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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01K
管理番号 1317021
異議申立番号 異議2016-700221  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-15 
確定日 2016-07-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第5779481号発明「温度センサ・アセンブリ及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5779481号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5779481号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成20年6月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年6月22日 米国)に国際出願した特願2010-513323号の一部を平成23年11月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月17日に特許の設定登録がされ、平成28年3月15日にその特許に対し、特許異議申立人株式会社デンソーにより特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明

特許第5779481号の請求項1ないし5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1、‥‥‥、5の特許に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」、‥‥‥、「本件特許発明5」という。)。

「【請求項1】
第1の温度センサ、及び前記第1の温度センサに結合され、第1の温度を示す第1の温度信号を提供するように構成された1対の第1の導体を有する第1の温度センサ・プローブと、
第2の温度センサ、及び前記第2の温度センサに結合され、第2の温度を示す第2の温度信号を提供するように構成された1対の第2の導体を有する第2の温度センサ・プローブと、
前記1対の第1の導体及び前記1対の第2の導体に固定結合されたアダプタ回路アセンブリであって、該アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るように構成された第1の入力部、及び前記第2の温度信号を受け取るように構成された第2の入力部を有し、また該アダプタ回路アセンブリは、該アダプタ回路アセンブリの外部にある温度測定システムに結合するための出力部を有し、該出力部は、第1の温度特性及び第2の温度特性を提供するように構成され、また前記アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取り、該第1の温度信号に応答して前記第1の温度特性を生成するように構成された回路を有し、該回路は、前記第2の温度信号を受け取り、該第2の温度信号に応答して前記第2の温度特性を生成するようにさらに構成されているアダプタ回路アセンブリと
を有し、
前記アダプタ回路アセンブリは、ハウジング、回路基板、及び複数のコネクタをさらに含み、前記ハウジングはベース及び空洞を含み、前記回路基板は前記空洞内で前記ベースの上方に配置され、前記1対の第1の導体及び前記1対の第2の導体は前記コネクタを通して前記回路基板に接続され、前記各コネクタはL形状を規定し、前記回路基板と係合するように前記ベースを通して垂直に上方に延びている
温度センサ・アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の温度センサ・プローブが1対の第1のワイヤを有する第1のワイヤ・セットを含み、該第1のワイヤのそれぞれが、前記1対の第1の導体のうちの1つの第1の導体に結合されて第1の結合部を形成し、前記第1の温度センサ・プローブが、前記第1の温度センサ・プローブの端部に結合される第1の接続構成要素であって、2つのチャンネルを備えた第1のグロメットを有する第1の接続構成要素をさらに含み、前記チャンネルのそれぞれが前記第1の導体の1つ及び前記第1のワイヤの1つを受け入れ、前記第1のグロメットが前記第1の結合部を取り囲み、また前記第2の温度センサ・プローブが1対の第2のワイヤを有する第2のワイヤ・セットを含み、該第2のワイヤのそれぞれが、前記1対の第2の導体のうちの1つの第2の導体に結合されて第2の結合部を形成し、前記第2の温度センサ・プローブが、前記第2の温度センサ・プローブの端部に結合される第2の接続構成要素であって、2つのチャンネルを備えた第2のグロメットを有する第2の接続構成要素をさらに含み、前記チャンネルのそれぞれが前記第2の導体の1つ及び前記第2のワイヤの1つを受け入れ、前記第2のグロメットが前記第2の結合部を取り囲んでいる請求項1に記載の温度センサ・アセンブリ。
【請求項3】
前記第1のセンサ・プローブが、前記第1の温度センサ・プローブの外部に取り付けられた第1のカラーと、前記第1の温度センサ・プローブに回転可能に結合され、前記第1のカラーと係合して前記第1の温度プローブを実装アセンブリに固定するように構成された第1のコネクタとを含み、前記第2のセンサ・プローブが、前記第2の温度センサ・プローブの外部に取り付けられた第2のカラーと、前記第2の温度センサ・プローブに回転可能に結合され、前記第2のカラーと係合して前記第2の温度プローブを実装アセンブリに固定するように構成された第2のコネクタとを含む請求項1に記載の温度センサ・アセンブリ。
【請求項4】
前記第1のプローブを前記アダプタ回路アセンブリに直接接続するための第1のリード、及び前記第2のプローブを前記アダプタ回路アセンブリに直接接続するための第2のリードをさらに有し、前記ハウジングが、前記第1及び第2のリードを固定保持するための一体化された部分を有している請求項1に記載の温度センサ・アセンブリ。
【請求項5】
前記ハウジングが単体ハウジングであり、前記ハウジングが前記第1及び第2のリードのまわりに成形される請求項4に記載の温度センサ・アセンブリ。」

第3 申立理由の概要

特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証ないし甲第3号証を提出し、請求項1ないし5に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:特開平8-292108号公報
甲第2号証:特開2007-93508号公報
甲第3号証:特開平6-160204号公報

第4 申立理由について

1 請求項1について

1 甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項

(1) 甲第1号証(特開平8-292108号公報)には、以下のように記載されている。(下線は当審で付した。)

a「【0001】
【技術分野】本発明は内燃機関の排気温度等を検知するサーミスタ式温度センサに関する。」

b「【0024】
【実施形態例】
実施形態例1
本例は図1に示すようにサーミスタ素子11を有しサーミスタ素子11を外部と電気接続する第1端末部121,122を備えた感温部10とサーミスタ11と直列に接続するための複数の検出抵抗211?213を有し検出抵抗211?213のそれぞれを外部と電気低続する第2端末部221?225を備えた外付回路部20と第1端末部121,122と第2端末部221?225との間の接続を変更する接続切替手段30とを有するサーミスタ式温度センサ1である。
【0025】接続切替手段30は第1端末部121,122又は第2端末部221?225に接続された互いに対になる雌型又は雄型の嵌合部33,34を備えたコネクタ31と第1嵌合部33における端子間を選択的に短絡する短絡手段(ワイヤ)32とを有する。またコネクタ31と外付回路部20とは構造上一体的に結合されている。そしてサーミスタ素子11は絶縁性の基板12と基板12上に厚膜状に形成されたサーミスタ13とサーミスタ13を被う絶縁被覆部材14とを有する。
【0026】本例の温度センサ1はエンジンの排気管に装着され排気ガスの温度を検出するセンサであり保持金具15によって排気管に固定されサーミスタ素子11は排気管中に挿入される。同図において符号161はサーミスタ13に接触する白金等からなるリード電極である。外付回路部20は直流電源23と検出抵抗211?213を備えており検出抵抗211?213の一端は共通ライン226を介して直流電源23の負極に接続され他端はそれぞれ第2端末部223?225に接続される。」

c「【0034】実施形態例4
本例は,第二発明にかかる実施形態例である。本例は,図4に示すように,温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ素子41を備えた感温部40と,感温部40に供給する電源部を備え感温部40とは別体の図示しない制御部と,感温部40及び上記制御部と別体で両部の間を接続する中継部50とを有するサーミスタ式温度センサ1である。
【0035】サーミスタ素子41は,絶縁性基板45の上に厚膜又は薄膜のサーミスタ42を形成し,この膜状のサーミスタ42を絶縁性基板46で覆ってなり,中継部50は,互いに対になる雄型と雌型の嵌合部を備えた中継用のコネクタ51(但し,雌型部は図示略)と,サーミスタ素子41と直列及び並列に接続されサーミスタ素子41の抵抗値を調整する2個の調整抵抗52,53(図5)とを有する。調整抵抗52,53は,基板55上に配置されており,一部を切除することにより抵抗値を調整することのできるトリミング可能な抵抗体である。
【0036】以下,それぞれについて説明を補足する。感温部40は,図4に示すように,絶縁性基板45上に膜状のサーミスタ42と白金等からなるリード電極43を配置し,その上を絶縁性の基板46で覆い,外部と接続するための引き出し線441,442を設けてある。中継部50は,プリント基板55上に調整抵抗52,53を搭載し,調整抵抗52,53はコネクタピン511,512に接続されている。」

d「【0043】実施形態例5
本例は,実施形態例4において,図5に示すサーミスタ素子41と調整抵抗52,53からなる温度可変抵抗部(合成抵抗値Ro)に対して直列に,信号取り出し用の検出抵抗54(図7)が接続されており,検出抵抗54は,調整抵抗52,53を配置する中継部50の基板55上に配置されているもう一つの実施形態例である。そして,検出抵抗54は,一部を切除することにより抵抗値を調整することのできるトリミング可能な抵抗体である。
【0044】図7に示すように,検出抵抗54を調整抵抗52,53と共に中継部50に取り付けることにより,外部に所定の電圧を印加するだけで,コネクタピン511,513間に出力の電圧信号を得ることが出来る。その結果,温度センサ1に固有のものとして必要なものは,感温部40と中継部50の2つになり,全体の構成が簡素になる。
【0045】また,検出抵抗をトリミング可能な抵抗体とすることにより,一般に温度変化に対する出力電圧変化の大きさで表す感度の良さが最良値となるように,検出抵抗値を調整(トリミング)することが出来る。なお,実施形態例1,2では,調整抵抗52,53をコネクタと同一の部材に配置したが,コネクタとは別の部材に収納することも出来る。また,直列調整抵抗52,並列調整抵抗53及び検出抵抗54が,それぞれ1個の抵抗体からなる例を示したが,複数の抵抗体によって構成することもできる。」

e 図4において、引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続されていることが示されている。

f 中継部50は、感温部40に供給する電源部を備え感温部40とは別体の図示しない制御部と、感温部40の両部の間を接続するものであるから(【0034】)、図4において、感温部40からの引き出し線441,442が接続されていない側の、中継部50のコネクタピン511,512は、別体の制御部と接続されることが示されているといえる。

g 図4には、コネクタ51が、コネクタピン511,512からなることが示されている。


したがって、上記の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。なお、参考のために括弧内に甲第1号証の記載箇所を示す。)。

「温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタ素子41を備えた感温部40と、感温部40に供給する電源部を備え感温部40とは別体の図示しない制御部と、感温部40及び上記制御部と別体で両部の間を接続する中継部50とを有するサーミスタ式温度センサ1であって(【0034】)、
サーミスタ素子41は、絶縁性基板45の上に厚膜又は薄膜のサーミスタ42を形成し、この膜状のサーミスタ42を絶縁性基板46で覆ってなり、中継部50は、互いに対になる雄型と雌型の嵌合部を備えた中継用のコネクタ51と(但し、雌型部は図示略)を有し(【0035】)、コネクタ51は、コネクタピン511,512からなり(上記g)、
感温部40は、絶縁性基板45上に膜状のサーミスタ42と白金等からなるリード電極43を配置し、その上を絶縁性の基板46で覆い、外部と接続するための引き出し線441,442を設け(【0036】)、
中継部50は、プリント基板55上に調整抵抗52,53を搭載し、調整抵抗52,53はコネクタピン511,512に接続され(【0036】)、
引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され(上記e)、
中継部50のコネクタピン511,512は、別体の制御部と接続される(上記f)、
サーミスタ式温度センサ。」

(2)甲第2号証(特開2007-93508号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

a「【0001】
本発明はセンサユニットに関し、詳細には、ガスセンサ本体内から延びるセンサ側リード線と電気的に接続される回路基板を収納する配線接続用ケースを有し、ガスセンサ本体内の外部との通気を、センサ側リード線、配線接続用ケース内に設けた通気経路を介して確保したセンサユニットに関する。」

b「【0016】
本実施形態のセンサユニット1は、ガスセンサ(図示外)側に接続されたセンサ側リード線30と、自動車の制御を行う電子制御ユニット(以下、「ECU」とする。)側に接続されたECU側リード線(図示せず)とを電気的に接続するとともに、ガスセンサから特定ガス成分の濃度に応じて出力される検出信号を、濃度信号に変換する回路基板15(図12参照)を収納して、取付対象体(車両の床下等)に取り付けるためのユニットである。センサユニット1の使用に供されるガスセンサとしては、排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサや全領域空燃比センサ、或いは排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ等が挙げられる。なお、これらのガスセンサとしては公知のものを用いることができ、具体的には特定ガス成分の濃度に応じた検出信号を出力するヒータ一体型センサ素子を主体金具や外筒等のガスセンサ本体内に配置し、ガスセンサ本体内から複数のセンサ側リード線を引き出した構成のものを用いることができる。
【0017】
はじめに、センサユニット1の概略構造について説明する。センサユニット1は、図1に示すように、回路基板15(図12参照)と、該回路基板15を内側に収納する樹脂製の配線接続用ケース2と、該配線接続用ケース2を覆うように取り付けられ、配線接続用ケース2を外部衝撃から保護するとともに、センサユニット1全体を取付対象体(例えば、車両の床下等)に取り付けるための金属製の保護カバー3と、配線接続用ケース2の後述する端子接続部20(図4参照)に接続される6本のセンサ側リード線30とを主体に構成されている。」

c「【0021】
次に、配線接続用ケース2について説明する。図3に示すように、この配線接続用ケース2は、底面が開口され、所定の高さを有する略直方体状のケース本体5と、該ケース本体5の天壁5aの外側面の略中央部に所定の高さで立設された角筒状の支持部6と、該支持部6の前壁6aから支持部6の前方に向かって略水平に延設され、支持部6の前壁6aから突出する5本のターミナルピン80(図3では3本のみ図示、図7参照)の先端部の周囲を包囲する楕円筒状のECU側コネクタ7とを主体に構成されている。なお、ECU側コネクタ7は、図11に示すように、支持部6から回路基板15の板面に沿う方向に突出してなるものでもある。
【0022】
まず、ケース本体5について詳細に説明する。図3,図4,図5に示すように、ケース本体5は箱状に形成され、天壁5a、前壁5b、右側壁5c、左側壁5d及び背壁5eで構成されている。そして、図5に示すように、ケース本体5の内側には、回路基板15を設置するとともに、ウレタン75(図12参照)が充填されるための収納領域40が設けられている。さらに、ケース本体5の内側の四隅には、回路基板15の四隅が当接して収納領域40内に回路基板15を設置するための台座部42が各々設けられている。なお、回路基板15が設置される際には、後述する端子接続部20の下面に両面テープ48(図12参照)が貼られ、回路基板15の上面が接着するようになっている。
【0023】
また、この収納領域40に充填されるウレタン75(図12参照)は、ケース本体5の天壁5a、前壁5b、右側壁5c、左側壁5d及び背壁5eの各内側面に接するように充填される。これにより、収納領域40に設置された回路基板15を気密かつ水密に封止して保持することができる。」

d「【0031】
また、図3,図7に示すように、支持部6の前壁6aの外側面中段の中央寄りには、この配線接続用ケース2にインサート成形され、前壁6aの左右方向に一列に並ぶ5本の略L字型のターミナルピン80の各先端部が、前壁6aを貫通して、支持部6の前方に向かって略水平に各々延設されている。そして、前壁6aの外側面には、それら5本のターミナルピン80の各先端部の周囲を覆い、ターミナルピン80の各先端部の延設方向と平行に延設された略円筒状のECU側コネクタ7が設けられている。
【0032】
次に、ECU側コネクタ7について説明する。図3に示すように、ECU側コネクタ7の先端側には、ECU側リード線(図示外)に導通された中継端子(図示外)を挿入して、5本のターミナルピン80と接続させるための開口部7aが設けられている。また、このECU側コネクタ7の下部と、ケース本体5の天壁5aの外側面との間には所定の隙間8が設けられている。これにより、例えば、複数のECU側リード線に導通された中継端子を包囲するECU側コネクタ外装部(図示外)を、ECU側コネクタ7の外側に被せるようにして嵌合させる。このときに、ECU側コネクタ7の外周縁の下部を隙間8に入り込ませることができる。したがって、ECU側リード線に導通された中継端子を、ECU側コネクタ7の内側に位置するターミナルピン80に確実に接続することができる。つまり、ECU側コネクタ7に対して、ECU側リード線(図示外)に電気的に接続された中継端子の径方向周囲を包囲する筒状のECU側コネクタ外装部(図示外)が嵌め込まれることによって、ECU側リード線(図示外)とセンサ側リード線30とが回路基板15を介して電気的に確実に接続されることになる。
【0033】
次に、ターミナルピン80について説明する。図3,図5に示すターミナルピン80は金属製のピンであって、予め略L字状に折り曲げられている。そして、このような略L字形状のターミナルピン80が、図11に示すように、配線接続用ケース2にインサート成形されている。さらに、これら5本のターミナルピン80の各先端部は、図3,図7に示すように、横一列に並んで支持部6の前壁6aの外側面から略水平に突き抜けて延設されている。一方、5本のターミナルピン80の各後端部は、図5に示すように、ケース本体5の天壁5aの内側面から収納領域40に向かって突き抜けて各々延設され、該ターミナルピン80の各後端部は、端子接続部20の下部の前面側近傍に沿って並んで各々突出している。そして、図12に示すように、これらターミナルピン80の後端部に、収納領域40に保持される回路基板15の各スルーホール(図示外)が半田付けで固定されるようになっている。
【0034】
次に、センサ側リード線30について説明する。図9,図10に示すように、センサ側リード線30は、導線30aと、該導線30aを被覆する被覆部30bとから構成されている。なお、導線30aは、複数の線材が撚り合わされた状態で被覆部30b内に配置されているため、この被覆部30bは一端側から他端側に向けて内側が通気可能となっており、被覆部30bの一端側の開口端部がケース本体5内に位置する通気口62をなす。また、センサ側リード線30の先端部には、回路基板15の各スルホール(図示外)に接続される中継端子61が設けられている。なお、中継端子61の先端側に位置する先端側加締め部67にてセンサ側リード線30のうちで被覆部30bの他端から突出した導線30aが加締められることで、導線30aと中継端子61とが導通される。さらに、センサ側リード線30の被覆部30bの径方向周囲には、リード線挿入孔21に密着して嵌るためのゴム製の弾性シールリング65が装着されている。なお、この弾性シールリング65の先端部は、中継端子61の後端側加締め部68によりセンサ側リード線30に加締め固定されている。そして、このような通気性を備えたセンサ側リード線30の一端部に設けられた中継端子61の先端部が、配線接続用ケース2の端子接続部20のリード線挿入孔21に挿入されるとともに、回路基板15のスルーホール(図示外)に半田付けで固定され、他端側がガスセンサ本体内部に配置されるようになっている。」

e 図9、図10には、直線状の中継端子61が示されている。

上記記載から、甲第2号証には、次の事項が記載されている(なお、参考のために括弧内に甲第2号証の記載箇所を示す。本項(2)において、以下同様。)。

「ガスセンサ本体内から延びるセンサ側リード線と電気的に接続される回路基板を収納する配線接続用ケースを有するセンサユニットであって(【0001】)、
センサユニット1は、ガスセンサ(図示外)側に接続されたセンサ側リード線30と、自動車の制御を行う電子制御ユニット(以下、「ECU」とする。)側に接続されたECU側リード線(図示せず)とを電気的に接続するとともに、ガスセンサから特定ガス成分の濃度に応じて出力される検出信号を、濃度信号に変換する回路基板15(図12参照)を収納して、取付対象体(車両の床下等)に取り付けるためのユニットであり(【0016】)、
配線接続用ケース2に接続される6本のセンサ側リード線30を主体に構成され(【0017】)、
ケース本体5の内側には、回路基板15を設置するとともに、ウレタン75(図12参照)が充填されるための収納領域40が設けられ、さらに、ケース本体5の内側の四隅には、回路基板15の四隅が当接して収納領域40内に回路基板15を設置するための台座部42が各々設けられ(【0022】)、
配線接続用ケース2にインサート成形され、5本の略L字型のターミナルピン80の各先端部が、前壁6aを貫通して、支持部6の前方に向かって略水平に各々延設され、ターミナルピン80の各先端部の周囲を覆う略円筒状のECU側コネクタ7が設けられ(【0031】)、
ECU側コネクタ7の先端側には、ECU側リード線に導通された中継端子を挿入して、5本のターミナルピン80と接続させるための開口部7aが設けられ、ECU側リード線とセンサ側リード線30とが回路基板15を介して電気的に確実に接続され(【0032】)、
ターミナルピン80は金属製のピンであって、予め略L字状に折り曲げられており、そして、このような略L字形状のターミナルピン80が、配線接続用ケース2にインサート成形され(【0033】)、
5本のターミナルピン80の各後端部は、端子接続部20の下部の前面側近傍に沿って並んで各々突出し、これらターミナルピン80の後端部に、収納領域40に保持される回路基板15の各スルーホール(図示外)が半田付けで固定され(【0033】)、
センサ側リード線30の先端部には、回路基板15の各スルーホール(図示外)に接続される直線状の中継端子61が設けられ、センサ側リード線30の一端部に設けられた中継端子61の先端部が、配線接続用ケース2の端子接続部20のリード線挿入孔21に挿入されるとともに、回路基板15のスルーホール(図示外)に半田付けで固定され、他端側がガスセンサ本体内部に配置される(【0034】(なお、「各スルホール(図示外)」との記載は、「各スルーホール(図示外)」の誤記とした。)、上記e)、
センサユニット。」

ここで、上記記載事項から、着目点に応じ次の事項が記載されているということができるる。

ア センサユニットに着目する。

「ガスセンサ本体内から延びるセンサ側リード線と電気的に接続される回路基板を収納する配線接続用ケースを有するセンサユニットであって(【0001】)、
センサユニット1は、ガスセンサ(図示外)側に接続されたセンサ側リード線30と、自動車の制御を行う電子制御ユニット(以下、「ECU」とする。)側に接続されたECU側リード線(図示せず)とを電気的に接続するとともに、ガスセンサから特定ガス成分の濃度に応じて出力される検出信号を、濃度信号に変換する回路基板15(図12参照)を収納して、取付対象体(車両の床下等)に取り付けるためのユニットであり(【0016】)、
ケース本体5の内側には、回路基板15を設置するとともに、ウレタン75(図12参照)が充填されるための収納領域40が設けられ、さらに、ケース本体5の内側の四隅には、回路基板15の四隅が当接して収納領域40内に回路基板15を設置するための台座部42が各々設けられる(【0022】)、
センサユニット。」

イ センサ側リード線30に着目する。

「ガスセンサ本体内から延びるセンサ側リード線と電気的に接続される回路基板を収納する配線接続用ケースを有するセンサユニット(【0001】)であって、
配線接続用ケース2に接続される6本のセンサ側リード線30を主体に構成され(【0017】)、
センサ側リード線30の先端部には、回路基板15の各スルーホール(図示外)に接続される中継端子61が設けられ、センサ側リード線30の一端部に設けられた中継端子61の先端部が、配線接続用ケース2の端子接続部20のリード線挿入孔21に挿入されるとともに、回路基板15のスルーホール(図示外)に半田付けで固定され、他端側がガスセンサ本体内部に配置される(【0034】)、
センサユニット。」

ウ ECU側コネクタ7及びターミナルピン80に着目する。

「配線接続用ケース2にインサート成形され、5本の略L字型のターミナルピン80の各先端部が、前壁6aを貫通して、支持部6の前方に向かって略水平に各々延設され、ターミナルピン80の各先端部の周囲を覆う略円筒状のECU側コネクタ7が設けられ(【0031】)、
ECU側コネクタ7の先端側には、ECU側リード線に導通された中継端子を挿入して、5本のターミナルピン80と接続させるための開口部7aが設けられ、ECU側リード線とセンサ側リード線30とが回路基板15を介して電気的に確実に接続され(【0032】)、
ターミナルピン80は金属製のピンであって、予め略L字状に折り曲げられ、このような略L字形状のターミナルピン80が、配線接続用ケース2にインサート成形され(【0033】)、
5本のターミナルピン80の各後端部は、端子接続部20の下部の前面側近傍に沿って並んで各々突出し、これらターミナルピン80の後端部に、収納領域40に保持される回路基板15の各スルーホール(図示外)が半田付けで固定される(【0033】)、
センサユニット。」


(3)甲第3号証(特開平6-160204号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は温度センサに係り、特に内燃機関の吸入空気温度を検出するセンサの端子構造に関する。」

b「【0007】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図1を用いて説明する。本吸気温センサは合成樹脂からなる樹脂モールド1内に異種金属からなる端子を有し、かつ端子は感温抵抗体5の支持を兼ねたステンレス端子4と、外部回路の接続を兼ねた屈曲部を有する黄銅端子2と、前記ステンレス端子4と前記黄銅端子2を接続するニッケル端子3とで構成されている。吸気温センサの耐腐食性を向上させるには、端子はステンレスのような化学的に安定な金属を用いる必要が有る。一方、コネクタを有する本構造の場合、外部回路との接続には黄銅材のような柔らかい金属を用いて接触抵抗を小さくする必要が有る。しかしこれら両金属は直接接続させれば、電気化学的な接触電位差が0.7V 以上有るため、接続部分で腐食する可能性が高く、実用に供することはできない。ニッケル端子3を両金属の間に介在させた本構造の場合、まず溶接性であるがステンレスとニッケルの組合せの場合、両者の熱容量が近く、かつステンレス自身がニッケルを約10%含有していることから溶接に問題は生じない。またニッケルと黄銅の組合せでは結晶構造が同一で原子半径差が15%以下であり、安定な溶接が可能である。一方、接触電位差による腐食であるが、それぞれの組合せによる電位差はステンレスとニッケル間で約0.2V,ニッケルと黄銅間で約0.5Vと小さく、腐食の心配はない。また、外部回路と接続した際の接触抵抗をさらに小さくするために黄銅材の先端部に、ニッケルメッキ7及び金メッキ8を設けることにした。このような構成であれば、金メッキ8は黄銅に比べてより一層柔らかく、また酸化膜も形成しにくいため、さらに接触抵抗を低減できる。」

c 図1には、L字状の屈曲部を有する黄銅端子をコネクタピンとした、雄型コネクタからなる温度センサが示されている。

したがって、次の事項が記載されているということができる(なお、参考のために括弧内に甲第3号証の記載箇所を示す。)。

「合成樹脂からなる樹脂モールド1内に異種金属からなる端子を有し、かつ端子は感温抵抗体5の支持を兼ねたステンレス端子4と、外部回路の接続を兼ねた屈曲部を有する黄銅端子2と、前記ステンレス端子4と、前記黄銅端子2を接続するニッケル端子3とで構成され、L字状の屈曲部を有する黄銅端子をコネクタピンとした、雄型コネクタからなる(【0007】、【0001】)、
温度センサ。」


2 対比・判断

(1)本件特許発明1について

ア 対比

(ア)甲1発明の「サーミスタ式温度センサ1」は、「感温部40」と「制御部」と「中継部50」とからなるものであって、組み立て体と捉えることができるから、本件特許発明1の「温度センサ・アセンブリ」に相当する。

(イ)甲1発明の「サーミスタ42」は、本件特許発明1の「第1の温度センサ」に相当する。

(ウ)甲1発明の「サーミスタ素子41」は、「絶縁性基板45の上に厚膜又は薄膜のサーミスタ42を形成し、この膜状のサーミスタ42を絶縁性基板46で覆ってな」り、「絶縁性基板45上に膜状のサーミスタ42と白金等からなるリード電極43を配置」することから、サーミスタ42が設けられる絶縁性基板45の部分は、サーミスタ42とリード電極43が配置された剛性を有する部分ということができ、温度センサのプローブと捉えることができる。
そして、リード電極43に、温度を示す温度信号が流れることは明らかであるから、甲1発明の、「絶縁性基板45の上に厚膜又は薄膜のサーミスタ42を形成し、この膜状のサーミスタ42を絶縁性基板46で覆ってな」り、「絶縁性基板45上に膜状のサーミスタ42と白金等からなるリード電極43を配置」する「サーミスタ素子41」は、本件特許発明1の「前記第1の温度センサに結合され、第1の温度を示す第1の温度信号を提供するように構成された1対の第1の導体を有する第1の温度センサ・プローブ」に相当する。

(エ)甲1発明において「感温部40は、絶縁性基板45上に膜状のサーミスタ42と白金等からなるリード電極43を配置し、その上を絶縁性の基板46で覆い、外部と接続するための引き出し線441,442を設け」るものである。
ここで、リード電極43が外部と接続するための引き出し線441,442と導通していることは明らかであるから、「引き出し線441,442」は、本件特許発明1の「第1の温度信号を提供するように構成された1対の第1の導体」に相当する。
また、甲1発明において、「中継部50は、プリント基板55上に調整抵抗52,53を搭載し、調整抵抗52,53はコネクタピン511,512に接続され」るものであり、ここで、「中継部50」は、調整抵抗を有する回路であって、プリント基板を含むアセンブリと捉えられるから、本件特許発明1の「アダプタ回路アセンブリ」に相当する。
したがって、甲1発明の「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」る「中継部50」は、引き出し線がプリント基板に接続される際に、固定結合することが常套手段であることから、本件特許発明1の「前記1対の第1の導体に固定結合されたアダプタ回路アセンブリ」である点で共通する。

(オ)甲1発明の「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」る「引き出し線441,442」において、「引き出し線441,442」に温度を示す信号が流れることは明らかであり、このような温度信号が、中継部50のうちのプリント基板に入力されるということができるから、甲1発明の「中継部50」において、「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」ることと、本件特許発明1の「該アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るように構成された第1の入力部、及び前記第2の温度信号を受け取るように構成された第2の入力部を有」することとは、「該アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るように構成された第1の入力部を有」する点で共通する。

(カ)甲1発明は、「感温部40に供給する電源部を備え感温部40とは別体の図示しない制御部」を有し、中継部50は、「感温部40及び上記制御部と別体で両部の間を接続する中継部50」であり、また、「中継部50のコネクタピン511,512は、別体の制御部と接続される」ものであるから、中継部50の出力は、コネクタピン511,512を介して、感温部40に供給する電源部を備える別体の制御部と接続されるものということができる。
また、感温部40から中継部50に温度信号が入力されることは明らかであるから、甲1発明の「感温部40に供給する電源部を備え感温部40とは別体の図示しない制御部」を有し、「中継部50のコネクタピン511,512は、別体の制御部と接続される」、「感温部40及び上記制御部と別体で両部の間を接続する中継部50」は、本件特許発明1の「該アダプタ回路アセンブリの外部にある温度測定システムに結合するための出力部を有し、該出力部は、第1の温度特性及び第2の温度特性を提供するように構成され、また前記アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取り、該第1の温度信号に応答して前記第1の温度特性を生成するように構成された回路を有し、該回路は、前記第2の温度信号を受け取り、該第2の温度信号に応答して前記第2の温度特性を生成するようにさらに構成されているアダプタ回路アセンブリ」と、「該アダプタ回路アセンブリの外部にあるシステムに結合するための出力部を有し、また前記アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るアダプタ回路アセンブリ」である点で共通する。

(キ)甲1発明は、「中継部50は、互いに対になる雄型と雌型の嵌合部を備えた中継用のコネクタ51と(但し、雌型部は図示略)を有し、コネクタ51は、コネクタピン511,512からなり」、「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」、「中継部50は、プリント基板55上に調整抵抗52,53を搭載し、調整抵抗52,53はコネクタピン511,512に接続され」ることから、中継部50は、ハウジング、調整抵抗52,53を搭載したプリント基板、複数のコネクタピンを含むものであり、また、ハウジングにベース及び空洞を設けることは常套手段である。
そして、調整抵抗52,53を搭載したプリント基板は、本件特許発明1の「回路基板」に相当し、「コネクタ51」は、本件特許発明1の「複数のコネクタ」と「コネクタ」を有する点で共通し、また、調整抵抗52,53を搭載したプリント基板は、ハウジングの空洞内に配置されることは明らかであるから、本件特許発明1と「前記回路基板は前記空洞内で前記ベースの上方に配置され」る点で共通する。
したがって、甲1発明の「中継部50は、互いに対になる雄型と雌型の嵌合部を備えた中継用のコネクタ51と(但し、雌型部は図示略)を有し、コネクタ51は、コネクタピン511,512からなり」、「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」、「中継部50は、プリント基板55上に調整抵抗52,53を搭載し、調整抵抗52,53はコネクタピン511,512に接続され」ることと、本件特許発明1の「前記アダプタ回路アセンブリは、ハウジング、回路基板、及び複数のコネクタをさらに含み、前記ハウジングはベース及び空洞を含み、前記回路基板は前記空洞内で前記ベースの上方に配置され」ることとは、「前記アダプタ回路アセンブリは、ハウジング、回路基板、及びコネクタをさらに含み、前記ハウジングはベース及び空洞を含み、前記回路基板は前記空洞内に配置され」る点で共通する。

(ク)甲1発明は、「引き出し線441,442が、中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」るものであって、引き出し線441,442は一対の導体ということができるから、本件特許発明1の「前記1対の第1の導体及び前記1対の第2の導体は前記コネクタを通して前記回路基板に接続され、前記各コネクタはL形状を規定し、前記回路基板と係合するように前記ベースを通して垂直に上方に延びている」こととは、「前記1対の第1の導体は前記回路基板に接続される」点で共通する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有する。

(一致点)
「【請求項1】
第1の温度センサ、及び前記第1の温度センサに結合され、第1の温度を示す第1の温度信号を提供するように構成された1対の第1の導体を有する第1の温度センサ・プローブと、
前記1対の第1の導体に固定結合されたアダプタ回路アセンブリであって、該アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るように構成された第1の入力部を有し、また該アダプタ回路アセンブリの外部にあるシステムに結合するための出力部を有し、また前記アダプタ回路アセンブリは、前記第1の温度信号を受け取るアダプタ回路アセンブリと
を有し、
前記アダプタ回路アセンブリは、ハウジング、回路基板、及びコネクタをさらに含み、前記ハウジングはベース及び空洞を含み、前記回路基板は前記空洞内に配置され、前記1対の第1の導体は前記回路基板に接続される
温度センサ・アセンブリ。」

(相違点1)
本件特許発明1は、「第2の温度センサ、及び前記第2の温度センサに結合され、第2の温度を示す第2の温度信号を提供するように構成された1対の第2の導体を有する第2の温度センサ・プローブと」を有し、「前記1対の第2の導体」に固定結合されたアダプタ回路アセンブリであり、「前記第2の温度信号を受け取るように構成された第2の入力部」を有するのに対し、甲1発明は、このような特定がない点。

(相違点2)
本件特許発明1は、該アダプタ回路アセンブリの外部にある「温度測定」システムに結合するための出力部を有し、「該出力部は、第1の温度特性及び第2の温度特性を提供するように構成され、」「該第1の温度信号に応答して前記第1の温度特性を生成するように構成された回路を有し、該回路は、前記第2の温度信号を受け取り、該第2の温度信号に応答して前記第2の温度特性を生成するようにさらに構成されている」アダプタ回路アセンブリであるのに対し、甲1発明は、このような特定がない点。

(相違点3)
本件特許発明1は、「複数の」コネクタをさらに含み、前記回路基板は前記空洞内で「前記ベースの上方」に配置され、前記1対の第1の導体「及び前記1対の第2の導体」は「前記コネクタを通して」前記回路基板に接続され、「前記各コネクタはL形状を規定し、前記回路基板と係合するように前記ベースを通して垂直に上方に延びている」のに対し、甲1発明は、このような特定がない点。

イ 判断
本件特許発明1と甲1発明との相違点である相違点3について検討する。

(相違点3)について
甲第1号証には、中継部50の入力である引き出し線441,442が、「中継部50のハウジングの側面を通り、L字状に折り曲げられて、中継部50の内のプリント基板55上に、垂直に接続され」るものであるところ、コネクタによる接続については記載されておらず、また自明であるということもできない。
そして、甲第2号証ないし甲第3号証をみても、本件特許発明1の「回路基板」に相当する部材における、入力側において、コネクタを用いることについて記載されておらず、また、「前記各コネクタはL形状を規定し、前記回路基板と係合するように前記ベースを通して垂直に上方に延びている」ことについて、記載も示唆もない。

なお、異議申立人は、異議申立書第15頁第13行ないし第36行において、

「相違点3:「コネクタ」について、本件特許発明1は「導体がコネクタを通して回路基板に接続されている」のに対して、甲1発明は「引き出し線441,442がコネクタを通さずにプリント基板55に接続されている」という点。
この相違点3について検討する。
導体がコネクタを通して回路基板に接続されているという点は、甲2発明に含まれている。また、L形状のコネクタが回路基板と係合するようにベースを通して垂直に上方に延びているという点は、甲2発明に含まれているとともに、甲第3号証に記載されている(以下、「甲3記載事項」という。)。
ここで、本件特許発明1の温度センサは、「過酷な環境に曝される」ことを想定している(本件特許発明の特許公報段落0004)。一方、甲2発明について、甲第2号証には、「ガスセンサとしては、排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサや全領域空燃比センサ、或いは排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ等が挙げられる」と記載されている(段落0016)。このように、甲2発明のガスセンサも本件特許発明1の温度センサと同様に、過酷な環境に曝されることを想定している。このため、本件特許発明1と甲1発明とは技術分野が関連している。
また、本件特許発明1と甲3記載事項とは、「温度センサ」として技術分野を一にする。ちなみに、甲3記載事項の吸気温センサも、本件特許発明1と同様に、「過酷な環境に曝される」ことを想定している(甲第3号証の段落0010)。
したがって、導体と回路基板を接続するL形状のコネクタが、回路基板と係合するようにベースを通して垂直に上方に延びている、という点について、甲2発明や甲3記載事項を甲1発明に適用することは、容易に想到し得るものである。」
と主張している。

しかしながら、甲第2号証は、「センサ側リード線30の先端部には、回路基板15の各スルーホール(図示外)に接続される直線状の中継端子61が設けられ、センサ側リード線30の一端部に設けられた中継端子61の先端部が、配線接続用ケース2の端子接続部20のリード線挿入孔21に挿入されるとともに、回路基板15のスルーホール(図示外)に半田付けで固定され、他端側がガスセンサ本体内部に配置される」ものであって(上記1(2)イ)、「センサ側リード線30の一端部に設けられた中継端子61」は、本件特許発明1の「コネクタ」に対応するものの、直線状であってL形状ではないから、異議申立人の「L形状のコネクタが回路基板と係合するようにベースを通して垂直に上方に延びているという点は、甲2発明に含まれている」との主張を採用することができない。
なお、甲第2号証には、センサ側リード線30側とは反対側には、ECU側コネクタ7及びターミナルピン80が設けられており、「ECU側コネクタ7の先端側には、ECU側リード線に導通された中継端子を挿入して、5本のターミナルピン80と接続させるための開口部7aが設けられ、ECU側リード線とセンサ側リード線30とが回路基板15を介して電気的に確実に接続され、ターミナルピン80は金属製のピンであって、予め略L字状に折り曲げられ、このような略L字形状のターミナルピン80が、配線接続用ケース2にインサート成形され、5本のターミナルピン80の各後端部は、端子接続部20の下部の前面側近傍に沿って並んで各々突出し、これらターミナルピン80の後端部に、収納領域40に保持される回路基板15の各スルーホール(図示外)が半田付けで固定され(【0033】)る、センサユニット」が記載されているということができる(上記1(2)ウ)。しかしながら、ECU側コネクタ7は、センサに接続された導体と接続されるコネクタではなく、本件特許発明1の「該アダプタ回路アセンブリの外部にある‥‥‥システムに結合するための出力部」に対応するものであって、他のシステムに結合される出力側のコネクタである。そして、甲第2号証には、「配線接続用ケース2にインサート成形され、5本の略L字型のターミナルピン80の各先端部が、前壁6aを貫通して、支持部6の前方に向かって略水平に各々延設され」ることから、略L字型のターミナルピン80の各先端部が、前壁6aを貫通しており、センサユニットのベースを通っているということもできないから、この点においても、異議申立人の「L形状のコネクタが回路基板と係合するようにベースを通して垂直に上方に延びているという点は、甲2発明に含まれている」との主張を採用することができない。

また、甲3号証には、「合成樹脂からなる樹脂モールド1内に異種金属からなる端子を有し、かつ端子は感温抵抗体5の支持を兼ねたステンレス端子4と、外部回路の接続を兼ねた屈曲部を有する黄銅端子2と、前記ステンレス端子4と、L字状の屈曲部を有する前記黄銅端子2を接続するニッケル端子3とで構成され、L字状の屈曲部を有する黄銅端子をコネクタピンとした、雄型コネクタからなる、温度センサ」が記載されているが(上記1(3))、甲3号証は、感温抵抗体5と、雄型コネクタが一体になったものであり、このような雄型コネクタは、雌型コネクタと係合するものであって、回路基板と係合するように前記ベースを通して回路基板に垂直に接続されていることについて記載されていないから、異議申立人の「L形状のコネクタが回路基板と係合するようにベースを通して垂直に上方に延びているという点は、‥‥‥甲第3号証に記載されている」との主張を採用することができない。

よって、本件特許発明1は、本件の出願前に当業者が甲1発明及び甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易になし得たものであるとすることができない。

(2)本件特許発明2ないし5について

ア 対比・判断

本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし5は、本件特許発明をさらに減縮したものであるから、本件の出願前に当業者が甲1発明及び甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易になし得たものであるとすることはできない。

3 まとめ

以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし5は、いずれも、特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。

第7 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-20 
出願番号 特願2011-248271(P2011-248271)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平野 真樹深田 高義  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
酒井 伸芳
登録日 2015-07-17 
登録番号 特許第5779481号(P5779481)
権利者 ワトロウ エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
発明の名称 温度センサ・アセンブリ及びその製造方法  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 中村 広希  
代理人 大庭 弘貴  

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