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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01J 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J |
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管理番号 | 1316778 |
審判番号 | 不服2014-5993 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-02 |
確定日 | 2016-08-01 |
事件の表示 | 特願2006-250014「時間分解分光器のためのシステム及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月26日出願公開、特開2007-108168、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年8月18日(パリ条約による優先権主張2005年8月18日、英国)の出願であって、平成23年8月30日付けで拒絶理由が通知され、平成24年3月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年4月9日に意見書が提出されたが、同年11月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたのに対し、平成26年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において平成27年5月13日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成28年1月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?14に係る発明は、平成28年6月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「波長のスペクトルが前記波長のスペクトルのそれぞれの部分に分離される時間分解分光のための分光器システムであって、 前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置されるCCDデバイスを備え、 前記CCDデバイスは、 前記波長のスペクトルを検出し、前記波長のスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイと、 前記フォトサイトのアレイから前記信号電荷を受信するように配置される記憶領域と、 前記記憶領域から前記信号電荷を受信するように配置される読み出しレジスタと、 前記読み出しレジスタから前記信号電荷を受信し、電荷増倍を提供するように配置される複数のCCD乗算レジスタと、を備え、 前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分は時間と共に変化し、前記システムは、前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記スペクトルの時間変化に対応して前記波長のスペクトルの所定の部分を受信するように構成されており、各CCD乗算レジスタは、前記波長のスペクトルの所定の部分に対応する前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分から前記信号電荷を受信するように構成されているシステム。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開昭61-182534号公報 刊行物2:特開平10-304256号公報 刊行物1には、レーザ励起螢光の時間分解分光計測に使用される『超高速光現象の多チャンネル同時計測装置』に関する発明であり、「螢光パルス列を分光器で分光し、ストリーク管に入射させ、このストリーク管の螢光面に配列されたホトダイオードアレイで各波長光を検出すると共に、ホトダイオードアレイを構成する各ホトダイオードからの出力を並列に出力する多チャンネル同時計測装置」が記載されている(特に、公報第3頁右上欄第14行目?第5頁左上欄第1行目及び第1図?第4図参照。)。 ここで、刊行物1に記載されている「多チャンネル同時計測装置」は、ストリーク管を使用して増倍を行い、ホトダイオードアレイの並列読み出しを行う構成となっているが、これを刊行物2に記載されたEMCCD(特に、公報【0018】段及び【図5】参照。)を使用し、増倍レジスタによる増倍を行い、CCDの並列読み出しを行う構成に代えることは、当業者が容易に想到し得ることである。 2 原査定の理由の判断 (1)刊行物の記載事項 刊行物1には次の事項が記載されている(下線は当審において付したものである)。 ア 「(産業上の利用分野) 本発明は、超高速の繰り返し光現象を二次元的に計測する装置、例えばレーザ励起螢光の時間分解分光計測やピコ秒域における空間時間分解計測を行う超高速光現象の多チャンネル同時計測装置に関する。」(2頁右上欄4?9行) イ 「第1図は本発明による超高速光現象の多チャンネル同時計測装置の第1の実施例を示すブロック図である。 この実施例は被測定対象である試料をレーザにより周期的に励起して、螢光発光を誘起させて、その螢光発光を分光して測定するものである。 色素レーザ光源1は繰返し光パルス列を発生している。 この光パルス列はハーフミラ-2により分岐され、ハーフミラ-2を透過した光は被測定対象3を照射する。この照射により、被測定対象3は前記光パルス列に対応する螢光パルス列を発生する。 この周期的な発光は、光学手段により、ストリーク管の光電面に前記ストリーク管の偏向方向に垂直方向に展開して投射される。 この実施例では、前記光学手段は前記螢光パルス列を分光する分光器4、分光器4で分光された光を透過させるスリット5、レンズ6から形成されている。」(3頁右上欄14行?同頁左下欄12行) ウ 「第3図に前記ストリーク管の電極等の配列とホトダイオードアレイの関係を展開的に示しである。 ストリーク管7の面板の内面には光電面71が形成されている。 光電面71に対向するようにメッシュ電極72が設けられており、メッシュ電極72により加速された電子は集束電極73により集束されアパーチャ板74をとおり、偏向電極75の形成する偏向電界空間に入射させられる。 偏向電極75には、前記螢光発光に同期した掃引電圧が印加されている。同期の関係については後述する。 偏向電極75で偏向された電子は、スリット板77を介して、ファイバプレート79の内面に形成されている螢光面78に入射させられる。 各図から理解できるようにスリット板77のスリットはストリーク管7の偏向方向に直角である。 ストリーク管7の各部には、動作電源回路20または掃引電圧発生回路15からの動作電圧が供給されている。」(3頁右下欄10行?4頁左上欄9行) エ 「次に第4図と第5図を参照して偏向電圧と螢光面に到達する電子の関係を説明する。 第4図は前記実施例の測定の対象となる多くの波長成分を含む繰返し発光中の単一パルスの発光強度の変化を示す波形図である。 時間軸をt、波長軸をλ、強度軸をIとして3次元的に示している。 t_(1)の時点には主としてλ_(4)とλ_(6)の波長成分が、このような位置と強度の関係を保ってストリーク管の光電面に入射し、t_(2)の時点には主としてλ_(3)?λ_(6)の波長成分がこのような位置と強度の関係を保ってストリーク管の光電面に入射すると考えて良い。 第5図は繰返し発光現象とサンプリングの関係を示す波形図である。 (1)?(m)は、それぞれ螢光の前記ストリーク管7の光電面71への第1回入射から第m回入射までの入射波形を示す。 分光器4により螢光は分光されるので波長により光電面71への入射位置が変わる。 λj、λkはそれぞれ光電面71のjおよびkの位置に入射した光の強度を示す。掃引電圧発生回路15は各回の入射により発生した電子からそれぞれ黒線で示す部分を前記スリット板77から取り出すような掃引電圧を発生する。 ホトダイオードアレイ8は短冊状のホトダイオードをストリーク管7の掃引方向に直角に配列したものである。 一つのホトダイオードの大きさ(幅)は目的に応じて、選定できる。 この実施例では100μm×5mmの長方形にしてある。 各ホトダイオードはそれぞれ特定の波長成分に対応する螢光面78の発光に対応させられている。 各ホトダイオードの出力はそれぞれ1対1に対応させられている増幅器群17中の増幅器で増幅される。 増幅器群17中の各増幅器の出力は同様に1対1に対応させられているA/D変換器群18中のA/D変換器によりA/D変換される。 A/D変換器群の出力はメモリ30に記録される。 これによりメモリ30には螢光の第1回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報、第2回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報・・・・・第m回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報が記録される。 これにより各波長成分毎に第1回から第m回までの出力を総合することにより各波長成分の螢光発光波形を再構成することができる。 このメモリ30の内容をD/A変換器32により時系列的にアナログ変換して、遅延制御回路16の出力と同期してVDT等の出力装置34により出力すれば略リアルタイムで観察することができる。」(4頁右上欄8行?5頁左上欄1行)) オ 「ラインセンサとしてレティコンまたはCODが市販されている。これ等の各種センサを使用しないで、ダイオードアレイを使用しているので以下の特徴が得られる。 (ノイズおよびダイナミックレンジ) 完全並列読み出しであるため、ノイズが少なく高S/N比、高ダイナミツクレンジの計測が可能である。 ノイズの主なものは(スイッチングノイズ以外で)アンプのノイズであるから、S/Nはダイオードアレイの方が、n^(1/2)倍良いことになる。ダイオードアレイではリニアアレイの主なノイズ成分であるスイッチングノイズが零である。 通常、リニアアレイの最小検出限界はスイッチングノイズで制限されている。 しかし、ダイオードアレイではスイッチングノイズがないため、最小検出限界をアンプのノイズまたは、光電流のショットノイズ域まで下げることができる。 (読み出し時間) ダイオード数、または画素数をn=100にした場合について比較する。 ラインセンサでは1エレメント当たりt/nの読み出し時間となる。 他方ダイオードアレイでは全エレメント並列読み出しであるから、読み出し時間はt secとなる。 したがってバンド幅はそれぞれ、n/(2t),1/(2t)となり、ダイオードアレイの方がn倍長い。 (その他) 本発明ではホトダイオードアレイを用いているので、特定部分のみ信号を取り出すことも可能となった。 場所によって測定時間(積分時間)を変えることも可能となった。 これに対してリニアアレイでは、ライン走査周波数に上限がある。これはシフトレジスタで制限され、一素子光たり100ns程度となる。 しかし、ダイオードアレイでは並列アンプを使用するため、同一サンプリングをするには100ns/nの読み取りとなる。(アンプの帯域が狭くなる。) また、高速サンプリングは、同一アンプを考えれば、n倍となる。」(6頁右下欄8行?7頁右上欄11行) カ 第5図を参照すれば、上記エの「掃引電圧発生回路15は各回の入射により発生した電子からそれぞれ黒線で示す部分を前記スリット板77から取り出すような掃引電圧を発生する。」ということは、掃引電圧発生回路15は各回の入射により発生した電子からそれぞれ時間的に異なる部分を前記スリット板77から取り出すような掃引電圧を発生する。」といえる。」 キ 第5図を参照すれば、上記エの「これによりメモリ30には螢光の第1回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報、第2回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報・・・・・第m回の入射による各波長成分の黒線で示した部分の情報が記録される。」ということは、「これによりメモリ30には螢光の第1回の入射による各波長成分のある時間の部分の情報、第2回の入射による各波長成分の異なる時間の部分の情報・・・・・第m回の入射による各波長成分のさらに異なる時間の部分の情報が記録される。」といえる。 上記記載事項ア?キから、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「レーザ励起螢光の時間分解分光計測を行う超高速光現象の多チャンネル同時計測装置であって、 色素レーザ光源1は繰返し光パルス列を発生して被測定対象3を照射し、この照射により、被測定対象3は前記光パルス列に対応する螢光パルス列を発生し、 この周期的な発光は、光学手段により、ストリーク管の光電面に前記ストリーク管の偏向方向に垂直方向に展開して投射され、 前記光学手段は前記螢光パルス列を分光する分光器4、分光器4で分光された光を透過させるスリット5、レンズ6から形成され、 ストリーク管7の面板の内面には光電面71が形成されており、 光電面71に対向するようにメッシュ電極72が設けられており、メッシュ電極72により加速された電子は集束電極73により集束されアパーチャ板74をとおり、偏向電極75の形成する偏向電界空間に入射させられ、偏向電極75には、前記螢光発光に同期した掃引電圧が印加されており、 偏向電極75で偏向された電子は、スリット板77を介して、ファイバプレート79の内面に形成されている螢光面78に入射させられ、 掃引電圧発生回路15は各回の入射により発生した電子からそれぞれ異なる時間の部分を前記スリット板77から取り出すような掃引電圧を発生するものであり、 ホトダイオードアレイ8は短冊状のホトダイオードをストリーク管7の掃引方向に直角に配列したもので、各ホトダイオードはそれぞれ特定の波長成分に対応する螢光面78の発光に対応させられており、 各ホトダイオードの出力はそれぞれ1対1に対応させられている増幅器群17中の増幅器で増幅され、増幅器群17中の各増幅器の出力は同様に1対1に対応させられているA/D変換器群18中のA/D変換器によりA/D変換され、A/D変換器群の出力はメモリ30に記録されるものであり、 メモリ30には螢光の第1回の入射による各波長成分のある時間の部分の情報、第2回の入射による各波長成分の異なる時間の部分の情報・・・・・第m回の入射による各波長成分のさらに異なる時間の部分の情報が記録され、これにより各波長成分毎に第1回から第m回までの出力を総合することにより各波長成分の螢光発光波形を再構成することができ、 このメモリ30の内容をD/A変換器32により時系列的にアナログ変換して、遅延制御回路16の出力と同期してVDT等の出力装置34により出力すれば略リアルタイムで観察することができる 超高速光現象の多チャンネル同時計測装置。」(以下「引用発明」という。) また、刊行物2には、次の事項が記載されている(下線は当審において付したものである)。 ク 「【0018】図1に示されているイメージャにおいては、信号電荷の1行の全ては出力レジスタ4から増倍レジスタ5内へ読出される。その他の構成では、出力レジスタ4のもう1方の端部において付加的な増倍レジスタがそれ自体の電荷検出回路と共に含まれている。この場合、電荷は、出力レジスタ4の1つの半分から一方の方向に、又もう1つの半分から反対方向に付加的な増倍レジスタへと読出すことができる。その他のデバイスにおいては、複数の出力レジスタを内含させ、それ自身の増倍レジスタ及び電荷検出回路を結びつけることができる。このような配置は図5に概略的に示されている。CCDイメージャの画像セクション18は、それぞれの異なる出力読出しレジスタ20A?20Dに接続されている4つの別々の蓄積セクション19A、19B、19C及び19Dに接続されている。各々の読出しレジスタ20A?20Dは、それぞれの異なる増倍レジスタ21A?21Dに接続され、これらの増倍レジスタの出力は電荷検出回路22A?22Dに加えられる。増倍レジスタ21A?21Dは、必要に応じて利得又は信号電荷を生成するべく本発明に従って制御される。」 (2)本願発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「レーザ励起蛍光の時間分解分光計測を行う超高速光現象の多チャンネル同時計測装置」は、本願発明の「波長のスペクトルが前記波長のスペクトルのそれぞれの部分に分離される時間分解分光のための分光器システム」に相当する。 イ 引用発明の「それぞれ特定の波長成分に対応する螢光面78の発光に対応させられている」「短冊状のホトダイオードを配列したホトダイオードアレイ8」と、本願発明の「前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置されるCCDデバイス」とは、「前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置される」フォトサイトの点で共通する。 ウ ホトダイオードが信号電荷を生成するのは技術常識であるから、引用発明の「それぞれ特定の波長成分に対応する螢光面78の発光に対応させられている」「短冊状のホトダイオードを」「配列した」「ホトダイオードアレイ8」と、本願発明の「前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置されるCCDデバイス」であって「前記波長のスペクトルを検出し、前記波長のスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイ」とは、「前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置される」フォトサイトであって「前記」フォトサイトは、「前記波長のスペクトルを検出し、前記波長のスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイ」である点で共通する。 エ 引用発明は、「各ホトダイオードの出力」が「増幅され」、「各増幅器の出力」が「A/D変換され」、「A/D変換器群の出力はメモリ30に記録され」、「メモリ30には螢光の第1回の入射による各波長成分のある時間の部分の情報、第2回の入射による各波長成分の異なる時間の部分の情報・・・・・第m回の入射による各波長成分のさらに異なる時間の部分の情報が記録され、これにより各波長成分毎に第1回から第m回までの出力を総合することにより各波長成分の螢光発光波形を再構成することができ、このメモリ30の内容をD/A変換器32により時系列的にアナログ変換して、遅延制御回路16の出力と同期してVDT等の出力装置34により出力すれば略リアルタイムで観察することができる」ものであり、再構成して観察する各波長成分の蛍光発光波形が時間と共に変化していることを前提としているものであることは自明であるから、引用発明の「それぞれ特定の波長成分に対応する螢光面78の発光に対応させられている」「短冊状のホトダイオードを」「配列した」「ホトダイオードアレイ8」は、本願発明の「前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分は時間と共に変化し、前記システムは、前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記スペクトルの時間変化に対応して前記波長のスペクトルの所定の部分を受信するように構成されている」ものに相当する。 そうすると、両者は 「波長のスペクトルが前記波長のスペクトルのそれぞれの部分に分離される時間分解分光のための分光器システムであって、 前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分を受信するように配置されるセンサを備え、 前記センサは、前記波長のスペクトルを検出し、前記波長のスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイを備え、 前記波長のスペクトルの前記それぞれの部分は時間と共に変化し、前記システムは、前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記スペクトルの時間変化に対応して前記波長のスペクトルの所定の部分を受信するように構成されているシステム。」 の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 波長のスペクトルのそれぞれの部分を受信するように配置されるセンサが、本願発明では「CCDデバイス」であって、「前記CCDデバイスは」、「前記フォトサイトのアレイから前記信号電荷を受信するように配置される記憶領域と、前記記憶領域から前記信号電荷を受信するように配置される読み出しレジスタと、前記読み出しレジスタから前記信号電荷を受信し、電荷増倍を提供するように配置される複数のCCD乗算レジスタと、を備え」、「各CCD乗算レジスタは、前記波長のスペクトルの所定の部分に対応する前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分から前記信号電荷を受信するように構成されている」のに対し、引用発明ではCCDデバイスではなく、上記のように構成されたものではない点。 (3)相違点についての検討・判断 刊行物2には、上記(1)のクのように、CCDイメージャの画像セクション18が、それぞれの異なる出力読出しレジスタ20A?20Dに接続されている4つの別々の蓄積セクション19A、19B、19C及び19Dに接続され、各々の読出しレジスタ20A?20Dが、それぞれの異なる増倍レジスタ21A?21Dに接続され、これらの増倍レジスタの出力が電荷検出回路22A?22Dに加えられることが記載されており、これは上記相違点に係る本願発明の構成に相当するものといえる。 しかしながら、刊行物1の上記(1)のオには、CCD等の各種ラインセンサを使用しないで、ダイオードアレイを使用することにより、ノイズが少なく高ダイナミックレンジの計測が可能であること、読み出し時間が何倍も長く取れること、特定部分のみ信号を取り出すことが可能なこと、場所によって測定時間(積分時間)を変えることも可能なことが記載されている。これらの記載に鑑みれば、引用発明は、CCD等の各種のラインセンサを使用しないで、ダイオードアレイを使用することにより上記効果が得られるものであるから、刊行物1に接した当業者において、引用発明のダイオードアレイに代えて刊行物2のようなCCDイメージャを用いることには明確な阻害要因があるというべきである。 (4)小括 したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2?13に係る発明は本願発明をさらに限定したものであり、本願の請求項14に係る発明は本願発明の主要な構成を共通とした方法に係る発明であるから、いずれも本願の請求項1にかかる発明と同様に、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 上記第1の手続の経緯で記載したように、当審においては、平成27年5月13日付けで以下の(1)の拒絶理由通知、平成28年1月5日付けで以下の(2)の拒絶理由を通知している。 (1)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 本願明細書及び請求人の主張に鑑みれば、本願発明は、時間変化するスペクトルをフォトサイトのアレイにおける時間変化に応じて推移する位置で受信するものであると思料するが、請求項1の「時間変化するスペクトルを検出し、前記時間変化するスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイ」、「前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記時間変化するスペクトルの所定の部分を受信するように構成」及び「前記時間変化するスペクトルの所定の部分に対応する前記フォトサイトのアレイ」という記載だけでは、時間変化するスペクトルをフォトサイトのアレイにおける同一位置で受信するものも含むと解する余地があり、明確でない。 同様に、請求項14の「時間変化するスペクトルを検出し、前記時間変化するスペクトルを表す信号電荷を生成するように配置されるフォトサイトのアレイ」及び「前記時間変化するスペクトルを受信し、前記複数のCCD乗算レジスタによる電荷増倍のために、前記時間変化するスペクトルの異なる部分を前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分に与える」という記載だけでは、本願発明が、時間変化するスペクトルをフォトサイトのアレイにおける時間変化に応じて推移する位置で受信するものだけでなく、時間変化するスペクトルをフォトサイトのアレイにおける同一位置で受信するものも含むと解する余地があり、明確でない。 よって、請求項1及びそれを引用する請求項2?13並びに請求項14に係る発明は明確でない。 (2)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には「前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記波長のスペクトルの所定の部分を受信するように構成されており」と包括的に記載されている。しかし、発明の詳細な説明の段落【0016】には「走査システムがサンプルを横切って走査するとき、スペクトルは、記憶領域(例えば500本のスペクトル)内に収集され記憶される」と記載され、この走査がスペクトルの時間変化に相当するのであるから、フォトサイトアレイのそれぞれの部分は、スペクトルの時間変化に対応して受信することが前提となっており、出願時の技術常識に照らしても、この前提を欠く請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 同様に、請求項14には「前記波長のスペクトルの異なる部分を前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分に与える」と包括的に記載されている。しかし、発明の詳細な説明の段落【0016】には「走査システムがサンプルを横切って走査するとき、スペクトルは、記憶領域(例えば500本のスペクトル)内に収集され記憶される」と記載され、この走査がスペクトルの時間変化に相当するのであるから、フォトサイトアレイのそれぞれの部分は、スペクトルの時間変化に対応して受信することが前提となっており、出願時の技術常識に照らしても、この前提を欠く請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、請求項1及び14並びに請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2?13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 当審拒絶理由の判断 平成28年6月20日の手続補正によって、請求項1において「前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分が前記波長のスペクトルの所定の部分を受信する」ことが「前記スペクトルの時間変化に対応して行われること、及び、請求項14において「前記波長のスペクトルを受信し」「前記波長のスペクトルの異なる部分を前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分に与える」ことが「前記スペクトルの時間変化に対応して」行われることが特定された。 このことにより、補正後の請求項1及び14並びに補正後の請求項1を直接または間接的に引用する補正後の請求項2?13に係る発明は、「前記フォトサイトのアレイのそれぞれの部分」が「前記スペクトルの時間変化に対応」して受信することが特定されたから、発明が明確となり、かつ、課題を解決するものとして、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。 よって、当審拒絶理由(1)及び(2)は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-07-20 |
出願番号 | 特願2006-250014(P2006-250014) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01J)
P 1 8・ 121- WY (G01J) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平田 佳規 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | 時間分解分光器のためのシステム及び装置 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 鈴木 信彦 |
代理人 | 西島 孝喜 |