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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1315236
審判番号 不服2014-9970  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-28 
確定日 2016-06-01 
事件の表示 特願2011-509602「ワイヤレス電力伝達の強調のためのリピータ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月19日国際公開、WO2009/140222、平成23年 9月 1日国内公表、特表2011-524729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年5月13日米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月5日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年10月16日)、これに対し、平成25年2月15日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成25年4月1日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年4月9日)、これに対し、平成25年9月9日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年1月21日付で平成25年9月9日付の手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ(発送日:平成26年1月28日)、これに対し、平成26年5月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年3月12日付で審尋が通知され(発送日:平成27年3月17日)、これに対し、平成27年7月17日付で回答書が提出されたものである。


2.平成26年5月28日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年5月28日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1のカバレッジエリア内で第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
ループアンテナと容量性素子とを備えるリピータアンテナと
を備え、前記リピータアンテナは、前記第1のカバレッジエリア内に位置する場合、前記第1の電磁界内で電力を受信し、前記第1のカバレッジエリアとは異なる第2のカバレッジエリア内で第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え、前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設され、前記リピータアンテナの略共振周波数で、前記送信アンテナが前記第1の電磁界を発生させ、前記リピタアンテナが前記第2の電磁界を発生させる、装置。
【請求項2】
前記リピータアンテナが、前記ループアンテナと前記容量性素子とに動作可能に結合された増幅器をさらに備え、前記増幅器は、前記リピータアンテナの共振周波数で前記第1の電磁界を増幅するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
増幅器からの信号に応答して、第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
前記第1の領域内に位置する場合、第2の領域内で前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるように構成されたリピータアンテナと、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え、前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
を備え、前記送信アンテナと前記リピータアンテナは、受信アンテナにワイヤレスで電力を伝達するように構成され、前記受信アンテナは、前記受信アンテナが前記第2の領域内に位置する場合、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を受信するように構成される、ワイヤレス電力伝達システム。
【請求項4】
前記リピータアンテナがさらに前記送信アンテナの周囲内に位置する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
離調回路が、前記受信アンテナに結合され、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記離調回路は、前記受信アンテナに結合された反応性素子の値を変更することによって、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記離調回路は、前記受信アンテナに結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチをさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
プロセッサが、前記スイッチと前記受信アンテナとに動作可能に結合され、活動化の時間領域シーケンシングに従って前記受信アンテナの共振を制御するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記時間領域シーケンシングは、前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させることと、
前記第1の領域内に位置する第2の領域内で、前記共振周波数において第2の電磁界を発生させることと、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え、前記第2の電磁界を発生させるリピータアンテナがさらに、前記第1の電磁界を発生させる送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
前記第2の領域内に位置する受信アンテナに、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を送信することと
を備えるワイヤレス充電方法。
【請求項11】
前記送信アンテナの周囲内に前記リピータアンテナを配設することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記受信アンテナの共振周波数を選択的に変更することによって前記受信アンテナを離調することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記受信アンテナを選択的に離調することをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記受信アンテナの共振を抑止するために、前記受信アンテナに動作可能に結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチを選択的に動作させることによって、前記受信アンテナを離調することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記スイッチを選択的に動作させることをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
増幅器からの信号に応答して、第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
複数のリピータアンテナと、ここで、前記複数のうちの各リピータアンテナは、前記第1の領域内に位置し、対応する領域内で前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え、前記複数のうちの各リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対し略同軸位置か、前記送信アンテナに対し略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
を備え、前記複数のリピータアンテナのうちの少なくとも1つは、複数の受信アンテナにワイヤレスで電力を伝達するように構成され、各受信アンテナは、前記複数のリピータアンテナのうちの少なくとも1つが発生させた電磁界に蓄積された電力を受信するように構成される、ワイヤレス電力伝達システム。
【請求項19】
各受信アンテナは、前記複数のうちの1つのリピータアンテナに対応する前記領域のうちの1つの中に配設される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数のリピータアンテナがさらに前記送信アンテナの周囲内に配設される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
各受信アンテナは、離調回路に結合され、前記離調回路は、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
各受信アンテナと各離調回路は、プロセッサに結合され、前記プロセッサは、活動化の時間領域シーケンシングに従って前記受信アンテナの離調を制御するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記時間領域シーケンシングが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるための手段と、
前記第1の領域内に位置する第2の領域内で、前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるための手段と、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え、前記第2の電磁界を発生させるための手段がさらに、前記第1の電磁界を発生させるための手段に対して略同軸位置か、前記第1の電磁界を発生させるための手段に対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
前記第2の領域内に位置する受信アンテナに、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を送信するための手段と
を備える、ワイヤレスで電力を伝達するための装置。
【請求項25】
前記第1の電磁界を発生させるための手段の周囲内に前記第2の電磁界を発生させるための手段を配設するための手段をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記受信アンテナの共振周波数を選択的に変更することによって前記受信アンテナを離調するための手段をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記受信アンテナを選択的に離調するための手段をさらに備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記受信アンテナの共振を抑止するために、前記受信アンテナに動作可能に結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチを選択的に動作させることによって、前記受信アンテナを離調するための手段をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項30】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記スイッチを選択的に動作させるための手段をさらに備える、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記第1の電磁界を発生させるための手段が送信アンテナを備え、前記第2の電磁界を発生させるための手段がリピータアンテナを備え、前記電力を送信するための手段が前記送信アンテナと前記リピータアンテナとのうちの少なくとも1つを備える、請求項24に記載の装置。
【請求項33】
前記第1のカバレッジエリアと前記第2のカバレッジエリアが重複する、請求項1に記載の装置。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
第1のカバレッジエリア内で第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
ループアンテナと容量性素子とを備えるリピータアンテナと
を備え、前記リピータアンテナは、前記第1のカバレッジエリア内に位置する場合、前記第1の電磁界内で電力を受信し、前記第1のカバレッジエリアとは異なる第2のカバレッジエリア内で第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設され、前記リピータアンテナの略共振周波数で、前記送信アンテナが前記第1の電磁界を発生させ、前記リピータアンテナが前記第2の電磁界を発生させる、装置。
【請求項2】
前記リピータアンテナが、前記ループアンテナと前記容量性素子とに動作可能に結合された増幅器をさらに備え、前記増幅器は、前記リピータアンテナの共振周波数で前記第1の電磁界を増幅するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
増幅器からの信号に応答して、第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
ループアンテナと容量性素子を備えるリピータアンテナであって、前記第1の領域内に位置する場合、第2の領域内で前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるように構成されたリピータアンテナと、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
を備え、前記送信アンテナと前記リピータアンテナは、受信アンテナにワイヤレスで電力を伝達するように構成され、前記受信アンテナは、前記受信アンテナが前記第2の領域内に位置する場合、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を受信するように構成される、ワイヤレス電力伝達システム。
【請求項4】
離調回路が、前記受信アンテナに結合され、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記離調回路は、前記受信アンテナに結合された反応性素子の値を変更することによって、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記離調回路は、前記受信アンテナに結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチをさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
プロセッサが、前記スイッチと前記受信アンテナとに動作可能に結合され、活動化の時間領域シーケンシングに従って前記受信アンテナの共振を制御するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記時間領域シーケンシングは、前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
送信アンテナを介して第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させることと、
リピータアンテナを介して前記第1の領域内に位置する第2の領域内で、前記共振周波数において第2の電磁界を発生させることと、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、ループアンテナおよび容量性素子を備える前記リピータアンテナが、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
前記第2の領域内に位置する受信アンテナに、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を送信することと
を備えるワイヤレス充電方法。
【請求項10】
前記受信アンテナの共振周波数を選択的に変更することによって前記受信アンテナを離調することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記受信アンテナを選択的に離調することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記受信アンテナの共振を抑止するために、前記受信アンテナに動作可能に結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチを選択的に動作させることによって、前記受信アンテナを離調することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記スイッチを選択的に動作させることをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
増幅器からの信号に応答して、第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
複数のリピータアンテナと、ここで、ループアンテナと容量性素子を備える前記複数のうちの各リピータアンテナは、前記第1の領域内に位置し、対応する領域内で前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、前記複数のうちの各リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対し略同軸位置か、前記送信アンテナに対し略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
を備え、前記複数のリピータアンテナのうちの少なくとも1つは、複数の受信アンテナにワイヤレスで電力を伝達するように構成され、各受信アンテナは、前記複数のリピータアンテナのうちの少なくとも1つが発生させた電磁界に蓄積された電力を受信するように構成される、ワイヤレス電力伝達システム。
【請求項17】
各受信アンテナは、前記複数のうちの1つのリピータアンテナに対応する前記領域のうちの1つの中に配設される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
各受信アンテナは、離調回路に結合され、前記離調回路は、前記受信アンテナの共振を抑止するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
各受信アンテナと各離調回路は、プロセッサに結合され、前記プロセッサは、活動化の時間領域シーケンシングに従って前記受信アンテナの離調を制御するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記時間領域シーケンシングが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
第1の領域内で共振周波数において第1の電磁界を発生させるための手段と、
前記第1の領域内に位置する第2の領域内で、前記共振周波数において第2の電磁界を発生させるための手段と、ここで、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、ループアンテナと容量性素子を備える前記第2の電磁界を発生させるための手段がさらに、前記第1の電磁界を発生させるための手段に対して略同軸位置か、前記第1の電磁界を発生させるための手段に対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される、
前記第2の領域内に位置する受信アンテナに、前記第1の電磁界と前記第2の電磁界とのうちの少なくとも1つに蓄積された電力を送信するための手段と
を備える、ワイヤレスで電力を伝達するための装置。
【請求項22】
前記受信アンテナの共振周波数を選択的に変更することによって前記受信アンテナを離調するための手段をさらに備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記受信アンテナを選択的に離調するための手段をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記受信アンテナの共振を抑止するために、前記受信アンテナに動作可能に結合されたキャパシタの少なくとも一部分を電気的にショートさせるように構成されたスイッチを選択的に動作させることによって、前記受信アンテナを離調するための手段をさらに備える、請求項21に記載の装置。
【請求項26】
時間領域シーケンシングプロトコルに従って前記スイッチを選択的に動作させるための手段をさらに備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記時間領域シーケンシングプロトコルが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記第1の電磁界を発生させるための手段が送信アンテナを備え、前記第2の電磁界を発生させるための手段がリピータアンテナを備え、前記電力を送信するための手段が前記送信アンテナと前記リピータアンテナとのうちの少なくとも1つを備える、請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記第1のカバレッジエリアと前記第2のカバレッジエリアが重複する、請求項1に記載の装置。」

本件補正は、本件補正前の請求項4、11、20、25を削除し、本件補正前の請求項23を本件補正後の請求項20として本件補正後の請求項16の従属項としたもの(審判請求書3-2参照)であるから、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1に一応対応するものとして、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項の何れを目的とするものに該当するかについて検討する。

本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の「前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界の形状とは異なる形状の電磁界を備え」を、「前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え」と補正するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(2-1)第36条第4項第1号及び第6項第2号について
ア.当審の審尋
当審で平成27年3月12日付で通知した審尋の概要は以下のとおりである。
「(1)請求項1、3、9、16、21に、「前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え」との訳語がある。
「より強力」とは、そもそも電磁界のどの様な物理量を比較してより強力としているのか明細書を参照しても不明であり、又、具体的にどの位置における第1の電磁界と、どの位置における第2の電磁界とを比較して「より強力」としているのか明細書を参照しても不明である。
「再収束」とは、具体的にどの様な現象であって、どの様な物理量がどの様な値になれば再収束と評価されるのか明細書を参照しても不明であり、又、「再収束」があるのであるから、単なる「収束」が存在するものと考えられるが、この点明細書を参照しても不明であり、仮に、存在するとすれば、「収束」と「再収束」は何が異なるのか不明であり、又、上記訳語は、再収束に関し、「第2の電磁界は、第1の電磁界と比較すると、再収束された電磁界を備え」となるが、2つの電磁界を比較してより再収束されるとはどの様な物理現象を意味するのか明細書を参照しても不明である。
「再整形」とは、具体的にどの様な現象であって、どの様な物理量がどの様な値になれば再整形と評価されるのか明細書を参照しても不明であり、又、「再整形」があるのであるから、単なる「整形」が存在するものと考えられるが、この点明細書を参照しても不明であり、仮に、存在するとすれば、「整形」と「再整形」は何が異なるのか不明であり、又、上記訳語は、再整形に関し、「第2の電磁界は、第1の電磁界と比較すると、再整形された電磁界を備え」となるが、2つの電磁界を比較してより再整形されるとはどの様な物理現象を意味するのか明細書を参照しても不明である。
送信アンテナとリピータアンテナが、どのような形状でどの様な相対的位置関係にあれば「より強力で、再収束され、再整形された電磁界」が得られるのか明細書を参照しても不明である。

(2)図17A、18Aにおいて、具体的にどこの電磁界がリピータアンテナを設けない場合に比較して「より強力で、再収束され、再整形され」たものとなっているのか明細書を参照しても不明であり、又、図18Aにおいて、電磁界の強度はどのように分布しているのか明細書を参照しても不明である。
図17Aにおいて、送信アンテナとして720Aを用いずに、わざわざ受信アンテナより遠い位置にある送信アンテナ710Aとリピータアンテナ720Aを用いる物理的理由が明細書を参照しても不明である。
図17B、18Bにおいて、具体的にどこの電磁界がリピータアンテナを設けない場合に比較して「より強力で、再収束され、再整形され」たものとなっているのか明細書を参照しても不明である。」


イ.当審の判断
(ア)本件補正後の請求項1に、「前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え」とあるが、「より強力」とは、そもそも電磁界のどの様な物理量を比較してより強力としているのか明細書を参照しても不明であり、又、具体的にどの位置における第1の電磁界と、どの位置における第2の電磁界とを比較して「より強力」としているのか明細書を参照しても不明である。
更に、「再収束」とは、具体的にどの様な現象であって、どの様な物理量がどの様な値になれば再収束と評価されるのか明細書を参照しても不明であり、又、「再収束」があるのであるから、単なる「収束」が存在するものと考えられるが、この点明細書を参照しても不明であり、仮に、存在するとすれば、「収束」と「再収束」は何が異なるのか不明であり、又、上記記載は、再収束に関し、「第2の電磁界は、第1の電磁界と比較すると、再収束された電磁界を備え」となるが、2つの電磁界を比較してより再収束されるとはどの様な物理現象を意味するのか明細書を参照しても不明である。
更に、「再整形」とは、具体的にどの様な現象であって、どの様な物理量がどの様な値になれば再整形と評価されるのか明細書を参照しても不明であり、又、「再整形」があるのであるから、単なる「整形」が存在するものと考えられるが、この点明細書を参照しても不明であり、仮に、存在するとすれば、「整形」と「再整形」は何が異なるのか不明であり、又、上記記載は、再整形に関し、「第2の電磁界は、第1の電磁界と比較すると、再整形された電磁界を備え」となるが、2つの電磁界を比較してより再整形されるとはどの様な物理現象を意味するのか明細書を参照しても不明である。
更に、「より強力」と「再収束」と「再整形」の差異は何であるのか明細書を参照しても不明である。
更に、送信アンテナとリピータアンテナが、どのような形状でどの様な相対的位置関係にあれば「より強力で、再収束され、再整形された電磁界」が得られるのか明細書を参照しても不明である。
なお、請求項3、9、16、21も同様である。

(イ)図17A、18Aにおいて、具体的にどこの電磁界がリピータアンテナを設けない場合に比較して「より強力で、再収束され、再整形され」たものとなっているのか明細書を参照しても不明であり、又、図18Aにおいて、電磁界の強度はどのように分布しているのか明細書を参照しても不明である。
更に、図17B、18Bにおいて、具体的にどこの電磁界がリピータアンテナを設けない場合に比較して「より強力で、再収束され、再整形され」たものとなっているのか明細書を参照しても不明である。

なお、請求人は、平成27年7月17日付回答書で、特許請求の範囲の補正案を提示すると共に、当該補正案の請求項1の記載に基づいて審尋に対する回答を行っているが、そもそも審尋に対する手続補正を行うことは制度上できず、且つ、当審の審尋に対して、本件補正後の請求項1、3、9、16、21の「より強力で、再収束され、再整形された」との記載に対する不明点については実質的に回答していないから、平成27年7月17日付回答書の主張は採用できない。

したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件補正後の請求項1に記載されたものを実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、かつ、本件補正後の請求項1の記載は明確ではないから、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
なお、請求項3、9、16、21も同様である。


(2-2)第29条第2項について
ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2008-508842号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁波の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器において、
所定の太さを有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと、
前記巻かれた誘導コイルと結合して、磁束の大きさを増加させるための一定の大きさと形態を有する磁性体と、
前記誘導コイルと連結され、共振回路を構成する可変コンデンサーとで構成されることを特徴とする電磁波磁場増幅中継器。」(【請求項1】)

b「前記増幅中継器は、電磁波発生源送信コイル及び受信コイルと付着設置されるか、または電磁波発生源の送信コイルまたは受信コイルの一側に別に付着設置されることができ、電磁波発生源と受信コイルとの距離を考慮し、電磁波発生源の送信コイルと受信コイルとの間に増幅中継器が少なくとも1つ以上設置された電磁波磁場増幅中継器を用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無線電力変換装置。」(【請求項8】)

c「本発明は、電磁波発生源から一定の距離に電磁波の時変磁場を使用して鎖交磁束の増加に伴う誘導起電力を増加させるために、一定の巻線数を巻回したコイルにフェライトコアを挿入する構成において、前記誘導コイルと共振を誘導するための可変コンデンサーと結合して、電磁波の磁場を強化し、増幅させる増幅中継器を形成し、増幅中継器から一定の距離を置いて増幅中継器で増幅された磁場を使用して誘導電力を效率的に負荷に伝達するために、共振及びインピーダンスマッチング可変コンデンサーをコイルと結合し、ダイオードで整流し平滑することで、充電用バッテリーの電源、あるいは様々な負荷に対する電力供給のために使用することができる電磁波を用いた無線電力変換装置に関するものである。」(【0001】)

d「従来のファラデーの法則を利用して電磁波磁場の経時変化によって取得する誘導起電力は、誘導コイルの巻線数と鎖交磁束の経時的な変化率に比例して誘導起電力が発生するが、電磁波の発生源からの距離に応じて磁場の強さは急激に減少し、一定の距離以上では、誘導コイルに誘導起電力がほとんど誘導されなくなり、無線電力変換によるエネルギーを得ることができないという問題点があった。」(【0002】)

e「前記図11で、電磁気波発生源の送信コイルを介して出力される送信電力・・・略・・・前記図11のように、増幅中継器を送信部と密着させて上に付着設置した場合」(【0027】)

上記記載及び図面を参照すれば、電磁波発生源の送信コイルが発生させた第1の電磁界は第1の所定の距離内の電磁界である。
上記記載及び図面を参照すれば、電磁波磁場増幅中継器は、電磁波発生源から一定の距離に位置して、第1の電磁界内で誘導電力を受信し、第1の電磁界の発生場所とは異なる場所で第2の電磁界を発生させる構成である。
上記記載及び図面を参照すれば、電磁波磁場増幅中継器は、電磁波発生源が発生させた第1の電磁界を受信して共振回路で増幅するものであるから、第2の電磁界は、電磁波磁場増幅中継器が受信した第1の電磁界と比較すれば、より強力であって、広がった電磁界が再収束され、波形は再整形された電磁界を備えている。
上記記載及び図面を参照すれば、電磁波磁場増幅中継器の誘導コイルはさらに、電磁波発生源の送信コイルに対して略同軸位置か、電磁波発生源の送信コイルに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設されている。
上記記載及び図面を参照すれば、電磁波磁場増幅中継器は、電磁波磁場増幅中継器の略共振周波数で第2の電磁界を発生させ、電磁波発生源の送信コイルは、所定の周波数で第1の電磁界を発生させている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「第1の所定の距離内の第1の電磁界を発生させるように構成された電磁波発生源の送信コイルと、
誘導コイルと可変コンデンサーとを備える電磁波磁場増幅中継器と
を備え、前記電磁波磁場増幅中継器は、前記電磁波発生源から一定の距離に位置して、第1の電磁界内で誘導電力を受信し、前記第1の電磁界の発生場所とは異なる場所で第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記電磁波磁場増幅中継器が受信した前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、前記電磁波磁場増幅中継器の誘導コイルは、前記電磁波発生源の送信コイルに対して略同軸位置か、前記電磁波発生源の送信コイルに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設され、前記電磁波磁場増幅中継器の略共振周波数で、前記電磁波磁場増幅中継器は第2の電磁界を発生させ、前記電磁波発生源の送信コイルは、所定の周波数で第1の電磁界を発生させる、無線電力変換装置。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


イ.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「第1の所定の距離」、「電磁波発生源の送信コイル」、「誘導コイル」、「可変コンデンサー」、「電磁波磁場増幅中継器」、「無線電力変換装置」は、それぞれ本願補正発明の「第1のカバレッジエリア」、「送信アンテナ」、「ループアンテナ」、「容量性素子」、「リピータアンテナ」、「装置」に相当する。

引用発明の「前記電磁波発生源から一定の距離に位置して、第1の電磁界内で誘導電力を受信し」は、本願補正発明の「前記第1のカバレッジエリア内に位置する場合、前記第1の電磁界内で電力を受信し」に相当する。
引用発明の「前記第1の電磁界の発生場所とは異なる場所で第2の電磁界を発生させるように構成され」は、本願補正発明の「前記第1のカバレッジエリアとは異なる第2のカバレッジエリア内で第2の電磁界を発生させるように構成され」に相当する。
引用発明の「前記電磁波磁場増幅中継器が受信した前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え」は、本願補正発明の「前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え」に相当する。

引用発明の「前記電磁波磁場増幅中継器の略共振周波数で、前記電磁波磁場増幅中継器は第2の電磁界を発生させ、前記電磁波発生源の送信コイルは、所定の周波数で第1の電磁界を発生させる」と、本願補正発明の「前記リピータアンテナの略共振周波数で、前記送信アンテナが前記第1の電磁界を発生させ、前記リピータアンテナが前記第2の電磁界を発生させる」は、「前記リピータアンテナの略共振周波数で、前記リピータアンテナが前記第2の電磁界を発生させ、所定の周波数で前記送信アンテナが前記第1の電磁界を発生させ」との概念で一致する。

したがって、両者は、
「第1のカバレッジエリア内で第1の電磁界を発生させるように構成された送信アンテナと、
ループアンテナと容量性素子とを備えるリピータアンテナと
を備え、前記リピータアンテナは、前記第1のカバレッジエリア内に位置する場合、前記第1の電磁界内で電力を受信し、前記第1のカバレッジエリアとは異なる第2のカバレッジエリア内で第2の電磁界を発生させるように構成され、前記第2の電磁界は、前記第1の電磁界と比較すると、より強力で、再収束され、再整形された電磁界を備え、前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設され、前記リピータアンテナの略共振周波数で、前記リピータアンテナが前記第2の電磁界を発生させ、所定の周波数で前記送信アンテナが前記第1の電磁界を発生させる、装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
送信アンテナが発生させる第1の電磁界に関し、本願補正発明は、リピータアンテナの略共振周波数であるのに対し、引用発明は、所定の周波数である点。


ウ.判断
引用発明の送信アンテナは、第1の電磁界を所定周波数で発生させており、当該第1の電磁界をリピータアンテナ(電磁波磁場増幅中継器)で共振させて、電磁波の磁場を強化し増幅させている(上記c参照)。リピータアンテナ(電磁波磁場増幅中継器)は共振して第2の電磁界を発生させており、リピータアンテナ(電磁波磁場増幅中継器)が共振してより磁場を強化し増幅するためには、第1の電磁界と第2の電磁界の周波数が同じ方が好ましいから、引用発明において、送信アンテナが発生させる第1の電磁界をリピータアンテナの略共振周波数とすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし33に係る発明は、「2.[理由](1)」に記載した平成25年2月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし33に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)平成25年4月1日付の最後の拒絶の理由1、2
平成25年4月1日付で通知した最後の拒絶の理由1、2の概要は以下のとおりである。
「【理由1について】
(1)請求項4には、「前記リピータアンテナがさらに前記送信アンテナの周囲内に位置する」との記載がある。また、請求項4が引用する請求項3には、「前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される」との記載がある。
しかしながら、リピータアンテナが「送信アンテナに対して略共面位置」ではなく「送信アンテナに対して略同軸位置」に配設される場合に、「リピータアンテナが送信アンテナの周囲内に位置する」とは、具体的にどのような位置にリピータアンテナを設けることを意味するのかが不明確であり、発明を特定することができない。
また、発明の詳細な説明および図面を参照しても、リピータアンテナが「送信アンテナに対して略共面位置」ではなく「送信アンテナに対して略同軸位置」に配設され、かつ「リピータアンテナが送信アンテナの周囲内に位置する」との実施例は実質的に記載されていない(例えば、図17Bにおいては、リピータアンテナ(720B)は送信アンテナ(710B)に対して略同軸位置に配設されているが、リピータアンテナは明らかに送信アンテナの周囲内に位置していない)。したがって、請求項4に係る発明の技術的範囲が不明確である。
請求項11,20,25についても、同様の理由により、発明の技術的範囲が不明確である。

(2)請求項23には、「前記時間領域シーケンシングが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項16に記載のシステム」との記載がある。
しかしながら、請求項23が引用する請求項16は「方法」の発明であるから、請求項23に係る発明が物(システム)の発明なのか方法の発明なのかが不明確である。

よって、請求項4,11,20,23,25に係る発明は明確でない。

【理由2について】
請求項4には、「前記リピータアンテナがさらに前記送信アンテナの周囲内に位置する」との記載がある。また、請求項4が引用する請求項3には、「前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される」との記載がある。
しかしながら、発明の詳細な説明および図面には、リピータアンテナが「送信アンテナに対して略共面位置」ではなく「送信アンテナに対して略同軸位置」に配設され、かつ「リピータアンテナが送信アンテナの周囲内に位置する」ことが実質的に記載されていない(例えば、図17Bにおいては、リピータアンテナ(720B)は送信アンテナ(710B)に対して略同軸位置に配設されているが、リピータアンテナは明らかに送信アンテナの周囲内に位置していない)。
請求項11,20,25についても、同様の理由により、発明の詳細な説明および図面に実質的に記載されていない。

よって、請求項4,11,20,25に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」


(2)最後の拒絶の理由1、2についての判断
(2-1)請求項3には、「前記リピータアンテナはさらに、前記送信アンテナに対して略同軸位置か、前記送信アンテナに対して略共面位置か、のいずれか一方に配設される」とあるから、リピータアンテナは、略同軸位置に配設されるか、略共面位置に配設されるかのどちらかであり、略同軸位置であって略共面位置に配設されることはないこととなる。
請求項3にあるように、リピータアンテナが送信アンテナに対して略同軸位置に配設されながら、請求項4にあるように、リピータアンテナが送信アンテナの周囲内に位置する配設とは、具体的にどのような位置にリピータアンテナを設ければ、略共面位置に配設されずに略同軸位置に配設されることとなるのか不明であり、特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確であるものではなく、また、発明の詳細な説明中に、請求項4に記載された事項と対応する事項が記載も示唆もされておらず、特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
なお、請求項11、20、25も同様である。

(2-2)請求項23には、「前記時間領域シーケンシングが前記第1の電磁界のオンオフキーイングシグナリングプロトコルを備える、請求項16に記載のシステム。」とあるが、請求項23が引用する請求項16は「方法」の発明であるから、請求項23に係る発明が物(システム)の発明なのか方法の発明なのかが構成を特定できず不明であり、特許を受けようとする発明が明確であるものではない。

(3)むすび
したがって、平成25年2月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項4、11、20、25の記載は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、平成25年2月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項4、11、20、23、25の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。


4.最後の拒絶の理由3、4に対する当審の判断
上記のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないが、仮に、上記各要件を満たしているとして、更に、本願の発明の進歩性について検討する。

(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記した平成25年2月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由](2-2)」に記載したとおりである。


(3)対比・判断
本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由](2-2)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-24 
結審通知日 2016-01-05 
審決日 2016-01-19 
出願番号 特願2011-509602(P2011-509602)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
P 1 8・ 537- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 秀一  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 ワイヤレス電力伝達の強調のためのリピータ  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
代理人 井上 正  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 堀内 美保子  

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