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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1314944
審判番号 不服2015-3267  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-20 
確定日 2016-06-10 
事件の表示 特願2013-508486「非アクティブ・セルをアクティブ化するための方法および電気通信インフラストラクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日国際公開、WO2011/138351、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-526226、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月6日 欧州特許庁,2010年10月11日 欧州特許庁,2010年12月24日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成25年12月3日付けで拒絶理由(以下,「原審拒絶理由」という。)が通知され,これに対し,平成26年6月6日付けで手続補正がされ,同年10月17日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成27年2月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされ,その後,当審において平成28年2月9日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,これに対し,平成28年5月10日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は,平成28年5月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められる。
そして,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 少なくとも1つの非アクティブ・セルを無線電気通信インフラストラクチャにおいてアクティブ化するための方法であって,前記電気通信インフラストラクチャが複数の端末を収容するアクティブ・セルを備えており,前記方法が,
前記少なくとも1つの非アクティブ・セルによってプレゼンス信号を送信するステップと,
前記プレゼンス信号を検出した前記複数の端末から,前記プレゼンス信号の信号レベルをそれぞれが含む測定レポートを受信するステップと,
前記複数の端末から受信した前記測定レポートに含まれる,前記信号レベルを有する情報を,前記電気通信インフラストラクチャの処理システムにおいて処理して,処理結果を提供するステップと,
前記複数の端末のうち少なくとも1つが前記非アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内にあるという少なくとも1つのアクティブ化条件を前記処理結果が満たすときに,前記非アクティブ・セルをアクティブ化するステップと,
を含む,方法。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は,次のとおりである。

「 この出願については,平成25年12月 3日付け拒絶理由通知書に記載した理由Aによって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
(…中略…)
しかし,省電力モードの基地局(隣接基地局,本願発明の「非アクティブ・セル」に相当)によってパイロット信号(本願の「プレゼンス信号」に相当)を送信すること,並びに該パイロット信号を検出した移動端末から測定レポートを受信することは,国際公開第2009/154038号に記載のとおり周知であり(同公報の[0057],[0058],[0064]-[0070],[0110]-[0113],[0121]-[0124]を参照),(…中略…)

したがって,出願人の主張は採用できず,本願の請求項1-15に係る発明は,引用例1および周知技術に基づき,依然として当業者が容易に想到し得るものである。」

また,原審拒絶理由の概要は,次のとおりである。

「 この出願は,次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら,この通知書の発送の日から3か月以内に意見書を提出してください。

理 由

<理由A>
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・引用文献
1.国際公開第2010/002991号
(公表特許公報:特表2011-527163号公報)

・請求項:1-15
(…中略…)
したがって,上記請求項に係る発明は,引用例1の記載に基づき,当業者が容易に想到しうる発明である。

<理由B>
(以下省略)」

そうすると,原査定の拒絶の理由の趣旨は,補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし15に係る発明は,当業者が引用文献1に基づいて,引用文献2に記載されたような周知技術を参酌することにより容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない,というものである。

2.原査定の理由についての当審の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用発明
引用文献1(国際公開第2010/002991号)には,次の事項が記載されている。

(ア)本発明は,より詳しくは,フェムトセルのための低電力モードを実装するのを容易にする方法に関する。([0002],[0069])
(イ)AP基地局は,低電力モードと,非低電力モードとがある。([0069])
(ウ)AP基地局は,アクセス端末(AT)を検出するために,共通チャネルにより,同期チャネル,パイロット又は基準信号,ブロードキャスト・チャネルを送信する。([0065],[0069])
(エ)1又は複数のアクセス端末は,サービング・セル及び隣接セルの識別情報をマクロ・ネットワークにレポートする。([0060],[0070])
(オ)マクロ・ネットワークは,アクセス端末によりレポートされるサービング・セル及び隣接セルの識別情報に基づいて,ウェイクアップ信号をアクセス端末に送信し,ウェイクアップ信号を受信したアクセス端末は,低電力モードの運用を中止する。([0060],[0061])
(カ)マクロ・ネットワークは,AP基地局のフェムト・カバレージエリア内に少なくとも1つのアクセス端末が存在するかどうかを判定することによって,少なくとも1つのカバレージエリア内に少なくとも1つのアクセス端末が存在するかどうか判定してもよい。([0059])


前記(オ)において,ウェイクアップ信号を受信したAP基地局は,低電力モードからウェイクアップして,非低電力モードとなると解するのが合理的である。そうすると,前記(ア)及び(オ)から,引用文献1には,「低電力モードのAP基地局をマクロ・ネットワークにおいて非低電力モードにするための方法」が記載されているといえる。

前記(エ)より,「マクロ・ネットワーク」は,「サービング・セル」及び「隣接セル」を包含し,技術常識及び本願明細書の段落【0005】の記載からして,「サービング・セル」と「隣接セル」は,「AP基地局」と同一視できるものである。そして,「非低電力モード」にある「AP基地局」は,複数のアクセス端末を収容し得ることは自明である。
そうすると,引用文献1には,「マクロ・ネットワークが複数のアクセス端末を収容する非低電力モードのAP基地局を備える」ことが記載されているといえる。

前記(ウ)及び(オ)より,非低電力モードのみならず,低電力モードのAP基地局も,共通チャネルにより,アクセス端末を検出するための信号を送信することは自明である。そして,当該信号を,「検出信号」と称し,送信することを,「送信するステップ」と称することは任意である。
そうすると,引用文献1には,「低電力モードのAP基地局によって検出信号を送信するステップ」が記載されているといえる。

前記(エ)より,マクロ・ネットワークは,複数のアクセス端末から,サービング・セル及び隣接セル,すなわち,AP基地局の識別情報を含むレポートを受信しており,当該受信することを,「受信するステップ」と称することは任意である。
そうすると,引用文献1には,マクロ・ネットワークが,「複数のアクセス端末から,AP基地局の識別情報を含むレポートを受信するステップ」が記載されているといえる。

前記(ア)及び(カ)より,フェムトセルのAP基地局のカバレージエリア内にアクセス端末が存在するか否かに基づいて,当該フェムトセルのAP基地局の電力モード(低電力モード/非低電力モード)を制御している。そして,前記(エ)及び(オ)より,アクセス端末から受信したレポートに含まれるAP基地局の識別情報に基づいて,当該アクセス端末が,どのAP基地局が管理するセルのカバレージエリア内にいるかどうか判定できることは自明である。よって,マクロ・ネットワークは,複数のアクセス端末から受信したレポートに含まれるAP基地局の識別情報に基づいて,複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力のAP基地局(フェムトセル)のカバレージエリア内にあると判定したときに,当該AP基地局にウェイクアップ信号を送信することにより前記低電力モードのAP基地局を非低電力モードにしており,非低電力モードにする処理を,「非低電力モードにするステップ」と称することは任意である。
そうすると,引用文献1には,「複数のアクセス端末から受信したレポートに含まれるAP基地局の識別情報に基づいて,前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にあると判定したときに,前記低電力モードのAP基地局を非低電力モードにするステップ」が記載されているといえる。

以上より,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 低電力モードのAP基地局をマクロ・ネットワークにおいて非低電力モードにするための方法であって,前記マクロ・ネットワークが複数のアクセス端末を収容する非低電力モードにあるAP基地局を備えており,前記方法が,
前記低電力モードのAP基地局によって検出信号を送信するステップと,
前記複数のアクセス端末から,AP基地局の識別情報を含むレポートを受信するステップと,
前記複数のアクセス端末から受信したレポートに含まれる前記AP基地局の識別情報に基づいて,前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にあると判定したときに,前記低電力モードのAP基地局を非低電力モードにするステップと,
を含む,方法。」

イ 周知事項1
原査定で引用された引用文献2(国際公開第2009/154038号)の記載内容([0057],[0058],[0064]ないし[0070],[0110]ないし[0113],[0121]ないし[0124])から,次の事項は周知事項と解される。(以下,「周知事項1」という。)

「 無線基地局が通常モード又は省電力モードで動作するセルラーシステムにおいて,
移動端末が,隣接無線基地局から,隣接無線基地局のセルを特定するセル識別情報を含むパイロット信号を受信し,当該パイロット信号の受信信号強度を測定し,当該受信信号強度が所定の閾値以上か否かを判断し,閾値以上であると判断すると,セル識別情報を含む測定レポートを無線基地局に送信し,
測定レポートを受信した無線基地局は,受信した測定レポートに含まれるセル識別情報に対応する隣接無線基地局に,モード遷移要求を送信し,
モード遷移要求を受信した隣接セル基地局は,自身が省電力モードに設定されている場合に,省電力モードを通常モードに遷移させること。」

ウ 周知事項2
前置報告で引用された文献(特開2009-231912号公報)の記載内容(【0032】ないし【0036】,【0041】,【0042】,図5,図6)から,次の事項は周知事項と解される。(以下,「周知事項2」という。)

「 アクセスポイントが送信電力を決定する無線LANシステムにおいて,
無線LAN端末は,複数のアクセスポイントから受信した受信信号の電界強度を測定し,測定結果をリスト化した電界強度リストを各アクセスポイントに送信し,
各アクセスポイントは,受信した電界強度リストに基づいて,自身が収容すべき無線LAN端末を選択して,自身が送信する際の送信電力を決定すること。」

(2)対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「低電力モード」及び「非低電力モード」はそれぞれ,本願の「非アクティブ」な状態及び「アクティブ」な状態に相当し,引用発明の「非低電力モードにする」ことは,本願発明の「アクティブ化する」ことに相当する。
また,技術常識及び本願明細書の段落【0005】の記載から,基地局とセルとは同一視できるものである。よって,引用発明の「低電力モードのAP基地局」及び「非低電力モードのAP基地局」はそれぞれ,本願発明の「非アクティブ・セル」及び「アクティブ・セル」に相当する。
さらに,引用発明の「マクロ・ネットワーク」及び「アクセス端末」はそれぞれ,本願発明の「無線電気通信インフラストラクチャ」及び「端末」に包含される概念である。
したがって,引用発明の「低電力モードのAP基地局をマクロ・ネットワークにおいて非低電力モードにするための方法であって,前記マクロ・ネットワークが複数のアクセス端末を収容する非低電力モードにあるAP基地局を備え」ることは,本願発明の「少なくとも1つの非アクティブ・セルを無線電気通信インフラストラクチャにおいてアクティブ化するための方法であって,前記電気通信インフラストラクチャが複数の端末を収容するアクティブ・セルを備え」ることに相当する。

引用発明の「検出信号」は,本願発明の「プレゼンス信号」に相当する。
よって,引用発明の「前記低電力モードのAP基地局によって検出信号を送信するステップ」は,本願発明の「前記少なくとも1つの非アクティブ・セルによってプレゼンス信号を送信するステップ」に相当する。

引用発明の「AP基地局の識別情報を含むレポート」と,本願発明の「前記プレゼンス信号の信号レベルをそれぞれが含む測定レポート」とは,「情報をそれぞれが含むレポート」である点において共通する。
また,引用発明の「複数のアクセス端末」と,本願発明の「前記プレゼンス信号を検出した前記複数の端末」とは,「複数の端末」である点において共通する。
そうすると,引用発明の「前記複数のアクセス端末から,AP基地局の識別情報を含むレポートを受信するステップ」と本願発明の「前記プレゼンス信号を検出した前記複数の端末から,前記プレゼンス信号の信号レベルをそれぞれが含む測定レポートを受信するステップ」とは,「前記複数の端末から,情報をそれぞれが含むレポートを受信するステップ」である点において共通する。

引用発明の「カバレージエリア」は,本願発明の「カバレッジ・エリア」に相当する。
また,引用発明の「前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にある」ということは,本願発明の「アクティブ化条件」といい得るものである。そして,引用発明において,「前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にある」と判定することは,前記「アクティブ化条件」を「満たすとき」であるといえる。
また,本願発明は,「処理結果」を介しているものの,全体としてみれば,レポートに含まれる情報に基づいて,「アクティブ化」を行うものといえる。
よって,引用発明の
「前記複数のアクセス端末から受信したレポートに含まれる前記AP基地局の識別情報に基づいて,前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にあるいう少なくとも1つのアクティブ化条件を満たすときに,前記低電力モードのAP基地局を非低電力モードにするステップ」と,
本願発明の
「前記複数の端末から受信した前記測定レポートに含まれる,前記信号レベルを有する情報を,前記電気通信インフラストラクチャの処理システムにおいて処理して,処理結果を提供するステップと,
前記複数の端末のうち少なくとも1つが前記非アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内にあるという少なくとも1つのアクティブ化条件を前記処理結果が満たすときに,前記非アクティブ・セルをアクティブ化するステップ」とは,
「前記複数の端末から受信したレポートに含まれる情報に基づいて,前記複数の端末のうち少なくとも1つが前記非アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内にあるという少なくとも1つのアクティブ化条件を満たすときに,前記非アクティブ・セルをアクティブ化するステップ」
である点において共通する。

イ 一致点・相違点
以上より,本願発明と,引用発明とは,以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 少なくとも1つの非アクティブ・セルを無線電気通信インフラストラクチャにおいてアクティブ化するための方法であって,前記電気通信インフラストラクチャが複数の端末を収容するアクティブ・セルを備えており,前記方法が,
前記少なくとも1つの非アクティブ・セルによってプレゼンス信号を送信するステップと,
前記複数の端末から,情報をそれぞれが含むレポートを受信するステップと,
前記複数の端末から受信したレポートに含まれる情報に基づいて,前記複数の端末のうち少なくとも1つが前記非アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内にあるという少なくとも1つのアクティブ化条件を満たすときに,前記非アクティブ・セルをアクティブ化するステップと,
を含む方法。」

[相違点1]
「レポート」に関し,本願発明は,「プレゼンス信号の信号レベル」を含む「測定レポート」であり,当該「プレゼンス信号の信号レベル」の「処理」により,「前記複数の端末のうち少なくとも1つが前記非アクティブセルのカバレッジ・エリア内にあるという少なくとも1つのアクティブ化条件」を「満たす」か否かを示す「処理結果」が提供されるのに対し,引用発明は,「AP基地局の識別情報」を含む「レポート」であり,当該「AP基地局の識別情報」自体が「アクティブ化条件」を示すものである点。

[相違点2]
「レポート」を送信する「複数の端末」が,本願発明は,「プレゼンス信号を検出した」ものであるのに対し,引用発明では,「検出信号」と,「レポート」を送信する「複数の端末」との関係について具体的に特定していない点。

ウ 判断
事案に鑑みて,前記[相違点1]について検討する。

(ア)周知事項1の適用について
周知事項1において,移動端末(本願発明の「端末」に相当。)は,隣接無線基地局が送信するパイロット信号(本願発明の「プレゼンス信号」に相当。)の受信信号強度(本願発明の「信号レベル」に相当。)を測定しているが,当該移動端末が無線基地局に送信する測定レポートには,前記受信信号強度は含まれておらず,前記受信信号強度が閾値以上であるパイロット信号を送信した隣接無線基地局のセル識別情報が含まれるのみである。
したがって,引用発明に周知事項1をどのように組み合わせても,[相違点1]に係る本願発明の構成とすることはできない。

(イ)周知事項2の適用について
周知事項2において,無線LAN端末(本願発明の「端末」に相当。)は,複数のアクセスポイント(本願発明の「セル」に相当。)から受信した受信信号の電界強度(本願発明の「信号レベル」に相当。)を測定し,測定結果をリスト化した電界強度リスト(本願発明の「測定レポート」に相当。)を各アクセスポイントに送信しているものの,各アクセスポイントは,受信した電界強度リストに基づいて,自身が収容すべき無線LAN端末を選択して,自身が送信する際の送信電力を決定しており,電界強度リストは,「非アクティブ・セル」の「アクティブ化」のために用いられるものではない。
よって,引用発明に周知事項2をそのまま組み合わせても,[相違点1]に係る本願発明の構成とすることはできない。
また,引用発明において,「前記複数のアクセス端末の少なくとも1つが低電力モードのAP基地局のカバレージエリア内にある」か否かを判定するためには,当該アクセス端末から,低電力モードのAP基地局の識別情報を受信できれば足りるから,送信電力の決定に用いられる電界強度リスト(測定レポート)を,引用発明における「低電力モードのAP基地局を非低電力モードにする」ために用いることの動機付けが存在しない。
よって,引用発明に周知事項2を組み合わせて[相違点1]に係る本願発明の構成とすることが当業者にとって容易に想到し得たとはいえない。

以上のとおり,周知事項1又は周知事項2のいずれを採用したとしても,[相違点1]に係る本願発明の構成は,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に想到し得たものではない。

(3)小括
したがって,[相違点2]について検討するまでもなく,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項11に係る発明は,本願発明とカテゴリが異なるだけであるので,同様に,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項2ないし10及び12に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明に基づいて周知事項を参酌することにより容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)まとめ
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は,次のとおりである。

「 この審判事件に関する出願は,合議の結果,以下の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら,この通知書の発送の日から3ヶ月以内に意見書を提出してください。

理 由

1.(サポート要件,明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(サポート要件,明確性)について
(1)請求項2-11,13-15
(…中略…)
したがって,請求項2-11,13-15に係る発明は,明確ではない。(明確性)

(請求項2の「非アクティブ・セル内」,及び請求項3,7,10の「アクティブ・セル内」を,それぞれ「非アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内」及び「アクティブ・セルのカバレッジ・エリア内」に補正すれば明確である。)

(2)請求項3-11,13-15
(…中略…)

したがって,請求項3-11,13-15に係る発明は,明確ではない。(明確性)

(請求項3の「前記プレゼンス信号に関する情報」を「前記測定レポート」に補正すれば明確である。)

(3)請求項5-11,13-15
(…中略…)

したがって,請求項5-11,13-15に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。(サポート要件)

(請求項5は削除することを検討されたい。)

(4)請求項12,14
(…中略…)

したがって,請求項12,14に係る発明は,明確ではない。(明確性)

(請求項12の「前記アクティブ化されたセル」を,請求項1と同様の「前記非アクティブ・セル」に補正すれば明確である。)

(5)請求項14,15
(…中略…)

したがって,請求項14,15に係る発明は,明確ではない。(明確性)

(「●理由2(進歩性)」も考慮し,請求項14,15は削除することを検討されたい。)

●理由2(進歩性)について

・請求項 14,15
・引用文献等 1
・備考
(…中略…)本願の請求項14,15に係る発明は,引用例1に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到し得たものである。(…中略…)

<引用文献等一覧>
1.特開2009-231912号公報(新たに引用された文献)
(以下省略)」

そうすると,当審拒絶理由の趣旨は,補正前の請求項2ないし15に係る発明は,明確でないから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,補正前の請求項5ないし11及び13ないし15に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,並びに,補正前の請求項14及び15に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

2.当審拒絶理由についての当審の判断
補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし12に係る発明は,明確であり,発明の詳細な説明に記載したものであるから,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。
また,特許法第29条第2項の対象とされた補正前の請求項14及び15に係る発明は,補正により削除された。
よって,当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-31 
出願番号 特願2013-508486(P2013-508486)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
林 毅
発明の名称 非アクティブ・セルをアクティブ化するための方法および電気通信インフラストラクチャ  
代理人 小林 泰  
代理人 末松 亮太  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 末松 亮太  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  

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