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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1315223
審判番号 不服2015-4643  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-10 
確定日 2016-05-31 
事件の表示 特願2013-548561「ポータブルコンピューティングデバイスの熱ポリシーを管理するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月12日国際公開、WO2012/094558、平成26年 3月27日国内公表、特表2014-507708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2012年1月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年1月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年10月14日付けで手続補正がなされたが、同年11月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成27年3月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成27年3月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「【請求項1】
チップを含むポータブルコンピューティングデバイスの1つまたは複数の熱ポリシーを管理するための方法であって、
少なくとも第1の所定の熱状態と第2の所定の熱状態を定義するステップであって、各々の所定の熱状態が、夫々の温度範囲および夫々の固有の熱ポリシーと関連付けられており、前記第1の所定の熱状態と関連する第1の温度範囲の最高の温度が、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の温度範囲の最低の温度以下であり、
熱ポリシーが、1つまたは複数の熱軽減技法を含み、
熱軽減技法の1つまたは複数による熱ポリシーの適用が、前記ポータブルコンピューティングデバイスの利用可能な機能を減らし、
前記第1の所定の熱状態と関連する第1の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、初期レベルに対して減らされた第1のレベルへと減らし、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、前記第1のレベルに対して減らされた第2のレベルへと減らす、ステップと、
1つまたは複数の熱センサから温度測定値を受け取ることによって、前記ポータブルコンピューティングデバイスの温度を監視するステップと、
最近受け取られた温度測定結果を、前に受け取られた温度測定結果ならびに前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態と関連する前記夫々の温度範囲と比較することによって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達したかどうかを判定するステップであって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに到達することが、前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される、ステップと、
前記第1の所定の熱状態に前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達した場合に、前記第1の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第1の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第1のレベルに減らすステップと、
前記ポータブルコンピューティングデバイスが前記第2の所定の熱状態に達した場合には、前記第2の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第2の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第2のレベルに減らすステップと
を含む、方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を

「チップを含むポータブルコンピューティングデバイスの1つまたは複数の熱ポリシーを管理するための方法であって、
少なくとも第1の所定の熱状態と第2の所定の熱状態を定義するステップであって、各々の所定の熱状態が、夫々の温度範囲および夫々の固有の熱ポリシーと関連付けられており、前記第1の所定の熱状態と関連する第1の温度範囲の最高の温度が、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の温度範囲の最低の温度以下であり、
熱ポリシーが、1つまたは複数の熱軽減技法を含み、
熱軽減技法の1つまたは複数による熱ポリシーの適用が、前記ポータブルコンピューティングデバイスの利用可能な機能を減らし、
前記第1の所定の熱状態と関連する第1の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、初期レベルに対して減らされた第1のレベルへと減らし、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、前記第1のレベルに対して減らされた第2のレベルへと減らす、ステップと、
1つまたは複数の熱センサから温度測定値を受け取ることによって、前記ポータブルコンピューティングデバイスの温度を監視するステップと、
最近受け取られた温度測定結果を、前に受け取られた温度測定結果ならびに前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態と関連する前記夫々の温度範囲と比較することによって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達したかどうかを判定するステップであって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに到達することが、前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の期間における所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される、ステップと、
前記第1の所定の熱状態に前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達した場合に、前記第1の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第1の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第1のレベルに減らすステップと、
前記ポータブルコンピューティングデバイスが前記第2の所定の熱状態に達した場合には、前記第2の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第2の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第2のレベルに減らすステップと
を含む、方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正する補正事項を含むものである。(下線は補正事項を示している。)

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正のうち上記補正事項は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された「所定の大きさの温度変化」を、「所定の期間における所定の大きさの温度変化」として限定したものであり、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するものでもない。

(2)独立特許要件

本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

イ.引用発明、周知技術
(ア)引用例
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2001-67149号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。)

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装置内部、即ちシステム内部の温度を監視する温度監視機能を備えたコンピュータ装置等に関する。」(2頁1欄)

b.「【0002】
【従来の技術】コンピュータ、特にパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと呼ぶ。)の処理速度は、近年、飛躍的に上昇しており、中でもパソコンの心臓部に当たるCPU(Central Processing Unit)の演算処理能力は急激に高まっている。このCPUの演算処理能力を高める1つの方法として、クロック周波数を上げる方法がある。この方法によれば、同一のCPU、即ち同一の演算アルゴリズムを用いたCPUであっても、CPUの内部動作に係るクロック周波数を高めることによって、演算処理能力を向上させることができる。
【0003】一方、CPUの高速化に伴なって、高速動作による温度上昇が無視できなくなっており、ヒートシンクによる放熱性の向上、空冷ファンによる強制的なCPUの冷却等の処理が施されているのが現状である。
【0004】しかしモバイルパソコン等の携帯コンピュータでは、空冷ファンを設けることができず、十分な放熱、または冷却が期待できない環境においては、CPUの温度を監視する機能を設けて、ある設定温度を越えた場合には、CPUの処理能力、例えばクロック周波数を落とすことによって、その発熱を抑える手法がとられていた。」(2頁1?2欄)

c.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の温度監視機能においては、上述した通り、CPUの演算処理能力のみを制御している為、CPUの温度が上昇するに従って、処理能力が著しく低下してしまったり、CPUの演算処理能力を制御する程度では足りない程の温度上昇が起こった場合には、逆にCPUが暴走してしまうといった問題があった。
【0006】本発明の課題は、CPUまたはコンピュータ装置内部の温度に従って、CPUの処理能力を段階的に変化させるとともに、コンピュータ装置全体の消費電力を段階的に抑えることによって、CPU及びコンピュータ装置内部の温度上昇を抑制させることである。」(2頁2欄)

d.「【0010】
【発明の実施の形態】以下、図1?図2を参照して本発明を適用したコンピュータ装置1の、実施の形態を詳細に説明する。
【0011】まず構成を説明する。図1は、コンピュータ装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0012】コンピュータ装置1は、装置内部の温度(システム内部の温度)が、t1?t4(t1<t2<t3<t4)の4つの設定温度を越えたか否かを監視し、CPU2のクロック周波数f1?f3(f1>f2>f3)や機能ブロックB1?B3の電源を段階的に変更・制限することによって、動作保証温度内での各種アプリケーションの実行の継続を図る装置である。また、温度t4を越えたか否かは、検出部10と、フリップフロップ(以下、FFと呼ぶ。)12と、電源スイッチ17とから構成される電源遮断回路によって、ハードウェアとして監視しており、温度t4を越えた場合には、強制的にコンピュータ装置1各部への電源供給を遮断するよう構成されている。」(3頁3欄)

e.「【0013】図1において、コンピュータ装置1は、CPU2と、RAM3と、記憶装置4と、記憶媒体5と、機能ブロックB1?B3と、バス6と、発振部7と、セレクタ8と、センサー9と、検出部10と、監視部11と、FF12と、電源部13と、電源スイッチ14?17とから構成される。また、CPU2と、RAM3と、記憶装置4と、機能ブロックB1?B3とは、バス6によって接続されるとともに、電源スイッチ14?17を介して電源部13から電源が供給されている。」(3頁3欄)

f.「【0014】CPU(Central Processing Unit )2は、記憶装置4内の記憶媒体5に記憶されている当該コンピュータ装置1に対応する各種アプリケーションプログラムの中から指定されたアプリケーションプログラムや、不図示の入力装置から入力される各種指示に応じた各種データをRAM3内に格納する。そして、CPU2は、この入力指示及び入力データに応じてRAM3内に格納したアプリケーションプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM3内に格納するとともに、不図示の表示装置に表示する。そして、CPU2は、RAM3内に格納した処理結果を入力装置から入力指示される記憶媒体5内の保存先に保存する。
【0015】また、CPU2は、記憶媒体5内に格納された温度監視処理プログラムを読み出して、後述する温度監視処理(図2参照)を実行する。この温度監視処理は、コンピュータ装置1各部の動作に係る処理であるため、コンピュータ装置1が起動され次第、実行が開始され、コンピュータ装置1が起動している間は、常時実行されていることが望ましい。
【0016】この温度監視処理によれば、現在の装置内の温度が温度t1を越えた場合には、その旨の信号が監視部11からCPU2へ出力される。そして、CPU2は、セレクタ8にクロック周波数をf2とする旨の指示信号を出力するとともに、電源スイッチ16を開放させて、機能ブロックB3への電源供給をカットする。
【0017】さらに、現在の装置内の温度が温度t2を越えた場合には、その旨の信号が監視部11からCPU2へ出力される。そして、CPU2は、セレクタ8にクロック周波数をf3とする旨の指示信号を出力するとともに、電源スイッチ15を開放させて、機能ブロックB2への電源供給をカットする。
【0018】またさらに、現在の装置内の温度が温度t3を越えた場合には、その旨の信号が監視部11からCPU2へ出力される。そして、CPU2は、電源スイッチ14を開放させて、機能ブロックB1の電源供給をカットした後、現在実行中の各種アプリケーションプログラムを全て終了して、コンピュータ装置1を停止させる処理を実行する。
【0019】尚、装置内部の温度が下降した場合には、CPU2は、電源供給をカットした機能ブロックへの電源供給を再開させるべく、該当する電源スイッチを閉じて、該当する機能ブロックを復旧させるとともに、セレクタ8にクロック周波数を上げる旨の指示信号を出力して、段階的にクロック周波数を上昇させる。この温度監視処理に係る動作は、詳細に後述する。
【0020】RAM(Random Access Memory)3は、上記温度監視処理が行われる際にCPU2によって処理される各種解析データの他、CPU2により指定されたアプリケーションプログラム、入力指示、入力データ及び処理結果等を格納するメモリエリアを形成する。
【0021】記憶装置4は、プログラムやデータ等が予め記憶されている記憶媒体5を有しており、この記憶媒体5は磁気的、光学的記録媒体、若しくは半導体メモリで構成されている。この記憶媒体5は記憶装置4に固定的に設けたもの、若しくは着脱自在に装着するものであり、この記憶媒体5には当該コンピュータ装置1に対応する各種アプリケーションプログラムや上記監視処理プログラムの他、当該プログラムで処理されたデータ等が記憶される。
【0022】また、この記憶媒体5に記憶するプログラムやデータ等は、通信回線等を介して接続された他の機器から受信して記憶する構成としてもよく、更に、通信回線等を介して接続された他の機器側に上記記憶媒体5を備えた記憶装置を設け、この記憶媒体5に記憶されているプログラム、データ等を通信回線を介して使用する構成にしてもよい。」(3頁3欄?4頁5欄)

g.「【0023】発振部7は、CPU2の内部動作に係るクロック周波数として、3つの異なる周波数f1?f3を発生し、セレクタ8に出力する。クロック周波数f1?f3は、クロック周波数f1をCPU2の通常動作に係るクロック周波数、例えば200MHzとし、クロック周波数f2をf1の75%程度の周波数、例えば150MHzとし、クロック周波数f3をf1の50%程度の周波数、例えば100MHzとすることが望ましい。何故ならば、上記監視処理において、段階的にクロック周波数がf1?f3へ変更されるが、CPU2のクロック周波数はコンピュータ装置1の処理能力に直結している。このため、処理速度の急激な減少は、実行中の各種アプリケーションプログラムに影響を与えるとともに、ユーザに不快感や違和感を与えてしまうため、出来る限り避ける必要があるからである。
【0024】セレクタ8は、発振部7から入力される3つのクロック周波数の内、1つのクロック周波数を、CPU2から入力される指示信号に応じて選択し、選択したクロック周波数をCPU2へ出力する。」(4頁5欄)

h.「【0025】センサー9は、サーミスタ等によって構成され、コンピュータ装置1の内部温度を検出して、検出したアナログ信号を検出部10に出力する。
【0026】検出部10は、センサー9から入力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換して、監視部11へ出力する。また、検出部10は、予め設定された温度t4を記憶しており、センサー9から入力されるコンピュータ装置1の内部温度と比較する。そして、内部温度が温度t4を越えた場合には、FF12へ電源遮断信号を出力し、FF12と電源スイッチ17間の信号レベルを変更させることによって、電源スイッチ17を開放させ、コンピュータ装置1各部への電源供給を強制的に遮断させる。
【0027】この電源遮断信号の出力は、何らかの要因によるCPU2の暴走や、断線等の回路故障により、温度監視処理が正常に行われない場合に対処したものであり、ソフトウェアによる温度監視処理に対して、ハードウェアとして電源供給を停止させる仕組みを設けたものである。したがって、電源遮断信号の出力は温度上昇に対する最終手段である。このため、温度t4は、後述するコンピュータ装置1の動作保証温度の上限に設定されることが望ましい。」(4頁5欄)

i.「【0028】監視部11は、予め設定された3つの異なる温度t1?t3を記憶し、これらの温度t1?t3と、検出部10から入力されるコンピュータ装置1の内部温度とを比較する。そして、内部温度が温度t1?t3を越えた場合には、該当するt1?t3の温度以上になった旨の信号をCPU2へ出力する。ここで、温度t1?t3は、コンピュータ装置1の処理速度や機能の制限を行うための閾値であり、段階的にCPU2のクロック周波数の制限等を行うために、昇順に設定される必要がある。また、温度t3は、実行中のアプリケーションプログラムを全て停止させる閾値であるため、コンピュータ装置1の動作保証温度の上限よりも若干低めに設定されていることが望ましい。何故ならば、動作保証温度の上限は温度t4に設定されており、検出部10等によって、この温度t4に対する内部温度の監視が行われるからである。
【0029】FF12は、検出部10から入力される信号レベルを保持する回路であり、検出部10から、電源遮断信号が入力されると、電源スイッチ17を開放し、コンピュータ装置1各部への電源供給を強制的に遮断させる。」(4頁5?6欄)

j.「【0030】電源部13は、コンピュータ装置1の各部へ電源を供給する電源装置であり、電源を供給する電源ラインの内、機能ブロックB1への電源ラインは、電源スイッチ14によって切断/接続され、機能ブロックB2への電源ラインは、電源スイッチ15によって切断/接続され、機能ブロックB3への電源ラインは、電源スイッチ16によって切断/接続される。また、機能ブロックB1?B3への電源ラインを含む、コンピュータ装置1各部へ電源を供給する電源ラインは、電源スイッチ17に共通接続されており、この電源スイッチ17によって切断された場合には、コンピュータ装置1各部への電源供給が強制的に遮断される。
【0031】電源スイッチ14、15、16、17は、例えば電磁リレー等から構成されるスイッチであり、電源スイッチ14?16はCPU2から入力される信号レベルによって開閉が制御され、電源スイッチ17はFF12から入力される信号レベルによって開閉が制御される。
【0032】機能ブロックB1?B3は、上記温度監視処理において、コンピュータ装置1の内部温度が上昇した際に、その温度に応じて、機能ブロックB3から順に電源がカットされる機能部である。このため、CPU2によって実行される各種アプリケーションプログラムに支障をきたさない範囲で、電力の省力化が可能な機能部であることが望ましい。例えば、機能ブロックB1は液晶画面(表示部)のEL(Electro Luminescent)バックライトを駆動するELバックライト駆動回路であり、機能ブロックB2は液晶画面(表示部)の液晶表示駆動回路であり、機能ブロックB3は入力部であるキーボードの回路である。」(4頁6欄)

k.「【0033】次に、温度監視処理に係る動作を説明する。図2は、CPU2によって実行される温度監視処理を示すフローチャートである。
【0034】図2において、まず、センサー9によってコンピュータ装置1の内部温度が検出され、アナログ信号が検出部10に出力されと、検出部10は、アナログ信号をデジタル信号に変換して、監視部11へ出力する(ステップS1)。尚、検出部10は、上述の通り、内部温度が温度t4を越えているか否かを判定し、越えている場合には、FF12へ電源遮断信号を出力して、電源スイッチ17を開放させ、コンピュータ装置1各部への電源供給を強制的に遮断させる。しかし、温度監視処理は、温度t4未満の場合に行われる処理であるため、温度監視処理の説明においては、この検出部10における温度t4の判定処理の説明を省略する。
【0035】次に、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が温度t1を越えているかどうかを判定し(ステップS2)、温度t1を越えるまで、CPU2へは信号を出力しない。即ち、内部温度の監視を継続する。
【0036】コンピュータ装置1の内部温度が温度t1を越えたと監視部11が判定した場合には(ステップS2:Yes)、監視部11は、その旨の信号をCPU2へ出力する。そして、CPU2は、クロック周波数をf2とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf2とした後(ステップS3)、機能ブロックB3の電源をカットすべく、電源スイッチ16を開放させる(ステップS4)。
【0037】機能ブロックB3の電源をカットした後、CPU2は、監視部11からの信号入力待ちの状態となる。即ち、ステップS1と同様に、センサー9等による温度検出が行われ(ステップS5)、監視部11による内部温度の監視が継続して行われる。具体的には、監視部11により、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t2未満であり(ステップS6:No)、温度t1以上であると判定された場合には(ステップS7:Yes)、ステップS5の処理が繰り返し実行される。
【0038】また、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t1未満に下がったと判定した場合には(ステップS7:No)、その旨の信号をCPU2へ出力し、CPU2は、クロック周波数をf1とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf1とした後(ステップS8)、機能ブロックB3の電源を回復すべく、電源スイッチ16を閉じる(ステップS9)。そして、ステップS1の処理へ移行して、CPU2は、監視部11からの信号入力待ちの状態となる。
【0039】また、ステップS6において、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t2以上になったと判定した場合には(ステップS6:Yes)、その旨の信号をCPU2へ出力する。そして、CPU2は、クロック周波数をf3とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf3とした後(ステップS10)、機能ブロックB2の電源をカットすべく、電源スイッチ15を開放させる(ステップS11)。
【0040】機能ブロックB2の電源をカットした後、CPU2は、監視部11からの信号入力待ちの状態となる。即ち、ステップS1と同様に、センサー9等による温度検出が行われ(ステップS12)、監視部11による内部温度の監視が継続して行われる。具体的には、監視部11により、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t3未満であり(ステップS13:No)、温度t2以上であると判定された場合には(ステップS14:Yes)、ステップS12の処理が繰り返し実行される。
【0041】また、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が、温度T2未満に下がったと判定した場合には(ステップS14:No)、その旨の信号をCPU2へ出力し、CPU2は、クロック周波数をf2とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf2とした後(ステップS15)、機能ブロックB2の電源を回復すべく、電源スイッチ15を閉じる(ステップS16)。そして、ステップS5の処理へ移行して、CPU2は、監視部11からの信号入力待ちの状態となる。
【0042】また、ステップS13において、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t3以上になったと判定した場合には(ステップS13:Yes)、その旨の信号をCPU2へ出力する。そして、CPU2は、機能ブロックB1の電源をカットすべく、電源スイッチ14を開放させた後(ステップS17)、CPU2が実行している全てのアプリケーションプログラムを停止して(ステップS18)、温度監視処理を終了する。
【0043】以上のように、本発明を適用したコンピュータ装置1は、CPU2により実行される温度監視処理によって、装置内部の温度が、温度t1?t3を越えたか否かを監視し、装置内部の温度に応じて、CPU2のクロック周波数をf1?f3の3つの周波数に段階的に変更するとともに、ELバックライト駆動回路や液晶表示駆動回路、キーボード回路といった電力の省力化が可能な機能ブロックの電源供給を制限する。このため、コンピュータ装置1およびCPU2の温度上昇を抑制することが可能である。」(4頁6欄?5頁8欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、

(a)上記a.の記載によれば、引用例は、装置内部の温度を監視する温度監視機能を備えたコンピュータ装置1に関するものであり、さらに、上記k.、及び図2には、該コンピュータ装置1による温度監視処理の動作が記載されている。
したがって、引用例には、装置内部の温度を監視する温度監視機能を備えたコンピュータ装置の温度監視処理の方法、が記載されているといえる。

(b)上記d.の段落【0012】の記載によれば、コンピュータ装置1は、装置内部の温度(システム内部の温度)が、t1?t4(t1<t2<t3<t4)の4つの設定温度を越えたか否かを監視し、CPU2のクロック周波数f1?f3(f1>f2>f3)や機能ブロックB1?B3の電源を段階的に変更・制限することによって、動作保証温度内での各種アプリケーションの実行の継続を図る装置であり、さらに、上記e.、及び図1の記載によれば、コンピュータ装置1は、CPU2と、RAM3と、記憶装置4と、記憶媒体5と、機能ブロックB1?B3と、バス6と、発振部7と、セレクタ8と、センサー9と、検出部10と、監視部11と、FF12と、電源部13と、電源スイッチ14?17とから構成されている。
したがって、引用例には、コンピュータ装置は、装置内部の温度(システム内部の温度)が、t1?t4(t1<t2<t3<t4)の4つの設定温度を越えたか否かを監視し、CPUのクロック周波数f1?f3(f1>f2>f3)や機能ブロックB1?B3の電源を段階的に変更・制限することによって、動作保証温度内での各種アプリケーションの実行の継続を図る装置であり、CPU2と、RAM3と、記憶装置4と、記憶媒体5と、機能ブロックB1?B3と、バス6と、発振部7と、セレクタ8と、センサー9と、検出部10と、監視部11と、FF12と、電源部13と、電源スイッチ14?17とから構成される、ことが記載されているといえる。

(c)上記h.の段落【0025】によれば、センサー9は、サーミスタ等によって構成され、コンピュータ装置1の内部温度を検出して、検出したアナログ信号を検出部10に出力する、ものであり、さらに、段落【0026】によれば、検出部10は、センサー9から入力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換して、監視部11へ出力し、また、予め設定された温度t4を記憶しており、センサー9から入力されるコンピュータ装置1の内部温度と比較する、ものである。
したがって、引用例には、前記センサーは、サーミスタ等によって構成され、前記コンピュータ装置の内部温度を検出して、検出したアナログ信号を検出部に出力し、前記検出部は、前記センサーから入力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換して、前記監視部へ出力し、また、予め設定された温度t4を記憶しており、前記センサーから入力される前記コンピュータ装置の内部温度と比較する、ことが記載されているといえる。

(d)上記i.の段落【0028】によれば、監視部11は、予め設定された3つの異なる温度t1?t3を記憶し、これらの温度t1?t3と、検出部10から入力されるコンピュータ装置1の内部温度とを比較する、ものである。

(e)上記j.の段落【0030】、及び図1によれば、電源部13は、コンピュータ装置1の各部へ電源を供給する電源装置であり、電源を供給する電源ラインの内、機能ブロックB1への電源ラインは、電源スイッチ14によって切断/接続され、機能ブロックB2への電源ラインは、電源スイッチ15によって切断/接続され、機能ブロックB3への電源ラインは、電源スイッチ16によって切断/接続され、また、機能ブロックB1?B3への電源ラインを含む、コンピュータ装置1各部へ電源を供給する電源ラインは、電源スイッチ17に共通接続されて、いる。

(f)上記j.の段落【0032】によれば、機能ブロックB1?B3は、CPU2によって実行される各種アプリケーションプログラムに支障をきたさない範囲で、電力の省力化が可能な機能部であることが望ましく、例えば、機能ブロックB1は液晶画面(表示部)のEL(Electro Luminescent)バックライトを駆動するELバックライト駆動回路であり、機能ブロックB2は液晶画面(表示部)の液晶表示駆動回路であり、機能ブロックB3は入力部であるキーボードの回路である。

(g)上記f.の段落【0015】によれば、CPU2は、記憶媒体5内に格納された温度監視処理プログラムを読み出して、温度監視処理を実行する、ものである。
さらに、段落【0016】?【0019】によれば、温度監視処理は、現在の装置内の温度が温度t1を越えた場合には、CPU2は、セレクタ8にクロック周波数をf2とする旨の指示信号を出力するとともに、電源スイッチ16を開放させて、機能ブロックB3への電源供給をカットし、さらに、現在の装置内の温度が温度t2を越えた場合には、CPU2は、セレクタ8にクロック周波数をf3とする旨の指示信号を出力するとともに、電源スイッチ15を開放させて、機能ブロックB2への電源供給をカットし、またさらに、現在の装置内の温度が温度t3を越えた場合には、CPU2は、電源スイッチ14を開放させて、機能ブロックB1の電源供給をカットした後、現在実行中の各種アプリケーションプログラムを全て終了して、コンピュータ装置1を停止させる処理を実行し、装置内部の温度が下降した場合には、CPU2は、電源供給をカットした機能ブロックへの電源供給を再開させるべく、該当する電源スイッチを閉じて、該当する機能ブロックを復旧させるとともに、セレクタ8にクロック周波数を上げる旨の指示信号を出力して、段階的にクロック周波数を上昇させる、ものである。

(h)上記k.の段落【0033】?【0036】、図2の記載によれば、温度監視処理は、センサー9によってコンピュータ装置1の内部温度を検出し、監視部11へ出力する(ステップS1)、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が温度t1を越えているかどうか判定する(ステップS2)、t1を超えた場合に、監視部11は、その旨の信号をCPU2へ出力し、CPU2は、クロック周波数をf2とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf2とする(ステップS3)、機能ブロックB3の電源をカットすべく、電源スイッチ16を開放させる(ステップS4)、を有している。

(i)上記k.の段落【0037】?【0039】、図2の記載によれば、温度監視処理は、ステップS1と同様に、センサー9等による温度検出が行う(ステップS5)、監視部11は、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t2以上になったか判定する(ステップS6)、ステップS6でコンピュータ装置1の内部温度が、温度t2未満である場合に、温度t1以上であるか判定する(ステップS7)、ステップS7で、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t2未満であり、温度t1以上である場合に、ステップS5の処理が繰り返し実行し、ステップS6でt2を超えた場合に、監視部11は、その旨の信号をCPU2へ出力し、CPU2は、クロック周波数をf3とする旨の指示信号をセレクタ8へ出力して、クロック周波数をf3とする(ステップS10)、機能ブロックB2の電源をカットすべく、電源スイッチ15を開放させる(ステップS11)、を有している。

(j)上記k.の段落【0040】?【0042】、図2の記載によれば、温度監視処理は、ステップS1と同様に、センサー9等による温度検出が行う(ステップS12)、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t3以上になったか判定する(ステップS13)、ステップS13で、コンピュータ装置1の内部温度が、温度t3未満である場合に、温度t2以上であるか判定する(ステップS14)し、温度t3未満であり、温度t2以上である場合に、ステップS12の処理が繰り返し実行し、ステップS13でt3を超えた場合には、監視部11は、その旨の信号をCPU2へ出力し、CPU2は、機能ブロックB1の電源をカットすべく、電源スイッチ14を開放させる(ステップS17)、を有している。


したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「装置内部の温度を監視する温度監視機能を備えたコンピュータ装置の温度監視処理の方法であって、
該コンピュータ装置は、装置内部の温度(システム内部の温度)が、t1?t4(t1<t2<t3<t4)の4つの設定温度を越えたか否かを監視し、CPUのクロック周波数f1?f3(f1>f2>f3)や機能ブロックB1?B3の電源を段階的に変更・制限することによって、動作保証温度内での各種アプリケーションの実行の継続を図る装置であり、CPUと、RAMと、記憶装置と、記憶媒体と、機能ブロックB1?B3と、バスと、発振部と、セレクタと、センサーと、検出部と、監視部と、FFと、電源部と、電源スイッチ14?17とから構成され、
前記センサーは、サーミスタ等によって構成され、前記コンピュータ装置の内部温度を検出して、検出したアナログ信号を前記検出部に出力し、
前記検出部は、前記センサーから入力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換して、前記監視部へ出力し、また、予め設定された温度t4を記憶しており、前記センサーから入力される前記コンピュータ装置の内部温度と比較し、
前記監視部は、予め設定された3つの異なる温度t1?t3を記憶し、これらの温度t1?t3と、前記検出部から入力される前記コンピュータ装置の内部温度とを比較し、
前記電源部は、前記コンピュータ装置の各部へ電源を供給する電源装置であり、電源を供給する電源ラインの内、前記機能ブロックB1への電源ラインは、前記電源スイッチ14によって切断/接続され、前記機能ブロックB2への電源ラインは、前記電源スイッチ15によって切断/接続され、前記機能ブロックB3への電源ラインは、前記電源スイッチ16によって切断/接続され、また、前記機能ブロックB1?B3への電源ラインを含む、前記コンピュータ装置各部へ電源を供給する電源ラインは、前記電源スイッチ17に共通接続され、
前記機能ブロックB1?B3は、前記CPUによって実行される各種アプリケーションプログラムに支障をきたさない範囲で、電力の省力化が可能な機能部であることが望ましく、例えば、前記機能ブロックB1は液晶画面(表示部)のEL(Electro Luminescent)バックライトを駆動するELバックライト駆動回路であり、前記機能ブロックB2は液晶画面(表示部)の液晶表示駆動回路であり、前記機能ブロックB3は入力部であるキーボードの回路であり、
前記CPUは、前記記憶媒体内に格納された温度監視処理プログラムを読み出して、温度監視処理を実行するものであって、
前記温度監視処理は、現在の装置内の温度が温度t1を越えた場合には、前記CPUは、前記セレクタにクロック周波数をf2とする旨の指示信号を出力するとともに、前記電源スイッチ16を開放させて、前記機能ブロックB3への電源供給をカットし、さらに、現在の装置内の温度が温度t2を越えた場合には、前記CPUは、前記セレクタにクロック周波数をf3とする旨の指示信号を出力するとともに、前記電源スイッチ15を開放させて、前記機能ブロックB2への電源供給をカットし、またさらに、現在の装置内の温度が温度t3を越えた場合には、前記CPUは、前記電源スイッチ14を開放させて、前記機能ブロックB1の電源供給をカットした後、現在実行中の各種アプリケーションプログラムを全て終了して、コンピュータ装置を停止させる処理を実行し、装置内部の温度が下降した場合には、前記CPUは、電源供給をカットした前記機能ブロックへの電源供給を再開させるべく、該当する前記電源スイッチを閉じて、該当する前記機能ブロックを復旧させるとともに、前記セレクタにクロック周波数を上げる旨の指示信号を出力して、段階的にクロック周波数を上昇させるものであり、
前記センサーによって前記コンピュータ装置の内部温度を検出し、前記監視部へ出力する(ステップS1)、
前記監視部は、前記コンピュータ装置の内部温度が温度t1を越えているかどうか判定する(ステップS2)、
t1を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf2とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf2とする(ステップS3)、
前記機能ブロックB3の電源をカットすべく、前記電源スイッチ16を開放させる(ステップS4)、
前記ステップS1と同様に、前記センサーによる温度検出が行う(ステップS5)、
前前記監視部は、記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2以上になったか判定する(ステップS6)、
該ステップS6で前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2未満である場合に、温度t1以上であるか判定する(ステップS7)、
該ステップS7で、前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2未満で、温度t1以上である場合に、前記ステップS5の処理が繰り返し実行し、
前記ステップS6でt2を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf3とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf3とし(ステップS10)、
前記機能ブロックB2の電源をカットすべく、前記電源スイッチ15を開放させる(ステップS11)、
前記ステップS1と同様に、前記センサーによる温度検出が行う(ステップS12)、
前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t3以上になったか判定する(ステップS13)、
該ステップS13で、前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t3未満である場合に、温度t2以上であるか判定する(ステップS14)、
該ステップS14で、前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t3未満であり、温度t2以上である場合に、ステップS12の処理が繰り返し実行し、
前記ステップS13でt3を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、前記機能ブロックB1の電源をカットすべく、前記電源スイッチ14を開放させる(ステップS17)、
を有する方法。」


(イ)引用例2
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平2-195179号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。)

a.「述被冷却部1の後段にサーモセンサ4を配置して前述被冷却部1から排出された前述冷却風9の温度を検出する。制御装置5は、内蔵されたタイマにより一定時間毎に前述サーモセンサ4により検出された温度を求める。
そして一定時間毎に求めた温度から温度勾配を算出し、その温度勾配に応じてあらかじめ設定された温度-冷却量データをもとに冷却制御用指命として冷却制御装置6に与える。前述冷却制御装置6は、その指令を前述冷却装置2のモータ回転数をインバータ制御する冷却装置制御信号として与える。従って、前述冷却装置2は前述冷却制御装置6から与えられた冷却装置制御信号によりモータの回転数が変化し、温度勾配に応じた冷却風7を提供することができ、少ない応答時間で筐体内温度を制御し、きめ細かな温度監視ができる。」(公報2頁左下欄3?18行)


(ウ)引用例3
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2008-250443号(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。)

a.「【0029】
(2)温度制御装置の構成
次に、本実施形態に係る温度制御装置1の構成について、図1を用いて説明する。ここでは、温度制御装置1が、プリンタエンジン制御部2におけるCPU2aの温度制御を行う場合を例にとる。
【0030】
温度制御装置1は、図1に示すように、温度制御の対象となるプリンタエンジン制御部2のCPU2a(第1制御部に相当)、サーミスタ3(温度検知部に相当)、ファン4(冷却部に相当)、記憶部5及びメイン制御部6(第2制御部に相当)を備える。
【0031】
サーミスタ3は、プリンタエンジン制御部2の、特にCPU2aの温度を検知するためのものであって、CPU2a近傍に設けられている。
【0032】
ファン4は、プリンタエンジン制御部2のCPU2aに空気を送ることでCPU2aを冷却させるためのものであって、プリンタエンジン制御部2のCPU2aを冷却可能な位置に設けられている。尚、ファン4は、図示しないファンモータにより回転駆動される。
【0033】
記憶部5は、所定の温度変化率や閾値を記憶している。所定の温度変化率及び閾値は、メイン制御部6が温度制御動作を行う時に基準として用いられる。
【0034】
メイン制御部6は、既に説明したように、通信部111等の接続された各制御部の動作を制御すると共に、プリンタエンジン制御部2のCPU2aの温度制御を行う。このような動作を行うため、メイン制御部6は、モード制御部6a、時間計測部6b、演算部6c及びファン制御部6dとして機能する。
【0035】
モード制御部6aは、画像形成装置101の状態を示す信号をファン制御部6dに出力する。例えば、画像形成装置101がスリープモード等の低発熱状態であってCPU2aが比較的処理を行っていない場合、CPU2aの発熱量は例えば印刷処理を行っている時等の通常時よりも低いため、モード制御部6aは、CPU2aが低発熱状態である旨を示す信号をファン制御部6dに出力する。
【0036】
時間計測部6bは、サーミスタ3により検知されたCPU2aの温度が閾値以下となった時、時間の計測を開始する。尚、時間計測部6bにより計測された時間は、演算部6cにより取り込まれる。
【0037】
演算部6cは、時間計測部6bの計測している時間が所定時間を経過した時、サーミスタ3により検知されたCPU2aの温度を取り込み、単位時間あたりのCPU2aの温度変化率を演算する。具体的には、演算部6cは、所定時間経過時のCPU2aの温度から閾値を減算することで、所定時間の間にCPU2aの温度がどれだけ変化したかを算出する。特に、CPU2aが低発熱状態である場合には、CPU2aの発熱量が高くないため、この状態でファン4がオンしていると、CPU2aの温度は除々に低下していく。このような場合、演算部6cは、単位時間あたりのCPU2aの温度の下がり度合いを算出することになる。
【0038】
ファン制御部6dは、ファンモータの駆動を制御することで、ファン4のオン及びオフを制御する。特に、本実施形態に係るファン制御部6dは、演算部6cにより演算された単位時間あたりのCPU2aの温度変化率に基づいて、ファンのオン及びオフを制御する。」 (5頁17行?6頁14行)

上記引用例2の記載及び図面、上記引用例3の記載、及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、上記引用例2または引用例3には以下の事項(以下、「周知の技術」という。)が記載されている。

「装置の熱の状態の変化を、所定の期間における所定の大きさの温度変化によって判定し、冷却制御をおこなうこと。」


ウ.対比・判断

補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「コンピュータ装置」は、「CPU」を有するものであり、補正後の発明の「チップを含むポータブルコンピューティングデバイス」と、「チップを含むコンピューティングデバイス」の点で共通する。

b.引用発明の「コンピュータ装置」は、「装置内部の温度(システム内部の温度)が、t1?t4(t1<t2<t3<t4)の4つの設定温度を越えたか否かを監視し、CPUのクロック周波数f1?f3(f1>f2>f3)や機能ブロックB1?B3の電源を段階的に変更・制限することによって、動作保証温度内での各種アプリケーションの実行の継続を図る装置」であり、引用発明の「温度監視処理」は、「現在の装置内の温度が温度t1を越えた場合には、前記CPUは、前記セレクタにクロック周波数をf2とする旨の指示信号を出力するとともに、前記電源スイッチ16を開放させて、前記機能ブロックB3への電源供給をカットし、さらに、現在の装置内の温度が温度t2を越えた場合には、前記CPUは、前記セレクタにクロック周波数をf3とする旨の指示信号を出力するとともに、前記電源スイッチ15を開放させて、前記機能ブロックB2への電源供給をカットし、またさらに、現在の装置内の温度が温度t3を越えた場合には、前記CPUは、前記電源スイッチ14を開放させて、前記機能ブロックB1の電源供給をカットした後、現在実行中の各種アプリケーションプログラムを全て終了して、コンピュータ装置を停止させる処理を実行し、装置内部の温度が下降した場合には、前記CPUは、電源供給をカットした前記機能ブロックへの電源供給を再開させるべく、該当する前記電源スイッチを閉じて、該当する前記機能ブロックを復旧させるとともに、前記セレクタにクロック周波数を上げる旨の指示信号を出力して、段階的にクロック周波数を上昇させる」ものである。
してみれば、引用発明の「温度監視処理」においては、コンピュータ装置の内部温度が、温度t2未満で、温度t1以上である場合には、クロック周波数をf2とし、機能ブロックB3の電源をカットし、コンピュータ装置の内部温度が、温度t3未満で、温度t2以上である場合には、クロック周波数をf3とし、機能ブロックB2の電源をカットする、ように定義されていると認められ、さらに、該定義するための段階(ステップ)を有しているものと認められる。
ここで、引用発明の「クロック周波数をf2とする」、「機能ブロックB3への電源供給をカット」、「クロック周波数をf3とする」、「機能ブロックB2への電源供給をカット」、及び、「機能ブロックB1の電源供給をカット」は、実行することによって、「コンピュータ装置1およびCPU2の温度上昇を抑制する」ものであるから(引用例の段落【0005】、【0043】参照。)、「コンピュータ装置」の熱を軽減することは明らかであり、熱を軽減するための技法と認められる。
また、「温度t2未満で、温度t1以上」、及び、「温度t3未満で、温度t2以上」は熱の状態と関連する温度範囲であり、さらに、引用発明においては、各温度範囲に応じて、複数の熱を軽減するための技法が関連付けられていると認められる。
そして、各温度範囲に応じた複数の熱を軽減するための技法をまとめて、「第1の熱ポリシー」、及び「第2の熱ポリシー」と呼ぶこと、各「熱ポリシー」に含まれる熱を軽減するための技法を「第1の熱軽減技法」及び「第2の熱軽減技法」と称すること、さらに、 各温度範囲と各温度範囲に応じた複数の熱を軽減するための技法に関連付けられた熱の状態を、「第1の所定の熱状態」、及び「第2の所定の熱状態」と呼ぶことも任意である。
したがって、引用発明の「温度監視処理の方法」は、複数の「熱ポリシー」を管理するものであり、補正後の発明の「チップを含むポータブルコンピューティングデバイスの1つまたは複数の熱ポリシーを管理するための方法」に相当し、補正後の発明の「少なくとも第1の所定の熱状態と第2の所定の熱状態を定義するステップであって、各々の所定の熱状態が、夫々の温度範囲および夫々の固有の熱ポリシーと関連付けられており、前記第1の所定の熱状態と関連する第1の温度範囲の最高の温度が、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の温度範囲の最低の温度以下であり、熱ポリシーが、1つまたは複数の熱軽減技法を含み、」という点で差異はない。

c.引用発明において、「周波数」を「f1」から「f2」、及び「f2」から「f3」へと下げると、また、「機能ブロックB1?B3」への「電源供給」を順次「カット」すると、「コンピュータ装置」の機能のレベルが順次減じることは明らかである。
そして、引用発明においては「温度t2未満で、温度t1以上」では、「クロック周波数をf2とする」、「機能ブロックB3への電源供給をカット」し、さらに、「温度t3未満で、温度t2以上」では、「クロック周波数をf3とする」、「機能ブロックB2への電源供給をカット」するものであるから、「温度t2未満で、温度t1以上」の熱状態より、「温度t3未満で、温度t2以上」の熱の状態の方が機能のレベルが減らされることも明らかである。
また、「コンピュータ装置」の通常の機能のレベルを「初期レベル」と称し、「温度t2未満で、温度t1以上」の熱状態で、「クロック周波数をf2とする」、「機能ブロックB3への電源供給をカット」した後の機能のレベルを「第1のレベル」、さらに、「温度t3未満で、温度t2以上」の熱の状態で、「クロック周波数をf3とする」、「機能ブロックB2への電源供給をカット」した後の機能のレベルを「第2のレベル」と称することは任意である。
したがって、引用発明の「t1を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf2とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf2とする(ステップS3)」、「前記機能ブロックB3の電源をカットすべく、前記電源スイッチ16を開放させる(ステップS4)」、「前記ステップS6でt2を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf3とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf3とし(ステップS10)」、「前記機能ブロックB2の電源をカットすべく、前記電源スイッチ15を開放させる(ステップS11)」は、補正後の発明の「熱軽減技法の1つまたは複数による熱ポリシーの適用が、前記コンピューティングデバイスの利用可能な機能を減らし、前記第1の所定の熱状態と関連する第1の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、初期レベルに対して減らされた第1のレベルへと減らし、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の熱ポリシーが、前記ポータブルコンピューティングデバイスの機能を、前記第1のレベルに対して減らされた第2のレベルへと減らす、ステップ」に相当する。

d.引用発明においては「センサーによって前記コンピュータ装置の内部温度を検出し、前記監視部へ出力する」ものであるから、引用発明の「前記監視部は、前記コンピュータ装置の内部温度が温度t1を越えているかどうか判定する(ステップS2)」、及び、「前前記監視部は、前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2以上になったか判定する(ステップS6)」は、補正後の発明の「1つまたは複数の熱センサから温度測定値を受け取ることによって、前記コンピューティングデバイスの温度を監視するステップ」に相当する。

e.引用発明の「前記監視部は、前記コンピュータ装置の内部温度が温度t1を越えているかどうか判定する(ステップS2)」、「前記監視部は、記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2以上になったか判定する(ステップS6)」、「該ステップS6で前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t2未満である場合に、温度t1以上であるか判定する(ステップS7)」、「前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t3以上になったか判定する(ステップS13)」、「該ステップS13で、前記コンピュータ装置の内部温度が、温度t3未満である場合に、温度t2以上であるか判定する(ステップS14)」は、温度の測定の結果が、「コンピュータ装置」の熱の状態のどの状態に到達しているかを判定するステップと認められる。
そして、引用発明においては、前回の温度の測定の結果による熱の状態と、今回の温度の測定に結果による熱の状態が異なっていた際に、あらたな熱の状態に到達したと判定でき、その際には、今回の温度の測定の結果による熱の状態と、前回の温度の測定の結果による熱の状態、比較するものであり、今回の温度の測定の結果と、前回の温度の測定の結果を比較しているともいえる。
さらに、前回の温度の測定の結果による熱の状態と、今回の温度の測定の結果による熱の状態が異なっていることは、今回の温度の測定の結果が、前回の温度の測定に結果に対して、所定の温度変化(前回の温度の測定の結果による熱の状態の温度範囲を超える温度変化)があったと認識できるものである。
したがって、引用発明の「ステップS2」、「ステップS6」、「ステップS7」、「ステップS13」、「ステップS2」「ステップS14」と、補正後の発明の「最近受け取られた温度測定結果を、前に受け取られた温度測定結果ならびに前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態と関連する前記夫々の温度範囲と比較することによって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達したかどうかを判定するステップであって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに到達することが、前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の期間における所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される、ステップと」は、「最近受け取られた温度測定結果を、前に受け取られた温度測定結果ならびに前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態と関連する前記夫々の温度範囲と比較することによって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに前記コンピューティングデバイスが到達したかどうかを判定するステップであって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに到達することが、前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される、ステップ」の点で共通する。

f.引用発明の「t1を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf2とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf2とする(ステップS3)、前記機能ブロックB3の電源をカットすべく、前記電源スイッチ16を開放させる(ステップS4)、」は、熱の状態が新たに状態に到達することで、熱の状態に対応する熱を軽減するための技法である「クロック周波数をf2とする」こと、「機能ブロックB3の電源をカット」し、機能レベルを減らすことであるから、引用発明の「ステップS3」、「ステップS4」は、補正後の発明の「前記第1の所定の熱状態に前記ポータブルコンピューティングデバイスが到達した場合に、前記第1の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第1の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第1のレベルに減らすステップ」に相当する。

g.同様に、引用発明の「前記ステップS6でt2を超えた場合に、前記監視部は、その旨の信号を前記CPUへ出力し、前記CPUは、クロック周波数をf3とする旨の指示信号を前記セレクタへ出力して、クロック周波数をf3とし(ステップS10)、前記機能ブロックB2の電源をカットすべく、前記電源スイッチ15を開放させる(ステップS11)、」は、熱の状態が新たに状態に到達することで、熱の状態に対応する熱を軽減するための技法を行い、機能レベルを減らすことであるから、引用発明の「ステップS10」、「ステップS11」は、補正後の発明の「前記ポータブルコンピューティングデバイスが前記第2の所定の熱状態に達した場合には、前記第2の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第2の熱軽減技法を開始して、前記ポータブルコンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第2のレベルに減らすステップ」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「チップを含むコンピューティングデバイスの1つまたは複数の熱ポリシーを管理するための方法であって、
少なくとも第1の所定の熱状態と第2の所定の熱状態を定義するステップであって、各々の所定の熱状態が、夫々の温度範囲および夫々の固有の熱ポリシーと関連付けられており、前記第1の所定の熱状態と関連する第1の温度範囲の最高の温度が、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の温度範囲の最低の温度以下であり、
熱ポリシーが、1つまたは複数の熱軽減技法を含み、
熱軽減技法の1つまたは複数による熱ポリシーの適用が、前記コンピューティングデバイスの利用可能な機能を減らし、
前記第1の所定の熱状態と関連する第1の熱ポリシーが、前記コンピューティングデバイスの機能を、初期レベルに対して減らされた第1のレベルへと減らし、前記第2の所定の熱状態と関連する第2の熱ポリシーが、前記コンピューティングデバイスの機能を、前記第1のレベルに対して減らされた第2のレベルへと減らす、ステップと、
1つまたは複数の熱センサから温度測定値を受け取ることによって、前記コンピューティングデバイスの温度を監視するステップと、
最近受け取られた温度測定結果を、前に受け取られた温度測定結果ならびに前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態と関連する前記夫々の温度範囲と比較することによって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに前記コンピューティングデバイスが到達したかどうかを判定するステップであって、前記第1の所定の熱状態および前記第2の所定の熱状態のうちの1つに到達することが、前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される、ステップと、
前記第1の所定の熱状態に前記コンピューティングデバイスが到達した場合に、前記第1の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第1の熱軽減技法を開始して、前記コンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第1のレベルに減らすステップと、
前記コンピューティングデバイスが前記第2の所定の熱状態に達した場合には、前記第2の所定の熱状態に関連する前記夫々の熱ポリシーに含まれる1つまたは複数の第2の熱軽減技法を開始して、前記コンピューティングデバイスの前記温度を減らし、機能を前記第2のレベルに減らすステップと
を含む、方法。」


(相違点1)補正後の発明では、「ポータブルコンピューティングデバイス」であるのに対して、引用発明では、「コンピュータ装置」は「ポータブル」とは特定されていない点。

(相違点2)一致点でいう「判定するステップ」が、補正後の発明では、「前記最近受け取られた温度測定結果が、前記前に受け取られた温度測定結果に対する所定の期間における所定の大きさの温度変化を示すことを認識することによって判定される」ものであるのに対して、補正後の発明では、「所定の大きさの温度変化」を認識しているが、所定の期間におけるものではない点。


以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1)について
引用例の段落【0004】には、従来技術として「携帯コンピュータ」に関しての「発熱を抑える手法」が記載されており、引用例の「コンピュータ装置」が、携帯形(ポータブル)のものを排除していないことは明らかであり、また、引用発明のものが携帯形に適用できないものでもないことも明らかである。
したがって、引用発明の「コンピュータ装置」が「ポータブル」なものに特定することは、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2)について
装置の熱の状態の変化を、所定の期間における所定の大きさの温度変化によって判定し、冷却制御を行うことは、上記引用例2、引用例3にも記載されるように周知の技術である。
また、熱の状態の変化の判定基準としてどのようなものを選択するかは、当業者が設計時に適宜選択なし得たものであり、そして、引用発明のものが、所定の期間における所定の大きさの温度変化によって熱の状態の到達を判定できないものでもない。
したがって、引用発明における、新たな熱の状態の到達を、所定の期間における所定の大きさの温度変化によって判定し行うことは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、そのようにすることは、引用発明において、相違点2に係る補正後の発明の構成を採用することにほかならない。

また、補正後の発明の効果も、引用発明、及び周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について

1.本願発明

平成27年3月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。


2.引用発明

引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明、周知技術」の項で「引用発明」として認定したとおりである。


3.対比・判断

そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-22 
結審通知日 2016-01-04 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2013-548561(P2013-548561)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 利延  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 桜井 茂行
山澤 宏
発明の名称 ポータブルコンピューティングデバイスの熱ポリシーを管理するための方法およびシステム  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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