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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B62J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62J |
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管理番号 | 1316937 |
審判番号 | 不服2015-6554 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-07 |
確定日 | 2016-07-14 |
事件の表示 | 特願2013- 86299号「リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステム、及びリーン姿勢で旋回する車両」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-210443号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成25年4月17日の出願であって、平成27年1月6日付け(発送日:同年1月13日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成27年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年4月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本件発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、 (1)「【請求項1】 リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステムであって、 前記ヘッドライトシステムは、 前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射するメインヘッドライトと、 前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された複数の光源及び前記光源を支持する灯体を有するサブヘッドライトと、 前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる、前記灯体に支持された制御装置と、 前記灯体に支持された制御装置から前記複数の光源のそれぞれまで延びる配線とを備える。」 とあったものを (2)「【請求項1】 リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステムであって、 前記ヘッドライトシステムは、 前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射するメインヘッドライトと、 前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された複数の光源及び前記光源を支持する灯体を有するサブヘッドライトと、 前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記サブヘッドライトの複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる、前記サブヘッドライトの灯体に支持されたサブヘッドライト制御装置と、 前記サブヘッドライトの灯体に支持されたサブヘッドライト制御装置から前記サブヘッドライトの前記複数の光源のそれぞれまで延びる配線と を備える。」 と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付したものである。) しかしながら、本件補正前に「複数の光源」とあったものを、本件補正後に「サブヘッドライトの複数の光源」と補正する補正事項及び本件補正前に「灯体」とあったものを、本件補正後に「サブヘッドライトの灯体」と補正する補正事項は、いずれも、本件補正前の請求項1の「複数の光源」及び「灯体」を修飾しているものであるが、本件補正前の請求項1には「複数の光源及び前記光源を支持する灯体を有するサブヘッドライト」と記載されており、該「複数の光源」及び「灯体」はサブヘッドライトが有することが本件補正前に明らかであるから、該「複数の光源」及び「灯体」をさらに限定しているものとはいえない。 本件補正前に「制御装置」とあったものを、本件補正後に「サブヘッドライト制御装置」と補正する補正事項は、本件補正前の請求項1には「前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる、前記灯体に支持された制御装置」と記載され、「制御装置」が「サブヘッドライト」を制御するものであることは本件補正前に明らかであるから、「制御装置」をさらに限定しているものとはいえない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的とするものに該当するものでもない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 本件補正は却下すべきものであるが、仮に、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとして、本件補正後の前記請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても以下に検討する。 2.引用文献の記載事項及び引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特許第4864562号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「二輪車用灯具システム」に関し、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下同様。) ア.「【0001】 本発明は、二輪車用灯具システムに関し、特にコーナリング時に点灯するコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムに関する。」 イ.「【0015】 本実施形態の二輪車用灯具システム1は、二輪車の前方側に設けられ、二輪車の進行方向側を照射するランプユニットである。二輪車用灯具システム1は、図1に示すように、カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に、二輪車走行時に点灯しすれ違いビームを照射するメインランプとしてのすれ違いビーム用ランプ10と、コーナー走行前またはコーナー走行時に状況に応じて点消灯または増減光するサブランプとしての左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rと、を備えている。このように、実際の二輪車には、サブランプは、車両の左右に少なくとも一つずつ設けられており、左側コーナリングランプ20Lと右側コーナリングランプ20Rとは左右対称の構造及び配置である。以下、左側コーナリングランプ20Lをコーナリングランプ20として説明する。」 ウ.「【0017】 一方、コーナリングランプ20は、すれ違いビーム用ランプ10の光軸Ax1とは所定の角度為すようにして配置される。図1及び図2に示すすれ違いビーム用ランプは、二輪車の左側(前方から見て右側)と右側(前方から見て左側)に装着されるコーナリングランプであり、その光軸Ax2は、すれ違いビーム用ランプ10の光軸Ax1と水平面内で20°?30°(例えば25°)傾けられて配置される。図1では、例示のため、すれ違いビーム用ランプ10とコーナリングランプ20(左側コーナリングランプ20Lと右側コーナリングランプ20R)を同一水平面上に並べて描いているが、レイアウトに応じてそれぞれを配置すればよく、必ずしも同一水平面上に配置される必要はない。 【0018】 以下、具体的にコーナリングランプ20について説明する。 コーナリングランプ20は、コーナーへの進入直前にコーナー側に光を照射してコーナー側の視認性を高め、さらにコーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成された灯具である。 【0019】 本実施形態のコーナリングランプ20は、図2に示すように、ランプボディ22とランプボディ22の前方側開口を覆うように取り付けられた透光性のカバー24との間に構成された灯室20a内に3つのプロジェクタ型の灯具ユニット30A,30B,30Cを備えて構成されている。 【0020】 各灯具ユニット30A,30B,30Cは、それぞれバンク角に対応したコーナー方向の配光の一部を形成するユニットであり基本的構成は同一である。図2に示すように、各灯具ユニット30A,30B,30Cは、灯室20a内に幅方向に並んで設置されている。また、図2に示すように、各灯具ユニット30A,30B,30Cは、それぞれ取り付け角度が異なるように灯室20a内に固定されている。 【0021】 図3に示すように、灯具ユニット30A(灯具ユニット30B,30Cも同様)は、例えば、ベース部材41と、光源としてのLED(半導体発光素子)42と、投影レンズ44と、リフレクタ46とを備えている。」 エ.「【0030】 例えばライダーが交差点等のカーブにおける左折前に二輪車に設けられた方向指示器(不図示)の操作スイッチ(不図示)を操作すると、操作スイッチは、コントローラ62にコーナー進入信号を出力する。コントローラ62は、このコーナー進入信号に応じて点灯制御回路64に点灯指示を出力し、点灯制御回路64の指示に応じて灯具ユニット30Aが点灯または増光して光が前方に投影される。 【0031】 すると、図4(a)に示すように、すれ違いビームが形成するカットオフラインCL1を有する配光パターンCP1の左側方に、配光パターンCP2が投影される。これにより、二輪車が左折直前において、左折側、すなわち進行方向側に光が照射され、ライダーの進行側の遠方視認性が高まる。 【0032】 次に、カーブ等においてライダーが実際に二輪車を傾けて曲がろうとすると、二輪車に設けられた図示せぬバンク角センサが二輪車のバンク角を検出し、バンク角に応じたコーナリング信号をコントローラ62に出力する。コントローラ62は、このコーナリング信号が示すバンク角が所定値以上となると、灯具ユニット30Bを点灯または増光するように指示する。そして、さらにバンク角が大きくなり第2の所定値以上となると、さらに灯具ユニット30Cを点灯または増光するように指示する。ここで、灯具ユニット30B及び灯具ユニット30Cは、予めバンク角に応じて傾けて取り付けられている(図3に示す光学載置面41eが水平面と傾くように取り付けられている)。」 以上の記載事項及び各図面から以下の事項が認定できる。 あ.記載事項ア.の「コーナリング時に点灯するコーナリングランプを備えた二輪車用灯具システムに関する」との記載、及び記載事項ウ.(段落【0018】)の「コーナリングランプ20は、・・・コーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成された灯具である」との記載から、二輪車用灯具システムは、コーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成されたコーナリングランプ20を備えたものであることが理解できる。 い.【図2】には、コントローラ62と信号線で接続されている点灯制御回路64が示され、さらに、記載事項イ.(段落【0015】)、記載事項ウ.(段落【0019】)及び記載事項エ.(段落【0030】及び段落【0032】)を参酌すると、該点灯制御回路64からコーナリングランプ20の左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cにまで延びる配線を備え、該コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64により灯具ユニット30B,30Cの点灯制御を行っていることが理解できる。 これら記載事項、認定事項、及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「コーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成されたコーナリングランプ20を備えた二輪車用灯具システムであって、 前記二輪車用灯具システムは、 カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた、二輪車走行時に点灯しすれ違いビームを照射するメインランプとしてのすれ違いビーム用ランプ10と、コーナー走行時に状況に応じて点消灯または増減光するLED42を備えた、左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cを有するコーナリングランプ20と、 カーブ等においてライダーが実際に二輪車を傾けて曲がろうとすると、二輪車に設けられたバンク角センサが二輪車のバンク角を検出し、該バンク角が所定値以上となると、灯具ユニット30Bを点灯または増光し、第2の所定値以上となると、さらに灯具ユニット30Cを点灯または増光するコントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64と 前記コントローラ62と信号線で接続されている点灯制御回路64からコーナリングランプ20の左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cまで延びる配線と を備える。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平11-238405号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 カ.「【0023】ランプハウジング12は、高圧放電ランプ13やプロジェクターユニット16が固定されるハウジング本体19と、その前面を覆うように被装される透明なハウジングカバー20とが接合された構造であり、ハウジング本体19の周囲に突設された4本の固定アーム21(図3参照)が図示しないスクリューによりフロントカウリング2の内側に締結固定されるようになっている。 【0024】フロントカウリング2の前面が斜めに傾斜している関係上、上側に位置する高圧放電ランプ13は下側に位置するプロジェクターユニット16よりも後退した位置に設置されており、そのためハウジング本体19は後方に向かってせり上がる階段状に造形され、その上段側に高圧放電ランプ13が、下段側にプロジェクターユニット16が、それぞれ配置されている。 【0025】そして、このように階段状に形成されたハウジング本体19の外側(後面)の段差部22に高圧放電ランプ13のコントロールユニット23が設置されている。このコントロールユニット23は、図4に示すように、電源24(バッテリー等)と高圧放電ランプ13との間に接続される機器であり、例えば制御部25とイグナイター26とが一体に構成されたものである。」 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ・後者において、「コーナー進入後にはバンク角」が二輪車に生じている状態は、該二輪車がリーン姿勢で旋回している状態といえるから、後者の「コーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成されたコーナリングランプ20を備えた」「二輪車用灯具システム」は、前者の「リーン姿勢で旋回する」「車両用のヘッドライトシステム」に相当する。 ・後者の「二輪車走行時に点灯しすれ違いビームを照射するメインランプとしての」「すれ違いビーム用ランプ10」は前者の「前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射する」「メインヘッドライト」に相当する。 後者の「コーナー走行時に状況に応じて点消灯または増減光するLED42を備えた、」「左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30C」は前者の「前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された」「複数の光源」に相当し、後者の「ランプボディ22」は前者の「灯体」に相当し、後者の「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた、・・・灯具ユニット30B,30C」と前者の「光源を支持する灯体」とは「光源を備える灯体」という限りで共通し、後者の「コーナリングランプ20」は前者の「サブヘッドライト」に相当する。 ・後者の「カーブ等においてライダーが実際に二輪車を傾けて曲がろうとすると、二輪車に設けられたバンク角センサが二輪車のバンク角を検出し、該バンク角が所定値以上となると、灯具ユニット30Bを点灯または増光し、第2の所定値以上となると、さらに灯具ユニット30Cを点灯または増光する」は、「灯具ユニット30B」及び「灯具ユニット30C」が、「左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられ」るものであり、右カーブで二輪車を右側に傾斜したときには右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cを、左カーブで左側に傾斜したときには左側コーナリングランプ20Lにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cを点灯または増光する点灯制御を行うことは明らかであるから、前者の「前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記サブヘッドライトの複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる」に相当する。 また、後者の「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」と前者の「前記サブヘッドライトの灯体に支持されたサブヘッドライト制御装置」とは、機能的にみて、前者の「サブヘッドライト制御装置」という限りにおいて共通する。 そうすると、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステムであって、 前記ヘッドライトシステムは、 前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射するメインヘッドライトと、 前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された複数の光源及び前記光源を備える灯体を有するサブヘッドライトと、 前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記サブヘッドライトの複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させるサブヘッドライト制御装置と、 前記サブヘッドライト制御装置から前記サブヘッドライトの前記複数の光源のそれぞれまで延びる配線と を備える。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、「光源を支持する灯体」であり、「灯体に支持されたサブヘッドライト制御装置」であるのに対し、 引用発明は、「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた」「灯具ユニット30B,30C」であるが、「灯具ユニット30B,30C」を支持する「ランプボディ22」であるか明らかでなく、「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」を備えるものであるが、その支持構造が明らかでない点。 4.当審の判断 (1)上記相違点について検討する。 引用文献2には、「高圧放電ランプ13及びプロジェクターランプ16を設置するハウジング本体19、及び該ハウジング本体19に設置されたコントロールユニット23」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。) 他方、引用発明の「灯具ユニット30B,30C」は、「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた」ものであるから、何らかの支持部材を介して、「ランプボディ22」に支持されているのが自然である。また、引用発明の「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」も、配線構造の単純化から、灯具ユニット30B,30Cの周辺に配置するのが合理的である。 そうすると、「灯具ユニット30B,30C」及び「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」の支持構造を決める際に、引用文献2に記載されている事項を参考にして、「灯具ユニット30B,30C」を支持する「ランプボディ22」とし、「ランプボディ22」に支持された「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」とすることは、当業者であれば適宜になし得ることである。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)本願補正発明による効果も、引用発明及び引用文献2に記載されている事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、本件補正後の請求項1に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成26年10月2日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2.1.(1)」に記載したとおりである。 2.引用文献の記載事項及び引用発明 引用文献の記載事項及び引用発明は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ・後者において、「コーナー進入後にはバンク角」が二輪車に生じている状態は、該二輪車がリーン姿勢で旋回している状態といえるから、後者の「コーナー進入後にはバンク角に応じた側方への配光を実現するように構成されたコーナリングランプ20を備えた」「二輪車用灯具システム」は、前者の「リーン姿勢で旋回する」「車両用のヘッドライトシステム」に相当する。 ・後者の「二輪車走行時に点灯しすれ違いビームを照射するメインランプとしての」「すれ違いビーム用ランプ10」は前者の「前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射する」「メインヘッドライト」に相当する。 後者の「コーナー走行時に状況に応じて点消灯または増減光するLED42を備えた、」「左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30C」は前者の「前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された」「複数の光源」に相当し、後者の「ランプボディ22」は前者の「灯体」に相当し、後者の「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた、・・・灯具ユニット30B,30C」と前者の「光源を支持する灯体」とは「光源を備える灯体」という限りで共通し、後者の「コーナリングランプ20」は前者の「サブヘッドライト」に相当する。 ・後者の「カーブ等においてライダーが実際に二輪車を傾けて曲がろうとすると、二輪車に設けられたバンク角センサが二輪車のバンク角を検出し、該バンク角が所定値以上となると、灯具ユニット30Bを点灯または増光し、第2の所定値以上となると、さらに灯具ユニット30Cを点灯または増光する」は、「灯具ユニット30B」及び「灯具ユニット30C」が、「左側コーナリングランプ20L及び右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられ」るものであり、右カーブで二輪車を右側に傾斜したときには右側コーナリングランプ20Rにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cを、左カーブで左側に傾斜したときには左側コーナリングランプ20Lにそれぞれ設けられた灯具ユニット30B,30Cを点灯または増光する点灯制御を行うことは明らかであるから、前者の「前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる」に相当する。 また、後者の「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」と前者の「前記灯体に支持された制御装置」とは、機能的にみて、前者の「制御装置」という限りにおいて共通する。 そうすると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステムであって、 前記ヘッドライトシステムは、 前記車両の傾斜に拘わらず点灯し前方を照射するメインヘッドライトと、 前記車両が傾斜したときに点灯するLEDで構成された複数の光源及び前記光源を備える灯体を有するサブヘッドライトと、 前記車両が前記車両の車幅方向における右側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における右前方を照射する光源を点灯させ、前記車両が前記車幅方向における左側に傾斜したときに前記複数の光源のうち前記車幅方向における左前方を照射する光源を点灯させる制御装置と、 前記制御装置から前記複数の光源のそれぞれまで延びる配線と を備える。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、「光源を支持する灯体」であり、「灯体に支持された制御装置」であるのに対し、 引用発明は、「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた」「灯具ユニット30B,30C」であるが、「灯具ユニット30B,30C」を支持する「ランプボディ22」であるか明らかでなく、「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」を備えるものであるが、その支持構造が明らかでない点。 4.当審の判断 (1)上記相違点について検討する。 引用文献2には、「高圧放電ランプ13及びプロジェクターランプ16を設置するハウジング本体19、及び該ハウジング本体19に設置されたコントロールユニット23」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。) 他方、引用発明の「灯具ユニット30B,30C」は、「カバー24とランプボディ22により形成される灯室20a内に備えられた」ものであるから、何らかの支持部材を介して、「ランプボディ22」に支持されているのが自然である。また、引用発明の「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」も、配線構造の単純化から、灯具ユニット30B,30Cの周辺に配置するのが合理的である。 そうすると、「灯具ユニット30B,30C」及び「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」の支持構造を決める際に、引用文献2に記載されている事項を参考にして、「灯具ユニット30B,30C」を支持する「ランプボディ22」とし、「ランプボディ22」に支持された「コントローラ62と配線で接続されている点灯制御回路64」とすることは、当業者であれば適宜になし得ることである。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)本願発明による効果も、引用発明及び引用文献2に記載されている事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-16 |
結審通知日 | 2016-05-17 |
審決日 | 2016-05-31 |
出願番号 | 特願2013-86299(P2013-86299) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62J)
P 1 8・ 572- Z (B62J) P 1 8・ 575- Z (B62J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 信秀 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 島田 信一 |
発明の名称 | リーン姿勢で旋回する車両用のヘッドライトシステム、及びリーン姿勢で旋回する車両 |
代理人 | 特許業務法人タス・マイスター国際特許事務所 |