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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1316725
審判番号 不服2015-11103  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-11 
確定日 2016-07-06 
事件の表示 特願2013-150382「オーサリング・ツールおよびこれを実装するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-239200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2008年(平成20年)4月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年(平成19年)4月11日、米国)を国際出願日とする出願である特願2010-503023号の一部を平成25年7月19日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月17日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月26日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月17日付けで拒絶の査定がなされ、同年6月11日に拒絶の査定に対する審判が請求されたものである。

2.本願発明
平成26年8月26日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に係る発明は、
「コンテンツ記憶媒体をオーサリングする方法であって:
前記媒体上のコンテンツをオーサリングするためのコンテンツ関係情報のユーザー入力された宣言を受け入れる段階であって、コンテンツ関係情報の前記宣言は少なくとも一つの動作をもつ少なくとも一つのスクリプトを含む、段階と;
前記少なくとも一つのスクリプトを、コンテンツ再生の間に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するためのコマンドにマッピングする段階と;
前記媒体上の前記コンテンツをオーサリングするために、コンテンツ再生の際に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するようプログラミング言語でのプログラミング命令の組を生成する段階と;
生成されたプログラミング命令の組を前記媒体上に記憶する段階とを有する、
方法。」
にあるものと認める。
なお、請求項1には、「コンテンツ再生の際に前記媒体上の前記コンテンツをオーサリングするために前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するようプログラミング言語でのプログラミング命令の組を生成する段階」と記載されているが、「コンテンツ再生の際に」が「オーサリングするために」を修飾する語であるとすると、コンテンツ再生の際にオーサリングが行われることとなり、明らかに不合理であることと、請求項1には、同様の技術的事項を表していると解される「コンテンツ再生の間に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するためのコマンド」という記載があることを考慮し、「コンテンツ再生の際に」の語が補正の際に誤った位置に挿入されたものと認め、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を上記のように認定した。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開2007/027995号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の(a)ないし(e)のとおりの記載がある。(当審注:日本語訳は,引用例1の翻訳文である特表2009-509277号公報(以下、「対応公報」という。)の記載を参照した。)

(a)「1.A method of authoring a Blu-ray disc (BD), the method comprising: generating a template code representing templatized navigation commands, said template code specifying a first object to be processed, wherein said templatized navigation commands are used to provide navigational control of the BD using playable content; converting said template code to generate multiple lines of low level code; and automatically placing said low level code at multiple positions on the BD to effect desired behaviors by the BD.」(請求項1)
(当審訳:「ブルーレイディスク(BD)をオーサリングする方法であって、
テンプレート化ナビゲーションコマンドを表しており、処理される第1のオブジェクトを指定するテンプレートコードを生成するステップであって、前記テンプレート化ナビゲーションコマンドが、再生可能コンテンツを使用する前記BDのナビゲーション制御を提供するために使用されるステップと、
複数行の低レベルコードを生成するために前記テンプレートコードを変換するステップと、
前記BDによって所望の動作を達成するために前記低レベルコードを前記BD上の複数の位置に自動的に置くステップと、を含む方法。」(対応公報の【請求項1】))

(b)「The BD-ROM specification has a defined set of navigation commands that are used to provide navigational control of the BD. The BDAS allows users to author these navigation commands using a high level script language. However, multiple lines of script language representing a large number of navigation commands are often required to be written in a number of places on the disc to accomplish certain disc behaviors. Therefore, in order to simplify the authoring process, the BDAS generates a template code (representing the navigation commands) that is automatically placed at multiple positions on the disc. Thus, the template code allows certain disc behaviors to be achieved using just one or two lines of high level script language code. The BDAS converts these lines of high level code to multiple lines of low level code using a script generator and a compiler. The commands represented by the template code are referred to as templatized commands.」(第6ページ第6?22行)
(当審訳:「BD-ROM仕様には、BDのナビゲーション制御を提供するために用いられる定義された一組のナビゲーションコマンドがある。BDオーサリングシステム(BDAS)によって、ユーザは、高レベルのスクリプト言語を用いて、これらのナビゲーションコマンドを生成することができるようになる。しかしながら、多数のナビゲーションコマンドを表現する複数のスクリプト言語列が、所定のディスクの動作(振舞い)を実現するために、ディスク上のいたる所に記述される必要があることがある。よって、そのコマンド生成プロセスを簡単にするために、BDASは、ディスク上の複数位置に自動的に配置されるテンプレートコード(ナビゲーションコマンドを表すもの)を生成する。このように、テンプレートコードによって、たった1又は2行(列)のハイレベルスクリプト言語コードを用いて実現される所定のディスク動作が可能となる。BDASは、これら高レベルコード行を、スクリプト生成器及びコンパイラを用いて、複数の低レベルコード行に変換する。テンプレートコードによって表されるコマンドは、テンプレート化コマンドと呼ばれる。」(対応公報の段落【0020】))

(c)「Figure 8 is a flowchart 800 illustrating a method for authoring a Blu-ray Disc using templatized navigation commands. A template code representing the templatized navigation commands is generated, at 802. As discussed above, the templatized commands are used to provide navigational control of the BD using playable content. The template code is converted, at 804, to generate multiple lines of low level code, at 806. The low level code is then placed at multiple positions on the BD, at 808, to effect desired behaviors by the BD.」(第10ページ第3?12行)
(当審訳:「 図8は、テンプレート化ナビゲーションコマンドを使用してブルーレイディスクをオーサリングする方法を示すフローチャート800である。802で、テンプレート化ナビゲーションコマンドを表すテンプレートコードが生成される。上記で論じられたように、テンプレート化コマンドは、再生可能コンテンツを使用するBDのナビゲーション制御を提供するために使用される。804で、テンプレートコードが変換されて、806で、複数行の低レベルコードが生成される。次いで、808で、BDによる所望の動作を達成するために、低レベルコードがBD上の複数の位置に置かれる。」(対応公報の段落【0028】))

(d)「Figure 9 is a block diagram of a templatized command portion of the BDAS 900. In the illustrated implementation of Figure 9, the templatized command portion of the BDAS 900 includes a template code generator 920 and a code converter 930. The template code generator 920 receives a user input and generates a template code. In one implementation, the template code is manually written by the user. In another implementation, the template code is generated using graphical connectors that the user can draw from one object to another object. The code converter 930 then converts the template code to generate multiple lines of low level code, which are placed at multiple positions on the BD to effect desired behaviors by the BD. In one implementation, the code converter 930 is configured as a script compiler to compile the template code to multiple lines of low level code . 」(第10ページ第13?28行)
(当審訳:「 図9は、BDAS900のテンプレート化コマンド部分のブロック図である。図9の示された実施形態では、BDAS900のテンプレート化コマンド部分は、テンプレートコード発生器920とコード変換器930とを含む。テンプレートコード発生器920は、ユーザ入力を受信し、テンプレートコードを生成する。一実施形態では、テンプレートコードは、ユーザによって手作業で書かれる。別の実施形態では、テンプレートコードは、あるオブジェクトから別のオブジェクトへとユーザが引くことができるグラフィカルな結合子を使用して生成される。次いで、コード変換器930は、テンプレートコードを変換して、複数行の低レベルコードを生成し、この低レベルコードは、BDによって所望の動作を達成するためにBD上の複数の位置に置かれる。一実施形態では、コード変換器930は、テンプレートコードを複数行の低レベルコードにコンパイルするスクリプトコンパイラとして構成される。」(対応公報の段落【0029】))

(e)「Figure 1OA shows a representation of a computer system 1000 and a user 1002. The user 1002 can use the computer system 1000 to author a Blu-ray disc. The computer system 1000 stores and executes a templatized command portion of the BDAS 1012, which receives a user input for generating a template code and output multiple line of low level code to effect desired behavior by the BD.」(第10ページ第29行?第11ページ第2行)
(当審訳:「 図10Aは、コンピュータシステム1000とユーザ1002の絵を示している。ユーザ1002は、ブルーレイディスクをオーサリングするためにコンピュータシステム1000を使用することができる。コンピュータシステム1000は、BDAS1012のテンプレート化コマンド部分を保存および実行し、このBDAS1012は、テンプレートコードを生成するためのユーザ入力を受信し、BDによって所望の動作を達成するために、複数行の低レベルコードを出力する。」(対応公報の段落【0030】))

上記摘記事項(a),(c)によれば、
引用例1には、「ブルーレイディスクをオーサリングする方法であって、
再生可能コンテンツを使用するブルーレイディスクのナビゲーション制御を提供するために使用されるテンプレートコードを生成するステップと、
複数行の低レベルコードを生成するためにテンプレートコードを変換するステップと、
ブルーレイディスクによって所望の動作を達成するために低レベルコードをブルーレイディスクの複数の位置に自動的に置くステップとを有する方法。」が記載されている。
また、上記摘記事項(d),(e)によれば、引用例1のテンプレートコードは、ユーザーから入力されるものである。
また、上記摘記事項(b)によれば、テンプレートコードは、ハイレベルスクリプト言語コードで実現されるものである。

したがって、引用例1には、
「ブルーレイディスクをオーサリングする方法であって、
ユーザーからの入力を受けるステップであって、再生可能コンテンツを使用するブルーレイディスクのナビゲーション制御を提供するために使用され、ハイレベルスクリプト言語コードで実現されるテンプレートコードの入力を受けるステップと、
複数行の低レベルコードを生成するためにテンプレートコードを変換するステップと、
ブルーレイディスクによって所望の動作を達成するために低レベルコードをブルーレイディスクの複数の位置に自動的に置くステップとを有する、
方法。」
の発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、次のことがいえる。
(1)引用例1発明の「ブルーレイディスク」は、本願発明の「コンテンツ記憶媒体」に相当するものであり、本願発明と引用例1発明とは、いずれも「コンテンツ記憶媒体をオーサリングする方法」である点で共通する。
(2)引用例1発明の「テンプレートコード」はユーザーから入力されるものであり、ユーザーからの入力は、ユーザー入力された宣言とも言い得るものである。
また、引用例1発明の「テンプレートコード」は、「再生可能コンテンツを使用するブルーレイディスクのナビゲーション制御を提供するための」ものであるから、「媒体上のコンテンツをオーサリングするためのコンテンツ関係情報」であるといえる。
また、引用例1発明の「テンプレートコード」は「ハイレベルスクリプト言語コードで実現される」ものであり、ブルーレイディスクのナビゲーション制御のためのものであるから、引用例1発明の「テンプレートコード」は、スクリプトを含んでおり、ブルーレイディスクの「動作」に関するものである。
したがって、引用例1発明の「ユーザーからの入力を受けるステップであって、再生可能コンテンツを使用するブルーレイディスクのナビゲーション制御を提供するために使用され、ハイレベルスクリプト言語コードで実現されるテンプレートコードの入力を受けるステップ」は、本願発明の「前記媒体上のコンテンツをオーサリングするためのコンテンツ関係情報のユーザー入力された宣言を受け入れる段階であって、コンテンツ関係情報の前記宣言は少なくとも一つの動作をもつ少なくとも一つのスクリプトを含む、段階」に相当する。
(3)引用例1発明の「低レベルコード」は、引用例1の上記摘記事項(b)における「多数のナビゲーションコマンドを実現する複数のスクリプト言語列が、所定のディスクの動作(振舞い)を実現するために、ディスク上のいたるところに記述される必要がある」との記載から、ディスクの動作を実現するためのプログラミング命令といい得るものである。
よって、引用例1発明の「複数行の低レベルコードを生成するためにテンプレートコードを変換するステップ」は、本願発明の「前記記憶媒体上の前記コンテンツをオーサリングするために、コンテンツ再生の際に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作をするようプログラミング言語でのプログラミングの組を生成する段階」に相当するものであるといえる。
(4)引用例1発明の「ブルーレイディスクによって所望の動作を達成するために低レベルコードをブルーレイディスクの複数の位置に自動的に置くステップ」は、本願発明の「生成されたプログラミング命令の組を前記媒体上に記憶する段階」に相当することは明らかである。

したがって、本願発明と引用例1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「コンテンツ記憶媒体をオーサリングする方法であって:
前記媒体上のコンテンツをオーサリングするためのコンテンツ関係情報のユーザー入力された宣言を受け入れる段階であって、コンテンツ関係情報の前記宣言は少なくとも一つの動作をもつ少なくとも一つのスクリプトを含む、段階と;
前記媒体上の前記コンテンツをオーサリングするために、コンテンツ再生の際に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するようプログラミング言語でのプログラミング命令の組を生成する段階と;
生成されたプログラミング命令の組を前記媒体上に記憶する段階とを有する、
方法。」

[相違点1]
本願発明では、「前記少なくとも一つのスクリプトを、コンテンツ再生の間に前記少なくとも一つのスクリプト内の前記少なくとも一つの動作を実行するためのコマンドにマッピングする段階」を有しているのに対し、引用例1発明ではそのような限定がない点。

5.判断
(1)[相違点1]について
引用例1の上記摘記事項(b)によれば、テンプレートコードはナビゲーションコマンドを表すものであり、テンプレートコードはスクリプト生成器及びコンパイラを用いて複数の低レベルコードに変換されるものである。ここで、ブルーレイディスクのナビゲーション制御は1つだけでなく複数あることが普通であることから、テンプレートコードを複数設けること自体は当業者が容易に推考し得たことである。そして、複数のテンプレートコードをスクリプト生成器及びコンパイラを用いて変換する際には、ユーザーから入力されたテンプレートコードが予め定義されているどのテンプレートコードに対応するかの判断が当然に必要となるが、その判断をすることはマッピングをすることに他ならない。
してみれば、引用例1発明において、ユーザーから入力されたテンプレートコードが、定義されているテンプレートコードのいずれかにマッピングされるようにすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。

6.審判請求人の平成26年8月6日付け意見書及び審判請求書での主張について
審判請求人は、平成26年8月6日付けの意見書及び審判請求書において、本願発明は、「プレイリストの番号」を「有意味な名前」にマッピングすることにより、プレイリストの番号を有意味な名前により参照できるものであるから、引用例1発明とは異なる旨主張している。
しかしながら、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「スクリプトをコマンドにマッピングする」との記載があるのみで、「有意味な名前をコマンドにマッピングする」と限定的に解釈することはできないから、上記審判請求人の主張は本願の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づかない主張である。
仮に、本願発明の「マッピング」について、「有意味な名前をコマンドにマッピングする」ものであると限定的に解釈することができたとしても、本願発明の進歩性は肯定されない。理由は次のとおりである。
ユーザー入力の補助として、ユーザーに直感的に分かりやすいコマンド別名を入力して、入力されたコマンド別名に対応するコマンドを呼び出すようにすることは周知技術である。この点は、特開平4-155515号公報の第2頁左下欄第17行?右下欄第4行、特開2007-5882号公報の段落【0038】?【0040】等の記載から明らかである。
そして、引用例1発明もコマンドの生成に関して、ユーザの入力を行い易くするためのものであるから、上記周知技術であるコマンドの対応付け技術を採用することは当業者が容易に想到し得た事項である。
したがって、特許請求の範囲の請求項1の記載のマッピングについて、「有意味な名前をコマンドにマッピングする」ものであると限定的に解釈したとしても、本願発明の構成を採用することは当業者にとって容易である。
また、上記の限定的に解釈したことによってもたらされる効果についても、引用例1の記載事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-05 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-02-22 
出願番号 特願2013-150382(P2013-150382)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 岳士  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 高瀬 勤
稲葉 和生
発明の名称 オーサリング・ツールおよびこれを実装するための方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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