサン(へ):30%トルエン溶液での粘度が30000mPa・sであり、アルケニル基を含まないポリジメチルシロキサン
【0058】
(B)成分
ポリシロキサン(ト):Me_(3)SiO0.5単位及びSiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.72)の60%トルエン溶液
ポリシロキサン(チ):Me_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.61)の60%トルエン溶液
ポリシロキサン(リ):Me_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.79)の60%トルエン溶液
ポリシロキサン(ヌ):Me_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.58)の60%トルエン溶液
ポリシロキサン(ル):Me_(3)SiO_(0.5)単位及びSiO_(2)単位からなるポリシロキサン(Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.82)の60%トルエン溶液
【0059】
(C)成分
ポリシロキサン(ヲ):下式で表されるSiH基を1分子中に3つ以上有するポリオルガノシロキサン
【0060】
【化8】

【0061】
(D)成分:白金触媒CAT-PL-50T(信越化学工業社製)
(E)成分:エチニルシクロヘキサノール
【0062】
[実施例1]
(A-1)成分としてポリシロキサン(イ)を25部、(A-2)成分としてポリシロキサン(へ)を25部、(B)成分としてポリシロキサン(ト)を83.3部及びトルエン33.3部からなる溶液に、(C)成分としてポリシロキサン(ヲ)を0.24部と、(E)成分としてエチニルシクロヘキサノール0.16部を添加して混合した。
【0063】
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、(D)成分として白金触媒CAT-PL-50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。このシリコーン粘着剤の粘着力、耐熱保持力,経時粘着力,粘着剤のシリコーンゴムへの移行を測定した結果を表1に示す。」

甲第4号証(当審注:当該文献に記載の事項の認定は、パテントファミリーにあたる特開2010-13632号公報の記載に基づいて行った。)
(4A)Claim1-5 「【請求項1】
(A)下記(A1)及び(A2)成分からなり、(A1)/(A2)の質量比が100/0?10/90の範囲にあるポリジオルガノシロキサン 20?80質量部
(A1)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサン
(A2)末端にSiOH基を有しそしてアルケニル基を有さない直鎖状ポリジオルガノシロキサン
(B)R^(3)_(3)SiO_(0.5)単位、SiO_(2)単位、及びケイ素原子に結合した水酸基を含有するシロキサン単位を含有し、
R^(3)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.5?0.9であり、
前記水酸基の含有量が0.1?5.0質量%であるポリオルガノシロキサン(R^(3)は炭素原子数1?10の1価炭化水素基である。) 80?20質量部(但し、(A)成分と(B)成分の合計は100質量部である)、
(C)SiH基を1分子中に3個以上含有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分中のアルケニル基に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5?20となる量
(D)反応制御剤 (A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0?8.0質量部
(E)白金族金属系触媒 (A)成分及び(B)成分の合計に対して質量基準で白金分として1?5000ppm、
(F)MY_(x)で示される少なくとも1種の金属化合物(式中、Mはアルミニウム、チタン、ジルコニウム、及び亜鉛から成る群から選ばれる原子価が3または4である金属元素、xは該金属元素Mの原子価に等しい数を示し、YはRO、RCOO、RCOCHCOR及びRCOCHCOORから選ばれる1種以上からなる配位子を示す。ここで、Rは炭素原子数1?10の置換または非置換の1価炭化水素基である。) (A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、金属化合物として0.5?8質量部
を含有する付加反応硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の(A1)/(A2)の質量比が90/10?10/90の範囲である請求項1に係る付加反応硬化型シリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
(A1)成分が、下記式(1-1)または(1-2)で表されるポリジオルガノシロキサンである請求項1に係る組成物。
X_(a)R^(1)_(3-a)SiO-[XR^(1)SiO]_(b)-[R^(1)_(2)SiO]_(c-)SiX_(a)R^(1)_(3-a) (1-1)
(OH)R^(1)_(2)SiO-[XR^(1)SiO]_(b+2)-[R^(1)_(2)SiO]_(c)-Si(OH)R^(1)_(2) (1-2)
(上記の各式中、R^(1)は同一または異種の、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1?10の1価炭化水素基であり、Xは同一または異種の炭素原子数2?10のアルケニル基であり、aは0、1または3、bは0以上の整数、cは0以上の整数であり、2a+b≧2、500≦b+c≦20,000である。)
【請求項4】
(A2)成分は、下記式(2)で表されるポリジオルガノシロキサンである請求項1に係る組成物。
R^(2)_(2)(HO)SiO-(R^(2)_(2)SiO)_(d)-SiR^(2)_(2)(OH) (2)
(式中、R^(2)は同一または異種の、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1?10の1価炭化水素基であり、dは500≦d≦20,000の整数である。)
【請求項5】
該(A2)成分と該(B)成分とが予め縮合反応した状態にある請求項1に係る組成物。」

(4B)[0036]-[0037] 「【0018】
<(A)及び(B)成分>
(A)及び(B)成分の配合比は、質量比で20/80?80/20であり、30/70?60/40、特に30/70?50/50とすることが好ましい。(A)成分のポリジオルガノシロキサンの配合比が20/80より低いと得られるシリコーン粘着剤組成物の粘着力や保持力が低下し、80/20を越えると粘着力やタックが低下する。
【0019】
(A)及び(B)成分は、(A1)、(A2)及び(B)成分を単純に混合したものを使用してもよいし、(A1)、(A2)及び(B)成分を一緒に縮合反応に供して縮合反応生成物としたものを使用してもよい。また、(A2)成分と(B)成分との縮合生成物を(A1)成分と混合して用いてもよい。即ち、(A2)成分と(B)成分を予め縮合反応させることが好ましい。上述のように、(A1)、(A2)及び(B)成分を予め一緒に縮合反応に供して使用することがより好ましい。反応縮合反応を行うには、トルエンなどの溶剤に溶解した(A)、(B)成分の混合物を、アルカリ性触媒を用い、室温乃至還流下で反応させ、必要に応じて中和すればよい。
アルカリ性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどの金属アルコキシド;ブチルリチウムなどの有機金属;カリウムシラノレート;アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの窒素化合物などがあげられるが、アンモニアガス又はアンモニア水が好ましい。縮合反応の温度は、20?150℃とすることができるが、通常は、室温?有機溶剤の還流温度でおこなえばよい。反応時間は、特に限定されないが、0.5時間から20時間、好ましくは1時間から10時間とすればよい。
さらに、反応終了後、必要に応じて、アルカリ性触媒を中和する中和剤を添加しても良い。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素などの酸性ガス;酢酸、オクチル酸、クエン酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸などが挙げられる。」

甲第5号証
(5A)「【請求項1】 下記の(A)?(C)成分よりなる感圧接着剤組成物
(A)次の成分(1) 、成分(2) と成分(3) とを縮合させてなるポリオルガノシロキサン、(1) 両末端にヒドロキシル基を有し、ケイ素原子に結合した有機基のうち 0.01 ?10モル%がアルケニル基であり、残りがアルキル基であり、平均重合度が50?10,000のポリジオルガノシロキサン 15?70重量部、(2) 両末端にヒドロキシル基を有し、ケイ素原子に結合した有機基が 1価のアルキル基であり、平均重合度が50?10,000のポリジオルガノシロキサ 0?55重量部、(3) R_(3) Si O_(1/2 )単位(式中、Rは 1価の炭化水素基を表す)とSi O_(2 )単位からなり、R_(3) Si O_(1/2) 単位とSi O_(2 )単位のモル比が 0.5:1.0 ? 1.0:1.0 であり、 1分子中にケイ素に結合した水酸基またはアルコキシ基を少なくとも 1個有するポリオルガノシロキサン共重合体 70?30重量部、
(B) 1分子中に平均 2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分中のアルケニル基 1個当り 0.01 ?20個のケイ素原子に結合した水素原子を与える量、及び
(C)白金系触媒 (A)成分と(B)成分の合計量に対し白金元素に換算して 0.1?1,000ppm。」

(5B)「【0012】(A)成分のポリオルガノシロキサンは、本発明の組成物の特徴となるベースポリマーであり、成分(1) のアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンと成分(3) の共重合体との縮合物、あるいは成分(1) および成分(2) のポリジアルキルシロキサンと成分(3) の共重合体との縮合物である。成分(1) のポリジオルガノシロキサンは、本質的に式
【0013】
【化1】

で示されるポリシロキサンジオールであり、分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水酸基を有する。少なくとも一方が水酸基でない場合は、成分(2) ,成分(3)との縮合物である(A)成分の粘着機能が低下し好ましくない。式中R^(1 )はアルキル基またはアルケニル基であり、フェニル基などのアリール基は含まない。R^(1) がこのような置換基であることにより、成分(1) 、(2) 、(3) の縮合反応が良好に行われ、得られる感圧接着剤の凝集力などが優れたものとなる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基などが例示され、アルケニル基としてはビニル基、アリル基などが例示される。フェニル基などのアリール基を含む場合は、成分(1) 、(2) 、(3) の反応が良好に行われず、得られる感圧接着剤の特性が不十分なものとなる。n は50?10,000の数であり、好ましくは 500?6,000である。n が10,000より大きいと、最終組成物のシリコーン感圧接着剤が非常に高粘度となり取扱いが困難となる。またn が50より小さいと、非常に低粘度となり感圧接着剤として必要とする塗膜厚に均一に塗布することが困難となる。また(A)成分は(B)成分であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)成分である白金系触媒の存在下で付加反応して硬化することが必要であり、そのため成分(1) のポリオルガノシロキサンのR^(1 )で示される有機基の内 0.01 ?10モル%はアルケニル基であることが必要である。好ましいアルケニル基の含有量は 0.05 ?5 モル%である。 0.01 モル%より少ないと架橋密度が小さくなり、感圧接着剤としての凝集力が不足し、保持力、接着力に優れたものを得ることができず、一方、10モル%より多いと架橋密度が大きくなり、接着剤層が硬くなるためタックおよび粘着力の乏しいものとなる。また成分(1) の構造は直鎖状であることが好ましいが、若干の分岐状構造を含んでもさしつかえない。成分(2) のポリジオルガノシロキサンは、本質的に式:
【0014】
【化2】

で示されるポリシロキサンジオールであり、分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水酸基を有する。両末端の少なくとも一方が水酸基でない場合は、成分(1) での説明と同様に(A)成分の粘着機能が低下し好ましくない。式中R^(2) は 1価のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基が例示される。n は 50 ? 10,000 の数であり好ましくは 500?6,000 である。n が 10,000 より大きいと、最終組成物のシリコーン感圧接着剤が非常に高粘度となり取扱いが困難となる。またn が50より小さいと、非常に低粘度となり感圧接着剤として必要とする塗膜厚に均一に塗布することが困難となる。また成分(2) の構造は直鎖状であることが好ましいが、若干の分岐状構造を含んでもさしつかえない。
【0015】成分(3) は成分(1) あるいは成分(1) および成分(2) との縮合反応により、粘着性を与えるものであって、R_(3) Si O_(1/2) 単位とSi O_(2) 単位とからなり、 1分子中にケイ素原子に結合した水酸基を少なくとも 1個有する共重合体である。ここでR_(3) は 1価の炭化水素基を示し、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基などが例示される。また、R_(3) Si O_(1/2 )単位とSi O_(2) 単位のモル比は 0.5: 1.0?1.0 :1.0 である。Si O_(2) 単位が多いと粘着力、タックが低下し、Si O_(2) 単位が少ないと凝集力が低下する。このようなポリオルガノシロキサンの合成方法は、トリオルガノクロロシラン又はトリオルガノアルコキシシランと、テトラクロロシラン又はテトラアルコキシシランを溶媒中にて 0.5:1.0 ? 1.0:1.0 のモル比にて共加水分解・縮合する方法が例示され、一般にはトルエン等の有機溶媒の溶液として得られる。
【0016】(A)成分は成分(1) 、成分(2) のポリジオルガノシロキサンと成分(3) のポリオルガノシロキサン共重合体とを加熱混合して縮合させることにより得られる。ポリジオルガノシロキサンである成分(1) と(2) の量が少なすぎる場合、粘着力、タックが乏しくなり、また多すぎる場合凝集力が乏しくなる。このため配合量は、成分(1) と(2) の合計量30?70重量部に対し、ポリオルガノシロキサン共重合体の成分(3) を70?30重量部とするのが、好適である。
【0017】ここで、アルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンの成分(1) およびポリジオルガノシロキサンの成分(2) との配合割合は、成分(1) の量が少なすぎる場合、凝集力が乏しくなるため、成分(1) の15?70重量部に対し成分(2) を 0?55重量部とするのが好適である。特に、良好な粘着力とタックが得られ、また凝集力が好ましいものとなることから、成分(1) の60?30重量部に対して成分(2) を10?30重量部とすることが好ましい。」

甲第6号証
(6A)「【請求項1】
ディスプレイ表面への光学部材貼着用の粘着剤であって、無溶剤型オルガノポリシロキサン(A)の架橋物からなり、前記オルガノポリシロキサン(A)の架橋前後における質量減少率が0.5%以下であることを特徴とするディスプレイ用粘着剤。
【請求項2】
JIS Z 0237に規定する180度引き剥がし粘着力が0.5?5N/cmであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用粘着剤。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、一分子中に珪素原子に結合するアルケニル基を2個以上有するジオルガノポリシロキサンと、一分子中に珪素原子に結合する水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有し、オルガノポリシロキサンが含有する珪素原子に結合したアルケニル基1モルあたり、珪素原子に結合した水素原子を1モルを超えて含有する組成物であることを特徴とする請求項1または2記載のディスプレイ用粘着剤。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサン(A)が式:SiO_(4/2) で示されるシロキサン単位と式:R_(3)SiO_(1/2)
(式中、Rは置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表す)
で示されるシロキサン単位とからなる、一分子中に珪素原子に結合するアルケニル基を1個以上有するレジン構造のオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項3記載のディスプレイ用粘着剤。」

(6B)「【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(A)は、一分子中に珪素原子に結合するアルケニル基を2個以上有するジオルガノポリシロキサン(a)と、一分子中に珪素原子に結合する水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(b)とを含有し、オルガノポリシロキサン(A)が含有する珪素原子に結合したアルケニル基1モルあたり、珪素原子に結合した水素原子を1モルを超えて含有する組成物であることが好ましい。
【0010】(省略)
【0011】(省略)
【0012】(省略)
【0013】(省略)
【0014】(省略)
【0015】
本発明においては、オルガノシロキサン(A)としては、上記(a)成分と(b)成分に加えて(c)成分として、レジン構造のオルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。
この(c)成分は、式:SiO_(4/2) で示されるシロキサン単位(以下、Q単位と呼ぶ。)と、式:R_(3)SiO_(1/2)
(式中、Rは置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
で示されるシロキサン単位(以下、M単位と呼ぶ。)とからなる、一分子中に珪素原子に結合するアルケニル基を有するレジン構造のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。この置換もしくは非置換の1価の炭化水素基としては、(a)成分の説明で述べたと同様の基を挙げることができる。
ここで、レジン構造のオルガノポリシロキサンとは、3次元架橋構造を有しているオルガノポリシロキサンである。このレジン構造のオルガノポリシロキサンは、組成によっては軟質ゲル状から硬質固体状の粒子状物質となることができ、透明性が高い補強性フィラーとしての機能を有するものである。
この(b)成分のオルガノポリシロキサンはポリスチレン換算の質量平均分子量が1,000?8,000の範囲にあるものであることが好ましい。
【0016】
(c)成分におけるM単位/Q単位は0.3?3が好ましく、0.7?1がより好ましい。このようなレジン構造のオルガノポリシロキサンは周知の方法で、各単位源となる化合物を求められる割合で組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解することによって合成することができる。このオルガノポリシロキサンは1種からなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
(c)成分の配合量は、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部に対して5?60質量部が好ましく、10?40質量部がより好ましい。(c)成分が5質量部未満であると、(c)成分の添加効果が発現できず、機械的強度が不充分となって粘着力が低下する傾向にある。また60質量部を超えて添加すると、硬化物の硬さが高くなり、可撓性が低下する。(c)成分中のアルケニル基の量は、0.05?0.2モル/100gであることが好ましい。」

甲第7号証
(7A)甲第7号証には、「4.4 アルカリ触媒による環状シロキサンの重合」(98?98頁)及び「4.5 酸触媒による環状ジメチルシロキサンの重合」(98?99頁)で、ジメチルポリシロキサンの重合技術が記載されている。そして、当該記載によれば、得られるジメチルポリシロキサンは、いずれも末端にシラノール基が導入されている。

(7B)甲第7号証には、「図5.3 ジメチルシリコーンオイルの分子量と,重合度と粘度の関係」(116頁)で、ジメチルポリシロキサンの重合度と粘度の相関関係が示されている。

4-3.甲第1号証記載の発明(以下、「甲1発明」という。)

(ア) 上記摘示事項(1A)及び(1G)によれば、甲第1号証には、「基材フィルムと、該基材フィルムの片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン及び(C)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンを含むシリコーン組成物から調製された粘着性フィルムにおいて、アルケニル基が(A)ジオルガノポリシロキサン100g中に0.0007?0.05モルで含まれ、及び、(C)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンが、(A)成分中のアルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5?20となる量で該組成物中に含有されており、そして、前記シリコーン組成物が、
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 95?40質量部
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサン(R^(1)は炭素数1から10の1価炭化水素基。) 5?60質量部
(D)制御剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して0?8.0質量部
(E)付加反応触媒 (A)と(B)の合計100質量部に対し、貴金属分として5?2000ppm
(F)有機溶剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して 25?900質量部
を含み、(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物として、シリコーン粘着剤組成物に含まれる粘着性フィルム」が記載されていると認められる。

(イ) 上記摘示事項(1E)によれば、甲第1号証における「(C)SiH基を含有するポリオルガノシロキサン」は、「1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノヒドロシロキサン」である。

(ウ) 上記摘示事項(1H)によれば、甲第1号証に記載された粘着性フィルムは、ディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用されるものであるから、ディスプレイ用保護フィルムである。

(エ) 上記摘示事項(1B)によれば、甲第1号証に記載された粘着性フィルムは、貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適なフィルムである。

上記検討事項(ア)ないし(エ)より、甲第1号証には、
「基材フィルムと、該基材フィルムの片面上に形成された粘着層とを備え、該粘着層が(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン及び(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノヒドロシロキサンを含むシリコーン組成物から調製された粘着性フィルムにおいて、アルケニル基が(A)ジオルガノポリシロキサン100g中に0.0007?0.05モルで含まれ、及び、(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノヒドロシロキサンが、(A)成分中のアルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5?20となる量で該組成物中に含有されており、そして、前記シリコーン組成物が、
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 95?40質量部
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサン(R^(1)は炭素数1から10の1価炭化水素基。) 5?60質量部
(D)制御剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して0?8.0質量部
(E)付加反応触媒 (A)と(B)の合計100質量部に対し、貴金属分として5?2000ppm
(F)有機溶剤 (A)と(B)の合計100質量部に対して 25?900質量部
を含み、(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物として、シリコーン粘着剤組成物に含まれる、貼り付け時に気泡巻き込みがなく、また、貼付後には、独りでにずれたり、はがれたりしないが、手で剥離するのは容易である、フラットパネルディスプレイに貼付するのに好適なディスプレイ用保護フィルム。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

4-4.対比・判断

(あ)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
○甲1発明は、基材フィルムの片面上に粘着層が形成された構造であり、全体としてシート状基材からなるといえるから、甲1発明と本件特許発明1とは、「シート状基材からなるディスプレイ用保護フィルム」である点で一致する。

○甲1発明のシリコーン粘着剤組成物は、手で剥離するのが容易であるから、再剥離性を有するものと認められ、したがって、甲1発明の『「シリコーン組成物から調製された」「粘着層」』は、本件特許発明1の『シリコーン系再剥離性粘着剤組成物を硬化させてなる再剥離性粘着層』に相当する。

○甲1発明の「(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物」は、(A)成分がジオルガノポリシロキサンであり、(B)成分がR^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサンであり、塩基触媒存在下での反応は縮合反応であるから、甲1発明の「(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物」と本件特許発明1の「(A)オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物」とは、「オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物」である点で一致する。

○甲1発明の「(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン」は、本件特許発明1の「(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン」に相当する。

○甲1発明の「(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノヒドロシロキサン」は、本件特許発明1の「(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に相当する。
そして、甲1発明の「(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノヒドロシロキサンが、(A)成分中のアルケニル基に対するSiH基のモル比が0.5?20となる量で該組成物中に含有され」と本件特許発明1の「前記[成分(C)中のケイ素原子結合水素原子]と前記[成分(B)中のアルケニル基] のモル比が0.3?5.0となる量」とは重複一致する範囲を有する。

○甲1発明の「(E)付加反応触媒」は、上記摘示事項(1E)、及び、ここでいう「付加反応」は(A)成分のアルケニル基と(C)成分の水素原子との「ヒドロシリル化反応」を意味するとの技術常識に照らせば、本件特許発明1の「(D)ヒドロシリル化反応用白金系触媒」に相当するといえる。

○甲1発明の「(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる」とは、(A)成分がジオルガノポリシロキサン、(B)成分がオルガノポリシロキサンレジンであり、塩基触媒が縮合反応触媒に対応するから、甲1発明の「(A)及び(B)成分の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる」と本件特許発明1の「(a1)・・オルガノポリシロキサンレジン・・と、(a2)・・ジオルガノポリシロキサン・・との、(a3)縮合反応触媒の存在下での縮合反応により得られる」とは、「オルガノポリシロキサンレジンとジオルガノポリシロキサンとの縮合反応触媒の存在下での縮合反応により得られる」ことを意味する点で一致する。

とするならば、本件特許発明1と甲1発明とは以下の点で相違し、その他の点で一致すると認められる。

<相違点1>
「(A)オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物」が、本件特許発明1では、「(a1) R^(1)_(3)SiO_(1/2)単位(式中、R^(1)は各々独立に水酸基、炭素原子数1?6のアルコキシ基または炭素原子数1?10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。)とSiO_(4/2)単位から成り、SiO_(4/2)単位に対するR^(1)_(3)SiO_(1/2)単位のモル比が0.6?1.0であり、水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3?2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、
(a2) 一分子中に少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1?6のアルコキシ基を有する平均重合度100?1000の直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサン 20?150重量部との、
(a3)縮合反応触媒の存在下での縮合反応により得られる」ものに特定されているのに対し、甲1発明では、『「(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 95?40質量部
(B)R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位およびSiO_(2)単位を含有し、R^(1)_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位のモル比が0.6?1.7であるポリオルガノシロキサン(R^(1)は炭素数1から10の1価炭化水素基。) 5?60質量部」「の一部または全部が、塩基触媒存在下で反応させて得られる生成物」』である点。

<相違点2>
(A)成分と(B)成分との量比に関し、本件特許発明1では、「(A)オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物 100重量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 10?900重量部」であることが特定されているのに対し、甲1発明では斯かる事項が特定されていない点。

上記相違点1、2について併せて検討すると、特許異議申立人は、特許異議申立書の24頁において、上記摘示事項(1I)の実施例2における「ポリジメチルシロキサンA2の末端封鎖率を甲2の記載に準じて末端封鎖率を80モル%とすると、甲1の段落[0072]の[化7]は、下記(i)、(ii)

において、式(i)が80モル%、式(ii)が20モル%である。
この場合、ポリシロキサンB(のOH基)と縮合反応しうるポリジメチルシロキサンA2は式(ii)のものであり、式(i)のポリジメチルシロキサンA2は縮合反応することなく、そのまま残存するので、式(i)のポリジメチルシロキサンA2の残存量(含有量)は
70×0.8=56部
である。
また、上記縮合反応物の含有量は、
70×0.2+30=44部
である。」(注:上記下線は、当審が付した。)と述べており、これによれば、甲1発明の一態様である実施例2において、シリコーン組成物には、ポリシロキサンB 100重量部(30部)に対して、ポリジメチルシロキサンA2 47重量部(14部)が反応して得られたオルガノポリシロキサンレジン(ポリシロキサンB)-オルガノポリシロキサン(ポリジメチルシロキサンA2)縮合反応物が100重量部(44部)、未反応の1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(ポリジメチルシロキサンA2)が約127重量部(56部)含有されることになるから、10?900重量部の範囲であり、相違点2は実質的な相違点でないことになる。
また、本件特許発明1の(a1)成分に相当する甲1発明のポリシロキサンBは、Me_(3)SiO_(0.5)単位/SiO_(2)単位=0.85であるから、「SiO_(4/2)単位から成り、SiO_(4/2)単位に対するR^(1)_(3)SiO_(1/2)単位のモル比が0.6?1.0」の要件を満たす
しかしながら、甲1発明において、本件特許発明1の(a1)成分に相当するポリシロキサンBの「水酸基またはアルコキシ基の含有量」は不明である。また、本件特許発明1の(a2)成分に相当する甲1発明のポリジメチルシロキサンA2は、重合度が約6600であるから、「平均重合度100?1000」の要件を満たしていない。

この点について検討すると、甲1発明の(B)成分の「水酸基またはアルコキシ基の含有量」については、上記摘示事項(1D)の【0019】に「(B)成分はOH基を有していてもよく、OH基含有量は(B)成分総重量の0.01?4.0質量%のものが好ましい。」と記載されていることから、(B)成分総重量の0.3?2.0質量%を選択することは好適化の範囲内といえる。
また、甲1発明の(A)成分の重合度に関し、上記摘示事項(1C)の【0015】に「(A)成分の粘度は25℃において、オイル状のものであれば10mPa・s以上。特に100mPa・s以上が好ましい。・・また、生ゴム状のものであれば、30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が100,000mPa・s以下が好ましい。」と記載されており、25℃において10mPa・s以上のシリコーンオイルも適宜選択可能であることが記載ないし示唆されているといえるところ、25℃において10mPa・s程度の低粘度であるシリコーンオイルの平均重合度はかなり小さいものと推察されるから、甲1発明の(A)成分の許容される(広範な)重合度の範囲の中には、本件特許発明1の(a2)成分の許容される平均重合度である100?1000と重複する範囲が存在する可能性はある。
しかしながら、上記下線を付した「ポリジメチルシロキサンA2の末端封鎖率を甲2の記載に準じて末端封鎖率を80モル%とする」との仮定の妥当性、及び、それを前提として導き出された相違点2に関する検討結果の妥当性を認めることができない。すなわち、甲1には、例えば、上記摘示事項(1C)の【0012】で、【化2】として、(A)成分の末端に水酸基を有するものも選択し得ることが示されており、また、【0016】に、「(A)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのモノマーを、触媒を用いて開環重合させて製造する」と記載されているところ、上記摘示事項(7A)によれば、開環重合で得られるポリジオルガノシロキサンは末端に水酸基を有するものであるから、開環重合して製造されるポリジオルガノシロキサンは【化2】の分子構造を有するものと理解され、それの末端水酸基を封鎖することで【化1】のポリジオルガノシロキサンが得られるものと推察される。そして、甲第1号証では、【化1】のポリジオルガノシロキサンと【化2】のポリジオルガノシロキサンは区別されているところ、上記摘示事項(1I)の実施例2で用いられているポリジメチルシロキサンA2は【化1】のタイプのものであって、【化2】との混合物であることが記載も示唆もされていない。とするならば、当該実施例2で用いられているポリジメチルシロキサンA2には、末端水酸基が封鎖されていないものは含まれていないか、実質的に含まれていないとして取り扱い得るものと推察される。
また、甲1発明の一態様である実施例2において、ポリジメチルシロキサンA2の末端封鎖率を80モル%と仮定する根拠に用いられた甲第2号証に記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、金型で成型に用いるものであって、粘着剤とは異なる技術分野に属するものである(上記摘示事項(2B)参照)。さらに、甲第2号証では、従来は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムが、末端単位の20モル%を越えてシラノール基が存在していたことが記載され(上記摘示事項(2C))、特許請求の範囲に係る発明は、これを、「シラノール基で停止した末端が、末端単位の20モル%以下であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴム」を用いることを特徴とするものであり、上記摘示事項(2D)、(2E)を参照しても、80%という数値が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン生ゴムの一般的な末端封鎖率の数値であると認めることもできないから、甲1発明の一態様である実施例2のシリコーンゴム粘着剤組成物を理解する際、ポリジメチルシロキサンA2の末端封鎖率を80%と認めることは技術的根拠に欠くといわざるを得ない。
さらに、甲第3号証ないし甲第6号証(上記摘示事項(3A)ないし(6B)参照)には、いずれも、オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物、アルケニル基含有ポリジオルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有し得る点で、甲1発明と類似したシリコーン粘着剤組成物に関する技術が開示されているが、上記相違点1、2に関して、当該相違点を埋められるような技術的事項が記載も示唆もされていない。また、甲第7号証には、ジメチルポリシロキサンの一般的な重合技術であったり、ジメチルポリシロキサンの重合度と粘度の相関関係についての一般的な知見が記載されているのすぎず、上記相違点1、2に関して、当該相違点を埋められるような技術的事項が記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、少なくともこの点で、甲1発明から容易に想到し得るものでない。

(い)本件特許発明2ないし4、7ないし11について

本件特許発明2ないし4、7ないし11は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、上記甲1発明から当業者が容易になし得るものでない。

(う)本件特許発明12について

本件特許発明12の「再剥離性粘着剤組成物の使用」技術は、本件特許発明1の「ディスプレイ用保護フィルム」のシート状基材が有する「再剥離性粘着剤組成物」を使用する技術であるから、甲1発明との一致点及び相違点については、本件特許発明1と同様となる。そして、その相違点に係る技術事項は、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、上記甲1発明から当業者が容易に想到し得るものでない。

以上のとおり、本件特許発明1ないし4、7ないし12に係る発明は、甲1発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

5.申立て理由Bについて

(5-1)本件特許の請求項1における「(A)オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物は、・・水酸基またはアルコキシ基の含有量が0.3?2.0重量%の範囲にあるオルガノポリシロキサンレジン 100重量部と、・・一分子中に少なくとも1個の水酸基または・・アルコキシ基を有する・・ジオルガノポリシロキサン 20?150重量部との、・・縮合反応触媒の存在下での縮合反応により得られる」との記載について検討すると、「水酸基またはアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンレジン」と「水酸基またはアルコキシ基を有するジオルガノポリシロキサン」の縮合反応を「縮合反応触媒の存在下」で行うことは技術常識であるから、物の発明において、その製造に関して、技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当せず、物である「オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物」が、特段不明確であるとはいえない。

(5-2)本件特許の請求項1等における「硬化させてなる」も、その製造に関して、技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当せず、単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎないので、「その物の製造方法が記載されている場合」に該当しない。そして、物である「再剥離性粘着層」が、特段不明確であるとはいえない。

(5-3)本件の請求項9が請求項8を引用している点について検討すると、請求項8と請求項9とは、「再剥離性粘着層が、5?60μmの厚さを有し、かつ、
前記(A)オルガノポリシロキサンレジン-オルガノポリシロキサン縮合反応物 100重量部および
前記(B)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 150重量部
を含有する前記シリコーン系再剥離性粘着剤組成物を硬化させてなる」態様を含む点で重複することから、「請求項9において請求項8に従属する態様が不明」であるとまではいえない。

6.むすび

したがって、特許異議申立人信越化学工業株式会社によりされた特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1ないし12を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-05-13 
出願番号 特願2011-550041(P2011-550041)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C09J)
P 1 651・ 537- Y (C09J)
P 1 651・ 113- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 岩田 行剛
橋本 栄和
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5775826号(P5775826)
権利者 東レ・ダウコーニング株式会社
発明の名称 シリコーン系再剥離性粘着剤組成物、該組成物を硬化させてなる再剥離粘着層を有するシート状基材、その保護フィルムまたは固定シートとしての使用  
代理人 志賀 正武  
代理人 杉村 憲司  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
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