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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1314818
審判番号 不服2015-950  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-16 
確定日 2016-05-17 
事件の表示 特願2011-552528号「光ガイド」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月10日国際公開、WO2010/100504、平成24年 8月30日国内公表、特表2012-519931号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年3月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2009年3月5日、2009年3月24日、2009年11月20日、いずれも(GB)英国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年1月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成27年8月25日に上申書が提出されたものである。

第2 平成27年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年1月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年1月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「第1の屈折率を有する基板であって、第1の表面に一つ又は複数の光源がマウントされた基板と、
前記第1の屈折率より小さいか又は等しい第2の屈折率を有し且つ光出射面を備えた第1のガイド層であって、この第1のガイド層が前記第1の表面上の前記一つ又は複数の光源をカプセル封入するように配置された前記第1のガイド層と、を有し、
前記基板と前記ガイド層は、前記第1の表面上の前記一つ又は複数の光源により生成された光をガイドするための複合構造を形成し、前記一つ又は複数の光源は前記光出射面のすぐ後ろに配置され且つ光を前記基板の前記表面に対して平行に向ける光ガイド装置。」

(補正後の請求項1)
「第1の屈折率を有する基板であって、第1の表面に複数の光源がマウントされた基板と、
前記第1の屈折率より小さいか又は等しい第2の屈折率を有し且つ光出射面を備えた第1のガイド層であって、この第1のガイド層が前記第1の表面上の前記複数の光源をカプセル封入するように配置された前記第1のガイド層と、を有し、
前記基板と前記ガイド層は、前記第1の表面上の前記複数の光源により生成された光をガイドするための複合構造を形成し、前記複数の光源は前記光出射面のすぐ後ろに配置され且つ光を前記基板の前記表面に対して平行に向け、前記複数の光源は、直下型方式の配置で一連の行及び列をなす二次元配列を形成し、前記複数の光源は、複数の側面発光LEDを含む、光ガイド装置。」

2 補正の適否
(1)新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光源」について、「一つ又は複数の光源」とあったのを「複数の光源」に限定し、さらに、補正前の請求項9、14の記載を根拠に、「前記複数の光源は、直下型方式の配置で一連の行及び列をなす二次元配列を形成し、前記複数の光源は、複数の側面発光LEDを含む」ものであることを限定するものであるから、発明特定事項を限定するものであって新規事項を追加するものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(2)独立特許要件
ア 刊行物の記載事項
(ア)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された国際公開第2007/138294号公報(以下「刊行物1」という。)には、日本語にして以下の事項が記載されている。なお、翻訳は当審の訳である。
(1a)明細書1頁1?6行
「複合光ガイド装置
本発明は光ガイド装置、特に、照明、バックライト、サイネージ、又はディスプレイの目的に用いることができる光ガイド装置に関する。」(下線は当審で付与。以下同様。)
(1b)明細書1頁8行?2頁21行
「多くの光ガイド装置が当業者に知られている。これらの装置は照明、バックライト、サイネージ、及びディスプレイの目的を含む様々な機能に使用されている。 ・・・
・・・
上記の欠点の一つもしくは複数を除去するか少なくとも軽減する光ガイド装置を提供することが、本発明の一つの局面の目的である。」
(1c)明細書1頁23行?3頁11行
「発明の概要
本発明の最初の局面では、その第1表面に一つ又は複数の光源が装架されている透明な基板、及びその第1表面に一つ又は複数の光源を包み込むように配置されたガイド基板を具備し、前記ガイド基板は一つ又は複数の光源が発する光を第1表面全体にガイドする手段を提供する光ガイド装置が提供される。

ガイド基板の配置により、光源の機械的保護が高い光ガイド装置が得られる。更には、光源の出力とガイド基板との間にエアギャップがないため、前記ガイド基板は製造が簡単で、装置内での高い光学的な光結合を示す装置が得られる。透明な基板を使用することで、装置の柔軟性も増し、即ち出力表面の選択や、独立した光制御域の創出も可能となる。」
(1d)明細書4頁18?27行
「任意に、一つ又は複数の光源は、無指向性光源から構成されている。こうした態様では、光ガイド装置は更にガイド基板上に、一つ又は複数の無指向性光源が作り出す光を第1表面全体に向けるように配置された反射構造体を具備する。好ましくは、前記反射構造体は第1表面全体に向けられる光量が最大になるようにする反射又は回折光学要素を具備する。」
(1e)明細書5頁10?17行
「好ましくは、透明基板の屈折率はガイド基板の屈折率と同等以上である。透明基板の屈折率をガイド基板の屈折と同等以上にすることで、発生させた光は全反射によって透明の基板及びガイド基板の中に導かれる。」
(1f)明細書7頁2?24行
「図面の簡単な説明
本発明の局面及び利点は、以下の詳細な説明を読み、以下の図面を参照することで明らかになるだろう。
図面1は、本発明の一つの局面による、複合光ガイド装置の様々な構成要素の側面図である。
・・・
図面3は、無指向性光源を組み入れた、図面1の複合光ガイド装置の更に別の態様の側面図である。
図面4は、図面1の複合光ガイド構造体の更に別の態様の平面図である。」
(1g)明細書8頁16行?10頁4行
「詳細な説明
本発明の様々な局面の理解の助けとなるように、図面1?6では複合光ガイド装置1の複数の態様を示している。以下の説明を通して使用されている用語「透明」及び「不透明」は、組み込まれた光源が発する光の波長に対する装置の特定構成要素の光学特性に関係する。

まず図面1を参照すると、様々な製造段階の複合光ガイド装置1の側面図が示されている。複合光ガイド装置1は、ポリエステル又はポリカーボネートのような透明なポリマーシートから作られた、1.50?1.58の屈折率n_(2)を有する透明な基板2を具備する。透明基板2の最上部にはLED式の光源3が取り付けられている。LED3及び透明基板2最上部の残りの領域のカバーは、透明ガイド基板4であり、やはりプラスチックポリマーから出来ており、その屈折率n_(4)は1.46?1.56である。透明基板2の下面には、パターン化した反射インク層を形作る散乱構造体が配置される。

透明基板2及び透明ガイド基板4の屈折率は、不等式n_(2)≧n_(4)を満たすものから選ばれる。結果として、また図面1から見て取れるように、LED光源3が作り出す光6は最初に透明基板2が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように透明ガイド基板4の中に入れられる。透明基板2の屈折率を透明ガイド基板4の屈折率以上にすることによって、発生した光6は全反射の効果によって透明基板2及び透明ガイド基板4の両方の中に導かれる。従って透明基板2と透明ガイド基板4は埋め込まれたLED光源3が発する光6のガイド媒体として機能する複合構造体を形作る。

光6が散乱構造体5まで伝播すると、光はその構造体と相互作用し、方向を変えて、透明ガイド基板4の最上面から装置の外に出てバックライトとして機能する。散乱構造体5は、あるいは透明ガイド基板4の最上面に配置してもよいことは、当業者は容易に理解するだろう。この態様では、方向を変えられた光は透明基板2の下面から装置の外にでるだろう。」
(1h)明細書15頁13?19行
「更に透明基板2を採用することで、従来技術の装置に比べて、一つ又は複数の光源3から発せられた装置1を通る光を、効果的に封じ込め、ガイドすることができる。結果として光は、散乱構造体5が配備されている領域に、より効率的に送られる。」
(1i)明細書20頁1行?22頁22行
「特許請求の範囲
1)その第1表面上に一つ又は複数の光源が装架される透明基板、及び前記第1表面に一つ又は複数の光源が封入されるように配置されるガイド基板を具備する光ガイド装置であって、前記ガイド基板は一つ又は複数の光源が発する光を前記第1表面全体にガイドする手段を提供する光ガイド装置。

2)光ガイド装置は、前記第1表面から光を別の方向に向けるための一つ又は複数の散乱構造体を具備する、請求項1に記載の光ガイド装置。

・・・
15)透明基板の屈折率は、ガイド基板の屈折率以上であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の光ガイド装置。」
(1j)図1には、以下の図が示されている。


(1k)図3には、以下の図が示されている。

(1l)図4には、以下の図が示されている。


(イ)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献4として示された国際公開第2007/34398号公報(以下「刊行物2」という。)には、日本語にして以下の事項が記載されている。なお、翻訳は、刊行物2の国際出願にかかる日本国内出願の内容を公表した特表2009-509297号公報(以下「参考文献」という。)の記載を参考にした当審の訳である。
(2a)明細書1頁1行?2頁3行
「本発明は、少なくとも1つの光源と、前記少なくとも1つの光源によって生成される光を表示装置の方向にガイドする光ガイドとを有する前記表示装置を照明する照明システムに関する。本発明は、更に、前記のような照明システムを備える表示装置にも関する。
LCDピクチャスクリーンのような、表示装置は、一般に、自身の表面積全体のバックライトを必要とし、前記バックライトは、ピクチャを可視的なものにするためにできるだけ均一であることが知られている。しかしながら、特に、大型の照明装置の場合にしばしば生じる問題は、高い発光強度が、前記ピクチャスクリーンが位置決めされる前方における発光表面全体に渡る十分な均一性を有して生成されることができないことである。このことは、不快なピクチャ効果を生じ得る。更に、これらの照明装置は、多くの場合において、できるだけ薄い厚さを有さなくてはならない。既知の照明システムの2つの主な分類は、側部照明(side-lit)構成及び直接照明(direct-lit)構成である。側部照明構成において、光源からの光は、光ガイドの1つ以上の側部に結合導入され、内部全反射によって表示領域全体に渡って効率的に分配されることができる。光は、前記光ガイドから様々な仕方において抽出され、例えば、拡散的に散乱されたドットのパターンによって又はマイクロ光学のフィーチャによって抽出される。直接照明バックライトにおいて、光源は、当該表示器の真後ろに配されている。表示領域の一様な照明は、当該表示器からある程度の距離に光源を配することによって達成される。光源と表示器との間に光分布(light-spreading)拡散器を有することが必須である。提案されるバックライトの第3の分類は、チャネル照明(channel-lit)構成又は間接照明(indirect-lit)構成として示されることができ、光源は、光ガイド内に、特に、前記光ガイド内に作られているチャネル内に完全に埋め込まれている。前記チャネル照明構成の照明システムの有利な点は、大型のLCDピクチャスクリーン用のバックライトとしての使用に特に適切であると共に、比較的小さい構造深度と組み合わせて前記ピクチャスクリーンの均一かつ比較的強力な照明を利用可能にする照明システムが提供されることである。しかしながら、前記のような既知のチャネル照明型の照明システムも、幾つかの不利な点を有する。既知の照明システムの主な不利な点は、利用されるべき光ガイドが、当該光源を収容するためのチャネル用に十分な厚さを提供するために、比較的厚く、従って重いことである。
本発明の目的は、表示装置の比較的均一かつ強力な照明が達成されることができる比較的軽量かつ小型の照明システムを提供することにある。」(参考文献の段落【0001】?段落【0004】)
(2b)明細書2頁13?24行
「好ましくは、前記光ガイドは、前記少なくとも1つの光源を部分的に収容する少なくとも1つの収容空間を有する。この収容空間の形状及び寸法決めは、可変的な性質のものであり、例えば、当該光ガイド内に設けられた窪み(孔)の形態をとることもできる。前記収容空間によって部分的かつ同時に囲まれる(enclosed)べき光源の数も、変化し得るものであり、一般に、本発明による照明システムにおいて利用されるべき光源の性質に依存する。一般に、1つ以上の細長い蛍光ランプが、LCDのような、表示装置を照明するのに使用されるので、前記収容空間は、好ましくはチャネルによって形成される。このため、前記チャネルは、好ましくは、前記光源を部分的かつ比較的引き締まった態様において囲む(enclose)ように成形される。前記光ガイドに結合導入されるべき光の量を最適化するために、前記少なくとも1つのチャネルは、好ましくは、実質的に前記光ガイドの長手方向に沿って延在している。」(参考文献の段落【0006】)
(2c)明細書5頁32行?6頁7行
「図1は、従来技術から知られている照明システムの斜視図を示している。照明システム1は、それぞれ複数の蛍光ランプ4を収容する複数の収容チャネル3を備えている光ガイド2を有する。この図に示されているように、各ランプ4は、完全に、光ガイド2に埋め込まれている。各チャネル3の側壁5を介して、ランプ4によって生成される光は、光ガイド2内に結合導入されることができる。抽出構造6によって、この光は、実質的に、光ガイド2から表示装置(例えば、LCD(図示略))の方向に結合導出されることができる。各チャネル3の上壁7は、前記表示装置のほぼ均一な照明を達成するために反射層8を備えている。光ガイド2は、一般に、例えば、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリル(PMMA、パースペクス(登録商標))のような、光透過性ポリマから作られている。」(参考文献の段落【0014】)
(2d)明細書8頁9?34行
「図5aは、本発明による照明システム42の第4の実施例の断面を示している。照明システム42は、抽出層44及び反射性の裏打ち45によって囲まれている光ガイド43を有している。光ガイド43は、複数の収容窪み46を備えており、各窪み46は、3つのLED47の部分を同時に収容するように適応されているが、前記3つのLED47のうちの1つのLED47のみが示されている。・・・
図5bは、図5aによる照明システム42の上面図を示している。この図において、光ガイド43は複数の窪み46を備えており、各窪みには、三つ組のLED47が設けられていることが明らかに示されている。各窪み46は、壁48(特に4つの側壁及び1つの上壁)によって規定されている。・・・本発明による照明システムの更に代替的な、更に雑種的な(hybrid)において、様々な種類のランプが、1つの照明システム内で同時に利用される。この目的のために、当該照明システムにおいてLED及び蛍光ランプの両方を利用することも想像可能である。」(参考文献の段落【0019】?段落【0020】)
(2e)図1には、以下の図が示されている。

(2f)図5a、図5bには、以下の図が示されている。

イ 刊行物1に記載された発明
(ア)刊行物1には、「特に、照明、バックライト、サイネージ、又はディスプレイの目的に用いることができる光ガイド装置」に関する技術について開示されるところ(摘示(1a)(1b))、その特許請求の範囲(摘示(1i))には、以下の記載がある。
「1)その第1表面上に一つ又は複数の光源が装架される透明基板、及び前記第1表面に一つ又は複数の光源が封入されるように配置されるガイド基板を具備する光ガイド装置であって、前記ガイド基板は一つ又は複数の光源が発する光を前記第1表面全体にガイドする手段を提供する光ガイド装置。
2)光ガイド装置は、前記第1表面から光を別の方向に向けるための一つ又は複数の散乱構造体を具備する、請求項1に記載の光ガイド装置。
・・・
15)透明基板の屈折率は、ガイド基板の屈折率以上であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の光ガイド装置。」
(イ)また、刊行物1には、上記「光ガイド装置」の実施の態様について開示されるところ、摘示(1g)によれば、
・光源は、LED光源として構成されること、
・LED光源が作り出す光は透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するようにガイド基板の中に入れられること、
・透明基板とガイド基板は埋め込まれたLED光源が発する光のガイド媒体として機能する複合構造体を形作ること、が明らかである。
(ウ)以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。
「その第1表面上に一つ又は複数の光源が装架される透明基板、及び前記第1表面に一つ又は複数の光源が封入されるように配置されるガイド基板を具備する光ガイド装置であって、
前記ガイド基板は一つ又は複数の光源が発する光を前記第1表面全体にガイドする手段を提供し、
前記光ガイド装置は、前記第1表面から光を別の方向に向けるための一つ又は複数の散乱構造体を具備し、
前記透明基板の屈折率は、前記ガイド基板の屈折率以上であり、
前記光源は、LED光源として構成され、
前記LED光源が作り出す光は前記透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように前記ガイド基板の中に入れられ、
前記透明基板と前記ガイド基板は埋め込まれた前記LED光源が発する光のガイド媒体として機能する複合構造体を形作る、
光ガイド装置。」

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「透明基板」は、所要の「屈折率」を有するものであって、「その第1表面上」に「複数の光源が装架され」るものとして特定することができるから、かかる「透明基板」は、本願補正発明の「第1の屈折率を有する基板であって、第1の表面に複数の光源がマウントされた基板」に相当するものといえる。
(イ)引用発明の「ガイド基板」は、所要の「屈折率」を有し、「前記透明基板の屈折率は、前記ガイド基板の屈折率以上で」構成されるものであって、光はガイド基板の最上面から出射されることが明らかであるから(摘示(1e)(1g))、かかる「ガイド基板」は、本願補正発明の「前記第1の屈折率より小さいか又は等しい第2の屈折率を有し且つ光出射面を備えた第1のガイド層」に相当するものといえる。
また、引用発明の「ガイド基板」は、「透明基板」の「第1表面」に、「複数の光源が封入されるように配置される」ものであるから、かかる「ガイド基板」の配設構成は、その技術的意義において、本願補正発明の「この第1のガイド層が前記第1の表面上の前記複数の光源をカプセル封入するように配置された」構成に相当するものといえる。
(ウ)引用発明は、「前記ガイド基板」が「複数の光源が発する光を前記第1表面全体にガイドする手段を提供」するものであって、「前記透明基板と前記ガイド基板は埋め込まれた前記LED光源が発する光のガイド媒体として機能する複合構造体を形作る」ものであるから、かかる透明基板とガイド基板の構成は、本願補正発明の「前記基板と前記ガイド層は、前記第1の表面上の前記複数の光源により生成された光をガイドするための複合構造を形成し」という構成に相当するものといえる。
(エ)引用発明の「光ガイド装置」は、本願補正発明の「光ガイド装置」に相当する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「第1の屈折率を有する基板であって、第1の表面に複数の光源がマウントされた基板と、
前記第1の屈折率より小さいか又は等しい第2の屈折率を有し且つ光出射面を備えた第1のガイド層であって、この第1のガイド層が前記第1の表面上の前記複数の光源をカプセル封入するように配置された前記第1のガイド層と、を有し、
前記基板と前記ガイド層は、前記第1の表面上の前記複数の光源により生成された光をガイドするための複合構造を形成した、光ガイド装置。
」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明は、「前記複数の光源は前記光出射面のすぐ後ろに配置され且つ光を前記基板の前記表面に対して平行に向け、前記複数の光源は、直下型方式の配置で一連の行及び列をなす二次元配列を形成し、前記複数の光源は、複数の側面発光LEDを含む」ものであるのに対し、引用発明は、複数の光源は、「LED光源として構成され」、「前記LED光源が作り出す光は前記透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように前記ガイド基板の中に入れられ」るものである点。

エ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)刊行物2の摘示(2a)からも裏付けられるとおり、光ガイド装置に関する技術分野において、バックライトやディスプレイに用いる光ガイド装置を均一かつ強力な照明が行い得るように構成することは周知の技術課題と解されるところ、引用発明の光ガイド装置は、照明、バックライト、サイネージ、又はディスプレイの目的に用いることができる光ガイド装置を構成するものであるから(摘示(1a))、引用発明においてもそのような技術課題が内在することは明らかである。
(イ)ここで、刊行物2には、上記課題を解決するために、光ガイド2の収容チャネル3に埋め込まれるランプ4を、光の伝達方向に複数並べて配置することや(摘示(2c)、(2e))、光ガイド43の収容窪み46に収容されるLED47を、光の伝達方向と光の伝達方向に直交する方向とにそれぞれ並べて配置することが記載されているように(摘示(2d)(2f))、複数の光源を、光の伝達方向や光の伝達方向に直交する方向に並べて配置することは、かかる技術分野の周知技術ということができる(さらに必要ならば、国際公開第2008/122915号(翻訳として、特表2010-524168号公報)の4頁16行?5頁11行、図1、2A等を参照)。
(ウ)また、刊行物2には、「好ましくは、前記光ガイドは、前記少なくとも1つの光源を部分的に収容する少なくとも1つの収容空間を有する。・・・前記収容空間によって部分的かつ同時に囲まれる(enclosed)べき光源の数も、変化し得るものであり、一般に、本発明による照明システムにおいて利用されるべき光源の性質に依存する。・・・前記光ガイドに結合導入されるべき光の量を最適化するために、前記少なくとも1つのチャネルは、好ましくは、実質的に前記光ガイドの長手方向に沿って延在している。この態様において、前記光ガイド比較的効率的な光の結合と、従って、前記表示装置の強力な照明とが、達成されることができる。」(摘示(2b))とも記載されているとおり、光ガイド装置に設ける光源の設置位置や設置数は、光源の性質や要求される光量等を考慮し、当業者が適宜設定する設計事項というべきものであるところ、引用発明には、光ガイド装置を均一かつ強力な照明が行い得るように構成するとの技術課題が内在していること(上記(ア))、また、上記課題を解決するために、複数の光源を、光の伝達方向や光の伝達方向に直交する方向に並べて配置することは、かかる技術分野の周知技術ということができること(上記(イ))、さらに、引用発明の光源は、刊行物1の例えば図4(摘示(1l))にも示されているとおり、複数の光源を光の伝達方向に対して直交する方向に並べて配置することも想定されていること、以上を併せ考慮すれば、引用発明において、複数の光源を、光の伝達方向や光の伝達方向に直交する方向に並べて配置すること(言い換えれば、複数の光源を一連の行及び列をなす二次元配列で配置すること)の動機付けは十分存在するものといえる。
(エ)さらに、本願明細書の「光源は実質的に全ての光又はほとんどの光が光ガイドに入る向きに配置される。これらの光源は、基板の平面に対して平行又は実質的に平行な向きに光が向くように側面発光LEDから都合よく選択される。」(段落【0035】)等の記載によれば、本願補正発明の「光源」は、基板の平面に対して平行又は実質的に平行な向きに光が向くように「側面発光LED」を採用したものと解されるところ、引用発明は、「光源」が、「LED光源として構成され」、「前記LED光源が作り出す光は前記透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように前記ガイド基板の中に入れられ」るように構成されるものであるから、そのようなLED光源として、側面発光LEDを採用することは、当業者にとって格別困難なことではない。
しかも刊行物1には、「任意に、一つ又は複数の光源は、無指向性光源から構成されている。」(摘示(1d))とも記載されているように、引用発明において、第1のガイド層(ガイド基板)に封入される複数の光源は、図1(摘示(1f)(1j))に示されるような、その側面から発光する態様のLED光源や、図3(摘示(1f)(1k))に示されるような「無指向性光源」の設置をも可能とするものであるから、引用発明における複数の光源の設置位置は、光出射面のすぐ後ろに配置されることを前提とした構成といえる。
(オ)したがって、引用発明の複数の光源を、光出射面のすぐ後ろに配置され且つ光を基板の前記表面に対して平行に向け、前記複数の光源は、直下型方式の配置で一連の行及び列をなす二次元配列を形成し、前記複数の光源は、複数の側面発光LEDを含むものとして構成することは、引用発明及び刊行物1、2に記載された技術事項(周知技術を含む)に基いて、当業者が容易に想到し得たものといえる。
(カ)そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び刊行物1、2に記載された技術事項(周知技術を含む)から当業者が予測し得る範囲のものといえる。

オ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物1、2に記載された技術事項(周知技術を含む)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?25に係る発明は、平成26年4月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、上記「第2 2(2)ア」に記載したとおりであり、刊行物1に記載された発明は、上記「第2 2(2)イ」に記載したとおりである。

第5 当審の判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記複数の光源は、直下型方式の配置で一連の行及び列をなす二次元配列を形成し、前記複数の光源は、複数の側面発光LEDを含む」という限定事項を省き、さらに、「複数の光源」を「一つ又は複数の光源」に上位概念化したものである。
してみると、本願発明と引用発明とは、上記「第2 2(2)ウ」の本願補正発明と引用発明との対比を踏まえると、
「第1の屈折率を有する基板であって、第1の表面に一つ又は複数の光源がマウントされた基板と、
前記第1の屈折率より小さいか又は等しい第2の屈折率を有し且つ光出射面を備えた第1のガイド層であって、この第1のガイド層が前記第1の表面上の前記一つ又は複数の光源をカプセル封入するように配置された前記第1のガイド層と、を有し、
前記基板と前記ガイド層は、前記第1の表面上の前記一つ又は複数の光源により生成された光をガイドするための複合構造を形成した、光ガイド装置。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点A>
本願発明は、「前記一つ又は複数の光源は前記光出射面のすぐ後ろに配置され且つ光を前記基板の前記表面に対して平行に向ける」ものであるのに対し、引用発明は、一つ又は複数の光源は、「LED光源として構成され」、「前記LED光源が作り出す光は前記透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように前記ガイド基板の中に入れられ」るものである点。

上記相違点Aについて検討すると、引用発明は、一つ又は複数の光源が、「LED光源として構成され」、「前記LED光源が作り出す光は前記透明基板が画定する平面と実質的に平行な方向に伝播するように前記ガイド基板の中に入れられ」るように構成されるものであるから、LED光源の光は、透明基板の表面に対して平行に向けるように構成されたものということができる。しかも、刊行物1には、「任意に、一つ又は複数の光源は、無指向性光源から構成されている。」(摘示(1d))とも記載されているように、引用発明において、第1のガイド層(ガイド基板)に封入される複数の光源は、図1(摘示(1f)(1j))に示されるような、その側面から発光する態様のLED光源や、図3(摘示(1f)(1k))に示されるような「無指向性光源」の設置をも可能とするものであるから、引用発明における複数の光源の設置位置は、光出射面のすぐ後ろに配置されることを前提とした構成といえる。
そうすると、上記相違点Aは実質的な相違点とはいえないか、または実質的に相違するものとしても当業者が容易に想到し得るものといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるか、または刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定、または特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-15 
結審通知日 2015-12-16 
審決日 2016-01-04 
出願番号 特願2011-552528(P2011-552528)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F21S)
P 1 8・ 575- Z (F21S)
P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 政道柿崎 拓  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
平田 信勝
発明の名称 光ガイド  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 辻居 幸一  
代理人 松下 満  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 丹澤 一成  
代理人 弟子丸 健  
代理人 井野 砂里  

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