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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1315608
審判番号 不服2015-12875  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-06 
確定日 2016-06-09 
事件の表示 特願2012-287522「マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月10日出願公開、特開2014-128387〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月28日の出願であって、平成26年11月19日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月3日付けで拒絶査定がされ、平成27年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年7月6日付けの手続補正について
1 平成27年7月6日付けの手続補正の内容
平成27年7月6日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年1月26日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
マスク本体と、
着用者の両耳又は頭部に掛けることによって前記マスク本体を前記着用者の顔面の所定の位置に固定する紐と、
を備え、
前記マスク本体は、
着用時に前記着用者の口元側に位置する口元層と、
着用時に外側となる表層と、
前記口元層と前記表層との間に位置するフィルタ層と、
を有し、
前記フィルタ層は、メルトブローン不織布層を2層以上有し、前記メルトブローン不織布層はいずれも等しい目付を有する
マスク。
【請求項2】
前記口元層は、サーマルボンド不織布、パルプとポリエステル繊維とを混抄した混抄紙、およびレーヨン紙からなる群から選択されたものである請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記フィルタ層は、前記メルトブローン不織布層が重ねあわされて形成されている請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記フィルタ層は、前記メルトブローン不織布層とは形態および素材の少なくとも一方が異なる不織布の層である挿入層を有する請求項1?3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記挿入層は、抗菌処理をした不織布からなる抗菌性不織布層である請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記挿入層は、血液の透過を抑える血液透過防止層である請求項4に記載のマスク。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
マスク本体と、
着用者の両耳又は頭部に掛けることによって前記マスク本体を前記着用者の顔面の所定の位置に固定する紐と、
を備え、
前記マスク本体は、
着用時に前記着用者の口元側に位置する口元層と、
着用時に外側となる表層と、
前記口元層と前記表層との間に位置するフィルタ層と、
を有し、
前記フィルタ層は、メルトブローン不織布層を2層以上有し、前記メルトブローン不織布層はいずれも等しい目付を有する
マスク。
【請求項2】
前記口元層は、サーマルボンド不織布、パルプとポリエステル繊維とを混抄した混抄紙、およびレーヨン紙からなる群から選択されたものである請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記フィルタ層は、前記メルトブローン不織布層を重ね合わせて形成されている請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記フィルタ層は、前記メルトブローン不織布層とは形態および素材の少なくとも一方が異なる不織布の層である挿入層を有する請求項1?3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記挿入層は、抗菌処理をした不織布から形成された抗菌性不織布層である請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記挿入層は、血液の透過を抑える血液透過防止層である請求項4に記載のマスク。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項3について、本件補正前の特許請求の範囲の請求項3における「前記メルトブローン不織布層が重ねあわされて形成されている」という記載を「前記メルトブローン不織布層を重ね合わせて形成されている」という記載にするとともに、特許請求の範囲の請求項5について、本件補正前の特許請求の範囲の請求項5における「抗菌処理をした不織布からなる抗菌性不織布層」という記載を「前抗菌処理をした不織布から形成された抗菌性不織布層である」という記載にするものであって、特許法第17条の2第5項第4号に規定される明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するものではない。
したがって、本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)特許請求の範囲の【請求項1】のとおりである。

第4 特許法第29条第2項について(1)
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-55036号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

ア 「【0001】
本発明は、医療用、防塵用、防花粉用等に使用されるマスクに関するものである。」(段落【0001】)

イ 「【0024】
以下、本発明の実施形態につき、添付図面を参考にして説明する。図1は本発明に係るマスクの平面図、図2は同じく斜視図、図3は使用状態を示す斜視図である。
【0025】
図中において1はマスク本体であり、このマスク本体1は、口当てシート部2と、口当てシート部2の左右側部に固着される耳掛け部材3(他方の耳掛け部材は図示せず)からなっている。
【0026】
口当てシート部2は、図4に示すように、ここでは表面層2a、第1中間層2b、第2中間層2c及び裏面層2d(口当て側)の四層構造である。各層はポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂の不織布で構成されており、各層の目的に応じてスパンポンド、メルトブロー等の各種製法の不織布が使用される。なお、第2中間層2cには、抗菌性不織布を使用している。
【0027】
口当てシート部2は、前記第1中間層2bと第2中間層2cを、これよりも面積の広い表面層2aと裏面層2dで挟んだ状態のシート素材を使用し、これを二つ折りに折り曲げ、所定形状に溶着し、切断することにより得られる。」(段落【0024】ないし【0027】)

(2)引用文献1の記載から分かること
上記(1)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

カ 上記(1)アから、引用文献1には、医療用、防塵用、防花粉用等に使用されるマスクの発明が記載されていることが分かる。

キ 上記(1)イ及び図面から、引用文献1に記載されたマスクにおいて、マスク本体1は、左右側部の耳掛け部材3と、口当てシート部2とを備えることが分かる。

ク 上記(1)イ及び図面から、マスク本体1の口当てシート部2は、裏面層2d(口当て側)と、表面層2aと、裏面層2dと表面層2aとの間に位置する第1中間層2b及び第2中間層2cとを有することが分かる。

ケ 上記(1)イ及び図面から、口当てシート部2の各層には、目的に応じてメルトブロー製法の不織布が使用されることが分かる。

(3)引用発明1
上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「口当てシート部2と、
左右側部の耳掛け部材3と、
を備え、
口当てシート部2は、
口当て側に位置する裏面層2dと、
表面層2aと、
裏面層2dと表面層2aとの間に位置する第1中間層2b及び第2中間層2cと、
を有し、
第1中間層2b及び第2中間層2cは、メルトブロー製法の不織布からなる第1中間層2b及び第2中間層2cである、
マスク。」

2 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1における「口当てシート部2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「マスク本体」に相当し、以下同様に、「左右側部の耳掛け部材3」は「着用者の両耳又は頭部に掛けることによってマスク本体を前記着用者の顔面の所定の位置に固定する紐」に、「口当て側に位置する裏面層2d」は「着用時に着用者の口元側に位置する口元層」に、「表面層2a」は「着用時に外側となる表層」及び「表層」に、「裏面層2d」は「口元層」に、「第1中間層2b及び第2中間層2c」は「フィルタ層」に、「メルトブロー製法の不織布からなる第1中間層2b及び第2中間層2cである」は「メルトブローン不織布層を2層以上有し」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「マスク本体と、
着用者の両耳又は頭部に掛けることによってマスク本体を前記着用者の顔面の所定の位置に固定する紐と、
を備え、
マスク本体は、
着用時に前記着用者の口元側に位置する口元層と、
着用時に外側となる表層と、
口元層と前記表層との間に位置するフィルタ層と、
を有し、
フィルタ層は、メルトブローン不織布層を2層以上有する
マスク。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「メルトブローン不織布層はいずれも等しい目付を有する」のに対し、引用発明1においては、「メルトブロー製法の不織布からなる第1中間層2b及び第2中間層2c」がいずれも等しい目付を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

3 相違点についての判断
そこで、相違点1について、以下に検討する。
引用発明1においては、「第1中間層2b」及び「第2中間層2c」が等しい目付を有するか否か明らかでないが、マスクの製造に際し、製造を容易にするために、「第1中間層2b」及び「第2中間層2c」を等しい目付とすることは、当業者が容易に着想できる事項である。
また、メルトブローン不織布層を2層以上有するフィルタ層を備えるマスクにおいて、メルトブローン不織布層を等しい目付とする技術は周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2002-316010号公報[特に、段落【0037】、【0044】及び【0046】を参照。実施例4及び実施例5において、単位面積当たりの質量50g/m^(2)のメルトブロー法によるポリプロピレン不織布からなるメインフィルタ層が2層設けられている。]を参照。)であり、設計事項でもある。

したがって、引用発明1において、周知技術を適用し、「第1中間層2b」及び「第2中間層2c」を等しい目付とすることにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明は、引用発明1及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

なお、本願発明の「前記マスクにおいては、メルトブローン不織布層が重ね合わされてフィルタ層が構成されているため、本来の目付のばらつきが抑えられ、均一性が増している。」(段落【0018】)という効果は、「メルトブローン不織布層が重ね合わされてフィルタ層が構成されている」ことによる効果であり、「等しい目付とする」ことによる効果ではない。

4 小結
したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 特許法第29条第2項について(2)
1 引用文献2
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である国際公開第2009/130799号(以下、「引用文献2」という。)には、「多層式マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。(なお、行数は各ページ左側に付された数字による。また、下線は当審で付した。)

ア 「技術分野
本発明は、細菌やウィルス等の感染予防、花粉症対策、大気浮遊物の吸引防止対策などに有効な多層式マスクに関する。」(明細書第1ページ第3行ないし第5行)

イ 「本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装着者の呼吸に対する十分な通気性を確保しつつ、細菌やウィルスが装着者の気管支に侵入するのを防止することができ、かつ、優れた抗菌性・抗ウィルス性を備えている多層式マスクを提供することにある。
本発明の上記目的は、矩形状のマスク本体が装着者の鼻口部を覆うように装着される多層式マスクにおいて、前記マスク本体が、大気浮遊物等を吸収するスパンポンド不織布からなる最外層と、静電気を帯電したメルトブローン不織布からなる第1中間層と、銀イオンおよびゼオライトからなる無機抗菌剤を含有したメルトブローン不織布からなる第2中間層と、前記鼻口部の乾燥を防止可能な保湿性を有するスパンポンド不織布からなる最内層とを積層して構成された薄型4層構造であることにより、達成される。
また、上記目的は、前記マスク本体を構成する各層が、装着時の外面から内面に向かって、前記最外層、前記第1中間層、前記第2中間層、前記最内層の順で積層されていることにより、効果的に達成される。
また、上記目的は、前記マスク本体を構成する各層が、装着時の外面から内面に向かって、前記最外層、前記第2中間層、前記第1中間層、前記最内層の順で積層されていることにより、効果的に達成される。
(中略)
さらに、上記目的は、前記メルトブローン不織布の繊維素材が、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維の群のうちの1つからなることにより、効果的に達成される。」(明細書第3ページ第9行ないし第4ページ第14行)

ウ 「 [第1実施形態]
第1図は、本発明の第1実施形態に係る多層式マスクのマスク本体を構成する各層の形状および配列を概略的に示す斜視図である。また、第2図は、本発明の第1実施形態に係る多層式マスクの外観を概略的に示す正面図であり、第3図は、第2図中の矢印III-III線に沿ったマスク本体の積層構造を概略的に示す断面矢視図である。なお、第1図および第3図では、マスク本体の構成を分かりやすく説明するために、各層を厚みが実際よりも大きく表示されている。
本実施形態に係る多層式マスク1は、 装着者の鼻口部を覆うためのマスク本体2と、該マスク本体2の左右両端部に取り付けられた紐体3とを備え、紐体3が装着者の耳や頭部に係止されることにより、マスク本体2が装着者の鼻口部を覆うように装着される。
マスク本体2は、最外層を形成する矩形状のスパンボンド不織布21と、第1中間層を形成する矩形状のメルトブローン不織布22と、第2中間層を形成する矩形状のメルトブローン不織布23と、最内層を形成する矩形状のスパンボンド不織布24とを積層して構成された薄型4層構造になっている。このマスク本体2を構成する各層21?24は、略同一の形状であり、かつ、略同一の厚さになっている。また、このマスク本体2が装着者の鼻口部を覆うように装着された際には、最外層であるスパンボンド不織布21が外部側に配され、最内層であるスパンボンド不織布24が鼻口部側に配される。」(明細書第5ページ第22行ないし第6ページ第17行)

エ 「また、第1中間層を形成するメルトブローン不織布22は、上述した素材をメル卜ブローン法によって製造する過程で静電気を帯電させた化学繊維から構成されている。
(中略)
表1および表2の結果に示されるように、第1中間層を形成する帯電フィルタ22は、0.1μmクラスの微粒子に対して約99%の捕集率を有し、かつ、0.3μmクラスの細菌に対しても約99%の捕集率を有している。」(明細書第7ページ第3行ないし第9ページ第4行)

オ 「また、 第2中間層を形成するメルトプロ一ン不織布23は、銀イオンおよびゼオライトからなる無菌抗菌剤が含有された化学繊維から構成されている。
(中略)
また、 生地23´の素材や目付に応じてピックアップ率が異なるため、上述した加工液Fの成分比率はこれに限定されるものではなく、第2中間層の不織布23に添加される無菌抗菌剤の最終含有率(重量比)が、第2中間層の不織布23に対して1%になるように適宜調整される。」(明細書第9ページ第5行ないし第10ページ第12行)

カ 「以上のように、本実施形態に係る多層式マスク1によれば、装着者の鼻口部を覆うように装着されるマスク本体2が、大気浮遊物等を吸収するスパンボンド不織布21からなる最外層と、静電気を帯電したメルトブローン不織布22からなる第1中間層と、銀イオンおよびゼオライトからなる無機抗菌剤を含有したメルトブローン不織布23からなる第2中間層と、前記鼻口部の乾燥を防止可能な保湿性を有するスパンボンド不織布24からなる最内層とを備え、これらの各層(不織布21?24) を積層して構成された薄型4層構造になっている。
(中略)
なお、本実施形態では、マスク本体2を構成する各層が、装着時の外面から内面に向かって、最外層(不織布21)、第1中間層(不織布22)、第2中間層(不織布23)、最内層(不織布24)の順で積層されているが、第1中間層(不織布22)と第2中間層(不織布23)の順序がこれと逆であっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。」(明細書第10ページ第25行ないし第12ページ第4行)

(2)引用文献2の記載から分かること
上記(1)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

サ 上記(1)ア及び図面から、引用文献2には、細菌やウィルス等の感染予防、花粉症対策、大気浮遊物の吸引防止対策などに有効な多層式マスクの発明が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)ウ及び図面から、引用文献2に記載された多層式マスクは、マスク本体2と、装着者の耳や頭部に係止される紐体3と、を備えていることが分かる。

ス 上記(1)イないしカ及び図面から、引用文献2に記載された多層式マスクのマスク本体2は、装着時に鼻口部側に配される最内層24と装着時に外側に配される最外層21と、最内層24と最外層21との間に配される第1中間層22及び第2中間層23を有することが分かる。

セ 上記(1)イないしカ及び図面から、引用文献2に記載された多層式マスクの第1中間層22及び第2中間層23は、メルトブローン不織布からなる第1中間層22と、メルトブローン不織布からなる第2中間層23とを有することが分かる。

(3)引用発明2
上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「マスク本体2と、
装着者の耳や頭部に係止される紐体3と、
を備え、
マスク本体2は、
装着時に鼻口部側に配される最内層24と、
装着時に外側に配される最外層21と、
最内層24と最外層21との間に配される第1中間層22及び第2中間層23と、
を有し、
第1中間層22及び第2中間層23は、メルトブローン不織布からなる第1中間層22とメルトブローン不織布からなる第2中間層23とを有する、
多層式マスク。」

2 対比
本願発明と引用発明2を対比する。
引用発明2における「マスク本体2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「マスク本体」に相当し、以下同様に、「装着者の耳や頭部に係止される紐体3」は「着用者の両耳又は頭部に掛けることによってマスク本体を着用者の顔面の所定の位置に固定する紐」に、「装着時に鼻口部側に配される最内層24」は「着用時に着用者の口元側に位置する口元層」に、「装着時に外側に配される最外層21」は「着用時に外側となる表層」に、「最内層」は「口元層」に、「最外層21」は「表層」に、「第1中間層22及び第2中間層23」は「フィルタ層」に、「メルトブローン不織布からなる第1中間層22とメルトブローン不織布からなる第2中間層23とを有する」は「メルトブローン不織布層を2層以上有し」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「マスク本体と、
着用者の両耳又は頭部に掛けることによってマスク本体を前記着用者の顔面の所定の位置に固定する紐と、
を備え、
マスク本体は、
着用時に前記着用者の口元側に位置する口元層と、
着用時に外側となる表層と、
口元層と前記表層との間に位置するフィルタ層と、
を有し、
フィルタ層は、メルトブローン不織布層を2層以上有する
マスク。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「メルトブローン不織布層はいずれも等しい目付を有する」のに対し、引用発明2においては、「メルトブローン不織布からなる第1中間層とメルトブローン不織布からなる第2中間層」がいずれも等しい目付を有するか否か明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

3 相違点についての判断
そこで、相違点2について、以下に検討する。
引用発明2においては、「第1中間層22」及び「第2中間層23」が等しい目付を有するか否か明らかでないが、「第1中間層22」と「第2中間層23」の順序は、相互に置換可能となっていることから、「第1中間層22」と「第2中間層23」の目付は、同等であるとみることが自然である。
また、マスクの製造に際し、製造を容易にするために、「第1中間層22」及び「第2中間層23」を等しい目付とすることは、当業者が容易に着想できる事項である。
さらに、上記第4において周知技術として示したように、メルトブローン不織布層を2層以上有するフィルタ層を備えるマスクにおいて、メルトブローン不織布層を等しい目付とする技術は周知であり、設計事項でもある。

したがって、引用発明2において、周知技術を適用し、「第1中間層22」及び「第2中間層23」を等しい目付とすることにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明は、引用発明2及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

4 小結
したがって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-30 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-25 
出願番号 特願2012-287522(P2012-287522)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三宅 龍平  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 梶本 直樹
金澤 俊郎
発明の名称 マスク  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  

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