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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1315658
異議申立番号 異議2016-700232  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-17 
確定日 2016-06-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第5795679号「ジェリーロール型の電極組立体を製造するためのマンドレル」の請求項1?11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5795679号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5795679号の請求項1?11に係る特許についての出願は、2012年2月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月31日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、平成27年8月21日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人平賀博により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5795679号の請求項1?11の特許に係る発明(以下、「本件発明1?11」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本件発明1は、次のとおりである。なお、符号A?Dについては、説明のために当審で付したものである(以下、「構成A」?「構成D」という。)。
「【請求項1】
A カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体を使用する ジェリーロール型の電極組立体を製造する 巻き取り工程 で使用されるように構成されたマンドレルにおいて、
B1 前記マンドレルは、その回転中心軸と垂直な断面で楕円形であり、
B2 前記シート状積層体の端部が挿入固定される該マンドレルの中央部の一側に配置された第1のマンドレル部と、該マンドレルの中央部の反対側に配置された第2のマンドレル部と、に分けられ、
C 前記第1のマンドレル部及び前記第2のマンドレル部は、前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する本体部と、該マンドレルの長軸の端部を有すると共に前記本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部と、をそれぞれ有しており、
D 前記交換部は、前記マンドレルの中央部の中に端部が入れられた状態で前記シート状積層体が該マンドレルに巻き取られるときに 該マンドレルが一定の速度で回転している間に該マンドレルの長軸の端部から前記シート状積層体に加えられる捲回応力が減少するように、前記マンドレルの回転中心軸に垂直な断面において、該マンドレルの外側の傾斜が 該マンドレルの短軸の端部から該マンドレルの長軸の端部に掛けて連続的に変化する 半楕円形の構造を持つように構成されている、
マンドレル。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証?甲第12号証を提出し、以下の申立理由1により、請求項1?11に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

[申立理由1]
本件発明1?11は、甲第1号証に記載された発明に基づき、周知技術(甲第2号証?甲第12号証)を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2003-335437号公報
甲第2号証:特表2006-511908号公報
甲第3号証:特開平9-63909号公報
甲第4号証:特開2004-335380号公報
甲第5号証:特開2004-127860号公報
甲第6号証:特開2006-286492号公報
甲第7号証:特開2003-48647号公報
甲第8号証:特開2010-265118号公報
甲第9号証:特開2000-331704号公報
甲第10号証:特開平6-251774号公報
甲第11号証:特開2001-135302号公報
甲第12号証:特開2009-249176号公報

第4 刊行物の記載
1 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第1号証には、「巻回素子の巻取装置」)(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(なお、下線は当合議体が付加したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、巻取装置に係り、より詳しくは、例えば二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻取装置に関するものである。」
(1b) 「【0031】
【発明の実施の形態】以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0032】まず、本実施の形態の巻取装置によって得られるリチウムイオン電池素子の構成について説明する。図10に示すように、巻回素子としての電池素子1は、複数の帯状体2が扁平形状に巻回された巻回体を主として備えている。帯状体2は、2枚のセパレータ3,4と、プラス電極箔5及びマイナス電極箔6とによって構成されている。セパレータ3,4は、異種の電極箔5,6が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止するべく絶縁体よりなる。プラス電極箔5及びマイナス電極箔6には、活物質が塗布されており、電極箔5,6の巻き中心部分には、長板状のリード7,8が電池素子1から突出するようにして取り付けられている。
【0033】次に、図1乃至図9に従って上記電池素子1を製造するための巻取装置11について説明する。巻取装置11は、回転駆動手段12及び支持手段13を備えており、これら両手段12,13により巻芯14が回転可能に支持されている。図1,2は、巻芯14の基端部側、すなわち、巻取装置11のうちの回転駆動手段12を示す部分平面図,部分側面図である。これらの図に示すように、巻取装置11の回転駆動手段12は、駆動源を構成する図示しないサーボモータを備えており、該サーボモータの駆動軸の回転に伴って回転可能な回転軸15を備えている。回転軸15の先端には、略円板状の取付フランジ16が一体的に設けられている。この取付フランジ16には、一対の取付アーム17が先端側(図の左側)に突出するようにして一体形成されている。取付アーム17の両面は平坦面となっており、両面を貫通するようにしてそれぞれ2つずつのねじ孔18,19が形成されている。
【0034】図1乃至図4に示すように、本実施の形態では、前記各取付アーム17に対し巻芯14が取付けられている。より詳しくは、巻芯14は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成されており、各巻芯片14A,14Bの基端部21が前記取付アーム17に取付けられている。巻芯片14A,14Bは、板状の基端部21と、基端部21から延び前記帯状体2を巻取るための本体部22と、本体部22の先端側に位置し、比較的幅狭な先端部23とを備えている。
【0035】各本体部22は板厚約3mmの板状体によって構成されており、断面略台形状をなしている。また、一対の巻芯片14A,14Bが設置された状態にあっては、断面が略平行四辺形状をなすよう構成されており、その中央にスリット24が形成されるようになっている(図9参照)。
・・・
【0047】上記のように構成されてなる巻取装置11においては、まずセパレータ3,4の先端部分が、所定位置まで引っ張り込まれ、それまで支持手段13から離間した位置にあった巻芯14が回転駆動手段12とともに移動させられ、前記支持手段13の収容穴に巻芯片14A,14Bの先端部23が収容される。これにより巻芯片14A,14Bの平行状態が維持された状態で、巻芯14が両端部において支持されることとなる。また、この時点において、スリット24内にセパレータ3,4が入り込む格好となる。続いて巻芯14を回転させつつ適宜プラス電極箔5及びマイナス電極箔6を案内し、その後、巻芯14を高速で回転させることで、セパレータ3,4及び電極箔5,6を巻き付けていく。そして、巻芯14が所定回転数だけ回転させられることによって、帯状体2が巻き取られる。さらに、巻芯14が再度離間状態とさせられることで、巻回体が巻芯14から取り外される。そして、該巻回体を押し潰すことで、図10に示すような肉薄の電池素子1が得られることになる。」
(1c) 「【図1】


(1d) 「【図2】


(1e) 「【図3】


(1f) 「【図4】


(1g) 「【図9】



(2) 甲第1号証に記載された発明
ア 上記(1b)の【0034】の記載によれば、巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成されており、各巻芯片14A,14Bは、それぞれ、板状の基端部と、前記基端部から延び、帯状体を巻き取るための本体部と、前記本体部の先端側に位置し、比較的幅狭な先端部を備えている(なお、巻芯片についてのみ符号14A及び14Bを付与している。以下、同様である。)。

イ 上記(1b)の【0035】の記載によれば、一対の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形をなすように構成されており、その中央にスリットが形成されるようになっている。

ウ 上記(1b)の【0032】及び【0047】の記載によれば、巻芯片14A,14Bの平行状態が維持された状態で、巻芯が両端部において支持された時点において、スリット内に2枚のセパレータが入り込む格好となり、続いて巻芯を回転させつつプラス電極箔及びマイナス電極箔を案内し、その後巻芯を高速で回転させることで、2枚のセパレータ、プラス電極箔及びマイナス電極箔を巻き付けていき、巻芯を所定回数回転することにより、2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体が巻き取られ、さらに、巻芯を再度離間状体とすることで、巻回体が巻芯から取り外されるものである。

エ 上記ウの記載事項から、巻回体は、巻芯を回転させて、前記巻芯に、2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより製造されるものであるといえるから、巻芯は、2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより巻回体を製造するためのものに他ならない。

オ 上記アの記載事項によれば、巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、この2本の巻芯片14A,14Bは、それぞれ、帯状体を巻き取るための本体部を備えており、また、上記イの記載事項によれば、一対の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形をなすように構成され、その中央にスリットが形成されるようになっており、さらに、上記ウの記載事項によれば、スリット内に2枚のセパレータが入り込むものであるから、巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、前記2本の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形であり、前記2本の巻芯片14A,14Bの中央に、前記2枚のセパレータが入り込むスリットが形成されているといえる。

キ 上記エ?オの検討事項から、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、符号a?bについては、説明のために当審で付したものである(以下、「構成a」?「構成b」という。)。
「a 2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより巻回体を製造するための巻芯であって、
b 前記巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、前記2本の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形であり、前記2本の巻芯片14A,14Bの中央に、前記2枚のセパレータが入り込むスリットが形成されている、
巻芯。」(以下、「甲1発明」という。)

2 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第2号証には、「電気エネルギー貯蔵アッセンブリの巻回装置の構造」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(2a) 「【0186】
更に詳細には、マンドレル610の外包囲体は、好ましくは、円形円筒形の二つの凸状セクタによって画成される。これらのセクタは同じ半径(図2のR1)を有するが、遠く離れた平行な軸線を有し、更に、マンドレルの垂直断面を画成するこの外輪郭は、半径が小さい丸味のある端部615及び616を有する。
【0187】
マンドレル610の長さ(その回転軸線611と平行な長さ)は、巻付けのため、積層体の幅よりも大きい。
【0188】
更に詳細には、及び好ましくは、マンドレル610は、二つの対称であり且つ相補的な二つのジョー612及び614で形成されている。これらの二つのジョー612及び614間の界面、即ち巻付け位置でのこれらのジョーの互いの支承面、即ち添付図面で参照番号613を付した面は、好ましくは平らであり、マンドレルの二つの湾曲した外輪郭表面を、外輪郭の楕円のテーパ端から所定距離のところで相互連結する。」
(2b) 「【0361】
詳細には、図55に示す非限定的実施形態では、マンドレルは、かくして三つの部品で形成されている。これらの部品には、二つの横部品1612及び1614及びこれらの間の中央部品1610が含まれる。変形例では、マンドレルは二つのこのような部品だけを含んでもよい。更に、これらの部品1610、1612、1614の各々の回転軸線611に対して横方向に計測した「半径方向」寸法が、前記軸線と平行なその長さに沿って変化するということが観察されなければならない。更に詳細には、中央部品1610の半径方向寸法は、横部品1612及び1614とは逆方向に変化する。
【0362】
図55A及び図55Bを比較すると、部品1610を任意の適当な手段によって部品1612及び1614に対して軸線611と平行に変位したとき、マンドレルの断面の大きさ即ちこの断面の長軸が変化する、ということは当業者には理解されよう。」
(2c) 「【0366】
図57は、マンドレルが特に図2を参照して上文中に説明したのと同じ断面を備えているが、ジョー612、164の相対変位の制御が簡単になった変形例を示す。ジョー612、614の相対変位の制御は、これらのジョー612、164が、界面613の平面と平行でない方向で、即ち図57で参照符号Tを付した、ジョーの界面613に対して斜めの軌跡に沿って、互いに平行に並進移動だけを行うように保持することによって簡単になる。」
(2d) 「【図2】


(2e) 「【図55】


(2f) 「【図57】



3 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第3号証には、「偏平形状巻回型素子巻取装置の巻取軸」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(3a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電池素子またはコンデンサ素子等の偏平形状巻回型素子を製造するためのフィルム巻取装置に関し、さらに詳しくはかかる巻取装置における巻取軸に関する。」
(3b) 「【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の巻回型素子用巻取軸の一実施例を示すもので、巻取軸の断面図である。この図において、スリット4を有する中央部分1の断面は円であり、中央部分1の両側に翼部分2が接している。この巻取軸にフィルムfが巻かれると、中央部分1、翼部分2、フィルムfの3者によって囲まれた空間3ができる。この図の場合、中央部分1の円は直径8mm、一方の翼2の端から他方の翼2の端まで、すなわち巻取軸の最長部分は24mmであり、翼部分の最大幅は5mmである。中央部分1は巻取軸の先端のみにスリットが形成された一体型のものでもよいし、スリットを境に二体となった二体型でもよい。
【0012】本発明ではこのような巻取軸が図9または図10に示す巻取装置に設置されていて、素子の巻取が行われる。巻取が終了した後の巻取軸の抜き取りは、まず中央部から行われ、図9または図10に示す矢印方向に引き抜かれる。中央部はフィルムが鋭角に巻かれていないので応力が弱く、容易に抜き取ることができる。中央部を抜き取ると、フィルムに弛みができるので難なく翼部分を抜き取ることができる。巻回素子は巻取軸カラーに遮られて巻取軸から離脱する。この巻取軸からの離脱をさらに円滑に行うために、巻取軸カラーの中央部分、丁度スリットが通過する部分に金属線または金属板を設けることもできる。」
(3c) 「【図1】


上記(3b)の【0011】の記載を参照すると、図1には、巻取軸において、中央部分1の両側に接している翼部分2は、巻取軸の長軸の端部に位置することが見て取れる。

4 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第4号証には、「非水電解液電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(4a) 「【0025】
電極捲回体は、図3に示すような手順で作製することができる。まず、図3(a)に示すごとく、セパレータ5を2つ割の巻芯25に挟んで1周巻く。次に、図3(b)に示すごとく、負極4を短尺4aのみの一層部分から巻芯25に向けて挿入して、セパレータ5とともに1周巻き込む(図3(c)参照)。続いて、図3(c)に示すごとく、正極3をセパレータ5を介して負極4上に載置して巻芯25で捲回する。正極3は、両正極シート20・21および集電体22を固定した巻始端Sの側から捲回されるようにしてあり、長尺の負極4b上にセパレータ5を介して載置された状態で捲回される。正極3の捲回始端部Sと捲回末端部Eとで規定される捲回数が1.5周以上、2.5周以下となるように正負極3・4およびセパレータ5を捲回する。捲回終了後は、セパレータ5が最外周を覆う形となる。セパレータ5の捲回末端部Eを固定テープで固定する。以上より、図1に示すような形態の電極捲回体6を得ることができる。
【0026】
巻芯25は、全体として楕円形状を呈しており、従って電極捲回体6の中心には、図1に示すごとく正負極3・4のない略楕円形状の捲回中心部Cが形成される。楕円形の巻芯25の長軸と短軸の寸法差は、正負極3・4およびセパレータ5の厚み寸法の合計値Wと略同寸法に設定されている。」
(4b) 「【図3】



5 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第5号証には、「捲回装置用挟込巻芯」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(5a) 「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電池素子材料の捲回装置用挟込巻芯に関するものである。」
(5b) 「【0008】
捲回装置用挟込巻芯の作動について具体的に図面により説明する。
図1は本願発明巻回装置用巻芯の板状治具3及び板状治具6の断面の様子と作動初期の状態を示す図で、セパレーター等絶縁体挟込中心部1及び挟込中心部1と連結された突端部2を有する板状治具3と挟込中心部4及び挟込中心部4と連結された突端部5を有する板状治具6をそれぞれ矢印A及びB方向に移動させることにより、セパレーター等絶縁材7を挟込中心部1及び4によって挟込固定し、その後板状治具3及び後板状治具6を回転させ電池素子材料を捲回する。
【0009】
図2は本願発明巻回装置用巻芯の板状治具3及び板状治具6の断面の様子と電池素子材料捲回後の状態を示す図で、電池素子材料捲回後、挟込中心部1及び4をそれぞれ矢印B及びA方向へ移動させることにより隙間8が発生し、セパレーター等絶縁体7の挟込固定が解除される。また、同時に挟込中心部1と連結されている突端部2及び挟込中心部4と連結されている突端部5がそれぞれ矢印A及びB方向へ移動することにより捲回後電池素子材料11との隙間9及び10が発生し、容易に板状治具3及び6から捲回後電池素子材料11を抜き取ることが可能となる。
達ピン13がホルダー14と接触し、機構部全体をD方向へ移動させる。」
(5c) 「【図1】


上記(5b)の【0008】の記載を参照すると、図1には、巻回装置用巻芯において、突端部2及び5は、巻回装置用巻芯の長軸の端部に位置することが見て取れる。
(5d) 「【図2】



6 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第6号証には、「巻回芯およびその巻回芯を用いた電極体の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(6a) 「【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の電池缶などに内蔵される電極体を製造するための巻回芯およびその巻回芯を用いた電極体の製造方法に関する。」
(6b) 「【0007】
本発明が対象とする巻回芯21は、図5に示すごとく、帯状の正極6と帯状の負極7を帯状のセパレータ9を介在させた状態で巻回して電極体2を製造するのに用いる。本発明の巻回芯21は、図1および図2に示すごとく、正極6と負極7とセパレータ9とが巻き付けられる長棒状の外軸22と、セパレータ9を固定するための長棒状の中軸25と、外軸22の一端に着脱自在に取り付けられる受け軸26とを含む。外軸22の軸芯部分には、外軸22の軸芯方向に延びて外軸22の一端で開放される空間23を形成してあって、中軸25は、中軸25の軸芯が外軸22の軸芯に沿う姿勢で空間23内に配される。受け軸26は、外軸22の一端に取り付けられた際に中軸25の先端部25bに着脱自在に外嵌する嵌入部35を有している。中軸25は、中軸25の終端部25aが空間23の奥部に固定されるとともに、中軸25の軸芯方向に延びて中軸25の先端で開放される中軸スリット29を有していて、中軸スリット29によって先端側が二股状に分かれている。外軸22は、中軸スリット29に対峙する外軸スリット27を有していて、セパレータ9が外軸スリット27を介して中軸スリット29内に導入されるようにしてあり、受け軸26の嵌入部35を中軸25の先端部25bに外嵌したときには、嵌入部35の内周面で中軸25の先端部25bの外周面が中軸スリット29の隙間の幅方向に押されて、中軸スリット29が閉じられてセパレータ9が挟み込まれる。ここでの外軸22は、菱形、楕円形、六角形あるいは八角形などの断面形状に形成される。外軸22は、中軸25の終端部25a側が先端部25b側よりも外軸スリット27の隙間の幅方向に広がるテーパー状に設定しておき、受け軸26を中軸25に外嵌したときに中軸25の先端部25b側が外側に押し広がって、中軸25の終端部25a側と中軸25の先端部25b側とにおけるスリットの隙間の幅方向の寸法がほぼ等しくなるように設定してもよい。」
(6c) 「【図1】


上記(6b)の記載を参照すると、図1には、巻回芯21において、外軸22は、巻回芯21の長軸の端部に位置することが見て取れる。

7 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第7号証には、「電極シートの巻取り機」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(7a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば電池を製造する工程において電池の電極シートを巻き取る際に使用する電極シートの巻取り機に関するものである。一般的にリチュームイオン電池等の2次電池は、図1に簡略化して示すようにプラスまたはマイナスである電極シート301,302と、これを絶縁する2枚のセパレータ304,305の合計4枚のシートを巻芯303に巻きつけてできるコイル状の巻取り品より構成されている。」
(7b) 「【図1】



8 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第8号証には、「巻芯」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(8a) 「【0003】
ところが、前記捲回後に巻芯を電極体から抜き取る際に、ピン(巻芯)抜け不良や成形時のセンターピン(巻芯)挿入不良による素子形状異常等があり、電池の歩留まりの低下の大きな要因となっていた。そこで、ピン抜け性を改良するために、捲回用ピン(巻芯)として、従来の鉄製の巻芯に代えて、巻芯の表面をクロムメッキ処理鏡面加工されたものが使用されているが、いまだ十分とはいえず、巻芯の抜き取り時の滑りが悪いため、巻芯を抜き取った際に、電極素子の形状が竹の子状態になったり、抜けなかったりすることが起こっていた。・・・」

9 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第9号証には、「捲回型電極の製造装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(9a) 「【0022】なお、第1の巻芯部材1および第2の巻芯部材1′は、たとえば鉄鋼製であり、一般的に、断面半円状領域1a,1a′の径は 2? 4程度である。・・・」

10 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第10号証には、「円筒型電池用巻芯」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(10a) 「【0004】ところで、上記巻回時に用いる巻芯としては、図12に示すように、断面形状が略星型を成す鉄製の巻芯20が用いられていた。・・・」

11 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第11号証には、「リチウム二次電池及びその作製方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(11a) 「【0029】 ・・・なお、巻芯13は、金属、樹脂、セラミック等種々の材質のものを用いることができ、導電性材料を用いる場合には、電極板2・3との絶縁を確保しなければならない。」

12 本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲第12号証には、「巻取装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(12a) 「【0031】
本実施形態において、巻芯コア2は、十分な剛性を有する材料(例えば、アルミニウム等の金属素材やポリプロピレン(PP)等の樹脂素材)により形成されている。・・・」

第5 判断
1 本件発明1について
(1) 本件発明1と甲1発明との対比
ア 構成Aについて
(ア) 甲1発明において、「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体」は、2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とが積層されたものであって、「巻芯」で「巻き取」られることにより、電池素子を形成するものであるから(甲第1号証の上記(1b)の【0047】参照。)、長いシート状積層体であるといえる。また、上記「プラス電極箔及びマイナス電極箔」が、それぞれ、電池のカソード及びアノードに対応する。
したがって、甲1発明の「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体」は、本件発明1の「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体」に相当する。

(イ) 本件発明1の「ジェリーロール型の電極組立体」は、「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体」が巻かれた構造である(本件特許明細書【0004】参照。)ところ、甲1発明の「巻回体」は、「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより」「製造」されるものであって、上記(ア)で検討したとおり、甲1発明の「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体」は、本件発明1の「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体」に相当するから、甲1発明の「巻回体」は、「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体」が巻かれた構造、すなわち、ジェリーロール型の電極組立体であるといえる。
したがって、甲1発明の「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより」「製造」される「巻回体」は、本件発明1の「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体を使用する ジェリーロール型の電極組立体」に相当する。

(ウ) 本件発明1の「マンドレル」は、「ジェリーロール型の電極組立体を製造する 巻き取り工程 で使用されるように構成された」ものであるところ、甲1発明の「巻芯」は、「帯状体を巻き取ることにより巻回体を製造するため」のものであるから、当該「巻芯」は、「巻回体」を製造する巻き取り工程で使用されるように構成されたものであるといえる。
そして、上記(イ)の検討事項によれば、甲1発明の「巻回体」は、本件発明1の「ジェリーロール型の電極組立体」に相当するといえる。
したがって、甲1発明の「帯状体を巻き取ることにより巻回体を製造するための巻芯」は、本件発明1の「ジェリーロール型の電極組立体を製造する 巻き取り工程 で使用されるように構成されたマンドレル」に相当する。

(エ) 以上から、甲1発明の「2枚のセパレータと、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体を巻き取ることにより巻回体を製造するための巻芯」(構成a)は、本件発明1の「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体を使用する ジェリーロール型の電極組立体を製造する 巻き取り工程 で使用されるように構成されたマンドレル」(構成A)に相当する。

イ 構成B2及びCについて
(ア) 甲1発明の「巻芯」は、「2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、・・・前記2本の巻芯片14A,14Bの中央に、前記2枚のセパレータが入り込むスリットが形成され」ているものであるから、前記巻芯の中央部であるスリットの一側に配置された巻芯片14Aと、前記スリットの反対側に配置された巻芯片14Bとに分けられるといえる。
そして、甲第1号証の上記第4 1(2)ウの記載事項によれば、巻芯片14A,14Bの平行状態が維持された状態で、巻芯が両端部において支持された時点において、スリット内に2枚のセパレータが入り込む格好となり、続いて巻芯を回転させつつプラス電極箔及びマイナス電極箔を案内し、その後巻芯を高速で回転させることで、2枚のセパレータ、プラス電極箔及びマイナス電極箔を巻き付けていき、巻芯を所定回数回転することにより、2枚のセパレータ、プラス電極箔及びマイナス電極箔とによって構成される帯状体が巻き取られ、さらに、巻芯を再度離間状体とすることで、巻回体が巻芯から取り外されるものであるから、帯状体の端部(2枚のセパレータ)は、スリットに挿入固定され、当該スリットは、帯状体を係合状態に入れ込む領域であるといえる。
以上から、甲1発明の「スリット」は、帯状体の端部が固定挿入される巻芯の中央部であって、かつ、帯状体を係合状態に入れ込む領域であると認められ、また、甲1発明の「巻芯」は、帯状体の端部が挿入固定される該巻芯の中央部の一側に配置された巻芯片14Aと、該巻芯の中央部の反対側に配置された巻芯片14Bと、に分けられ、前記巻芯片14A,14Bは、帯状体を係合状態に入れ込む領域を有するものと認められる。

(イ) そうすると、甲1発明の「スリット」は、本件発明1の「前記シート状積層体の端部が挿入固定される該マンドレルの中央部」及び「前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域」に相当し、甲1発明の「巻芯片14A」は、本件発明の「第1のマンドレル部」及び「第1のマンドレル部」の「本体部」に相当し、甲1発明の「巻芯片14B」は、本件発明1の「第2のマンドレル部」及び「第2のマンドレル部」の「本体部」に相当し、さらに、甲1発明の「前記巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、前記2本の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形であり、前記2本の巻芯片14A,14Bの中央に、前記2枚のセパレータが入り込むスリットが形成されている」(構成b)ことは、本件発明1の「前記シート状積層体の端部が挿入固定される該マンドレルの中央部の一側に配置された第1のマンドレル部と、該マンドレルの中央部の反対側に配置された第2のマンドレル部と、に分けられ」(構成B2)ること、及び、構成Cのうちの「前記第1のマンドレル部及び前記第2のマンドレル部は、前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する本体部」「をそれぞれ有して」いることに相当するものの、甲1発明は、本件発明1の「該マンドレルの長軸の端部を有すると共に前記本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部」を有していない。

ウ 構成B1及び構成Dについて
甲1発明において「前記巻芯は、2本の巻芯片14A,14Bによって構成され、前記2本の巻芯片14A,14Bは、巻芯として設置された状態で、断面が略平行四辺形であ」るから、甲1発明は、本件発明1の構成B1を有しているとはいえない。
また、上記イで検討したとおり、甲1発明は、本件発明1の「該マンドレルの長軸の端部を有すると共に前記本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部」を有していないから、甲1発明は、本件発明1の「前記交換部」を特定する事項である構成Dも有していない。

エ 以上から、両者は、「カソード/セパレータ/アノードの構造の 長いシート状積層体を使用する ジェリーロール型の電極組立体を製造する 巻き取り工程 で使用されるように構成されたマンドレルにおいて、
前記マンドレルは、前記シート状積層体の端部が挿入固定される該マンドレルの中央部の一側に配置された第1のマンドレル部と、該マンドレルの中央部の反対側に配置された第2のマンドレル部と、に分けられ、
前記第1のマンドレル部及び第2のマンドレル部は、前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する本体部をそれぞれ有している
マンドレル。」の点で一致し、以下の2点で相違する。

相違点1:「マンドレル」について、本件発明1は、「その回転中心軸と垂直な断面で楕円形であ」るのに対し、甲1発明は、かかる事項を有していない点。
相違点2:「第1のマンドレル部及び前記第2のマンドレル部」について、本件発明1は、「前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する本体部と、該マンドレルの長軸の端部を有すると共に前記本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部と、をそれぞれ有しており、
前記交換部は、前記マンドレルの中央部の中に端部が入れられた状態で前記シート状積層体が該マンドレルに巻き取られるときに 該マンドレルが一定の速度で回転している間に該マンドレルの長軸の端部から前記シート状積層体に加えられる捲回応力が減少するように、前記マンドレルの回転中心軸に垂直な断面において、該マンドレルの外側の傾斜が 該マンドレルの短軸の端部から該マンドレルの長軸の端部に掛けて連続的に変化する 半楕円形の構造を持つように構成されている」のに対し、甲1発明は、上記「交換部」を有していない点。

オ 特許異議申立人は、特許異議申立書10頁17?18行において、甲第1号証の「取付アーム17」が、本件発明1の「本体部」に相当すると主張している。
しかし、本件発明1の「本体部」は、「前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する」ものであるところ、上記イで検討したとおり、甲1発明の巻芯片14A,14Bは、帯状体を係合状態に入れ込む領域を有するものと認められる。そして、甲第1号証の上記(1b)の【0034】には、「各巻芯片14A,14Bの基端部21が前記取付アーム17に取付けられている」と記載されているから、取付アームは、巻芯片14A,14Bを取り付けるための部材であるといえる。
そうすると、甲第1号証に記載の巻取装置において、「前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する」のは、「巻芯片14A,14B」であって、「取付アーム17」ではない。
したがって、甲第1号証に記載の「取付アーム17」は、本件発明1の「前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する」「本体部」に相当するとはいえないから、申立人の主張は採用できない。

(2) 相違点についての判断
まず、相違点2から検討する。
ア 甲第2号証の上記(2b)には、マンドレルは、二つの横部品及びこれらの間の中央部品を含んでおり、前記中央部品を任意の適当な手段によって前記二つの横部品に対して軸線と平行に変位させると、マンドレルの断面の大きさ、すなわち、当該断面の長軸が変化することが記載されており、当該記載から、二つの横部品は、マンドレルの長軸の端部に位置すること、及び、前記二つの横部品は、前記マンドレルの中央部品に対して自由に動かせることは明らかであるから、二つの横部品は、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの中央部品から取り外し可能であるといえる。

イ 甲第3号証の上記(3b)には、巻取軸は、断面が円であって、スリットを有する中央部分と、この中央部分の両側に接している翼部分からなり、巻取りが終了した後の巻取軸の抜き取りは、まず前記中央部から行われ、その後、前記翼部分を抜き取ることが記載されており、当該記載から、中央部分の両側に接している翼部分は、巻取軸の中央部分から取り外し可能であるといえ、また、甲第3号証の上記(3c)の視認事項によれば、中央部分の両側に接している翼部分は、巻取軸の長軸の端部に位置するものであるから、中央部分の両側に接している翼部分は、巻取軸の長軸の端部を有するといえる。

ウ 甲第5号証の上記(5b)には、巻回装置用巻芯は、挟込中心部1及び前記挟込中心部1と連結された突端部2を有する板状治具3と挟込中心部4及び前記挟込中心部4と連結された突端部5を有する板状治具6とからなり、前記板状治具3と前記板状治具6をそれぞれ移動させることにより、セパレーター等絶縁材を前記挟込中心部1及び4によって挟込固定し、その後、前記板状治具3及び前記板状治具6を回転させ電池素子材料を捲回し、前記電池素子材料捲回後、前記挟込中心部1及び4を移動させることにより隙間が発生し、前記セパレーター等絶縁体の挟込固定が解除されると同時に、前記挟込中心部1と連結されている前記突端部2及び前記挟込中心部4と連結されている前記突端部5がそれぞれ移動することにより前記捲回後電池素子材料との隙間が発生し、容易に前記板状治具3及び6から捲回後電池素子材料を抜き取ることが可能となることが記載されており、当該記載から、前記突起部2及び5は、挟込中心部1及び4に対してそれぞれ独立して移動できるものであることは明らかであるから、突端部2及び5は、巻回装置用巻芯の挟込中心部1及び4からそれぞれ取り外し可能であるといえ、また、甲第5号証の上記(5c)の視認事項によれば、突端部2及び5は、巻回装置用巻芯の長軸の端部に位置するものであるから、突端部2及び5は、巻回装置用巻芯の長軸の端部を有するといえる。

エ 甲第6号証の上記(6b)には、巻回芯は、長棒状の外軸と長棒状の中軸とを含み、前記外軸の軸心部分には、前記軸心方向に延びて前記外軸の一端で開放される空間を形成してあり、前記中軸は、前記中軸の軸心が前記外軸の軸心に沿う姿勢で前記空間内に配されることが記載されており、当該記載から、外軸は、巻回芯の中軸から取り外し可能であるといえ、また、甲第6号証の上記(6c)の視認事項によれば、外軸は、巻回芯の長軸の端部に位置するものであるから、外軸は、巻回芯の長軸の端部を有するといえる。

オ 上記ア?エの検討事項によれば、甲第2、3、5、6号証には、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる部材が記載されているといえる。

カ ところで、本件発明1の「交換部」について、本件特許明細書の【0015】には、「本発明に係るマンドレルにおいては、前記第1のマンドレル部及び前記第2のマンドレル部は、前記シート状積層体を係合状態に入れ込む領域を有する本体部と、該マンドレルの長軸の端部を有すると共に前記本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部と、をそれぞれ有しているため、電極組立体の規格が変更されるときでも、前記交換部のみを交換でき、それによって、マンドレル交換時間を10分未満に大きく低減でき、従来の1時間よりもかなり短くできる。」と記載されているから、本件発明1の「交換部」は、電極組立体の規格を変更するときに交換する部材であるといえる。

キ しかし、甲第2、3、5、6号証には、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる部材が、交換部であること、すなわち、電極組立体の規格を変更するときに交換する部材であることは、何ら記載も示唆もされていない。
また、甲第4、7?12号証にも、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部については、何ら記載も示唆もされていない。

ク したがって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を導出することはできず、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づき、周知技術(甲第2号証?甲第12号証)を参酌することにより、当業者が容易になし得るものとはいえない。

ケ なお、甲第2、3、5、6号証に記載されている、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる部材は、交換可能であるといえるから、仮に、当該部材が、交換部であるとして、以下検討する。

ケ-1 本件発明1の「交換部」は、「前記マンドレルの中央部の中に端部が入れられた状態で前記シート状積層体が該マンドレルに巻き取られるときに 該マンドレルが一定の速度で回転している間に該マンドレルの長軸の端部から前記シート状積層体に加えられる捲回応力が減少するように、前記マンドレルの回転中心軸に垂直な断面において、該マンドレルの外側の傾斜が 該マンドレルの短軸の端部から該マンドレルの長軸の端部に掛けて連続的に変化する 半楕円形の構造」(以下、単に「半楕円形の構造」という。)を持つように構成されているところ、甲第2、3、5、6号証には、交換部が、半楕円形の構造を持つように構成されることは記載されていない。

ケ-2 特許異議申立人は、特許異議申立書の11頁下から3?2行、12頁6?21行、17頁9?10行、同頁16?19行、同頁23行?18頁13行において、甲第2号証の【図57】(上記(2f))、甲第6号証の【0007】(上記(6b))には、交換部が半楕円形の構造を持つように構成されることが記載されている旨主張している。
しかし、甲第2号証の(2a)、(2c)及び(2d)の記載を参照すれば、【図57】に記載されるマンドレルは、2つのジョーのみからなるものであって(なお、【図57】の符号「1612」、「1614」は、それぞれ、「612」、「614」の誤記である。)、中央部品(本体部)を有していないから、そもそも、マンドレルの長軸の端部を有するとともに、前記マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部を有しているとはいえず、したがって、【図57】には、交換部が半楕円形の構造を持つように構成されることが記載されているとはいえない。
また、甲第6号証の【0007】には、「ここでの外軸22は、菱形、楕円形、六角形あるいは八角形などの断面形状に形成される。」と記載されているものの、当該記載において、楕円形は、外軸の断面形状の選択肢の一つとして挙げられているだけであるから、当該記載からは、外軸の断面形状が、菱形、楕円形、六角形又は八角形のいずれかの形状であることは記載されているといえるものの、交換部が、半楕円形の構造を持つように構成されることが直ちに記載されているとすることはできない。
したがって、請求人の主張は採用しない。

ケ-3 そうすると、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の特定事項とするためには、甲第2、3、5、6号証に記載されている、マンドレルの長軸の端部を有すると共に、当該マンドレルの本体部に取り外し可能に取り付けられる交換部を、甲1発明に適用し、さらに、前記交換部を適用した甲1発明において、その交換部を、半楕円形の構造を持つように構成することとなり、相違点2に係る発明特定事項を、甲1発明ではなく、前記交換部を適用した甲1発明に基づいて容易想到性を判断することとなる。
したがって、本件発明1において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得るものとはいえない。

コ そして、本件特許明細書【0015】、【0020】?【0021】の記載によれば、本願発明1は、相違点2に係る本件発明1の特定事項により、「電極組立体の規格が変更されるときでも、前記交換部のみを交換でき、それによって、マンドレル交換時間を10分未満に大きく低減でき、従来の1時間よりもかなり短くできる」及び「前記シート状積層体が前記マンドレルに巻き取られたときの線形の速度変化が低減され、それにより、前記シート状積層体の応力の発生がかなり減少される」という顕著な効果を奏するものである。

サ まとめ
以上のとおりであるから、相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づき、周知技術(甲第2号証?甲第12号証)を参酌しても、当業者が容易になし得るものとはいえない。

2 本件発明2?11について
本件発明2?11は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記「1 本件発明1について」の判断と同様の理由により、本件発明2?11は、甲第1号証に記載された発明に基づき、周知技術(甲第2号証?甲第12号証)を参酌しても、当業者が容易になし得るものとはいえない。

3 小括
以上のとおり、本件発明1?11は、甲第1号証に記載された発明に基づき、周知技術(甲第2号証?甲第12号証)を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-05-27 
出願番号 特願2014-502445(P2014-502445)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 結城 佐織  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 土屋 知久
河本 充雄
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5795679号(P5795679)
権利者 エルジー ケム. エルティーディ.
発明の名称 ジェリーロール型の電極組立体を製造するためのマンドレル  
代理人 相田 京子  
代理人 鄭 元基  
代理人 相田 伸二  

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