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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1316082
審判番号 不服2015-19334  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-27 
確定日 2016-07-05 
事件の表示 特願2010-264092「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-113645、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月26日の出願であって、平成26年5月16日付けで拒絶理由が通知され、平成26年12月2日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年10月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明は、出願時(平成22年11月26日)の特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
接触を検出するタッチセンサを備える電子機器において、
前記タッチセンサが接触によるスライド操作を検出している際に当該接触の解除を検出した後、所定時間内に再び接触を検出したら、当該再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器。」


第3 原査定の理由の概要
1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

〇理由1、2について
引用文献1には、タッチセンシティブディスプレイ上で連続してなされた2つのドラッグ操作について、その特性が類似している場合(例えば、距離が近く、かつ角度が類似している場合)、一続きのドラッグ操作として扱う「computer 100」が記載されている(段落0021乃至0031、段落0057乃至0062、図2、12乃至14)。
また、引用文献1には、2つのドラッグ操作の特性が類似するのであれば、一続きのドラッグ操作が意図されていたと決定すると記載されている(段落0058)。そして、タッチパネルの技術分野一般における技術常識を参酌すると、一続きのドラッグ操作を意図しつつも当該ドラッグ操作が途切れた場合、当該途切れた時間がごく短時間となることは明らかであるから、前記連続してなされた2つのドラッグ操作について、その時間間隔が所定時間以内の場合に、一続きのドラッグ操作として扱うようにすることは、当業者であれば自明の事項である。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明と同一である。

〇理由1(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項 1
・引用文献等 1
文献1([0057]-[0062],Figs.12-14)には、ドラッグ入力中に意図せずにタッチセンシティブディスプレイへの接触維持を失敗すること(文献1[0057])を想定し、検出された二つのドラッグ入力が一つのドラッグ入力を意図してなされたものか否か判定する方法が記載されている。
そして、文献1([0061],fig.14)に記載された、初めのステップ1410で第1番目のドラッグ入力を検出した場合に、次のステップ1415に移行し、さらに第2番目のドラッグ入力を検出した場合に、さらに次のステップ1420に移行し、検出した二つのドラッグの特性を比較する処理を行う一連の入力処理手順を具体的に実装するに際して、文献1には明示されていないものの、一つの入力処理手順として完結させるために、ステップ1415において第2番目のドラッグを検出できなかった場合の処理を規定する必要があることは当業者において自明の事項であり、当該検出ができなかったと判定する条件として第1番目のドラッグ入力終了後に所定時間以内に第2番目のドラッグ入力が検出されるか否かを判定するタイムアウトの処理を設定することは技術常識に基づいて当業者が当然設定する事項であるものと認められる。
したがって、文献1記載の事項を技術常識に基づいて認定すると、第1番目のドラッグ入力検出後、所定時間以内に第2番目のドラッグ入力が検出された場合に、当該二つのドラッグ入力の特性を判定して一つのドラッグ入力を意図したものであるか否かを各ドラッグ入力の特性に基づいて判定する処理が記載されているものと認められる。
よって、請求項1に係る発明は文献1に開示されている。

〇理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 1,3-5
上記理由1について指摘したように、文献1記載の構成がタイムアウト処理を備えることが自明の事項ではなかったとしても、下記の通り請求項1に係る発明は文献1記載の構成及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易になしえたものと認められる。

文献1記載の構成において想定されている、一つのドラッグ入力を意図しつつ、意図しない入力ミスから二つのドラッグ入力になってしまう場合に、二つのドラッグ入力間の時間的な隔たりが数秒にも満たないものであることは自明と認められる。
また、例えば文献3([0038]-[0046],図6),文献4([0040]-[0041],図2),文献5([0069]-[0070])にも記載されているように、断続的な複数の入力が一つの入力を意図したものであるか否か判定する際に、断続的な各入力同士の時間的な間隔が、一つの入力を意図したものとして推定できる所定時間以内であるか否かを判定するよう設定することは周知慣用技術と認められる。
そして、文献1記載の構成において二つのドラッグ入力が一つのドラッグ入力を意図してなされたものであるか否かを判定する際に、上記周知慣用技術を採用して、二つのドラッグ入力間の時間間隔が所定時間以内であるか否かの基準を追加するよう構成することは当業者において容易であると認められる。
したがって、請求項1に係る発明は文献1記載の事項及び文献3-5記載の周知慣用技術に基づいて当業者が容易になしえたものである。

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2007/0192731号明細書
2.特開昭63-257824号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2010/119713号(周知技術を示す文献)
4.特開2000-357046号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2007-334420号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項と、引用発明
原査定で引用された「引用文献1」である米国特許出願公開第2007/0192731号明細書には、図面(特に図2、図12-14)とともに、次の記載がある。(下線は、本審決で特に着目した箇所を示す。)

(1) 段落[0026]
「A user may enter commands and information into the computer 100 through input devices such as a touch-sensitive device (e.g., digitizer) 165, or a keyboard 162 and/or a pointing device 161, commonly referred to as a mouse, trackball, or touch pad.・・・(以下略)・・・」
(当審訳:ユーザは、タッチ方式の装置(例えば、デジタイザ)165、あるいは、キーボード162、及び/または、一般にマウス、トラックボール、タッチパッドなどと呼ばれるポインティング装置161のような入力装置を介して、コマンドと情報をコンピュータ100に入力できる。・・・(以下略)・・・)

(2) 段落[0057]-[0062]
「[0057] As can be appreciated, the UI element allows the user to manipulate the cursor with greater precision. If desired, the user may drag the UI element in a desired direction so as to cause the cursor to move, such was depicted in FIGS. 6a and 6b. Occasionally, however, the user may inadvertently fail to maintain the necessary contact with the touch-sensitive display during the process of providing the drag input. In such as case, as depicted in FIG. 12, a drag input 1210 and a drag input 1212 will be detected while the user intended to provide a drag input similar to a drag input 1314 as depicted in FIG. 13. As can be appreciated from FIG. 12, the drag input 1210 ends and drag input 1212 picks up a short distance away and both drag inputs 1210, 1212 are moving in about the same direction. However, depending on what the user is doing, ending the drag input 1210 and the starting of the drag input 1212 may be undesirable because the user intended to make one single drag input 1314 as depicted in FIG. 13.

[0058] Therefore, in an embodiment, characteristics of the drag input 1212 may be compared to the characteristics of the drag input 1210. If the characteristics of the drag input 1212 are similar to the characteristics of the drag input 1210 then it may be determined that the two drag inputs 1210 and 1212 were intended to be the single drag input 1314.

[0059] As can be appreciated, different characteristics may be used to determine whether the second drag input 1212 matches the first drag input 1210. In an embodiment the angle of movement of the drag input 1210 may be compared to the angle of movement of the drag input 1212. In addition, the distance between the end of the drag input 1210 and the drag input 1212 may also used to ensure the distance is not too large. Other characteristics that may be used include the velocity of the drag input 1210. For example, if the drag input 1210 and the drag input 1212 are intended to be the single drag input 1314 then drag input 1212 is expected to resemble an extended drag input 1210 within a range of angles. Therefore, if the drag input 1212 starts at a location that is consistent with where the drag input 1210 would be if the drag input 1210 had not ended, the drag input 1210 and 1212 may be considered to be intended to be the single drag input 1314.

[0060] In addition, Fitt's law or the Accot-Zhai steering law may also be used to determine whether the characteristics of the drag input 1212 match the characteristics of the drag input 1210. If the two drag inputs 1210, 1212 are close enough, the drag inputs 1210 and 1212 may be combined to form the single drag input 1314.

[0061] FIG. 14 illustrates a method of evaluating two drag inputs to see whether they were intended to be a single drag input. First in step 1410 a first drag input is received. Next in step 1415 a second drag input is received. In step 1420, it is determined whether the second drag input corresponds to an extension of the first drag input. This may be done by comparing the characteristics of the second drag input to the characteristics of the first drag input in a manner as discussed above. If the second drag input does not correspond to an extension of the first drag input, then in step 1425 the second drag input is treated as a distinct drag input. If, however, the characteristics of the second drag input do correspond to what is expected if the first drag input were to have continued, then in step 1430 the first and second drag inputs are treated as a single drag input.

[0062] It should be noted that with regard to the methods disclosed above, additional steps may be added and one or more depicted steps may be omitted without departing from various aspects of the present invention. Thus one or more of the method may be combined as is appropriate.」
(当審訳: [0057] 理解できるように、ユーザ・インタフェース(UI)要素によって、ユーザがより高精度にカーソルを操作することが可能になる。もし望まれるならば、図 6a、6bに示すように、ユーザは、カーソルを望む方向に動かすために、UI要素をドラッグできる。しかし、時折、ユーザは、ドラッグ入力を行うプロセス中に、意図せずに、タッチ方式のディスプレイに必要な接触を維持できない場合がある。そのような場合、ユーザは、図13に示されるような、一つのドラッグ入力を意図しているのに、図12に示す、ドラッグ入力1210と、ドラッグ入力1212が検出されるかもしれない。図12から理解できるように、ドラッグ入力1210の終端から短い距離だけ離れて、ドラッグ入力1212が始まっており、そして、ドラッグ入力1210、1212の両者は、ほぼ同じ方向に向かっている。しかし、ユーザは、図13に示す単一のドラッグ入力1314を意図していたかもしれないから、ユーザが何をしているかによっては、ドラッグ入力1210を終わらせて、ドラッグ入力1212を始めることは、望ましくないかもしれない。

[0058] そのために、一実施例では、ドラッグ入力1212の特徴が、ドラッグ入力1210の特徴と比較される。ドラッグ入力1212の特徴が、ドラッグ入力1210の特徴と類似するならば、2つのドラッグ入力1210、1212は、単一のドラッグ入力1314の意図であると判定できる。

[0059] 理解できるように、第2のドラッグ1212が、第1のドラッグ入力1210と同じであるかを判定するために、異なる特徴を利用できる。一実施例においては、ドラッグ入力1210の動きの角度が、ドラッグ入力1212の動きの角度と比較される。さらに、距離が大きすぎないように、ドラッグ入力1210の終端とドラッグ入力1212との距離も利用できる。利用可能な他の特徴としては、ドラッグ入力1210の速度が含まれる。例えば、もしドラッグ入力1210とドラッグ入力1212が、単一のドラッグ入力1314を意図しているならば、ドラッグ入力1212は、ドラッグ入力1210を延長したものに、ある角度の範囲内で、類似すると予想できる。そこで、もしもドラッグ入力1210が終わっていなかったならば、ドラッグ入力1210が存在したであろう場所と矛盾しない位置から、ドラッグ入力1212が始まるならば、ドラッグ入力1210と1212は、単一のドラッグ入力1314を意図していたと考えられる。

[0060] さらに、Fittsの法則やAccot-Zhaiの操縦の法則も、ドラッグ入力1212の特徴が、ドラッグ入力1210の特徴と一致するかを判定するために利用できる。もし2つの入力が十分に似ているならば、ドラッグ1210、1212は組み合わされて、単一のドラッグ入力1314を形成する。

[0061] 図14は、単一のドラッグ入力を意図していたかを調べるために、2つのドラッグ入力を評価する方法を例示する。まず、ステップ1410で、第1のドラッグ入力を受け取る。次に、ステップ1415で、第2のドラッグ入力を受け取る。ステップ1420で、第2のドラッグ入力が、第1のドラッグ入力の延長と一致するかを判定する。これは、第2のドラッグ入力の特徴を、第1のドラッグ入力の特徴と、上術したように比較することでなされ得る。もし、第2のドラッグ入力が、第1のドラッグ入力の延長と一致しないならば、ステップ1425で、第2のドラッグ入力は、別のドラッグ入力として扱われる。しかし、もし、第2のドラッグ入力の特徴が、第1のドラッグ入力が続いていたならば予想されるものと一致するならば、ステップ1430で、第1と第2のドラッグ入力が、単一のドラッグ入力として扱わる。

[0062] 本発明の様々な様相から離れることなく、上記の開示された方法に対して、付加的なステップを加えたり、1つ又はそれ以上の記載されたステップを除いたりできることに注意されたい。したがって、適切であるように、1つ以上の方法を結合できる。)

そして、引用文献1の上記記載事項を引用文献1の関連図面と技術常識に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ユーザは、タッチ方式の装置(例えば、デジタイザ)165、あるいは、キーボード162、及び/または、一般にマウス、トラックボール、タッチパッドなどと呼ばれるポインティング装置161のような入力装置を介して、コマンドと情報をコンピュータ100に入力でき、
ドラッグ入力1212の特徴が、ドラッグ入力1210の特徴と比較され、ドラッグ入力1212の特徴が、ドラッグ入力1210の特徴と類似するならば、2つのドラッグ入力1210、1212は、単一のドラッグ入力1314の意図であると判定でき、
もしドラッグ入力1210とドラッグ入力1212が、単一のドラッグ入力1314を意図しているならば、ドラッグ入力1212は、ドラッグ入力1210を延長したものに、ある角度の範囲内で、類似すると予想できることに基づいて、もしもドラッグ入力1210が終わっていなかったならば、ドラッグ入力1210が存在したであろう場所と矛盾しない位置から、ドラッグ入力1212が始まるならば、ドラッグ入力1210と1212は、単一のドラッグ入力1314を意図していたと考えられる、
コンピュータ100。」

2.本願発明と引用発明との対比
(1) 引用発明の「コンピュータ100」は、「ユーザは、タッチ方式の装置(例えば、デジタイザ)165、あるいは、キーボード162、及び/または、一般にマウス、トラックボール、タッチパッドなどと呼ばれるポインティング装置161のような入力装置を介して、コマンドと情報をコンピュータ100に入力でき」るから、本願発明の「接触を検出するタッチセンサを備える電子機器」に相当する。

(2) 引用発明の「コンピュータ100」において、「もしドラッグ入力1210とドラッグ入力1212が、単一のドラッグ入力1314を意図しているならば、ドラッグ入力1212は、ドラッグ入力1210を延長したものに、ある角度の範囲内で、類似すると予想できることに基づいて」、「もしもドラッグ入力1210が終わっていなかったならば、ドラッグ入力1210が存在したであろう場所と矛盾しない位置から、ドラッグ入力1212が始まるならば、ドラッグ入力1210と1212は、単一のドラッグ入力1314を意図していたと考えられる」という制御を行う機能をつかさどる部分は、本願発明の「前記タッチセンサが接触によるスライド操作を検出している際に当該接触の解除を検出した後、所定時間内に再び接触を検出したら、当該再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定するように制御する制御部」と、「前記タッチセンサが接触によるスライド操作を検出している際に当該接触の解除を検出した後、当該再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定するように制御する制御部」である点で共通するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「接触を検出するタッチセンサを備える電子機器において、
前記タッチセンサが接触によるスライド操作を検出している際に当該接触の解除を検出した後、当該再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電子機器」
である点。

<相違点>
「スライド操作が継続しているか否かを判定する」に際して、本願発明では、さらに、「前記タッチセンサが接触によるスライド操作を検出している際に当該接触の解除を検出した後、所定時間内に再び接触を検出したら、当該再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定するように制御する」のに対して、引用発明では、さらに、「所定時間内に再び接触を検出したら」という条件を加えて、「再び検出された接触の位置と前記接触の解除が検出されるまでのスライド操作の方向とに応じて、スライド操作が継続しているか否かを判定する」制御をすることが特定されていない点。

この点、引用文献1には、2つのドラッグ入力の「特性」を対比すること、具体的には、2つのドラッグが短距離で同じ方向であるという条件(段落[0057])、ドラッグの動きの角度、ドラッグ間の距離、第1のドラッグの速度などを組合せた条件(段落[0059])、Fittsの法則(これは、操作する対象物までの移動時間は、対象物までの距離と、対象物の大きさの関数として表せるという法則であり、要するに、遠くの小さな対象物(例:アイコン)を操作するのは時間が掛かるという法則である。)等の利用(段落[0060])については、それぞれ記載があるものの、上記相違点に係る構成についての明示的記載はない。また、引用発明は、「所定時間内に再び接触を検出したら」という条件なしで課題を解決し得ているものと認められるから、上記相違点に係る構成を当然に具備しているということもできない。よって、引用発明において、さらに、「所定時間内に再び接触を検出したら」という条件に基づいて制御をする点については、一致点ではなく、相違点である。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。

3.判断
引用発明は、「2つのドラッグ入力1210、1212は、単一のドラッグ入力1314の意図であると判定」するために、2つのドラッグ入力の特性を比較するものであって、上記引用文献1には、2つのドラッグを単一のドラッグと判定する場合に、さらに、「所定時間内に再び接触を検出したら」などの判定条件を付加すべきことは、記載も示唆もない。
上記引用文献3(段落[0038]-[0046]、図6)、引用文献4(段落[0040]-[0041]、図2)、引用文献5(段落[0069]-[0070])には、それぞれ、断続的な複数の入力を、単一の入力を意図したものと推定するために、複数の入力が所定時間以内であるか否かを判定するという、周知技術が記載されていると認められる。しかし、その周知技術は、引用発明が既に具備している構成に加えて、さらに、「所定時間内に再び接触を検出したら」などの判定条件を付加すべきことを示すものとはいえない。また、このような点は、周知技術であるともいえないから、引用発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

4.小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。また、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-2に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。また、本願の請求項1-2に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-20 
出願番号 特願2010-264092(P2010-264092)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志藤原 拓也  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
千葉 輝久
発明の名称 電子機器  
代理人 杉村 憲司  

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