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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1315598
審判番号 不服2015-6929  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-13 
確定日 2016-06-09 
事件の表示 特願2013-123511「樹脂硬化膜パターンの形成方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、タッチパネルの製造方法及び樹脂硬化膜」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-200577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年12月 4日(優先権主張 平成23年12月 5日)を国際出願日とする特願2013-516811号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年 6月12日に新たな特許出願としたものであって、平成26年 9月16日に手続補正書が提出され、同年10月 8日付けで拒絶理由が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年 1月 7日付けで拒絶査定がなされたところ、同年 4月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
平成27年 4月13日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成26年12月12日に提出された手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲を補正しようとするものであって、そのうち、請求項1に係る補正については次のとおりである(下線は補正に関連する箇所を示し、当審で付加したものである。)。
(1)本件補正前の請求項1
「 支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた感光層と、を備え、
前記感光層が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
タッチパネル用基材上に樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性エレメント。」

(2)本件補正後の請求項1
「 支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた感光層と、を備え、
前記感光層が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
タッチパネル用基材上に薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性エレメント。」(以下「本願補正発明」という。)

2 新規事項の追加の有無について
(1)本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、願書に最初に添付された明細書を「本願当初明細書」といい、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「本願当初明細書等」という。)の請求項9、請求項15には、以下の発明が記載されている。
「【請求項9】
酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、
前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
10μm以下の厚みの樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性樹脂組成物。」

「【請求項15】
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた請求項9?14のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える、感光性エレメント。」

(2)本願当初明細書には、「樹脂硬化膜パターン」に関して、次の記載がある(下線は、「樹脂硬化膜パターン」に特に関連する箇所を示し、当審で付加したものである。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂硬化膜パターンの形成方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、タッチパネルの製造方法及び樹脂硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンやテレビの大型電子機器からカーナビゲーション、携帯電話、電子辞書等の小型電子機器やOA・FA機器等の表示機器には液晶表示素子やタッチパネル(タッチセンサー)が用いられている。これら液晶表示素子やタッチパネルには透明導電電極材からなる電極が設けられている。透明導電電極材としては、ITO(Indium-Tin-Oxide)、酸化インジュウムや酸化スズが知られており、これらの材料は高い可視光透過率を示すことから液晶表示素子用基板等の電極材として主流になっている。
【0003】
タッチパネルはすでに各種の方式が実用化されているが、近年、静電容量方式のタッチパネルの利用が進んでいる。静電容量方式タッチパネルでは、導電体である指先がタッチ入力面に接触すると、指先と導電膜との間が静電容量結合し、コンデンサを形成する。このため、静電容量方式タッチパネルは、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることによって、その座標を検出している。
【0004】
特に、投影型静電容量方式のタッチパネルは、指先の多点検出が可能なため、複雑な指示を行うことができるという良好な操作性を備え、その操作性の良さから、携帯電話や携帯型音楽プレーヤなどの小型の表示装置を有する機器における表示面上の入力装置として利用が進んでいる。
【0005】
一般に、投影型静電容量方式のタッチパネルでは、X軸とY軸による2次元座標を表現するために、複数のX電極と、当該X電極に直交する複数のY電極とが、2層構造を形成しており、該電極としてはITO(Indium-Tin-Oxide)が用いられる。
【0006】
ところで、タッチパネルの額縁領域はタッチ位置を検出できない領域であるから、その額縁領域の面積を狭くすることが製品価値を向上させるための重要な要素である。額縁領域には、タッチ位置の検出信号を伝えるために、金属配線が必要となるが、額縁面積の狭小化を図るためには、金属配線の幅を狭くする必要がある。ITOの導電性は充分に高くないので、一般的に金属配線は銅により形成される。
【0007】
しかしながら、上述のようなタッチパネルは、指先に接触される際に水分や塩分などの腐食成分がセンシング領域から内部に侵入することがある。タッチパネルの内部に腐食成分が侵入すると、金属配線が腐食し、電極と駆動用回路間の電気抵抗の増加や、断線の恐れがあった。
【0008】
金属配線の腐食を防ぐために、金属上に絶縁層を形成した静電容量方式の投影型タッチパネルが開示されている(例えば、特許文献1)。このタッチパネルでは、二酸化ケイ素層をプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)で金属上に形成し、金属の腐食を防いでいる。しかしながら、この手法はプラズマCVD法を用いるため、高温処理が必要となり基材が限定される、製造コストが高くなるなどの問題があった。
【0009】
ところで、必要な箇所にレジスト膜を設ける方法として、所定の基材上に感光性樹脂組成物からなる感光層を設けてこの感光層を露光、現像する方法が知られている(例えば、特許文献2?4)。また、特許文献5及び6には、上記方法により、タッチパネルの保護膜を形成することが開示されている。」

イ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
感光性樹脂組成物による保護膜の作製は、プラズマCVD法に比べてコストの削減が期待できる。しかし、タッチパネル用電極上に保護膜を形成する場合、樹脂膜の厚みが大きいと、膜がある箇所と膜がない箇所とで段差が目立つことがある。そのため、保護膜はできるだけ薄くすることが好ましい。
【0012】
しかし、基材上に、感光性樹脂組成物からなる感光層を厚み10μm以下で形成し、この感光層を露光、現像によってパターニングする場合、解像度が低下する傾向にあることを本発明者らは見出した。また、上記特許文献5又は6に記載されている感光性樹脂組成物では、薄膜で透明性の高い保護膜を形成することが可能であるが、パターンを形成する上では改善の余地があった。
【0013】
本発明は、薄膜であっても充分な解像度で樹脂硬化膜パターンを形成することができる樹脂硬化膜パターンの形成方法、基材上に薄膜であっても良好なパターン形状を有する樹脂硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、タッチパネルの製造方法及び樹脂硬化膜を提供することを目的とする。」

ウ 「【0016】
本発明の樹脂硬化膜パターンの形成方法によれば、基材上に、厚みが10μm以下の薄膜であっても充分な解像度で樹脂硬化膜パターンを形成することができる。」

エ 「【0027】
本発明はまた、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含む、10μm以下の厚みの樹脂硬化膜パターンを形成するための感光性樹脂組成物を提供する。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、所定のタッチパネル用電極上に、薄膜であっても良好なパターン形状を有する保護膜を形成することができる。」

オ 「【0035】
本発明の感光性エレメントによれば、所定のタッチパネル用電極上に、薄膜であっても良好なパターン形状を有する保護膜を形成することができる。
【0036】
上記感光層の厚みは10μm以下とすることができる。」

カ 「【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、薄膜であっても充分な解像度で樹脂硬化膜パターンを形成することができる樹脂硬化膜パターンの形成方法、タッチパネル用電極上に薄膜であっても良好なパターン形状を有する樹脂硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物、感光性エレメント、タッチパネルの製造方法及び樹脂硬化膜を提供することができる。
【0040】
また、本発明の樹脂硬化膜パターンの形成方法は、タッチパネル用電極の保護膜などのように薄膜による保護が要求される電子部品の保護膜、特には、静電容量式タッチパネルの金属電極の保護膜の形成に好適に用いることができる。」

キ 「【0113】
感光層の厚みは、電極保護に充分な効果を発揮し、かつ部分的な電極保護膜形成により生じるタッチパネル(タッチセンサー)表面の段差が極力小さくなるよう、乾燥後の厚みで1μm以上9μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下であることがより好ましく、2μm以上8μm以下であることが更に好ましいく、3μm以上8μm以下であることが特に好ましい。」

ク 「【0132】
感光層20は、上述した膜厚、可視光線透過率、CIELAB表色系でのb^(*)、吸光度の条件を満たすことが好ましい。」

ケ 「【0138】
本実施形態の第3工程では、活性光線の照射後の感光層を現像液で現像して活性光線が照射されていない部分(すなわち、感光層の所定部分以外)を除去し、電極の一部又は全部を被覆する厚みが10μm以下の本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜パターンからなる保護膜22を形成する(図2の(c)を参照)。形成される保護膜22は所定のパターンを有することができる。」

コ 「【0161】
(実施例1)
[感光性樹脂組成物を含有する塗布液(V-1)の作製]
表2に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、保護膜を形成するための感光性樹脂組成物を含有する塗布液(V-1)を作製した。
・・(略)・・
【0163】
[感光性エレメント(E-1)の作製]
支持フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、上記で作製した感光性樹脂組成物を含有する塗布液(V-1)を支持フィルム上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物からなる感光層(感光性樹脂組成物層)を形成した。得られた感光層の厚さは2.5μmであった。
・・(略)・・
【0166】
次いで、得られた積層体の感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×102J/m2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持フィルムを除去し、厚さ2.5μmの感光層の硬化膜パターンを有する透過率測定用試料を得た。
・・(略)・・
【0169】
次いで、得られた感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×10^(2)J/m^(2)で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持体フィルムを除去し、さらに感光層側上方より露光量1×10^(4)J/m^(2)で(i線(波長365nm)における測定値)紫外線を照射し、厚さ2.5μmの感光層の硬化膜パターンを有するb^(*)測定用試料を得た。
・・(略)・・
【0175】
(実施例2?5、比較例1?6)
表2及び表3に示す感光性樹脂組成物を含有する塗布液を用いた以外は、実施例1と同様に感光性エレメントを作製し、透過率の測定、b^(*)、吸光度、感光特性について評価した。なお、表2及び表3中の数値は質量部を示している。
・・(略)・・
【0181】
下記表4及び表6に示すように、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物又はホスフィンオキサイド化合物を用いた実施例1、2及び5においては、2.5μmの膜厚において解像度と透明性を両立することができた。また、紫外線吸収剤を併用した実施例3及び4ではさらに高解像化を達成することができた。一方、比較例1?6では解像度の低下が大きかった。また、比較例3、4では解像度は良好であったが、フィルムが黄色く着色した。
【0182】
(実施例6?10、及び比較例5?12)
また、上記実施例1?5及び比較例1?6の感光層の膜厚を5μmとした場合(実施例6?10、及び比較例5?12)について上記と同様に評価した。但し、上記[感光層の感光特性]における必要量の露光量は、日立化成工業(株)製、41段ステップタブレットにて10/41段を得るための露光量とした。結果を下記表5及び表7に示す。
【0183】
【表4】

【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
【表7】



(3)上記(2)アないしコから、本願当初明細書には、「本発明が、基材上に薄膜であっても良好なパターン形状を有する樹脂硬化膜を形成できる感光性エレメントを提供することを目的とする」ことは記載されているものの、具体的にどの程度の厚みの膜であれば、「薄膜」に該当するのか、本願当初明細書等には何ら記載されておらず、本願当初明細書等に記載されているのは、「厚みが10μm以下の樹脂硬化膜パターンを形成する」ことのみであると認められる。あるいは、本願当初明細書等には、「基材上に、感光性樹脂組成物からなる感光層を厚み10μm以下で形成し、この感光層を露光、現像によってパターニングする場合、解像度が低下する傾向にあることを本発明者らは見出した。」(段落【0012】)という発明が解決しようとする課題に対応する課題解決手段として、厚みの上限が「10μm」(段落【0016】等)である「薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性エレメント」や、厚みの上限が「9μm」又は「8μm」(段落【0113】)である「薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性エレメント」が開示されていたとしても、本願当初明細書等には、前記発明が解決しようとする課題に対応しない、厚みの上限が「10μm」超の所定の厚みである「薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる、感光性エレメント」が開示されていたとはいえない。したがって、本願当初明細書等から、本件補正後の請求項1に記載された「タッチパネル用基材上に薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成する」という技術的概念を把握することができたとは認められない。

(4)まとめ
上記1(2)の請求項1に係る本件補正は、本願当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。すなわち、上記1(2)の請求項1に係る本件補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
したがって、上記補正を含む本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件についての検討
本件補正は、上記2で検討したように、新規事項を含むものであるが、当該本件補正が仮に新規事項を含む補正ではないものとして、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすか)について以下検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)に記載のとおりのものである。

(2)特許法36条6項2号(明確性要件)について
ア 本願補正発明の「感光性エレメント」について、特許請求の範囲には「タッチパネル用基材上に薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる」との記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。

イ しかしながら、一般的に「薄膜」とは、単に「薄い膜」を意味するものにすぎず、その膜厚の範囲についての明確な定義はなく、どの程度の厚さの膜まで「薄膜」に該当するのかは、技術分野等に応じて変化するものであるところ、本願当初明細書には、「薄膜」の定義について何ら記載されておらず、本願当初明細書の段落【0016】における「厚みが10μm以下の薄膜」との記載等から、厚みが10μm以下の膜が「薄膜」に該当することは理解できるものの、厚みが10μmを超える膜について、具体的にどの程度の厚みの膜まで、本願補正発明における「薄膜」に該当するのか、本願当初明細書全体の記載を参照しても、理解することができない。

ウ よって、本願補正発明は、明確であるとはいえないから、本願特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしているとすることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)進歩性(特許法29条2項)について
ア 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、特許法44条2項の規定により本願が出願されたものとみなされる原出願の出願日(優先権主張の効果により、平成23年12月 5日)前(以下「優先日前」という。)に国際公開された、国際公開第2011/129312号(以下「引用例」という。)には、「ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜、およびタッチパネル用部材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、それを用いた硬化膜、それを有するタッチパネル装置に関する。
背景技術
[0002] 現在、ハードコート材料の用途は多岐にわたり、例えば、自動車部品、化粧品などの容器、シート、フィルム、光学ディスク、薄型ディスプレーなどの表面硬度を向上させるために用いられている。ハードコート材料に求められる特性としては、硬度、耐擦傷性の他に耐熱性、耐候性、接着性などが挙げられる。ハードコート材料の代表例としては、ラジカル重合型のUV硬化型ハードコートがあり(例えば、非特許文献1参照)、その構成は、重合性基含有オリゴマー、モノマ、光重合開始剤およびその他添加剤である。UV照射によりオリゴマーおよびモノマがラジカル重合することで架橋し、高硬度な膜を得る。このハードコート材料は硬化の所要時間が短く生産性が向上するうえに、一般的なラジカル重合機構によるネガ型感光性材料を用いることができ、製造コストが安価になるという利点を持つ。
[0003] 近年注目を浴びている静電容量式タッチパネルは、ハードコート材料の用途の一つである。静電容量式タッチパネルはガラス上にITO(Indium Tin Oxide)膜で作成したパターンを有する構造を持つ。しかしながら、ITOならびに保護膜は一般的に黄色味であり、例えば液晶ディスプレーなどの表示パネル上にタッチパネルを設けた場合に、表示色が黄色味にシフトするという問題があった。一方、波長が800nm以上の領域に吸収極大を持つフタロシアニン化合物を含有するハードコート材料が知られている(特許文献1)。かかる組成物は可視光の透明性が高く、近赤外に吸収を持つことから、液晶ディスプレーの冷陰極管やプラズマディスプレーパネルから発生する近赤外線を吸収し、家電用リモコンの誤作動を防ぐ目的等で使用されている。
[0004] また、波長が750nm以上の領域に吸収極大をもつフタロシアニン化合物を持つ感光性組成物も知られている(特許文献2)。この組成物は白色環境下で取り扱い可能な、赤外光を発するレーザー光にて感光せしめることを目的としている。よって、いずれも本発明とは目的を異とするものである。また液晶パネルあるいは撮像素子に用いられるカラーフィルターにおいては、青画素や緑画素を形成する際にフタロシアニン系顔料を使用することが一般的に知られている(特許文献3)。しかしながら、フタロシアニン顔料の含有量は本発明と比較して非常に多く、最大吸収波長での透過率は10%以下になる。さらに、半透過反射型液晶表示装置に用いる反射部分のカラーフィルタは、透過型液晶表示装置のものより若干透過率が高くなることも知られている(特許文献4)。しかしながら、それでもなお、可視光において高透明性を必要とするタッチパネル用ハードコート材料とは大きく異なるものである。
・・(略)・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明は、透過色がwhiteに近く、ITOへの密着性も優れ、さらに耐熱性も良好な保護膜が得られるネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、ろ過性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を得ることを課題する。」

(イ)「[0020] 以下、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の他の各構成成分について説明する。
本発明のネガ型感光性組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、本発明のネガ型感光性組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性(現像性)に優れ、現像後の残さを抑制して良好なパターンを形成することできる。
[0021] (A)アルカリ可溶性樹脂としては、ポリシロキサン、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ノボラック樹脂、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。(A)アルカリ可溶性樹脂においては、少なくとも一部にはエチレン性不飽和二重結合基が導入されていることが、硬化膜の硬度を高くするのに好ましい。これら重合体のうち、エチレン性不飽和二重結合基の導入の容易さから、ポリシロキサン、アクリル樹脂がより好ましい。また、これら重合体を2種以上含有してもよい。
[0022] (A)アルカリ可溶性樹脂として好ましい例を以下に挙げるが、これに限定されない。
・・(略)・・
[0025] アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合したものも好ましい。
[0026] (メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニル、(メタ)アクリル酸4-メトキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-シクロプロピルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロペンチルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロヘキシルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロヘキセニルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-(4-メトキシシクロヘキシル)オキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルメチル、(メタ)アクリル酸1-メチルアダマンチル等が用いられる。スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物を共重合しても良い。
[0027] また、エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物を(メタ)アクリル酸に付加反応することにより、(メタ)アクリル酸にエチレン性不飽和二重結合基を導入することができる。エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
[0028] すなわち、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸α-エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸α-n-プロピルグリシジル、(メタ)アクリル酸α-n-ブチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸α-エチル-6,7-エポキシヘプチル、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6-トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,4,6-トリグリシジルオキシメチルスチレン等である。」

(ウ)「[0030] 本発明のネガ型感光性組成物は、(B)多官能モノマを含有する。多官能モノマとは、分子中に少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物をいう。特に限定するわけでないが、ラジカル重合性のしやすさを考えると、アクリル基を有する多官能モノマが好ましい。
[0031] 具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートのようなオリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、[9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどがあげられる。」

(エ)「[0032] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(C)光ラジカル重合開始剤を含有する。(C)光ラジカル重合開始剤は、光(紫外線、電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させるものであればどのようなものでもよい。硬化膜の硬度をより高くするためには、α-アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物、アミノ基を有するベンゾフェノン化合物またはアミノ基を有する安息香酸エステル化合物が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
・・(略)・・
[0035] オキシムエステル化合物の具体例としては、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等が挙げられる。」

(オ)「[0054] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネル用保護膜、タッチパネル用絶縁膜として用いられる。タッチパネルの方式としては、抵抗膜式、光学式、電磁誘導式、静電容量式等が挙げられる。静電容量式タッチパネルは特に高い硬度が求められることから、本発明の硬化膜を好適に用いることができる。
[0055] 本発明の硬化膜をタッチパネル用保護膜として用いる場合、硬度が4H以上、Y(輝度)が90以上、解像度は20μm以下であることが好ましい。Y(輝度)は、より好ましくは91以上であることが好ましい。保護膜の膜厚は0.3μm以上、4μm以下が好ましく、1.4μm以上、2.6μm以下がより好ましい。0.3μmより薄いとITOを保護するには厚みが十分でなく、4μmより厚いと全体の透過率が低くなりすぎる。
・・(略)・・
[0058] またタッチパネル部材において、透過色はWhiteに近いことが望ましい。ここでタッチパネル部材とは、少なくとも透明基板、ITO膜、ならびに、保護膜を有するものである。タッチパネル部材は、Mo(モリブデン)およびAl(アルミ)等の金属配線を有しても良い。静電容量方式のタッチパネルとしては、ガラスの片面に交差するようにITOで配線されている構造が良く知られている。この場合、少なくとも配線の交差部分に絶縁膜があり、全体は保護膜で覆われている。またガラスの両側にITOならびに保護膜を作成する構造も広く知られている。」

(カ)「[0071] 合成例1 アクリル樹脂溶液(a1)の合成
500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を30g、スチレンを22.48g、シクロヘキシルメタクリレートを25.13g仕込み、室温でしばらく攪拌し、フラスコ内を窒素置換した後、70℃で5時間加熱攪拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを15g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを100g添加し、90℃で4時間加熱攪拌した。得られたアクリル樹脂溶液が固形分濃度が40質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、アクリル樹脂溶液(a1)を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は13500、酸価は100mgKOH/gであった。
・・(略)・・
[0073] 顔料分散液調整例1
PB15:6 100g、分散剤としてbic chemie社”BYK2001“40gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 860gを、直径0.3mmのジルコニアビーズ1000gとともにホモジナイザーを用い、7000rpmで30分間分散処理後、ジルコニアビーズをろ過により除去し、顔料分散液(d1)を得た。
[0074] 実施例1
黄色灯下にて、アクリル樹脂溶液(a1)25.0g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10.0g、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]1.0g、BYK-333(ビックケミー・ジャパン(株)製)0.02g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.0g、ジアセトンアルコール30.8g、顔料分散液(d1)0.12gを混合し、撹拌した。次いで0.45μmのフィルターでろ過を行い、ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)を得た。
・・(略)・・
[0076] 得られたネガ型感光性樹脂組成物(N-1)を無アルカリガラス基板、あるいは、ITOガラス基板上に、スピンコーター(ミカサ(株)製1H-360S)を用いて任意の回転数でスピンコートした後、ホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製SCW-636)を用いて110℃で2分間プリベークし、硬化膜を作製した。作製した膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA-501F)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、露光量200mJ(i線)にて全面露光した。その後、自動現像装置(AD-2000、滝沢産業(株)製)を用いて、0.4質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液ELM-D(三菱ガス化学(株)製)で90秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。最後にオーブン(エスペック(株)製IHPS-222)を用いて空気中230℃で1時間キュアして厚さ2.3μmの硬化膜を作製した。得られた硬化膜について、前記方法で1%重量減少温度、透過率、透過色、ならびにWhiteからの距離(Wd)を評価した。」

(キ)上記(ア)ないし(カ)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「アクリル樹脂溶液(a1)25.0g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10.0g、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]1.0g、BYK-333(ビックケミー・ジャパン(株)製)0.02g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33.0g、ジアセトンアルコール30.8g、顔料分散液(d1)0.12gを混合し、撹拌し、次いで0.45μmのフィルターでろ過を行って得たネガ型感光性樹脂組成物(N-1)であって、
前記アクリル樹脂溶液(a1)は、500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を3g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを50g仕込み、その後、メタクリル酸を30g、スチレンを22.48g、シクロヘキシルメタクリレートを25.13g仕込み、室温でしばらく攪拌し、フラスコ内を窒素置換した後、70℃で5時間加熱攪拌し、次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを15g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを100g添加し、90℃で4時間加熱攪拌し、得られたアクリル樹脂溶液が固形分濃度が40質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて得たものであり、アクリル樹脂の重量平均分子量は13500、酸価は100mgKOH/gである、ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)。」(以下「引用発明」という。)

イ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「アクリル樹脂溶液(a1)」に含まれる「アクリル樹脂」は、その酸価が100mgKOH/gであり、また、メタクリル酸、スチレン、シクロヘキシルメタクリレート及びメタクリル酸グリシジルの共重合体であると認められるから、当該「アクリル樹脂」が、メタクリル酸に含まれるカルボキシル基を有することは明らかである。
また、引用発明における「アクリル樹脂溶液(a1)」には、固形分として実質的に「アクリル樹脂」のみが含まれていると認められるところ、当該「アクリル樹脂溶液(a1)」の固形分濃度は40質量%であるから、「ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)」における「アクリル樹脂」の含有量は、25.0g×40%÷100=10.0gであり、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」と並んで固形分として最も多く含まれている。
したがって、引用発明における「アクリル樹脂」が、バインダーとして機能することは明らかであるから、引用発明の「アクリル樹脂溶液(a1)」に含まれる「アクリル樹脂」は、本願補正発明における「酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマー」に相当する。

(イ)本願当初明細書の段落【0058】には、光重合性化合物として、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を用いることができる旨が記載されており、段落【0059】には、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物として、少なくとも3つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する多官能ビニルモノマーが挙げられる旨が記載されており、段落【0062】には、上記少なくとも3つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する多官能ビニルモノマーの例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられているから、引用発明における「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、本願補正発明における「光重合性化合物」に相当する。

(ウ)引用例の段落[0032]には、オキシムエステル化合物が光ラジカル重合開始剤として好ましい旨が記載されており、また、段落[0035]には、オキシムエステル化合物の具体例として、「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]」が記載されている。そして、「光ラジカル重合開始剤」が、「光重合開始剤」の一種であることは明らかである。
したがって、引用発明における「1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]」は、本願補正発明における「オキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含」む「光重合開始剤」に相当する。

(エ)引用例の段落[0054]には、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜は、タッチパネル用保護膜、タッチパネル用絶縁膜として用いられることが記載されている。また、引用例の段落[0055]には、本発明の硬化膜をタッチパネル用保護膜として用いる場合、保護膜の膜厚は0.3μm以上、4μm以下が好ましく、1.4μm以上、2.6μm以下がより好ましいことが記載されており、段落[0076]には、ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)を用いて厚さ2.3μmの硬化膜を作製したことが記載されている。
ここで、上記3(2)イのとおり、具体的にどの程度の厚みの膜まで、本願補正発明の「薄膜」に該当するのか明確でないが、本願当初明細書の段落【0016】における「厚みが10μm以下の薄膜」との記載や、本願当初明細書の実施例1?5においては、厚さ2.5μmの感光層の硬化膜パターンを形成し、実施例6?10においては、厚さ5μmの感光層の硬化膜パターンを形成していること等を考慮すると、引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)」は、本願補正発明と同様に、「タッチパネル用基材上に薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる」ものと認められる。

(オ)本願補正発明の「感光層」と引用発明の「ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)」とは、「感光材料」である点で一致する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)から、本願補正発明と引用発明とは、
「感光材料が、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有し、前記光重合開始剤がオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含み、
タッチパネル用基材上に薄膜の樹脂硬化膜パターンを形成するために用いられる」点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:
感光材料が、本願補正発明においては、感光層であるのに対し、引用発明においては、ネガ型感光性樹脂組成物である点。

相違点2:
本願補正発明は、支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた感光層と、を備えた感光性エレメントであるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

相違点の判断
上記相違点1及び相違点2について併せて判断する。
支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を積層して感光性エレメントを構成することや、当該感光性エレメントを用いてタッチパネル用基材上に樹脂硬化膜パターンを形成することは、特開2009-73022号公報の段落【0014】、【0023】、【0024】、特開2008-233778号公報の段落【0109】?【0111】、特開2003-248319号公報の段落【0068】、【0069】、特開2009-48187号公報の段落【0026】、特開2011-39165号公報の段落【0077】?【0079】、【0082】及び図1、特開2010-85929号公報の段落【0001】、【0176】、【0177】、特開2007-86565号公報の段落【0062】、【0065】?【0067】に記載されているように本願優先日前の周知技術である。
また、支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を積層して構成した感光性エレメントが、液状の感光性樹脂組成物に比べて膜厚の均一性や作業性に優れていることは、特開2009-48170号公報の段落【0007】、特開2005-39097号公報の段落【0037】に記載されているように本願優先日前に当業者にとって周知の事項である。
したがって、引用発明において、膜厚の均一性や作業性の向上という、感光性樹脂組成物を用いて成膜を行う際に一般的に知られた課題を解決するために上記周知技術を適用し、ネガ型感光性樹脂組成物(N-1)を用いて支持フィルム上に感光層を設けて感光性エレメントを構成することにより上記相違点1及び相違点2にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願補正発明の効果は、引用発明及び上記周知技術からみて予測し得る程度のものである。

エ 小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」での本件補正についての補正の却下の決定の結論のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の請求項1ないし13に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載のとおりのものである。

2 引用例の記載事項
引用例の記載事項については、上記第2の3(3)アのとおりである。

3 判断
本願補正発明は、本願発明の発明特定事項を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、上記第2の3(3)において検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、上記第2の2(3)のとおり、本願当初明細書に記載されているのは、「厚みが10μm以下の樹脂硬化膜パターンを形成する」ことのみであり、本件補正前の請求項1に記載された「タッチパネル用基材上に樹脂硬化膜パターンを形成する」という技術的概念を把握することができたとは認められないから、上記1(1)の本件補正前の請求項1に係る補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

第4 むすび
以上のとおり、本件補正前の請求項1に係る補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項の規定により、特許を受けることができず、また、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-30 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 特願2013-123511(P2013-123511)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 561- Z (G03F)
P 1 8・ 537- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石附 直弥  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 樋口 信宏
本田 博幸
発明の名称 樹脂硬化膜パターンの形成方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、タッチパネルの製造方法及び樹脂硬化膜  
代理人 池田 正人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 古下 智也  
代理人 清水 義憲  
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