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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C21D
管理番号 1316740
審判番号 不服2014-19196  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-26 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 特願2008-524481「方向性電磁鋼ストリップの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 8日国際公開、WO2007/014868、平成21年 1月29日国内公表、特表2009-503265〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2006年7月20日(パリ条約による優先権主張 2005年
8月3日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成24年6月5日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月12日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出され、平成25年4月22日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年10月16日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出され、平成26年5月19日付けで拒絶査定がなされ、同年9月26日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

[2]本願発明
本願請求項1-11に係る発明は、平成25年10月16日付け誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
薄スラブの連続鋳造プロセスを使用する、方向性電磁鋼ストリップの製造方法であって、下記の製造工程:
(a)鋼
[鉄及び不可避的不純物以外に、下記の組成(質量%):
ケイ素:2.5?4.0%、
炭素:0.02?0.10%、
アルミニウム:0.01?0.065%、
窒素:0.003?0.015%
任意添加元素として、
0.30%までのマンガン、
0.05%までのチタン、
0.3%までのリン、
最大合計含有量0.04%である、硫黄、セレンの群から選択される1種又は複数の元素、任意添加元素として、0.2%まで含有している、ヒ素、スズ、アンチモン、テルル、ビスマスの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.5%まで含有している、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.012%まで含有している、ホウ素、バナジウム、ニオブの群から選択される1種又は複数の元素
を含むものとする]の溶融工程と
(b)取鍋炉(ladle furnace)中及び真空設備中での、溶融金属の精錬工程と、
(c)溶融金属からストランドへの連続鋳造工程と、
(d)ストランドを薄スラブへ分ける工程と、
(e)インラインで配置している炉中での、温度1050?1300℃への薄スラブの加熱工程(前記設備内での滞留時間は、最大60分間である)と、
(f)インラインで配置している複数スタンドの熱間圧延機での、厚さ0.5?4.0mmであるホットストリップへの薄スラブの連続熱間圧延工程と
(前記圧延段階中に、第1成形操作は、40%を超える変形ひずみを伴い、温度900?1200℃で実施され、
少なくとも、その後の2つの熱間圧延パスは、フェライト-オーステナイト2相域にて圧延を行い、
最終パスの圧延率が最大30%である)、
(g)ホットストリップの冷却工程と、
(h)コイルへのホットストリップの巻き取り工程と、
(i)任意の工程として、コイリング後又は冷間圧延前の、ホットストリップの焼きなまし工程と、
(j)最終厚さ0.15?0.50mmであるコールドストリップへのホットストリップの冷間圧延工程と、
(k)コールドストリップの再結晶及び脱炭焼きなまし工程と、
(l)前記ストリップ表面上への焼鈍分離剤の付与工程と、
(m)ゴス集合組織を形成するための、再結晶及び脱炭焼きなましされたコールドストリップの最終焼きなまし工程と、
(n)任意の工程として、仕上げ焼きなましされたコールドストリップの電気絶縁でのコーティング、及びそれに続く、応力を除去するための、コーティングされたコールドストリップの焼きなまし工程と、
(o)任意の工程として、コーティングされたコールドストリップの磁区細分化工程とを含む、前記方法。」

[3]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に日本国内において頒布された特開平2-274812号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、トランス等の鉄心として使用される磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法に関する。」(第1頁右下欄第3-6行)

(b)「〔作 用〕
本発明が対象としている一方向性電磁鋼板は、従来用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法或いは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブとし、引き続き熱間圧延して熱延板とし、次いでこの熱延板に必要に応じて焼鈍を施し、次いで圧下率80%以上の最終冷延を含み、必要に応じて中間焼鈍をはさむ1回以上の冷延、脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍を順次行うことによって製造される。」(第4頁左上欄第7-16行、なお、下線は、当審において付与した。以下、同様。)

(c)「〔実施例〕
以下実施例を説明する。
-実施例1-
C:0.056重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.14重量%、S:0.005重量%、酸可溶性;0.029重量%、N:0.0078重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる40mm厚のスラブを1150℃の温度で加熱した後、1050℃で熱延を開始し6パスで熱延して2.3mm厚の熱延板とした。この時圧下配分をI(審決注;丸数字をギリシャ数字にて表記した。以下、同様。)140→15→7→3.5→3→2.6→2.3(mm)、II 40→30→20→10→5→2.8→2.3(mm)、III 40→30→20→10→5→3→2.3(mm)の3条件とした。熱延終了後は1秒間空冷後550℃まで水冷し、550℃に1時間保持した後炉冷する巻取りシミュレーションを行った。この熱延板に、1120℃に30秒保持し900℃に30秒保持して急冷する熱延板焼鈍を行い、次いで圧下率約88%で0.285mm厚の冷延板とし、830℃で150秒保持する脱炭焼鈍を施した。得られた脱炭焼鈍板に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、N_(2)75%、H_(2)5%の雰囲気ガス中で10℃/時の速度で1200℃まで昇温し、引き続きH_(2)100%雰囲気ガス中で1200℃で20時間保持する最終仕上焼鈍を行った。
熱延条件、熱延終了温度と製品の磁気特性を第1表に示す。




-実施例2-
C:0.053重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.15重量%、S:0.006重量%、酸可溶性A1:0.030重量%、N:0.0081重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる26mm厚のスラブを1150℃の温度で加熱した後、6パスで熱延して2.3mm厚の熱延板とした。この時圧下配分を26→15→10→7→5→2.8→2.3(mm)とし、熱延開始温度をI 1000℃、II 900℃、III 800℃、IV 700℃の4条件とし、熱延終了後の冷却条件、引き続く最終仕上焼鈍までの工程条件は実施例1と同じ条件で行った。
熱延条件、熱延終了温度と製品の磁気特性を第2表に示す。




」(第7頁右上欄第4行-第8右上欄末行)

[4]引用刊行物記載の発明
引用刊行物には、上記記載事項(a)によれば、一方向性電磁鋼板の製造方法が記載され、同(c)によれば、実施例2として、C:0.053重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.15重量%、S:0.006重量%、酸可溶性A1:0.030重量%、N:0.0081重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる26mm厚のスラブを1150℃の温度で加熱した後、熱延開始温度を1000℃、熱延終了温度を904℃(熱延条件I)とする6パスの熱延を行うことにより2.3mm厚の熱延板とし、この時の圧下配分を26→15→10→7→5→2.8→2.3(mm)とすることが記載されている。
そして、「熱延終了後の冷却条件、引き続く最終仕上焼鈍までの工程条件は実施例1と同じ条件で行った」とあるから、上記実施例2において、上記熱延終了後は1秒間空冷後550℃まで水冷し、550℃に1時間保持した後炉冷する巻取りシミュレーションを行い、この熱延板に、1120℃に30秒保持し900℃に30秒保持して急冷する熱延板焼鈍を行い、次いで圧下率約88%で0.285mm厚の冷延板とし、830℃で150秒保持する脱炭焼鈍を施し、得られた脱炭焼鈍板に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、N_(2)75%、H_(2)5%の雰囲気ガス中で10℃/時の速度で1200℃まで昇温し、引き続きH_(2)100%雰囲気ガス中で1200℃で20時間保持する最終仕上焼鈍を行ったものと認められる。
そして、上記6パスの熱延のうち、第1パスは、42%((26-15)/26×100=42)の圧下率であり、最終(第6)パスは、18%((2.8-2.3)/2.8×100=18)の圧下率であり、熱延条件Iの場合、第1パスは1000℃で開始され、最終(第6)パスは、904℃で終了するから、第1パス、および第2?最終(第6)パスは、904?1000℃の温度範囲で実施されることは明らかである。
また、鋼スラブの製造の際、最初に鋼の溶融工程を経ること、一方向性電磁鋼板の製造において、焼鈍分離剤塗布工程後の最終仕上げ焼鈍工程が、ゴス集合組織を形成するためのものであること、冷延板の「脱炭焼鈍」が、「再結晶焼鈍」としての機能を有することは技術常識である。
さらに、上記記載事項(c)によれば、「・・・巻取りシミュレーションを行った。この熱延板を、・・・」とあり、これは、実質的に「コイルへの熱延板の巻き取り工程」を意味するものである。

そうすると、上記検討事項及び技術常識によれば、引用刊行物には、
「一方向性電磁鋼板の製造方法であって、下記の製造工程:
(1)C:0.053重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.15重量%、S:0.006重量%、酸可溶性A1:0.030重量%、N:0.0081重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼の溶融工程、
(2)インラインで配置している設備中での、1150℃の温度へのスラブの加熱工程と、
(3)インラインで配置している6スタンドの熱間圧延機での、厚さ2.3mmである熱延板へのスラブの連続熱間圧延工程(前記圧延段階中に、第1パスは42%の圧下率であって、最終(第6)パスの圧下率は18%であり、第1パス、及び第2?最終(第6)パスは、温度904℃?1000℃で行われる。)、
(4)熱延板の冷却工程と、
(5)コイルへの熱延板の巻き取り工程と、
(6)冷間圧延前の熱延板焼鈍工程と
(7)最終厚さ0.285mmである冷延板への熱延板の冷間圧延工程と、
(8)冷延板の再結晶及び脱炭焼鈍工程と、
(9)前記冷延板表面上への焼鈍分離剤の塗布工程と、
(10)ゴス集合組織を形成するための、再結晶及び脱炭焼鈍された冷延板の最終焼鈍工程とを含む、前記方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[5]対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「一方向性電磁鋼板」、「6スタンド」、「熱延板」、「第1パスは42%の圧下率であって」及び「第1パス」は「温度904?1000℃で行われる。」、「最終(第6)パスの圧下率が18%」、「焼鈍」、「最終厚さ0.285mmである冷延板」は、それぞれ、本願発明の「方向性電磁鋼ストリップ」、「複数スタンド」、「ホットストリップ」、「第1成形操作は、40%を超える変形ひずみを伴い、温度900?1200℃で実施」、「最終パスの圧延率が最大30%である」、「焼きなまし」、「最終厚さ0.15?0.50mmであるコールドストリップ」に相当する。
また、引用発明の「C:0.053重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.15重量%、S:0.006重量%、酸可溶性A1:0.030重量%、N:0.0081重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼」は、本願発明の「鋼
[鉄及び不可避的不純物以外に、下記の組成(質量%):
ケイ素:2.5?4.0%、
炭素:0.02?0.10%、
アルミニウム:0.01?0.065%、
窒素:0.003?0.015%
任意添加元素として、
0.30%までのマンガン、
0.05%までのチタン、
0.3%までのリン、
最大合計含有量0.04%である、硫黄、セレンの群から選択される1種又は複数の元素、任意添加元素として、0.2%まで含有している、ヒ素、スズ、アンチモン、テルル、ビスマスの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.5%まで含有している、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.012%まで含有している、ホウ素、バナジウム、ニオブの群から選択される1種又は複数の元素
を含むものとする]」に含まれるものである。

よって、両者は、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「方向性電磁鋼ストリップの製造方法であって
、下記の製造工程:
(a)鋼
[鉄及び不可避的不純物以外に、下記の組成(質量%):
ケイ素:2.5?4.0%、
炭素:0.02?0.10%、
アルミニウム:0.01?0.065%、
窒素:0.003?0.015%
合計含有量0.005?0.04%である硫黄及びセレン、
任意添加元素として、
0.30%までのマンガン、
0.05%までのチタン、
0.3%までのリン、
最大合計含有量0.04%である、硫黄、セレンの群から選択される1種又は複数の元素、任意添加元素として、0.2%まで含有している、ヒ素、スズ、アンチモン、テルル、ビスマスの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.5%まで含有している、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンの群から選択される1種又は複数の元素、
任意添加元素として、0.012%まで含有している、ホウ素、バナジウム、ニオブの群から選択される1種又は複数の元素
を含むものとする]の溶融工程と、
(e)インラインで配置している設備中での、温度範囲1050?1300℃へのスラブの加熱工程と、
(f)インラインで配置している複数スタンドの熱間圧延機での、厚さ0.5?4.0mmであるホットストリップへのスラブの連続熱間圧延工程
(前記圧延段階中に、第1成形操作は、40%を超える変形ひずみを伴い、温度900?1200℃で実施され、最終パスの圧延率が最大30%である)と、
(g)ホットストリップの冷却工程と、
(h)コイルへのホットストリップの巻き取り工程と、
(i)冷間圧延前の、ホットストリップの焼きなまし工程と、
(j)最終厚さ0.15?0.50mmであるコールドストリップへのホットストリップの冷間圧延工程と、
(k)コールドストリップの再結晶及び脱炭焼きなまし工程と、
(l)前記ストリップ表面上への焼鈍分離剤の付与工程と、
(m)ゴス集合組織を形成するための、再結晶及び脱炭焼きなましされたコールドストリップの最終焼きなまし工程と含む、前記方法。」

(相違点1)
本願発明では、「(b)取鍋炉(ladle furnace)中及び真空設備中での溶融金属の精錬工程」を有しているが、引用発明では、その記載がない点。

(相違点2)
スラブの加熱工程において、本願発明では、「前記設備内での滞留時間は、最大60分間である」のに対し、引用発明では、その記載がない点。

(相違点3)
本願発明では、「薄スラブの連続鋳造プロセスを使用する」ものであって、「(c)溶融金属からストランドへの連続鋳造工程と、(d)ストランドを薄スラブへ分ける工程」を有し、加熱工程及び連続熱間圧延工程は「薄スラブ」を対象とするものであるのに対し、引用発明ではその記載がない点。

(相違点4)
上記連続熱間圧延工程において、本願発明では、「少なくとも、その後の2つの熱間圧延パスは、フェライト-オーステナイト2相域にて圧延を行」うのに対し、引用発明では、それが明らかではない点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
鋼の製造において、溶鋼を取鍋精錬炉(LF)(すなわち、取鍋炉(ladle furnace))および真空設備中で精錬した後、鋳造を行うことは周知の技術であるから(例えば、下記周知例1及び2参照。)、引用発明にこれを適用して当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得ることである。

周知例1:特開2000-301320号公報
「【0002】
【従来の技術】鋼の製造においては、スクラップを電気炉(EF)で溶解して溶鋼を溶製し、次いで得られた溶鋼をさらに取鍋精錬炉(LF)に取鍋移動して成分調整と取鍋精錬を行ったのち、真空脱ガス装置(RH)に取鍋を設置して真空脱ガス装置(RH)に溶鋼を移して溶鋼中に溶け込んだガスを低減し、次いで得られた溶鋼を連続鋳造設備(CC)により連続鋳造により鋼材を鋳造する一連の工程が行われている。」

周知例2:特開平6-93324号公報
「【0002】
【従来の技術】・・・
・・アーク炉で酸化精錬用の酸化性スラグを作り、酸化精錬を終えると、スラグはスラグ鍋へ、溶鋼は取鍋へ分離移注する。
・・取鍋精錬炉では新しく造滓剤を溶鋼面に投入し、造滓剤中に電極を突っ込んで潜弧溶解・加熱し、還元性スラグを作り、還元精錬を行う。
・・還元精錬を終えると、取鍋を真空脱ガス装置の下に移動し、真空脱ガス精錬(しない場合もあるがその有無は本発明に関しては特に関係はない。)を経て、連続鋳造用タンディッシュ又は鋼塊鋳型へ取鍋底のノズルから移注する。」

・(相違点2)について
スラブの加熱工程において、スラブの表面にスケールがなるべく発生しないような加熱温度、加熱時間を設定することは通常行われることであり、引用発明において、「前記設備内での滞留時間」を「最大60分間」とすることは、当業者が適宜なしえる設計的事項である。

・(相違点3)について
上記記載事項(b)によれば、引用刊行物には、スラブの製造法として、溶鋼を連続鋳造法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を経るもの、すなわち、「溶融金属からストランドへの連続鋳造工程と、ストランドを薄スラブへ分ける工程」を有するものが記載されており、引用発明におけるスラブの製造法として、この方法を適用し、当該相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易になし得ることである。

・(相違点4)について
本願明細書(【0033】、【0044】、【0048】等)の記載によれば、本願発明は、第1パス後の少なくと2つの熱間圧延パスを、2つの相(α/γ)の存在下(「フェライト-オーステナイト2相域」)で行うべく、800℃以上、特に850?1050℃の範囲で行うものと認められる。
一方、本願発明とその鋼組成が共通する引用発明においても、第2?最終(第6)パスの圧延は904?1000℃の温度で行われることから、この場合、「フェライト-オーステナイト2相域」にあると認められる。
そうすると、該相違点は実質的なものではない。

そして、本願発明が引用刊行物の記載及び周知技術からは予想し得ない格別の効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-31 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-20 
出願番号 特願2008-524481(P2008-524481)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本多 仁静野 朋季  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 鈴木 正紀
河野 一夫
発明の名称 方向性電磁鋼ストリップの製造方法  
代理人 森田 憲一  
代理人 山口 健次郎  

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