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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1314822
審判番号 不服2015-8929  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-13 
確定日 2016-05-17 
事件の表示 特願2013- 18941「エアクリーナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日出願公開、特開2013-137025〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004(平成16)年2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年2月11日 アメリカ合衆国、2003年3月25日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2006-503476号(以下、「原出願」という。)の一部を平成21年12月25日に新たな特許出願とした特願2009-296364号の一部を平成25年2月1日に新たな外国語特許出願としたものであって、平成25年3月4日に明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文並びに手続補正書が提出され、平成25年4月4日に誤訳訂正書及び上申書が提出され、平成26年2月19日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年5月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成26年8月13日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
エアクリーナ装置であって、
(a)前記エアクリーナ装置は、対向しあう第1の側壁および第2の側壁と、前記第1の側壁と前記第2の側壁との間に延びる第3の側壁と、前記第3の側壁の反対側に配置されて点検用の開口を覆うカバーと、内部空間と、シール部とを有するハウジングを含み、
(b)前記エアクリーナ装置は、前記内部空間に動作可能に設置されたフィルタ・カートリッジを含み、
前記フィルタ・カートリッジは、
(i)前記ハウジングの第1の側壁に面する第1側壁および前記ハウジングの第2の側壁に面する第2側壁と、
(ii)濾材と、
(iii)前記濾材の周りに延びる枠部材と、
(iv)前記枠部材によって支持され、前記ハウジングのシール部と軸方向シールを形成するシール部材と、
(v)前記フィルタ・カートリッジの前記第1側壁の上に形成された突起部および前記フィルタ・カートリッジの前記第2側壁の上に形成された突起部と、
を含み、前記フィルタ・カートリッジの前記第1側壁および前記第2側壁の上に形成された2つの突起部が付勢されることによって前記シール部材は前記ハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し、
(c)前記エアクリーナ装置は、前記フィルタ・カートリッジを把持するように構成され、前記カバーに向けて延びるハンドルを有し、前記カバーが取り外されているときにオペレータが前記ハンドルを引くことによって前記ハウジングから前記点検用開口を通って前記フィルタ・カートリッジを取り外せることができ、
(d)前記フィルタ・カートリッジを前記ハウジングの内部空間から取り外すことなく前記カバーは前記ハウジングから分離可能であり、
(e)前記濾材は、波形のシートと該波形のシートが固定されたシートとを含み、前記濾材は、コイル形状または積み重ね形状である、
ことを特徴とするエアクリーナ装置。」

第3 引用文献
本願の原出願の優先日前に頒布され、原査定の理由に引用された刊行物である特開昭63-235656号公報(以下、「引用文献」という。)には図面とともに次の記載がある。なお、下線は、当審で付した。

(1)引用文献の記載
ア 「2.特許請求の範囲
エアクリーナケース内にエレメントを該エアクリーナケースの上部の開口を介して挿脱自在に収納して成るエアクリーナ装置であって、該エアクリーナケース内に周囲に空隙を存して収納自在なエレメントケースと、該エレメントケースの周囲の開放面に取付けたフィルタとでエレメントを構成し、該エレメントを該エレメントケースの前面に形成した出口において該エアクリーナケースの流出口に嵌合自在とすると共に、該エアクリーナケース内に該エレメントケースに背方から当接して該エレメントを該流出口に押圧する押圧部材を設けるものにおいて、該押圧部材を、下端に該エレメントケースの背面に当接する当て部と上端に該エアクリーナケースの上部の開口より突出する操作部とを有するレバー状に形成し、該押圧部材を該エアクリーナケースの内壁面に該当て部が該エレメントケースの背方に当接する作動位置と該当て部が該エレメントケースの背方に離脱する離脱位置とに揺動自在に枢着すると共に、該エアクリーナケースの内壁面に該押圧部材を該作動位置に係止するストッパを突設したことを特徴とするエアクリーナ装置。」(第1ページ左下欄第4行ないし右下欄第7行)

イ 「本発明は、エアクリーナケース内にエレメントを該エアクリーナケースの上部の開口を介して挿脱自在に収納して成る主としてエンジン用のエアクリーナ装置に関する。」(第1ページ右下欄第10ないし13行)

ウ 「(作 用)
エアクリーナケースにエレメントを挿着するときは、先ず押圧部材を離脱位置に動作した状態で、エアクリーナケース内にエレメントをこれの出口が該エアクリーナケースの流出口に合致するように挿入し、次いで押圧部材を作動位置に動作するもので、これによれば当て部がエレメントケースに当接し、引き続く当て部の揺動移動によりエレメントが流出口側に移動して該出口が該流出口に嵌合し、押圧部材をストッパに係止することにより、押圧部材でエレメントが流出口側に押圧された状態に保持される。
この場合、エアクリーナケース内に挿入したエレメントの出口が流出口に合致していないときは、該エアクリーナケースの口縁部にエレメントケースの口縁部が突き当りそれ以上のエレメントの移動が阻止されるため、押圧部材を作動位置に揺動動作できなくなり、従って押圧部材を作動位置に揺動動作できないときはエアクリーナケース内に挿入したエレメントの出口が流出口に合致していないことが分かる。」(第2ページ右下欄第3行ないし第3ページ左上欄第3行)

エ 「(実施例)
図面で(1)はエアクリーナケース、(2)エレメントを示し、該エアクリーナケース(1)は、前後方向に長手の平面視長方形形状で丈高の略直方体形状をなし、該ケース(1)の前側面(図面で左側)に流入口(3)と、その後側面(図面で右側)に流出口(4)とを備えると共に、該流出口(3)(4)の中心軸線を通る上下方向の分割面で分割される板金製の両半部ケース(1a)(1a)で構成されるものとし、又該エレメント(2)は、エアクリーナケース(1)内に周囲に空隙を存して収納される筒状のエレメントケース(5)と、該エレメントケース(5)の周囲の開放面に取付けたフィルタ(6)とで構成され、該エレメント(2)を該エレメントケース(5)の前面に突設した筒状の出口(5a)において前記流出口(4)の尾端部に形成したテーパ孔(4a)に嵌合自在とし、エアクリーナケース(1)内に上部の開口(1b)を介してエレメント(2)を挿脱自在に収納するようにし、更に該エアクリーナケース(1)内に該エレメントケース(5)の背面に当接してこれを該流出口(4)側(図面で右側)に押圧する押圧部材(7)を設けた。
図面で(8)はエアクリーナケース(1)上部に装着されるケース蓋、(9)は筒状の出口(5a)の外周にし取付けたシール材、(12)はエアクリーナケース(1)内に装入するエレメント(2)の外周縁に当接してこれを流出口(4)側にガイドする該ケース(1)の内壁面に突設したガイド突部を示す。」(第3ページ左上欄第4行ないし右上欄第11行)

オ 「ここで、前記押圧部材(7)は、下端にエレメントケース(5)の背面に当接する当て部(7a)と、上端にエアクリーナケース(1)の上部の開口(1b)から突出する操作部(7b)とを有するレバー状に形成され、該押圧部材(7)を該エアクリーナケース(1)の内壁面に該当て部(7a)が該エレメントケース(5)の背面に当接する作動位置と、該当て部(1a)が該エレメントケース(5)の背方に離脱する離脱位置とに揺動自在に枢着すると共に、該エアクリーナケース(1)の内壁面に該押圧部材(7)を該作動位置に係止するストッパ(10)を突設した。
更に詳述するに上記押圧部材(7)は、第3図に明示する如く、板材を折曲げて正面視門形形状とすると共に、該板材の下端を夫々内側に折曲げ、該板材の下端の各折曲部に山形に折曲げたばね板(7c)を夫々取付けて成るものとし、該各ばね板(7c)の外面を前記当て部(7a)に構成し、該板材を各側部において離脱位置に揺動した際に上端部がエアクリーナケース(1)の上部の開口(1b)の投影面から外方に突出するように該エアクリーナケース(1)の左右の各側壁にリベット(11)により夫々取付け、又エアクリーナケース(1)の左右の各側壁を平面視楔状に夫々内方に膨出し、該各側壁の膨出部の段部を前記ストッパ(10)に構成し、該押圧部材(7)を作動位置に揺動し、該押圧部材(7)の各側部が各膨出部の斜面にガイドされてこれを乗り越えたとき該押圧部材(7)を係止し得るようにした。
尚、押圧部材(7)のストッパ(10)との係止を解くには、押圧部材(7)の両端部を押して夫々内方にたわませ、その状態で押圧部材(7)を離脱位置に揺動させる。」(第3ページ右上欄第12行ないし右下欄第3行)

カ 「以上の構成によれば上記作用の項で説明したように、押圧部材(7)を作動位置に揺動動作できないときはエアクリーナケース(1)内に挿入したエレメント(2)の出口(5a)が流出口(4)に合致していないことが分かる。
尚、実施例の如く、押圧部材(7)の下端に山形に折曲げたばね板(7c)を取付けた場合、このばね板(7c)がエアクリーナ(1)内へのエレメント(2)の挿入時のガイドにも役立ち有利であり、又押圧部材(7)を離脱位置に揺動した際にこれの上端部がエアクリーナケース(1)の上部の開口(1b)の投影面より外方に突出するように構成した場合、エアクリーナケース(1)内にエレメント(2)を挿入し、押圧部材(7)を作動位置に揺動しなければ、押圧部材(7)の上端部が邪魔になって該ケース(1)にケース蓋(8)を挿着できないため、押圧部材(7)の作動位置へのセット忘れが防止できて有利である。
(発明の効果)
このように本発明によるときは、押圧部材をエアクリーナケースに取付けることから、該エアクリーナケースの上部に装着されるケース蓋の着脱性を損うことが無く、而も押圧部材の入れ忘れが防止でき、又エアクリーナケース内に挿入したエレメントの出口が該ケースの流出口に合致していないと押圧部材を作動位置に揺動できないことから、エレメントの誤組付けを確実に防止できる効果を有する。」(第3ページ右下欄第10行ないし第4ページ左上欄第17行)

(2)上記(1)及び図面から分かること

サ 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献には、エアクリーナケース1と、エアクリーナケース1の上部に装着され開口1bを覆うケース蓋8と、内部空間と、シール材9を含むエアクリーナ装置が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置のエアクリーナケース1は、(第1図において紙面に平行な)対向しあう第1の側壁及び第2の側壁と、第1の側壁と第2の側壁の間に延びる第3の側壁と、内部空間と、流出口4のテーパ孔4aに設けられてシール材9と接するシール部を有しているといえる。

ス 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置は、エアクリーナケース1の内部空間に動作可能に設置されたエレメント2を含んでいることが分かる。

セ 上記(1)エ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置のエレメント2は、筺状のエレメントケース5とフィルタ6とで構成され、該エレメントケース5は、エアクリーナケース1の第1の側壁に面する第1の側壁及びエアクリーナケース1の第2の側壁に面する第2の側壁を有することが分かる。

ソ 上記(1)エ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置のエレメント2は、エレメントケース5の前面に突設した筒状の出口5aの外周に取り付けられたシール材9を有していることが分かる。

タ 上記(1)エないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、エレメント2の背面が押圧部材7の当て部7aにより流出口4側に押圧されることにより、シール材9がエアクリーナケース1の流出口4のテーパ孔4aのシール部に押しつけられてシールを形成することが分かる。

チ 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、エアクリーナケース1内にエレメント2が挿脱自在に収納されることから、エレメント2を挿入、離脱する際には、技術常識を勘案すると、作業者はエレメント2のエレメントケース5を把持して、エアクリーナケース1内に挿入、離脱を行うことが明らかである。

ツ 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、エアクリーナケース1からエレメント2を離脱させる際には、ケース蓋8を外した状態で、エアクリーナケース1の上部の開口1bを通ってエレメント2を離脱させることが分かる。

テ 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、エレメント2をエアクリーナケース1の内部空間から離脱させることなくケース蓋8を外すことができるといえる。

ト 上記(1)アないしカ及び図面の記載から、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、第1図に図示されるフィルタ6は、波形のフィルタ素材を含むものであることが分かる。

(3)引用発明
以上の(1)及び(2)並びに図1ないし5の記載を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「エアクリーナ装置であって、
エアクリーナ装置は、対向しあう第1の側壁および第2の側壁と、第1の側壁と第2の側壁との間に延びる第3の側壁と、上側に配置されて開口1bを覆うケース蓋8と、内部空間と、シール部とを有するエアクリーナケース1を含み、
エアクリーナ装置は、内部空間に動作可能に設置されたエレメント2を含み、
エレメント2は、
エアクリーナケース1の第1の側壁に面する第1側壁および前記エアクリーナケース1の第2の側壁に面する第2側壁と、
フィルタ6と、
フィルタ6の周りに延びるエレメントケース5と、
エレメントケース5によって支持され、エアクリーナケース1のシール部と軸方向シールを形成するシール材9と、
を含み、エレメント2の側壁が付勢されることによってシール材9はエアクリーナケース1のシール部に押し付けられてシールを形成し、
エアクリーナ装置は、ケース蓋8が取り外されているときにエアクリーナケース1から開口1bを通ってエレメント2を取り外せることができ、
エレメント2をエアクリーナケース1の内部空間から取り外すことなくケース蓋8はエアクリーナケース1から分離可能であり、
フィルタ6は、波形のフィルタ素材を含み、フィルタ6は、曲線形状である、エアクリーナ装置。」

第4 対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
引用発明における「上側」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「第3の側壁の反対側」に相当し、同様に、「開口1b」は「点検用の開口」及び「点検用開口」に、「ケース蓋8」は「カバー」に、「エアクリーナケース1」は「ハウジング」に、「エレメント2」は「フィルタ・カートリッジ」に、「フィルタ6」は「濾材」に、「エレメントケース5」は「枠部材」に、「シール材9」は「シール部材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「エレメント2の側壁が付勢されることによってシール材9はエアクリーナケース1のシール部に押し付けられてシールを形成し」は、「フィルタ・カートリッジが付勢されることによってシール部材はハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し」という限りにおいて、本願発明における「フィルタ・カートリッジの第1側壁の上に形成された突起部およびフィルタ・カートリッジの第2側壁の上に形成された突起部と、を含み」、「フィルタ・カートリッジの第1側壁および第2側壁の上に形成された2つの突起部が付勢されることによってシール部材はハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し」に相当し、
引用発明における「エアクリーナ装置は、ケース蓋8が取り外されているときにエアクリーナケース1から開口1bを通ってエレメント2を取り外せることができ」は、「エアクリーナ装置は、カバーが取り外されているときにハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」という限りにおいて、本願発明における「エアクリーナ装置は、フィルタ・カートリッジを把持するように構成され、カバーに向けて延びるハンドルを有し、カバーが取り外されているときにオペレータがハンドルを引くことによってハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」に相当する。
また、引用発明における「フィルタ6は、波形のフィルタ素材を含み、フィルタ6は、曲線形状である」は、「濾材は、波形のシートを含み、濾材は、曲線形状である」という限りにおいて、本願発明における「濾材は、波形のシートと波形のシートが固定されたシートとを含み、前記濾材は、コイル形状または積み重ね形状である」に相当する。
したがって、本願発明と、引用発明とは、
「エアクリーナ装置であって、
エアクリーナ装置は、対向しあう第1の側壁および第2の側壁と、第1の側壁と前記第2の側壁との間に延びる第3の側壁と、第3の側壁の反対側に配置されて点検用の開口を覆うカバーと、内部空間と、シール部とを有するハウジングを含み、
エアクリーナ装置は、内部空間に動作可能に設置されたフィルタ・カートリッジを含み、
フィルタ・カートリッジは、
ハウジングの第1の側壁に面する第1側壁およびハウジングの第2の側壁に面する第2側壁と、
濾材と、
濾材の周りに延びる枠部材と、
枠部材によって支持され、ハウジングのシール部と軸方向シールを形成するシール部材と、
を含み、フィルタ・カートリッジが付勢されることによってシール部材はハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し、
エアクリーナ装置は、カバーが取り外されているときにハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ、
フィルタ・カートリッジをハウジングの内部空間から取り外すことなくカバーはハウジングから分離可能であり、
濾材は、波形のシートを含み、濾材は、曲線形状である、エアクリーナ装置。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)「フィルタ・カートリッジが付勢されることによってシール部材はハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し」に関して、本願発明においては「フィルタ・カートリッジの第1側壁の上に形成された突起部およびフィルタ・カートリッジの第2側壁の上に形成された突起部と、を含み」、「フィルタ・カートリッジの第1側壁および第2側壁の上に形成された2つの突起部が付勢されることによってシール部材はハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し」であるのに対して、引用発明においては「エレメント2の側壁が付勢されることによってシール材9はエアクリーナケースのシール部に押し付けられてシールを形成し」である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「エアクリーナ装置は、カバーが取り外されているときにハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」に関して、本願発明においては「エアクリーナ装置は、フィルタ・カートリッジを把持するように構成され、カバーに向けて延びるハンドルを有し、カバーが取り外されているときにオペレータがハンドルを引くことによってハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」であるのに対して、引用発明においては「エアクリーナ装置は、ケース蓋8が取り外されているときにエアクリーナケースから開口1bを通ってエレメント2を取り外せることができ」である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)「濾材は、波形のシートを含み、濾材は、曲線形状である」に関して、本願発明においては「濾材は、波形のシートと波形のシートが固定されたシートとを含み、濾材は、コイル形状または積み重ね形状である」であるのに対して、引用発明においては「フィルタ6は、波形のフィルタ素材を含み、フィルタ6は、曲線形状である」である点(以下、「相違点3」という。)。

第5 判断
上記相違点について判断する。
(1)相違点1について
本願発明においても、引用発明においても、フィルタ・カートリッジが付勢されることによってシール部材がハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成することに変わりはなく、フィルタ・カートリッジのどの部分を付勢するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
例えば、平成26年2月19日付け拒絶理由通知において引用された特開平8-121272号公報には、フィルタ部材Fの両側の側壁に設けられたピン12bが付勢されてパッキング材11bを出口ケース15Bのシール部に押しつけられてシールを形成する構成が記載されており、これは、本願発明における「フィルタ・カートリッジの前記第1側壁および前記第2側壁の上に形成された2つの突起部が付勢されることによって前記シール部材は前記ハウジングのシール部に押し付けられてシールを形成し」に相当する構成である。
よって、引用発明において、エレメント(本願発明における「フィルタ・カートリッジ」に相当する。)における付勢部位について設計変更をすることにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
平成26年8月13日付け意見書によれば、請求項1における「ハンドル」とは、図5の「ハンドル構造体88」のように、持ち上げるために手でつかむハンドルを意味すると説明されているのであるから、その意味に基づいて判断する。
本願発明においては、「エアクリーナ装置は、フィルタ・カートリッジを把持するように構成され、カバーに向けて延びるハンドルを有し、カバーが取り外されているときにオペレータがハンドルを引くことによってハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」という発明特定事項を有しているが、フィルタの技術分野において、フィルタ・カートリッジを把持するように構成されるハンドルを設ける技術は、本願の原出願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2001-62233号公報[例えば、【特許請求の範囲】、段落【0017】ないし【0020】及び図3を参照。]、特開2001-239120号公報[例えば、【特許請求の範囲】、段落【0012】、【0018】及び図面を参照。]、特開平8-309112号公報[引出用の取手51を参照。]及び特表平10-507404号公報[例えば、【特許請求の範囲】、第18ページ第8行ないし第22ページ第4行及び図面を参照。]等の記載を参照。)である。なお、平成26年2月19日付け拒絶理由通知書において引用された特開平8-121272号公報(例えば、段落【0015】及び図面を参照。)にも、周知技術1に類似する構成が記載されている。その際、フィルタ・カートリッジを交換する開口側にハンドルを設けることが自然である。
そして、上記第3(2)チに示したとおり、引用文献に記載されたエアクリーナ装置において、エレメント2を挿入、離脱する際には、作業者はエレメント2のエレメントケース5を把持して、エアクリーナケース1内に挿入、離脱を行っているのであるから、その作業を容易化するために、エレメント2(フィルタ・カートリッジ)の上側(開口側)に、周知技術1のようなハンドルを設けることは容易に想到でき、それにより「カバーが取り外されているときにオペレータがハンドルを引くことによってハウジングから点検用開口を通ってフィルタ・カートリッジを取り外せることができ」ることは自明である。
したがって、引用発明において、周知技術1を適用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(3)相違点3について
引用文献の第1図には、「フィルタ6(濾材)は、波形のフィルタ素材(シート)を含み、フィルタ6(濾材)は、曲線形状である」ことが開示されている。
ここで、「濾材は、波形のシートと波形のシートが固定されたシートとを含み、濾材は、コイル形状または積み重ね形状である」ことは、本願の原出願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、平成26年2月19日付け拒絶理由通知において引用された実願平1-37787号(実開平3-32923号)のマイクロフィルム及び実願昭63-56542号(実開平1-163408号)のマイクロフィルムのほか、米国特許第5820646明細書等を参照。)である。
してみると、引用発明において、周知技術2を適用することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

なお、請求人は、審判請求書において、「刊行物1記載のエアクリーナ装置では、エレメントケース5に収容されたひだ付きのフィルタ6では、第1図に示されるように、汚れた空気が、図の下側と、左側と、上側と、上部の右側との約270°に亙って流入します。すなわち、刊行物1記載のエレメントケース5では、Z字形の濾材を適用することはできません。」(5.対比の欄)と主張する。
しかしながら、引用文献の特許請求の範囲には、上記第3(1)アにおいて摘示したとおり記載され、第1図に示されるような、エアが約270°に亙って流入するものに限定されているわけではない。また、採用するフィルタの形状に応じてエアクリーナ装置の形状を設計変更することは、当業者として当然のことである。
また、請求人が主張する「Z字形の濾材」は、本願発明の発明特定事項ではない。(なお、仮に、「Z字形の濾材」が本願発明の発明特定事項であるとしても、本願の原出願の優先日前に周知の技術である。)
したがって、請求人の主張は失当である。

(4)作用効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-17 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2013-18941(P2013-18941)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 しのぶ赤間 充  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 エアクリーナ装置  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  

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