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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1317337
審判番号 不服2016-778  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-18 
確定日 2016-08-09 
事件の表示 特願2012- 22461「携帯端末、携帯端末の制御プログラム、及び携帯端末を含む表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月19日出願公開、特開2013-161246、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月3日の出願であって、平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月17日付けで手続補正がされ、平成27年10月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-18に係る発明は、平成27年9月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「自機の位置を特定する位置特定部と、
自機の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記位置特定部及び前記姿勢特定部により特定された位置及び姿勢に基づいて検出されたデータ処理装置であって、自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在するデータ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフロー情報を、前記特定された位置および姿勢を用いて、前記存在するデータ処理装置が前記データ処理の始点または終点となる態様で表示する表示部と、を有する携帯端末。」

第3 原査定の理由の概要
(1)平成27年7月10日付け拒絶理由通知
『2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・・・(省略)・・・

・請求項 1
・引用文献等 1-2
・備考

・・・(省略)・・・

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2012/0019858号明細書
2.特開2001-257827号公報
3.特開2009-226081号公報(周知技術を示す文献)』

(2)平成27年10月9日付け拒絶査定
『この出願については、平成27年 7月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項 1-18
・引用文献等 1-3
先に通知した引用文献1には、以下の発明が記載されている(特に、段落[0105]、[0108]請求項1を参照されたい。)。

「携帯装置(hand-held device)であって、
表示部(display section)と、
前記携帯装置の位置を特定する位置特定部(position identifying section)と、
前記携帯装置の方向を特定する方向特定部(orientation identifying section)と、
予め記憶した1つ又は複数の画像形成装置(image forming apparatus)の位置情報に基づいて、前記携帯装置から所定の距離内にあり、かつ、前記携帯装置の特定の方向にある所定の画像形成装置を特定し、そして、前記所定の画像形成装置の状態を示す状態情報を取得し、前記表示部に前記状態情報を表示する制御部(control section)と、
を備えた携帯装置。」

平成27年9月17日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、引用文献1に記載の発明とを対比する。

・・・(省略)・・・

したがって、両者は次の点で一致する。
「自機の位置を特定する位置特定部と、
自機の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記位置特定部及び前記姿勢特定部により特定された位置及び姿勢に基づいて検出されたデータ処理装置であって、自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在するデータ処理装置に関する情報を、前記特定された位置及び姿勢を用いて表示する表示部と、
を有する携帯端末。」

一方、両者は以下の点で相違する。
本願発明の「表示部」は、「自機から見た特定の方向に存在するデータ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフロー情報を、前記存在するデータ処理装置が前記データ処理の始点または終点となる態様で表示する」構成であるのに対し、引用文献1に記載の発明の「表示部」は、そのような構成でない点。

上記相違点について検討する。
先に通知した引用文献2には以下の発明が記載されている。
「ネットワークに接続された画像の入力および出力および中継等を行なう複数の画像入出力制御装置の各装置が装置制御に係る装置情報をネットワーク経由でアナウンスし、
前記各装置の複数を組み合わせる転送経路を記述する情報と前記経路を構成する各装置間の転送制御の特性を記述する情報とを一意に識別する情報を少なくとも含む転送経路情報をあらかじめ生成蓄積管理し、
前記転送経路を構成する各装置の少なくともいずれかひとつが前記転送経路情報を検索取得してこれを利用することで、前記入力装置から前記出力装置に至る画像データ転送を伴う前記各装置間に跨った分散協調型の画像入出力処理を行なう画像入出力システムにおける画像入出力制御装置であって、
前記画像入出力制御装置をその転送経路に含むような前記転送経路情報をサーバから検索して受信する転送経路情報検索手段と、
ユーザが検索した前記転送経路情報から所望の転送経路を選択しその転送経路による文書処理を起動するための操作手段と、
前記選択した転送経路情報が参照する入力装置を制御して画像データの受信を行なう画像データ受信手段と、
前記選択した転送経路情報が参照する出力装置を制御して前記受信した画像データの送信を行なう画像データ送信手段と、
少なくとも前記画像データ受信手段が他の装置を能動的に制御する能力を有することと前記画像データ送信手段が他の装置を能動的に制御する能力を有することとを含む装置情報をネットワーク経由で通知する装置情報通知手段とを備え、
前記入力装置と前記出力装置間のデータ転送の中継を行なうことを特徴とする画像入出力制御装置。」([請求項1])

引用文献2に記載の発明が、「各装置の複数を組み合わせる転送経路を記述する情報と前記経路を構成する各装置間の転送制御の特性を記述する情報とを一意に識別する情報を少なくとも含む転送経路情報」を生成する際に、一つの入力装置と複数の出力装置を組み合わせて、複数の転送経路が選択可能な場合について、引用文献2には、「出力可能な出力装置が複数存在する場合には、ユーザはグラフィカルユーザインタフェースによって、入力デバイスと出力デバイスとを連結して、入力装置と出力装置の組を特定する」(段落[0117]-[0119])ことの記載がある。特に、「出力可能な出力装置が複数存在する場合」の入力装置と出力装置との組の特定に用いる「グラフィカルユーザインタフェース」について、「入力装置と出力装置とを連結する矢印付きの線分を表示する」技術が記載されている(段落[0134]及び図13)。ここで、データが始点である「入力装置」から、終点である「出力装置」へ流れること、並びに当該「入力装置」及び「出力装置」がデータ処理装置であることは明らかであるから、当該「入力装置と出力装置とを連結する矢印付きの線分」は、「始点であるデータ処理装置から、終点である他のデータ処理装置へのデータの流れ」を表すといえ、また、当該「矢印付きの線分」は、「入力装置」と「出力可能な出力装置」とを連結するものであるから、「データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れ」を表すともいえる。

引用文献1に記載の発明の「画像形成装置」は、「コピー機能、プリント機能及びスキャン機能を含む」(段落[0003])ことが記載されているから、当該「画像形成装置」は、「入力装置」又は「出力装置」となり得る。ここで、引用文献1に記載の画像形成装置と引用文献2に記載の画像入出力制御装置とは、共に、画像データの入出力を行う装置という同じ技術分野に属するから、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせることは、当業者が容易になし得たことである。

また、引用文献1に記載の発明が「携帯装置から所定の距離内にあり、かつ、前記携帯装置の特定の方向にある所定の画像形成装置を特定し、前記所定の画像形成装置の状態を示す状態情報を取得し、前記状態情報を、位置特定部及び方向特定部により特定された位置及び方向を用いて表示する」ことは、「自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在するデータ処理装置に関する何らかの情報を、前記特定された位置及び姿勢を用いて表示する」という技術的思想に基づくことであるから、引用文献1に記載の発明において表示する情報を「状態情報」に代えて「他の情報」とすること、特に、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせて、「画像形成装置(入力装置)と他の画像形成装置(出力装置)とを連結する矢印付きの線分」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、引用文献1に記載の発明と、引用文献2に記載の発明とを組み合わせて、引用文献1に記載の発明の「表示部」に表示する情報を「画像形成装置(入力装置)と他の画像形成装置(出力装置)とを連結する矢印付きの線分」として、引用文献1に記載の発明を「画像形成装置(データ処理装置)が、他の画像形成装置(データ処理装置)との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを表示する」構成、及び当該「データの流れ」を「自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在する画像形成装置(データ処理装置)が前記データ処理の始点または終点となる態様で表示する」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・・・(省略)・・・

よって、請求項1から18に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明、並びに引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2012/0019858号明細書
2.特開2001-257827号公報
3.特開2009-226081号公報(周知技術を示す文献)』

第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2012/0019858号明細書(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに次の技術事項が記載されている(下線は当審により付した)。

「[0008]In view of the problems described above, one of the major objects of the present invention is to provide a hand-held device and apparatus management method for intuitively understandable statuses of a managed apparatus such as an image forming apparatus.」
(訳)「本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、画像形成装置などの被管理装置の状態を直感的に把握することができる携帯端末及び装置管理方法を提供することにある。」

「[0010]To achieve at least one of the aforementioned objects, a hand-held device reflecting one aspect of the present invention includes a display section; a position identifying section for identifying a position of the hand-held device; an orientation identifying section for identifying an orientation of the hand-held device; and a control section which specifies a prescribed managed apparatus located within a prescribed range of distance from the hand-held device and in a specific direction of the hand-held device, based on information stored in advance on positions of one or a plurality of managed apparatuses, and which acquires status information indicating a status of the prescribed managed apparatus to display the status information on the display section.」
(訳)「上記目的を達成するため、本発明は、表示部を備える携帯端末であって、自機の位置を特定する位置特定部と、自機の姿勢を特定する姿勢特定部と、予め記憶した1又は複数の被管理装置の位置情報に基づいて、自機から所定の距離内、かつ、自機から見た特定の方向に存在する所定の被管理装置を特定し、当該所定の被管理装置の状態を示すステータス情報を取得して前記表示部に表示させる制御部と、を備えるものである。」

「[0065]The hand-held device 30 uses the position identifying section 36 and orientation identifying section 37 to identify the position and orientation of the hand-held device. The hand-held device 30 further specifies the image forming apparatus 40 located around the hand-held device 30 in the specific direction therefrom, out of the image forming apparatuses 40 on the surrounding MFP list, and obtains the status information of that image forming apparatus 40 from the AR server 20 . In this example, the surrounding MFP list is acquired from the AR server 20 , and the image forming apparatus 40 located around the hand-held device and in the specific direction is specified from the list. However, it is also possible to adopt such a structure that position information and orientation information of the hand-held device are sent to the AR server 20 , and the AR server 20 specifies the image forming apparatus 40 located around the hand-held device 30 in the specific direction, whereby the status information of that image forming apparatus 40 is then sent. In this example, after the surrounding MFP list has been acquired, the position identifying section 36 is again used to identify the position of the hand-held device. When the position of the hand-held device 30 is not changed (when only the orientation is changed), only the orientation of the hand-held device may be identified by using the orientation identifying section 37 .」
(訳)「携帯端末30は、位置特定部36及び方向特定部37を用いて自端末の位置及び方向を特定し、周辺MFPリストの画像形成装置40の内、携帯端末30の周囲かつ特定の方向に存在する画像形成装置40を特定し、その画像形成装置40のステータス情報をARサーバ20から取得する。なお、ここでは、ARサーバ20から周辺MFPリストを取得し、その中から自端末の周囲かつ特定の方向に存在する画像形成装置40を特定する構成とするが、ARサーバ20に自端末の位置情報及び方向情報を送信し、ARサーバ20が携帯端末30の周囲かつ特定の方向に存在する画像形成装置40を特定し、その画像形成装置40のステータス情報を送信してもよい。また、ここでは周辺MFPリストを取得した後に、再度、位置特定部36を用いて自端末の位置を特定しているが、携帯端末30の位置を動かさない(方向のみを回転させる)場合は、方向特定部37を用いて自端末の方向のみを特定すればよい。」

「[0066]When the status information of the image forming apparatus 40 has been acquired from the AR server 20 , the apparatus management section 31 b makes the display section 34 display the acquired status information. If the relevant image forming apparatus 40 has deviated from the specific direction due to a change in the orientation of the hand-held device 30 , the display of the status information turns off. If a new image forming apparatus 40 has been moved into the specific direction, the status information of the new image forming apparatus 40 is displayed. This procedure is repeated. To be more specific, when the hand-held device 30 has been turned 360 degrees, the status information of the image forming apparatuses 40 located in the specific direction is displayed in turn.」
(訳)「そして、ARサーバ20から画像形成装置40のステータス情報を取得すると、装置管理部31bは、取得したステータス情報を表示部34に表示させる。そして、携帯端末30の方向が変化して、その画像形成装置40が特定の方向から外れたらステータス情報の表示を消去し、新たな画像形成装置40が特定の方向に入ったら、その画像形成装置40のステータス情報を表示する動作を繰り返す。すなわち、携帯端末30を360度回転させると、特定の方向に存在する画像形成装置40のステータス情報が順次表示されることになる。」

以上の記載(特に、下線部)を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「自機の位置を特定する位置特定部と、
自機の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記位置特定部及び前記姿勢特定部により特定された位置及び姿勢に基づいて検出された画像形成装置であって、自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在する画像形成装置の状態を示すステータス情報を、前記特定された位置および姿勢を用いて表示する表示部と、を有する携帯端末。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-257827号公報(以下、「引用文献2」という)には、図面とともに次の技術事項が記載されている(下線は当審により付した)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばネットワークを介して接続される入力装置及び出力装置等によって構成される画像入出力システム及び画像入出力制御装置とそれらの制御方法に関するものである。」

「【0008】本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の目的は、機器の特性の不整合によって単純に接続することのできない入出力装置を組み合わせ、ネットワークに接続された入出力装置群からより多くの仮想的な入出力装置を簡便に構成するマルチファンクションシステム及びその制御方法を提供することにある。」

「【0113】図11は、ホストコンピュータ400のCPU401によって実行され、本発明における入力装置および出力装置の機器情報に従って入出力装置間の転送方式を決定し仮想入出力装置を生成する場合の処理を示すフローチャートである。なお、S1101?S1113は各ステップを示す。また、各制御手順は、ROM403に記憶されている。
【0114】S1101で入力装置のデバイスプロファイルを取得する取得命令を送信し、S1102で一定期間応答があるのを待機する。ネットワークシステム全体が正常に機能していれば通常、サーバコンピュータ500がデータベース中に格納している情報から要求のプロファイルデータを検索し応答を返す。
【0115】応答を検知した場合には、S1103で応答のあったデバイスプロファイルが複数存在するかを判断する。デバイスプロファイルが複数存在する場合には、S1104でユーザから任意のデバイスプロファイルの選択を促す処理を行ない、選択されたデバイスプロファイル情報をRAM402等に一時記憶しておく。次にS1105で出力装置のデバイスプロファイルを取得する取得命令を送信する。ここで出力装置には代理装置も含む。
【0116】S1106で一定期間応答があるのを待機し、応答を検知した場合には、S1107に進む。
【0117】S1107では、S1104で選択された入力装置のデバイスプロファイルの定義内容に応じて、入力装置から出力処理可能な出力装置のデバイスプロファイルを検索する。S1107の検索処理は図12に示す処理である。
【0118】そしてS1108で出力可能な出力装置が存在した否かを判定し、存在した場合には、さらにS1109で複数台合致する出力装置が存在するかを判定する。
【0119】複数存在する場合には、S1110で複数の出力デバイスプロファイルからなる組の選択をユーザに促す。ユーザは、CRT410上に表示される図13で示すようなグラフィカルユーザインタフェース(GUI)によって、入力デバイスと出力デバイスを連結して、入力装置と出力装置の組を特定する。」

「【0132】図13はCRT410上に表示されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)であり、入力デバイスと1台以上の出力デバイスを連結して、この結果1つの仮想的な入出力装置を定義する。
【0133】図に示すウィンドウの部分bは、図11のS1109で検出された複数台の出力装置を列挙している。
【0134】ユーザが出力装置を示すアイコンの中から所望の1つ(lp5-2)をカーソルcによって選択して部分aまでドラグし配置する。すると、部分a内に表示されている入力装置を示すアイコン(scan5)と連結する矢印付きの線分が自動的に表示される。
【0135】ユーザは以上の処理を所望の出力装置をすべて配置し終えるまで繰り返し、完了するとウィンドウ下部のOKボタンにカーソルを合わせマウスクリックする。この時点で部分a内に構成されている入力装置から1台以上の出力装置への有向グラフが論理的に生成され、これらの組合せが仮想的な入出力装置を構成する。
【0136】ここに含まれる出力装置に対応するデバイスプロファイルの組が図11のS1110の選択結果となる。」

2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「画像形成装置」は、本願発明の「データ処理装置」に相当するものであり、引用発明の「画像形成装置の状態を示すステータス情報」と、本願発明の「データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフローの情報」とは、何れも、「データ処理装置の情報」といえる点では共通する。
よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
自機の位置を特定する位置特定部と、
自機の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記位置特定部及び前記姿勢特定部により特定された位置及び姿勢に基づいて検出されたデータ処理装置であって、自機から所定の距離内に存在し、かつ、自機から見た特定の方向に存在するデータ処理装置の情報を、前記特定された位置および姿勢を用いて表示する表示部と、を有する携帯端末。

[相違点]
相違点1
表示部が表示するデータ処理装置の情報が、本願発明では、「データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフローの情報」であるのに対し、引用発明では、画像形成装置の状態を示すステータス情報である点。

相違点2
表示部が表示する態様が、本願発明では、「前記存在するデータ処理装置が前記データ処理の始点または終点となる態様」であるのに対し、引用発明では、そのような態様ではない点。

3.判断
上記相違点1について検討する。

引用発明は、画像形成装置の状態を直感的に把握することができる携帯端末を提供することを目的として([0008])、画像形成装置の状態を示すステータス情報を表示部に表示するものである。
一方、原査定で引用された引用文献2には、上記下線部、【図11】、【図13】を参照すると、選択された入力装置のデバイスプロファイルの定義内容に応じて、入力装置から出力処理可能な出力装置のデバイスプロファイルを検索し、そのような出力装置が複数存在する場合には、図11のウィンドウの部分bに検出された複数台の出力装置を列挙し、ユーザが出力装置を示すアイコンの中から所望の1つをカーソルcによって選択して部分aまでドラグし配置すると、部分a内に表示されている入力装置を示すアイコンと連結する矢印付きの線分が自動的に表示され、ユーザは以上の処理を所望の出力装置をすべて配置し終えるまで繰り返し、完了するとウィンドウ下部のOKボタンにカーソルを合わせマウスクリックすると、この時点で部分a内に構成されている入力装置から1台以上の出力装置への有向グラフが論理的に生成され、これらの組合せが仮想的な入出力装置を構成する画像入出力制御システムが記載されている。
引用文献2に記載された技術は、仮想的な入出力装置を簡便に構成することを目的とするものであり、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用する直接の動機付けは見当たらない。

また、引用発明は、画像形成装置の状態を示すステータス情報を表示するものであるが、ここでいう画像形成装置の状態とは、例えば、‘待機中’や‘印刷中’などの現在の動作状態を意味している(Fig.8-Fig.10を参照されたい)から、未だ実行していない、実行可能なデータ処理についての情報を表示することは、引用文献1には記載乃至示唆はされていないし、上記相違点1に係る本願発明の「データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフローの情報」については全く示唆されていない。
一方、引用文献2における、図13の部分aに表示される矢印付きの線分は、データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行するデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフローの情報とはいえるかもしれないが、図13の部分aの表示は、ユーザの選択により構成した、処理を実行することが決定された入出力装置を表示したものであって、処理が実行可能であることを意味するもの、すなわち、「実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示す」ものとはいえない。
したがって、引用発明において、上記引用文献2に記載された技術を採用したとしても、本願発明の「データ処理装置が、他のデータ処理装置との組み合わせにより実行可能なデータ処理に伴うデータの流れを示すデータフローの情報」を表示するとの技術事項を導くことはできない。

よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することを当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、他に、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することが容易想到であったというべき理由は見当たらない。
以上のとおりであるから、本願発明は、上記相違点2について検討するまでもなく、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願の請求項2-8に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願の請求項9に係る発明は、請求項1の携帯端末の発明を携帯端末の制御プログラムとして捉えたものであり、請求項10-17に係る発明は、請求項9に係る発明をさらに限定したものであり、また、請求項18に係る発明は、請求項1の携帯端末の発明を携帯端末を含む表示システムとして捉えたものであるので、いずれも本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-18に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-27 
出願番号 特願2012-22461(P2012-22461)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊池 伸郎池田 聡史  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 携帯端末、携帯端末の制御プログラム、及び携帯端末を含む表示システム  
代理人 八田国際特許業務法人  

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