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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02M
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02M
管理番号 1314754
審判番号 不服2015-7344  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-20 
確定日 2016-05-12 
事件の表示 特願2013- 93876「半導体スイッチ回路および電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日出願公開、特開2013-146189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年2月6日に出願した特願2007-26751号の一部を平成25年4月26日に新たな出願としたものであって、平成27年1月13日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成27年1月20日)、これに対し、平成27年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年12月24日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年1月5日)、これに対し、平成28年2月29日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成28年2月29日付手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
逆導通ダイオードが内蔵された第1のスイッチング素子と、
寄生ダイオードが内蔵され、前記逆導通ダイオードのアノード側と前記寄生ダイオードのアノード側とが接続されて前記第1のスイッチング素子に直列接続された第2のスイッチング素子と、
前記逆導通ダイオードと同じ導通方向となるように前記第1及び第2のスイッチング素子に並列接続され、前記逆導通ダイオードに比べてチップ面積が小さく、順方向の電圧降下が高いダイオードと、
前記第1及び第2のスイッチング素子の開閉を、前記第1のスイッチング素子の開閉タイミングと、前記第2のスイッチング素子の開閉タイミングとを同期して制御するゲート駆動手段と、を備え、
前記第2のスイッチング素子の耐圧は、前記第1のスイッチング素子の耐圧の半分以下であり、
前記ダイオードのカソード側が正極端子に接続され、アノード側が負極端子に接続された半導体スイッチ回路。
【請求項2】
第1及び第2の半導体スイッチ回路が直列に接続され、前記半導体スイッチ回路の開閉を制御するゲート駆動手段を備える電力変換装置において、
前記第1の半導体スイッチ回路は、
第1の逆導通ダイオードが内蔵された第1のスイッチング素子と、
第1の寄生ダイオードが内蔵され、前記第1の逆導通ダイオードのアノード側と前記第1の寄生ダイオードのアノード側とが接続されて前記第1のスイッチング素子に直列接続された第2のスイッチング素子と、
前記第1の逆導通ダイオードと同じ導通方向となるように前記第1及び第2のスイッチング素子に並列接続され、前記第1の逆導通ダイオードに比べてチップ面積が小さく、順方向の電圧降下が高い第1のダイオードと、
前記第1及び第2のスイッチング素子の開閉を、前記第1のスイッチング素子の開閉タイミングと、前記第2のスイッチング素子の開閉タイミングとを同期して制御するゲート駆動手段と、を備え、
前記第2のスイッチング素子の耐圧は、前記第1のスイッチング素子の耐圧の半分以下であり、
前記第2の半導体スイッチ回路は、
第2の逆導通ダイオードが内蔵された第3のスイッチング素子と、
第2の寄生ダイオードが内蔵され、前記第2の逆導通ダイオードのアノード側と前記第2の寄生ダイオードのアノード側とが接続されて前記第3のスイッチング素子に直列接続された第4のスイッチング素子と、
前記第1及び第2の導通ダイオードと同じ導通方向となるように前記第3及び第4のスイッチング素子に並列接続され、前記第2の逆導通ダイオードに比べてチップ面積が小さく、順方向の電圧降下が高い第2のダイオードと、
前記第3及び第4のスイッチング素子の開閉を、前記第3のスイッチング素子の開閉タイミングと、前記第4のスイッチング素子の開閉タイミングとを同期して制御するゲート駆動手段と、を備え、
前記第3のスイッチング素子の耐圧は、前記第4のスイッチング素子の耐圧の半分以下であり、
前記第1のダイオードのカソード側が直流電源の正側に接続され、前記第2のダイオードのアノード側が直流電源の負側に接続された電力変換装置。」


3.拒絶の理由
平成27年12月24日付の当審の拒絶の理由Iで以下の事項を通知した。
「I この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項2には、「前記第1及び第2の寄生ダイオードと同じ導通方向となるように前記第1及び第2のスイッチング素子に並列接続された第2のダイオードと、前記第1及び第2のスイッチング素子の開閉を、前記第1のスイッチング素子の開閉タイミングと、前記第2のスイッチング素子の開閉タイミングとを同期して制御するゲート駆動手段と、を備え、前記第3のスイッチング素子の耐圧は、前記第4のスイッチング素子の耐圧の半分以下であり、」とあるが、第1及び第2の寄生ダイオードと同じ導通方向となるように第1及び第2のスイッチング素子に並列接続された第2のダイオードとは、実施例のどのダイオードのことか不明(第2の逆導通ダイオードと同じ導通方向になるのではないか)であり、又、第2の半導体スイッチ回路が、何故第1及び第2のスイッチング素子の開閉を前記第1のスイッチング素子の開閉タイミングと前記第2のスイッチング素子の開閉タイミングとを同期して制御するゲート駆動手段を有しているのか不明であって、どの実施例に対応するのか不明であり、又、第3のスイッチング素子の耐圧が第4のスイッチング素子の耐圧の半分以下である実施例はどの実施例に対応するのか不明である。」


4.拒絶の理由Iに対する当審の判断
(1)請求項2には「前記第1及び第2の導通ダイオードと同じ導通方向となるように前記第3及び第4のスイッチング素子に並列接続され、前記第2の逆導通ダイオードに比べてチップ面積が小さく、順方向の電圧降下が高い第2のダイオード」と記載されており、第2のダイオードは第1及び第2の導通ダイオードと同じ導通方向となるように第3及び第4のスイッチング素子に並列接続されることとなるが、明細書、特許請求の範囲には、第1及び第2の逆導通ダイオード、より具体的には逆導通ダイオード5について記載はあるものの、第1及び第2の導通ダイオードについては何等記載が無く、導通ダイオードとはどの様なダイオードであって、回路上どこに設けられるのか不明であり、しかも、「前記第1及び第2の導通ダイオード」とあるが、前記に対応する記載が請求項2のみならず請求項1にもないため、どのダイオードに対応する記載であるのか不明である。
請求人は、平成28年2月29日付意見書で、「当該誤記訂正の結果、例えば、第10の実施の形態等で例示される電力変換装置の構成と対応する内容になっており、第1の不明点は解消している。」と主張するが、図10として示される第10の実施の形態には、第1及び第2の導通ダイオードについて記載も示唆もないから、請求人の上記主張は採用できない。

(2)請求項2には「前記第3のスイッチング素子の耐圧は、前記第4のスイッチング素子の耐圧の半分以下であり」と記載されており、第3のスイッチング素子の耐圧が第4のスイッチング素子の耐圧より小さく半分以下となる。明細書の記載に基づけば、第3のスイッチング素子は第2の逆導通ダイオードが内蔵された素子であるから、具体的には逆導通ダイオードを内蔵した耐電圧が高いIGBT(【0012】)であり、第4のスイッチング素子は第2の寄生ダイオードが内蔵された素子であるから、具体的には寄生ダイオードを内蔵した耐電圧の低い低圧MOSFET(【0013】)である。そうすると、第3のスイッチング素子の耐圧が第4のスイッチング素子の耐圧より大きくなるから、第3のスイッチング素子の耐圧が第4のスイッチング素子の耐圧の半分以下となることはなく、どの実施例に対応するのか不明である。
請求人は、平成28年2月29日付意見書で、「第1の半導体スイッチ回路(第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を備える)と第2の半導体スイッチ回路(第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を備える)とは同様に構成されている点と「第1のスイッチング素子の耐圧は、第2のスイッチング素子の耐圧の半分以下」という点の二点から判断すれば、例えば、第10の実施の形態等で例示される電力変換装置の構成と対応する内容になっており、第3の不明点は解消している。」と主張するが、第1の半導体スイッチ回路は、寄生ダイオードを内蔵した第2のスイッチング素子の耐圧が逆導通ダイオードを内蔵した第1のスイッチング素子の耐圧の半分以下であるから、第2の半導体スイッチ回路が第1の半導体スイッチ回路と同様の構成であれば、第4のスイッチング素子の耐圧は第3のスイッチング素子の耐圧の半分以下となるはずであり、請求人の上記主張は採用できない。

(3)したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項2に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項2の記載は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項2の記載は、発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、請求項2の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-11 
結審通知日 2016-03-15 
審決日 2016-03-30 
出願番号 特願2013-93876(P2013-93876)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H02M)
P 1 8・ 537- WZ (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 貴行  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 堀川 一郎
矢島 伸一
発明の名称 半導体スイッチ回路および電力変換装置  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  

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