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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1316016
審判番号 不服2015-4620  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-10 
確定日 2016-06-15 
事件の表示 特願2011-546980「大きい視野のイメージング並びに動きのアーチファクトの検出及び補償ための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月29日国際公開、WO2010/084389、平成24年 7月12日国内公表、特表2012-515592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2009年12月23日(パリ条約による優先権主張2009年1月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月19日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年5月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月31日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年10月30日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年3月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について

本件補正は、補正前の特許請求の範囲(すなわち、平成26年2月19日付けの手続補正による補正後のもの)の請求項10の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項10のものに補正する事項を含むものである(下線は、補正箇所を示す)。

(補正前)
「【請求項10】
計算された断層撮影のイメージングの方法であって、
放射に敏感な検出器の中心が源及び検出器の回転の中心と整列させられたものであるところの少なくとも一つの中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、並びに、
前記放射に敏感な検出器の中心が検査の領域における前記放射の中央の光線並びに前記源及び検出器の回転の中心から前記検出器の幅のおおよそ半分の又はより多いものの距離だけ変位させられたものであるところの少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること
を含む、対象の少なくとも二つの走査する手順を行うこと、
前記中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間における中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間におけるオフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータを含む前記少なくとも二つの走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、並びに、
前記対象の指示的な体積測定のデータを発生させるために一緒に前記少なくとも二つの走査する手順の間に獲得された投射のデータを再構築すること
のステップを具備する、
方法。」

(補正後)
「【請求項10】
計算された断層撮影のイメージングの方法であって、
放射に敏感な検出器の中心が源及び検出器の回転の中心と整列させられたものであるところの少なくとも一つの中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、並びに、
前記放射に敏感な検出器の中心が検査の領域における前記放射の中央の光線並びに前記源及び検出器の回転の中心から前記検出器の幅のおおよそ半分の又はより多いものの距離だけ変位させられたものであるところの少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること
を含む、対象の少なくとも二つの走査する手順を行うこと、
前記中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間における中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間におけるオフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータを含む前記少なくとも二つの走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、前記中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータが重なり合いの領域を含むこと、並びに、
前記対象の指示的な体積測定のデータを発生させるために一緒に前記少なくとも二つの走査する手順の間に獲得された投射のデータを再構築すること
のステップを具備する、
方法。」

すると、本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明の発明特定事項である「中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ」及び「オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータ」について、「前記中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータが重なり合いの領域を含むこと」の点を限定することを含むものである。

よって、本件補正による特許請求の範囲の補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明の限定的減縮を目的とするものを含むことから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものを含むものであるといえる。

2 独立特許要件違反についての検討

そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項10に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1) 引用例

ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2000-201920号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付加したものである)。

(1a)「【0011】この第1の撮影画像データ取得方法において前記分割を行うに際しては、複数の部分領域が連続するように行うのが望ましいのは言うまでもない。換言すれば、前記所定距離が各撮影位置における放射線検出器の隣接する検出領域の一部が重なるような距離となるように部分放射線検出器を移動させるのが望ましい。」

(1b)「【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明による撮影画像データ取得方法および撮影画像データ取得装置の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態による撮影画像データ取得装置を適用したコーンビームCTを示す図であって、概略構成を示すブロック図、図2は、所定の投影方向における全検出領域S0とこれを分割した連続する部分領域S1,S2,S3、および各部分領域に対応する撮影位置P1,P2,P3を示したものである。ここで「部分領域に対応する撮影位置」とは、その部分領域の投影画像データを取得するための放射線検出器の配置位置を意味する(以下同様)。
【0023】このコーンビームCT1は図1に示すように、放射線源11および部分放射線検出器としての2次元の放射線検出器12を備えた撮影系10と、放射線検出器12を移動させる移動手段13と、投影画像データ生成手段20と、画像処理部30とを備えている。画像処理部30には、各種画像データを記憶する不図示の画像記憶手段と、該画像処理部30により形成された3D画像や断層画像を可視画像として表示出力する不図示の画像表示手段が接続されている。ここで「3D画像」とは、視覚上3次元的に観察される3次元状画像(3次元画像および2次元画像であって視覚上3次元的に観察される画像)を意味する。
【0024】また、このコーンビームCT1には、放射線源11と放射線検出器12とを被写体19の回りに該被写体19に対して相対的に回転させる不図示の回転制御手段が備えられている。この回転制御手段は、放射線の投影方向を、被写体19の全周に亘って順次切り換えることができるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、放射線源11と検出器12とを被写体19を中心として回転させる撮影系回転方式のものであっても良いし、放射線源11と検出器12とを固定し、被写体19を該被写体19の中心を軸にして回転させる被写体回転方式のものであっても良い。
【0025】移動手段13は、投影方向各々について、全検出領域S0を分割して形成した部分領域S1,S2,S3の夫々に後述する手順に従って放射線検出器12を移動させるものであり、これにより、移動された各撮影位置毎に被写体19を透過した放射線が検出器12により検出される。すなわち、検出器12は、各投影方向毎に、前記分割に対応する所定距離ずつ移動させられ、この移動された各撮影位置毎に被写体19を透過した放射線を検出する。各撮影位置は、図2に示す投影方向においては部分領域S1,S2,S3にそれぞれ対応するように、P1,P2,P3とする。このP1,P2,P3における放射線検出器12の各検出領域を合成すれば、この投影方向における全検出領域S0と略等しいのはいうまでもない。放射線源11と放射線検出器12とを被写体19の回りに該被写体19に対して相対的に回転させ投影方向を変えた場合においても、このP1,P2,P3の撮影位置の関係は変わらない。なお、全検出領域を分割した部分領域の数、つまり撮影位置数を投影方向毎に異なるものとしてもよい。」

(1c)「【0030】先ず、図2に示すように、放射線検出器12を所定の撮影位置に配置し、その撮影位置関係を保ったまま、放射線源11と放射線検出器12とを被写体19の回りに該被写体19に対して相対的に1回転させ、これを他の撮影位置についても繰り返す場合について説明する。ここで「撮影位置関係」とは、コーンビームCTとしての回転中心に対する、放射線源11,放射線検出器12および被写体19の相対的な位置関係を意味する。
【0031】移動手段13は、先ず、放射線検出器12の検出領域が部分領域S1をカバーするような撮影位置P1に放射線検出器12を配置する(図2(A)参照)。次に、放射線源11から被写体19に向けてコーン状の放射線を照射しながら、不図示の回転制御手段により、放射線源11と放射線検出器12とを、この撮影位置関係を保ったまま、被写体19の回りに、該被写体19に対して相対的に1回転させる。
【0032】放射線検出器12は、この回転における各投影方向毎(例えば30度毎)に、被写体19を透過した放射線を検出する。このようにして検出した各投影方向毎の透過放射線画像データD11を投影画像データ生成手段20に入力する。投影画像データ生成手段20は、各投影方向毎の透過放射線画像データD11に対してγ補正や画像歪補正等の各種信号処理を施して、この撮影位置P1における、被写体19の各投影方向毎の投影画像データD21を生成し、それを画像処理部30に入力する。画像処理部30は、入力された投影画像データD21を、撮影位置P1に対応づけて、不図示の画像記憶手段に一旦格納する。
【0033】撮影位置P1における処理が終了したら、移動手段13が、放射線検出器12の検出領域が部分領域S2をカバーするような撮影位置P2に放射線検出器12を移動配置する(図2(B)参照)。この撮影位置P2で被写体19の全周に亘って放射線を照射し、上述同様に、各投影方向毎の投影画像データD22を生成し、このときの撮影位置P2に対応づけて、投影画像データD22を画像記憶手段に格納する。撮影位置P2での処理が終了したら、撮影位置P3についても同様に行う(図2(C)参照)。撮影位置P3の投影画像データをD23とする。
【0034】これにより、各投影方向毎の、また各撮影位置毎の投影画像データD21,D22,D23(以下、まとめて言うときには「D2」と記す)が取得される。取得された撮影位置毎の投影画像データD2は、各投影方向毎の全検出領域分の投影画像データであって、D21,D22,D23夫々は全検出領域を分割した各部分領域の投影画像データである。」

(1d)「【0036】次に被写体19の3D画像や断層画像を形成する方法について説明する。」

(1e)「【0039】この合成済投影画像データD20を求める具体的方法としては、例えば各投影画像データD2を画素毎に加算してその平均を取る方法などが挙げられる。この加算平均によれば、検出領域が重なる連結領域については、該連結領域に含まれる複数の投影画像データを使用して画像データを生成することとなり、重ならない領域については、夫々の領域の画像データがそのまま使用されて、各投影画像データD2の画像領域よりも広い画像領域の合成済投影画像データD20が得られる。
【0040】ボリュームデータ生成手段32は、合成済投影画像データD20に基づいてボリュームデータを生成することにより全検出領域分をカバーする合成済ボリュームデータD30を求める。画像形成手段34は、合成済ボリュームデータD30に基づいて3D画像や断層画像を形成する。
【0041】ボリュームデータ生成のアルゴリズムとしては、フェルドカンプアルゴリズム(Feldkamp LA,Davis LC,Kress JW,Practical cone-beam algoritm. J Opt SocAm A 1984;1:P612?P619),フィルタ補正逆投影法(画像解析ハンドブック(東京大学出版会)p356?p371参照)等、周知の3次元データを再構成する計算方法を使用することができる。このボリュームデータの求め方についての詳細説明は省略する(後述する例においても省略する)。
【0042】このように、各投影方向毎に、全検出領域分をカバーする1枚分の合成済投影画像データに基づいて合成済ボリュームデータを求め、この合成済ボリュームデータに基づいて3D画像や断層画像を形成すれば、合成済ボリュームデータは全検出領域をカバーする1つの大面積の放射線検出器を使用することにより取得することができるボリュームデータと実質的に等価となるので、大面積の放射線検出器を使用しなくても、小面積の検出器の検出領域によって決定される撮影可能領域よりも大きな領域の画像を形成し表示出力等することができるようになる。」

(1f)「【図1】

【図2】



イ 引用例に記載された発明の認定

(ア) 上記(1c)の【0030】の「ここで「撮影位置関係」とは、コーンビームCTとしての回転中心に対する、放射線源11,放射線検出器12および被写体19の相対的な位置関係を意味する。」なる記載及び同(1c)の【0031】の「放射線検出器12の検出領域が部分領域S1をカバーするような撮影位置P1に放射線検出器12を配置する(図2(A)参照)。…放射線源11と放射線検出器12とを、この撮影位置関係を保ったまま、被写体19の回りに、該被写体19に対して相対的に1回転させる。」なる記載を踏まえると、上記(1f)の【図2】の(A)における「撮影位置P1」における「撮影位置関係」では、「コーンビームCTとしての回転中心」に位置する「被写体19」を挟んで「放射線源11」と「放射線検出器12」とが対向しており、当該「撮影位置P1」は、同【図2】の(B)及び(C)における「撮影位置P2」と「撮影位置P3」との間にあると認める。

(イ) 上記(1f)の【図2】におけるP1、P2及びP3における放射線検出器12の位置、並びに、上記(1b)の【0022】の「部分領域S1,S2,S3、および各部分領域に対応する撮影位置P1,P2,P3」なる記載から、上記(1f)の【図1】の2箇所の「S3」のうち下側のものは「S2」の誤記であると認める。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえて上記(1a)ないし(1f)を総合すると、引用例には、

「被写体19の断層画像を形成する方法であって、
撮影画像データ取得において、
所定の投影方向における全検出領域を分割した連続する部分領域をS1,S2,S3、および各部分領域に対応する撮影位置をP1,P2,P3として、ここで、部分領域に対応する撮影位置とは、その部分領域の投影画像データを取得するための放射線検出器の配置位置を意味し、放射線検出器12は、各投影方向毎に、前記分割に対応する所定距離ずつ移動させられ、この移動された各撮影位置毎に被写体19を透過した放射線を検出し、前記所定距離を各撮影位置における放射線検出器の隣接する検出領域の一部が重なるような距離とし、
放射線検出器12の検出領域が部分領域S1をカバーするような撮影位置P1に放射線検出器12を配置し、放射線源11から被写体19に向けてコーン状の放射線を照射しながら、放射線源11と放射線検出器12とを、この撮影位置関係を保ったまま、被写体19の回りに、該被写体19に対して相対的に1回転させて、この撮影位置P1における、被写体19の各投影方向毎の投影画像データD21を生成し、ここで撮影位置関係とは、コーンビームCTとしての回転中心に対する、放射線源11、放射線検出器12および被写体19の相対的な位置関係を意味し、
放射線検出器12の検出領域が部分領域S2をカバーするような撮影位置P2に放射線検出器12を移動配置し、この撮影位置P2で被写体19の全周に亘って放射線を照射し、上述同様に、各投影方向毎の投影画像データD22を生成し、撮影位置P3についても同様に行い、撮影位置P3の投影画像データをD23とし、
ここで、撮影位置P1における撮影位置関係では、コーンビームCTとしての回転中心に位置する被写体19を挟んで放射線源11と放射線検出器12とが対向しており、撮影位置P1は撮影位置P2と撮影位置P3との間にあり、
各投影方向毎の、また各撮影位置毎の投影画像データD21,D22,D23(以下、まとめて言うときには「D2」と記す)が取得されたら、各投影画像データD2を画素毎に加算してその平均を取ることで、検出領域が重なる連結領域については、該連結領域に含まれる複数の投影画像データを使用して、重ならない領域については、夫々の領域の画像データがそのまま使用されて、合成済投影画像データD20が得られ、
3次元データを再構成する計算方法を使用して、合成済投影画像データD20に基づいて合成済ボリュームデータD30を求め、合成済ボリュームデータD30に基づいて断層画像を形成する、方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2) 本願補正発明と引用発明との対比

ア 引用発明の「コーンビームCTとして」「断層画像を形成する、方法」は、本願補正発明の「計算された断層撮影のイメージングの方法」に相当する。


(ア) 引用発明の「放射線検出器12」、「放射線源11」、及び「投影画像データ」は、それぞれ本願補正発明の「放射に敏感な検出器」、「源」、及び「投射のデータ」に相当する。

(イ) 引用発明における「放射線源11と放射線検出器12とを」「回転させ」るための「コーンビームCTとしての回転中心」は、本願補正発明の「源及び検出器の回転の中心」に相当する。

(ウ) 引用発明における、「コーンビームCTとしての回転中心に対する、放射線源11、放射線検出器12および被写体19の相対的な位置関係を意味」する「撮影位置関係」は、本願補正発明の「幾何学的配置」に相当する。

(エ) 引用発明の「撮影位置P1における撮影位置関係」では、「コーンビームCTとしての回転中心に位置する被写体19を挟んで放射線源11と放射線検出器12とが対向して」いるため、「撮影位置P1」の「放射線検出器12」は、「放射線源11」から「回転中心」方向を見たときに、「回転中心」と整列して中央に位置するものとなっている。
よって、上記(ア)ないし(ウ)により、引用発明の「撮影位置P1における撮影位置関係」は、本願補正発明の「放射に敏感な検出器が源及び検出器の回転の中心と整列させられたものであるところの少なくとも一つの中央に置かれた幾何学的配置」に相当する。

(オ) 上記(エ)から、引用発明において、「撮影位置P1に放射線検出器12を配置」した「撮影位置関係」にて「放射線源11から被写体19に向けてコーン状の放射線を照射しながら、放射線源11と放射線検出器12とを、この撮影位置関係を保ったまま、被写体19の回りに、該被写体19に対して相対的に1回転させ」ることは、本願補正発明の「一つの中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順」に相当する。

(カ) 上記(ア)及び(オ)から、引用発明において、「撮影位置P1における、被写体19の各投影方向毎の投影画像データD21を生成」することは、「一つの中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること」に相当する。


(ア) 引用発明の「所定距離ずつ」「移動させ」られたことは、本願補正発明の「距離だけ変位させられた」ことに相当する。

(イ) 引用発明において、「撮影位置P1は撮影位置P2と撮影位置P3との間に」あることから、「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」に配置される「放射線検出器12」は、「撮影位置P1」に配置される「放射線検出器12」の位置よりも「所定距離ずつ」「移動させ」られており、その結果、「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」は「撮影位置P1」に対してオフセットさせられた位置となっている。
よって、上記(ア)及びイ(ウ)から、引用発明において、「放射線検出器12」が「所定距離ずつ」「移動させ」られて配置される「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」における「撮影位置関係」と、本願補正発明の「前記放射に敏感な検出器の中心が検査の領域における前記放射の中央の光線並びに前記源及び検出器の回転の中心から前記検出器の幅のおおよそ半分の又はより多いものの距離だけ変位させられたものであるところの少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置」とは、「前記放射に敏感な検出器が所定距離だけ変位させられたものであるところの少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置」の点で共通する。

(ウ) 上記(イ)、イ(オ)及びイ(カ)から、引用発明において、「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」での「撮影位置関係」について、「被写体19の全周に亘って放射線を照射し、上述同様に、各投影方向毎の投影画像データD22」及び「投影画像データ」「D23」を「生成」することは、本願補正発明の「少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること」に相当する。


(ア) 引用発明の「被写体19」は、本願補正発明の「対象」に相当する。

(イ) 上記イ(オ)及びウ(ウ)から、引用発明の、「撮影位置P1」で「放射線源11から被写体19に向けてコーン状の放射線を照射しながら、放射線源11と放射線検出器12とを、この撮影位置関係を保ったまま、被写体19の回りに、該被写体19に対して相対的に1回転させ」ること、並びに「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」で「同様に」「被写体19の全周に亘って放射線を照射」することは、本願補正発明の「対象の少なくとも二つの走査する手順を行うこと」に相当する。


(ア) 上記イ(カ)から、引用発明の「撮影位置P1における、被写体19の各投影方向毎の投影画像データD21」は、本願補正発明の「前記中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間における中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ」に相当する。

(イ) 上記ウ(ウ)から、引用発明において、「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」での「撮影位置関係」について、「被写体19の全周に亘って放射線を照射し、上述同様に」「生成」された「各投影方向毎の投影画像データD22」及び「D23」は、本願補正発明の「前記オフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間におけるオフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータ」に相当する。

(ウ) 上記(ア)、(イ)、及びエ(イ)から、引用発明の「各投影方向毎の、また各撮影位置毎の投影画像データD21,D22,D23」である「各投影画像データD2」を「取得」することは、本願補正発明の「前記少なくとも二つの走査する手順の間に投射のデータを獲得すること」に相当する。

(エ) 引用発明の「検出領域が重なる連結領域」は、本願補正発明の「重なり合いの領域」に相当する。

(オ) 引用発明では、「撮影位置P2」及び「撮影位置P3」の「放射線検出器12」が、「撮影位置P1」の「放射線検出器12」から、「各撮影位置における放射線検出器の隣接する検出領域の一部が重なるような距離」だけ「移動」しているため、「投影画像データD21」と「投影画像データD22」及び「投影画像データD23」のそれぞれとの間に「検出領域が重なる連結領域」が生じている。
よって、上記(ア)ないし(エ)から、引用発明の「投影画像データD21」と「投影画像データD22」及び「D23」のそれぞれとの間に「検出領域が重なる連結領域」が生じていることは、本願補正発明の「前記中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータが重なり合いの領域を含むこと」に相当する。


(ア) 引用発明の「合成済ボリュームデータD30」は、「被写体19の断層画像を形成するため」のものであるから「被写体19」を示すものである。また「ボリュームデータ」は、CT技術における「volumetric data」の一般的な訳語であるところ、「volumetric」の単語訳が「体積測定の」であることから、引用発明の「被写体19」を示す「合成済ボリュームデータD30」は、本願補正発明の「前記対象の指示的な体積測定のデータ」に相当する。

(イ) 引用発明の「再構成する」ことは、本願補正発明の「再構築する」ことに相当する。

(ウ) 引用発明では、「3次元データを再構成する計算方法を使用して、合成済投影画像データD20に基づいて合成済ボリュームデータD30を求め」ているところ、「合成済投影画像データD20」とは、「各投影画像データD2を画素毎に加算してその平均を取ることで、検出領域が重なる連結領域については、該連結領域に含まれる複数の投影画像データを使用して、重ならない領域については、夫々の領域の画像データがそのまま使用されて」「得られ」たものである。
よって、引用発明において、「投影画像データD21,D22,D23」である「各投影画像データD2」は、「合成済投影画像データD20」として一緒にされた上で、「再構成する計算」の対象となっている。
したがって、上記オ(ウ)を踏まえると、引用発明の「各投影画像データD2を画素毎に加算してその平均を取ることで、検出領域が重なる連結領域については、該連結領域に含まれる複数の投影画像データを使用して、重ならない領域については、夫々の領域の画像データがそのまま使用されて、合成済投影画像データD20」を得て「再構成する」ことは、本願補正発明の「一緒に前記少なくとも二つの走査する手順の間に獲得された投射のデータを再構築すること」に相当する。

(3) 本願補正発明と引用発明の一致点

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「 計算された断層撮影のイメージングの方法であって、
放射に敏感な検出器の中心が源及び検出器の回転の中心と整列させられたものであるところの少なくとも一つの中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、並びに、
前記放射に敏感な検出器が所定距離だけ変位させられたものであるところの少なくとも一つのオフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間に投射のデータを獲得すること
を含む、対象の少なくとも二つの走査する手順を行うこと、
前記中央に置かれた幾何学的配置を走査する手順の間における中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置を走査する手順の間におけるオフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータを含む前記少なくとも二つの走査する手順の間に投射のデータを獲得すること、前記中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータが重なり合いの領域を含むこと、並びに、
前記対象の指示的な体積測定のデータを発生させるために一緒に前記少なくとも二つの走査する手順の間に獲得された投射のデータを再構築すること
のステップを具備する、
方法。」
の点で一致する。

(4) 本願補正発明と引用発明の相違点

本願補正発明と引用発明とは次の点で相違する。

(相違点) 「放射に敏感な検出器が」「変位させられ」る「所定距離」について、本願補正発明では「検査の領域における前記放射の中央の光線並びに前記源及び検出器の回転の中心から」、「変位させられ」た「放射に敏感な検出器の中心」までの、「前記検出器の幅のおおよそ半分の又はより多いものの距離」であるのに対し、引用発明では、その点が不明である点。

(5) 当審の判断

ア 相違点について

上記「(1) 引用例」のイ(イ)を踏まえると、上記(1f)の【図1】によれば、各部分領域に対応する撮影位置に配置される放射線検出器12の幅は、各部分領域S1,S2,S3の幅と概ね等しく、また、検出領域が重なる連結領域、すなわち各撮影位置における放射線検出器の隣接する検出領域の一部が重なる連結領域は、放射線検出器の端部近傍に限られている。
よって、当該【図1】の部分領域S1,S2,S3の配置によれば、部分領域S1に関連する撮影位置関係におけるコーン状の放射線の光軸(「検査の領域における前記放射の中央の光線」)、並びに、コーンビームCTとしての回転中心(「源及び検出器の回転の中心」)から、部分領域S2,S3に対応する放射線検出器12の中心(「変位させられ」た「放射に敏感な検出器の中心」)までの距離は、部分領域S1に対応する放射線検出器12における中心と端部との間の長さ(「検出器の幅のおおよそ半分」)よりも大きな所定距離となっており、これは、上記相違点に係る本願補正発明の構成に対応するものと言える。
一方、上記(1e)の【0042】に「大面積の放射線検出器を使用しなくても、小面積の検出器の検出領域によって決定される撮影可能領域よりも大きな領域の画像を形成し表示出力等することができるようになる。」と記載されているように、引用発明は、大面積の放射線検出器を用いることに代えて、小面積の検出器を所定距離ずつ移動させることによりこれを補うというものであるから、引用発明において、検出領域の重なる連結領域をもちつつ、できるだけ検出器の移動させる距離を大きくして、大面積の検出器に対応させること、すなわち、上記【図1】で示されるような距離だけ検出器を移動させることで、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果

そして、本願補正発明によってもたらされる作用効果は、引用例に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ

してみると、本願補正発明は、引用発明及び引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(6) むすび

以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年2月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載を参照。)

2 引用例

原査定の拒絶の理由に示された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記「第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1 本件補正について」を踏まえると、本願発明は、上記「第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」で検討した本願補正発明から「前記中央に置かれた幾何学的配置の投射のデータ及び前記オフセットさせられた幾何学的配置の投射のデータが重なり合いの領域を含むこと」の点を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成27年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(5) 当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-12 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-01 
出願番号 特願2011-546980(P2011-546980)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
▲高▼場 正光
発明の名称 大きい視野のイメージング並びに動きのアーチファクトの検出及び補償ための方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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