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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1314727
審判番号 不服2014-19293  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-26 
確定日 2016-04-25 
事件の表示 特願2012-113301「小さな画像又は大きな画像を処理する小さなラインバッファを容易に用いる技術」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 1日出願公開、特開2012-212436〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2007年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年4月11日、米国)を国際出願日とした特願2009-505581号の一部を平成24年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月24日付けの拒絶理由通知に対し、平成25年12月10日付けで、意見書・手続補正書が提出され、平成26年5月20日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成26年9月26日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成26年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年9月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年12月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「電子デバイスによって取得された画像を処理する方法であって、
複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含むメモリを提供することと、
第1の画像処理モジュールと、第2の画像処理モジュールとを含むフロントエンド処理ユニットを提供することと、
前記電子デバイスを用いて第1の画像を取得することと、
前記第1の画像の画像幅を収納できる大きさのラインバッファを用いて前記第1の画像を処理することと、
前記電子デバイスを用いて、前記第1の画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する第2の画像を取得することと、
前記ラインバッファを用いて、第1の縦縞および第2の縦縞を含む、前記第2の画像の縦縞を処理することとを備え、前記第2の画像の縦縞は、前記ラインバッファ内に収まる幅を定める方法。」

という発明を、平成26年9月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「電子デバイスによって取得された画像を処理する方法であって、
複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含むメモリを提供することと、
第1の画像処理モジュールと、第2の画像処理モジュールとを含むフロントエンド処理ユニットを提供することと、
前記電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得することと、
前記ビューファインダ画像の幅と一致する幅のラインバッファを用いて前記ビューファインダ画像を処理することと、
静止画像取得モードにおいて、前記電子デバイスを用いて、前記ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像を取得することと、
前記ラインバッファを用いて、第1の縦縞および第2の縦縞を含む、前記静止画像の縦縞を処理することとを備え、前記静止画像の縦縞は、前記ラインバッファ内に収まる幅を定める方法。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は当審で付したものである。

2.補正の適法性について

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、平成25年12月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「第1の画像」、「第2の画像」をそれぞれ「ビューファインダ画像」、「静止画像」と限定し、
「ラインバッファ」に関して、「前記第1の画像の画像幅を収納できる大きさ」を「前記ビューファインダ画像の幅と一致する幅」と限定し、
「第2の画像(静止画像)を取得すること」に関して、「静止画像取得モードにおいて」であることを限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件について

上記補正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
なお、A.?H.については、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成A」、・・・、「構成H」という。)

「A.電子デバイスによって取得された画像を処理する方法であって、
B.複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含むメモリを提供することと、
C.第1の画像処理モジュールと、第2の画像処理モジュールとを含むフロントエンド処理ユニットを提供することと、
D.前記電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得することと、
E.前記ビューファインダ画像の幅と一致する幅のラインバッファを用いて前記ビューファインダ画像を処理することと、
F.静止画像取得モードにおいて、前記電子デバイスを用いて、前記ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像を取得することと、
G.前記ラインバッファを用いて、第1の縦縞および第2の縦縞を含む、前記静止画像の縦縞を処理することとを備え、
H.前記静止画像の縦縞は、前記ラインバッファ内に収まる幅を定める方法。」

(2)刊行物1発明

原審の拒絶理由に引用された、得開2006-5596号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「半導体集積回路装置及び撮像装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、静止画と動画の両方の画像を撮影するための半導体集積回路装置及び撮像装置に関し、特に、多画素撮像素子と映像信号を格納するメモリとを用いて撮影を行う技術に関する。」

イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
静止画と動画の両方の画像を撮影可能な撮像装置において高解像度化を実現するにあたっては、静止画撮影時は高解像度の映像信号に対する信号処理が要求され、動画や静止画の撮影のためのモニタリング時はフレームレートすなわち撮像素子からの信号出力レートの確保が要求される。しかしながら、本発明の発明者が発明の前提技術として検討した、図7に示すような従来の撮像装置回路構成では、高解像度化に伴い、映像信号処理に必要とするラインメモリの容量が増加することとなる。ラインメモリ容量の増加によりラインメモリを含んだ半導体集積回路装置の規模の増加に繋がり、そのチップ面積や消費電力の増加が問題となる。
【0004】
本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、静止画と動画の両方の画像を撮影可能とするための半導体集積回路装置及びこれを含んで構成される撮像装置において、従来よりもラインメモリ容量を削減して回路規模を抑えつつ、静止画撮影時の高解像度の映像信号に対する信号処理と、モニタリング時のフレームレートの確保との両方を実現できる技術を提供することである。」

ウ.「【0006】
前記目的を達成するために、本発明の半導体集積回路装置は、撮像素子から出力される信号(映像信号)を記憶するメモリ回路(フレームメモリ)と、前記メモリ回路から読み出した信号あるいは前記撮像素子から出力される信号を遅延させる少なくとも1ライン以上のラインメモリと、前記ラインメモリの出力をもとに映像信号を生成する映像信号処理回路と、を具備する装置であって、前記撮像素子からの出力信号を、その1フレームの水平方向画素数をHとしたときに(1/N)×H(Nは1以上の整数)になるようにリサイズ処理するサブサンプリング回路と、静止画撮影時とモニタリング時の動作切り替えを行う手段(動作モード切り替えレジスタ)と、を有し、前記ラインメモリの1ラインあたりの容量は、前記(1/N)×Hに対応した映像情報を保持して映像信号処理可能な分の容量であることを特徴とする。」

エ.「【0009】
モニタリングによる画角合わせは、通常、撮像素子出力に比べると画素数の少ないLCD(液晶ディスプレイ)モニタ等の表示装置を用いて行われるため、この場合は高解像度の映像信号の出力は要求されない。本発明では、前記表示装置でのモニタリング出力における水平方向画素数が、撮像装置を通じて撮影すなわち作成される静止画像の水平方向画素数Hに対して1/Nとなるシステムを前提とする。
【0010】
本発明では、モニタリング時は、撮像素子の出力する高解像度の映像信号に対して映像信号処理を行う前に、前記サブサンプリング回路によってサンプリング処理を行うことで、前記映像信号の1フレームの水平方向画素数が、前記モニタリング出力における水平方向画素数に合わせて1/Nとなるようにリサイズ(サイズ変更)する。これにより、1ラインあたりの容量が前記(1/N)×Hに対応した分の容量を持つラインメモリを用いて、前記映像信号を一旦フレームメモリに保存せずにリアルタイムで映像信号処理を行うことができる。このような技術手段により、従来のSDRAMを用いた撮像装置回路構成に対して少ない回路追加で撮像素子の出力信号に対する信号処理をリアルタイムに実行できる。
【0011】
一方、静止画撮影時は、フレームレートの確保は要求されないため、映像信号処理前に一旦フレームメモリに映像信号を保存し、保存した映像信号のフレームについて水平方向にN個の領域に分割して、N回に分けて映像信号処理回路で映像信号処理を行う。上記フレームの分割の領域ごとにフレームメモリからデータを読み出すようにフレームメモリを制御するメモリ回路制御部(メモリコントロール)により、前記フレームメモリに保存した映像信号を水平方向にN分割してラインメモリから読み出し、読み出された映像信号に対して映像信号処理を行って、再びフレームメモリに書き込む処理を行う。N個の領域に分割された映像信号に対して順次に映像信号処理を行ってフレームメモリへの書き込み時に元のデータと再合成することで、映像信号処理回路で一回の処理対象となる映像信号の1ライン分のデータは前記(1/N)×Hの分になるため、前記1ラインあたりが(1/N)×Hに対応した分の容量を持つラインメモリで1フレームの映像信号が信号処理可能となる。」

オ.「【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における撮像装置の構成を示すブロック図である。本撮像装置は、本発明の実施の形態1における半導体集積回路装置100Aを含んで構成される。
【0019】
実施の形態1の撮像装置は、静止画と動画の両画像を撮影可能な処理機能を内蔵したLSI100A、撮像素子1、撮像素子駆動回路2、A/D回路3、その他、図示しないLCDモニタ等のモニタリング用表示装置(以下、表示装置と称する)や撮影データを記憶する外部記憶装置等を有する構成である。表示装置や外部記憶装置に関しては、撮像装置に一体化された構成でもよいし、別装置として接続される構成でもよい。LSI100Aは、サブサンプリング回路4、カメラ信号処理回路5、電子ズーム処理回路6、画像圧縮回路7、出力IF(インターフェイス)8、動作モード切り替えレジスタ9、メモリコントロール10、SDRAM11、第一のラインメモリ12、第二のラインメモリ13、SW(スイッチ)14,15を有して構成される。
【0020】
本撮像装置は、動作モード切り替えレジスタ9によって、撮像素子駆動回路2、サブサンプリング回路4、第一のスイッチ14及び第二のスイッチ15の動作を切り替えることで、動作モードとしてモニタリングモードと静止画撮影モードとの切り替えを行う。モニタリングモードでは、モニタリング処理、すなわち表示装置に対し撮像素子1から所定のフレームレートを確保しつつ映像を出力する処理が行われる。静止画撮影モードでは、静止画撮影のために高解像度の映像信号を信号処理する処理が行われる。映像信号処理のための第一のラインメモリ12と第二のラインメモリ13は、映像信号のフレームの処理にあたりモニタリングに必要な水平方向画素数に対して信号処理を行える分の容量を持つ。
【0021】
撮像素子1は、水平方向・垂直方向の光電変換素子で入力光の光電変換を行って映像信号を出力する多画素撮像素子である。撮像素子駆動回路2は、撮像素子1を駆動する駆動回路である。A/D回路3は、撮像素子1から出力されるアナログの映像信号をアナログ/ディジタル変換(サンプリング)して出力データをLSI100Aのサブサンプリング回路4に入力する。
【0022】
サブサンプリング回路4は、動作モードに応じた制御に基づき、撮像素子1からA/D回路3を通じて入力される映像信号データをサンプリングして1/N(Nは1以上の整数)にリサイズする処理を行う。サブサンプリング回路4は、リサイズ処理時には、映像信号処理回路に供給するクロックをN画素単位で動作停止させ、このクロックに乗せるデータを撮像素子1からの出力信号のN画素ごとの加算平均値に乗せ換える処理を行う。なおこれらの値Nは、本明細書を通じて相互に対応する値である。このサンプリング処理の詳細については後述する。
【0023】
映像信号処理回路として、カメラ信号処理回路5と電子ズーム処理回路6を有する。カメラ信号処理回路5は、映像信号データに対してカメラ信号処理を行う。電子ズーム処理回路6は、映像信号データに対して電子ズーム処理を行う。各処理回路5,6は、それぞれに対応するラインメモリ12,13に格納されるデータに対し信号処理を行う。
【0024】
第一のラインメモリ12は、カメラ信号処理回路5におけるカメラ信号処理に用いるメモリである。第二のラインメモリ13は、電子ズーム処理回路6における電子ズーム処理に用いるメモリである。各ラインメモリ12,13は、対応する処理のために、メモリコントロール10を通じてSDRAM11から分割して読み出されるフレームのデータを記憶する。」

カ.「【0027】
次に、本撮像装置及びLSI100Aの動作について、まず、静止画撮影のための画角合わせの際に使用するモニタリング時の動作すなわちモニタリングモードについて説明する。撮像装置特にLSI100Aは、モニタリング時には、動作モード切り替えレジスタ9を用いて、スイッチ14がサブサンプリング回路4でのサブサンプリング処理後の映像信号データを直接カメラ信号処理回路5に入力するように設定し、かつ、スイッチ15が電子ズーム信号処理回路6の出力信号をそのまま出力IF8に出力するように設定する。
【0028】
本撮像装置及びLSI100Aでは、静止画撮影時に撮影される静止画像のフレームの水平方向画素数Hに対して、モニタリング時に必要な映像信号のフレームの水平方向画素数を(1/N)×Hとすることが前提である。この前提のもと、モニタリング時には、撮像素子1の出力する映像信号を、サブサンプリング回路4により、フレーム水平方向に(1/N)×Hにリサイズを行う。これにより処理対象フレームの水平方向画素数が1/Nになることから、カメラ信号処理に必要なラインメモリ12と電子ズーム処理に必要なラインメモリ13の容量が、図7に示す撮像装置回路構成で必要な各ラインメモリ12C,13Cの容量に比べると1/Nの容量で済むこととなる。カメラ信号処理回路5等での信号処理後の出力信号は、出力IF8から表示装置に出力される。上記動作により、リアルタイムに、所定のフレームレートを確保しながらモニタリングのための信号処理を実行できる。フレーム垂直方向のサンプリングについては撮像素子駆動回路2において制御する。
【0029】
ラインメモリ12,13の容量は、1ラインあたり、前記フレームの水平方向画素数Hに対して前記(1/N)×Hとなる分の容量としてもよいし、あるいは、それより多く(1/L)×H(1<L<N)となる容量としてもよい。」

キ.「【0033】
次に、本撮像装置及びLSI100Aの動作として、静止画撮影時の動作すなわち静止画撮影モードについて説明する。静止画撮影の処理時は、高解像度の映像信号を用いるため撮像素子1の出力信号のリサイズが必要ないので、サブサンプリング回路4でサブサンプリングを行わない。従って、撮像装置特にLSI100Aは、動作モード切り替えレジスタ9を通じて、サブサンプリング回路4に入力された映像信号に対しサンプリング処理を行わずそのまま出力するように設定する。また動作モード切り替えレジスタ9を通じて、スイッチ14がサブサンプリング回路4の出力信号をSDRAM11側に送るように設定し、スイッチ15が映像信号処理回路での信号処理後の出力信号をSDRAM11側に送るように設定する。上記設定に基づく動作により、撮像素子1からの1フレーム単位の出力信号が、メモリコントロール10を通じてSDRAM11に一旦保存される。
【0034】
そして、次の処理段階では、撮像装置特にLSI100Aは、SDRAM11に保存されたフレームについて、水平方向に所定枚数に分割して読み出して映像信号処理を行ってSDRAM11に再保存する。この分割数をNとする。これにより、カメラ信号処理回路5等で処理対象となる映像データの水平方向画素数が元の撮像素子1の出力するフレームに対して1/Nとなるため、ラインメモリ12,13では、図7の回路構成の場合と比較して1ラインにおけるワード長を1/Nに削減したメモリ容量で信号処理を実行できる。前記N枚に分割されたフレームの領域のそれぞれに対して順次、カメラ信号処理回路5及び電子ズーム処理回路6で信号処理を行い、処理後のデータについてSDRAM11への書き込み時に分割前のフレームと再合成する。上記分割処理により1フレームにおける全画素に対して信号処理を行うことができ高解像度の静止画撮影処理を達成できる。
【0035】
次に、図3、図4を参照して、前記分割処理を行う際のSDRAM11に対するフレームのデータの読み出し及び書き込みの方式についてより詳細に説明する。図3は、前記フレームの分割時のSDRAM11からのデータの読み出しの方式について示す説明図である。16は、撮像素子出力データ領域、17は電子ズーム処理のための切り出し範囲、18?20は分割時の読み出し範囲、21は分割時の読み出し順序を示す。
【0036】
16の実線の領域は、SDRAM11に格納される、撮像素子1からの1フレームのフルサイズ(全画素)の出力データを表わし、その水平方向画素数がHで表わされる。17の実線の領域は、前記1フレーム分の出力データの領域16において、電子ズーム処理のための切り出し範囲を表わす。この切り出し範囲は、電子ズーム処理回路6での電子ズーム処理における拡大率をMとしたときに、水平方向画素数が(1/M)×Hになる。領域17を破線で分割したうちの18の領域は、前記切り出し範囲を前記分割処理により水平方向にN枚に分割したときの1枚目の読み出し範囲を示す。同様に19の領域は2枚目の読み出し範囲を、20の領域はN枚目の読み出し範囲を示す。各読み出し範囲18?20の水平方向画素数は、前記切り出し範囲となる領域17を水平方向にN分割したものであるので、(1/M・N)×Hとなる。また21の矢印は、前記1枚目の読み出し範囲18におけるデータの読み出しの順序を示し、この順序で前記各読み出し範囲ごとに信号処理が行われる。すなわち各読み出し範囲において水平方向の分割された1ラインのデータについて処理され垂直方向の次の分割された1ラインについて処理される。
【0037】
図4は、前記図3のようにSDRAM11から分割して読み出した映像データに対して信号処理を行った後の出力信号についてのSDRAM11への書き込みの方式について示す説明図である。17bは電子ズーム処理のための切り出し範囲17に対応したSDRAM11への書き込み範囲、22?24は分割時の書き込み範囲、25は分割時の書き込み順序をそれぞれ示す。17bの実線の領域は、前記図3に示したSDRAM11からの切り出し範囲となった領域に対応し、この領域についてSDRAM11における信号処理前のフレームの格納領域に対し書き込みすなわち再合成がなされる。領域17bを破線で分割したうちの22の領域は、前記分割された1枚目の読み出し範囲に対応する信号処理出力のSDRAM11への書き込み範囲を示す。同様に、23の領域は2枚目の書き込み範囲を、24の領域はN枚目の書き込み範囲を示す。各書き込み範囲22?24の水平方向画素数は、読み出し及び信号処理前の1フレームを水平方向にN分割したものであるので、(1/N)×Hとなる。また25の矢印は、前記1枚目の書き込み範囲におけるデータの書き込みの順序を示し、この順序で前記各書き込み範囲ごとにSDRAM11への書き込みが行われる。
【0038】
前記分割処理では、まずSDRAM11から前記図3に示した分割した1枚目の読み出し範囲18を読み出してラインメモリ12,13に格納しつつこのデータに対してカメラ信号処理回路5、電子ズーム処理回路6で各信号処理を行った後、再びSDRAM11における前記図4に示した1枚目の書き込み範囲22に対し書き込みが行われる。次に前記2枚目の読み出し範囲19以降に対する信号処理を同様に行う。その際、フレームにおける分割の境界における連続性の再現のために、本撮像装置及びLSI100Aは、前記図3に示す領域18と領域19のように、データを水平方向でオーバーラップ(一部重複)してSDRAM11から読み出して処理を行う。」

このような事項を踏まえ、上記ア.?キ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)刊行物1には、上記ア.?エ.に記載があるように、ラインメモリ容量を削減して回路規模を抑えつつ、静止画撮影時の高解像度の映像信号に対する信号処理と、モニタリング時のフレームレートの確保との両方を実現することを目的とした撮像装置であり、その構成として、撮像素子から出力される信号を記憶するメモリ回路と、映像信号処理可能な分の容量であるラインメモリと、前記ラインメモリの出力をもとに映像信号を生成する映像信号処理回路とを具備し、静止画撮影時は、映像信号処理前に一旦フレームメモリに映像信号を保存し、保存した映像信号のフレームについて水平方向にN個の領域に分割して、N回に分けて映像信号処理回路で映像信号処理を行う、静止画と動画の両方の画像を撮影するための撮像装置について記載がある。

(b)上記エ.の段落【0010】、【0011】、オ.の段落【0021】、【0023】に記載があるように、刊行物1の撮像装置は、撮像素子からの映像信号に対して映像信号処理を行うものである。

(c)上記ウ.、エ.の段落【0011】、キ.に記載があるように、刊行物1の撮像装置は、撮像素子からの映像信号をそのまま保存し、映像信号処理後の映像信号を元のデータと再合成するように保存するフレームメモリを有するものである。

(d)上記オ.の段落【0019】、【0023】に記載があるように、刊行物1の撮像装置は、カメラ信号処理回路や電子ズーム処理回路を含む映像信号処理回路を有するものである。

(e)上記ウ.、エ.、オ.の段落【0019】、カ.、キ.の段落【0033】、【0034】、【0036】、【0038】に記載があるように、刊行物1の撮像装置は、
モニタリング時に、
撮像素子から水平方向画素数Hの映像信号を取得し、
表示装置でのモニタリング出力における水平方向画素数に合わせて、撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズし、
1ラインあたり(1/N)×Hの容量であるラインメモリを用いて、映像信号処理を行い、
静止画撮影モードでは、
撮像素子から水平方向画素数Hの映像信号を取得し、フレームメモリに保存し、
フレームメモリに保存された水平方向画素数Hのフレームを、水平方向にN枚に分割して、1枚目の読み出し範囲をラインメモリに格納して映像信号処理を行い、次に2枚目の読み出し範囲に対する映像信号処理を同様に行い、
一回の処理対象となる映像信号の1ライン分のデータは(1/N)×Hになるため、1ラインあたり(1/N)×Hの容量であるラインメモリで映像信号処理可能とするものである。

そして、刊行物1の撮像装置は、上記(b)?(e)に記載した動作を実施するものであるから、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。
なお、a.?h.については、説明のために当審にて付したものである。
(以下、「構成a」、・・・、「構成h」という。)


[刊行物1発明]

「a.撮像素子からの映像信号に対して映像信号処理を行う方法であって、
b.撮像素子からの映像信号をそのまま保存し、映像信号処理後の映像信号を元のデータと再合成するように保存するフレームメモリを有し、
c.カメラ信号処理回路や電子ズーム処理回路を含む映像信号処理回路を有し、
d.モニタリング時に、表示装置でのモニタリング出力における水平方向画素数に合わせて、撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたものを取得し、
e.1ラインあたり(1/N)×Hの容量であるラインメモリを用いて、映像信号処理を行い、
f.静止画撮影モードでは、撮像素子から水平方向画素数Hの映像信号を取得し、
g.静止画撮影モードでフレームメモリに保存されたフレームを、水平方向にN枚に分割して、1枚目の読み出し範囲をラインメモリに格納して映像信号処理を行い、次に2枚目の読み出し範囲に対する映像信号処理を同様に行い、
h.一回の処理対象となる映像信号の1ライン分のデータは(1/N)×Hになるため、1ラインあたり(1/N)×Hの容量であるラインメモリで映像信号処理可能とする方法。」

(3)補正後発明と刊行物1発明との対比と、一致点・相違点の認定

ア.対比

(ア-1)構成Aと構成aの対比

刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号」は、撮像素子によって取得された画像といえ、刊行物1発明の「撮像素子」は、補正後発明の「電子デバイス」に対応するので、刊行物1発明の構成aと、補正後発明の構成Aは対応する。

(ア-2)構成Bと構成bの対比

刊行物1発明の「フレームメモリ」は、補正後発明の「メモリ」に対応し、「フレームメモリを有」することは、「メモリを提供」することに対応する。

刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号」、「映像信号処理後の映像信号」は、それぞれ、撮像素子からの処理されていない『生』の状態の映像信号、処理された映像信号であり、
刊行物1発明の「映像信号」は、フレームから構成され、フレームは、複数のラインから構成されているものである。
そして、刊行物1発明の「フレームメモリ」は、「撮像素子からの映像信号をそのまま保存し、映像信号処理後の複数の処理されたラインのデータを元のデータと再合成するように保存する」ものであり、「撮像素子からの映像信号」と「映像信号処理後の映像信号」は、同じ領域に上書きするように保存されている。
すなわち、刊行物1発明の「フレームメモリ」は、複数の『生ラインのデータ』と複数の『処理されたラインのデータ』を同じ領域に上書きするように保存されているといえる。

一方、補正後発明の「複数の生ラインバッファ」、「複数の処理されたラインバッファ」とは、それぞれ、複数の生ラインのデータが格納されているバッファ、複数の処理されたラインのデータが格納されているバッファといえる。
そして、「複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含む」、すなわち、「複数の生ラインバッファ」と「複数の処理されたラインバッファ」は異なるバッファであるから、複数の生ラインのデータと複数の処理されたラインのデータは異なる領域に格納されている。

そうすると、刊行物1発明の「フレームメモリ」も、補正後発明の「メモリ」も、複数の生ラインのデータ(撮像素子からの映像信号)と、複数の処理されたラインのデータ(映像信号処理後の映像信号)を格納することから、刊行物1発明の構成bと、補正後発明の構成Bは、『複数の生ラインのデータと、複数の処理されたラインのデータを格納するメモリを提供することと、』である点で共通する。
しかしながら、刊行物1発明の「フレームメモリ」は、複数の生ラインのデータと複数の処理されたラインのデータと、同じ領域に上書きするように保存するのに対し、補正後発明の「メモリ」は、複数の生ラインのデータと複数の処理されたラインのデータを、異なる領域に格納しているという点で相違する。

(ア-3)構成Cと構成cの対比

刊行物1発明の「カメラ信号処理回路」、「電子ズーム処理回路」は、それぞれ画像を処理するモジュールであるといえるので、補正後発明の「第1の画像処理モジュール」、「第2の画像処理モジュール」に対応する。
また、刊行物1発明の「映像信号処理回路」は、フロントエンド処理を行っているものといえるので、補正後発明の「フロントエンド処理ユニット」に対応する。
したがって、刊行物1発明の構成cは、補正後発明の構成Cに対応する。

(ア-4)構成Dと構成dの対比

刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」は、「モニタリング時に、表示装置でのモニタリング出力」するためのものであり、刊行物1の段落【0048】の記載から、刊行物1発明の構成は、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラに搭載されていることを考えると、ビューファインダでモニタリングするものといえるから、刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」は、補正後発明の「ビューファインダ画像」に対応する。
そして、「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたものを取得」するのであるから、「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」は、撮像素子を用いて取得されたものといえる。
そうすると、上記(ア-1)のように、刊行物1発明の「撮像素子」は、補正後発明の「電子デバイス」に対応するので、刊行物1発明の構成dと、補正後発明の構成Dは対応する。

(ア-5)構成Eと構成eの対比

刊行物1発明の「ラインメモリ」は、「1ラインあたり(1/N)×Hの容量」であるから、ラインメモリの幅は、(1/N)×Hである。
そうすると、ラインメモリの幅は、構成dにおいて、「表示装置でのモニタリング出力における水平方向画素数に合わせて、撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズした」幅と一致することになる。
また、刊行物1発明の「ラインメモリを用いて、映像信号処理を行」うことは、「モニタリング時」であるから、構成dの「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」を処理することといえるので、補正後発明の「ラインバッファを用いて前記ビューファインダ画像を処理すること」に対応する。
そうすると、刊行物1発明の構成eと、補正後発明の構成Eは対応する。

(ア-6)構成Fと構成fの対比

刊行物1発明の「静止画撮影モード」は、補正後発明の「静止画像取得モード」に対応する。
刊行物1発明において、「水平方向画素数Hの映像信号」は、構成dにおける「サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」の画像幅より大きい画像幅であり、静止画像であるので、刊行物1発明の「水平方向画素数Hの映像信号」は、補正後発明の「前記ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像」に対応する。
そして、刊行物1発明の「水平方向画素数Hの映像信号」は、「撮像素子から」の映像信号であるから、撮像素子を用いて取得されたものといえる。
そうすると、上記(ア-1)のように、刊行物1発明の「撮像素子」は、補正後発明の「電子デバイス」に対応するので、刊行物1発明の構成fと、補正後発明の構成Fは対応する。

(ア-7)構成Gと構成gの対比

刊行物1発明の「フレームメモリに保存されたフレーム」は、静止画撮影モードであるから静止画像であり、図3をみるに、「N枚に分割し」たそれぞれは、補正後発明の「静止画像の縦縞」に対応し、刊行物1発明の「1枚目の読み出し範囲」、「2枚目の読み出し範囲」は、それぞれ、補正後発明の「第1の縦縞」、「第2の縦縞」に対応する。
そして、「1枚目の読み出し範囲をラインメモリに格納して映像信号処理を行い、次に2枚目の読み出し範囲に対する映像信号処理を同様に行」うので、ラインメモリを用いて、各縦縞を処理するものといえる。
したがって、刊行物1発明の構成gと、補正後発明の構成Gは対応する。

(ア-8)構成Hと構成hの対比

刊行物1発明の「一回の処理対象となる映像信号」は、構成gにおいて、水平方向にN枚に分割したものであるから、上記(ア-7)のように、補正後発明の「静止画像の縦縞」に対応する。
そして、「一回の処理対象となる映像信号の1ライン分のデータは(1/N)×H」であり、「1ラインあたり(1/N)×Hの容量であるラインメモリで映像信号処理可能とする」ので、ラインメモリに収まる幅であるといえる。
したがって、刊行物1発明の構成hと、補正後発明の構成Hは対応する。

イ.一致点・相違点

したがって、刊行物1発明と補正後発明は、以下の点で一致ないし相違する、

[一致点]
「電子デバイスによって取得された画像を処理する方法であって、
複数の生ラインのデータと、複数の処理されたラインのデータを含むメモリを提供することと、
第1の画像処理モジュールと、第2の画像処理モジュールとを含むフロントエンド処理ユニットを提供することと、
前記電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得することと、
前記ビューファインダ画像の幅と一致する幅のラインバッファを用いて前記ビューファインダ画像を処理することと、
静止画像取得モードにおいて、前記電子デバイスを用いて、前記ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像を取得することと、
前記ラインバッファを用いて、第1の縦縞および第2の縦縞を含む、前記静止画像の縦縞を処理することとを備え、
前記静止画像の縦縞は、前記ラインバッファ内に収まる幅を定める方法。」

[相違点]

「複数の生ラインのデータと、複数の処理されたラインのデータを格納するメモリ」に関し、補正後発明の「メモリ」は、「複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含む」のに対し、刊行物1発明は、「撮像素子からの映像信号をそのまま保存し、映像信号処理後の映像信号を元のデータと再合成するように保存する」ものである点。

ウ.当審の判断

上記相違点について検討する。
刊行物1発明も補正後発明も、複数の生ラインと、複数の処理されたラインをメモリに格納するものであり、複数の処理されたラインは、複数の生ラインを別モジュールで処理したラインである。
メモリ内の元画像を処理して、処理された画像を再格納する際に、どの領域に格納するかを考えた場合、元画像の格納された領域に上書き格納すること、元画像の格納された領域と異なる領域に格納することのいずれについても、メモリ格納としては周知の技術であり、メモリの容量等を勘案することにより適宜決めれば良いことである。
そうすると、刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号をそのまま保存し、映像信号処理後の映像信号を元のデータと再合成するように保存するフレームメモリ(複数の生ラインと複数の処理されたラインを保存するメモリ)」において、元のデータと再合成するように保存することに代えて、各ラインをメモリ内の異なる領域に格納するという周知技術を適用することにより、「複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含むメモリ」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

よって、相違点については、格別のものではなく、補正後発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、補正後発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、審判請求人は、審判請求書にて、
「引例1は、高解像度の画像を出力する画像センサについて開示しています。システムが、「モニタリング」モードにある場合、高解像度の画像はサブサンプリングされて、画像をリサイズし、水平の解像度を低減します。画像のリサイズによって、フレームメモリを用いて映像信号を保存することなく、より小さい画像をラインメモリ容量にマッチングさせます。後に、静止画が撮影される場合、フレームは水平方向にN分割されて、ラインメモリも使用されます。(段落番号[0011]参照。)
しかしながら、引例1においては、本願の補正後の独立項に規定されるような、電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得し、ビューファインダ画像の幅と一致する幅のラインバッファを用いてビューファインダ画像を処理し、静止画像取得モードにおいて、電子デバイスを用いて、ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像を取得することは、開示も示唆もされていません。少なくともこの理由により、本願の補正後の独立項に係る発明は、引例1とは異なっています。」
と主張している。
しかし、上記(3)ア.(ア-4)及び(ア-6)で検討したように、刊行物1発明の「撮像素子からの映像信号を、サブサンプリング回路により水平方向画素数Hを(1/N)×Hにリサイズしたもの」は、撮像素子を用いて取得されたものといえ、「水平方向画素数Hの映像信号」は、「撮像素子からの」映像信号であるから、撮像素子を用いて取得されたものといえるものであるから、電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得し、ビューファインダ画像の幅と一致する幅のラインバッファを用いてビューファインダ画像を処理し、静止画像取得モードにおいて、電子デバイスを用いて、ビューファインダ画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する静止画像を取得するものである。
さらに、補正後発明の構成Dの「電子デバイスを用いてビューファインダ画像を取得」が、電子デバイスを用いて(サブサンプリングをすることなしに)ビューファインダ画像を取得することを意味するとしても、モニタリング時には、低解像度画像を取得し、静止画モード時には、高解像度画像を取得する撮像素子は周知(例えば、特開2005-107252号公報、特開2004-96611号公報、特開2003-116061号公報)であるから、補正後発明は、容易に発明することができたものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年9月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成25年12月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「電子デバイスによって取得された画像を処理する方法であって、
複数の生ラインバッファと、複数の処理されたラインバッファとを含むメモリを提供することと、
第1の画像処理モジュールと、第2の画像処理モジュールとを含むフロントエンド処理ユニットを提供することと、
前記電子デバイスを用いて第1の画像を取得することと、
前記第1の画像の画像幅を収納できる大きさのラインバッファを用いて前記第1の画像を処理することと、
前記電子デバイスを用いて、前記第1の画像の画像幅よりも大きい画像幅を有する第2の画像を取得することと、
前記ラインバッファを用いて、第1の縦縞および第2の縦縞を含む、前記第2の画像の縦縞を処理することとを備え、前記第2の画像の縦縞は、前記ラインバッファ内に収まる幅を定める方法。」

2.刊行物1発明

原審の拒絶理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記第2.3.で検討した補正後発明における
「ビューファインダ画像」、「静止画像」を、「第1の画像」、「第2の画像」とし、
「ラインバッファ」、「第2の画像(静止画像)を取得すること」についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正後発明が、前記第2.3.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-07 
結審通知日 2015-08-18 
審決日 2015-09-04 
出願番号 特願2012-113301(P2012-113301)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 572- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鹿野 博嗣▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 小さな画像又は大きな画像を処理する小さなラインバッファを容易に用いる技術  
代理人 砂川 克  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  

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