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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B |
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管理番号 | 1315619 |
審判番号 | 不服2015-14676 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-05 |
確定日 | 2016-06-28 |
事件の表示 | 特願2011-255620「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 94524、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年12月10日(優先権主張平成14年12月19日、平成15年5月16日)に出願した特願2005-502613号の一部を平成23年11月23日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成26年6月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月19日付けで意見書が提出され、同年12月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年8月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-7に係る発明は、平成25年11月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 第1の基板に接して設けられた下地膜と、 前記下地膜上に設けられた積層された絶縁層と、 前記絶縁層上に設けられたシール材と、 前記下地膜及び前記絶縁層に設けられた開口部を被覆し、且つ前記開口部内で前記第1の基板と接する積層された封止膜と、 前記シール材により前記第1の基板に固着された第2の基板と、を有し、 前記第1の基板は、画素領域を有し、 前記シール材は、前記画素領域を取り囲み、 前記開口部は、前記画素領域を取り囲み、 前記絶縁層の少なくとも一層は有機樹脂材料を有し、 前記シール材は前記封止膜に接し、 前記封止膜のそれぞれの膜はAl、Ti、Mo、WもしくはSiの元素から選ばれた一種、または複数種からなる合金であることを特徴とする表示装置。 【請求項2】 第1の基板に接して設けられた下地膜と、 前記下地膜上に設けられた積層された絶縁層と、 前記絶縁層上に設けられたシール材と、 前記下地膜及び前記絶縁層に設けられた複数の開口部を被覆し、且つ前記開口部内で前記第1の基板と接する積層された封止膜と、 前記シール材により前記第1の基板に固着された第2の基板と、を有し、 前記第1の基板は、画素領域を有し、 前記シール材は、前記画素領域を取り囲み、 前記複数の開口部は、それぞれ前記画素領域を取り囲み、 前記絶縁層の少なくとも一層は有機樹脂材料を有し、 前記シール材は前記封止膜に接し、 前記封止膜のそれぞれの膜はAl、Ti、Mo、WもしくはSiの元素から選ばれた一種、または複数種からなる合金であることを特徴とする表示装置。 【請求項3】 請求項1または請求項2において、 前記下地膜上に設けられたTFTを有することを特徴とする表示装置。 【請求項4】 請求項3において、 前記封止膜は、前記TFTのソース電極及びドレイン電極と同じ配線層で形成されていることを特徴とする表示装置。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項において、 前記封止膜は、引き回し配線に用いられることを特徴とする表示装置。 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項において、 前記封止膜は、FPCの最も外側の端子と電気的に接続していることを特徴とする表示装置。 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか一項において、 前記有機樹脂材料はアクリル、ポリアミド、ポリイミドまたはアルキル基を含む酸化珪素から選ばれた一種、または複数種からなることを特徴とする表示装置。」 第3 原査定の理由の概要 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1又は2の構成要件(開口部の存在)と、本願の発明の詳細な説明の段落[0046]乃至[0055]の記載等の本願発明の実施の態様との対応関係が不明である(例えば、同段落の実施の形態1は、開口部を設けた構造ではない。したがって、同実施の形態1については、本願発明の“実施”形態とはいえないのではないか。)。 よって、請求項1乃至7に係る発明は明確でない。 第4 当審の判断 1 特許請求の範囲の記載について 本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は、上記「第2」に記載したとおりのものであるところ、この記載からは、請求項1ないし7に記載されたとおりの発明(以下、「本願発明」と総称する。)が明確に把握される。また、請求項1ないし7の記載において、その記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情も見いだせない。 そして、特許請求の範囲の記載からみて、本願発明は、「開口部」の構成を具備する発明であり、この点は、特許請求の範囲の記載から、明確に把握できる事項である。 2 発明の詳細な説明の記載について (1)本件出願の発明の詳細な説明の記載は、以下の通りである。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電極間に発光材料を挟んだ素子(以下、発光素子という)を有する表示装置(以下、表示装置という)及びその作製方法に関する。特に、EL(エレクトロルミネッセンス:Electro Luminescence)が得られる発光性材料(以下、EL材料という)を用いた表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、発光材料のEL現象を利用した発光素子(以下、EL素子という)を用いた表示装置(EL表示装置)の開発が進んでいる。EL表示装置は発光素子自体に発光能力があるため、液晶ディスプレイのようなバックライトが不要である、またさらに視野角が広い、コントラストが高いなどの利点を備えている。 ・・・略・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 ・・・略・・・ 【0022】 よって、本発明は、EL表示装置を大型化することなく、EL素子の特性を劣化させる原因である侵入する水分や酸素を遮断し、信頼性の高いEL表示装置と、その作製方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0023】 ・・・略・・・ 【発明の効果】 【0041】 本発明の構成を採用することにより、以下に示すような効果を得ることが出来る。 【発明を実施するための形態】 【0046】 (実施の形態1) 本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。 【0047】 表示装置の封止領域では、TFT基板上のゲート絶縁膜や層間膜や配線が積層され、絶縁層となっている。図3において、31は基板、32は対向基板、33は絶縁膜、34、35は層間膜、36は保護膜である封止膜、37はシール材である。なお図3の積層例は一例であって、TFT基板側に積層されている膜の材料や積層の順番はこの例に限定されない。ここでは例としてガラス基板上に下地膜(図示しない)、ゲート絶縁膜、保護膜や層間膜、1番上に封止膜が積層している構造となっている。 【0048】 前述のように、発光しない画素部以外の表示装置面積を減らすため、シール材は前記積層された絶縁層の上に塗布され、絶縁層を含む基板と対向基板と接着(固着)している。本実施の形態では、図3で示すように、1番上に積層された封止膜は配線と同じ材料の膜で配線と同時に形成され、それより前に積層された下地膜(図示しない)、絶縁膜、層間膜、保護膜などを覆う構造になっている。 【0049】 この封止膜により、層間膜などの膜は表示装置外部の大気と直接接しなくなる。このため、表示装置外部の水や酸素が、層間膜などや、膜と膜の隙間から通って表示装置内に侵入することを防止することができる。よって、水や酸素などが引き起こしていた表示装置の内部の汚染、電気特性の劣化、ダークスポットやシュリンクなど様々な劣化を防止することができ、表示装置の信頼性を向上させることができる。また、本発明は表示装置を構成している膜と同じ材料の膜を封止膜として利用することから、工程数を増やすことなく、信頼性の高い表示装置を作製することができる。 【0050】 水や酸素などを遮断する封止膜は、保護膜として機能するので、この封止膜は緻密な構造のものが望ましい。 【0051】 また、封止膜は導電性薄膜、絶縁性薄膜から選ばれた一種、または複数種からなる膜を用いてもよい。導電性薄膜としてはAl、Ti、Mo、WもしくはSiの元素から選ばれた一種、または複数種からなる合金膜などの膜を用いてもよい。絶縁性薄膜としては窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、または窒素含有炭素膜から選ばれた一種、または複数種からなる膜を用いることができる。 【0052】 また絶縁層に用いる有機樹脂材料は、アクリル、ポリアミドまたはポリイミドなどを用いることができ、材料に限定されない。また、珪素と酸素との結合で骨格構造が形成された材料を用いても良い。珪素と酸素との結合で骨格構造が形成された材料としては、シロキサン系ポリマーが代表例として挙げられ、詳しくは、珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され置換基に少なくとも水素を含む材料、又は、置換基にフッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料である。 【0053】 また、図5のように、封止膜を一層だけでなく、2層以上設けてもよい。その時、導電性のある膜で覆うときは、表示装置内部でのショートなどを避けるため、図5の(B)のように、表示装置内部領域とは分断して、封止領域のみに積層する必要がある。このように表示装置端部を積層して遮断すると、封止膜単層よりさらに汚染物質の遮断効果があがる。 【0054】 また、図3の側面図で示すように、封止膜で覆うとき、覆われる下の層の膜の形状は、傾斜面が曲率半径が連続的に変化する形状(なだらか)であると、上層の薄膜が段切れせずに形成されるため好ましい。下の層の膜の傾斜面は下の層の膜表面がなだらかでない場合、下層膜の表面上で封止膜の膜厚が薄くなり、破壊されてしまう。破壊された膜では汚染物質を十分に遮断することができず、本発明の効果が減少してしまう。また、覆われる下層膜の表面の平坦性がよいほうが、重ねて形成される封止膜のカバレッジがよく、より本発明の効果は向上する。従って、下層膜として感光性材料を用いてウェットエッチングを行うことは、膜表面の荒れが少なく、平坦性がよくなるので好ましい。 【0055】 以上のように、発光しない画素部以外の表示装置面積を増やすことなく、劣化の原因となる汚染物質を遮断した信頼性の高い表示装置を得ることができる。 【0056】 (実施の形態2) 本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。 【0057】 表示装置の封止領域では、TFT基板上の絶縁膜や層間膜や配線が積層され、絶縁層となっている。図4において、41は基板、42は対向基板、43は絶縁膜、44、45は層間膜、46は保護膜である封止膜、47はシール材である。なお、図4の積層例は一例であって、TFT基板側に積層されている膜の材料や積層の順番はこの例に限定されない。ここでは例としてガラス基板上に下地膜(図示しない)、絶縁膜、保護膜や層間膜、1番上に封止膜が積層している構造となっている。 【0058】 前述のように、画素部以外のパネル面積を減らすため、シール剤は前記積層された絶縁層の上に塗布され、絶縁層を含む基板と対向基板と接着している。本実施の形態では、図4で示すように、積層された下地膜(図示しない)、絶縁膜、層間膜、保護膜などに開口部を設け、その開口部に封止膜を積層された膜を覆うように形成した構造になっている。この封止膜は配線と同じ材料で同時に形成される。 【0059】 この封止膜によって、封止膜より下の有機樹脂材料などを含んだ絶縁層は表示装置内で内側の領域と外側の領域に切り離される。表示装置内側の領域のそれらの膜は表示装置外部の大気と直接接しない。このため、切り離された表示装置内の外側の絶縁層が大気に曝され、層間膜や膜と膜の隙間から表示装置外部の水や酸素が、外側の領域の層間膜などや膜と膜の間を通してパネル内に侵入したとしても、封止膜によって遮断され、表示装置内部に侵入することができない。従って、水や酸素などが引き起こしていた表示装置の内部の汚染、電気特性の劣化、ダークスポットやシュリンクなど様々な劣化を防止することができ、表示装置の信頼性を向上させることができる。また、表示装置を構成している膜と同じ材料で同時に封止膜を形成するので、工程数を増やすことなく作製する表示装置の信頼性を向上させることができる。 【0060】 水や酸素などを遮断する封止膜は、保護膜として機能するので、この封止膜は緻密な構造のものが望ましい。 【0061】 また、封止膜は導電性薄膜、絶縁性薄膜から選ばれた一種、または複数種からなる膜を用いてもよい。導電性薄膜としてはAl、Ti、Mo、WもしくはSiの元素から選ばれた一種、または複数種からなる合金膜などの膜を用いてもよい。絶縁性薄膜としては窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、または窒素含有炭素膜から選ばれた一種、または複数種からなる膜を用いることができる。 【0062】 また絶縁層に用いる有機樹脂材料は、アクリル、ポリアミドまたはポリイミドなどを用いることができ、材料に限定されない。また、珪素と酸素との結合で骨格構造が形成された材料で形成してもよい。珪素と酸素との結合で骨格構造が形成された材料としては、シロキサン系ポリマーが代表例として挙げられ、詳しくは、珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され置換基に少なくとも水素を含む材料、又は、置換基にフッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料である。 【0063】 また、パネル内部で封止膜で分断し、かつ、実施の形態1のようにパネル端部を封止膜が覆う構造でもよい。多層膜は複数回分断されていてもよいし、表示装置内部において、どの部分で分断されていてもよい。つまり、画素領域と周辺駆動回路領域の間で分断されていてもよいし、封止領域で分断されていてもよい。 【0064】 絶縁層は複数開口部を設けて封止膜で覆ってもよいし、表示装置内部において、どの部分で開口部を設けてもよい。画素領域と周辺駆動回路領域の間で封止されていてもよいし、封止領域で封止されていてもよい。しかし、前記シール材の外側に位置する前期絶縁層の外端部は、封止膜で被覆されている必要がある。よって、開口部がシール材より外側に位置した場合、図4のように前記外端部は開口部であってもよい。 【0065】 また、本実施の形態の図4では開口部をガラス基板に達するように形成しているが、本発明の構造はこれに限定されない。つまり、吸湿性のあるような有機材料を含む絶縁膜を封止膜で覆うことができればよいので、窒化珪素膜など封止膜として用いることのできる膜に達するまで開口部を形成し、封止膜で覆ってもよい。 【0066】 また、図5のように、封止膜を一層だけでなく、2層以上設けてもよい。図5(A)において、501は基板、502は対向基板、503は絶縁膜、504、505は層間膜、506、508は保護膜である封止膜、507はシール材である。その時、導電性のある膜で覆うときは、表示装置内部でのショートなどを避けるため、図5の(B)のように、表示装置内部領域とは分断して、封止領域のみに積層する必要がある。図5(B)において、511は基板、512は対向基板、513は絶縁膜、514、515は層間膜、516、518は保護膜である封止膜、517はシール材である。このように表示装置内部での分断回数を増加させたり、端部を覆う構造と組み合わせたり、表示装置端部を積層したりして遮断すると、封止膜単層よりさらに汚染物質の遮断効果があがる。 【0067】 本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わすことができる。 【0068】 以上のように、発光しない画素部以外の表示装置面積を増やすことなく、劣化の原因となる水や酸素などの汚染物質を遮断した信頼性の高い表示装置を得ることができる。 【実施例1】 【0069】 本実施例ではアクティブマトリクス基板の作製方法について図6?図9を用いて説明する。 ・・・略・・・ 【実施例2】 【0095】 本実施例では、実施例1で示したアクティブマトリクス基板を作製するときのTFTの作製方法を用いて、表示装置を作製した例について説明する。 ・・・略・・・ 【実施例3】 【0118】 本実施例では、実施例2で作製した表示装置において、封止膜の構造が異なる例を図10を用いて説明する。よって実施例2と同様な構造の部分は、実施例2の方法で作製すればよい。 【0119】 本実施例でも実施例2と同様実施例1で示したアクティブマトリクス基板を作製するときのTFTの作製方法を用いて、表示装置を作製する。 ・・・略・・・ 【0126】 本実施例は、実施の形態1、2、実施例1、2を組み合わせてもよく、またはそれらを複数組み合わせて用いてもよい。 【実施例4】 【0127】 本実施例では、実施例2または実施例3で作製した表示装置において、画素電極とソース、ドレイン電極の接続構成、封止膜の構造が異なる例を、図18を用いて説明する。 ・・・略・・・ 【0134】 本実施例では、EL表示装置の場合について封止構造を適用したが、実施例1や本実施例の平坦化膜を用いた構造を有する液晶表示装置にも本発明の封止構造は適用できる。その場合は、本発明の封止構造を用いて、表示部を発光素子ではなく液晶を用いた表示装置を作製すればよい。 【0135】 本実施例は、実施の形態1または2、実施例1、2、3と組み合わせてもよく、またはそれらを複数組み合わせて用いてもよい。 【実施例5】 【0136】 本発明を適用して、様々な表示装置(アクティブマトリクス型表示装置)を作製することができる。即ち、それら表示装置を表示部に組み込んだ様々な電子機器に本発明を適用できる。 ・・・略・・・ 【実施例6】 【0153】 本実施例では、実施例2または実施例3で作製した表示装置において、封止膜の構造が異なる例を、図20、図21を用いて説明する。 ・・・略・・・ 【実施例7】 【0157】 本実施例では、表示装置の端部を引き回されている配線の配置が異なる表示装置を図1、図19、図22及び図25を用いて示す。 ・・・略・・・ 【0161】 図25に示すように、左の上下にわずかなシュリンクと見られる輝度劣化が生じているが、ほとんど劣化はしていない。また図23の、配線の配置が図19である従来のものと比較すると若干劣化の程度が軽い。よって本発明により、表示装置の劣化を防ぐ効果が向上することが確認できた。 本発明の構造により、水や酸素などが引き起こしていた表示装置の内部の汚染、電気特性の劣化、ダークスポットやシュリンクなど様々な劣化を防止することができ、表示装置の信頼性をより向上させることができる。」 (2)開口部について 本件出願の発明の詳細な説明の段落【0046】には「(実施の形態1) 本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。」と記載されている。また、実施の形態1(段落【0046】?【0055】、【図3】及び【図5】)には、前記のとおり、「開口部」に関する記載が存在しない。 これに対して、上記「第2」のとおり、特許請求の範囲には、「開口部」の構成が記載されているから、本願発明は「開口部」の構成を具備する発明である。 そうしてみると、「実施の形態1」は、その「実施の形態1」全体を発明と捉えた場合においては、本願発明と対応しない発明ということになる。また、この意味においては、「実施の形態1」において、「本願発明の実施の形態」ではないものが、「発明の実施の形態」と記載されていることになる。 しかしながら、前記「1」で述べたとおり、特許請求の範囲の記載からは、本願発明の構成が明確に把握できる。 「実施の形態1」に「開口部」に関する記載がないとしても、本願発明の構成は明確である。 加えて、本願発明の「開口部」に関しては、実施の形態2(段落【0056】?【0067】、【図4】及び【図5】)に記載があるところ、段落【0067】には、「本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わすことができる。」と記載されている。そして、「実施の形態1」には、例えば、ウェットエッチングにより下層膜をなだらかに形成する技術事項が開示されている(段落【0054】、この技術事項は、「実施の形態2」では開示されていない)ところ、「実施の形態1」からこの技術事項を取り出して「実施の形態2」と組み合わすことができることは、技術的にみて明らかである。 そうしてみると、「実施の形態1」は、その「実施の形態1」全体を発明と捉えた場合においては本願発明と1対1対応しない発明ということになるとしても、そこに開示された技術事項の一部においては、本願発明と対応した発明である。 以上を勘案すると、本件出願の発明の詳細な説明に「実施の形態1」の記載があるとしても、本願発明は明確である。 また、特許請求の範囲における他の記載を勘案しても、本願発明は明確である。 第5 むすび 以上のとおり、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-06-14 |
出願番号 | 特願2011-255620(P2011-255620) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H05B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 居島 一仁、越河 勉 |
特許庁審判長 |
鉄 豊郎 |
特許庁審判官 |
渡邉 勇 樋口 信宏 |
発明の名称 | 表示装置 |