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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23K
管理番号 1316752
審判番号 不服2014-16732  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-22 
確定日 2016-07-04 
事件の表示 特願2011-506221「機能性飼料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日国際公開、WO2009/131467、平成23年 6月30日国内公表、特表2011-518559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2009年4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月24日、ノルウェー)を国際出願日とする出願であって、平成26年4月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年8月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、その後当審において、平成27年5月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年10月22日に手続補正書並びに意見書が提出されたものである。


2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年10月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「通常の飼料成分を含んでなる魚用飼料組成物であって、ペプチドグリカンおよびヌクレオチドを含んでなることを特徴とし、ペプチドグリカンが、0.001-0.01重量%の範囲である、魚用飼料組成物。」


3 刊行物の記載
(1)刊行物1に記載された発明
当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-255664号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、哺乳動物(人以外の動物が好ましい)、魚類及び甲殻類などの免疫を増強することができる経口投与用免疫増強剤に関するものである。」

イ 「【0006】本発明においては、免疫賦活することが公知である物質MDPを実質的に含まない分子量10,000以下のペプチドグリカンが投与量として体重1kgあたり0.5mg以上とするのが好ましく、より好ましくは1mg以上となるように経口投与されるのがよい。投与の対象となる動物は、哺乳動物(人以外の動物が好ましい)、魚類及び甲殻類などである。本発明の免疫増強剤は、対象動物に直接経口投与するか、又は餌に添加し、これを動物に給餌することにより与えることができる。投与時期は特に限定されないが、魚類や甲殻類の場合、仔稚魚期より与えておくと予防効果がある。本発明の免疫増強剤を飼料に添加する場合、飼料としては、家畜の通常飼育用や魚などの通常養殖用に用いられている飼料原料に、対象に応じて適当な量で配合すればよい。
【0007】
【発明の効果】本発明によれば、高価なMDPを用いることなく、経口投与により哺乳動物の免疫を増強することができる免疫増強剤を提供することができる。次に実施例により本発明を説明する。」

ウ 「【0017】実施例3
エビ(ブラックタイガー)における経口投与時の酵素処理微生物細胞壁の低分子画分の免疫賦活効果の検討
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum ATCC13869 )を実施例1と同様にして培養し、次いで菌体細胞壁成分を酵素処理した。得られた酵素処理菌体物について、実施例2の手法に従って8時間と72時間酵素処理を行い、それぞれの細胞壁可溶画分を得た。下記の組成の基礎飼料に分子量10,000以上の画分を多く含むと予想される8時間処理サンプルと分子量10,000以下の画分を多く含むと予想される72時間処理サンプルをそれぞれ0%、0.005%、0.01%、0.1%の割合で添加し試験飼料とした。」

エ 「【0021】両サンプル、つまり8時間処理物と72時間処理物におけるペプチドグリカン含有率はほぼ同等でペプチドグリカン含有率は酵素処理時間の長さが異なるので(8時間と72時間)、ペプチドグリカンに含まれる分子量10,000以下の画分の含有率は8時間処理物で1.1%、72時間処理物で15.1%である(表-3参照)
このようなサンプルを用いた結果、表-4に示されるように、72時間処理サンプルにおいては添加率の増加に従い血球の貧食能は上昇し、同一添加率での比較により8時間処理サンプルより高い貧食能を示した。一方、8時間処理サンプルは添加率0.01%までは容量依存性を示したが、投与量を0.01%より0.1%に増加させても貧食能は改善されず、0.01%添加のときが最も高い貧食能を示した。以上の結果より、経口投与時の貧食能の比較により分子量10,000以下画分を多く含む72時間処理サンプルは分子量10,000以上の画分を多く含む8時間処理サンプルより高い活性を有した。また、72時間処理サンプルによる投与効果は容量依存であるが、8時間サンプルは投与量を0.01%以上に増加させても効果が改善されず、むしろ低下することが示唆された。」

オ 上記ア?エによると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。
「魚の通常養殖用に用いられている飼料原料に、MDPを実質的に含まない分子量10,000以下のペプチドグリカンが配合された、魚類を対象とし、投与量として体重1kgあたり0.5mg以上とするのが好ましい飼料。」


(2)刊行物2に記載された事項
当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-173429号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は5’-ヌクレオチドを有効成分とする魚類の免疫増強剤、免疫増強剤である5’-ヌクレオチドを有効成分として含む免疫増強効果を有する養魚用飼料に関するものである。」

イ 「【0014】本発明における免疫増強剤は、他の免疫増強剤又は抗生物質と併用することも可能であり、これにより、他の免疫増強剤又は抗生物質の効果を増強したり、他の免疫増強剤又は抗生物質の使用量を削減することも期待できる。」

ウ 「【0018】本発明における5’-ヌクレオチドを有効成分として含む免疫増強効果を有する養魚用飼料は、市販の配合飼料に5’-ヌクレオチドを配合することにより得られる。添加率としては、0.01から10重量%が好ましい。5’-ヌクレオチドの添加率が0.01重量%未満では、免疫増強効果が認められず、10重量%を越えると添加効果が飽和すると共に、養魚用飼料としての栄養的価値が損なわれてしまう。」


(3)刊行物3に記載された事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である、松尾健 等、ペプチドグリカンの長期経口投与がニジマス稚魚の抗病性と成長に及ぼす影響、日本水産学会誌、Vol.59、No.8、1377?1379頁、1993年8月 (以下「刊行物3」という。なお、当該刊行物は、本願明細書の段落【0005】にて引用されている。)には、以下の記載がある。

ア 「PGの投与 市販のニジマス餌付け飼料(くみあい飼料)にPGを飼料1kgあたり0,0.2および2mg添加し,流動層造粒機(大川原製作所)で造粒した。このPG添加飼料を1日3回,摂餌率が魚体重の3%になるように調節して56日間連続投与した。」(1377頁右欄下から4行?1378頁左欄1行)

イ 「高橋ら*はウナギを用いた実験でPGに適正投与量があることを報告しているが,本試験結果は, PGには適正投与量だけでなく,投与期間においても,過剰に投与し続けた場合,効果が低減する可能性を示唆している。PGの適正投与量と投与期間は相互に依存していることを確認していることから(未発表),さらに6μg/kg BW以下の投与量について,より長期間投与した時の効果を調査する必要があると思われる。」(1379頁左欄下から14行?同欄下から7行)

(4)刊行物4に記載された事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-22705号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の甲殻類,魚類用飼料は前記した目的を達成するため、飼料中にグラム陽性菌,酵母類,真菌類由来のペプチドグリカンを添加したことを特徴としている。また、本発明の魚類用飼料の給飼方法は、魚類に対するペプチドグリカンの一日当りの投与量とその適正投与期間の関係を予備試験により設定し、ペプチドグリカン含有飼料を前記投与量に相当する割合で前記適正投与期間連日投与することを特徴としている。」

イ 「【0007】
【実施例】以下、本発明を具体的な試験例によって詳細に説明する。
試験例 1
試験方法: 平均体重25gのクルマエビを30尾ずつの4群に分け、本発明区1,2,3区には飼料中にPGをエビの体重1Kgあたり1日量として、それぞれ0.05,0.2,1.0mgとなるように添加して1日おきに与えた。」

ウ 「【0010】試験例 2
試験方法: クルマエビの稚エビ(PL30,平均体重0.01g)を流水式の500リットル水槽2槽に200尾ずつ収容し、試験開始後60日に各々を5トン水槽に移し、計95日間飼育した。本発明区にはPGをエビの体重1Kgあたり1日量として0.2mgとなるように添加した飼料を1週間与え、次の1週間はPG無添加飼料を与える方法を試験終了時まで反復した。対照区には常時PG無添加飼料を与えた。そして、PGの効果を確認するために、以下の項目について調べた。」

エ 「【0016】試験例 3
試験方法: PGを含む微細飼料(PG5mg/Kg飼料)をウシエビのゾエア期,ミシス期およびポストラーバ(PL15)期の幼生に毎日投与して、生残率を調べると共にゾエア期からミシス期への変態率を調べた。尚、微細飼料の投与量は幼生1尾あたり、ゾエア期で0.16mg/日,ミシス期では0.2mg/日,ポストラーバ期では0.24mg/日とした。飼料の投与量から換算したPGの幼生1尾あたり1日の投与量は、ゾエア期で5×10^(-7)mg,ミシス期で6.25×10^(-7)mg,ポストラーバ期で7.5×10^(-7)mgであった。この投与量は幼生の体重1KgあたりのPG1日量として、およそ0.1?0.2mgとなる。」

オ 「【0019】試験例 4
試験方法: 平均体重約58gのアユを表4に示す試験区分に従い、各区400尾づつを2つの池に分けて試験に供試した。供試魚は2×1×1mのコンクリート池で1カ月間飼育した。飼育期間中の水温は約20?23℃であった。本発明区には基礎飼料にPGを外割りで添加し、ペレットクランブルに成型したのち、PGの投与量が1日に魚体重1Kg当たり0.01?1.0mgになるように試験飼料を給与した。尚、対照区にはPG無添加の飼料を給与した。」

カ 「【0023】試験例 5
試験方法: 平均体重約0.1gの浮上直後のニジマス稚魚を表5に示す試験区分に従い、各区800尾づつを4つの水槽に分けて試験に供試した。供試魚は60リットル容のガラス水槽にて4週間飼育した。飼育期間中の水温は15?16℃であった。本発明区には基礎飼料にPGを外割で添加したものと、0.3?0.5mm径に成型したのち、PGの投与量が1日に魚体重1kg当たり0.01?0.1mgになるように給与した。尚、対照区にはPG無添加飼料を給与した。」

キ 「【0027】試験例 6
試験方法: 平均体重200gのウナギを表6に示す試験区分に従い、各区30尾ずつを試験に供試した。供試魚は2×1×1mのコンクリート池で1カ月間飼育した。本発明区には基礎飼料にPGを外割で添加し、2日に1回、PGの投与量が1日に魚体重1kg当たり0.2?1.0mgになるように試験飼料を給与した。尚、対照区にはPG無添加飼料を給与した。」

ク 「【0031】試験例 7(PGの長期連続投与試験)
試験方法: 平均体重約20gのニジマスを表7に示す試験区分に従い、各区80尾ずつを2つの池に分けて試験に供試した。供試魚は紫外線殺菌装置のある循環式の1.5tのFRP水槽にて24週間飼育した。飼育期間中水温は17℃に調節した。本発明区は、基礎飼料にPGを外割りで添加し、3.2mm径のペレットに成型したのち、PGの投与量が1日に魚体重1kg当り0.004mg?4mgになるように試験飼料を給与した。なお、対照区には、PG無添加の飼料を給与した。」


4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「魚の通常養殖用に用いられている飼料原料」は、本願発明の「通常の飼料成分」に相当し、以下同様に、「MDPを実質的に含まない分子量10,000以下のペプチドグリカン」は「ペプチドグリカン」に、「魚類を対象とした飼料」は「魚用飼料組成物」に、それぞれ相当する。

イ 刊行物1発明の「魚の通常養殖用に用いられている飼料原料に、MDPを実質的に含まない分子量10,000以下のペプチドグリカンが配合された、魚類を対象とした飼料」は、刊行物1発明の「通常の飼料成分を含んでなる魚用飼料組成物であって、ペプチドグリカン」「を含んでなる」「魚用飼料組成物」に相当する。

ウ したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「通常の飼料成分を含んでなる魚用飼料組成物であって、ペプチドグリカンを含んでなる魚用飼料組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]:「魚用飼料組成物」の成分に関して、
本願発明は、「ペプチドグリカン」に加えて、「ヌクレオチド」「を含んでなる」のに対し、
刊行物1発明は、そのような特定がない点。

[相違点2]:「ペプチドグリカン」の含有量に関して、
本願発明は、「0.001-0.01重量%の範囲である」のに対し、
刊行物1発明は、「体重1kgあたり0.5mg以上」との好ましい投与量の特定はあるものの、含有量の特定がない点。


5 判断
(1)相違点1について
ア 刊行物2には、「市販の配合飼料に5’-ヌクレオチドを配合することにより免疫増強効果を有する養魚用飼料を得ること。」(上記3(2)ウを参照。以下「刊行物2記載事項」という。)が記載されている。

イ そして、刊行物1発明の「MDPを実質的に含まない分子量10,000以下のペプチドグリカン」は免疫増強効果を有するものなので(上記3(1)イを参照。)、刊行物1発明と刊行物2記載事項とは、魚の通常養殖用に用いられている飼料原料に免疫増強剤を添加する技術に関する点で共通している。このことに加え、刊行物2において、5’-ヌクレオチドを他の免疫増強剤と併用することが示唆されている(上記3(2)イを参照。)ことを勘案すると、刊行物1発明において、ペプチドグリカンと刊行物2に記載された5’-ヌクレオチドを併用することは、当業者であれば容易に着想し得たことである。

ウ ここで、刊行物2記載事項の「5’-ヌクレオチド」は、本願発明の「ヌクレオチド」に相当するから、刊行物1発明において、「5’-ヌクレオチド」を併用する構成を採用すれば、「ヌクレオチド」「を含んでなる」構成を備えることとなる。

(2)相違点2について
ア 刊行物1には、エビ(ブラックタイガー)に投与する飼料におけるペプチドグリカンの含有量を、0.005%または0.01%とすることが記載されている(上記3(1)ウを参照。)。

イ ここで、刊行物1に「ペプチドグリカンが投与量として体重1kgあたり0.5mg以上とするのが好ましく、より好ましくは1mg以上となるように経口投与されるのがよい。投与の対象となる動物は、哺乳動物(人以外の動物が好ましい)、魚類及び甲殻類などである。」(上記3(1)イを参照。)と記載されており、魚類と甲殻類を区別することなくペプチドグリカンの標準的な投与量が示されてる。

ウ 上記ア、イから、刊行物1発明において、ペプチドグリカンの含有量を、刊行物1に記載されたエビ(ブラックタイガー)に投与する飼料におけるペプチドグリカンの含有量と同等である0.005%または0.01%程度とすることは、当業者であれば容易に着想し得たことである。

エ 上記イに関し、刊行物4に魚類と甲殻類に同程度の量のペプチドグリカンを投与することが開示されていること(上記3(4)イ?クを参照。)からみて、魚類と甲殻類に同程度の量のペプチドグリカンを投与することは、本願の優先日において普通に実施されていたことと解される。

オ 本願の優先日において、飼料に添加して魚に投与するペプチドグリカンの量及び投与期間の最適化を行うことは周知技術(刊行物3(上記3(3)イ)、刊行物4(上記3(4)ア)を参照。)であるから、刊行物1発明において、該周知技術を採用し、ペプチドグリカン量及び投与期間の最適化を通じて上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。

カ 上記エ及びオを踏まえれば、仮に、エビ(ブラックタイガー)に投与する飼料におけるペプチドグリカンの含有量を魚に投与する飼料に適用することが当業者にとって困難であったとしても、刊行物1発明において上記相違点2に係る構成を採用することは当業者にとって容易になし得たことである。

(3)本願発明の効果について
ア ペプチドグリカンとヌクレオチドの併用による、魚の死亡率低減効果について
本願の図4における、ペプチドグリカンのみを投与した場合の累積死亡率のデータ(左から3番目のデータを参照。)と、ヌクレオチドとペプチドグリカンを併用して投与した場合の累積死亡率のデータ(ペプチドグリカンの投与期間が同じである左から4番目のデータ及び5番目のデータを参照。)とを比較すると、両者の効果に明確な差異は認められない。
また、仮に両者の効果に差異が認められるとしても、ヌクレオチドのみを投与した場合にも累積死亡率を低減する効果が得られる(左から2番目のデータを参照。)ことを勘案すると、両者の効果の差異は、ペプチドグリカンとヌクレオチドを併用することによる相乗効果ではなく、主にヌクレオチド自身がもつ免疫増強効果により生じていると解するのが自然である。
以上から、魚の死亡率低減の観点で、ペプチドグリカンとヌクレオチドを併用することにより相乗効果を奏すると認めることはできない。

イ ペプチドグリカンとヌクレオチドの併用による、ペプチドグリカン含有量を0.001-0.01重量%程度まで低減できる効果について
(ア)本願の明細書及び図面を参酌しても、上記効果を裏付けるようなデータは示されていない。これに関し、本願の図4には、ペプチドグリカンを0.005重量%含みヌクレオチドを含まない飼料によって、死亡率を18%程度にまで低下させられるとするデータ(左から3番目のデータを参照。必要なら、明細書の段落【0064】も参照のこと。)が示されている。当該データは、ペプチドグリカンとヌクレオチドを併用しなくともペプチドグリカン量を0.001-0.01重量%程度に低減できることを示すものであり、上記効果と相反するデータである。

(イ)そもそも、本願の明細書にて引用されている刊行物3において、市販のニジマス餌付け飼料にペプチドグリカンを1kgあたり0.2mg(0.00002重量%に相当)、2mg(0.0002重量%に相当)を添加することが記載されている(3(3)アを参照。)ことを勘案すると、本願の優先日において、0.001-0.01重量%が、魚用飼料におけるペプチドグリカンの含有量として格別少ない量であったとは認められない。

(ウ)以上から、ペプチドグリカン量を0.001-0.01重量%程度まで低減する観点で、ペプチドグリカンとヌクレオチドを併用することによって、格別な効果を奏すると認めることはできない。

ウ 上記ア、イから、上記相違点1、2によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物1に記載の事項、刊行物2に記載の事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものとは認められない。

(4)請求人の主張に関して
ア 請求人は、平成27年10月22日付けの意見書において、

(ア)刊行物1に記載されたエビ(ブラックタイガー)は甲殻類であって魚類でないため、エビ(ブラックタイガー)に投与する飼料におけるペプチドグリカンの含有量を魚類に投与する飼料に適用する技術的背景がない旨、

(イ)ペプチドグリカンの最適量が0.4重量%(4g/kg)であることが知られており、このことは、刊行物1発明においてペプチドグリカンの含有量を、上記数値より遙かに少ない0.001-0.01重量%の範囲にすることを阻害する旨、

(ウ)ペプチドグリカンをヌクレオチドと組み合わせて使用することにより、飼料組成物中のペプチドグリカン量を0.001-0.01重量%に減少させても、感染源に暴露された魚類の生存率を向上させる効果が得られる旨、

を主張する。

イ しかし、

(ア)上記(2)イで検討したとおり、魚類と甲殻類に同程度の量のペプチドグリカンを投与することは、本願の優先日において普通に実施されていたと認められること、

(イ)上記(3)イ(イ)で検討したとおり、本願の優先日において、0.001-0.01重量%が魚用飼料におけるペプチドグリカンの含有量として格別少ない量であったとは認められないこと、

(ウ)上記(3)イで検討したとおり、ペプチドグリカン量を0.001-0.01重量%程度まで低減する観点で、ペプチドグリカンとヌクレオチドを併用することによって、格別な効果を奏するとは認められないこと、

を踏まえると、請求人の主張は、いずれも採用できない。また、仮に上記ア(ア)の主張のとおり、エビ(ブラックタイガー)に投与する飼料におけるペプチドグリカンの含有量を魚類に投与する飼料に適用する技術的背景がなかったとしても、上記(2)オ?キで検討したとおり、刊行物1発明において上記相違点2に係る構成を採用することに格別な困難性は認められない。


6 むすび
以上の検討によれば、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、当業者が刊行物1発明、刊行物1に記載の事項、刊行物2に記載の事項及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし26に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-09 
結審通知日 2016-02-12 
審決日 2016-02-23 
出願番号 特願2011-506221(P2011-506221)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
谷垣 圭二
発明の名称 機能性飼料組成物  
代理人 反町 洋  
代理人 反町 洋  
代理人 大森 未知子  
代理人 大森 未知子  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 浅野 真理  
代理人 中村 行孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 浅野 真理  

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