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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1315536
審判番号 不服2015-7126  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-16 
確定日 2016-06-08 
事件の表示 特願2012-501469「ディスプレイデバイスの前に配置するデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月30日国際公開、WO2010/109435、平成24年 9月20日国内公表、特表2012-522261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年(平成21年)3月27日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年4月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされたものである。

2.平成27年4月16日付けの手続補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲について、下記(1)を、下記(2)と補正するものを含む。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
オン状態、オフ状態又はスタンバイ状態において動作するように構成されたディスプレイデバイスと、
前記ディスプレイデバイスに接続されたデバイスであって、少なくとも1つの変更可能な光学特性により、切り替え可能な光学的構造をもつ材料を有する、前記デバイスと、
前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて前記デバイスの前記光学特性を制御するように構成された制御ユニットとを有し、
前記デバイスは、TOLED(Transparent Organic Light Emitting Diode)デバイスである、システム。
【請求項2】
前記光学特性は透明度であり、
前記制御ユニットは、前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて前記デバイスの透明度を制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて、前記デバイスに渡って電圧を印加するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記デバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーンのサイズと本質的に同じサイズをもつ、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記デバイスは、フレームに取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記デバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーンに直接取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記TOLEDデバイスは、有機化合物のシングルレイヤ又はマルチレイヤフィルムを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ディスプレイデバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーン上に設けられた保護層を有し、前記保護層は、前記デバイス用の電極を追加的に構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極は、インジウムスズ酸化物である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記TOLEDデバイスは、異なる透明度をもつ第1及び第2の電極を有する、請求項1に記載のシステム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
オン状態、オフ状態又はスタンバイ状態において動作するように構成されたディスプレイデバイスと、
前記ディスプレイデバイスに接続されたデバイスであって、少なくとも1つの変更可能な光学特性により、切り替え可能な光学的構造をもつ材料を有する、前記デバイスと、
前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて前記デバイスの前記光学特性を制御するように構成された制御ユニットとを有し、
前記デバイスは、TOLED(Transparent Organic Light Emitting Diode)デバイスであり、
前記TOLEDデバイスは、異なる透明度をもつ第1及び第2の電極を有する、システム。
【請求項2】
前記光学特性は透明度であり、
前記制御ユニットは、前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて前記デバイスの透明度を制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて、前記デバイスに渡って電圧を印加するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記デバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーンのサイズと本質的に同じサイズをもつ、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記デバイスは、フレームに取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記デバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーンに直接取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記TOLEDデバイスは、有機化合物のシングルレイヤ又はマルチレイヤフィルムを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ディスプレイデバイスは、前記ディスプレイデバイスのスクリーン上に設けられた保護層を有し、前記保護層は、前記デバイス用の電極を追加的に構成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極は、インジウムスズ酸化物である、請求項8に記載のシステム。」

3.補正の目的要件及び本願発明
本件補正後の請求項(新請求項)1は、本件補正前の請求項(旧請求項)1を引用する形式で記載されていた請求項10を、当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものである認められる。
そうすると、新請求項1は、旧請求項1を削除して、旧請求項10を新請求項1にしたものであるから、旧請求項1の補正という観点から見れば、同請求項の削除を目的とした補正であって、新請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当する。
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年4月16日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

4.引用例
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された独国特許出願公開第10200600781号明細書(以下、「引用例」という。)には、「Organisches Leuchtmittel(有機物発光手段)」(発明の名称)について、次の事項が記載されている(a,u,oのウムラウトは、それぞれae,ue,oeと表記した。括弧内の日本語は当審の仮訳である。)。
ア 「[0001]Die vorliegende Anmeldung betrifft ein organisches Leuchtmittel und eine Beleuchtungseinrichtung mit einem solchen Leuchtmittel. Weiterhin betrifft die vorliegende Anmeldung eine optische Anzeigevorrichtung, eine Notbeleuchtung, eine Kfz-Innenbeleuchtung, ein Moebelstueck, ein Baumaterial, eine Verglasung und ein Display mit einem solchen Leuchtmittel beziehungsweise mit einer Beleuchtungseinrichtung, die ein solches Leuchtmittel aufweist.
(この出願は、有機発光手段及びそのような発光手段を用いた装置に関する。さらに、この出願は、そのような発光手段が組み込まれた発光装置を有する、光学的表示装置、非常用照明、自動車の室内照明、家具の一部材、建築材料、窓ガラス及びディスプレイに関する。)」
イ 「[0015]Gemaess zumindest einer Ausfuehrungsform des Leuchtmittels umfasst ein Leuchtmittel insbesondere:
- ein Substrat mit einer ersten Hauptflaeche, auf die eine erste Elektrode aufgebracht ist,
- eine zweite Elektrode, und
- einen organischen Schichtstapel innerhalb eines aktiven
(発光手段の一実施例に沿えば、発光手段は、特に、
-第1の主平面を有する基板と、その基板上の設けられた第1の電極、
-第2の電極、及び、
-活性領域内の有機物の層の積層)
[0016]Bereiches des Substrates zwischen der ersten und der zweiten Elektrode, wobei der organische Schichtstapel mindestens eine organische Schicht umfasst, die geeignet ist, Licht zu erzeugen.
(第1と第2の電極の間の基板の領域には、少なくとも、有機物の層を含む有機物の層の積層があり、それは、光を発生するのに適している。)
[0017]Die organischen Schichten des organischen Schichtstapels koennen niedermolekulare Materialen (small molecules) aufweisen oder polymere Materialien. Niedermolekulare Materialien werden in der Regel durch Vakuumprozesse, wie beispielsweise Verdampfen aufgebracht, waehrend polymere Materialien durch loesungsmittelbasierte Prozesse, wie Rakeln, Drehschleudern (spin-coating) oder Druckverfahren aufgetragen werden koennen.
(有機物の層の積層を構成する有機物の層は、低分子材料(小さな分子)又は高分子材料からできている。低分子材料には、たいてい、蒸発のような真空を用いた方法が用いられ、一方、高分子材料には、ブレード法、スピンコーティング法、印刷法といった溶液に基いた方法が用いられる。)
[0018]Eine der Elektroden dient in der Regel als Anode, die Loecher in den organischen Schichtstapel injiziert, waehrend die andere Elektrode als Kathode dient, die Elektronen in den organischen Schichtstapel einpraegt. Die Anode weist bevorzugt ein Material auf, das eine hohe Austrittsarbeit fuer Elektronen aufweist, wie beispielsweise Indium-Zinn-Oxid (ITO).
(一方の電極は、アノードとして機能し、有機物の層の積層に対して、正孔を注入する。一方、他方の電極は、カソードとして機能し、有機物の層の積層に対して、電子を注入する。アノードは、好ましくは、酸化インジウムスズ(ITO)といった、電子に対して高い仕事関数を有する材料を含む。)
[0019]Die Kathode hingegen weist bevorzugt ein Material auf, das eine geringe Austrittsarbeit fuer Elektronen hat, wie beispielsweise Alkali- oder Erdalkalimetalle. Da solche Materialien in der Regel sehr empfindlich gegenueber atmosphaerischen Gasen - wie beispielsweise Sauerstoff und Feuchtigkeit - sind, kann die Kathode neben einer Schicht eines solchen Materials mit niedriger Austrittsarbeit eine oder mehrere weitere Schichten umfassen, die deutlich unempfindlicher gegen Umwelteinfluesse sind, wie beispielsweise Silber-, Aluminium- oder Platinschichten. Die weiteren Schichten kapseln die Schicht mit der niedrigen Austrittsarbeit fuer Elektronen.
(対照的に、カソードは、好ましくは、アルカリ又はアルカリ土類金属といった、電子に対して低い仕事関数を有する材料を含んでいる。そのような材料は、一般的に、酸素や水蒸気といった雰囲気ガスととても反応しやすいので、低い仕事関数を有する材料の層に隣接して、環境の影響を受けにくい、銀、アルミニウム、又は、白金等からなる、一つ又は複数の層をさらに備える。そのさらに設けられた層は、電子に対して低い仕事関数を有する材料を包み込む。)
[0020]Der organische Schichtstapel kann neben der mindestens einen Schicht, die geeignet ist, Licht zu erzeugen, weitere organische Schichten umfassen, wie beispielsweise eine Loch injizierende Schicht, eine Loch leitende Schicht, eine Elektronen injizierende Schicht und eine Elektronen leitende Schicht.
(有機物の層の積層は、光を生成するための少なくとも一つの層に隣接して、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層といった有機物の層をさらに備える。)
[0021]Die Loch leitende Schicht und die Loch injizierende Schicht befinden sich dabei bevorzugt auf der Seite des organischen Schichtstapels, der zur Anode weist, waehrend sich die Elektronen leitende und die Elektronen injizierende Schicht bevorzugt auf der zur Kathode weisenden Seite des organischen Schichtstapels befinden. Die organische Schicht, die geeignet ist, Licht zu erzeugen, ist hierbei bevorzugt zwischen der Loch leitenden Schicht und der Loch injizierenden Schicht auf der einen Seite und der Elektronen leitenden Schicht und der Elektronen injizierenden Schicht auf der anderen Seite angeordnet. In der Regel sind die organischen Materialien lichtdurchlaessig, insbesondere fuer ein von dem organischen Schichtstapel ausgesandtes Licht ausgebildet.
(この場合、正孔輸送層及び正孔注入層は、好ましくは、アノードに面した有機物の層の積層上に設けられる。一方、電子輸送層及び電子注入層は、好ましくは、カソードに面した有機物の層の積層上に設けられる。この場合、光を生成するのに適した有機物の層は、一方が、正孔輸送層及び正孔注入層、他方が、電子輸送層及び電子注入層との間に設けられる。一般的に、有機材料は、特に、有機物の層の積層によって発光された光に対して、光透過性である。)」
ウ 「[0199]Gemaess zumindest einer Ausfuehrungsform des Leuchtmittels umfasst das Leuchtmittel eine Steuervorrichtung, die vorgesehen ist, den Betriebszustand des Leuchtmittels einzustellen. Bei der Steuervorrichtung kann es sich beispielsweise um einen Schalter handeln, mit dem das Leuchtmittel ein- und ausschaltbar ist. Vorzugsweise ist die Steuervorrichtung aber geeignet, mehr als zwei Betriebszustaende des Leuchtmittels einzustellen. Beispielsweise kann die Steuervorrichtung geeignet sein, unterschiedliche Farb-Unterbereiche des Leuchtmittels getrennt voneinander anzusteuern.
(少なくとも一つの実施例に沿えば、発光手段は、コントローラーを有し、これは、予め備えられていて、発光手段の動作状態を調節するために用いられる。このコントローラーは、例えば、スイッチであって、発光手段を点灯したり消灯したりすることができる。しかし、好ましくは、コントローラーは、発光手段の状態を2以上の設定できるようになっている。例えば、発光手段の異なる色の領域をお互いに独立に駆動することができるようになっている。)」
エ 「[0403]Die Fig. 1 zeigt eine schematische Schnittdarstellung eines organischen Schichtstapels 4 zwischen einer ersten 2 und einer zweiten Elektrode 3 gemaess einem Ausfuehrungsbeispiel. Die erste Elektrode ist durchlaessig fuer sichtbares Licht ausgebildet und weist ein TCO (transparent conductive oxide) auf, beispielsweise ITO (indium tin oxide). Weiterhin dient die erste Elektrode 2 als Anode. Die zweite Elektrode 3 dient vorliegend als Kathode. Sie weist beispielsweise ein Aluminium oder Silber auf.
(図1は、実施例に沿った、第1の電極2と第2の電極3との間の有機物の層の積層4の断面の模式図である。第1の電極は、可視光に対して、透過性に作られていて、TCO(透明導電体酸化物)であり、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)である。さらに、第1の電極2はアノードとして機能する。第2の電極3は、この場合、カソードして機能する。それは、例えば、アルミニウム又は銀である。)」
オ 「[0451]Fig. 12 zeigt eine schematische Schnittdarstellung eines Displays gemaess einem Ausfuehrungsbeispiel. Bei dem Display 335 kann es sich beispielsweise um das Display eines Fernsehers, eines LCD-, eines OLED-, oder eines Plasma-Bildschirms handeln. Die Frontglasscheibe des Displays wird als Substrat 1 fuer ein Leuchtmittel verwendet, das durchlaessig fuer sichtbares Licht ausgebildet ist. Auf die Frontglasscheibe ist die erste Elektrode 2 aufgebracht, die ein TCO umfasst und daher durchlaessig fuer sichtbares Licht ausgebildet ist. Auf der ersten Elektrode 2 ist ein organischer Schichtstapel 4 aufgebracht, wie er beispielsweise anhand der Fig. 1 beschrieben ist. Auf diesen organischen Schichtstapel ist eine zweite Elektrode 3, vorliegend ebenfalls ein TCO umfassend, aufgebracht.
(図12は、一実施例に沿ったディスプレイの断面の概略図である。ディスプレイ335は、たとえば、テレビ、LCD画面、OLED画面、又は、プラズマ画面のディスプレイである。ディスプレイの前面ガラスは、発光手段の、可視光に対して透過性があるように形成された基板1として使用されている。前面ガラス上には、第1の電極2が設けられている。それは、TCOを含んでいて、可視光に対して透過性に作られている。第1の電極2上には、有機物の層の積層4が、例えば図1に示されているように、積層されている。この有機物の層の上には、第2の電極3が、この場合、同様に、TCOを含んで設けられている。)
[0452]Als TCO fuer die Kathode ist zum Beispiel eines der folgenden TCO-Materialien besonders geeignet: ITO, ATO, Zinkoxid.(カソードに対するTCOとしては、例えば、次のようなTCO-材料が適している。それらは、ITO、ATO、酸化亜鉛である。)
[0453]Auf die zweite Elektrode 3 ist eine weitere Glasplatte als Verkapselung 6 aufgebracht. Diese kann beispielsweise mit einer Klebstoffschicht 610 auf die zweite Elektrode 3 aufgeklebt sein. Die organischen Schichten sind vorliegend derart ausgebildet, dass die Abstrahlung aus dem organischen Schichtstapel vorwiegend durch die verkapselnde Glasscheibe erfolgt. Vorliegend kann das Leuchtmittel 100, das in die Frontscheibe des Displays 335 integriert ist, im ausgeschalteten Zustand des Displays als Beleuchtungsquelle genutzt werden. Das Leuchtmittel ist hierzu bevorzugt dimmbar ausgefuehrt. Im ausgeschalteten Zustand des Leuchtmittels kann der Inhalt des Displays 335 durch einen Betrachter wahrgenommen werden, da das Leuchtmittel durchlaessig fuer sichtbares Licht ausgebildet ist.
(第2の電極3上には、閉じ込め部材6として、さらにガラス板が設けられている。これは、たとえば、接着剤層610によって、第2の電極3上に貼り付けられている。この場合、閉じ込め部材のとしてのガラス板を通って、有機物の層の積層からの発光が多く得られるように、有機物の層は形成されている。この場合、ディスプレイ335の前面板に組み込まれた発光手段100は、ディスプレイが消されている時に、発光光源として用いられるものである。この場合、この発光光源は、むしろ、暗くできるように作られている。発光光源は可視光に対して透過性に作られているので、この発光光源が消されている状態では、ディスプレイ335の内容は、観察者に見えるようになっている。)
[0454]Die Fig. 12B zeigt eine schematische Draufsicht auf ein Fernsehgeraet 336 mit einem Display 335, wie es in Verbindung mit der Fig. 12A beschrieben ist. (図12Bは、ディスプレイを有するテレビ装置336の平面図で、それは、図12Aに示されたように接続されている。)」
カ 図1

キ 図12A

ク 図12B


(2)引用発明の認定
ア (1)イから、引用例に記載された「発光手段」は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層を備え、有機物の層によって光を生成しており、さらに、それ自体が光透過性であるから、該「発光手段」は、TOLED(Transparent Organic Light Emitting Diode)であるということができる。
イ (1)オから、図12に示された実施例は、テレビ等のディスプレイの前面ガラス1に「発光手段」の「第1の電極2」を設け、その「第1の電極2」上に有機物の層を積層し、その有機物の層の上に第2の電極を設けたものであるから、その構造は、テレビ等のディスプレイの前面ガラスに「発光手段」を一体的に設けたものであるということができる。
また、「テレビ等のディスプレイの前面ガラスに『発光手段』を一体的に設けたもの」は、「装置」と呼ぶことができる。
そして、ディスプレイは、消されている時と、動作している時を有し、ディスプレイが消されている時には、該「発光手段」が発光し、ディスプレイが動作している時には、該「発光手段」は消灯し、ディスプレイの内容が、観察者に見えるようになっていることがわかる。
ウ (1)ウから、該「発光手段」には、発光や消灯を制御するコントローラーが設けられていることがわかる。
エ (1)イ、エから、該「発光手段」は、第1の電極であるアノードと第2の電極であるカソードとを備え、アノードはITO(酸化インジウムスズ)、カソードはアルミニウム又は銀を含み、第1の電極2と第2の電極3との間の、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層を有する有機物の層の積層を備え、該有機物の層の積層の少なくとも一つの層が光を生成することがわかる。
オ 上記ア?エから、引用例には、
「テレビのディスプレイの前面ガラスに発光手段を一体的に設けた装置であり、
ディスプレイは、消されている時と、動作している時を有し、
ディスプレイが消されている時には、該発光手段が発光し、
ディスプレイが動作している時には、該発光手段は消灯し、ディスプレイの内容が、観察者に見えるようになっていて、
該発光手段は、TOLED(Transparent Organic Light Emitting Diode)であり、
該発光手段は、発光や消灯を制御するコントローラーが設けられており、
該発光手段は、アノードである第1の電極とカソードである第2の電極とを備え、アノードである第1の電極はITO(酸化インジウムスズ)、カソードである第2の電極はアルミニウム又は銀であり、第1の電極と第2の電極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層を有する有機物の層の積層を備え、該有機物の層の積層の少なくとも一つの層が光を生成する装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ディスプレイ」は、本願発明の「ディスプレイデバイス」に相当し、引用発明の「ディスプレイが消されている時」及び「ディスプレイが動作している時」は、本願発明の「オフ状態」及び「オン状態」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「発光手段」、「前面ガラスに発光手段を組み込」むことは、本願発明の「デバイス」及び「接続」にそれぞれ相当し、引用発明の「テレビのディスプレイの前面ガラスに」「組み込」まれた「発光手段」は、本願発明の「ディスプレイデバイスに接続されたデバイス」に相当する。
ウ 引用発明の「光を生成する」「有機物の層の積層の少なくとも一つの層」は、本願発明の「少なくとも1つの変更可能な光学特性により、切り替え可能な光学的構造をもつ材料」に相当する。
エ 引用発明の「アノードである第1の電極」及び「カソードである第2の電極」は、本願発明の「第1の電極」及び「第2の電極」にそれぞれ相当する。
オ 引用発明の「ディスプレイが消されている時には、該発光手段が発光し、ディスプレイが動作している時には、該発光手段は消灯し、ディスプレイの内容が、観察者に見えるようになって」いるように「発光や消灯を制御するコントローラー」は、本願発明の「ディスプレイデバイスの動作状態に基づいてデバイスの光学特性を制御するように構成された制御ユニット」に相当する。

カ そうすると、本願発明と引用発明とは、
「オン状態、オフ状態又はスタンバイ状態において動作するように構成されたディスプレイデバイスと、
前記ディスプレイデバイスに接続されたデバイスであって、少なくとも1つの変更可能な光学特性により、切り替え可能な光学的構造をもつ材料を有する、前記デバイスと、
前記ディスプレイデバイスの動作状態に基づいて前記デバイスの前記光学特性を制御するように構成された制御ユニットとを有し、
前記デバイスは、TOLED(Transparent Organic Light Emitting Diode)デバイスであり、
前記TOLEDデバイスは、第1及び第2の電極を有するシステム。」である点で一致し、次の点で一応の相違が認められる。

(一応の相違点)
第1及び第2の電極の透明度が、本願発明は、異なるのに対し、引用発明の「ITO(酸化インジウムスズ)」の「アノードである第1の電極」と「アルミニウム又は銀」の「カソードである第2の電極」の透明度は不明であり、これらの透明度が異なるかどうか不明な点。

ここで、上記一応の相違点について検討する。
引用発明において、「ITO(酸化インジウムスズ)」の「アノードである第1の電極」と「アルミニウム又は銀」の「カソードである第2の電極」の透明度が同一である必要性はなく、引用発明は、「アノードである第1の電極」と「カソードである第2の電極」の透明度が異なるものを含むことは明らかである。
そうすると、上記一応の相違点は、実質的な相違点ではなく、本願発明は、引用発明である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。

7.なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであったが、本願発明が引用発明に基いて容易に発明をすることができたか否かを検討する際には、両者を対比して一致点・相違点についての検討がなされ、両者が同一であるか否かについても当然に検討がなされるものであり、請求人もそれを踏まえて上で意見を述べているものと考えられるから、当審において改めて拒絶理由を通知することなく上記のとおり審決した。
 
審理終結日 2016-01-12 
結審通知日 2016-01-14 
審決日 2016-01-27 
出願番号 特願2012-501469(P2012-501469)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 井口 猶二
川端 修
発明の名称 ディスプレイデバイスの前に配置するデバイス  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 小松 広和  
代理人 津軽 進  

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