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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1316720
審判番号 不服2015-6205  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-02 
確定日 2016-07-06 
事件の表示 特願2012-550165「ヘッドセットコードホルダ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日国際公開、WO2011/091290、平成25年 5月20日国内公表、特表2013-518472〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年1月21日(パリ条約による優先権主張 平成22年1月22日 米国(US)、平成22年2月3日 米国(US)、平成22年9月27日 米国(US))を国際出願日として出願したものであって、平成26年7月7日付け拒絶理由通知に対して同年10月15日付けで手続補正がなされたが、同年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年4月2日付けで拒絶査定不服審判が請求がなされると共に手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1ないし46に係る発明は、平成27年4月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし46に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、請求項1は、平成27年4月2日付け手続補正において補正がなされていない請求項である。

「【請求項1】
a.雌サイドと、
b.上記雌サイドに対して取り外し可能な雄サイドと、
c.上記一つ以上の雌サイド及び上記雄サイドの外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを受け止め、取り外し可能に保持する第1の溝と
を備え、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が本体内及び上記外面下に保持され、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に保持されたときに、上記ヘッドセットコードの上部が覆われないように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成し、
上記雌サイド及び上記雄サイドの一つ以上は、衣服ボタン、ファスナ引具又はバックルを有することを特徴とするヘッドセットコードを保持するシステム。」


3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/158075号(平成21年12月30日国際公開。以下「引用例1」という。)には、「HEADSET CORD HOLDER」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、引用例1の日本国で公表された特表2011-526456号公報の記載を当審の仮訳として、[ ]内に記載した。また、仮訳の下線部は当審で付与した。

ア.「 FIGS. 3A-B illustrate one embodiment of a headset cord holder 300 having a groove molded onto the front face of a side squeeze buckle used on bags and packs in accordance with the principles of the present invention. FIGS. 3A-B show a plan view and a side view of the cord holder 300, respectively. 」(第6頁7行?10行)
[図3A、3Bは、本発明の原理に基づいて、バッグ及びバックに用いられるサイド結束バックル(side squeeze buckle)の前面にモールド成形された溝を有するヘッドセットコードホルダ300の一実施の形態を示す図である。図3A、3Bは、それぞれ、ヘッドセットコードホルダ300の平面図及び側面図である。] (段落【0021】)

イ.「 The side squeeze buckle comprises a female buckle end 315 coupled to a buckle strap or webbing 340 and a male buckle end 335 coupled to a buckle strap or webbing 345. The female buckle end 315 is configured to receive and releasably hold the male buckle end 335. In some embodiments, either the female buckle end 315 or the male buckle end 335 comprises a groove body. In some embodiments, the groove body comprises a portion 310 that protrudes from either the female buckle end 315, as seen in FIGS. 3A-B, or the male buckle end 335. In some embodiments, the groove body does not protrude from the rest of the buckle end, but rather is flush with the rest of the buckle end. Additionally, in some embodiments, the body, including any protruding portion 310, is integrally formed with the buckle end, while in other embodiments, the body is a separate component that is attached to the buckle end. In some embodiments, the groove body is configured to act as a closure mechanism capable of releasably coupling a first strap, and any item to which the first strap is attached, to a second strap, and any item to which the second strap is attached. For example, in some embodiments, the groove body is part of a female buckle end 315 that is coupled to a first portion of a bag via a strap 340. The female buckle end 315 mates with a male buckle end 335. The male buckle end 335 is coupled to a second portion of the bag via a strap 345. 」 (第6頁11行?26行)
[サイド結束バックルは、バックルの帯紐又はウェッビング(buckle strap or webbing)340に連結された雌型バックル端部315と、バックルの帯紐又はウェッビング345に連結された雄型バックル端部335とを備える。雌型バックル端部315は、雄型バックル端部335を受け入れて、脱着可能に保持する。幾つかの実施の形態においては、雌型バックル端部315と雄型バックル端部335のどちらかが、溝本体を備える。幾つかの実施の形態においては、溝本体は、図3A、3Bに示すように雌型バックル端部315と雄型バックル端部335のいずれかから突出した突出部310である。幾つかの実施の形態においては、溝本体は、バックル端部の残りの部分から突出しておらず、むしろバックル端部の残りの部分と同じ高さである。さらに、幾つかの実施の形態においては、突出部310を含む溝本体は、バックル端部に一体形成(integrally formed)され、一方、更なる幾つかの実施の形態においては、溝本体は、バックル端部に取り付けられる別部材(separate component)である。幾つかの実施の形態においては、溝本体は、第1の帯紐及び第1の帯紐に連結されたあらゆる洋品を、第2の帯紐及び第2の帯紐に連結されたあらゆる洋品に脱着可能に連結することができる開閉機構として機能する。例えば、幾つかの実施の形態においては、溝本体は、ウェッビング340によってバッグの第1の部分に連結された雌型バックル端部315の一部である。雌型バックル端部315は、雄型バックル端部335に嵌合する。雄型バックル端部335は、ウェッビング345によってバッグの第2の部分に連結されている。] (段落【0022】)

ウ.「 A groove 320 is molded or otherwise built into the groove body. The groove 320 is configured to receive and releasably secure a headset cord. In some embodiments, the groove 320 is defined by a groove wall 330 that surrounds most of the groove 320, leaving only an entry space 325 through which the cord can access the groove 320. In some embodiments, PATENT HCUTT-OOIOIWO the entry space 325 has a smaller diameter than the groove 320 and the cord, thereby securing the cord within the confines of the groove wall 330 and requiring a significant amount of force for its removal. In some embodiments, portions of the groove wall 330 are flexible so that as the cord is pushed through the entry space 325, the cord is able to force the groove wall 330 out of its way and temporarily increase the diameter of the entry space 325 so that the cord can pass through the entry space 325 into the groove 320. In some embodiments, the groove wall 330 is substantially rigid, thereby forcing the outer sleeve of the cord to constrict as it passes through the entry space 325 between the ends of the groove wall 330. 」 (第6頁27行?第7頁8行)
[溝320は、溝本体にモールド成形、すなわち設けられている。溝320は、ヘッドセットコードを受け止めて、解放可能に固定する。幾つかの実施の形態においては、溝320は、ヘッドセットコードを溝320に入れることを可能にする差込口空間325だけを残して、溝320の大部分を囲む溝壁330によって画定される。幾つかの実施の形態においては、差込口空間325は、溝320及びヘッドセットコードよりも小さな直径を有し、それによって、溝壁330の範囲内でヘッドセットコードを固定し、それを取り外すためには、かなり大きな力を必要とする。幾つかの実施の形態においては、溝壁330の一部は、差込口空間325を介して、ヘッドセットコードを押し込めるように柔軟であり、ヘッドセットコードは、溝壁330をその進行方向に対して外側に広げて、一時的に差込口空間325の直径を拡大し、差込口空間325を通過して溝320内に達することができる。幾つかの実施の形態においては、溝壁330はかなり硬く、それによって、ヘッドセットコードが溝壁330の両端部間の差込口空間325を通過するときに、そのスリーブは収縮される。] (段落【0023】)

上記アないしウ、図3Aおよび図3Bから、引用例1には以下の事項が記載されている。

・上記アによれば、サイド結束バックルにモールド成型された溝を有するヘッドセットコードホルダ300に関わるものである。

・上記イによれば、サイド結束バックルは、雄型バックル端部335と、該雄型バックル端部335を受け入れて脱着可能に保持する雌型バックル端部315を備えているものである。

・上記イによれば、雌型バックル端部315と雄型バックル端部335のどちらかに、バックル端部に一体形成された溝本体を備えているものである。

・上記ウによれば、溝320(上記イにおける「溝本体」と認められる。)は、ヘッドセットコードを固定および取り外しができるように、差込口空間325だけを残して溝壁330で囲まれているものである。

そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「雌型バックル端部と、
上記雌型バックル端部と脱着可能な雄型バックル端部と、
上記雌型バックル端部と上記雄型バックル端部のどちらかに一体形成され、ヘッドセットコードの固定および取り外しができる溝と、
を備え、
上記溝は、差込口空間だけを残して溝壁で囲まれており、
上記雌型バックル端部及び上記雄型バックル端部は、サイド結束バックルからなることを特徴とするヘッドコードホルダ。」

(2)原査定の拒絶の理由に周知技術として例示された特開2001-333485号公報(平成13年11月30日公開。以下「引用例2」という。)には、「イヤホーン」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。

エ.「【0017】 図4は、その分岐部分を示した側面概略図である。この図で明らかなように、締結部材7の側面には電気コード3の長手方向に直交して溝8が並列状に形成される。図5に示すように、その溝8は締結部材7の両側面に2つずつ相対して形成されている。特に、その各溝8は入口8Aが内径より狭く、その内面形状が支線部32A,32Bの外径とほぼ同じ円弧面をもつ円形状とされている。そして、この締結部材7によれば、溝8に電気コード3の部位、特に本例において支線部32A,32Bの任意の部位を押し込んで該支線部32A,32Bを締結部材7に固定することができる。つまり、溝8に押し込まれた支線部32A,32Bは溝8又は被覆材34の弾性変形により溝8に挟み込まれたまま固定されるようになり、このため電気コード3を丸めてポーチなどに収納した場合も、本線部31と支線部32A,32B、又は支線部32A,32B同士が互いに絡み合うことがなく、使用時には支線部32A,32Bを溝8の入口8Aから引き抜くだけでイヤホーンユニット5A,5Bを直ぐさま耳に装着することができる。
【0018】 尚、その種の溝8は締結部材7の部位を切り欠いて形成するものに限らず、例えば図6のように締結部材7の部位に相対する一対の爪9,9を突設し、その爪9,9の相互間に電気コード3の任意の部位を着脱自在に挟み込み得る溝8を形成することができる。ここで、図5、図6では溝8の大きさを同一の大きさで示しているが、本線部31と支線部32A,32Bの双方を挟み込み得るよう大きさの異なる溝を形成するとより効果的である。」

上記エの記載、図4ないし図6の記載によれば、引用例2には、「コードを着脱自在に固定する溝は、締結部材を切り欠いて(本体内に)形成、又は、締結部材に突設して形成する」技術事項が記載されている。


4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「雌型バックル端部」及び「雄型バックル端部」は、本願発明の「雌サイド」及び「雄サイド」に相当する。
よって、引用発明の「雌型バックル端部と、上記雌型バックル端部と脱着可能な雄型バックル端部」は、本願発明の「雌サイドと、上記雌サイドに対して取り外し可能な雄サイド」に相当する。

b.本願発明は、第1の溝が「前記一つ以上の雌サイド及び前記雄サイド」に一体成形されたものとしており、一見すると「雌サイドと雄サイドの両方」に溝を備えたことを要件にしていると解釈できるが、本願発明の従属項である請求項2ないし請求項7の記載や本願発明の実施例に相当する図20A等から勘案すると、雌サイドと雄サイドのどちらかに溝を設ければ足りるものと認められるから、「前記一つ以上の雌サイド及び前記雄サイド」は、「雌サイドと雄サイドの(少なくとも)一方」を意味すると解釈するのが妥当である。
よって、引用発明の「上記雌型バックル端部と上記雄型バックル端部のどちらかに一体形成され、ヘッドセットコードの固定および取り外しができる溝」は、本願発明の「上記一つ以上の雌サイド及び上記雄サイドに一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを受け止め、取り外し可能に保持する第1の溝」に相当する。
なお、本願発明の第1の溝は、雌サイド/雄サイドの「外面内」に一体成形で設けられているとしているが、「外面内」なる用語は、本願明細書に記載されていない事項であるが、本願の図20A等を参照すると、「外面内」とは、雌サイド/雄サイドの「表面から内部に至る箇所」を示すものと解釈できる。そうすると、引用発明の溝は「外面内」に成形されているとは特定されていない。

c.本願発明の「第1の溝壁、第2の溝壁」なるものは、本願明細書に記載されていない事項であるが、図20A等を参照すると、溝の左右にある溝壁(溝を断面で切った場合に該溝の左右に存在する溝壁)がそれぞれ「第1の溝壁、第2の溝壁」であると解釈できる。そうすると、引用発明の「溝壁」も溝を囲っているものであり、該溝の左右に溝壁が存在するから、引用発明の「溝壁」は、本願発明の「第1の溝壁、第2の溝壁」に相当する。
また、本願発明の「ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に保持されたときに、上記ヘッドセットコードの上部が覆われない」ことは、本願明細書に記載されていない事項であるが、本願明細書におけるヘッドセットコードを溝の中に保持する記載事項や差込口空間に関する記載事項(平成26年1月21日付け意見書において、本願の請求項1のに係わる記載として主張した本願明細書の段落【0084】。)は、引用例1に記載された記載事項(上記ウを参照。)と同じ記載内容であるから、引用発明の差込口空間を備えた「溝」も本願発明と同様の構成を有するものである。
よって、引用発明の「上記溝は、差込口空間だけを残して溝壁で囲まれており」は、本願発明の「上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、・・・上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に保持されたときに、上記ヘッドセットコードの上部が覆われないように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は・・・上記第1の溝を形成し」に相当する。
なお、本願発明の「ヘッドセットコードが第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が本体内及び外面下に保持され」における「本体内及び外面下」は、本願明細書に記載されていない事項であるが、本願の図20A等を参照すると、「本体内」も「外面下」も、雌サイド/雄サイドの「表面から内部に至る箇所」を示すものと解釈できる。そうすると、引用発明の溝は、ヘッドセットコードが「本体内及び外面下」で保持されるとは特定されていない。

d.引用発明は、ヘッドセットコードを溝に保持するための構成を備えているものであるから、「ヘッドセットコードを保持するシステム」といえる。
よって、引用発明の「上記雌型バックル端部及び上記雄型バックル端部は、サイド結束バックルからなることを特徴とするヘッドコードホルダ」は、本願発明の「上記雌サイド及び上記雄サイドの一つ以上は、バックルを有することを特徴とするヘッドセットコードを保持するシステム」に相当する。

上記aないしdから、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。

<一致点>
雌サイドと、
上記雌サイドに対して取り外し可能な雄サイドと、
上記一つ以上の雌サイド及び上記雄サイドの外面内に一体成形で設けられ、ヘッドセットコードを受け止め、取り外し可能に保持する第1の溝と
を備え、
上記第1の溝は、第1の溝壁と第2の溝壁と差込口空間とを有し、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が本体内及び上記外面下に保持され、上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に保持されたときに、上記ヘッドセットコードの上部が覆われないように、上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて、上記第1の溝を形成し、
上記雌サイド及び上記雄サイドの一つ以上は、バックルを有することを特徴とするヘッドセットコードを保持するシステム。

<相違点>
第1に溝について、本願発明は、「外面内に一体成形で設けられ」、「上記ヘッドセットコードが上記第1の溝の中に固定されるときに、上記ヘッドセットコードの少なくとも一部が本体内及び上記外面下に保持され」、「上記第1の溝壁と上記第2の溝壁は、共に、上記本体の外面下に延びて」いるのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない。

そこで、<相違点>について検討する。
上記b、cに記載したとおり、本願発明の「外面内」、「本体内」、「外面下」は本願明細書に記載されていない用語であるが、本願発明における「雌サイド/雄サイド」を本体、その表面を外面とすると、これらの用語は、雌サイド/雄サイドの「表面から内部に至る箇所」を示すものと解釈できる。
一方、引用発明の溝は、実施例(引用例1の図3A、3B)によれば、「雌型バックル端部/雄型バックル端部」より突出し形成されたことが記載されているので、本願発明の溝の形成部分である「雌サイド内/雄サイド内」と一応相違する。
しかしながら、引用例1には、「幾つかの実施の形態においては、溝本体は、バックル端部の残りの部分から突出しておらず、むしろバックル端部の残りの部分と同じ高さである。」(上記イを参照。)と記載されているように、本体(雌型バックル端部/雄型バックル端部)から突出させた溝だけではなく、本体と同じ高さ、すなわち本体内に溝を形成することも含み得る記載があるところ、本体から突出した溝を形成するか、本体内に溝を形成するかは、引用例2に記載された技術事項(上記3.(2)を参照。)に記載されているように、当業者であれば容易になし得ることである。
よって、引用発明の溝の形成位置として、引用例2に記載された技術事項を適用して、相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願発明は、引用発明および引用例2に記載された技術事項により当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


5.審判請求人の主張について
平成27年4月2日付け審判請求書において、審判請求人は、「引用文献1に係る発明は、・・・図3(A)及び図3(B)に示すようなバックル・・・においても、1部品で構成され、・・・本体自体にコードを保持する溝が直接的(一体的)に形成されるものである。これに対して、本願請求項1・・・に係る発明は、・・・図20(A)及び図24(A)に示すように、衣服ボタン(本体)自体にコードを保持する溝を形成するのではなく、衣服ボタン(本体)に取り付けられる付属品にコードを保持する溝を形成したり・・・するものであって、・・・引用文献1の発明と本願請求項1・・・に係る発明とでは構成が異なるものである。」と主張している。
しかしながら、請求項1においては、雌サイド/雄サイドを構成要件としているだけで、本体と付属品のような区別はなく、むしろ「本体内」(雌サイド/雄サイドが本体と認められる。)にヘッドセットコードを保持する溝を形成することを要件としている。よって、出願人の上記主張は、請求項1の記載に基づいたものではなく、認めることはできない。
また、同審判請求書において、審判請求人は、「引用文献2・・・も、引用文献1と同様に、1部品で構成され、更に、本体にコードを保持する溝が直接的(一体的)に形成されるものであって、本願請求項1・・・に係る発明とは構成が異なるものである。」とも主張している。
しかしながら、上記のとおり、請求項1も本体内に溝が形成されているものであるから、出願人の上記主張は、請求項1の記載に基づいたものではなく、認めることはできない。


6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-02 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2012-550165(P2012-550165)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 弘下林 義明  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 ヘッドセットコードホルダ  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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