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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1317294
審判番号 不服2015-4122  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-02 
確定日 2016-08-09 
事件の表示 特願2010-133435「荷電粒子線露光装置及びデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日出願公開、特開2011-258842、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月10日の出願であって、平成26年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年3月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月3日付けで再度最初の拒絶理由が通知され、同年10月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月2日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされた後、当審において、平成28年2月15日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成28年4月18日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「荷電粒子線でターゲットを露光する荷電粒子線露光装置であって、
前記荷電粒子線からなる複数のビームを発生するビーム発生系と、
前記ビームがそれぞれ照射される複数の長方形の開口が互いに長手方向が平行になるように形成されたアレイ部材と、
前記複数の開口から選択された開口を通過する前記ビームを前記ターゲットに導く変調装置と、
前記変調装置で選択された前記開口を通過した前記ビームによって前記開口を縮小した長方形の像を形成するとともに、前記開口を縮小した像を少なくとも該像の長手方向又は短手方向に沿った第1方向に偏向可能である偏向投影系と、
前記偏向投影系による前記ビームの露光領域に対して前記ターゲットを前記第1方向に直交する第2方向に相対的に走査移動する移動機構と、
を備え、
前記変調装置は、前記長方形の開口の短手方向に前記ビームを偏向する偏向部材と、前記偏向部材で前記短手方向に偏向された前記ビームを遮蔽するビーム遮蔽部材とを備え、
前記偏向投影系は、前記移動機構による前記走査移動時に前記開口を縮小した像を前記第1方向に偏向することを特徴とする荷電粒子線露光装置。」(以下、「本願発明」という。)

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開昭60-080222号公報
引用文献2:特開平02-079411号公報
引用文献3:特開2001-284230号公報
引用文献4:特開平10-284377号公報
引用文献5:特表2006-505124号公報
引用文献6:国際公開第2009/147202号

(1)請求項1乃至7
引用文献1乃至3
引用文献1には、マルチ電子ビームで試料314を露光する装置において、矩形のアレイ部材(第1の成形板307等)と、変調器(マトリクスブランカ310)と、照射位置設定用偏向器312等と、電子レンズ306等と、ステージ315とを備えた装置に関する発明が記載されている(第3頁左上欄第8行乃至第4頁右上欄第13行等参照)。
また、引用文献1では、矩形ビーム形状が長手及び短手を有しているのか不明であるものの、電子レンズ305及び306で縮小されている(第3頁右上欄第12行等参照。)。
引用文献2の第1頁右欄第10行乃至第2頁左上欄第18行、及び、引用文献3の段落0020乃至0025等にも、同様の発明が記載されている。引用文献3記載の発明では、矩形は長方形である(段落0020等参照)。
引用文献3には、第1の電子光学系と第2の電子光学系を有する電子光学系アレイによって長方形に形成されたビームは、投影電子光学系504によって縮小投影されている(段落0025等参照)。
本願請求項1に係る発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、本願請求項1に係る発明は、ターゲットが、ビームを偏向する第1方向に直交する第2方向に相対的に走査移動するのに対して、引用文献1記載の発明は、ターゲットが、ビームを偏向する第1方向に直交する第2方向に相対的に走査移動するのか不明である点が相違する。
しかしながら、走査偏向する方向と異なる方向に走査移動する露光方法は、周知である(刊行物5及び6等参照)。
そして、走査方向を、走査偏向する方向に対して直交する方向にすることは、技術の具体化に伴う設計上の事項に過ぎない。
引用文献1記載の発明に上記周知技術及び設計事項を採用して、請求項1の如くすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
その他の請求項の如くすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)請求項8乃至16
引用文献1乃至3
引用文献4には、電子線露光装置等で使用可能な、周期パターンの一部を露光して、周期的パターンを部分的に除去するデバイス製造方法に関する発明が記載されている(段落0035乃至0038等参照)。
引用文献1乃至3記載の発明の装置を用いることに、格別な困難性はない。
その他の請求項の如くすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の出願前に頒布された引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「〔発明の実施例〕
以下、本発明の実施例を、電子ビームを使用するマルチ電子ビーム露光装置の場合について説明する。イオンビームを使用するマルチイオンビーム露光装置も同様の構成により可能である。第4図は本実施例マルチ電子ビーム露光装置の電子光学鏡筒を示す。第4図において、301は電子銃、302は陽極、303,304,305及び306は電子レンズ、307はマトリクス状に配置された複数のビーム成形用スリット孔を持つ第1の成形板、308は第1の成形板307のそれぞれのスリット孔に対応した複数のビーム成形用スリット孔を持つ第2の成形板、309は可変成形用偏向器、310は第1の成形板307の複数のスリット孔に対応した複数のブランカを持つマトリクスブランカ、311はブランキングアパーチャ、312及び313は主副2段の照射位置設定用偏向器、314は試料、315はステージである。
電子銃301からでた電子ビームは電子レンズ303により、第1の成形板307上を一様に照射する。第1の成形板307からブランキングアパーチャ311まてが電子ビームの発生機構である。第1の成形板307のスリット孔の像は第2の成形板308上に等倍に投影され、第2の成形板308のスリット孔により生じる像は試料314に到達するまでに、電子レンズ305及び306により1/100に縮小されて投影される。
第5図はマルチ電子ビームの発生機構を示す斜視図である。401は矩形ビーム、402及び403はマトリクスブランカ310中の個々のブランカ、404及び405は矩形ビームである。偏向器309は図に示す方向と垂直方向、即ち紙面に対して表裏方向にもう1組設置されているが、ここでは1組のみを示している。第1の成形板307及び第2の成形板308のスリット孔はいずれも100μm^(□)であり、スリット孔の間隔はいずれも1.00μmである。また、スリット孔はマトリクス状に5×5個配置されているが、ここではその一部のみを示している。可変成形用偏向器309を用いて、第1の成形板307のスリット孔の、第2の成形板308上への投影位置を変化させることにより、試料314上で最大寸法が1μm^(□)となる任意の大きさの矩形ビームを発生することかできる。この時、5×5本のビームのうち、必要なビームをマトリクスブランカ310で選択して照射する。例えば、ブランカ402のように、ビームをブランキングすると、矩形ビーム404はブランキングアパーチャ311で遮られ、試料314には到達しない。また、ブランカ403のように、ビームをブランキングしない場合には、矩形ビーム405はブランキングアパーチャ311で遮られることなく、試料314に到達する。
第6図は、本実施例のマルチ電子ビームによる試料314上での描画方法を説明するための図である。501は1μm^(□)パタン、502は1μm×0.5μmパタンである。501で代表される1μm^(□)パタンのみに着目すると、5×3個のパタンが配置されており、パタン間のX方向間隔は1μm、X方向間隔は3μmである。502で代表される1μm×0.5μmパタンのみに着目すると、4×5個のパタンが配置されており、パタン間のX方向間隔は1μm、X方向間隔は1.5μmである。
まず、試料314上で1μm^(□)パタンが照射できるように、可変成形用偏向器309を動作させる。次に、マトリクスブランカ310により、パタンに対応した5×3本の矩形ビームを試料314上に一斉に照射する。続いて、次の一斉照射位置が、前述の照射位置からX方向に1μm、X方向に0.5μm移動した位置となるように、照射位置設定用偏向器312を動作させる。次に、試料314上で1μm×0.5μmパタンが照射できるように、可変成形用偏向器309を動作させる。次に、マトリクスブランカ310でパタンに対応した4×5本の矩形ビームを試料3141に一斉に照射する。以上の2回の一斉照射により第6図に示したパタンの描画は全て終了する。
第6図のパタンを、1μm×0.5μmの固定成形ビーム1本で描画する場合には50回の照射が必要である。また、1本の可変成形ビームを用いても、35回の照射が必要である。一方、本実施例装置による場合は、前述のように、2回の照射で全パタンを描画することができる。このため、照射時間及び照射回数で決まる実描画時間、及びD/A変換器の整定時間等の偏向むだ時間を大幅に減少させることができ、描画効率は飛躍的に向上する。
第7図は本発明の別の実施例であり、ここでは、第2の成形板308及びマトリクスブランカ310の一部のみを示している。装置の全体構成は、第4図に示した構成と同じである。第5図実施例と異なる部分は、マトリクスブランカ310の内部の構成である。601は第2の成形板308の5×1個のスリット孔に対応して設置した組ブランカ、602はブランキングされた矩形ビーム、603はブランキングされていない矩形ビームである。マトリクスブランカ310は601に代表される組ブランカの5組より構成されている。即ち、第1の成形板307、第2の成形板308及び可変成形用偏向器309により成形された5×5本の矩形ビームを5×1本を組にして5組に分けてブランキングする。
マトリクスブランカ310はブランカが密集しているため、小型のブランカの製造及びその配線は容易でない。しかし、第7図実施例によれば、第5図実施例の場合に比較して、組ブランカの寸法を個々のブランカの寸法より大きくし、かつ配線数をへらすことができるという利点かある。しかも、複数の寸法可変の矩形ビームを一部に照射できるので、描画効率を向上できる。」(3頁左上欄8行乃至4頁右上欄13行)

(イ)上記(ア)で言及される図4、5及び7は、次のものである。


(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「電子銃、陽極、電子レンズ、マトリクス状に配置された複数のビーム成形用矩形スリット孔を持つ第1の成形板、前記第1の成形板のそれぞれのスリット孔に対応した複数のビーム成形用スリット孔を持つ第2の成形板、可変成形用偏向器、前記第1の成形板の複数の前記スリット孔に対応した複数のブランカを持つマトリクスブランカ、ブランキングアパーチャ、主副2段の照射位置設定用偏向器、試料及びステージからなるマルチ電子ビーム露光装置であって、
前記電子銃からでた前記電子ビームは電子レンズにより、前記第1の成形板上を一様に照射し、前記第1の成形板の前記スリット孔の像は前記第2の成形板上に等倍に投影され、前記第2の成形板の前記スリット孔により生じる像は前記試料に到達するまでに、前記電子レンズにより1/100に縮小されて投影され、
前記可変成形用偏向器を用いて、前記第1の成形板の前記スリット孔の、前記第2の成形板上への投影位置を変化させることにより、前記試料上で最大寸法が1μm^(□)となる任意の大きさの矩形ビームを発生することかでき、この時、5×5本のビームのうち、必要なビームを前記マトリクスブランカで選択して照射してビームをブランキングすると、前記矩形ビームは前記ブランキングアパーチャで遮られ、前記試料には到達しない、
マルチ電子ビーム露光装置。」

イ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の出願前に頒布された引用文献2には、以下の記載がある。
(ア)「(従来の技術)
集積回路素子等の製造におけるパターン描画方法として周知の荷電子ビーム露光法は、生産性が低いという欠点があったため、複数の荷電子ビームを用いて複数のチップを同時に描画し得るようにして、生産性を向上させたマルチ荷電子ビーム露光装置が従来提案されている。
第1図は、この提案に係るマルチ荷電子ビーム露光装置におけるマルチビーム発生機構を示すものであって、マトリックス状に配置された複数の矩形スリット孔を有する第1の成形板101と、同じく矩形スリット孔を有する第2の成形板102と、これら間に第1の成形板のスリット孔の像の第2の成形板上へ投影する位置を可変に偏向させる可変成形用偏向器103とを備えると共に、第2の成形板102から下方に位置する試料(図示せず)側に放射する複数のビームを選択的に通過、遮断するマトリックスブランカ105を設けたものである(例えば、特開昭60-80222号公報)。この従来の露光装置によれば、第1図の上方から入射する荷電子ビームを、第1と第2の成形板101,102と偏向器103とにより、複数の任意の大きさの矩形ビームとして所望の方向に偏向して発生するので、任意に配置したパターンの露光が可能である上に、マトリックスブランカ105により不要のビームをブランキングしく更にブランキングアパーチャ104により遮断し)、必要なビームのみを第1図の下方に位置する試料に到達させて試料上に露光し、描画のための照射回数を減少させ、スルーブツトを向上させている。」(1頁右欄10行ないし2頁左上欄18行)

(イ)上記(ア)で言及される第1図は、次のものである。


ウ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の出願前に頒布された引用文献3には、以下の記載がある。
(ア)「【0020】図6は、第2の実施例の電子光学系の配置とその電気結線を説明する図である。本例では電子光学系アレイを構成する各電極の開口の形状を矩形(一辺が他辺よりも長い長方形)であって、さらに電子光学系アレイを光軸にそって2つ配置した点が特徴である。すなわち、それぞれに矩形形状の開口が形成された上電極、中間電極および下電極を備えた第1の電子光学系と、それぞれに矩形形状の開口が形成された上電極、中間電極および下電極を備えた第2の電子光学系とが光軸に沿って配置された電子光学系であって、第1の電子光学系の開口の矩形の長辺方向と、第2電子光学系の開口の矩形の長辺方向とが、光軸方向から見てほぼ直交していることを特徴とする。
【0021】図6において、第1の電子光学系アレイ10の各電極に形成された開口は、電子ビームが入射する光軸方向をZ軸としたとき、短辺がX軸方向、長辺がY軸方向であるような矩形である。一方、第2の電子光学系アレイ11の各電極に形成された開口は、短辺がY軸方向、長辺がX軸方向であるような矩形である。
【0022】ここで、以下の説明で用いる表記法を図7に示す。同図(A)は第1の電子光学系アレイ10を、(B)は第2の電子光学系アレイ11をそれぞれ電子ビームの入射方向からみた平面図である。図中、二点鎖線はシールド4を、破線は中間電極2を示す。(C)は、(A)における全ての矩形開口をZ軸の回りに反時計回りにX軸を基準としてθ(0°<=θ<180°)だけ回転したものである。矩形の中間電極はX軸方向に沿って開口が配列されており、(C)で図示されたような矩形開口は「Xθ(θ=N°)」(N:0<=N<180)と表記する。一方、(D)は矩形の中間電極2の長辺(開口の配列方向)がY軸方向となっており、「Yθ(θ=N°)」(N:0<=N<180)と表記する。
【0023】この表記法によれば、図6の第1の電子光学系アレイ10は、「Xθ(θ=90°)」、第2の電子光学系アレイ11は「Xθ(θ=0°)」となる。Xθ(θ=90°)の電子レンズはX軸方向でのビーム収束性があり、Xθ(θ=0°)のマルチ電子レンズはY軸方向でのビーム収束性がある。例えば、断面が矩形開口よりも小さな円形のビームがXθ(θ=0°)レンズを通過すると、通過後のビームは図8で示すごとくY方向へのビーム収束した形状となる。よって、光軸に沿って2つの電子光学系アレイを離して配置し、収束方向が互いに直交するようにした本実施例によれば、これらの光学系を通過した電子ビームは、X方向及びY方向のいずれの方向にも収束する。例えば、電極の開口の寸法を80×200μm、中間電極の幅を500μm、開口ピッチを600μmとし、Xθ(θ=90°)の電子レンズとXθ(θ=0°)の電子レンズとを600μm離して配置したとする。そしてこれを図6に示すように電気的に結線して、第1、第2電子光学系アレイ10,11のそれぞれの中間電極の一方に電位の-1000[V]を与え、他方の中間電極に-950[V]を印加する。これに入射する電子ビーム(50kV、20μm径)が光学系を通過後のY軸方向のシフト角はほぼ零となり、クロストークが抑えられたマルチ電子レンズが実現できる。加えて開口形状を矩形として直交に組み合わせことで、X方向及びY方向のいずれにも収束性が得られる。なお本例においても、各電子光学系アレイは、図5と同様に中間電極の数を複数枚にすることができる。
【0024】図9は電子光学系のさらなる変形例を示す。これは上述の第2実施例で示したXθ(θ=90°)とXθ(θ=0°)の2つの光学系ユニットに、更にXθ(θ=45°)とXθ(θ=135°)の光学系ユニットを付加して、光軸に沿って計4つのユニットを配している。θ(θ=45°)レンズはθ=135°方向内で、Xθ(θ=135°)レンズは、θ=45°方向内でビーム収束作用を持ち、結局、回転対称の4方向からの収束作用を与えることになり、通常電子ビーム装置で使用される非点収差補正レンズと同様の作用となる。従って図8の12に示すようなビーム端部(各頂点)における広がりが抑えられ、より収束性の高い電子ビームとなる。なお本例においても、各電子光学系アレイは、図5と同様に中間電極の数を複数枚にすることができ、n枚(n>=3)の電極でレンズを構成してもよい。光学系ユニットの数は4つに限らず任意のN段(N>=とすることが可能であり、補正収差の許容値に応じて段数を決定すればよい。
【0025】<電子ビーム露光装置>次に、上記電子光学系アレイを用いたシステム例として、マルチビーム型の荷電粒子露光装置(電子ビーム露光装置)の実施例を説明する。図11は全体システムの概略図である。図中、荷電粒子源である電子銃501はカソード501a、グリッド501b、アノード501cから構成される。カソード501aから放射された電子はグリッド501b、アノード501cの間でクロスオーバ像を形成する(以下、このクロスオーバ像を電子源ESと記す)。この電子源ESから放射される電子ビームは、コンデンサーレンズである照射電子光学系502を介して補正電子光学系503に照射される。照射電子光学系502は、それそれが3枚の開口電極からなる電子レンズ(アインツェルレンズ)521,522で構成される。補正電子光学系503は電子源ESの中間像を複数形成するものであり、詳細は後述する。補正電子光学系503で形成された各中間像は投影電子光学系504によって縮小投影され、被露光面であるウエハ505上に電子源ES像を形成する。投影電子光学系504は、第1投影レンズ541(543)と第2投影レンズ542(544)とからなる対称磁気タブレットで構成される。506は補正電子光学系503の要素電子光学系アレイからの複数の電子ビームを偏向させて、複数の光源像を同時にウエハ505上でX,Y方向に変位させる偏向器である。507は偏向器506を作動させた際に発生する偏向収差による光源像のフォーカス位置のずれを補正するダイナミックフォーカスコイルであり、508は偏向により発生する偏向収差の非点収差を補正するダイナミックスティグコイルである。509はウエハ505を載置して、光軸AX(Z軸)方向とZ軸回りの回転方向に移動可能なθ-Zステージであって、その上にはステージの基準板510が固設されている。511はθ-Zステージを載置し、光軸AX(Z軸)と直交するXY方向に移動可能なXYステージである。512は電子ビームによって基準板510上のマークが照射された際に生じる反射電子を検出する反射電子検出器である。」

(イ)上記(ア)で言及される図6、7及び9は、次のものである。


エ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の出願前に頒布された引用文献4には、以下の記載がある。
(ア)「【0035】また、一方向のみならず、図5(a)に示すように交差する2方向に周期的なレチクルパターンの像を露光する場合にも本発明が適用できる。図5(a)は、X方向及びY方向に周期的なレチクルパターン40Rを示し、この図5(a)において、レチクルパターン40Rは、Y方向に細長い矩形の遮光パターン41AR,41BRを、Y方向に間隔dで配列してなる1列のパターンを、X方向に所定ピッチで5列配列したパターンである。また、2列目及び4列目のパターンは、他の列のパターンに対してY方向に半ピッチずれている。各遮光パターン41AR,41BRは、それぞれY方向に長い縦横比の異なるパターンである。
【0036】このレチクルパターン40Rの像を露光する場合には、レチクルパターン40Rを図5(b)に示す短手方向の形状を規定する第1パターン42と、図5(c)に示す長手方向の形状を規定する第2パターン44とに分解する。第1パターン42は、遮光パターン41AR,41BRと同じX方向の幅を有するY方向に細長い遮光パターン43Aを、X方向に所定ピッチで配列したパターンであり、遮光パターン43AのY方向の長さは、レチクルパターン40R中の対応する1列の遮光パターンの全長より長く設定されている。一方、第2パターン44は、遮光膜を背景として、レチクルパターン40Rの1列目の遮光パターン41AR,41BRの端部及び境界部にそれぞれY方向の長さeの開口パターン45A,45B,45Cを形成し、同様に他の列の遮光パターンの端部及び境界部にも同一の開口パターンを形成したものである。開口パターン45A,45B,45CのX方向の幅は、遮光パターン41AR,41BRの幅より広く、Y方向の長さeは、遮光パターン41AR,41BRの間隔dと同じに設定してある。」

(イ)上記(ア)で言及される図5は、次のものである。


オ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の出願前に頒布された引用文献5には、以下の記載がある。
(ア)「【0078】
すでに言及されたように、共に図6Aと図6Bに示されている機械走査方向Mと偏向走査方向Sという2つの走査方向がある。機械的な走査は、3つの方法で実行できる。即ち、ターゲット露光面が移動するか、システムの残りが移動するか、これの両方とも異なる方向に移動するかである。偏向走査は、機械走査に比較されて別の方向で実行される。これは、走査偏向長Δxが同じ偏向走査角度α_(sd)の場合、さらに大きくなるため、機械的な走査方向に垂直、あるいはほぼ垂直であるが好ましい。明確にするために、共に図6に図示されている2つの好ましい走査軌跡がある。第1の走査軌跡は三角形形状の走査軌跡(図6A)であり、第2の軌跡は鋸歯形状の走査軌跡(図6B)である。
【0079】
機械走査長がスループット制限要因であるとき、前述されたような電子ビーム露光装置のアセンブリは同時にウェハ全体を露光するために使用される。」

(イ)上記(ア)で言及される図6は、次のものである。


カ 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献6には、以下の記載がある(訳は特表2011-523786号公報に基づいて当審が作成した。)。
(ア)「[0048] FIG. 1 shows a simplified schematic drawing of an embodiment of a charged particle multi-beamlet lithography system based upon an electron beam optical system without a common cross-over of all the electron beamlets. Such lithography systems are described for example in U.S. Patent Nos. 6,897,458 and 6,958,804 and 7,019,908 and 7,084,414 and 7,129,502, U.S. patent application publication nos. 2007/0064213 and 2008/073588, and co- pending U.S. patent applications serial nos. 61/031,573 and 61/045,243 and 61/055,839, which are all assigned to the owner of the present invention and are all hereby incorporated by reference in their entirety. In the embodiment shown in FIG. 1 , the lithography system comprises an electron source 1 for producing a homogeneous, expanding electron beam 20. Beam energy is preferably maintained relatively low in the range of about 1 to 10 keV.
[0049] The electron beam 20 from the electron source 1 passes a collimator lens 3 to produce a collimated electron beam 21, which impinges on an aperture array 4, which blocks part of the beam and allows a plurality of beamlets 22 to pass through the aperture array 4. The system generates a large number of beamlets 22, e.g. about 10,000 to 1,000,000 beamlets.
[0050] The plurality of electron beamlets 22 pass through a condenser lens array 5 which focuses each of the electron beamlets 22 in the plane of a beamlet blanker array 6. This beamlet blanker array 6 comprises a plurality of blankers which are each capable of deflecting one or more of the electron beamlets 22.
[0051] Subsequently, the electron beamlets 22 enter the end module 7. The end module 7 is preferably constructed as an insertable, replaceable unit which comprises various components. In this embodiment, the end module comprises a beam stop array 8, a beam deflector array 9, and a projection lens arrangement 10. The end module 7 will, amongst other functions, provide a demagnification of about 25 to 500 times. Additionally, the end module may be arranged to deflect the beamlets 22. After leaving the end module 7, the beamlets 22 impinge on a surface of a target 11 positioned at a target plane. For lithography applications, the target usually comprises a wafer provided with a charged-particle sensitive layer or resist layer.
[0052] In the end module 7, the electron beamlets 22 first pass beam stop array 8. This beam stop array 8 largely determines the opening angle of the beamlets. In an embodiment, the apertures in beam stop array 8 are round, resulting in beamlets with a generally uniform opening angle.
[0053] The passages of the beam stop array 8 may be aligned with the elements of the beamlet blanker array 6. The beamlet blanker array 6 and beam stop array 8 then operate together to block or let pass the beamlets 22 in the following way. If beamlet blanker array 6 deflects a beamlet, it will not pass through the corresponding aperture in beam stop array 8. Instead, it will be blocked by the substrate of beam stop array 8. However, if beamlet blanker array 6 does not deflect a beamlet, it will pass through the corresponding aperture in beam stop array 8, and will then be projected as a spot on the surface of target 11. In this way the individual beamlets 22 may be effectively switched on and off.
[0054] Next, the beamlets 22 pass through a beam deflector array 9 which provides for deflection of each beamlet 22 in a direction substantially perpendicular to the direction of the undeflected beamlets 22. Next, the beamlets 22 pass through projection lens arrangement 10 and are projected onto a target 11 to be exposed, typically a wafer, located in a target plane.
[0055] FIG. 2 shows an embodiment of end module 7 in more detail, showing the beam stop array 8, the deflection array 9, and the projection lens arrangement 10, projecting an electron beamlet onto a target 11. The beamlets 22 are projected onto target 11, preferably resulting in a geometric spot size of about 10 to 30 nanometers in diameter. The projection lens arrangement 10 in such a design may provide a demagnification of about 100 to 500 times. In the embodiment of FIG. 2, a central part of a beamlet 22 first passes through beam stop array 8 (assuming it has not been deflected by beamlet blanker array 6). Then, the beamlet passes through a deflector or set of deflectors arranged in a sequence forming a deflection system, of beam deflector array 9. The beamlet 22 subsequently passes through an electro -optical system of projection lens arrangement 10 and finally impinges on a target 11 in the target plane.
[0056] The projection lens arrangement 10 in the embodiment of the end module shown in FIG. 2, has three plates 12, 13 and 14 arranged in sequence, used to form an array of electrostatic lenses. The plates 12, 13, and 14 preferably comprise plates or substrates with apertures formed in them. The apertures are preferably formed as round holes though the plate, although other shapes can also be used. In an embodiment, the plates are formed of silicon or other semiconductor processed using process steps well-known in the semiconductor chip industry. The apertures can be conveniently formed in the plates using lithography and etching techniques known in the art.」
([0048]図1は、電子ビームレットすべての共通クロスオーバーのない電子ビーム光学系に基づく荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステムの実施形態の簡易概略図を示している。そのようなリソグラフィシステムは、たとえば米国特許第6,897,458号と第6,958,804号と第7,019,908号と第7,084,414号と第7,129,502号と、米国特許出願公開2007/0064213号と2008/073588と、共同係属中米国特許出願シリアル番号61/031,573と61/045,243と61/055,839に説明されており、それらはすべて本発明の所有者に譲渡されており、参照によってすべてここにそのまま組み込まれる。図1に示された実施形態では、リソグラフィシステムは、一様拡大電子ビーム20を生成するための電子ソース1を備えている。ビームエネルギーは好ましくは、約1ないし10keVの範囲内に比較的低く維持される。
[0049]電子ソース1からの電子ビーム20は、平行にされた電子ビーム21を生成するために、コリメータレンズ3を通過する。それは開口アレイ4に入射し、開口アレイ4はビームの一部を遮断して、複数のビームレット22が開口アレイ4を通過することを可能にする。システムは、大きな数のビームレット22、たとえば約10,000ないし1,000,000ビームレットを生成する。
[0050]複数の電子ビームレット22は、ビームレットブランカーアレイ6の平面中に電子ビームレット22のおのおのを合焦させるコンデンサーレンズアレイ5を通過する。このビームレットブランカーアレイ6は、一つ以上の電子ビームレット22をそれぞれ偏向することが可能である複数のブランカーを備えている。
[0051]続いて、電子ビームレット22は端部モジュール7に入射する。端部モジュール7は好ましくは、さまざまなコンポーネントを備えている挿入可能・交換可能ユニットとして構成される。この実施形態では、端部モジュールは、ビームストップアレイ8とビーム偏向器アレイ9と投影レンズ設備10を備えている。端部モジュール7は、機能に加えて、約25ないし500倍の範囲内の縮小率を提供する。加えて、端部モジュールは、ビームレット22を偏向するように配列されていてもよい。端部モジュール7を抜けた後、ビームレット22は、ターゲット面に配置されているターゲット11の表面に入射する。リソグラフィ適用にとって、ターゲットは通常、荷電粒子感応層またはレジスト層が設けられたウェーハで構成される。
[0052]モジュール7中において、電子ビームレット22はまず、ビームストップアレイ8を通過する。このビームストップアレイ8は主として、ビームレットの開口角を決定する。ある実施形態では、ビームストップアレイ8の開口は円形であり、一般に均一な開口角度をビームレットにもたらす。
[0053]ビームストップアレイ8の通路は、ビームレットブランカーアレイ6の素子と整列されてもよい。ビームレットブランカーアレイ6とビームストップアレイ8はそれから、下記のように一緒に動作してビームレット22を遮断または通過させる。ビームレットブランカーアレイ6がビームレットを偏向すると、それはビームストップアレイ8中の対応開口を通過しない。代りに、それはビームストップアレイ8の基板によって遮断される。しかしながら、ビームレットブランカーアレイ6がビームレットを偏向しないならば、それはビームストップアレイ8中の対応開口を通過し、それからターゲット11の表面にスポットとして投影される。このように、個々のビームレット22のオン・オフが有効に切り替えられ得る。
[0054]次に、ビームレット22は、非偏向ビームレット22の方向に実質的に垂直である方向の各ビームレット21の偏向を提供するビーム偏向器アレイ9を通過する。次に、ビームレット22は投影レンズ設備10を通過し、ターゲット面に配置された一般にウェーハである露光されるべきターゲット11上に投影される。
[0055]図2は、端部モジュール7の実施形態をより詳細に示し、ビームストップアレイ8と偏向アレイ9と投影レンズ設備10を示し、ターゲット11に電子ビームレットを投影している。ビームレット22はターゲット11に投影され、好ましくは直径が約10ないし30ナノメートルの幾何学的スポットサイズをもたらす。そのような設計の投影レンズ設備10は、約100ないし500倍の縮小率を提供し得る。図2の実施形態では、ビームレット21の中央部はまず、(ビームレットブランカーアレイ6によって偏向されていないと仮定して)ビームストップアレイ8を通過する。それから、ビームレットは、ビーム偏向器アレイ9の一つの偏向器または偏向システムを形成する順序で配列された一組の偏向器を通過する。ビームレット21は、続いて投影レンズ設備10の電気光学システムを通過す、最後にターゲット面中のターゲット11に入射する。
[0056]投影レンズ設備10は、図2に示された端部モジュールの実施形態では、順に配列された三枚のプレート12と13と14を有し、静電レンズのアレイを形成するために使用される。プレート12と13と14は好ましくは、それらに開口が形成されたプレートまたは基板を備えている。開口は、好ましくはプレートを貫通する丸穴として形成されるけれども、他の形が使用されることも可能である。一実施形態では、プレートは、半導体チップ産業でよく知られているプロセスステップを使用して処理されたシリコンまたは他の半導体で作られる。開口は、この分野で知られているリソグラフィおよびエッチング技術を使用してプレート中に便利に形成され得る。)

(イ)「[0087] As schematically shown in FIGS. 4 and 5, a control unit 18 is arranged to actuate movement of a substrate support member or stage 16 arranged for supporting the target 11 to be exposed, e.g. a wafer. This movement is referred to variously in this description as a movement in a first direction or the X-direction or the mechanical scan direction. The movement in the X-direction can be achieved in a variety of ways: the target moves by mechanical movement of the substrate support member, the rest of the system moves, the beamlets are deflected, or any combination of the above techniques. 」
([0087]図4と5に概略的に示されるように、コントロールユニット18は、露光されるべきターゲット11たとえばウェーハを支持するために準備された基板支持部材またはステージ16の移動を動作するように準備されている。この移動は、この説明の中では、第一の方向またはX方向または機械的走査方向の移動とさまざまに呼ばれる。X方向の移動は、さまざまな手法、ターゲットが基板支持部材の機械的移動によって移動する、システムの残りが移動する、ビームレットが偏向される、または上記の技術の任意の組み合わせで達成され得る。)

(ウ)「[0099] In order to expose the target with an exposure pattern, the pattern data may be rasterized corresponding to a virtual grid on the surface of the target. In a typical arrangement, the target is moved while the beamlets are scanned in a direction substantially perpendicular to the stage motion. The rasterized pattern data is supplied to the multi-beamlet system, timed so that the beamlets are modulated in synchronism with the beamlet deflection and target motion, so that the pattern represented by the pattern data is transposed as an exposure pattern onto the surface of the target. Although the virtual grid is typically a Cartesian grid, other types of grid are also possible.」
([0099]ターゲットを露光パターンで露光するために、パターンデータは、ターゲットの表面上の仮想グリッドに対応してラスター化され得る。一般的な設備では、ビームレットがステージ移動に実質的に垂直な方向に走査されながら、ターゲットが移動される。ラスター化パターンデータは、ビームレット偏向とターゲット移動と同期してビームレットが変調されるように時間調節されて、マルチビームレットシステムに供給され、その結果、パターンデータによって表わされるパターンは、ターゲットの表面上に露光パターンとして転写される。仮想グリッドは一般にデカルトのグリッドであるけれども、他のタイプのグリッドも可能である。)

(エ)図1及び2は次のものである。


(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
「荷電粒子線でターゲットを露光する荷電粒子線露光装置であって、
前記荷電粒子線からなる複数のビームを発生するビーム発生系と、
前記ビームがそれぞれ照射される複数の開口が形成されたアレイ部材と、
前記複数の開口から選択された開口を通過する前記ビームを前記ターゲットに導く変調装置と、
前記変調装置で選択された前記開口を通過した前記ビームによって前記開口を縮小した像を形成するとともに、前記開口を縮小した像を偏向可能である偏向投影系と、
を備え、
前記変調装置は、前記ビームを偏向する偏向部材と、前記偏向部材で偏向された前記ビームを遮蔽するビーム遮蔽部材とを備える、
荷電粒子線露光装置。」
の点で一致している。
他方、本願発明と引用発明1は、下記各点で相違する。

ア 本願発明の「アレイ部材」に形成された「開口」は、複数の「長方形の」開口が「互いに長手方向が平行になるように」形成されたものであって、「偏向投影系」は「長方形の」像を形成するとともに、前記開口を縮小した像を「少なくとも該像の長手方向又は短手方向に沿った第1方向に」偏向可能であり、「偏向部材」は「長方形の開口の短手方向に」前記ビームを偏向し、そして、「ビーム遮蔽部材」は「短手方向に」偏向された前記ビームを遮蔽するのに対して、引用発明1は、第1の成形板の「矩形スリット孔」は、このようなものとは特定されず、可変成形用偏向器、マトリクスブランカ、ブランキングアパーチャのいずれにおいても、「長方形」、「長手方向」ないし「短手方向」に係る特定がなされない点(以下、「相違点1」という。)。

イ 本願発明は「前記偏向投影系による前記ビームの露光領域に対して前記ターゲットを前記第1方向に直交する第2方向に相対的に走査移動する」「移動機構」を備え、「偏向投影系」は、「前記移動機構による前記走査移動時に前記開口を縮小した像を前記第1方向に偏向する」のに対して、引用発明1は、「移動機構」を備えると特定されず、そのため、「可変成形用偏向器」が、「移動機構」の走査移動時に特定の方向に偏向するとも特定されない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1において、「第1の成形板」の「矩形スリット孔」の形状を「矩形」とする技術的意義は、引用文献1全体を通してみても明らかではない。
したがって、「長方形の」スリット孔が引用文献2、3に見られるように周知のものであったとしても、引用発明1の「第1の成形板」の「矩形スリット孔」を長方形のスリット孔として複数の「長方形の」スリット孔が「互いに長手方向が平行になるように」形成した上で、可変成形用偏向器、マトリクスブランカ、ブランキングアパーチャの全てにおいて、「長方形」、「長手方向」ないし「短手方向」に係る特定をなす動機付けがなく、本願発明は、「長方形の電極膜48,50が開口31の長手方向の辺に沿って配置されており、電極膜48,50の間隔を最も狭くできるため、電極膜50に比較的低い電圧を印加するのみで開口31を通過する小ビーム36をオフにでき」(本願明細書 段落【0040】)、「電極膜50に印加する電圧の変化は比較的小さいため、開口31の近傍のフォトダイード60を小型化しても、小ビーム36のオン/オフを高速に切り替えることができる」(本願明細書 段落【0041】)との効果を奏するものであるから、上記相違点1の構成となすことが容易に想到し得たということはできない。
また、引用文献4ないし6をみても、引用発明1において、「第1の成形板」の「矩形スリット孔」の形状を「矩形」とした上で、可変成形用偏向器、マトリクスブランカ、ブランキングアパーチャの全てにおいて、「長方形」、「長手方向」ないし「短手方向」に係る特定をなすことが容易に想到し得たことであることを示す記載は見当たらない。

(4)小括
したがって、本願発明は、相違点2について検討するまでもなく、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし6の記載に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明と同様の構成を方法発明としたものである請求項13に係る発明も同様であって、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし6の記載に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願の請求項2ないし12及び14ないし16に係る発明は、本願発明または請求項13に係る発明をさらに限定したものであるので、本願発明及び請求項13に係る発明と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし6の記載に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
[理由1]
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・引用文献 国際公開第2009/147202号(参考 特表2011-523786号公報)

[理由2]
本件出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(1)本願発明1ないし16は、いずれも、「荷電粒子線」を用いた構成のみを発明特定事項とし、「紫外光露光装置」に係る構成を特定していないため、「露光時間(描画時間)が長くなり、スループット(単位時間当たりのウエハの処理枚数)が低下する」「電子ビーム露光装置を用いて、その非周期的な部分を含むパターンの全部の露光を行うもの」を含むから、上記2でいうところの本願発明の課題を解決できず、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。

(2)本願発明1(本願発明13も同様)における「偏向投影系」が、「開口を縮小した像を少なくとも該像の長手方向又は短手方向に沿った第1方向に偏向可能である」点及び「前記移動機構による前記走査移動時に前記開口を縮小した像を前記第1方向に偏向する」点は誤記であると認められる。

2 当審拒絶理由の判断
(1)[理由1]について
ア 引用文献6の記載事項
(ア)引用文献6の記載事項は、上記「第3」「2」「(1)」「カ」に示したとおりである。

(イ)引用発明
上記イによれば、引用文献6には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「電子ソース1からの電子ビーム20は、コリメータレンズ3を通過して平行にされた電子ビーム21となって開口アレイ4に入射し、前記開口アレイ4はビームの一部を遮断して、複数のビームレット22が開口アレイ4を通過することを可能とし、
前記複数の電子ビームレット22は、ビームレットブランカーアレイ6の平面に電子ビームレット22の各々を合焦させるコンデンサーレンズアレイ5を通過し、前記ビームレットブランカーアレイ6は、一つ以上の電子ビームレット22をそれぞれ偏向することが可能である複数のブランカーを備え、
前記電子ビームレット22は端部モジュール7に入射し、
前記端部モジュール7は、ビームストップアレイ8とビーム偏向器アレイ9と投影レンズ設備10を備え、約25ないし500倍の範囲内の縮小率を提供し、ビームレット22を偏向するように配列され、
前記端部モジュール7を抜けた後、ビームレット22は、ターゲット面に配置されているターゲット11の表面に入射し、
前記ビームレットブランカーアレイ6がビームレット22を偏向すると、ビームストップアレイ8中の対応開口を通過せず、ビームストップアレイ8の基板によって遮断され、前記ビームレットブランカーアレイ6がビームレット22を偏向しない場合は、ビームストップアレイ8中の対応開口を通過し、ターゲット11の表面にスポットとして投影されることにより、個々のビームレット22のオン・オフが有効に切り替えられ、
前記ビームレット22は、非偏向ビームレット22の方向に垂直である方向の各ビームレット22の偏向を提供するビーム偏向器アレイ9を通過し、投影レンズ設備10を通過し、ターゲット面に配置されたウェーハである露光されるべきターゲット11上に投影され、
前記開口は、プレートを貫通する丸穴として形成されるが、他の形が使用されることも可能である、
荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステム。」

イ 対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、両者は
「荷電粒子線でターゲットを露光する荷電粒子線露光装置であって、
前記荷電粒子線からなる複数のビームを発生するビーム発生系と、
前記ビームがそれぞれ照射される複数の開口が形成されたアレイ部材と、
前記複数の開口から選択された開口を通過する前記ビームを前記ターゲットに導く変調装置と、
前記変調装置で選択された前記開口を通過した前記ビームによって前記開口を縮小した像を形成するとともに、前記開口を縮小した像を偏向可能である偏向投影系と、を備え、
前記変調装置は、前記ビームを偏向する偏向部材と、前記偏向部材で偏向された前記ビームを遮蔽するビーム遮蔽部材とを備える、
荷電粒子線露光装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ア)本願発明の「開口」は、「長方形」であって「互いに長手方向が平行になるように」形成され、縮小した「長方形の」像を形成するのに対して、引用発明2の「開口」は、「プレートを貫通する丸穴として形成されるが、他の形が使用されることも可能である」点(以下、「相違点3」という。)。

(イ)本願発明は、
a 「ターゲット」は、「移動機構」により、「前記偏向投影系による前記ビームの露光領域に対して前記ターゲットを前記第1方向に直交する第2方向に相対的に走査移動する」ものであって、
b 「偏向投影系」は、「少なくとも該像の長手方向又は短手方向に沿った第1方向に」偏向可能で、「前記移動機構による前記走査移動時に前記開口を縮小した像を前記第1方向に偏向」し、
c 「偏向部材」は、長方形の開口の「短手方向に」ビームを偏向し、そして、
d 「ビーム遮蔽部材」は、前記偏向部材で「短手方向に」偏向されたビームを遮蔽する
のに対して、
引用発明2は、
a´ 「ターゲット11」は、このような機構を備えると特定されず、
b´ 「端部モジュール7」は、どの方向にどのようなタイミングで偏向するか特定されず、
c´ 「ブランカー」は、ビームレット22を偏向する方向が特定されず、そして、
d´ 「ビームストップアレイ8の基板」は、特定の方向に偏向された「ビームレット22」を遮断するとは特定されない
点(以下、「相違点4」という。)。

ウ 判断
まず、上記相違点3について検討する。
引用発明2の「開口」は、「プレートを貫通する丸穴として形成されるが、他の形が使用されることも可能であ」るとされる
また、「長方形の」スリット孔は引用文献2、3に見られるように周知のものであったといえる。
しかしながら、引用発明2の「開口」を長方形とし、複数の「長方形の」開口が「互いに長手方向が平行になるように」形成した上で、「ターゲット11」、「端部モジュール7」、「ブランカー」及び「ビームストップアレイ8の基板」に係る特定をなす動機付けがなく、本願発明は、「長方形の電極膜48,50が開口31の長手方向の辺に沿って配置されており、電極膜48,50の間隔を最も狭くできるため、電極膜50に比較的低い電圧を印加するのみで開口31を通過する小ビーム36をオフにでき」(本願明細書 段落【0040】)、「電極膜50に印加する電圧の変化は比較的小さいため、開口31の近傍のフォトダイード60を小型化しても、小ビーム36のオン/オフを高速に切り替えることができる」(本願明細書 段落【0041】)との効果を奏するものであるから、上記相違点3の構成となすことが容易に想到し得たということはできない。

エ 小括
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたもの([理由1])とはいえなくなった。
本願発明と同様の構成を方法発明としたものである請求項13に係る発明も同様であって、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。
本願の請求項2ないし12及び14ないし16に係る発明は、本願発明または請求項13に係る発明をさらに限定したものであるので、本願発明及び請求項13に係る発明と同様に、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。

(2)[理由2]について
ア 上記「1」[理由2]「(1)」の理由について
平成28年4月18日付け意見書によって、「従来の多数の電子ビームの円形スポットを偏向しながらオン/オフする電子ビーム露光装置を用いて、その非周期的な部分を含むパターンの全部の露光を行うものとすると、露光時間(描画時間)が長くなり、スループット(単位時間当たりのウエハの処理枚数)が低下する。』(【0007】)、つまり、「従来の多数の電子ビームの円形スポットを偏向しながらオン/オフする電子ビーム露光装置よりも効率的に露光を行うこと」を本願発明の解決すべき課題として、本願発明では、開口を長方形としてパターンを露光することにより、従来の多数の電子ビームの円形スポットを偏向しながらオン/オフする電子ビーム露光装置に対してスループットを向上できるものであることが明確となった。

イ 上記「1」[理由2]「(2)」の理由について
平成28年4月18日付け意見書によって、当初明細書等には、「小ビーム36を個別にX方向及びY方向に所定範囲内で偏向可能な多数の静電偏向器よりなるビーム偏向器アレイ34」(【0019】)との記載があり、本願発明の「偏向投影系」が、「X方向」(第1方向)、「Y方向」(第2方向)、「X方向及びY方向」(第1方向及び第2方向)」のいずれにもビームを偏向可能であることは、本願の発明の詳細な説明に記載されているものであることが明確となった。
よって、当審拒絶理由の[理由2]は解消した。

(3)そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-26 
出願番号 特願2010-133435(P2010-133435)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐野 浩樹久保田 創  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 松川 直樹
土屋 知久
発明の名称 荷電粒子線露光装置及びデバイス製造方法  
代理人 大森 聡  
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