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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B02C
管理番号 1315335
審判番号 無効2014-800032  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-02-28 
確定日 2016-02-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第4365885号発明「破袋機とその駆動方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4365885号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。また、総称して、「本件特許発明」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成16年8月24日に出願された特願2004-243744号(以下、「原出願」という。)の一部を平成21年2月13日に新たな特許出願としたものであって、平成21年8月28日に特許権の設定登録がされたものである。
その後、平成26年2月27日付け(同年2月28日差出)で請求人より本件特許発明1、2及び4について無効審判が請求されるとともに同日付けで証人尋問申出書が提出され、同年6月9日付けで被請求人より審判事件答弁書が提出され、同日付けで請求人より審判請求書の請求の理由について補正する手続補正書が提出され、同年7月11日付けで請求人より証人尋問申出書について補正する手続補正書が提出され、同年8月29日付けで請求人より審判事件弁駁書が提出され、同日付けで請求人及び被請求人よりそれぞれ口頭審理陳述要領書が提出され、同年9月16日付けで請求人より手続補正書が提出され、同年9月19日に特許庁において口頭審理及び証拠調べが行われ、同年10月3日付けで請求人より上申書が提出され、同年10月31日付けで被請求人より上申書が提出され、同年11月14日付けで請求人より上申書が提出されたものである。

第2 本件特許発明1ないし7
本件特許発明1ないし7は、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
矩形枠体からなる破袋室と、破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と、破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物と、回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し、可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する破袋機。
【請求項2】
固定側刃物の板状刃物は、鋭角な刃先部を有する請求項1に記載の破袋機。
【請求項3】
刃物がそれぞれ垂直方向に所定間隔で複数段配置される請求項1に記載の破袋機。
【請求項4】
固定側刃物は、その全部又は一部を当該刃物を保持する壁面ごとあるいは刃物の保持部ごと破袋室外へ待避可能にした請求項1に記載の破袋機。
【請求項5】
請求項1に記載の破袋機において、駆動制御手段は、回転駆動源に負荷センサを有し、過大負荷時に回転体の駆動を停止させ、通常操業時、可動側刃物を水平基準点から一方向に所要角度回転した後、反対方向に前記所要角度回転させる正・逆転パターンを1単位とし、正・逆転の回転角度を該単位ごとに変化させた複数の正・逆転パターンを繰り返す駆動を行い袋体を破袋する破袋機の駆動方法。
【請求項6】
駆動制御手段への指示又は負荷センサが感知する負荷量に応じて、回転体を回転駆動する速度(可動側刃物の周速度)を変化させて、袋体の破袋処理量を増減させる請求項5に記載の破袋機の駆動方法。
【請求項7】
駆動制御手段への指示又は負荷センサが感知する負荷量に応じて、正・逆転パターンの回転角度を予め設定された角度に変更し、回転角度が異なる正・逆転パターンの組合せを繰り返す駆動を行う請求項5に記載の破袋機の駆動方法。」

第3 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 請求人の主張の全体概要
請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし23号証を証拠方法として提出した。
また、平成26年6月9日付け手続補正書とともに下記甲第24号証を証拠方法として提出した。
さらに、平成26年8月29日付けで審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書を提出した。
さらにまた、平成26年9月16日付けで手続補正書とともに下記甲第25号証を証拠方法として提出した。
さらにまた、平成26年10月3日付けで上申書とともに下記甲第26号証の1及び甲第26号証の2を証拠方法として提出した。
さらにまた、平成26年11月14日付けで上申書を提出した。

そして、「(1)特許第4365885号の特許請求の範囲請求項1、2及び4に記載された発明についての特許を無効とする。(2)審判費用は被請求人の負担とする。」(審判請求書第2ページ第2ないし5行を参照。)との審決を求め、「特許第4365885号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲請求項1、2及び4に記載された発明(以下、「本件特許発明」という。なお、請求項ごとに当該発明を指称するときは、夫々「本件請求項1の発明」、「本件請求項2の発明」、「本件請求項4の発明」という。)は、出願前公知の破袋機(甲3)及び出願前公知の文献(甲9,甲10,甲11,甲12,甲13,甲14若しくは甲15)から容易に考えられるものであり、特許法第29条第2項に該当し、特許法第123条第1項第2号により無効とされるべきである。」(審判請求書第4ページ第7ないし14行を参照。)と主張している。
上記主張は、審判請求書第4ページ第15行ないし第17ページ第3行の記載によると、「出願前公知の破袋機(甲3)から容易に考えられるものであり、特許法第29条第2項に該当し、特許法第123条第1項第2号により無効とされるべきである」という無効理由(以下、「無効理由1」という。)と、「出願前公知の文献(甲9,甲10,甲11,甲12,甲13,甲14若しくは甲15)から容易に考えられるものであり、特許法第29条第2項に該当し、特許法第123条第1項第2号により無効とされるべきである」という無効理由(以下、「無効理由2」という。)の2つに分けることができる。

2 証拠方法
甲第1号証 特許第4365885号の原簿(本件特許の特許原簿)
甲第2号証 特許第4365885号公報(本件特許発明の特許公報)
甲第3号証 株式会社プリテックヘ販売した破袋機の報告書(作成者:株式会社大原鉄工所)
甲第4号証 陳述書(株式会社プリテック エコタウンセンター 常務取締役 エコタウンセンター長 海野優)
甲第5号証 陳述書(福井環境事業株式会社 二日市リサイクルセンター 近藤克彦)
甲第6号証 陳述書(株式会社大原鉄工所 営業部環境営業課課長 堀井厚央二)
甲第7号証 特許第2987701号公報
甲第8号証 2軸回転型破袋機のパンフレット
甲第9号証 特開平7-1388号公報
甲第10号証 実開平6-45640号公報
甲第11号証 特開2003-1134号公報
甲第12号証 特開2003-260378号公報
甲第13号証 特開平9-309519号公報
甲第14号証 実開平7-7742号公報
甲第15号証 特開平9-253614号公報
甲第16号証 準備書面(第1回)
甲第17号証 準備書面(第2回)
甲第18号証 準備書面(第4回)
甲第19号証 第1準備書面
甲第20号証 第3準備書面
甲第21号証 第4準備書面
甲第22号証 第10準備書面
甲第23号証 準備書面(第11回)
甲第24号証 第7準備書面
甲第25号証 写真撮影報告書
甲第26号証の1 ビデオテープの動画をコピーしたDVD
甲第26号証の2 ビデオテープの外観を撮影した写真
証人 ・・・(略)・・・株式会社大原鉄工所 営業部 環境営業II課 課長 堀井 厚央二

3 無効理由1及び2に係る主張の概要
3-1 審判請求書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(審判請求書第4ページ第15行ないし第17ページ第3行を参照。)。なお、以下、請求人の主張を摘記する際に、1、2等のアラビア数字を○で囲んだ文字を、○1、○2のように記載し、また、スペース、空白行は適宜詰めて記載する。

「(4)本件特許を無効にすべき理由
ア 本件特許発明(甲2)
(ア)本件特許発明は、別紙本件特許公報中の特許請求の範囲に記載された次のとおりである。
[請求項1] 矩形枠体からなる破袋室と、破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と、破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物と、回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し、可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する破袋機。
[請求項2] 固定側刃物の板状刃物は、鋭角な刃先部を有する請求項1に記載の破袋機。
[請求項4] 固定側刃物は、その全部又は一部を当該刃物を保持する壁面ごとあるいは刃物の保持部ごと破袋室外へ待避可能にした請求項1に記載の破袋機。
(イ)本件請求項1の発明、本件請求項2の発明及び本件請求項4の発明を夫々構成要件ごとに分説すれば次のとおりとなる。
〔本件請求項1の発明〕
A 矩形枠体からなる破袋室と、
B 破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と、
C 破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物と、
D 回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し、
E 可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、
F 所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する
G 破袋機。
〔本件請求項2の発明〕
H 固定側刃物の板状刃物は、鋭角な刃先部を有する請求項1に記載の破袋機。
〔本件請求項4の発明〕
I 固定側刃物は、その全部又は一部を当該刃物を保持する壁面ごとあるいは刃物の保持部ごと破袋室外へ待避可能にした請求項1に記載の破袋機。
(ウ)本件特許発明の効果は別紙本件特許公報の段落番号[0016]乃至[0018]に記載の次のとおりである。
「この発明によると、破袋室の中央に1つの刃物回転体とその回転軸方向の両側に設けた固定刃物群とから構成され、機構が簡素化され、かつ前記回転体を正・逆転パターンの繰り返し駆動とすることにより、破袋室へ投下される袋体を確実に捕捉し、可動側刃物の両側に形成した各破袋室空間で交互にかつ連続して効率よく破袋することができる。
また、この発明によると、破袋室上方のホッパー内に積み上げられた袋体は回転体が正・逆転パターンの繰り返し駆動する際に可動側刃物により押し上げられるため、袋体のブリッジ現象の発生を防止することができ、1つの回転体を正・逆転パターンの繰り返し駆動させる構成によって、破袋後の袋破片が回転体、固定側刃物に絡みつくことがない。
さらに、この発明によると、正・逆転パターンの繰り返し駆動される可動側刃物と固定刃物を組み合せた構成により、廃プラスチック材を収納した柔軟な袋体を可動側と固定側の刃物の協同により効率良く破袋できる。」
イ 先行公知技術1
甲3の破袋機は請求人が本件特許の出願前に販売した破袋機(以下、「公知破袋機」という。)であり、この公知破袋機は甲3の添付資料1及び2に示すとおり、次の構造を有する(符号Hは閉塞板である。)。なお、この公知破袋機で破袋された残渣は下方に落下し、例えば、適宜な搬送機構により搬送される。
m 直方体状の枠体Aからなる破袋室Bを有する。
n 破袋室Bの一方の対向壁面間に水平に軸支された1本の回転体Cを有する。
o この回転体Cの表面には、回転体Cの回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物が設けられ、この板状刃物が回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物Dである。
p この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら両方の板状刃物が固定側刃物Fである。
q 夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段を有する。
r 可動側と固定側の複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体Cの正逆転駆動に伴って固定側刃物F間を可動刃物Dが通過し、所定間隔で噛合する固定側刃物Fと可動側刃物D間で袋体を破袋する。
s 以上の構造を有する破袋機。
ウ 本件請求項1の発明と先行公知技術1との対比
(ア)公知破袋機は、本件特許の出願前公知のものである。
詳述すれば、甲4、甲5及び甲6に示すとおり、請求人は本件特許の出願前である2003年(平成15年)10月29日、公知破袋機を株式会社プリテックに販売して2004年(平成16年)4月2日に納品している(甲4、甲6)。
従って、公知破袋機は本件特許の出願前公知といえる。
なお、この公知破袋機は本件特許の出願後である2005年(平成17年)年1月15日、福井環境事業株式会社にも販売し引き渡されている(甲5、甲6)。
(イ)この公知破袋機と本件特許請求項1の発明を対比すると相違点は次の2点であり、その余はすべて一致している。
<相違点1>
本件請求項1の発明の固定側刃物は、破袋室の対向壁面に設けられているのに対し、公知破袋機の固定側刃物Fは、片側は非回転体Eに設けられ、もう一方の側は枠体Aに付設した取付板Gから斜め下方に向けて凸設されている点。
<相違点2>
本件請求項1の発明の回転体の回転制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」であるのに対し、公知破袋機の回転体Cの回転制御は「正・逆転駆動を行なう駆動制御」である点。
(ウ)そこで、まず。上記相違点1について検討する。
この相違点1は、結局、可動側刃物とペアとなって破袋作用を果たす固定側刃物を、破袋室の対向壁面に設けるか、「非回転体」及び「枠体に付設した取付板」に設けるかの相違である。
この点、固定側刃物を対向壁面に設けても、また、「非回転体」及び「枠体に付設した取付板」に設けても両者の作用効果に差はない(「非回転体」及び「枠体に付設した取付板」に付いている固定側刃物を、対向壁面に付け替えても、予期し得ない新しい効果は生じない。)。即ち、公知破袋機も本件請求項1の発明も、ともに破袋機であり、可動側刃物と固定側刃物とで破袋作用を行うという技術であるから、固定側刃物を、壁に付けるか非回転体(パイプ)に付けるか、また、壁に付けるか枠体に付設した取付板に付けるかは、固定側刃物の技術的意味が「可動している刃物と噛合して破袋作用を果たすための固定している刃物の存在」であることに鑑みれば、同等であり、よって、いずれの手段を採用するかは当業者にとって単なる設計事項に過ぎない。
(エ)次に相違点2について検討する。
i 本件請求項1の構成要件Dの「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」の意味は、本件特許発明の特許請求の範囲の記載から、正・逆転パターンを繰り返す制御である。
具体的には、例えば、正逆180°というパターン1と正逆360°というパターン2を繰り返す制御である。
ii 一方、公知破袋機の回転体の制御は、制御ユニットに内装される夫々独立した正転タイマと逆転タイマの設定により、正転時間と逆転時間を決めて回転体を正逆駆動回転させるものである。
具体的には、例えば、正転60秒逆転60秒とセットしたら、回転体は正転60秒逆転60秒という作動を単に繰り返すことになる。
iii 両制御につき、被請求人は現在係属中の大阪地方裁判所平成24年(ワ)第6435号事件において、本件請求項1の構成要件Dの「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」は、回転体に対して単なる正逆転制御をすることも含むものであると主張している(甲19の第1準備書面3頁9行目乃至同頁最終行、甲19の第1準備書面5頁18行目8頁21行目、甲20の第3準備書面3頁8行目乃至10行目、甲20の第3準備書面4頁6行目乃至8行目、甲21の第4準備書面4頁18行目乃至8頁2行目)。
してみると、本件特許発明の構成要件Dには正転タイマと逆転タイマにより正転時間と逆転時間を決めて回転体を正逆駆動回転させることも含まれることになる。
ちなみに、本件特許の出願前公知である実開平6-45640号(以下、「甲10」)及び特開2003-1134号(以下、「甲11」)には、単なる正逆転制御が開示されている。
(オ)よって、請求項1の発明は公知破袋機から容易に考えられるものといえる。
なお、請求人は公知破袋機の前に特許第2987701号(甲7)の実施品を製造販売していた(甲6、甲8)。この甲7の実施品(甲8)は公知破袋機と異なり、回転体が2本あり、両回転体に刃物が付いているもので、対向する可動側刃物で破袋作用を果たすものである。
この甲7の実施品のコストダウンを図るべく、一方の回転体を非回転体とし、破袋効率を上げるため、回転体の(非回転体と)反対側にも固定側刃物を設けたものが公知破袋機である。
具体的には、この甲7の実施品から公知破袋機を設計する際、効率的処理を実現すべく、回転体を正逆転制御とし、当然それにあわせて回転体に、正転の際に破袋作用を果たす形状の刃と逆転の際に破袋作用を果たす形状の刃の双方を設けるとともに、回転体の両側に固定側刃物を設けた。なお、壁面に固定側刃物を設けることも検討されたが、破袋室の枠体には手を加えず、且つ甲7の実施品に使用していた回転体を利用するという発想から甲3の構造とした。
エ 本件請求項2の発明と先行公知技術1との対比
公知破袋機の固定側刃物は、鋭角な刃先部を有している。
従って、本件請求項2の発明も公知破袋機から容易に考えられるものといえる。
オ 本件請求項4の発明と先行公知技術1との対比
公知破袋機の固定側刃物は固定されているものであるが(取り外しはできる。)、セットした固定側刃物をメインテナンス等のために退避可能に構成することは当業者にとって自明の設計事項である。
従って、本件請求項4の発明も公知破袋機から容易に考えられるものである。
カ 先行公知技術2
(ア)特開平7-1388号(以下、「甲9」)は、本件特許発明(甲2)の出願前公知の文献である。
この甲9には下記図X(甲9中の図1)で示す次の構造の破袋機(以下、「文献公知破袋機」という。)が開示されている。なお、符号及びアルファベットは甲9中に用いられた符号及びアルファベットである。
a 上部に開口を有し、更に、上方から下方に向けて内側に傾斜する(テーパをなす)対向壁面(傾斜側板12,15)を有する方形枠状のケーシング10が設けられている。
b ケーシング10は、前記傾斜側板12,15と両端板16,17とで構成されている。
c 両端板16,17間には長手方向に水平に横架された回転可能な円筒ロータ20が設けられている。
d 円筒ロータ20の周面上に周方向に1つ、軸方向に順次90°ずつずらして一定間隔で複数組配列したなぎなた状破袋刃30が設けられている。
e 円筒口-ラ20を回動する可逆転ギアードモータ41とチェーン等の回転力伝達機構42とから成る回転駆動装置40が設けられている。
f 一方の傾斜側板12の下部13は、長手方向に6つに区分され、各々が独立して円筒ロータ20に対して接離方向に揺動するように構成されている。
g この揺動する6つの下部(区分側板)13a?13fは、スプリングSによって弾性付勢されている。
h 一方の傾斜側板12の下部13と他方の傾斜側板15の下部には、ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる逆V断面の三角形リブ18,19が突設されている。
(イ)上記構造の文献公知破袋機の作動を前掲図Xを参照して説明すると(甲9の段落番号[0011]参照)、次のとおりである。
可逆転ギアードモータ41によって矢印Aの方向に例えば毎分30?60回転のスピードで円筒ロータ20を回動し、ホッパー11から連続して大量のごみ袋Wをケーシング内に投入して行くと、ごみ袋Wは傾斜側板12,15の相互に隣接した三角形リブ18,19の谷部の破袋刃30が通過する箇所で次々となぎなた(長刀)状の破袋刃30の鋸歯によって切り裂かれる。この際、仮に、比較的硬いプラスチック製品や木製品等が投入された場合に破袋刃30を傷めないように、それら硬い廃棄物に破袋刃30が当たると、その部分の区分側板13a?13fはスプリングSに抗して押し開かれ、硬い廃棄物を下方に落下させることになる。
その後、内部のごみはケーシング底開口10aから下方のベルトコンベアC上に落下する。
キ 本件請求項1の発明と先行公知技術2との対比
(ア)甲9は、平成5年(1993年)6月17日に出願され、平成7年(1995年)1月6日に公開されている。
従って、甲9は本件特許発明(甲2)の出願前公知の文献であるから、文献公知破袋機も本件特許発明(甲2)の出願前公知の破袋機といえる。
(イ)この文献公知破袋機と本件請求項1の発明を対比すると相違点は次の2点であり、その余はすべて一致している。
<相違点1>
本件請求項1の発明の固定側刃物は、破袋室の平行な対向壁面に設けられているのに対し、文献公知破袋機の三角形リブ18,19(固定側刃物)は、下方向にテーパをなす対向壁面(一方の傾斜側板12の下部13と他方の傾斜側板15の下部)に凸設されている点。
<相違点2>
本件請求項1の発明の回転体の回転制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」であるのに対し、文献公知破袋機のロータ20の回転制御は「可逆転ギアードモータ41とチェーン等回転力伝達機構42とでロータ20を正逆転駆動をさせる駆動制御」である点。
(ウ)なお、以下のとおり上記2つの相違点以外は、両者は全て一致している。
i 本件請求項1の発明は、破袋室が矩形枠体からなっており、一方、文献公知破袋機の破袋室に相当する処理空間は、ケーシングであり且つ方形状であるから、両者は同一と言える。
ii 本件請求項1の発明は、回転体が破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された構造であり、一方、文献公知破袋機は、ケーシングの下方部において両端板16,17間にして長手方向に水平に横架された回転可能な円筒ロータ20が設けられた構造であり、よって、両者は同一と言える。
iii 本件請求項1の発明は、回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の可動側刃物が、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設された構造であり、一方、文献公知破袋機は、円筒ロータ20の周面上に、破袋刃30が、周方向に1つ、軸方向に順次90°ずつずれて一定間隔で複数組配列された構造であり、よって、両者は同一と言える。
iv 本件請求項1の発明は、板厚みを水平な垂直板からなる複数の固定側刃物が、他方の対向壁面より突設され、これらの固定側刃物は回転体の軸方向に配列された構造であり、一方、文献公知破袋機は、両傾斜側板12,15の下部に板厚みを水平な垂直板からなる複数の三角形リブ18,19が、円筒ロータ20の軸方向に配列された構造であり、よって、両者は同一と言える。
ところで、前述した大阪地方裁判所平成24年(ワ)第6435号事件において、被請求人は、文献公知破袋機の「三角形リブは固定側刃物に該当しない」と主張している。
即ち、被請求人は、甲9の記載に不明な点があるものの文献公知破袋機の三角形リブの形状は下記図A?Fのいずれかと考えられ、この文献公知破袋機の三角形リブは、袋体を破袋刃の回転軌跡内に「寄せる」効果ないし役割を有しているに過ぎず、袋体を「切る」効果を有していないと主張している(甲21の第4準備書面4頁4行目乃至7頁8行目)。
・・・(略)・・・
この点、請求人は、甲9の三角形リブの形状は、確かに甲9からは明確に読み取れないものの、下図Y,Wのいずれかの形状ではないかと想像しているが(甲23の準備書面(第11回)4頁13行目乃至6頁1行目)、しかし、いずれにせよ図A?Fいずれの三角形リブであっても板厚みを水平に凸設配置された垂直板であり、この隣接する三角形リブの間を破袋刃が通過して袋体を破袋するのであるから、甲9の三角形リブは破袋作用に関与することは自明と言える。
よって、複数の三角形リブは、本件請求項1の発明の複数の固定側刃物に相当するといえる。
・・・(略)・・・
v 本件請求項1の発明は、可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する構造であり、一方、文献公知破袋機は、前記ivで述べたとおり、傾斜側板12,15に突設された三角形リブ18,19間を破袋刃30が通過することでごみ袋Wを切り裂く構造であり、よって、両者は同一と言える。
なお、後に相違点として述べる本件請求項1における「回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、被請求人の主張からすると甲9の制御は含まれている。
(エ)そこで、まず、上記相違点1について検討する。
この相違点1は、可動側刃物とペアとなって破袋作用を果たす固定側刃物を、破袋室の平行な対向壁面に設けるか、下方にテーパーをなす対向壁面に設けるかの相違である。
この点、固定側刃物を平行な対向壁面に設けても、下方にテーパーをなす対向壁面に設けても両者の作用効果に差はないといえる(三角形リブ18,19が凸設される傾斜側板12,15を互いに垂直状態としても、予期し得ない新しい効果は生じない。)。
すなわち、文献公知破袋機も本件請求項1の発明も、ともに破袋機であり、可動側刃物と固定側刃物とで破袋作用を果たすという技術であるから固定側刃物を平行な対向壁面に設けるか、下方にテーパーをなす対向壁面に設けるかは、固定側刃物の技術的意義が「可動している刃物と噛合して破袋作用を果たすためのもの」であることに鑑みれば、差異はなく、よって、いずれの構造を採用するかは当業者にとって単なる設計事項に過ぎない。
ちなみに、本件特許の出願前公知である甲10,特開2003-260378号(以下、「甲12」)、特開平9-309519号(以下、「甲13」)、実開平7-7742号(以下、「甲14」)及び特開平9-253614号「以下、甲15」には、可動側刃物と歯合する固定側刃物を平行な対向壁面に凸設した構成が開示されおり、これら甲10,甲12?15の存在からしても、固定側刃物を破袋室の平行な対向壁面に設けることは周知技術に過ぎず、この点を考慮すれば、前記相違点1は、単なる設計事項に過ぎない。
(オ)次に相違点2について検討する。
本件特許発明の構成要件Dは、回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう構造であり、一方、文献公知破袋機の駆動制御手段は、可逆転ギアードモータ41で円筒ローラ20を正逆転させる構造である。
前述したように、本件特許発明の構成要件Dの「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」には、回転体を単なる正逆転制御することも含まれるとする被請求人の主張からすると、本件特許発明の構成要件Dには、可逆転ギアードモータにより円筒ローラを正逆転制御することも含まれることになる。
(カ)よって、本件請求項1の発明は文献公知破袋機から容易に考えられるものといえる。
ク 本件請求項2の発明と先行公知技術2との対比
文献公知破袋機の三角形リブ18,19は、鋭角な刃先部(三角形の頂点)を有している。
したがって、本件請求項2の発明も甲9から容易に考えられるものといえる。
ケ 本件請求項4の発明と先行公知技術2との対比
文献公知破袋機の三角形リブ18を保持する傾斜側板12の側板下部13は待避するものである。
したがって、本件請求項4の発明も甲9から容易に考えられるものといえる。
コ むすび
以上のとおり、本件請求項1、2及び4の各発明は、公知破袋機及び文献公知破袋機に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とされるべきものである。」

3-2 平成26年6月9日付け手続補正書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(平成26年6月9日付け手続補正書第2ページ第4行ないし第5ページ第15行を参照。)。

「1(1) 請求人が既に主張したとおり(審判請求書10頁21行目乃至16頁5行目)、可動側刃物の両側に固定側刃物を設けて「物」を破砕することは周知技術である(例えば甲9,甲10,甲11,甲12,甲13,甲14及び甲15など)。
したがって、本件特許が許可された理由は、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」が、何か特別な駆動であり、この特別な駆動によりブリッジ現象が防止されるから、本件特許は許可されたと解釈せざるを得ない。そうとするならば、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」には、少なくとも「所定時間正転し、所定時間逆転するタイマー等により行う通常の制御」が含まれるはずはない。
(2) しかしながら、被請求人は、現在係属中の大阪地方裁判所平成24年(ワ)第6435号事件において、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」には上記「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」が含まれると主張する(甲19の3頁9行目乃至同頁24行目)。そうであれば、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は特別な駆動ではないということにならざるを得ず、本件特許のポイントはどこにあるのか、という疑問が生じる(ポイントがなければ、上記周知技術に対して進歩性を欠くこと、明白である。)。
この点、被請求人は前記訴訟において、固定側刃物が配置される方の対向壁面が平行(垂直)な点がポイントであり、この対向壁面が平行でなく、例えば甲9のような傾斜壁(上側程拡開する傾斜壁)であると、袋が可動側刃物と固定側刃物との噛合部(破袋作用が奏される部分)に押し込まれ、対向壁面が平行(垂直)な対向壁面に比し、格段に劣る旨主張する(甲24の9頁12行目乃至11頁1行目。)。
しかし、そうであるなら、「固定側刃物」と「固定側刃物の上側部分の壁」との位置関係は極めて重要となるが、請求項にはこのような位置関係を特定する構成要件は全くない。
つまり、本件特許の請求項の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」までもが含まれるのであれば、対向壁面と固定側刃物の具体的な位置関係を特定しなければ前述のように本件特許は進歩性を欠くのである。
(3) ちなみに、例えば甲12には被処理物が「袋」であること以外は、本件特許請求項1の構成要件が全て開示されており、そうとすれば、両者の差は破袋機か破砕機かの相違のみとなる。しかし、破砕機と破袋機とでは製品としては異なっても、物を破砕(破袋)する点では共通し、両者には技術上の相違が何らない。
2 請求人が、審判請求書8頁(イ)で述べたとおり、公知破袋機(甲3)と本件特許請求項1の相違点は、次の2点である。
○1公知破袋機の固定側刃物の一方が非回転体Eに設けられ、もう一方は斜め上にある取付板Gから斜め下方に向けて凸設させている点
○2公知破袋機は「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」であるのに対し、本件特許の制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動」である点
(1) 上記○1については、一方の固定側刃物に関し、壁面に設けるか、非回転体に設けるかは、異なる作用効果を奏する相違でないから、自明な設計事項に過ぎず、また、もう一方の固定側刃物に関し、斜め上に設けるか、水平位置に設けるかは、前記同様、異なる作用効果を奏する相違でないから自明な設計事項であることは明らかといえる。
なお、もう一方の固定側刃物を斜め上に配したのは、それ以前のタイプの部品を用いてコストダウンを図っただけに過ぎず、技術的には異なるところはない。
ちなみに、この斜め上の固定側刃物が破袋作用を奏している点は固定側刃物に小刃が設けられていることから明らかである。
(2) 上記○2については、前述したように被請求人は「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」が「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に含まれるというのであるから、そうとすれば相違点ではない。
(3) してみると、本件特許請求項1は公知破袋機に対して進歩性を欠くことは明らかである。
(4) なお、請求人は以下のア及びイなどから、公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」と、本件特許の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」とは相違すると考えるが、被請求人は前述のとおり相違しないと主張しており、この主張を採用すれば、公知破袋機の制御と本件特許の制御とは相違しないということになる。
ア 本件特許請求項1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」、すなわち、実施例に記載されている正逆180度と正逆360度の組合せ(甲2段落番号[0035]、[0048])、正逆90度と正逆180度の組み合わせ(甲2段落番号[0026]、[0043])のように、回転体を細かく正逆転させて袋体を頻繁に上下に動かす制御であれば、ブリッジ現象が防止されるであろう。
一方、公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」、すなわち、例えば10分間正転し10分間逆転する制御では、例えば10分間の正転の間に、仮にブリッジ現象が発生してもそのブリッジ現象は何ら防止されない。
従って、公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」と、本件特許請求項1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、その構成が全く異なるのは勿論、その構成から奏される作用効果が全く異なる。
イ 本件特許請求項1の「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御手段」という文言は、「正・逆転パターン」とは何か、また、「繰り返し」とは何か、などの疑義があり、明確にその技術的意義を特定することが出来ない。したがって、本件においては明細書を参酌することになる。
そこで、明細書の実施例の記載を参酌すれば、「複数組の正・逆転パターンを組み合わせた駆動制御」のみが記載され、「1組の正・逆転パターンの繰り返し駆動制御」の実施例は存在しない。最も単純であり実施例に記載されてしかるべき「1組の正・逆転パターンの繰り返し」(単なる正転・逆転の繰り返し)の実施例が存在しない以上、本件特許請求項1から、「1組の正・逆転パターンの繰り返し」(単なる正転・逆転の繰り返し)は当然に除かれているといえるのである。」

3-3 審判事件弁駁書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(審判事件弁駁書第2ページ末行ないし第10ページ第1行を参照。)。

「ア 審判事件答弁書の「7 理由」中の(3)に対して
被請求人は請求人提出の図面等の証拠について云々するが、すべて推測である。
請求人としても、例えばなぜ図面に日付が入っていないのか等、その理由を答えられない事項は確かにある(当時の担当者がいないため)。しかし、請求人は公知破袋機(甲3)が、本件特許の出願前に販売され且つ公然実施された事実を、提出した図面のみにより立証しようとするものではない。
あくまで、公知破袋機(甲3)が本件特許の出願前に販売され、株式会社プリテックの工場に備えつけられて公知の状態で稼働していた事実を甲4、5、6及び証人の証言を主にして立証しようとするものである。以下、念の為、必要な限度で反論する。
(ア) アに対して
公知破袋機の実物は、現在存在しないだけで、当時は存在していた。
(イ) イに対して
甲4の別紙f(甲6の別紙i)は、株式会社プリテックと仕様の検討の結果、製作に着手した際の甲6の別紙eの図面を基に、その後の加修により作成されたものであり、年月日の記載は無いが最終形の図面である。
また、甲4の別紙f(甲6の別紙i)に関し、「破袋歯」の欄に「「枠体Aに付設した取付板Gから斜め下方に向けて凸設」された固定側刃物」の記載が何故ないのか、「製図」者欄は何故空欄なのか、「審査」者欄は何故「/」となっているかは、当時の担当者がいないため、現在となっては不明である。なお、これらを必ず記載しなければならないものではない。
(ウ)i ウ(イ)に対して
甲3に添付の斜視図は甲4の別紙f(甲6の別紙i)をもとに作成したものである。
ii ウ(ウ)に対して
陳述書(甲4)に関し、株式会社プリテックの直接の担当者は森野弘樹であったが、海野優も打ち合わせに同席しており、破袋機の採用決定の責任者は海野優であった。
また、甲4の別紙b(図面)に関し、「年月日」欄の「200309.##」は2003年9月を意味する。また、「承認」「審査」欄は記載が何故ないかは、当時の担当者がいないため、現在となっては不明である。また、「形式」欄の「OM-##」、「図面名称」欄の「OM-特型」の各記載が甲4の別紙d及びfと何故整合していないかについても、現在となっては不明である。
また、甲4の別紙e(購買注文書)には「発注内容」の欄に記載のとおり、図面が添付されている(甲6の2頁エ)。また、購買注文書の納入期限は「平成15年12月上旬」となっているが、納品が遅れ、実際に納品した日は「2004年(平成16)年1月12日」(当審注:原文には「」」は無い。)である。
また、甲4の別紙d(図面)に関し、「製図」欄に記載が何故ないかは、当時の担当者がいないため、現在となっては不明である。
また、甲4の別紙d(図面)の作成年月日が「2003 12.25」になっており、そのため上述のとおり、納品が遅れたものである。
また、甲4の別紙e(リース契約書)に関し、株式会社プリテックに納品された破袋機は「OM-10」であり、リース契約書に記載される「OM-特型」は「OM-10」のことであることは間違いないが、どのような経緯で「OM-10」を「OM-特型」と記載したのかは、当時の担当者がいないため不明である。ただ、2軸破袋機から1軸破袋機に変更された時点で「OM-特型」と呼ぶこともあったとしか答えようがない(甲4の1頁19行目、甲4の別紙bの「図面名称の欄」参照)。
なお、甲4の別紙g(借受証)、別紙h(覚書)、別紙i(リース満了のお知らせ)、別紙j(リース終了物件廃棄処分報告書)に関し、各書類に記載される「OM-特型」は上記のとおり「OM-10」のことである。
(エ) ウ(エ)に対して
陳述書(甲5)に関し、福井環境事業株式会社における破袋機の採用決定の責任者は堤彰一であったが、近藤克彦も打ち合わせに同席しており、近藤克彦は当時の状況を十分に認識していた。
(オ) ウ(オ)に対して
甲6の別紙jにおいて破袋機を支えている脚立は、請求人が株式会社プリテックに持ち込んだものであり、甲6の別紙hの写真中の脚立と同一である。
イ 審判事件答弁書の「7 理由」中の(4)に対して
(ア)本件請求項1の発明と公知破袋機との相違点が1つである点に関しては相違点の表現に若干相違があるが、請求人及び被請求人間でほぼ争いはない。
なお、被請求人における本件請求項4の発明との相違点については「公知破袋機においては、固定側刃物が固定されている点で異なる」ではなく、正確には「公知破袋機においては、固定側刃物が着脱可能な状態で固定されている点で異なる」である。
(イ)上記相違点に関し、請求人は固定側刃物の取付部材が異なることを指摘するものであり、被請求人は固定側刃物の取付位置が異なることを指摘している。
これは、本件請求項1の「破袋室の他方の平行な対向壁面より」の「より」をどのように解釈するかの問題であり、請求人は「より」を起点と解釈して「対向壁面より」を「対向壁面から」と理解する。一方、被請求人は「より」を特別な意味に解釈して「対向壁面から」を「対向壁面の側から」と理解する。
しかしながら、仮に被請求人の理解に立ったとしても上記相違点は実質的に相違点ではないと請求人は主張するものである。
以下、詳述する。
(ウ) 本件請求項1の発明と公知破袋機は、一方の固定側刃物が天井から斜め下に凸設されるか、側壁から水平に凸設されるかの相違に過ぎない。
物を破砕するために刃を突設した回転体の両側に、固定刃を設ける技術は周知技術であり、更に、一方の固定刃を上から斜め下方に凸設した破袋機(公知破袋機)が公知である以上、本件請求項1の発明は進歩性を欠くことは疑う余地がない。この点は、前記相違点が被請求人が主張する「取り付け位置の相違」と理解しても同様である。
(エ)i ところで、被請求人は本件請求項1の発明の固定側刃物の取付位置の技術的意義について主張するが(答弁書11頁下から10行目乃至12頁16行目)、○1破袋室の上方開口部を広くとることが可能となり、大量の袋体の処理が可能となることは、固定側刃物及び回転体が開口部から下方へどの程度の距離の位置にあるかにより決まることであって、位置によっては広い開口部をとれない場合があり、また、○2可動側刃物の両側に破袋室が形成され、効率よく破袋することができることも、やはり各部の位置関係を特定しない限り言えない。更に、○3破袋片が回転体の両側の空間に落下し、破袋片の回転体への絡みつきを防止し得ることも、回転体と固定側刃物の位置関係を特定しない限り言えないことである。また、○4固定側刃物の上部空間が確保され、ブリッジ現象の発生を防止することができるということも固定側刃物の取り付け位置、例えば、破袋室の開口縁から下方へどのくらいの距離の位置に固定側刃物が存在するかなどが特定されない限り、主張できる作用効果ではない。
従って、被請求人の主張は本件請求項1に記載のない構成要件に基づく技術的意義を主張しているにすぎない(ただ、この技術的意義は当業者にとって自明な技術的意義ではあるが)。
ii つまり、被請求人は固定側刃物が回転体の左右にあることが重要であると主張し(審判事件答弁書11頁11行目乃至13行目)、あたかも両側の固定側刃物等、各部の位置関係が特定されているかのような主張をしているが、本件請求項1には例えば、下掲図に示すように、対向する固定側刃物同士のなす角αが180度(対向水平)とは特定されていないし、また、固定側刃物の取り付け位置(開口縁から下方への距離β)も特定されていない点に留意する必要がある。
・・・(略)・・・
なお、公知破袋機の固定側刃物も回転体の左右に存在することは明らかである。すなわち、下掲図に示すように、公知破袋機は、天井から斜め下方に向けて凸設された固定側刃物は垂直線に対しておよそ25度の角度で斜設されており、この意味で固定側刃物の破袋作用を奏する刃は回転体の左右に存在する。
・・・(略)・・・
(オ) 以上から、前記相違点は実質的に相違点ではなく、本件請求項1の発明は公知破袋機に対し進歩性を欠く。
(カ) 前記本件請求項4の発明と公知破袋機の相違点については、公知破袋機が固定側刃物が取り外せる以上、「退避可能」に設けることは単なる設計事項である。
(キ) なお、被請求人は公知破袋機にブリッジ現象発生の防止の技術思想はないと主張するが、この主張の意味するところは、ブリッジ現象発生の防止の技術的思想がないものは本件請求項1の発明とは別異であって、本件請求項1の発明の進歩性を否定する引用例とはなり得ないという趣旨と理解するが、本件請求項1の発明の構成要件中、「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」以外の構成要件がブリッジ現象発生の防止に貢献することはない、と請求人は理解するから、公知破袋機を進歩性否定の根拠とする請求人の主張は正当である。
(ク) ところで、本件請求項1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」に関し、被請求人は「正転と逆転とを組み合わせて繰り返すこと」と解釈し、「単に逆回転すること」、「正転と逆転とを組み合わせること」とは異なる旨主張する(審判事件答弁書19頁4行目乃至14行目)、甲22の7頁下から5行目以下)。
しかしながら、「正転と逆転とを組み合わせて繰り返すこと」を、例えば1分間の正転と1分間の逆転とを1単位としてこれを繰り返す制御と理解しない限り、「正転と逆転とを組み合わせること」と同じである。つまり、公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」は、タイマーのセットにより、例えば、1分間正転、1分間逆転し、停止ボタンを押さない限り、これを繰り返すが、停止ボタンを押せば、その時点で回転体は止まる。すなわち、常に「1分間の正転、1分間の逆転」を1単位として終了する「正転と逆転とを組み合わせて繰り返す制御」が「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」であり、1単位というようなものがなく、いつでも回転体を停止させることができるのが「正転と逆転とを組み合わせること」(=「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」)である。
従って、被請求人の「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」に「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」が含まれるとの主張は、「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」には、「正転と逆転とを組み合わせること」も含まれると主張しているのであって、結局、「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」は「正・逆転制御」のことであると言っているに他ならない。
ウ 審判事件答弁書「7 理由」中の(5)に対して
(ア) 被請求人は甲9の文献公知破袋機と本件請求項1の発明との相違点として、○1本件請求項1の発明は、回転体を軸支する対向壁面でない方の対向壁面が「平行」であるのに対し、文献公知破袋機は、回転体を軸支する対向壁面でない方の対向壁面が下方に向けて大きく内側に傾斜している点、○2固定側刃物の形状、○3そもそも甲9の三角形リブは固定側刃物とはいえない、の3点を主張する。
しかしながら、上記壁面が傾斜しているか否かによる作用効果は当業者にとって自明である。すなわち、傾斜していても、垂直であっても作用効果に差はない。
また、甲9の三角形リブが固定側刃物か否か、またその形状はどのような形状かについては、甲9の三角形リブの形状がどうあれ、「板厚みが水平に凸設配置された垂直板」であり、破袋作用に関与するのであるから「固定側刃物」であることには変わりはなく、甲9には可動側刃物と固定側刃物とで破袋作用を果たす破袋機が開示されている。
(イ) なお、制御に関する相違点は、公知破袋機の項で主張したことと同様、被請求人の侵害訴訟における主張は、「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」は 「正・逆転制御」であるという主張に他ならないから、実質的には相違点ではないことになる。
(ウ) 以上から、本件請求項1及び4の発明は文献公知破袋機に対し進歩性を欠く。」

3-4 口頭審理陳述要領書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(口頭審理陳述要領書第2ページ第6行ないし第7ページ第3行を参照。)。

「5 陳述の要領
請求人は、平成26年2月27日付け審判請求書、平成26年6月9日付け手続補正書、平成26年8月29日付け審判事件弁駁書の内容を、以下の陳述の要約のとおり陳述し、更に、平成26年7月31日付け審理事項通知書で請求人に要求された事項について以下のとおり回答致します。
(1)審判請求書及び手続補正書の要約
本件請求項1の発明はクレーム記載のとおりであり、特に次の文言の解釈が争点です。
○1「他方の平行な対向壁面より」
○2「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」
以下に2つの無効理由の要約を述べます。
ア 公知破袋機に基づく無効理由
(ア) 甲3の破袋機(以下、「公知破袋機」という。)は出願前公知です。
この公知破袋機の構造及び作動は甲3に記載のとおりであり、この公知破袋機の公知性は、甲4、5、6及び証人などにより立証致します。
(イ) 本件請求項1の発明と公知破袋機の相違点は次の2点です。
相違点1 本件請求項1の発明の固定側刃物は破袋室の対向壁面に設けられているのに対し、公知破袋機の固定側刃物は、一方は非回転体Eに、他方は枠体Gに付設した取付板Gから斜め下方に凸設されています(アルファベットは甲3に用いたものです。)。
相違点2 本件請求項1の発明の回転体の回転制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」であるのに対し、公知破袋機の回転体Cの回転制御は「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」です。
(ウ) 相違点1に関し、両者の作用効果は同じであり、この相違点は単なる設計事項に過ぎません。
下掲図を参照すれば、左側の固定側刃物を矢印Aのとおり、下方におろして右側の固定側刃物と対向させても自明の作用効果しか生じません。つまり、この変更は、当業者の通常の創作能力の発揮により行われるものにすぎません。
なお、相違点2は、被請求人が大阪地方裁判所平成24年(ワ)第6435号事件(以下、単に「侵害訴訟」という。)において、「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」が「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」に含まれると主張するため相違点とはなりません。
(エ) 以上から、本件請求項1の発明は公知破袋機に対し進歩性を欠きます。
イ 文献公知破袋機に基づく無効理由
(ア) 甲9に開示の破袋機(以下、文献公知破袋機)という。)と本件請求項1の発明を対比すると相違点は次の2点であり、その余はすべて一致しています。なお、以下の数字は甲9に記載の数字を用いました。
相違点1 本件請求項1の発明の固定側刃物は、破袋室の平行な対向壁面に設けられているのに対し、文献公知破袋機の三角形リブ18,19(固定側刃物)は、下方向にテーパをなす対向壁面(一方の傾斜側板12の下部13と他方の傾斜側板15の下部)に凸設されています。
相違点2 本件請求項1の発明の回転体の回転制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」であるのに対し、文献公知破袋機のロータ20の回転制御は「可逆転ギアードモータ41とチェーン等の回転力伝達機構42とてロータ20を正逆転駆動をさせる駆動制御」です。
(イ) 相違点1は、可動側刃物とペアとなって破袋作用を果たす固定側刃物を、破袋室の平行な対向壁面に設けるか、下方にテーパーをなす対向壁面に設けるかの相違です。
この点、固定側刃物を平行な対向壁面に設けても、下方にテーパーをなす対向壁面に設けても両者の作用効果に差はないといえます(三角形リブ18,19が凸設される傾斜側板12, 15を互いに垂直状態としても、格別な効果は生じません。)。
すなわち、文献公知破袋機も本件請求項1の発明も、ともに破袋機であり、可動側刃物と固定側刃物とて破袋作用を果たすという技術ですから、固定側刃物を平行な対向壁面に設けるか、下方にテーパーをなす対向壁面に設けるかは、固定側刃物の技術的意義が「可動している刃物と噛合して破袋作用を果たすためのもの」であることに鑑みれば、差異はなく、よって、いずれの構造を採用するかは当業者にとって単なる設計事項に過ぎません。
ちなみに、本件請求項1の出願前公知である甲10、甲12、甲13、甲14及び甲15には、可動側刃物と歯合する固定側刃物を平行な対向壁面に凸設した構成が開示されおり、これら甲10,甲12?15の存在からしても、固定側刃物を破袋室の平行な対向壁面に設けることは周知技術に過ぎず、この点を考慮すれば、前記相違点1は、単なる設計事項に過ぎません。
(ウ) 相違点2に関し、本件請求項1の発明の回転体の回転制御は、 「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」であり、一方、文献公知破袋機のロータ20の回転制御は、「可逆転ギアードモータ41とチェーン等の回転力伝達機構42とてロータ20を正逆転駆動させる駆動制御」です。
前述したように、本件請求項1の発明の「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」には、「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」が含まれるとする侵害訴訟における被請求人の主張からすると、本件請求項1の発明の「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」には、「可逆転ギアードモータ41とチェーン等の回転力伝達機構42とてロータ20を正逆転駆動させる駆動制御」が含まれる、若しくは容易に想起し得ることは明らかです。
(エ) よって、本件請求項1の発明は文献公知破袋機に対し進歩性を欠きます。
(2)審判事件弁駁書の要約
審判弁駁書における請求人の主張は次のとおりです。
ア 請求人は、提出した図面等のみにより甲3の破袋機が出願前公知であることを立証しようとしているのではなく、あくまで甲4、5及び6の陳述書並びに証人を主な証拠として甲3の破袋機が出願前公知であることを立証しようとするものです。
イ 甲3に記載の公知破袋機に対して本件請求項1の発明に進歩性を欠くこと、また、甲9の文献公知破袋機に対して本件請求項1の発明は進歩性を欠くことは明らかです。
(3)審理事項通知書で請求人に要求された事項について
ア (2)に対して
本件請求項1の発明の「正・逆転パターン繰り返し駆動を行う駆動制御」には、公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」は含まれないと請求人は考えますが、被請求人が侵害訴訟において「含まれる」と主張し、裁判所も同旨の心証開示を行ったため、上記侵害訴訟と同じ前提で審理して頂きたいというのが請求人の趣旨です。
従って、平成26年6月9日付け手続補正書の4頁(4)において、「上記相違点2に関し「「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマーにより行う通常の制御」と「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御」とは、相違すると考える」と主張したが、その文に続けて「被請求人は前述のとおり相違しないと主張しており、この主張を採用すれば、公知破袋機の制御と本件特許の制御とは相違しないということになる。」と主張するものです。
よって、公知破袋機の制御と本件特許の制御との相違点は、相違点1のみとなり、よって、本件請求項1の発明は公知破袋機に対して進歩性を欠くと請求人は主張します。
なお、合議体におかれて、相違点2は明確な相違点であるから、この点において公知破袋機による無効理由はないとのご判断であればその旨の審決を頂きたいと思います。
イ (3)に対して
請求人は、公知破袋機は出願前の販売により公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号に該当する発明)となり、その後、株式会社プリテックにおいて公然実施された発明(特許法第29条第1項第2号に該当する発明)となっていると主張するものです。
よって、請求人は、これらいずれかの事実により、本件請求項1の発明は進歩性(特許法第29条第2項に該当)を欠くものと主張する次第です。
ウ (4)に対して
手続補正書3頁(3)は新たな主張ではありません。
審判請求書16頁に記載したとおり、相違点1が単なる設計事項であることの根拠として、固定側刃物を破袋室の平行な対向壁面に設け、この対向壁面の間に配置した 回転体の可動側刃物で物を破砕する技術は周知技術であるということを主張したに過ぎません。」

3-5 平成26年10月3日付け上申書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(平成26年10月3日付け上申書第2ページ第1行ないし第4ページ第11行を参照。)。

「4 上申の内容
(1) 先日実施された口頭審理において、審判長からご指示がありました、甲6の3頁(4)イに記載のビデオテープ(大阪地裁の侵害訴訟(平成24年(ワ)第6435号)では乙8、本件甲5の1頁12行目にも記載)の動画をコピーしたDVDを甲26の1として、また。甲26の2としてビデオテープの外観を撮影した写真を提出致します。
このDVDの10分経過後あたりの映像を見て頂くと、この破袋機が甲6別紙の構造であることが確認できます。
なお、このビデオテープは、先日実施された証人堀井厚央二の証言にも出てきますが、上記大阪地裁の侵害訴訟が起きたため、福井環境事業株式会社の近藤克彦氏(甲5参照)から探して頂き、見つかったのでお借りしてきました。
(2) 上記口頭審理において。本件無効密判における先決事項である本件特許発明の要旨の認定についての討論が実施されなかったため、以下に、口頭審理陳述要領書に記載した本件特許発明の構成要件で争点となっている点につき、請求人の主張を簡潔に整理しました。
ア クレームの「他方の平行な対向壁面より」について
(ア) 「平行」
対向壁面が「平行」であることが構成要件であることは疑いがありません。この点は、対向壁面が傾斜している甲9との対比において問題となります。被請求人は対向壁面が平行(実質的には垂直且つ平行)であることの作用効果を種々主張しておりますが(答弁書20頁イ)、すべて自明の効果に過ぎません。
(イ)「より」
本件特許発明と公知破袋機との相遜点の認定に関し、請求人はこの「より」は起点であると解釈して「対向壁面より」を「対向壁面から」と理解し、一方、被請求人は「より」を特別な意味に解釈して「対向壁面より」を「対向壁面側から」と理解するため(答弁書11頁(イ)、(ウ))、この点が争点となっています。しかし、この被請求人の解釈は通常の文言の解釈から逸脱するもので、到底採用できないと考えます。
イ クレームの「正・逆転パターンの繰り返し駆動」について
(ア) この点は被請求人の主張によれば、本件において争点とはならないのですが(被請求人提出の口頭審理陳述要領書3頁下から9行目以下)、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」という表現は極めて特異且つ不可思議な表現であり、また、被請求人の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に関する主張は正しくないと考えますので、以下に一応請求人の考えを述べさせて頂きます。
(イ) クレームの「正・逆転パターンの繰り返し駆動」につき、被請求人は、この「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、「正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」のことであると主張し(被請求人提出の口頭審理陳述要領書6頁下から3行目以下)、更に、クレームの「正・逆転パターンの繰り返し駆動」には、「正・逆転の繰り返し」が含まれると主張しています(被請求人提出の口頭審理陳述要領書7頁1、2行目)。
しかし、クレームの「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に「正・逆転駆動」は含まれないと考えます。
なぜなら、本件特許明細書(甲2)の段落番号【0011】に「回転ではなく正・逆転パターンの繰り返し駆動」という記載がありますが、出願当初は「回転ではなく揺動駆動」と記載されていたのを被請求人が「回転ではなく正・逆パターンの繰り返し駆動」と補正しました。したがって、「揺動駆動」に「正・逆転駆動」が含まれると、【0011】は「回転でなく正・逆転駆動」となる訳ですが、「正・逆転駆動」には何回転か正転し、その後何回転か逆転することが当然含まれていますから、「回転でなく正・逆転駆動」という表現は、明らかにおかしな表現となります。
ところで、前記「正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」と「正・逆転駆動」とはどう違うのでしょうか。
例えば、正転10秒逆転10秒で終わるものは「正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」とは言わないのでしょうか。ということは、例えば正転10秒逆転10秒、再び正転10秒逆転10秒を繰り返すのが「正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」ということなのでしょうか。そうであれば、「正転10秒逆転10秒」が自動的に繰り返されるものが正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」となります。
例えば、「正転l0秒逆転10秒」を1単位とし、常にその1単位で終わるものが「正極と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」であり、いつでも任意に終できるものは「正転と逆転の組み合わせを繰り返す駆動」には含まれないものと考えます。
ちなみに、さきほどので正転している10秒間、逆転している10秒間は、ブリッジ現象発生の防止という作用効果は生じません。つまり、一定時間くるくる回る制御はブリッジ現象は生じているということです。」

3-6 平成26年11月14日付け上申書における主張の概要
請求人の主張の概要は次のとおりである(平成26年11月14日付け上申書第2ページ第1ないし27行を参照。)。

「4 上申の内容
このたび、「証人等の陳述を記載した書面」(所謂「証人尋問調書」を入手致しました。審判官からの尋問に対する証言に関し、以下の点、念のために補足致します。
(1)甲6別紙eと甲6別紙iとの関係ですが、株式会社プリテックに納品した甲6別紙eに対して改造を施した最終形が甲6別紙iです。
この甲6別紙eと甲6別紙iとの相違は次のとおりです。
ア まず甲6別紙eの回転体は正逆回転しません。一方向回転のみです(回転側刃物の刃の向きから明らかです。)。ただ、過負荷がかかったとき反転する機構は具備しております。
従って、甲6別紙eのスクレーパーは、正転時に例えば回転体にからみついた破れた袋などを除去する作用、また過負荷反転時に被処理物が外部へ放り出されることを防止する作用を有します。
イ これに対し、甲6別紙iの回転体は処理量を上げるため、正逆回転するようにしました(回転側刃物の刃の形状が甲6別紙eと異なり、正逆回転に対して適合する形状となっています。)。従って、当然、固定側刃物は両側に設けられる訳ですが、既存の枠体を利用したため(コストアップ防止のため)、一方の固定側刃物は斜め上からとなっております。この斜め上からのものも破袋刃ですから、鉄製ですし、破袋作用のために小刃がついています。もちろん、鉄製となってもスクレーパー機能は奏します。
なお、この斜め上からのものは回転体に接しません。接したら鉄製ですから回転体の回転を妨げます。
(2) 公知破袋機の制御盤に関してですが、シーケンサーは購入品ですから、例えば、正転1秒、逆転1秒のセットは可能です。しかし、実際このセットをしても回転体の慣性によりこのような短い時間での正逆転はできません(公知破袋機はブレーキなどはありませんから。)。」

第4 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 被請求人の主張の全体概要
これに対し、被請求人は、平成26年6月9日付けで答弁書とともに下記乙第1ないし13号証を証拠方法として提出した。
また、平成26年8月29日付けで口頭審理陳述要領書とともに証拠方法として下記乙第14ないし16号証を提出した。
さらに、平成26年10月31日付けで上申書を提出した。

そして、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めている。

2 証拠方法
乙第1号証 準備書面(第3回)(2012年12月21日)
乙第2号証 釈明書(2013年2月18日)
乙第3号証 釈明書(2013年5月15日)
乙第4号証 準備書面(第6回)(2013年5月31日)
乙第5号証 準備書面(第7回)(2013年8月30日)
乙第6号証 準備書面(第8回)(2013年9月3日)
乙第7号証 求釈明申立書(平成25年1月29日)
乙第8号証 求釈明申立書(2)(平成25年4月25日)
乙第9号証 求釈明申立書(3)(平成25年5月16日)
乙第10号証 第8準備書面(平成25年10月10日)
乙第11号証 証拠説明書(3)の補充書(2013年4月8日)
乙第12号証 大辞林2068頁(「刃物」掲載)
乙第13号証 大辞林1992頁(「刃」掲載)
乙第14号証 技術説明会資料
乙第15号証 技術説明会資料(上映)
乙第16号証 技術説明会資料(DVD)

3 無効理由1及び2に係る主張の概要
3-1 答弁書における主張の概要
被請求人の主張の概要は次のとおりである(答弁書第2ページ第11行ないし第25ページ第3行を参照。)。なお、以下、被請求人の主張を摘記する際に、1、2等のアラビア数字を○で囲んだ文字を、○1、○2のように記載し、スペース、空白行は適宜詰めて記載し、また、内容が重複する主張等は適宜省略して記載する。

「7 理由
(1)請求人の主張
・・・(略)・・・
しかし、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件特許発明は特許法第29条第2項に該当せず、本件特許発明についての特許を無効とすることはできない。以下で詳述する。
(2)本件侵害訴訟における裁判所の判断
・・・(略)・・・
本件侵害訴訟において、裁判所は、上記の議論を踏まえ、公知破袋機及び文献公知破袋機の構成と本件特許発明の構成は大きく異なり、公知破袋機及び文献公知破袋機から本件特許発明を容易に想到することはできず、したがって、本件特許発明についての特許はいずれも無効事由を有しないと判断した(なお、本件侵害訴訟において、裁判所は、上記の通り、そもそも公知破袋機及び文献公知破袋機の構成と本件特許発明の構成が大きく異なることから、「請求人が請求人主張の構成を有する公知破袋機をプリテックに販売・納品した事実」の有無については、判断をするまでもなく無効事由の不存在を判断できるとして、判断を留保している。)。本件侵害訴訟においては、本件特許が有効である(及び請求人が本件特許を侵害している)旨の上記裁判所の判断を踏まえ、現在、損害論に関する議論(請求人による売上関連資料の提出等)が行われている。
(3)「請求人が請求人主張の構成を有する公知破袋機をプリテックに販売・納品した事実」は存在しない。
・・・(略)・・・
エ 小括
以上の通り、公知破袋機については、実物が存在せず、また、完成した図面も存在しない。また、請求人が提出した陳述書はいずれも客観的な裏付けがなく、信用性が皆無である。したがって、請求人主張の構成を有する公知破袋機をプリテックに販売・納品した事実は認められない。
(4)本件特許発明は公知破袋機から容易想到でない
ア 本件特許発明と公知破袋機との相違点
仮に、公知破袋機が請求人のとおり甲3の添付資料1及び2の構成を有していた場合、公知破袋機と本件特許発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
○1 本件特許発明の構成要件Cに関し、本件特許発明においては、固定側刃物が破袋室の「対向壁面」より板状刃物を凸設配置したものであるのに対し、公知破袋機においては、一方の固定側刃物が破袋室の「天井」より板状刃物を凸設配置したものである点て異なる(以下、かかる相違点を「相違点○1」という。)。
○2 本件請求項4の発明の構成要件Iに関し、本件請求項4の発明においては、固定側刃物が待避可能であるのに対し、公知破袋機においては、固定側刃物が固定されている点で異なる(以下、かかる相違点を「相違点○2」という。)。
イ 相違点○1について
・・・(略)・・
(エ)小括
以上のとおり、本件特許発明における固定側刃物の取付位置には、公知破袋機における固定側刃物の取付位置にはない技術的意義が多くある。よって、相違点○1を単なる設計事項ということはできない。
ウ 相違点○2について
・・・(略)・・・
(ウ)小括
・・・(略)・・・作用効果の相違を生ぜしめる相違点○2を単なる設計事項ということはできない。
エ 技術的思想の相違
本件特許発明と公知破袋機とは、技術的思想が全く異なる。
・・・(略)・・・
オ 小括
以上のとおり、本件特許発明と公知破袋機は、構成も技術的思想も全く異なる。よって、本件特許発明は、公知破袋機に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(5)本件特許発明は文献公知破袋機から容易想到でない
ア 本件特許発明と文献公知破袋機との相違点
文献公知破袋機と本件特許発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
○1 本件特許発明の構成要件Cに関し、本件特許発明においては、破袋室の回転体を軸支する対向壁面でない方の対向壁面が「平行」であるのに対し、文献公知破袋機においては、破袋室の固定側刃物が破袋室の回転体を軸支する対向壁面でない方の対向壁面が下方に向けて大きく内側に傾斜している点で異なる(以下、かかる相違点を「相違点文○1」という。)。
○2 本件特許発明の構成要件Cに関し、本件特許発明においては、固定側刃物の形状が「板厚みを水平に凸設配置された垂直板(からなる複数の板状刃物)」であるのに対し、文献公知破袋機においては、請求人が固定側刃物に相当すると主張する三角形リブの形状が不明(甲9【請求項3】【0005】【0008】によれば「横断面逆V形」であることは明らかであるが、具体的な形状は不明である。)であり「板厚みを水平に凸設配置された垂直板(からなる複数の板状刃物)」とは認められない点で異なる(以下、かかる相違点を「相違点文○2」という。)。
・・・(略)・・・
○3 本件特許発明の構成要件Cに関し、本件特許発明においては固定側刃物が存在するのに対し、文献公知破袋機においては固定側刃物が存在しない点で異なる(以下、かかる相違点を「相違点文○3」という。)。
・・・(略)・・・
○4 本件特許発明の構成要件Dに関し、本件特許発明においては、回転体に対し「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う」駆動制御手段を有するのに対し、文献公知破袋機においては、回転体に対し「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う」駆動制御手段を有していない(甲9には「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う」駆動制御手段が開示されていない)点で異なる(以下、かかる相違点を「相違点文○4」という。)。
・・・(略)・・・
イ 相違点文○1について
・・・(略)・・・一軸破袋機において、破袋室の回転体を軸支する対向壁面ではない方の対向壁面が「平行」か「大きく内側に傾斜している」かは、実質的な相違点であり、単なる設計事項ということはできない。
・・・(略)・・・
ウ 相違点文○2について
・・・(略)・・・
以上の通り、文献公知破袋機において、横断面逆V形の三角形リブと「板厚みを水平に凸設配置された垂直板」とは効果・役割が全く異なる。よって、相違点文○2は実質的な相違点であり、単なる設計事項ということはできない。
エ 相違点文○3について
・・・(略)・・・破袋機が、破袋作用を奏する固定側刃物を有するか、破袋作用を奏さず可動側刃物の回転軌跡内に袋体を寄せる作用を奏する三角形リブを有するかは、破袋方法に影響を生じる実質的な相違点であり、単なる設計事項ということはできない。
オ 相違点文○4について
・・・(略)・・・したがって、回転体に対し「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う」駆動制御手段を有するか否かは、発明の作用効果や技術的思想をも異ならせる実質的な相違点であり、単なる設計事項ということはできない。
・・・(略)・・・
ク 技術的思想の相違
本件特許発明と文献公知破袋機とは、上記の通り、技術的思想が全く異なる。・・・(略)・・・
ケ 小括
以上の通りであるから、本件特許発明は、文献公知破袋機に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(6)結論
以上のとおり、本件特許発明は、公知破袋機又は文献公知破袋機に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、本件特許に無効事由はない。」

3-2 口頭審理陳述要領書における主張の概要
被請求人の主張の概要は次のとおりである(口頭審理陳述要領書第2ページ第8行ないし第9ページ第16行を参照。)。

「5. 陳述の要領
(1) 本件侵害訴訟における裁判所の判断
・・・(略)・・・
(2) 本件特許発明の回転制御と公知破袋機の回転体Cの回転制御とは相違しないこと
・・・(略)・・・
エ 小括
以上より、本件特許発明の回転制御と公知破袋機の回転制御とは相違しない。
(3) 本件手続補正書1の主張に対する反論
・・・(略)・・・
イ 「破袋」と「破砕」について
・・・(略)・・・破袋機は、袋に入ったゴミの分別等のために袋の中身を破砕せずに袋のみを破袋して袋の中身を取り出す機械であるから、投入した物を全て破砕する破砕機とは、使用目的も技術的思想も全く異なる。両者は、同一技術分野に属するものではない。
ウ 固定側刃物の取付位置
・・・(略)・・・
しかし、答弁書・11頁、12頁に記載のとおり、固定側刃物を破袋室の天井より凸設配置するか、対向壁面より凸設配置するかは、作用効果を異ならしめる差異であり、設計事項ということはできない。」

3-3 上申書における主張の概要
被請求人の主張の概要は次のとおりである(上申書第2ページ第8行ないし第15ページ第1行を参照。)。

「5. 上申の内容
(1)公知破袋機に係る無効理由について
・・・(略)・・・
イ 公知破袋機の不存在
(ア)証言、報告書及び陳述書の信用性等
i 堀井厚央二の証言、報告書(甲3)及び陳述書(甲6)の信用性
(i)報告書(甲3)
・・・(略)・・・なお、請求人は、本無効審判において、堀井の報告書(甲3)の原本を提出しておらず、被請求人はその成立の真正を争う。したがって、そもそも、堀井の報告書(甲3)は、証拠として採用されるべきではない。
(ii)陳述書(甲6)
・・・(略)・・・なお、請求人は、本無効審判において、堀井の陳述書(甲6)の原本を提出しておらず、被請求人はその成立の真正を争う。したがって、そもそも、堀井の陳述書(甲6)は、証拠として採用されるべきではない。
(iii)堀井証言
堀井証言は、結局のところ、請求人の代理人が作成した堀井の陳述書 (甲6)の記載内容を繰り返したものに過ぎず、堀井は、同陳述書の記載内容以上に具体的・詳細な事実を証言したものではなく、むしろ、同陳述書には比較的詳細に記載されているプリテックヘの販売後に改造により公知破袋機を製作した経緯等について、具体的な事実関係を一切証言していない。また、堀井証言は、公知破袋機の構成及び販売・納品時期等について、客観的・物的証拠に全く裏付けられていない(答弁書・4頁以下)。
一般に、証言の信用性は、客観的・物的証拠の存在、証言内容の具体性・迫真性等により認められるものであるところ、堀井証言には、そのいずれも欠けている。したがって、堀井証言に信用性は認められない。
加えて、上記のとおり、堀井証言によれば、堀井は、平成16年4月2日にプリテックに公知破袋機を納品した当時に、堀井の陳述書(甲6)に別紙として添付されている各図面(別紙e 、別紙i等)を見た記憶がないということであり、また、各図面の作成状況、記載内容(作成年月日の欠如、「主要諸元」の記載と図面との不一致がいかなる理由で生じたのか等)についても不明であるということであるから、堀井の陳述書(甲6)の別紙iに記載の構成を有する公知破袋機を平成16年4月2日にプリテックに納品した旨の堀井証言に信用性がないことは明らかである。
(iv)写真撮影報告書(甲25)
写真撮影報告書(甲25)に収載された写真は、いずれも、本無効審判請求後に撮影されたものであり、そもそも、公知破袋機の存在を立証する証拠として適当なものではない。・・・(略)・・・
ii 海野優の陳述書(甲4)の信用性
・・・(略)・・・なお、請求人は、本無効審判において、海野の陳述書(甲4)の原本を提出しておらず、被請求人はその成立の真正を争う。したがって、そもそも、海野の陳述書(甲4)は、証拠として採用されるべきではない。
iii 近藤克彦の陳述書(甲5)の信用性
・・・(略)・・・なお、請求人は、本無効審判において、近藤の陳述書(甲5)の原本を提出しておらず、被請求人はその成立の真正を争う。したがって、そもそも、近藤の陳述書(甲5)は、証拠として採用されるべきではない。
(イ)図面
・・・(略)・・・
(ウ)DVD(甲26の1)
・・・(略)・・・以上より、DVD(甲26の1)は、平成16年4月2日にプリテックに納入された公知破袋機を撮影した映像を収録したものとは認められない。
(エ)小括
以上のとおり、請求人主張の構成を有する公知破袋機をプリテックに販売・納品したとの事実については、それを基礎づける物的・客観的証拠が一切存在せず、信用性のある人的証拠も存在しない。したがって、請求人主張の構成を有する公知破袋機をプリテックに販売・納品したとの事実は認められない。
ウ 構成の相違
・・・(略)・・・
進歩性
・・・(略)・・・
オ 小括
以上のとおり、本件特許発明と公知破袋機とには、複数の相違点が存在し、かつ、相違点を設計事項であるということはできない。したがって、本件特許発明には新規性が認められる。
(2)文献公知破袋機に係る無効理由について
・・・(略)・・・
(3)結論
・・・(略)・・・」

第5 当審の判断
1 甲第1ないし26号証及び証人の陳述
(1)甲第1号証
甲第1号証は、本件特許の特許原簿である。

(2)甲第2号証
甲第2号証は、本件特許の特許公報である。

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載
甲第3号証は、株式会社大原鉄工所 営業部環境営業課課長 堀井厚央二が、2012年10月22日付けで作成した「株式会社プリテックヘ販売した破袋機の報告書」であり、添付資料1及び2とともに概ね次の記載がある。

「1 被告が2004年(平成16年)4月に株式会社プリテックに納品した破袋機(以下、「公知破袋機」という。)は、添付資料1及び2に示すとおり、次の構成です(なお、符号Hは閉塞板)。この公知破袋機で破袋された残渣は下方に落下し、例えば適宜な搬送機構により搬送されます。
m 直方体状の枠体Aからなる破袋室Bを有する。
n 破袋室Bの一方の対向壁面間に水平に軸支された1本の回転体Cを有する。
o この回転体Cの表面には、回転体Cの回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物が設けられ、この板状刃物が回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物Dである。
p この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら両方の板状刃物が固定側刃物Fである。
q 夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段を有する。
r 可動側と固定側の複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体Cの正逆転駆動に伴って固定側刃物F間を可動刃物Dが通過し、所定間隔で噛合する固定側刃物Fと可動側刃物D間で袋体を破袋する。
s 以上の構造を有する破袋機。
2 本件請求項1の発明と公知破袋機との相違は次の2点のみです。
<相違点1>
本件請求項1の発明の固定側刃物は、破袋室の対向壁面に設けられているのに対し、公知破袋機の固定側刃物Fは、片側は非回転体Eに設けられ、もう一方の側は枠体Aに付設した取付板Gから斜め下方に向けて凸設されている。
<相違点2>
本件請求項1の発明の回転体の回転制御は「正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御」であるのに対し、公知破袋機の回転体Cの回転制御は「単なる正逆転駆動を行なう駆動制御」である。」(第2ページ第1行ないし第3ページ第2行)

イ 文書の成立
被請求人は、請求人が本件審判において原本を提出していないことを述べて、甲第3号証の文書の成立の真正を争うが、口頭審理において、甲第3号証として証拠の申出があった文書名の文書を確認しており、手続上の原本を確認した。そして、甲第3号証は作成者の記名・押印がある文書であるので、民事訴訟法第228条第4項の規定により、甲第3号証は、真正に成立したものと推定される。加えて、甲第3号証は、作成者名が堀井厚央二となっており、証人尋問において、証人(堀井厚央二)が、自らが作成した報告書と同じものである旨陳述している。

(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載
甲第4号証は、株式会社プリテック エコタウンセンター 常務取締役 エコタウンセンター長 海野優が、2012年12月17日付けで作成した陳述書であり、別紙aないしjとともに概ね次の記載がある。

「1 私は、・・・(略)・・・株式会社プリテック常務取締役エコタウンセンター長の海野優と申します。
・・・(略)・・・
このたび、大原鉄工所から、以前当社が大原鉄工所から購入した小袋用破袋機(1軸回転型破袋機)について、購入時の状況などの説明を求められましたので、以下に陳述致します。
2 (1)・・・(略)・・・別紙dの破袋機の製作に着手していただきました。
・・・(略)・・・
(2) 上記別紙dの破袋機は、2004年(平成16年)1月12日に納品して頂きましたが、回転軸への巻き付きや、回転軸が逆転した際に袋が破袋されずに機外へ排出されたため、数回の修正を経て別紙fの構造のもので同年4月2日に正式に納品を受けました。
この別紙fの破袋機は、回転軸が正・逆回転の制御動作がなされているもので、どちらの回転時でも効率よく破袋が出来る構造となっており、また、正・逆回転を繰り返すことで回転軸への巻き付きも低減されています。・・・(略)・・・
(3)・・・(略)・・・
(4)この破袋機は、当センターに集まるビニール袋入りの廃プラスチックごみを効率的に処理するためのもので、その処理は特に秘密にするようなことではなく、したがって、当センターへの見学者が見ることが出来る施設内に設置して、上記の通り72ヶ月間使用しておりました。」(第1ページ第2行ないし第2ページ第19行)

イ 文書の成立
被請求人は、請求人が本件審判において原本を提出していないことを述べて、甲第4号証の文書の成立の真正を争うが、口頭審理において、甲第4号証として証拠の申出があった文書名の文書を確認しており、手続上の原本を確認した。そして、甲第4号証は作成者の記名・押印がある文書であるので、民事訴訟法第228条第4項の規定により、甲第4号証は、真正に成立したものと推定される。加えて、甲第4号証は、作成者名が海野優となっており、証人尋問において、証人(堀井厚央二)は、海野優が中身について異議なしということで、文書に捺印したものである旨陳述している。

(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載
甲第5号証は、福井環境事業株式会社 二日市リサイクルセンター 近藤克彦が、2012年12月14日付けで作成した陳述書であり、別紙aないしdとともに概ね次の記載がある。

「1 私は、・・・(略)・・・福井環境事業株式会社二日市リサイクルセンターに勤務しておよそ9年になる近藤克彦と申します。
今回、株式会社大原鉄工所(以下、「大原鉄工所」という。)から、当社が大原鉄工所から試験的に導入した別紙aの破袋機について当時の状況について尋ねられましたので、以下のとおり陳述致します。
・・・(略)・・・
2 2004年(平成16年)4月頃、当社は小袋用破袋機の導入を検討しており、その際、大原鉄工所の営業担当である堀井厚央二氏から、(株)プリテック(以下、「プリテック」という。)に納品している破袋機を是非、検討して欲しいとの申し入れがあり、プリテックが導入した破袋機を撮影したビデオ(乙8)が送られてきました(別紙b参照)。
最終的に・・・(略)・・・2005年(平成17年)1月15日に別紙aの破袋機を当センターに設置して頂きました。なお、別紙aの破袋機は図面のとおり、両サイドに固定刃があり、中央の回転軸が正転逆転を繰り返す制御となっており、どちらの回転方向でも破袋できる構造となっています。
・・・(略)・・・
この別紙aの破袋機は、特に秘密にするようなものではないため、センター内への見学者など誰もが見れる場所に設置し、上記のとおりおよそ12ヶ月間使用しておりました。
3 なお、実は私は、この別紙aの破袋機の作動中に右手を負傷し、労災申請をしたため(別紙d参照)、別紙aの破袋機のことはよく覚えているのです。」(第1ページ第2行ないし第2ページ第5行)

イ 文書の成立
被請求人は、請求人が本件審判において原本を提出していないことを述べて、甲第5号証の文書の成立の真正を争うが、口頭審理において、甲第5号証として証拠の申出があった文書名の文書を確認しており、手続上の原本を確認した。そして、甲第5号証は作成者の記名・押印がある文書であるので、民事訴訟法第228条第4項の規定により、甲第5号証は、真正に成立したものと推定される。加えて、甲第5号証は、作成者名が近藤克彦となっており、証人尋問において、証人(堀井厚央二)は、近藤克彦に書いてもらったものである旨陳述している。

(6)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載
甲第6号証は、株式会社大原鉄工所 営業部環境営業課課長 堀井厚央二が、2012年12月5日付けで作成した陳述書であり、別紙1、2及びaないしyとともに概ね次の記載がある。

「1 私は、・・・(略)・・・株式会社大原鉄工所(以下、「当社」という。)営業部環境営業課課長の堀井厚央二と申します。
当社に勤務しておよそ22年になり、本件訴訟の対象となっている破袋機の営業をしておよそ9年となります。
2 このたび、大阪エヌ・イー・ティー・マシナリー株式会社(以下、「大阪NED」という。)が当社に対し、特許権侵害訴訟を提起してきました。
以下に本件に関し、私なりに重要と思うことを陳述させて頂きます。
(1)当社の破袋機は歴史が古く、1998年(平成10年)頃米国のBHS社と提携し、当初、別紙1の特許第2987701号に係る別紙aの破袋機(2軸回転型破袋機)を国内で製造販売しておりました。しかし、ユーザーからはもう少し処理量が少ないコンパクトな機器でなおかつ、価格をおさえられないかとの要望が2003年頃から強くなり、構造及びコストダウンを検討した結果、一軸回転型とすれば二軸回転型のOM-30型と比ベコストが約40%削減できることとなり、そこで一軸回転型破袋機の設計に着手し、当社オリジナルの破袋機を完成させました。当社オリジナルの破袋機は、少しずつ改良を加えたため、大きく分けて以下の4タイプがあります。
第1タイプの製造時期:2003年12月頃?2006年10月頃
第2タイプの製造時期:2006年7月頃?2006年8月頃
第3タイプの製造時期:2007年6月頃?2010年5月頃
第4タイプの製造時期: 2011年6月頃?現在
なお、各タイプの製造時期はこのたび正確にチェックしましたので、大阪NEDに宛てた別紙2の2 010年11月30日付け回答書(2)の記載と若干異なっています。
(2)第1タイプを最初に販売したのは2003年(平成15年)10月29日(契約日)で、販売先は株式会社プリテック(以下、「プリテック」という。)です。
私が当時の営業担当であり、プリテックの統括部長である森野弘樹氏及び本事業所の常務取締役エコタウンセンター長である海野優氏に直接会って商談を進め納入に至りました。以下に納入に至るまでの経緯を詳述させて頂きます。尚、森野氏は職場移動により現在はプリテックに在籍していません。
ア 2003年(平成15年)5月頃、プリテックの森野氏より小袋破袋機に関する問い合わせをいただく。
イ 同年5月12日に上記2軸回転型破袋機のデモ機をプリテックに持ち込み実証試験を実施する。しかしながら、客先の要求する破袋率90%以上に対し、実験結果は36?68%であり、改良を求められる(別紙b 破袋テスト結果参照)。
ウ 同年10月6日付け別紙cの御見積書(1軸回転型破袋機の図面が添付されている。)を提出する。
エ 同年10月29日付け別紙dの購買注文書(別紙cの前記御見積書に添付の図面が添付されている。)により注文をいただき、何度か仕様検討の結果、別紙eの破袋機の製作に着手する。
オ 2004年(平成16年)1月12日にプリテックヘ別紙eの破袋機を納入し、そこで試運転を実施した結果、回転軸への巻き付きや、回転軸が逆転した際にゴム製のスクレーパーから未破袋の袋が機外へ排出され破袋率が低下することなどの対策を求められる(別紙f エコタウンセンター小袋用破袋機 OM-10型 予備性能試験結果報告書を参照)。
カ 同年1月30日にプリテックの森野氏と機器の改造に関する打合せを行い、別紙gの打合覚(同年2月2日付け)のとおり改造を実施することとした。尚、この改造により正転・逆転のどちらでも破袋出来る構造(当然、回転体の両側に固定側刃物が配置される)となった(別紙h改造後の写真参照)。なお、なるべくコストをかけないという観点により、固定側刃物の一方は二軸回転型破袋機の際、回転体として使用していたものを利用し、反対側の固定側刃物はもともとある枠体を利用して製作しました。
キ その後も多少の修正を行い、最終的に別紙iの破袋機を同年4月2日に再納入し、その日、客先立会のもと性能試験を実施し(別紙j OM-10型 破袋テスト結果を参照)、正式に引き渡した。
ク なお、上記破袋機は、プリテックエコタウンセンターへの見学者等が見ることができる施設内に設置されました(別紙x参照)。
(3)・・・(略)・・・
(4)プリテックの次に、第1タイプの破袋機を販売したのは2005年(平成17年)1月15日、福井環境事業株式会社二日市リサイクルセンター(以下、「福井環境事業」という。)です。福井環境事業とは2003年(平成15年)頃から直接取引があり、廃プラスチックの圧縮梱包品(ベール品)をほぐす解砕機を採用して頂きましたが、その際、私か営業担当をしており、その時以来お付き合いをさせていただいております。
本件においても、当時、私か営業担当をしており、二日市リサイクルセンター所長の堤彰一氏と営業担当の近藤克彦氏に直接お会いして商談を進めました。以下、福井環境事業への破袋機の販売経緯について詳述させて頂きます。尚、堤氏は職場移動により現在は二日市リサイクルセンターに在籍していません。
ア 2004年(平成16年)4月頃、当時の二日市リサイクルセンター所長であった堤彰一氏から小袋用破袋機の導入を検討しているとの引き合いをいただく。
イ 同年4月6日付け別紙nの送付案内の通り、株式会社プリテックに納入した破袋機が丁度客先の要求に合っていると思い、株式会社プリテックで稼動している状況を撮影したビデオテープ(乙8)を作成し堤氏宛に送付する。
ウ 同年5月10日付け別紙oの御見積書を提出し、商談を進める。
エ 同年1 2月2 8日付け別紙pのFAXのご案内(御見積書及び設置計画図が添付されている。)を堤氏宛にFAXし、購入前提で試験的に導入することで設置工事の日程も含め商談を進める。
オ 2005年(平成17年)1月15日に既設破袋機との入替工事を実施し、引き続き試運転調整を実施した上で同年1月17日に客先に引き渡し、以後、試験的に使用していただく(別紙qの工事写真帳及び別紙rのOM-10B小型破袋機 試運転報告書を参照)。なお、この引き渡した破袋機は、センターへの見学者等が自由に見れる場所に設置された(別紙y参照)。
カ 機器設置からおよそ12ヶ月間使用したところ、客先の要求する処理量に満たなかったため採用されず、結局、機器を引き取ることとなり、使用した期間分をレンタル使用料として別紙sの御請求書に基づき精算していただく。
(5)・・・(略)・・・
3 ・・・(略)・・・
以上、私の思うことを述べさせて頂きました。」(第1ページ第2行ないし第5ページ末行)

イ 文書の成立
被請求人は、請求人が本件審判において原本を提出していないことを述べて、甲第6号証の文書の成立の真正を争うが、口頭審理において、甲第6号証として証拠の申出があった文書名の文書を確認しており、手続上の原本を確認した。そして、甲第6号証は作成者の記名・押印がある文書であるので、民事訴訟法第228条第4項の規定により、甲第6号証は、真正に成立したものと推定される。加えて、甲第6号証は、作成者名が堀井厚央二となっており、証人尋問において、証人(堀井厚央二)が、自らが書いた陳述書と同じものである旨陳述している。

(7)甲第7号証
甲第7号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第7号証には、「資源ゴミなどを詰入した詰入袋体の解袋装置」に関して、図面とともに次の記載がある。

「【請求項1】 機体の上部に資源ゴミを詰入した詰入袋体を投入する投入口を設け、この投入口の真下に回転ドラム体(大)と回転ドラム体(小)を左右対向状態に架設し、この回転ドラム体(大)の周面に所定の間隔を置いて軸方向に複数列の解袋板体を設け、この解袋板体の夫々に詰入袋体を切り込み引き裂き切断する複数個の切り込み刃を突設し、この隣同志の解袋板体の中間位置の回転ドラム体(小)の周面に、詰入袋体を支承する複数個の突出刃を突設した袋体支承板体を並設し、この袋体支承板体の突出刃の夫々の基部の前後に、投入された詰入袋体にしなやかに追従して支承する可撓支承杆体を突設し、機体の下方に資源ゴミと切断された袋体とを導出する導出口を設け、前記回転ドラム体(小)の回転を回転ドラム体(大)の回転より小さく設定して、前記詰入袋体を前記突出刃を有する所定間隔を置いて配設された前記袋体支承板体と可撓支承杆体とで支承しつつ前記解袋板体に突設して切り込み刃によってこの支承している詰入袋体を切り込み引き裂き切断して詰入袋体を解袋し得るように構成したことを特徴とする資源ゴミなどを詰入した詰入袋体の解袋装置。
【請求項2】 回転ドラム体(大)及び回転ドラム体(小)の夫々に、若しくはいずれか一方のドラム体に、ドラムの回転速度を検出するセンサを設けたことを特徴とする請求項1記載の資源ゴミなどを詰入した詰入袋体の解袋装置。」

(8)甲第8号証
甲第8号証には、「OM式 2軸回転型 破袋機」に関する記載が、写真及び図面とともにある。

(9)甲第9号証
甲第9号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第9号証には、「破袋機」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【0006】
【実施例】以下に本発明の破袋機を添付図面を参照にして詳細に説明する。図1は本発明の破袋機の図2のI-I線に沿った横断面図、図2は同破袋機の平面図、図3は同破袋機の一部切欠き側面図、図4は巻き付き紐の切断用短冊リブの説明図である。
【0007】図1乃至図3において、ごみの入った袋を切り裂く破袋機1は、上部開口をホッパー11で形成し且つ下方向にテーパを成した処理空間を形成する傾斜側板12、15を有したケーシング10と、ケーシング10の下方部において両端板16、17間で回転可能に長手方向に水平に横架された円筒ロータ20と、ロータ20の周面上に周方向に1つ軸方向に順次90°づつずらして一定間隔で複数組配列したなぎなた状破袋刃30、・・・と、ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41とチェーン等の回転力伝達機構42とから成る回転駆動装置40とから構成されており、破袋刃30が上方から回転して来る側(図1の左側)の側板12の下部13が長手方向に複数に(本実施例では6つに)区分されて各々独立して横方向に揺動可能に上縁部で側板12の上部に蝶番連結されている。各区分側板13a?13fは破袋刃30に接近可能な位置にスプリングSによって弾性付勢されており、また外側をはみ出し受け板14で囲まれている。
【0008】ケーシング10は、長手方向に設けられた取出し用ベルトコンベアC上方に底の開口10aが位置するように四隅において支持柱Pによって支持されている。端板16、17は、その外面に固定した軸受B、Bによって円筒ロータ20を軸承している。また、上記側板下部13と他方の側板15の下部には、ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる逆V断面の三角形リブ18、19が突設されている。
【0009】ロータ20は、中空の円筒体21の両端の支軸22、23の内一方の支軸22の軸受Bの外側に突出した部分に固定されたスプロケットホイール43を介して、ギアードモータ41によってチェーン42で矢印Aの方向に正転回動されるようになっている。図4に示すように破袋刃30が設けられていない周面上には、短冊状リブ25、・・・を複数等ピッチ(例えば90°間隔で)突設しており、ロータ20に巻きついたテープや紐Hを円筒体21表面から離してケーシング底開口10aから人手によってカッターを使用して切断除去(切断位置例を×で示す)しやすくなっている。また短いテープなら巻き付かないように大直径にしてある。
【0010】破袋刃30は、矢印Aの正転方向において後進上反りのなぎなた(表刀)形状を成しており、刃を鋸歯状にしてゴミ袋に対する喰い込みを良くして確実に破袋できるようにしている。ロータ20の逆回転時にも破袋できるように、刃30の後端部にも切り裂きエッジを形成してもよい。この場合、他方の側板15の下方部を、区分して弾支する構造にしてもよい。
【0011】この破袋機1の作動について、概説すると、モータ41によって矢印Aの方向に例えば毎分30?60回転のスピードでロータ20を回動し、ホッパー11から連続して大量のごみ袋Wを投入して行くと、ごみ袋は傾斜側板12、15の相互に隣接した三角形リブ18、19の谷部の破袋刃30が通過する箇所で次々となぎなた(長刀)状の破袋刃30の鋸歯によって切り裂かれて、内部のごみはケーシング底開口10aから下方のベルトコンベアC上に落下して次の選別所へ搬出されることになる。もし、ごみ袋内の、またごみ袋と共に比較的硬いプラスチック製品や木製品等が投入された場合に破袋刃30を傷めないように、それら硬い廃棄物に刃30が当たると同時にその部分の区分側板13a?13fをスプリングSに抗して押し開き、硬い廃棄物を下方に落下させる。なぎなた状の刃30は、ごみ袋やごみに対して余り攪拌せずに接線タッチで静粛に切込みを行うし、硬い物に対する衝撃も小さい。
【0012】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の破袋機に依れば、連続的に投入される大量のごみ袋を投入箇所においてすぐになぎなた状破袋刃によってほとんど攪拌すること無くほこりを舞い上げること無く効率的に静粛にスピーディにごみ袋を切り開いてケーシング底開口から落として行くことができ、また硬い物が混入して投入されても弾支された区分側板が逃げて破袋刃に無理な力がかからず、使用寿命が長く故障も少ない。また、ロータ直径を大きくしたり、ロータに短冊状リブを隔設して突設すると、テープやロープや紐も巻き付きにくく、また巻き付いても切除しやすくなる。」(段落【0006】ないし【0012】)

(10)甲第10号証
甲第10号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第10号証には、「切粉細断装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【0006】
【実施例】
以下本案の実施例について説明する。
本装置は第1図に示すように、フレームA(1)とフレームB(2)で囲まれた鉄枠の中心にスプラインを施したシャフト(7)をブッシュ(8)によりフレームA(1)、フレームB(2)に支持してある。シャフト(7)には回転刃A(3)、回転刃B(4)を交互に配列しシャフト(7)の一端をチエーンカップリング(8)によりギヤーモーター(11)の軸に直結させ、フレームB(2)には固定刃A(5)、固定刃B(6)をとりつけてある。鉄枠の上にはホッパー(13)が取り付けてある。
上記細断装置は、ベースプレート(16)に固定してあり、別途設けた架台(12)の上にベースプレート(16)を固定し、前記細断装置の下にパレット(14)を設置してある。切粉がホッパー(13)に投入されると、回転刃A(3)及び、回転刃B(4)が固定刃A(5)とかみ合って切粉を細断する。
ある一定時間たつと、自動的に逆転し回転刃A(3)、回転刃B(4)がかみ合って切粉を細断する。この正転、逆転を繰り返すのは一方のみの回転では切粉が溜まり易いのでそれを防ぐ為である。スペーサー(15)も溜まりを防ぐために取り付けてある。」(段落【0006】)

(11)甲第11号証
甲第11号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第11号証には、「包袋切断機」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【0015】該包袋切断機1は図3に示す如くゴミ処理施設などに設けられたベルトコンベアB上に設置される。
【0016】先ず、プラスチックの洗剤の空容器や金属の空缶などの焼却処理しないゴミの入った大量のゴミ袋Aをホッパー本体部2から四方に拡開したホッパーの拡開枠5上に山積み投入する。そして下方のホッパー本体部2の傾斜板2aと爪歯回転手段4との間に入ったゴミ袋Aはノコ歯状の掛止板3に引っ掛かり、矢印に示す如く回転してくる爪歯板4aにより袋が引き裂かれ、破れた袋から空容器や空缶のゴミCが排出口2dから下のベルトコンベアB上に落下し、又破れた袋や袋の切片も該ゴミCと一緒に落下する。
【0017】前記矢印の時計方向に爪歯回転手段4が所定角度例えば300°回転した後動力源7により反時計方向に300°逆回転することを繰り返し、これに伴って所定角間をゆっくりと往復動する爪歯板4aによって切り裂かれたゴミ袋や切片が爪歯回転手段4にからみつくことはなく、連続して下方のベルトBに落下する。
【0018】このように爪歯回転手段4の往復動により排出口2dから落下した空容器などのゴミと切り裂かれたゴミ袋や切片はベルトコンベアBにより次の分別工程へ運ばれて風力や人手により分別される。」(段落【0015】ないし【0018】)

(12)甲第12号証
甲第12号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第12号証には、「破砕機および破砕方法」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【0040】(作 用)図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係る破砕機Aの作用を説明する。(1)処理容器1に上部の投入口10から、廃材等の被処理物を所要量投入する。投入された被処理物は、処理容器1内の回転ドラム2の上部にたまる。なお、処理容器1は、一方向へ長い構造で、回転ドラム2もそれに対応して軸方向へ長い構造であるので、被処理物が建設廃材の柱や梁等の長いものであっても、前処理などする必要はなく、そのまま投入することができる。
【0041】(2)油圧制御ユニット4を操作して油圧モータユニット3を駆動し、回転ドラム2を一方向へ回転させる。回転ドラム2の回転によって、移動刃体21が回転移動し、被処理物は各移動刃体21によって処理容器1の一方の側面板11(または側面板12)側へ寄せられる。
【0042】(3)被処理物は、回転ドラム2が更に回転することによって、その全長にわたって各移動刃体21と各固定刃体16で噛み込まれ、表面側から削られ、または破砕されて細片化される。各移動刃体21は回転ドラム2の外周面に螺旋状に設けられているので、各移動刃体21は固定刃体16との間で被処理物を噛み込むときに一度に噛み込むことがなく、順次噛み込んでいくので、破砕処理に要する動力すなわち回転ドラム2を回転させるのに要する動力を平均化することができる。これにより、特に駆動系に無理な力が作用せず、機械の破損を防止することができる。なお、被処理物の噛み込みによる負荷が大きすぎて回転ドラム2の回転が停止した場合は、逆方向に回転させれば、上記と同様に破砕処理ができる。つまり、回転ドラム2の回転方向の制御は、一方向に回転しているときに過負荷によって停止したら、逆方向に回転させるという、ごく単純な制御でよい。
【0043】(4)被処理物が細片化されたものは、処理容器1下部の斜面板111、121を通り、作動しているベルトコンベヤ5の搬送部に落ち、処理容器1の外部へ送り出される。このように、被処理物の一端側から削るのではなく、長手方向の全体を削っていくので、被処理物が建築物の柱や梁等のように長尺で太いものであっても、短時間での破砕処理が可能になる。また、移動刃体21のタイミングをずらしながら固定刃体16と協働させることにより被処理物を削って細片化するので、被処理物は各移動刃体21と固定刃体16によって小さな範囲で削られることになり、より細かな細片化ができる。」(段落【0040】ないし【0043】)

(13)甲第13号証
甲第13号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第13号証には、「破袋機」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【請求項1】 廃棄物を収容した袋が上方から投入され且つ下方に破袋後の中身と裂かれた袋とを落とすように上下が開放された箱形フレーム内に回転可能に軸承されたロータを、複数の刃付き大径部と複数の刃付き小径部とを交互に軸方向に配列して構成し、回転中に上記ロータの大径部の各刃先に隙間を取って接近する傾斜板付きの凹部と小径部の各刃先に隙間を取って接近する凸部とを交互に配列した固定刃を上記大径部及び小径部が上から下に回転してくる側において上記箱形フレーム内に取り付けて成ることを特徴とする破袋機。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(14)甲第14号証
甲第14号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第14号証には、「切粉細断装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【請求項1】 フレームA(1)とフレームB(2)で囲まれた鉄板の枠に互いに平行に、セットされたスプラインを施したシャフトA(7)及びシャフトB(8)を、フレームA(1)に支持しシャフトA(7)及びシャフトB(8)の各々に両刃を備えた回転刃A(5)、回転刃B(6)を交互に配列しシャフトA(7)の一端を、チエーンカップリング(10)によりギヤーモーター(13)の軸に直結させ、シャフトA(7)、シャフトB(8)の他の一端にはギヤー(17)で連結し、フレームB(2)には固定刃A(3)を固定し、中央に固定刃B(4)を取り付け、フレームA(1)の内側にガードプレート(9)を張りつけた鉄枠の上にホッパー(15)を固定し、別途設けた架台(14)の中央に、前記切粉細断装置の下部にパレット(16)を設置したことを特徴とする切粉細断装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)

(15)甲第15号証
甲第15号証は、原出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物であって、甲第15号証には、「生ゴミ処理装置の攪拌爪配列構造」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。

「【0029】しかも、生ゴミ処理槽30の前壁30c と後壁30d のそれぞれ中途部には、図3及び図5に示すように、左右幅方向に間隔を開けて9個の板状の第1?第9受刃52,53,54,55,56,57,58,59,60を各撹拌爪の回転軌跡と平行させて突設しており、各受刃は、第1?第10撹拌爪の先端回転軌跡の間に近接させて配置している。」(段落【0029】)

(16)甲第16ないし18及び23号証
甲第16ないし18及び23号証は、請求人と被請求人との間で行われている訴訟(平成24年(ワ)第6435号)において、請求人が提出した準備書面の写しである。

(17)甲第19ないし22及び24号証
甲第19ないし22及び24号証は、請求人と被請求人との間で行われている訴訟(平成24年(ワ)第6435号)において、被請求人が提出した準備書面の写しである。

(18)甲第25号証
甲第25号証は、株式会社大原鉄工所 営業部環境営業II課課長 堀井厚央二が、2014年9月16日付けで作成した「写真撮影報告書」であり、写真○1ないし○9とともに概ね次の記載がある(なお、○1等は、アラビア数字の1等を○で囲んだ文字である。)。

「1 私は、本件(無効2014-800032号)の請求人株式会社大原鉄工所(以下、「当社」という。)の営業部環境営業II課課長堀井厚央二と申します。
先日、本件担当の吉井剛弁理士とともに、株式会社プリテックエコタウンセンターへ行き、常務取締役エコタウンセンター長の海野優氏とお会いして参りました。
株式会社プリテックのエコタウンセンターは富山県富山市のリサイクル関係の企業が集合しているエコタウン産業団地内にあります。
私は、当社が販売した破袋機の営業、据え付け、改良などのために株式会社プリテックのエコタウンセンターを何度も訪れていますが、今回、本件担当の吉井剛弁理士の希望もあり、当時上記破袋機が据え付けられていた場所の再確認のため、エコタウンセンターを訪問致しました。
2 写真○1、○2、○3はエコタウンセンターの建物を外から撮影したもので、エコタウンセンター内にあるゴミ処理スペース(写真○2、○3で入口が見えます。)には破袋機(被請求人会社製)や種々の機械が設置されており、誰もがこのゴミ処理スペースに入ることができます。
具体的には、ひっきりなしにゴミを積んだトラックがこのゴミ処理スペース内に入ってきてゴミを置き、ゴミは分別処理されています(写真○4)。
また、写真○5、○6のようにエコタウンセンターにはガラス張りの見学室が用意されており、ゴミ処理スペース内はこのガラス張りの見学室からも見ることができます。私が上記破袋機の据え付けをしていた時などにおいても多くの見学者がきておりました。なお、富山市エコタウンのHPからエコタウン産業団地内の見学予約が可能です。
ところで、今回、訪問して分かったのですが、写真○7、○8、○9に示すように、当時当社が納品した破袋機の制御盤が残っておりました(破袋機そのものはありませんでした。)。後にも先にも当社が株式会社プリテックヘ納めた破袋機は甲3の破袋機1台限りです。」(第2ページ第1ないし末行)

(19)甲第26号証の1及び2
甲第26号証の1は、甲第3号証の第3ページ(4)イに乙8として示されたビデオテープの動画をコピーしたDVDと請求人が主張するDVDであり、甲第26号証の2は、上記ビデオテープの外観を撮影した写真と請求人が主張する写真の写しである。

(20)証人の陳述
証人の陳述は、第1回口頭審理及び証拠調べ調書に添付したDVD-R1枚のとおりである。

2 無効理由1について
(1)発明A
甲第3ないし6号証及び証人の陳述を整理すると、請求人が株式会社プリテックへ2004年4月2日に納品したと主張する破袋機に係る発明(以下、「発明A」という。)は、次のとおりである。

「直方体状の枠体Aからなる破袋室Bと、破袋室Bの一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体Cの表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物Dと、この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら非回転体E及び回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から凸設された板状刃物が固定側刃物Fであり、夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段とを有し、可動側と固定側の複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体Cの正逆転駆動に伴って固定側刃物F間を可動刃物Dが通過し、所定間隔で噛合する固定側刃物Fと可動側刃物D間で袋体を破袋する破袋機。」

(2)発明Aからの想到容易性
ア 対比
事案に鑑み、発明Aの公然実施性・公知性を判断するに先立ち、本件特許発明1が発明Aから当業者が容易に発明をすることができたかどうかを判断する。
本件特許発明1と発明Aを対比する。

発明Aにおける「直方体状の枠体A」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1の発明における「矩形枠体」に相当し、以下、同様に、「破袋室B」は「破袋室」に、「回転体C」は「回転体」に、「回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物D」は「回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物」に、「固定側刃物F間を可動刃物Dが通過し、所定間隔で噛合する固定側刃物Fと可動側刃物D間で袋体を破袋する」は「固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する」に、それぞれ、相当する。
また、発明Aにおける「この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら非回転体E及び回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から凸設された板状刃物が固定側刃物Fであり」 は、本件特許発明1における「破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」と、「板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」という限りにおいて、一致する。
さらに、発明Aにおける「夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段」は、本件特許発明1における「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」と、「回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段」という限りにおいて、一致し、同様に、発明Aにおける「回転体Cの正逆転駆動に伴って」は、本件特許発明1における「回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って」と、「回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って」という限りにおいて、一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「矩形枠体からなる破袋室と、破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と、板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物と、回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し、可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する破袋機。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点1>
「板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」に関して、本件特許発明1においては、「破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」であるのに対し、発明Aにおいては、「この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら非回転体E及び回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から凸設された板状刃物が固定側刃物Fであり」である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段」及び「回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って」に関して、本件特許発明1においては、「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」及び「回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って」であるのに対し、発明Aにおいては、「夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段」及び「回転体Cの正逆転駆動に伴って」である点(以下、「相違点2」という。)。

イ 判断
そこで、相違点1及び2について判断する。

(ア)相違点1について
本件特許発明1において、「破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」は、破袋室の上方開口部を広くとることが可能となる、破袋室に投下された袋体を可動側刃物の両側で交互にかつ連続して効率良く破袋することができる及び袋体を十分に上下動させ、ブリッジ現象の発生を防止することができる等の効果を奏するものである。
なお、請求人は、審判事件弁駁書において、上記効果は、固定側刃物及び回転体が開口部から下方へどの程度の距離の位置にあるかが特定されない限り、主張できる効果ではない旨主張する(審判事件弁駁書第6ページ第9ないし24行を参照。)が、上記効果は、固定側刃物及び回転体が、開口部から下方にあれば奏される効果であり、距離を特定する必要はないので、請求人のこの主張は採用できない。
他方、発明Aにおいて、「回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設された」「固定側刃物F」は、甲第6号証の別紙gの「○2 反転時のこぼれ防止の為、ゴム製スクレーパから固定刃に入替える。」という記載によると、反転時のこぼれ防止のためにゴム製スクレーパから入れ替えたものであり、「回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から」凸設された「固定側刃物F」を水平から凸設するようにする理由はない。
また、甲第9ないし15号証にも、発明Aにおいて、「回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から」凸設された「固定側刃物F」を水平から凸設することを示唆する記載はない。
したがって、発明Aにおいて、「この回転体Cと平行にして破袋室Bの一方の対向壁面間には1本の非回転体Eが設けられ、この非回転体Eには板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が凸設され、更に、回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から板厚みを水平に垂直板からなる複数の板状刃物が下方に向けて凸設され、これら非回転体E及び回転体Cの非回転体E側と反対側斜め上方から凸設された板状刃物が固定側刃物Fであり」 を「破袋室の他方の平行な対向壁面より板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」とすることは、甲第9号証ないし甲第15号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(イ)相違点2について
本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」について、請求人は、「公知破袋機の「所定時間正転し、所定時間逆転するというタイマー等により行う通常の制御」と、本件特許請求項1の「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、その構成が全く異なる」(平成26年6月9日付け手続補正書の第4ページ下から2行ないし第5ページ第2行)、「本件特許請求項1の「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行なう駆動制御手段」という文言は、「正・逆転パターン」とは何か、また、「繰り返し」とは何か、などの疑義があり、明確にその技術的意義を特定することが出来ない。」(平成26年6月9日付け手続補正書の第5ページ第3ないし6行)及び「しかし、クレームの「正・逆転パターンの繰り返し駆動」に「正・逆転駆動」は含まれないと考えます。
なぜなら、本件特許明細書(甲2)の段落番号【0011】に「回転ではなく正・逆転パターンの繰り返し駆動」という記載がありますが、出願当初は「回転ではなく揺動駆動」と記載されていたのを被請求人が「回転ではなく正・逆パターンの繰り返し駆動」と補正しました。したがって、「揺動駆動」に「正・逆転駆動」が含まれると、【0011】は「回転でなく正・逆転駆動」となる訳ですが、「正・逆転駆動」には何回転か正転し、その後何回転か逆転することが当然含まれていますから、「回転でなく正・逆転駆動」という表現は、明らかにおかしな表現となります。」(平成26年10月3日付け上申書の第3ページ第15ないし25行)と主張している。
また、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」という発明特定事項は、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)には記載されておらず、原出願の平成20年10月31日付けの手続補正によって、特許請求の範囲の請求項1ないし3の「揺動回転駆動」という記載及び明細書の段落【0010】の「揺動駆動」という記載を「正・逆転パターンの繰り返し駆動」と補正することにより、加えられたものであるが、「正・逆転パターンの繰り返し駆動」と「揺動回転駆動」が同じ意味であるのかどうかは明確でない。
さらに、本件特許発明の属する技術分野において、原出願の出願時に、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」という発明特定事項が、どのようなものを指すのかが技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」が、どのようなものか一義的に明確に理解することができないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌する。
そして、本件特許明細書の「また、この発明によると、破袋室上方のホッパー内に積み上げられた袋体は回転体が正・逆転パターンの繰り返し駆動する際に可動側刃物により押し上げられるため、袋体のブリッジ現象の発生を防止することができ、1つの回転体を正・逆転パターンの繰り返し駆動させる構成によって、破袋後の袋破片が回転体、固定側刃物に絡みつくことがない。」(段落【0017】)、「かかる板状刃物24を採用した構成からなる、本発明による破袋機1の作用を説明すると、図6Aに示すように、正・逆転パターンの繰り返し駆動される可動側刃物10によりワークたる袋体を上方向に押し上げる作用が働き、該ホッパー3内で袋体のブリッジを防止することができる。」(段落【0034】)及び「図8と図9に示す装置の破袋機1に図4、5の構成を採用し組み立てた構成となし、プラスチック類を収容した袋体を想定して、右に180度、左に180度のパターン1と右に360度、左に360度のパターン2を交互に繰り返す正・逆転パターンの繰り返し駆動制御をおこない、可動側刃物の周速度が35?70m/分となるように駆動用インバーターモータ出力を選定したところ、平均60m^(3)/hrの処理能力を有することが分かった。」(段落【0048】)という記載によると、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、「ホッパー3内で袋体のブリッジを防止する」ような「正・逆転」の「パターン」の「繰り返し駆動」である。なお、このように解釈しないと、原出願当初明細書等における【請求項1】ないし【請求項3】の「回転体を揺動回転駆動する駆動制御手段」、段落【0010】の「前記刃物を回転でなく揺動駆動することにより」、段落【0013】の「回転体を正転・逆転の揺動駆動する駆動制御手段とを有し」及び段落【0032】の「図4Aに示すように、揺動回転駆動される可動側刃物10によりワークたる袋体を上方向に押し上げる作用が働き、該ホッパー3内で袋体のブリッジを防止することができる。」等の原出願当初明細書等の記載内容と整合しないことになる。
他方、甲第4号証及び甲第6号証の記載並びに証人の陳述によると、発明Aにおける「正逆転駆動」は、破袋した袋の回転軸への巻き付けを低減するためのものであり、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」と発明Aにおける「正逆転駆動」は技術的意義が全く異なるものである。
また、甲第4号証及び甲第6号証の記載並びに証人の陳述によると、発明Aにおける「正逆転駆動」において、正転、逆転はどちらも通常60秒であり、0.1秒単位で設定可能であるとしても、ブレーキがついてないので、5秒程度の短い時間での正逆転の運転はできないことから、発明Aにおいては、180度や360度のようなパターンで正逆転を繰り返すことはできないというべきである(甲第6号証の別紙fの第3ページの「3.試験方法」によると、発明Aの元となる破袋機の歯回転数は25?30回転/minであり、仮に歯回転数が30回転/minであるとすると、発明Aにおいて、180度で正転・逆転させるには、1.0秒で、正・逆転させなければならないが、通常60秒で運転する以上、そのような短い時間で正転・逆転を行うことは想定できないし、ブレーキが付いてない以上、不可能である。)。
したがって、発明Aにおいて、本件特許発明1のように、ホッパー内でのブリッジを防止するために、右に180度、左に180度のパターン1や、右に360度、左に360度のパターン2のような正・逆転パターンを繰り返すようにすることは、その動機付けがなく、また、構造的にも不可能であり、阻害要因があるというべきである。
さらに、甲第9ないし15号証にも、ホッパー内でのブリッジを防止するために、可動側刃物の回転を、右に180度、左に180度のパターン1や、右に360度、左に360度のパターン2のような正・逆転パターンを繰り返すようにすることは記載も示唆もされていない。
よって、発明Aにおいて、「夫々独立した正転タイマ及び逆転タイマにより、回転体Cが正逆転駆動を行なう駆動制御手段」及び「回転体Cの正逆転駆動に伴って」を、「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」及び「回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って」とすることは、甲第9号証ないし甲第15号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ウ むすび
以上のとおり、発明Aが、原出願の出願前に公然実施をされた発明又は公然知られた発明であったとしても、本件特許発明1は、発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、被請求人は、相違点2は実質的な相違点でない旨主張するが、上記イ(イ)で述べたように、「正・逆転の繰り返し駆動」の技術的意義が、本件特許発明1と発明Aとで全く異なり、また、「正・逆転の繰り返し駆動」の具体的な態様も本件特許発明1と発明Aとで全く異なる以上、相違点2が実質的な相違点ではないとはいえず、被請求人の主張は採用できない。
仮に、被請求人が主張するように、相違点2が実質的な相違点でないとしても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、本件特許発明1は、発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)発明Aの公然実施性・公知性
ア 甲第4号証について
ア-1 甲第4号証の別紙c(購買注文書)には、平成15年10月29日付けで、株式会社プリテックが、請求人に、「その他プラスチック容器類小袋用破袋機 納入 1台」を、平成15年12月上旬(詳細は別途打合せによる)を納入期限として、注文したことが記載されている。なお、平成26年8月29日付け審判事件弁駁書によると、納品が遅れ、実際に納品した日は平成16年1月12日とのことである。

ア-2 甲第4号証の別紙e(リース契約書)には、平成16年8月27日付けで、株式会社プリテックが、北電産業株式会社と、「プラスチック容器類 小袋用 OM-特型 破袋機 1台」を、エコタウンセンターを設置場所とし、平成16年9月1日から平成21年8月31日までの60か月をリース期間として、リース契約をしたことが記載されている。また、甲第4号証の別紙eには、条項として、第1条から第15条まで記載されているが、何れの条項にも、秘密保持に関する事項は記載されていない。

ア-3 甲第4号証の別紙g(借受証)には、平成16年9月1日付けで、株式会社プリテックが、北電産業株式会社から、売り主が請求人の「プラスチック容器類 小袋用 OM-特型 破袋機 1台」を、エコタウンセンターを設置場所とし、平成16年9月1日をリース開始日として、借受けたことが記載されている。

ア-4 甲第4号証の別紙h(覚書)には、平成21年8月7日付けで、株式会社プリテックが、北電産業株式会社から、「プラスチック容器類 小袋用 OM-特型 破袋機 1台」を、エコタウンセンターを設置場所とし、平成21年9月1日から平成22年8月31日を再リース期間として、借受けることが記載されている。

ア-5 甲第4号証の記載によると、甲第4号証の作成者は、2003年(平成15年)10月29日付け購買注文書を請求人に交付したこと、2004年(平成16年)8月27日付けリース契約書を北電産業株式会社と取り交わしたこと、2004年(平成16年)1月12日に甲第4号証の別紙dの破袋機が請求人から株式会社プリテックに納品されたが、数回の修正を経て、2004年(平成16年)4月2日に甲第4号証の別紙fの破袋機が請求人から株式会社プリテックに納品されたこと、2004年(平成16年)4月2日からリースを開始した2004年(平成16年)9月1日までは、引渡し試用期間として、使用していたこと、甲第4号証の別紙fの破袋機を60か月のリース期間の経過後、再リース契約を結び、72か月間使用していたこと及び該破袋機の処理は特に秘密にするようなことではなく、該破袋機を株式会社プリテックのエコタウンセンターへの見学者が見ることが出来る施設内に設置して、使用していたことを陳述している。

ア-6 上記ア-1ないしア-4の内容と上記ア-5の内容の間に齟齬はない。

イ 甲第6号証について
イ-1 甲第6号証の別紙dは、甲第4号証の別紙cと同じものであり、上記ア-1と同様の事項が記載されている。

イ-2 甲第6号証の別紙j(OM-10型 破袋テスト結果)は、平成16年4月5日を作成年月日とするものであり、平成16年4月2日に「OM-10型 破袋機」の試験を行ったことが記載されている。

イ-3 甲第6号証の記載によると、甲第6号証の作成者は、請求人が、株式会社プリテックから、2003年(平成15年)10月29日付け購買注文書により、破袋機の注文をもらったこと、2004年(平成16年)4月2日に、請求人が、株式会社プリテックに、甲第6号証の別紙iの破袋機を納品し、客先立会のもと性能試験を実施し、正式に引き渡したこと及び甲第6号証の別紙iの破袋機は、プリテックエコタウンセンターへの見学者等が見ることができる施設内に設置されたことを陳述している。

イ-4 上記イ-1及びイ-2の内容と上記イ-3の内容の間に齟齬はない。

ウ 証人の陳述について
証人の陳述は、要するに、甲第6号証の別紙i記載の「OM-10型 破袋機」と同じ構造の発明Aに係る破袋機を、2004年4月2日に、請求人が、株式会社プリテックに納品したということ、該破袋機が据え付けられた場所は、経済産業省から補助金を受けて建設された施設であり、一般人を含めて見学を受け入れているため、一般人が出入りできる場所であったということ、該破袋機は、単に袋を破るだけの機械で、特に秘密にするようなところはないので、株式会社プリテックに販売した時に秘密保持契約を結んだりしていないということ及び請求人が、過去に秘密保持契約を結んだことはないというものである。

エ 甲第4号証、甲第6号証及び証人の陳述の関係について
エ-1 甲第4号証の別紙fと甲第6号証の別紙iは同じ内容の設計図である。

エ-2 上記エ-1及び上記アないしウによると、甲第4号証の記載及び甲第4号証の別紙の内容、甲第6号証の記載及び甲第6号証の別紙の内容並びに証人の陳述の内容の間に齟齬はない。

オ したがって、甲第6号証の別紙i記載の「OM-10型 破袋機」と同じ構造の発明Aに係る破袋機を、2004年(平成16年)4月2日に、請求人が株式会社プリテックに納品したという事実及び該破袋機は単に袋を破る機械であって、特に秘密にするような処理をするものではなく、請求人と株式会社プリテックの間に該破袋機に関して秘密保持契約は結ばれていなかったという事実を推認することができる。

カ 他方、被請求人は、甲第6号証の別紙として提出された図面の不備の指摘や、証人は請求人の従業員であり、中立的な陳述を求めることができない者である旨の主張や、甲第3ないし6号証は請求人の代理人が作成したものである旨の主張等を行っているが、上記オの推認を覆す証拠を何ら提出していない。なお、甲第3ないし6号証は、作成者の記名・押印があることから、作成者の意思に基づく文書であることが推定され、その推定を覆す証拠は提出されていない。

キ したがって、請求人が、甲第6号証の別紙i記載の「OM-10型 破袋機」と同じ構造の発明Aに係る破袋機を、2004年(平成16年)4月2日に、株式会社プリテックに納品したという事実及び該破袋機は単に袋を破る機械であって、特に秘密にするような処理をするものではなく、請求人と株式会社プリテックの間に該破袋機に関して秘密保持契約は結ばれていなかったという事実を推認することができ、発明Aは、原出願の出願前に公然実施をされた発明であるといえる。

ク また、甲第4及び6号証の記載並びに証人の陳述によると、甲第6号証の別紙i記載の「OM-10型 破袋機」と同じ構造の発明Aに係る破袋機が設置された場所は、一般の見学者が出入りできるような場所であったという事実を推認することができることから、発明Aは、原出願の出願前に公然知られた発明であるともいえる。

ケ よって、発明Aは、原出願の出願前に公然実施をされた発明又は公然知られた発明である。

(4)むすび
上記(3)のとおり、発明Aは、原出願の出願前に公然実施をされた発明又は公然知られた発明であるといえるが、上記(2)のとおり、発明Aが、原出願の出願前に公然実施をされた発明又は公然知られた発明であったとしても、本件特許発明1は、発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明2及び4は、本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、無効理由1は理由がない。

3 無効理由2について
(1)甲9発明
甲第9号証の記載及び図面を整理すると、甲第9号証には、次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されている。

「ケーシング10と、ケーシング10の両側板16、17間に水平に横架された回転可能な円筒ロータ20の表面に、なぎなた状破袋刃30を周方向に1つ、軸方向に順次90°ずつずらして定間隔で複数組配列した回転刃(便宜上このように表現する。)と、ケーシング10の傾斜側板12、15より突設された三角形リブ18、19と、円筒ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41とを有し、円筒ロータ20の回動に伴って三角形リブ18、19間を回転刃が通過し、回転刃で袋体を破袋する破袋機。」

(2)対比
本件特許発明1と甲9発明を対比する。

甲9発明における「ケーシング10」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「矩形枠体からなる破袋室」に相当し、以下、同様に、「両側板16、17」は「破袋室の一方の対向壁面」に、「横架された」は「軸支された」に、「回転可能な円筒ロータ20」は「円筒体」に、「なぎなた状破袋刃30を周方向に1つ、軸方向に順次90°ずつずらして定間隔で複数組配列した回転刃」は「回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物」に、それぞれ、相当する。
また、甲9発明における「ケーシング10の傾斜側板12、15」は、本件特許発明1における「破袋室の他方の平行な対向壁面」と、「破袋室の他方の対向壁面」という限りにおいて、一致する。
さらに、甲9発明における「突設された三角形リブ18、19」は、本件特許発明1における「板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」と、「凸設配置された複数の部材」という限りにおいて、一致する。
さらにまた、甲9発明における「円筒ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41」は、本件特許発明1における「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」と、「回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段」という限りにおいて、一致する。
そして、甲9発明における「円筒ロータ20の回動に伴って三角形リブ18、19間を回転刃が通過し、回転刃で袋体を破袋する」は、本件特許発明1における「可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する」と、「回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って可動側刃物で袋体を破袋する」という限りにおいて、一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「矩形枠体からなる破袋室と、破袋室の一方の対向壁面間に水平に軸支された回転体の表面に、回転軸に直角な垂直板からなる複数の板状刃物を、該回転軸から放射方向に且つ該放射方向が軸方向に所要角度ずれるように凸設した可動側刃物と、破袋室の他方の対向壁面より凸設配置された複数の部材と、回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段とを有し、回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って可動側刃物で袋体を破袋する破袋機。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点3>
「破袋室の他方の対向壁面」に関して、本件特許発明1においては、「破袋室の他方の平行な対向壁面」であるのに対し、甲9発明においては、「ケーシング10の傾斜側板12、15」である点(以下、「相違点3」という。)。

<相違点4>
「凸設配置された複数の部材」に関して、本件特許発明1においては、「板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」であるのに対し、甲9発明においては、「突設された三角形リブ18、19」である点(以下、「相違点4」という。)。

<相違点5>
「回転体に対して正・逆転の繰り返し駆動を行う駆動制御手段」に関して、本件特許発明1においては、「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」であるのに対し、甲9発明においては、「円筒ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41」である点(以下、「相違点5」という。)。

<相違点6>
「回転体の正・逆転の繰り返し駆動に伴って可動側刃物で袋体を破袋する」に関して、本件特許発明1においては、「可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物が所定間隔で噛合するように、回転体の正・逆転パターンの繰り返し駆動に伴って固定側の垂直板からなる板状刃物間を可動側の垂直板からなる板状刃物が通過し、所定間隔で噛合する可動側と固定側の垂直板からなる複数の板状刃物間で袋体を破袋する」であるのに対し、甲9発明においては、「円筒ロータ20の回動に伴って三角形リブ18、19間を回転刃が通過し、回転刃で袋体を破袋する」である点(以下、「相違点6」という。)。

(3)判断
そこで、相違点3ないし6について判断する。

ア 相違点3について
甲第9号証の「また、上記側板下部13と他方の側板15の下部には、ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる逆V断面の三角形リブ18、19が突設されている。」(段落【0008】)という記載によると、甲9発明における「ケーシング10の傾斜側板12、15」は、「ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる逆V断面の三角形リブ18、19が突設されている」ものであり、「ケーシング10の傾斜側板12、15」を「平行な対向壁面」にすると、「ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる」という効果を奏することができなくなることから、甲9発明において、「ケーシング10の傾斜側板12、15」を「平行な対向壁面」とすることには、阻害要因があり、甲第10号証ないし甲第15号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 相違点4について
甲第9号証の「また、上記側板下部13と他方の側板15の下部には、ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる逆V断面の三角形リブ18、19が突設されている。」(段落【0008】)という記載によると、甲9発明における「突設された三角形リブ18、19」は、「ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる」ためのものであり、刃物とすると、「ごみ袋を破袋刃30の回転軌跡T内に寄せる」という効果を奏することができなくなることから、甲9発明において、「突設された三角形リブ18、19」を「板厚みを水平に凸設配置された垂直板からなる複数の板状刃物を、前記回転体の軸方向に配列した固定側刃物」とすることには、阻害要因があり、甲第10号証ないし甲第15号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ウ 相違点5について
本件特許明細書の「また、この発明によると、破袋室上方のホッパー内に積み上げられた袋体は回転体が正・逆転パターンの繰り返し駆動する際に可動側刃物により押し上げられるため、袋体のブリッジ現象の発生を防止することができ、1つの回転体を正・逆転パターンの繰り返し駆動させる構成によって、破袋後の袋破片が回転体、固定側刃物に絡みつくことがない。」(段落【0017】)、「かかる板状刃物24を採用した構成からなる、本発明による破袋機1の作用を説明すると、図6Aに示すように、正・逆転パターンの繰り返し駆動される可動側刃物10によりワークたる袋体を上方向に押し上げる作用が働き、該ホッパー3内で袋体のブリッジを防止することができる。」(段落【0034】)及び「図8と図9に示す装置の破袋機1に図4、5の構成を採用し組み立てた構成となし、プラスチック類を収容した袋体を想定して、右に180度、左に180度のパターン1と右に360度、左に360度のパターン2を交互に繰り返す正・逆転パターンの繰り返し駆動制御をおこない、可動側刃物の周速度が35?70m/分となるように駆動用インバーターモータ出力を選定したところ、平均60m^(3)/hrの処理能力を有することが分かった。」(段落【0048】)という記載によると、本件特許発明1における「正・逆転パターンの繰り返し駆動」は、「ホッパー3内で袋体のブリッジを防止する」ような「正・逆転パターンの繰り返し駆動」であるが、甲第9号証には、「円筒ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41」がどのような逆転を行うのかの記載はない。
そして、甲第10号証ないし甲第15号証にも、ホッパー内でのブリッジを防止するために、可動側刃物の回転を、右に180度、左に180度のパターン1や、右に360度、左に360度のパターン2のような正・逆転パターンを繰り返すようにすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲9発明において、「円筒ロータ20を回動する可逆転ギアードモータ41」を、「回転体に対して正・逆転パターンの繰り返し駆動を行う駆動制御手段」とすることは、甲第10号証ないし甲第15号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

エ 相違点6について
相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項は、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項及び相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項を前提とする相違点であるから、上記イ及びウのとおり、相違点4及び5に係る本件特許発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとはいえない以上、相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項も、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(4)むすび
以上のとおり、本件特許発明1は、甲9発明及び第10号証ないし甲第15号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明2及び4は、本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明及び第10号証ないし甲第15号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、無効理由2は理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、無効理由1及び2は何れも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1、2及び4の特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-14 
結審通知日 2015-01-16 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2009-31663(P2009-31663)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌人  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 槙原 進
加藤 友也
登録日 2009-08-28 
登録番号 特許第4365885号(P4365885)
発明の名称 破袋機とその駆動方法  
代理人 長谷部 陽平  
代理人 高橋 賢一  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 田中 宏岳  
代理人 吉井 剛  
代理人 平野 惠稔  

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